(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ブレース連結金具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20231213BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231213BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E04B9/18 F
E04B9/18 B
E04B1/58 G
F16B7/04 301B
F16B7/04 301U
(21)【出願番号】P 2019172735
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】小内 真
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光敬
(72)【発明者】
【氏名】柳寺 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 安行
(72)【発明者】
【氏名】三好 功一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 寛盛
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145897(JP,A)
【文献】特開2018-179020(JP,A)
【文献】特開2018-003929(JP,A)
【文献】特開2018-059580(JP,A)
【文献】特開2019-095072(JP,A)
【文献】特開2017-057704(JP,A)
【文献】特開2016-217516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 1/58
F16B 2/08
F16B 2/10
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトの外周面に沿うように配置され、前記吊りボルトに固定される金具本体と、
前記金具本体
の1つの側面に取り付けられる連結金具と、
を有し、
前記金具本体は、前記吊りボルトの長手方向に所定長さを有し、
前記連結金具は、前記所定長さを有する前記金具本体の
前記側面に取り付けられ、前
記側面との間に少なくとも2方向に配置される複数のブレースボルトを挟み込
むことにより、前記複数のブレースボルトを前記吊りボルトを含む同一面内で少なくとも2方向に配設した状態で前記金具本体に
一括して連結固定することが可能であることを特徴とするブレース連結金具。
【請求項2】
前記連結金具を前記金具本体の
前記側面に取り付けるボルト部材、
を更に有し、
前記連結金具は、前記ボルト部材が仮止め状態のときに前
記側面との間に前記複数のブレースボルトを挿通可能な挿通空間を形成し
、前記同一面内において前記複数のブレースボルトのそれぞれを任意の角度で挿通可能であり、前記ボルト部材が締め付けられることにより、前
記側面との間に前記複数のブレースボルトを挟み込んだ状態で固定することを特徴とする請求項1に記載のブレース連結金具。
【請求項3】
前記連結金具は、前記ボルト部材が締め付けられることによって少なくとも一部を変形させることにより、前記ブレースボルトの外周面に係合した状態となることを特徴とする請求項2に記載のブレース連結金具。
【請求項4】
前記ボルト部材に装着され、前記ボルト部材が仮止め状態のときに前記挿通空間を拡げる弾性部材、
を更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載のブレース連結金具。
【請求項5】
前記連結金具は、複数の前記ボルト部材によって前
記側面に対して位置決めされた状態に取り付けられることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のブレース連結金具。
【請求項6】
前記連結金具は、前
記側面との間に、3方向に配置される3本のブレースボルトを挟み込んだ状態で固定することが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のブレース連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトに対して斜め補強材となるブレースボルトを連結するブレース連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井スラブなどの天井構造から垂下する吊りボルトが空気調和機などの天井吊り下げ物を支持する構造において、吊りボルトの上端近傍位置及び下端近傍位置に斜め補強材となるブレースボルトを連結して地震発生時の振動を抑制することが行われている。この種のブレース連結金具として、例えば特許文献1に開示されている従来品が知られている。
【0003】
この従来品は、概略L字状の固定金具と、固定金具の両端に連結ボルトを介して取り付けられる一対のブレース支持金具とを有している。ブレース支持金具は、ブレースボルトの外周面に係合するU字状の係合部が設けられた第1部材と、第1部材に対向して配置される平板状の第2部材とを備えており、第1部材及び第2部材の一端側に連結ボルトが装着され、他端側に締着ボルトが装着される。このブレース支持金具は、連結ボルトを回転軸として第1部材及び第2部材を固定金具に対して相対的に回転変位させることが可能であり、ブレースボルトの配設角度に応じた姿勢とすることができる。そして連結ボルト及び締着ボルトの双方を仮止め状態としたままで第1部材と第2部材との間にブレースボルトを差し込んだ後、連結ボルト及び締着ボルトを締め付けることによりブレース連結金具を介してブレースボルトを吊りボルトに連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように2本の吊りボルト間に斜め方向のブレースボルトを配設する場合、補強材としての機能を十分に発揮させるためには、水平ラインを基準とすると、ブレースボルトの配設角度を60°以下の範囲内とすることが必要となる。しかし、天井構造から天井吊り下げ物までの高さ寸法が長くなると、ブレースボルトの配設角度を上記範囲内で設置することが困難となる。そのため、天井構造から天井吊り下げ物までの高さ寸法が長くなる場合には、吊りボルトの上部と下部との2箇所にブレースボルトを配設することになる。
【0006】
図16は、2本の吊りボルト110間の上下2箇所にブレースボルト120を交叉配置した補強構造を示す図である。
図16に示すように、天井構造100から天井吊り下げ物150までの高さ寸法Hが所定長さよりも長くなると、互いに隣接する2本の吊りボルト110のそれぞれに対し、上端近傍位置の1箇所、中央部の2箇所、そして下端近傍位置の1箇所に、従来のブレース連結金具200を取り付け、2本の吊りボルト110の間の上部に2本のブレースボルト120を交叉配置すると共に、下部にも2本のブレースボルト120を交叉配置して2本の吊りボルト110のそれぞれに連結する。これにより、各ブレースボルト120の配設角度を60°以下の範囲内に収めることができ、補強材として十分な機能を発揮させることができる。
【0007】
しかしながら、上記のように2本の吊りボルト110間の上下2箇所にブレースボルト120を配置する場合、ブレース連結金具200の取り付け数が増加するため、作業効率が悪いという問題がある。また、吊りボルト110に対してブレースボルト120を連結する際も、ブレースボルト120を1本ずつブレース連結金具200に連結していかなければならないため、作業効率が悪い。
【0008】
また、従来のブレース連結金具200を用いて2本の吊りボルト110の上下2箇所にブレースボルト120を配置すると、吊りボルト110の中央部分に補強されない隙間Gが生じる。この隙間Gは、ブレースボルト120による補強が行われていない部分となる。そのため、地震発生時には、ブレースボルト120が連結されていない隙間Gの部分に応力が集中し、吊りボルト110の中央部分が大きく揺れるという問題がある。つまり、従来のブレース連結金具200を使用してブレースボルト120を連結すると、吊りボルト110の中央部分に脆弱な部分を生じさせてしまうのである。
【0009】
そこで本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、ブレースボルトを吊りボルトに連結する際の作業効率を向上させると共に、吊りボルトに脆弱な部分を生じさせることなく、十分な補強強度を得ることができるブレース連結金具を提供することを付加的な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、ブレース連結金具(1)であって、吊りボルト(110)の外周面に沿うように配置され、前記吊りボルト(110)に固定される金具本体(2)と、前記金具本体(2) の1つの側面(2a又は2b)に取り付けられる連結金具(5又は6)と、を有し、前記金具本体(2)は、前記吊りボルト(110)の長手方向に所定長さを有し、前記連結金具(5,6)は、前記所定長さを有する前記金具本体(2)の前記側面(2a又は2b)に取り付けられ、前記側面(2a又は2b)との間に少なくとも2方向に配置される複数のブレースボルト(120)を挟み込むことにより、前記複数のブレースボルトを前記吊りボルトを含む同一面内で少なくとも2方向に配設した状態で前記金具本体(2)に一括して連結固定することが可能であることを特徴とする構成である。
【0011】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記連結金具(5又は6)を前記側面(2a又は2b)に取り付けるボルト部材(33,34,35,36)、を更に有し、前記連結金具(5又は6)は、前記ボルト部材(33,34,35,36)が仮止め状態のときに前記側面(2a又は2b)との間に前記複数のブレースボルト(120)を挿通可能な挿通空間(41,42,43)を形成し、前記同一面内において前記複数のブレースボルト(120)のそれぞれを任意の角度で挿通可能であり、前記ボルト部材(33,34,35,36)が締め付けられることにより、前記側面(2a又は2b)との間に前記複数のブレースボルト(120)を挟み込んだ状態で固定することを特徴とする構成である。
【0012】
第3に、本発明は、上記第2の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記連結金具(5又は6)は、前記ボルト部材(33,34,35,36)が締め付けられることによって少なくとも一部を変形させることにより、前記ブレースボルト(120)の外周面に係合した状態となることを特徴とする構成である。
【0013】
第4に、本発明は、上記第2又は第3の構成を有するブレース連結金具(1)において、前記ボルト部材(33,34,35,36)に装着され、前記ボルト部材(33,34,35,36)が仮止め状態のときに前記挿通空間(41,42,43)を拡げる弾性部材(44)、を更に有することを特徴とする構成である。
【0014】
第5に、本発明は、上記第2乃至第4のいずれかの構成を有するブレース連結金具(1)において、前記連結金具(5又は6)は、複数の前記ボルト部材(33,34,35,36)によって前記側面(2a又は2b)に対して位置決めされた状態に取り付けられることを特徴とする構成である。
【0015】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの構成を有するブレース連結金具(1)において、前記連結金具(5又は6)は、前記側面(2a又は2b)との間に、3方向に配置される3本のブレースボルト(120)を挟み込んだ状態で固定することが可能であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のブレース連結金具によれば、複数のブレースボルトを一括的に吊りボルトに連結することが可能であり、作業効率を向上させることができると共に、吊りボルトに脆弱な部分を生じさせることがないため、十分な補強強度を確保することができるようになる。特に、金具本体の側面と連結金具との間に3本のブレースボルトを固定する場合には、従来と比較してボルト部材の数が少なくなるため、作業効率が著しく改善されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ブレース連結金具の設置態様の一例を示す図である。
【
図2】ブレース連結金具を背面側(外側)から観た示す斜視図である。
【
図3】ブレース連結金具を正面側(内側)から観た斜視図である。
【
図4】ブレース連結金具の各構成部材を分解した状態を背面側(外側)から視た斜視図である。
【
図5】ブレース連結金具の各構成部材を分解した状態を正面側(内側)から視た斜視図である。
【
図7】ブレース連結金具を後付けで吊りボルトに取り付ける際の施工手順を示す図である。
【
図8】金具本体の取付部と連結金具との間に複数のブレースボルトを装着する例を示す図である。
【
図9】ブレースボルトの先端を取付部と連結金具との間に差し込む例を示す図である。
【
図10】ボルト部材にバネなどの弾性部材を設けた構成例を示す図である。
【
図11】連結金具において板部材が湾曲変形する例を示す図である。
【
図12】連結金具において板部材が湾曲変形する部分を説明する図である。
【
図13】吊りボルトの上部を補強するブレースボルトを外側に取り付けた例を示す図である。
【
図14】金具本体に係合突起を設けた例を示す図である。
【
図16】従来のブレース連結金具を用いた施工例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態であるブレース連結金具1の設置態様の例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のブレース連結金具1は、天井スラブなどの天井構造100から垂下する吊りボルト110と、一対の吊りボルト110の間に斜め方向に配設されるブレースボルト120とを連結するための金具である。
【0020】
吊りボルト110は、空気調和機などの天井吊り下げ物150を天井空間に吊り下げた状態で支持するボルトである。例えば天井構造100には、天井吊り下げ物150の四隅の位置に設けられている連結部151に接続可能なように4本の吊りボルト110が取り付けられる。それら4本の吊りボルト110は、それぞれの下端部において天井吊り下げ物150の四隅の連結部151に連結され、天井吊り下げ物150を所定の高さ位置で支持する。吊りボルト110の寸法は、天井吊り下げ物150の設置高さに合わせた寸法となる。
【0021】
例えば、天井構造100から天井吊り下げ物150までの吊りボルト110の高さ寸法Hが所定長さよりも長い場合、
図1に示すように、互いに隣接する一対の吊りボルト110の間の少なくとも上下2箇所に、2本のブレースボルト120を交叉配置した補強構造が設けられる。このように一対の吊りボルト110の間に2本のブレースボルト120を交叉配置した複数の補強構造を設けることにより、ブレースボルト120の配設角度を45°±15°の範囲内とすることが可能となり、ブレースボルト120による補強強度を確保することができる。
【0022】
本実施形態のブレース連結金具1は、
図1に示すように天井構造100から天井吊り下げ物150までの高さ寸法Hが所定長さよりも長く、一対の吊りボルト110の間において、少なくとも上下2箇所で2本のブレースボルト120を交叉配置させた補強構造とする場合、吊りボルト110の中央の位置に取り付けられる。この場合、吊りボルト110の上部と下部には、従来品と同様のブレース連結金具200が設置される。そして一方の吊りボルト110の上部のブレース連結金具200から他方の吊りボルト110の中央に向かってブレースボルト120が配置され、ブレース連結金具1がそのブレースボルト120を吊りボルト110の中央部に連結する。また、一方の吊りボルト110の下部のブレース連結金具200から他方の吊りボルト110の中央に向かってブレースボルト120が配置され、ブレース連結金具1がそのブレースボルト120を吊りボルト110の中央部に連結する。つまり、本実施形態のブレース連結金具1は、斜め上方に向かって配設されるブレースボルト120と、斜め下方に向かって配設されるブレースボルト120とを一括して吊りボルト110の中央部に連結することができる金具である。
【0023】
また、本実施形態のブレース連結金具1は、
図1に示すように、一対の吊りボルト110の中央において略水平方向に配設されるブレースボルト120を吊りボルト110に連結することも可能である。そのため、ブレース連結金具1は、3方向に配設される3本のブレースボルト120を一括して吊りボルト110に連結することが可能である。以下、このようなブレース連結金具1について詳しく説明する。
【0024】
図2は、ブレース連結金具1を背面側(外側)から観た斜視図である。
図3は、ブレース連結金具1を正面側(内側)から観た斜視図である。
図4は、ブレース連結金具1の各構成部材を分解した状態を背面側から視た斜視図である。
図5は、ブレース連結金具1の各構成部材を分解した状態を正面側から視た斜視図である。ブレース連結金具1は、
図2乃至
図5に示すように、吊りボルト110に沿うように上下方向に所定長さを有するL型のアングル形状を有する金具本体2と、金具本体2の上部及び下部の2箇所において金具本体2の内側に配置される固定金具3(3a,3b)と、金具本体2の2つの側面2a,2bのそれぞれに取り付けられる連結金具5,6とを備えている。
【0025】
金具本体2は、中央の略直角に折れ曲がった部分が吊りボルト110の外周面の少なくとも一部を包囲する包囲部10として構成され、その包囲部10から両側に一対の取付部11,12を有している。包囲部11は、吊りボルト110の長手方向に沿って吊りボルト110の外周面に密着し、吊りボルト110を長手方向に沿って補強する機能を有している。すなわち、吊りボルト110は、包囲部11によって包囲されている部分において上下方向に隙間を生じることなく補強される。一対の取付部11,12は、平板状に形成され、互いに略直角を成す角度で包囲部10の外側に延設されている。これら一対の取付部11,12の表面が、連結金具5,6を取り付けるための、金具本体2の側面2a,2bとなる。尚、本実施形態では、一対の取付部11,12の外側の表面に連結金具5,6が取り付けられる場合を例示するが、一対の取付部11,12の内側の表面に連結金具5,6が取り付けられるものであっても構わない。
【0026】
また金具本体2は、一対の取付部11,12のそれぞれの上端近傍位置及び下端近傍位置にボルト挿通孔13が形成されている。これらボルト挿通孔13は、金具本体2の内側に固定金具3を固定するためのボルト部材31,32を挿通するための孔であり、例えば横方向に長い長孔として形成される。また
図5に示すように、金具本体2の包囲部10の内側において上端近傍位置及び下端近傍位置に設けられた2つのボルト挿通孔13の間に吊りボルト110の外周面と係合する係合部19が設けられる。
【0027】
さらに金具本体2は、一対の取付部11,12のそれぞれに対し、上端近傍位置に設けられたボルト挿通孔13と下端近傍位置に設けられたボルト挿通孔13との間の中央部に、4つの螺子孔14,15,16,17を設けている。これらの螺子孔14~17は、金具本体2の側面2a,2bに対して連結金具5,6を取り付けるためのボルト部材33,34,35,36を装着するための雌螺子が形成された孔である。例えば、4つの螺子孔14~17のうち、螺子孔14,15の間隔と螺子孔16,17の間隔は互いに同じであり、螺子孔15,16の間隔は、螺子孔14,15の間隔及び螺子孔16,17の間隔よりも狭い間隔に形成される。
【0028】
固定金具3は、金具本体2の内側において上部に取り付けられる固定金具3aと、下部に取り付けられる固定金具3bとによって構成される。これら固定金具3a,3bは、いずれも同じ形状を有している。例えば、固定金具3a,3bは、矩形金属プレートの中央部を概略W字状に折り曲げて形成される金具である。固定金具3a,3bは、その中央に設けられる円弧状に湾曲した湾曲部20と、その湾曲部20の両側から互いに直角を成すように延設される一対の平板部21とを備える。湾曲部20は、その内側に吊りボルト110を保持するように構成される。つまり、固定金具3a,3bは、金具本体2の内側に組み付けられることにより、湾曲部20が金具本体2の包囲部10との間に吊りボルト110を挟み込んで保持するように構成される。また、湾曲部20の内側には、
図4に示すように吊りボルト110の外周面と係合する係合部23が設けられる。
【0029】
固定金具3a,3bの一対の平板部21には、ボルト部材31,32と螺合する螺子孔22が形成されている。固定金具3a,3bは、金具本体2の内側に配置され、金具本体2のボルト挿通孔13に挿通されるボルト部材31の雄螺子がその螺子孔22に差し込まれることにより金具本体2に取り付けられる。これら固定金具3a,3bは、金具本体2の内側の上部及び下部に取り付けられることにより、吊りボルト110を保持する保持部4を形成する。
【0030】
保持部4は、金具本体2の包囲部10と固定金具3a,3bの湾曲部20とによって構成され、吊りボルト110を包囲部10の内側と湾曲部20の内側との間に挟み込んで保持する。保持部4の左右両側においてボルト部材31,32が締め付けられ、金具本体2と固定金具3a,3bとが互いに固定されることにより、保持部4は、吊りボルト110の任意の高さの位置に固定される。保持部4が吊りボルト110に固定されると、上述した係合部19,23が吊りボルト110の外周面に形成された雄螺子と係合し、ブレース連結金具1が吊りボルト110の長手方向に沿って移動しない状態に位置決めされる。
【0031】
連結金具5,6は、4つのボルト部材33,34,35,36によって保持部4から互いに略直角を成す角度で延設される一対の取付部11,12に取り付けられる。例えば連結金具5は、一方の取付部11に対して位置決めされた状態(取付部11に対して角度変位しない状態)に取り付けられる。また、連結金具6も同様に、他方の取付部12に対して位置決めされた状態(取付部12に対して角度変位しない状態)に取り付けられる。これら連結金具5,6は、ブレースボルト120を金具本体2の側面2a,2bに対して固定するための部材である。
【0032】
連結金具5,6は、一対の取付部11,12の間にブレースボルト120を挟み込んだ状態で固定し、ブレースボルト120を吊りボルト110に連結する。
図6は、連結金具5,6の一構成例を示す図であり、(a)は連結金具5,6の斜視図を、(b)は断面図を示している。
図6(a)に示すように、連結金具5,6は、例えば平板状の板部材30によって構成される部材である。板部材30は、概略長方形の薄板金属によって構成され、その長手方向に沿って、ボルト部材33,34,35,36を挿通するための孔30a,30b,30c,30dを有している。例えば、本実施形態の板部材30は、一対の取付部11,12の板厚よりも薄い板厚で形成される。
【0033】
図6(b)に示すように、板部材30に形成される4つの孔30a,30b,30c,30dの直径D1は、ボルト部材33,34,35,36の雄螺子部の外径と同サイズ又はそれよりも若干大きいサイズに形成される。また、孔30a,30bの間隔D2と孔30c,30dの間隔D2は互いに等しい間隔に形成される。すなわち、間隔D2は、取付部11,12に設けられる螺子孔14,15の間隔及び螺子孔16,17の間隔に等しい。また、孔30b,30cの間隔D3は、取付部11,12に設けられる螺子孔15,16の間隔に等しい。連結金具5,6は、このような板部材30と取付部11,12との間に複数のブレースボルト120を挟み込むことが可能なように構成される。
【0034】
連結金具5,6は、
図2乃至
図5に示すように、一対の取付部11,12のそれぞれに対し、4つのボルト部材33,34,35,36を用いて取り付けられる。各連結金具5,6は、それ単独で複数のブレースボルト120を金具本体2の側面2a,2bに固定する金具である。連結金具5,6は、その長手方向が吊りボルト110と平行な状態となるように金具本体2の側面2a,2bに取り付けられ、吊りボルト110と平行な姿勢を変化させない。そして連結金具5,6は、ボルト部材33,34の間に斜め方向に配設される1つのブレースボルト120を挿通し、ボルト部材35,36の間に斜め方向に配設される別のもう1つのブレースボルト120を挿通し、さらにボルト部材34,35の間に略水平方向に配設される更に別のもう一つのブレースボルト120を挿通する。
【0035】
上記のように構成されるブレース連結金具1は、金具本体2の包囲部10と、固定金具3a,3bの湾曲部20との間に吊りボルト110を挟み込むようにして取り付けられるため、吊りボルト110の上端部が天井構造100に接続され、下端部に天井吊り下げ物150が既に取り付けられている場合であっても後付けで吊りボルト110に取り付けることができる。
図7は、ブレース連結金具1を後付けで吊りボルト110に取り付ける際の施工手順を示す図である。まず作業者は、
図7(a)の矢印F1で示すように、吊りボルト110を金具本体2の包囲部10の内側に導入する。そして
図7(b)に示すようにボルト部材31を用いて金具本体2と固定金具3aとを仮止めする。金具本体2と固定金具3aとが仮止めされた状態のとき、ボルト部材31は、ボルト挿通孔13の内側において取付部11,12の先端寄りに位置している。その状態でボルト部材31が螺子孔22に対して螺合進行していくと、金具本体2と固定金具3aとの距離が次第に小さくなる。このとき、他方のボルト部材31は、ボルト挿通孔13の内側を、取付部11,12の先端寄りの位置から吊りボルト110(包囲部10)に近づくように移動する。そのため、ボルト部材31の締め付けが行われることに伴って、矢印F2で示すように金具本体2と固定金具3aとの距離をスムーズに縮小させることが可能である。そして2つのボルト部材31の締着作業が終了すると、
図7(c)に示すように2つのボルト部材31はいずれもボルト挿通孔13の内側において吊りボルト110(包囲部10)に近い位置まで移動し、包囲部10と湾曲部20とが左右ほぼ均等な状態で吊りボルト110を挟持した状態となる。このようにブレース連結金具1は、金具本体2に横方向の長孔であるボルト挿通孔13を設けており、ボルト部材31をそのボルト挿通孔13に挿通して固定金具3aの螺子孔22に螺合させるようにしているため、一対のボルト部材31を締着する作業を行うときには、ブレース連結金具1の外側からボルト部材31の締め付け作業を行うことが可能であり、作業がし易く、作業効率に優れている。尚、
図7においては、金具本体2に対して固定金具3aを取り付ける場合を例示したが、金具本体2に対して固定金具3bを取り付ける場合もこれと同様である。上記のようにしてブレース連結金具1が吊りボルト110の中央部分に取り付けられる。
【0036】
ブレース連結金具1が吊りボルト110の中央部に取り付けられると、作業者は、一対の取付部11,12と連結金具5,6との間に複数のブレースボルト120を取り付ける。
図8は、金具本体2の1つの側面2bにおいて取付部12と連結金具6との間に複数のブレースボルト120を装着する例を示す図である。連結金具6を取付部12に取り付けるボルト部材33,34,35,36を予め仮止め状態としておくことで、連結金具6を取付部12から離間させ、ブレースボルト120を挿通するための挿通空間41,42,43を形成することができる。挿通空間41は、連結金具6と取付部12との間において2つのボルト部材33,34の間に形成される空間である。また挿通空間42は、連結金具6と取付部12との間において2つのボルト部材34,35の間に形成される空間である。更に挿通空間43は、連結金具6と取付部12との間において2つのボルト部材35,36の間に形成される空間である。作業者は、連結金具6を取付部12から離間させて各挿通空間41,42,43を拡大させた状態で、
図8(a)に示すように、各挿通空間41,42,43に対してブレースボルト120の先端を1本ずつ挿入する。
【0037】
図8(b)は、連結金具6を省略した状態を示す断面図である。
図8(b)に示すように、取付部12の螺子孔14,15に取り付けられる2つのボルト部材33,34の雄螺子部33a,34aは、挿通空間41に対するブレースボルト120の配設角度(挿通角度)θを調整できるように比較的広い間隔を有している。つまり、雄螺子部33a,34aの間隔は、水平ラインL1を0°の基準としたとき、ブレースボルト120の配設角度θを60°以下の範囲内で調整できる間隔とする。
【0038】
また同様に、取付部12の螺子孔16,17に取り付けられる2つのボルト部材35,36の雄螺子部35a,36aも、挿通空間43に対するブレースボルト120の配設角度θを60°以下に調整できるように比較的広い間隔を有している。
【0039】
さらに、取付部12の螺子孔15,16に取り付けられる2つのボルト部材34,35の雄螺子部34a,35aは、挿通空間42に対してブレースボルト120を略水平な状態で挿通できるように比較的狭い間隔となっている。つまり、雄螺子部34a,35aの間隔は、ブレースボルト120の直径よりも若干大きい程度の間隔に設定される。そのため、ボルト部材34,35の間には、略水平な状態のブレースボルト120を挿通することができる。
【0040】
尚、
図8では、一対の取付部11,12のうち、一方の取付部12と連結金具6との間に複数のブレースボルト120を装着する例を示したが、他方の取付部11と連結金具5との間に複数のブレースボルト120を装着する場合も同様である。
【0041】
また本実施形態のブレース連結金具1は、4つのボルト部材33,34,35,36によって連結金具5,6が取付部11,12に位置決めされており、連結金具5,6が角度変位しない。つまり、連結金具5,6は、長手方向が吊りボルト110と平行な鉛直方向に沿って配置された状態を維持する。そのため、作業者は、ボルト部材33,34,35,36が仮止めされた状態で連結金具5,6を取付部11,12から離間させることにより、挿通空間41,42,43を横方向に拡大させることで簡単にブレースボルト120を各挿通空間41,42,43に差し込むことができる。
【0042】
図9は、ブレースボルト120の先端を取付部12と連結金具6との間に差し込む例を示す図である。例えば作業者は、
図9(a)に示すように連結金具6を取付部12から遠ざける方向F3に移動させると、挿通空間41,42,43が大きく開口する。その後、作業者は、
図9(b)に示すように、拡大させた挿通空間41,43のそれぞれに対してブレースボルト120の先端を斜め方向に差し込むことにより、ブレース連結金具1から斜め上方に延びるブレースボルト120と、ブレース連結金具1から斜め下方に延びるブレースボルト120とを配置することができる。また、作業者は、
図9(c)に示すように挿通空間42に対して略水平方向からブレースボルト120を差し込むことにより、ブレース連結金具1から略水平方向に延びるブレースボルト120を配置することができる。尚、
図9では、取付部12と連結金具6との間にブレースボルト120を差し込む場合を例示しているが、取付部11と連結金具5との間にブレースボルト120を差し込む場合もこれと同様である。
【0043】
図10は、ボルト部材34にバネなどの弾性部材44を設けた構成例を示す図である。例えば
図10に示すように、連結金具6を取付部12に取り付ける4つのボルト部材33,34,35,36のうちの1つのボルト部材34に対してコイルバネなどに弾性部材44を配置しても良い。この弾性部材44は、連結金具6を取付部12から離間させる方向に付勢力を作用させる。そのため、4つのボルト部材33,34,35,36が緩く締着された仮止め状態であるとき、弾性部材44は、連結金具6と取付部12との間隔を広げ、挿通空間41,42,43を拡大させる。そのため、作業者がボルト部材33,34,35,36の仮止め状態で各挿通空間41,42,43にブレースボルト120を挿通させるときには、弾性部材44の作用によって挿通空間41,42,43が広く開口しているため、簡単にブレースボルト120の先端を各挿通空間41,42,43に差し込むことができる。尚、
図10では、4つのボルト部材33,34,35,36のうち、ボルト部材34に弾性部材44を取り付けた場合を例示しているが、弾性部材44は他のボルト部材33,35,36に取り付けても構わない。また、弾性部材44は、2以上のボルト部材に取り付けられるものであっても構わない。さらに、
図10では、取付部12と連結金具6との間に弾性部材44を設ける場合を例示しているが、取付部11と連結金具5との間にも同様に弾性部材44を設けておくことが好ましい。
【0044】
上記のように各挿通空間41,42,43にブレースボルト120を挿通すると、作業者は、4つのボルト部材33,34,35,36を締め付けることにより、各ブレースボルト120を取付部11,12と連結金具5,6との間に挟み込んだ状態で固定する。そしてボルト部材33,34,35,36を締め付けることにより、連結金具5,6の板部材30が湾曲変形する。
図11は、連結金具5,6において板部材30が湾曲変形する例を示す図である。ボルト部材33,34,35,36を各螺子孔14,15,16,17に対して締め付けていくと、ボルト部材33,34,35,36の頭部は連結金具5,6の表面に当接する。その状態で更にボルト部材33,34,35,36を締め付けると、ボルト部材33,34,35,36の頭部が連結金具5,6の薄い板部材30を湾曲変形させる。このようにして板部材30を湾曲変形させることにより、板部材30がブレースボルト120の外周面の一部を包囲するようになり、ブレースボルト120が角度変位しないように固定することが可能である。
【0045】
このような板部材30の湾曲変形は、連結金具5,6に対するブレースボルト120の挿通方向に沿って発生する。
図12は、連結金具6において板部材が湾曲変形する部分を説明する図である。例えば、ボルト部材33,34,35,36を締め付けていくと、連結金具6においてライン50で示す部分の内側がブレースボルト120の外周面と接触する。その状態で更にボルト部材33,34,35,36を締め付けていくと、連結金具6は、ブレースボルト120の外周面と接触しているライン50の部分を除き、ボルト部材33,34,35,36の軸力によって取付部12との間隔を縮小させる方向に変位する。この変位が、板部材30を湾曲変形させるのである。つまり、ブレースボルト120の配設角度θにかかわらず、ボルト部材33,34,35,36の締め付けによって、連結金具6の板部材30がブレースボルト120の外周面を包み込むように湾曲変形するため、例えば地震発生時などにおいてブレースボルト120が角度変位することを防止することができる。このように本実施形態のブレース連結金具1は、ボルト部材33,34,35,36が締め付けられることにより、板部材30を変形させ、ブレースボルト120の配設角度θを保持した状態で連結金具5,6と取付部11,12との間にブレースボルト120を挟み込んで固定するため、より強固な状態でブレースボルト120を連結することができるのである。
【0046】
また、ブレース連結金具1の1つの側面2a又は2bに対して3本のブレースボルト120を固定する際、作業者は、4つのボルト部材33,34,35,36を締め付ければ良い。これに対し、従来のブレース連結金具を用いて3本のブレースボルトを吊りボルトに連結するときには、ブレースボルト1本辺り2つのボルト部材を締め付ける必要があるため、合計6つのボルト部材を締め付ける必要がある。したがって、本実施形態のブレース連結金具1は、従来のブレース連結金具と比較すると、3本のブレースボルト120を固定する際に締め付け作業の対象となるボルト部材の数が少ないため、効率的に作業を行うことが可能である。
【0047】
また、ブレース連結金具1は、ブレースボルト120を取付部11,12に対して固定する連結金具5,6が一対の取付部11,12に対して回転変位せず、位置決めされているため、仮に大規模地震が発生した場合であってもブレースボルト120を強固に保持することができ、吊りボルト110の変位量を小さく抑えることができる。
【0048】
このように本実施形態のブレース連結金具1は、取付部11,12に対して連結金具5,6を位置決めした状態で取り付けると共に、取付部11,12と連結金具5,6との間に複数のブレースボルト120をそれぞれ所定角度範囲内の任意の角度で設置できるようにしている。特に、本実施形態のブレース連結金具1は、吊りボルト110の中央部において、金具本体2の2つの側面2a,2bのそれぞれに対し、斜め方向に配設される2本のブレースボルト120と、略水平方向に配設される1本のブレースボルト120との合計3本のブレースボルト120を一括して固定することが可能である。そのため、本実施形態のブレース連結金具1を用いて複数のブレースボルト120を吊りボルト110に連結すれば、吊りボルト110の中央部に補強されない脆弱部分を生じさせることなく、吊りボルト110を補強することができる。更に、このブレース連結金具1は、ボルト部材の数を増やすことなく、略水平方向に配設されるブレースボルト120も吊りボルト110に連結することができる。そのため、従来の補強構造よりも強い補強構造を得ることができると共に、作業効率に優れている。
【0049】
また、本実施形態のブレース連結金具1は、金具本体2の各側面2a,2bにおいて複数のブレースボルト120を連結金具5,6で一括して挟み込む構成であるため、部品数が少なく、低コストであるという利点もある。
【0050】
また、本実施形態のブレース連結金具1は、補強を必要とする2つの吊りボルト110間に配管などの障害物が存在し、2つの吊りボルト110間にブレースボルト120を交叉配置することができない場合であっても、吊りボルト110の外側からブレースボルト120を配置して吊りボルト110を補強することができる。
図13は、吊りボルト110の上部を補強するブレースボルト120を外側に取り付けた例を示す図である。
図13に示すように、例えば2つの吊りボルト110の間の空間に梁や各種配管、機器などの障害物80が存在する場合、2つの吊りボルト110の上部において2本のブレースボルト120を交叉配置することができない。そのような場合、本実施形態のブレース連結金具1は、金具本体2の側面2a,2bに対して連結金具5,6を吊りボルト110と平行な状態に配置しているため、
図13に示すように吊りボルト110の上部を補強するブレースボルト120を吊りボルト110の外側から斜め方向に配置して吊りボルト110の中央部に連結することができる。したがって、本実施形態のブレース連結金具1を用いれば、2本の吊りボルト110の内側だけでなく、外側にもブレースボルト120を連結することができるので、利便性が高い。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0052】
例えば、
図14に示すように一対の取付部11,12のそれぞれにブレースボルト120の外周面と係合する係合突起60を設けても良い。例えば、取付部11,12に設けられている複数の螺子孔14,15,16,17の間に複数の係合突起60を設ける。これら複数の係合突起60は、ブレースボルト120が所定角度範囲内のどのような角度で挿通された場合でも、少なくとも1つの係合突起60がブレースボルト120の外周面と係合する位置に配置される。
【0053】
図15は、取付部11,12に設ける係合突起60の例を示す図である。係合突起60は、
図15(a)に示すように、例えば取付部11,12の背面側からパンチ加工などによって押圧することにより形成される。これにより、係合突起60の内側には、中空空間61が形成される。このような係合突起60を螺子孔14,15,16,17の間に複数形成するのである。そしてブレースボルト120が取付部11,12と連結金具5,6との間に差し込まれた状態でボルト部材33,34,35,36が締め付けられると、係合突起60には、連結金具5,6からの押圧力FPが作用し、
図15(b)に示すようにブレースボルト120の外周面に形成された雄螺子によって押し潰される。その結果、係合突起60は、ブレースボルト120の外周面と係合し、ブレースボルト120の位置ずれや姿勢変化を規制できるようになる。したがって、一対の取付部11,12に係合突起60を設けることにより、より強固にブレースボルト120を固定することができるようになる。尚、同様の係合突起60を連結金具5,6の板部材30に設けるようにしても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、連結金具5,6の板部材30が取付部11,12よりも薄く形成されるため、ボルト部材33,34,35,36の締め付けによって板部材30が湾曲変形する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、例えば取付部11,12の板厚を板部材30よりも薄くし、ボルト部材33,34,35,36が締め付けられることによって取付部11,12が湾曲変形するものであっても構わない。また、取付部11,12と板部材30とを略同一の板厚にし、ボルト部材33,34,35,36が締め付けられた場合、取付部11,12と板部材30との双方が湾曲変形するものであっても構わない。すなわち、ブレース連結金具1は、ボルト部材33,34,35,36が締め付けられることにより、取付部11,12と板部材30との少なくとも一方を湾曲変形させて各ブレースボルト120の外周面を包み込むようにして各ブレースボルト120の挿通角度を保持し、取付部11,12と板部材30との間にブレースボルト120を挟み込んで固定するものであっても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、吊りボルト110の中央部に取り付けられたブレース連結金具1の各側面2a,2bに対して3方向に配設される3本のブレースボルト120を連結する場合を例示した。しかし、ブレース連結金具1は、それぞれ異なる方向に配設される少なくとも2本のブレースボルト120が連結するものであれば良い。この場合の2方向は、例えば、吊りボルト110の中央部から斜め上方に向かって配設されるブレースボルト120と、斜め下方に向かって配設されるブレースボルトとの2本であっても良いし、また吊りボルト110の中央部から略水平方向に向かって配設されるブレースボルト120と、斜め方向に向かって配設されるブレースボルト120との2本であっても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、連結金具5,6が平板状の板部材30で構成される場合を例示したが、連結金具5,6は、平板状の板部材30で構成されるものに限られない。例えば、連結金具5,6の板部材30は、平板状ではなく、ある程度の湾曲形状を予め付与したものであっても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1…ブレース連結金具、2…金具本体、2a,2b…側面、3(3a,3b)…固定金具、5,6…連結金具、11,12…取付部、33,34,35,36…ボルト部材、41,42,43…挿通空間、44…弾性部材、110…吊りボルト、120…ブレースボルト。