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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
A47G9/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020008716
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115116
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和1年8月29日 ウェブサイトのアドレス https://www.airsleep.jp/pdf/20190829.pdf https://www.airsleep.jp/lineup/pillow4dx.html https://www.nishikawasangyo.co.jp/categories/pillow/pi70370/ 〔刊行物等〕 発行日 令和01年11月27日 刊行物 西川株式会社「AiR CONDITIONING GEAR LINE UP CATALOG」第22及び23頁 〔刊行物等〕 販売日又は配布日 令和01年7月19日 販売場所又は配布場所 株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿本店5階(東京都新宿区新宿3-14-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】田井中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】山田 志奈乃
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-018347(JP,A)
【文献】特開2000-139653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180755(JP,U)
【文献】特開2005-137596(JP,A)
【文献】特開2004-167014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、及び前記第1方向に交差する第2方向に延びると共に、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有する柔軟性素材によって構成された枕であって、
鉛直上方に向けられる表面層と、
鉛直下方に向けられる底面層と、
前記表面層及び前記底面層の間に介在するゲル層と、
を備え、
平面視における外縁部分において、前記表面層が前記底面層に貼り合わされており、
平面視における中央を含む領域であって且つ前記外縁部分以外の領域において、前記表面層は空間部を介して前記ゲル層から離間しており、
前記底面層は、平面視の中央を含む領域において鉛直下方に窪む第1凹部を有し、
前記ゲル層は、前記第1凹部に倣って形成される第2凹部を有し、
前記第2凹部の底面の深さは、2cm以上且つ10cm以下である、
枕。
【請求項2】
前記ゲル層は、前記表面層側を向く上面に溝を有する、
請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記ゲル層は、前記第3方向に延びる第1貫通穴を有し、
前記底面層は、前記第1貫通穴に連通すると共に前記鉛直下方に開口する第2貫通穴を有する、
請求項1又は2に記載の枕。
【請求項4】
前記表面層は、前記第1方向の中央に位置する中央部と、前記中央部の前記第1方向の両側に位置する両側部と、を有し、
前記両側部は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する両側凸部を含んでおり、
前記中央部は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する中央側凸部を含んでおり、
前記中央側凸部の幅は、前記両側凸部の幅よりも狭い、
請求項1~のいずれか一項に記載の枕。
【請求項5】
前記ゲル層は、前記第1方向の中央に位置する第1肉薄部と、前記第1方向の両端のそれぞれに位置する第2肉薄部と、前記第1肉薄部及び前記第2肉薄部の間に位置する肉厚部とを有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の頭部が載せられる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕としては従来から種々のものが知られている。実用新案登録第3222323号公報には、枕の表面側に配置される第1弾性部材と、第1弾性部材の内側であって枕の底面側に配置されるシート状の第2弾性部材と、第1弾性部材及び第2弾性部材の間に配置されるシート状の第3弾性部材とを備える枕が記載されている。第1弾性部材は、表面側に位置する複数の凸部と、複数の凸部の下側に位置する接続部とを有する。
【0003】
凸部の上側の部分は低反発弾性フォームによって構成されており、凸部の下側の部分及び接続部は柔らかいウレタンフォームによって構成されている。第3弾性部材はポリウレタンフォームによって構成されており、最下部に位置する第2弾性部材は第1弾性部材及び第3弾性部材よりも硬いウレタンフォームによって構成されている。この枕では、第1弾性部材の複数の凸部で使用者の頭部を複数の点で支えることにより、使用者の頭部における通気性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3222323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した枕は、表面側に位置する第1弾性部材の複数の凸部によって、使用者の頭部における通気性の向上を図っている。しかしながら、第1弾性部材よりも下方に位置する第2弾性部材及び第3弾性部材はシート状のウレタンフォームによって構成されており、第2弾性部材及び第3弾性部材は通気性が確保される構成とはされていない。従って、通気性の点において改善の余地がある。
【0006】
本開示は、通気性を向上させることができる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る枕は、第1方向、及び第1方向に交差する第2方向に延びると共に、第1方向及び第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有する柔軟性素材によって構成された枕であって、鉛直上方に向けられる表面層と、鉛直下方に向けられる底面層と、表面層及び底面層の間に介在するゲル層と、を備え、平面視における外縁部分において、表面層が底面層に貼り合わされており、平面視における中央を含む領域であって且つ外縁部分以外の領域において、表面層は空間部を介してゲル層から離間しており、底面層は、平面視の中央を含む領域において鉛直下方に窪む第1凹部を有し、ゲル層は、第1凹部に倣って形成される第2凹部を有し、第2凹部の底面の深さは、2cm以上且つ10cm以下である
【0008】
この枕は、鉛直上方に向けられる表面層と、鉛直下方に向けられる底面層と、表面層及び底面層の間に介在するゲル層とを備え、表面層、底面層及びゲル層は柔軟性素材によって構成されている。ゲル層は、柔らかく高い体圧分散性及び高い熱伝導性を有すると共に、高い冷涼感を発揮する。従って、この枕に使用者の頭部が載せられると、表面層を介してゲル層が頭部に接触することにより、高いクッション性と共に高い冷涼感を使用者に感じさせることができる。この枕では、平面視における外縁部分において表面層が底面層に貼り合わされており、平面視における中央部分において表面層は空間部を介してゲル層から離間している。従って、平面視における中央部分において、表面層は、接着されておらず、空間部を介してゲル層から浮いた状態とされている。従って、使用者の頭部が枕の平面視における中央部分に載せられると、表面層が大きく変形するので高いクッション性を感じさせることができる。また、頭部の荷重を受けて表面層が変形するときに、空間部の空気が表面層を介して枕の外部に抜け出るので、通気性を高めることができる。そして、表面層への頭部の荷重が解除されたときに、表面層の変形が元に戻って再度空間部が形成される。従って、空間部における表面層の変形を繰り返すことにより、枕に対する空気流通を促進させることができるので、クッション性を高めると共に通気性を向上させることができる。また、通気性を向上させることにより、頭部に接触して暖まったゲル層の温度を下げることができる。
【0009】
ゲル層は、表面層側を向く上面に溝を有してもよい。この場合、ゲル層の上面に溝が形成されるので、当該溝をゲル層の上面の空気流路とすることができる。すなわち、ゲル層の上面の溝に空気を流しやすくすることができるので、通気性をより高めることができる。また、通気性を向上させることにより、頭部に接触して暖まったゲル層の温度を下げることができる。
【0010】
ゲル層は、第3方向に延びる第1貫通穴を有し、底面層は、第1貫通穴に連通すると共に鉛直下方に開口する第2貫通穴を有してもよい。この場合、第1貫通穴及び第2貫通穴によって、ゲル層の上面から底面層の下面まで延びる貫通穴が形成されるので、ゲル層から底面層までの通気性をより向上させることができる。従って、枕の内部に熱を籠もりにくくすることができる。
【0011】
ル層の平面視の中央を含む領域に形成される第2凹部の深さが2cm以上であることにより、表面部とゲル層の間に形成される空間部の容積を大きく確保することができるので、通気性の更なる向上に寄与する。また、第2凹部の深さが10cm以下であることにより、第2凹部が深くなりすぎて使用者に違和感を与えることを回避することができる。
【0012】
表面層は、第1方向の中央に位置する中央部と、中央部の第1方向の両側に位置する両側部と、を有し、両側部は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する両側凸部を含んでおり、中央部は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する中央側凸部を含んでおり、中央側凸部の幅は、両側凸部の幅よりも狭くてもよい。この場合、枕の中央部に位置する中央側凸部の幅が両側凸部の幅よりも狭い。従って、中央側凸部の幅が狭いことにより、使用者の頭部が載せられたときの中央部の形状をより追従させやすくすることができる。すなわち、中央側凸部の幅が狭い場合、より多くの中央側凸部を使用者の頭部の形状に沿ってより柔軟に変形させることができるので、表層部の中央部と空間部との空気流通をより促進させることができる。従って、更なる通気性の向上に寄与する。
【0013】
ゲル層は、第1方向の中央に位置する第1肉薄部と、第1方向の両端のそれぞれに位置する第2肉薄部と、第1肉薄部及び第2肉薄部の間に位置する肉厚部とを有してもよい。この場合、第1方向の中央に位置する第1肉薄部と第1方向の両端のそれぞれに位置する第2肉薄部との間に肉厚部が設けられる。従って、第1方向の中央と両端の間にゲル層の肉厚部が設けられることにより、使用者の頬が肉厚部に当てられたときにより高いクッション性及びより高い冷涼感を使用者に感じさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、通気性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る枕を示す平面図である。
図2図2は、図1の枕における底面層を示す底面図である。
図3図3は、図1の枕における表面層の裏面を示す図である。
図4図4は、図1の枕のゲル層及び底面層を示す平面図である。
図5図5(a)は、図4のゲル層を模式的に示す平面図である。図5(b)は、図5(b)のゲル層の厚みを示す側面図である。
図6図6は、図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る枕の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、実施形態に係る枕1を示す平面図である。図1に示されるように、枕1は、第1方向D1に延びる一対の長辺1b、及び第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる一対の短辺1cを有する。枕1は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に交差する第3方向D3(図6参照)に厚みを有する。第1方向D1は、例えば、枕1の長手方向であり、第2方向D2は枕1の短手方向である。一例として、第1方向D1及び第2方向D2は互いに直交する。第3方向D3は、例えば、鉛直方向である。
【0018】
枕1は、例えば、汚れ防止のためのカバーに収容されて使用される。枕1は、枕1の第2方向D2の中央であって第1方向D1に延びる基準線L1に対して対称な形状とされている。このように、枕1が基準線L1に対して対称な形状とされていることにより、第2方向D2への向きを反対にして枕1を使用しても、反対にする前と同様に枕1を使用することができる。例えば、枕1の第2方向D2の一方側の高さが、枕1の第2方向D2の他方側の高さと異なっていてもよい。この場合、使用者の頸部の形に適するように枕1の第2方向D2への向きを変更することができる。
【0019】
枕1は、例えば、枕1の第1方向D1の中央であって第2方向D2に延びる基準線L2に対して対称な形状とされている。枕1は、例えば、平面視において蝶形を呈する。すなわち、枕1の長辺1bは、第1方向D1の両端側に向かうに従って基準線L1から離間する方向に第1方向D1に対して湾曲しながら傾斜している。
【0020】
枕1は、例えば、第1方向D1の中央に位置する中央部2と、中央部2の両端側のそれぞれに位置する一対の両側部3とを備える。一対の両側部3は、例えば、基準線L2に対して互いに対称な形状とされている。中央部2は、例えば、仰向けとなる使用者の頸部及び後頭部が載せられる部位である。両側部3は、横向き寝をする使用者の側頭部及び頬が載せられる部位である。
【0021】
図2は、枕1の底面部を示している。図1及び図2に示されるように、枕1は、鉛直上方に向けられる表面層10と、鉛直下方に向けられる底面層20と、表面層10及び底面層20の間に介在するゲル層30(図4参照)とを備える。表面層10は、例えば、底面層20の上面全体を覆うと共に、底面層20の第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれを向く側面25の外側を囲んだ状態で底面層20に貼り付けられる。すなわち、底面層20の下面20d以外の部位が表面層10に囲まれる。
【0022】
枕1では、平面視における外縁部分1dにおいて、表面層10が底面層20に貼り合わされている。例えば、平面視における枕1の外縁部分1dに表面層10と底面層20との接着部Pが形成されている。平面視における枕1の接着部Pよりも内側の領域は、例えば、表面層10と底面層20とが互いに貼り合わされていない領域である。例えば、当該貼り合わされていない領域にゲル層30が設けられる。
【0023】
表面層10、底面層20及びゲル層30は、共に柔軟性素材によって構成されている。例えば、表面層10は、枕1の表面側に位置する第1層11と、第1層11の裏側(下側)に一致する第2層12とを有する。第1層11は、格子状に配列された複数の凸部13を形成している。
【0024】
例えば、凸部13は、頂点と、当該頂点から斜め下方に傾斜する4つの傾斜面とを有する四角錐状を呈する。第1層11は、例えば、無膜ウレタンフォームで構成されている。この場合、無膜ウレタンフォームは高い通気性を有するため、表面層10の通気性の向上に寄与する。第2層12は、例えば、反発弾性が15%~50%のウレタンフォームによって構成されている。
【0025】
凸部13は、例えば、ウレタンフォームの2次元カット加工によって形成される。この凸部13によって、体圧分散性に優れた枕1とすることが可能である。凸部13は、中央部2に配置された中央側凸部13bと、両側部3に配置された両側凸部13cとを含む。例えば、平面視において、両側凸部13cは正方形状とされており、中央側凸部13bは第2方向D2に沿った長辺を有する長方形状とされている。
【0026】
平面視における両側凸部13cの幅は、平面視における中央側凸部13bの幅よりも広い。これにより、使用者が寝返りを打って横向き寝をしたときに柔らかい感触を感じさせることが可能となる。中央側凸部13bの幅は、両側凸部13cの幅よりも狭い。これにより、中央部2に使用者の頭部が載せられたときに、複数の中央側凸部13bの形状を頭部の形状に追従させやすくすることが可能である。
【0027】
具体的には、中央側凸部13bの幅が両側凸部13cの幅より狭いことにより、頭部が載せられたときの複数の中央側凸部13bの形状が当該頭部の形状により近くなる。中央側凸部13bの幅が両側凸部13cの幅より狭いことにより、中央側凸部13bの密度を高めることができるので、中央部2の耐久性を高めることができると共に底付き感を低減できる。
【0028】
中央部2は、第2方向D2の中央に位置する中央領域2Aと、第2方向D2の両端のそれぞれに位置する両側領域2Bとを含んでいる。一例として、中央領域2Aでは66個(6×11)の中央側凸部13bが形成されており、両側領域2Bでは44個(4×11)の中央側凸部13bが形成されている。両側領域2Bの一部の中央側凸部13bは、表面層10の第2方向D2の側面方向に回り込んでいる。
【0029】
中央領域2Aと両側領域2Bの間には第1方向D1に沿って延びる凹部14が形成されており、凹部14では第2層12が露出している。凹部14には、表面層10を第3方向D3に貫通する複数の貫通穴15が形成されている。この貫通穴15によって表面層10の第3方向D3における通気性が確保されている。
【0030】
一例として、中央側凸部13bの第2方向D2側に貫通穴15が形成されている。中央部2において、第1方向D1に沿って並ぶ貫通穴15の間隔は、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ中央側凸部13bの間隔の2倍である。複数の貫通穴15は、第2方向D2に延びる長穴15bと、長穴15bよりも第1方向D1の長さが長い幅広穴15cとを含む。
【0031】
両側部3は、第2方向D2の中央に位置する中央領域3Aと、第2方向D2の両端のそれぞれに位置する両側領域3Bとを含んでいる。一例として、中央領域3Aでは54個(6×9)の両側凸部13cが形成されており、両側領域3Bでは36個(4×9)の両側凸部13cが形成されている。一部の両側凸部13cは、表面層10の第1方向D1及び第2方向D2の側面方向に回り込んでいる。
【0032】
中央領域3Aと両側領域3Bとの間には凹部14が形成されている。両側部3において、第1方向D1に沿って並ぶ貫通穴15の間隔は、例えば、第1方向D1に沿って並ぶ両側凸部13cの間隔と同一である。すなわち、両側部3の貫通穴15の数は、中央部2の貫通穴15の数よりも多く、例えば、中央部2の貫通穴15の数の2倍である。
【0033】
図3は、第2層12の裏側(下側、第1層11との反対側)を示す平面図である。図1及び図3に示されるように、例えば、長穴15b及び幅広穴15cのそれぞれは、第2層12の裏面12bにおいて、第2方向D2に延びる溝12cを形成している。中央側凸部13bの裏側には第2方向D2に延びる溝12cが形成されている。
【0034】
溝12cは、長穴15bの裏側に位置する細溝12dと、幅広穴15cの裏側に位置する太溝12fとを含んでいる。また、第2層12の裏面12bには、第1方向D1に沿って延びる複数の横溝12gが形成されている。このように、第2層12の裏面12bには、第2方向D2に沿って延びる複数の溝12cと、第1方向D1に沿って延びる複数の横溝12gとを有することにより、格子状に配列された複数の凸部12hが形成されている。
【0035】
図4は、底面層20及びゲル層30(表面層10が外された状態の枕1)を示す平面図である。図4に示されるように、底面層20は、平面視の中央において窪む第1凹部51(図6参照)を有し、ゲル層30は第1凹部51に倣って形成される第2凹部52を有する。以下では、第1凹部51及び第2凹部52をまとめて凹部50として説明する。
【0036】
凹部50の深さは、例えば、平面視における底面層20及びゲル層30の外縁から中央に向かうに従って深くなっている。凹部50は、例えば、球面状に湾曲している。底面層20は、例えば、モールドウレタンフォームによって構成されている。例えば、底面層20は表面層10よりも硬い。これにより、表面層10に載せられた使用者の頭部を底面層20においてしっかりと支えることが可能である。平面視における底面層20の形状は、例えば、蝶形とされており、平面視におけるゲル層30の形状も蝶形である。
【0037】
ゲル層30は、フィルムFによって底面層20の上面20cに貼り付けられている。ゲル層30の材料は、例えば、ウレタンゲルである。一例として、ゲル層30は、フィルムFに液状のウレタンゲルが流し込まれ、当該ウレタンゲルが固化することによって作製される。
【0038】
ゲル層30は、高い体圧分散及び高い冷涼性を有し、ゲル層30に触れることによってひんやりとした感覚を得ることが可能である。本実施形態では、ゲル層30の作製時に用いたフィルムFを、底面層20に貼り付けるためのフィルムFとして兼用しており、フィルムFを有効活用している。
【0039】
図2及び図4に示されるように、ゲル層30は第3方向D3に貫通する第1貫通穴41を有し、底面層20は第3方向D3に貫通する第2貫通穴42を有する。第2貫通穴42は、底面層20の下面20dに開口している。第1貫通穴41及び第2貫通穴42は互いに連通しており、第1貫通穴41は第2貫通穴42の上方に位置する。平面視における第1貫通穴41及び第2貫通穴42の位置は互いに同一である。以下では、第1貫通穴41及び第2貫通穴42をまとめて貫通穴40として説明する。
【0040】
貫通穴40の数は、例えば、10以上且つ50以下であり、20以上且つ40以下であってもよい。底面層20及びゲル層30において、複数の貫通穴40は、例えば、分散して配置されている。本開示において、「複数の貫通穴が分散して配置される」ことには、複数の貫通穴が千鳥状に配列された状態、複数の貫通穴が格子状に配列された状態、複数の貫通穴が放射状に配列された状態、及び、複数の貫通穴が同心円状に配列された状態、を含んでいる。本実施形態では、複数の貫通穴40のそれぞれは、ゲル層30の上面31に形成された複数の溝32の交差部分Xに配置されている。
【0041】
図5(a)は、ゲル層30の上面31における溝32及び貫通穴40の配置を示す平面図である。図5(b)は、ゲル層30の部分ごとの厚さ(第3方向D3の長さ)を示す図である。図5(a)及び図5(b)に示されるように、溝32は、第1方向D1に延びる第1溝32bと、第2方向D2に延びる複数の第2溝32cとを含んでいる。第1溝32b及び第2溝32cの複数の交差部分Xの一部に貫通穴40が形成されている。平面視における貫通穴40の形状は、円形状とされている。
【0042】
例えば、第2方向D2に沿って複数の第1溝32bが並んでいる。複数の第1溝32bのうちの1つは、基準線L1に沿って直線状に延びている。残りの複数の第1溝32bは、ゲル層30の第1方向D1の両端側に向かうに従って第2方向D2の両端側に湾曲している。
【0043】
ゲル層30の第2方向D2の端部に位置する第1溝32bは、ゲル層30の蝶形の形状に倣って延在している。第1溝32bの数は、例えば、7である。複数の第2溝32cのそれぞれは、例えば、第2方向D2に沿って延在している。第1方向D1に沿って並ぶ第2溝32cの間隔は、ゲル層30の第1方向D1の中央から端部側に向かうに従って広くなっている。第2溝32cの数は、例えば、13である。
【0044】
以上のように、第1溝32b及び第2溝32cが配列されていることにより、ゲル層30には、第1溝32b及び第2溝32cによって画成される凸部33が格子状に形成されている。凸部33は、ゲル層30の溝32が形成されている部分よりも厚い部分を示している。凸部33は、例えば、第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれに沿って並んでいる。凸部33の幅(第1方向D1の長さ)は、ゲル層30の第1方向D1の中央から端部側に向かうに従って広くなっている。
【0045】
凸部33は、ゲル層30の第1方向D1の中央に位置する複数の第1肉薄部34と、ゲル層30の第1方向D1の端部に位置する第2肉薄部38と、第1肉薄部34及び第2肉薄部38の間に位置する肉厚部36とを含む。更に、凸部33は、第1肉薄部34及び肉厚部36の間に位置する第1中間部35と、肉厚部36及び第2肉薄部38の間に位置する第2中間部37と、を含む。
【0046】
図5(b)に示されるように、第1肉薄部34は第1中間部35よりも薄く、第1中間部35は肉厚部36よりも薄い。肉厚部36は第2中間部37よりも厚く、第2中間部37は第2肉薄部38よりも厚い。本実施形態では、肉厚部36が最も厚く、第1中間部35及び第2中間部37が次に厚く、第1肉薄部34及び第2肉薄部38が最も薄い。
【0047】
例えば、第1肉薄部34の厚さ、及び第2肉薄部38の厚さは、互いに同一であり、第1中間部35の厚さ、及び第2中間部37の厚さは、互いに同一である。第1肉薄部34の厚さ、及び第2肉薄部38の厚さを厚さT1、第1中間部35の厚さ、及び第2中間部37の厚さを厚さT2、肉厚部36の厚さを厚さT3、とすると、例えば、厚さT1の値は3mm、厚さT2の値は4mm、厚さT3の値は5mmである。
【0048】
図6は、枕1の中央部2における図1のA-A線断面図である。図6では、凸部13の図示を簡略化している。図6に示されるように、中央部2において、表面層10とゲル層30との間には空間部Cが形成される。空間部Cは、表面層10の裏面12bとゲル層30の第2凹部52とによって画成される。使用者の頭部等の荷重がかかっていない状態において、中央部2では、空間部Cによって表面層10がゲル層30から浮いた状態とされている。
【0049】
例えば、ゲル層30の最も高い部位に対する第2凹部52の底部52bの深さEは、2cm以上且つ10cm以下である。深さEの下限は、3cm又は4cmであってもよい。深さEの上限は9cm、8cm、7cm又は6cmであってもよい。一例として、深さEは5cmである。
【0050】
すなわち、中央部2において表面層10はゲル層30及び底面層20から離間している。複数の貫通穴40の一部は空間部Cに連通している。また、前述したように、表面層10は第3方向D3に貫通する貫通穴15を有する。従って、枕1では、貫通穴40、空間部C及び貫通穴15を通る空気流路Rが形成される。
【0051】
次に、本実施形態に係る枕1から得られる作用効果について詳細に説明する。枕1は、鉛直上方に向けられる表面層10と、鉛直下方に向けられる底面層20と、表面層10及び底面層20の間に介在するゲル層30とを備え、表面層10、底面層20及びゲル層30は柔軟性素材によって構成されている。ゲル層30は、柔らかく高い体圧分散及び高い熱伝導性を有すると共に、高い冷涼感を発揮する。従って、枕1に使用者の頭部が載せられると、表面層10を介してゲル層30が頭部に接触することにより、高いクッション性と共に高い冷涼感を使用者に感じさせることができる。
【0052】
枕1では、平面視における外縁部分1dにおいて表面層10が底面層20に貼り合わされており、平面視における中央部分において、表面層10は、接着されておらず、空間部Cを介してゲル層30から浮いた状態となる。従って、使用者の頭部が枕1の平面視における中央部分に載せられると、表面層10が大きく変形するので高いクッション性を感じさせることができる。
【0053】
また、頭部の荷重を受けて表面層10が変形するときに、空気が空気流路Rを通ると共に空間部Cの空気が表面層10を介して枕1の外部に抜け出るので、通気性を高めることができる。そして、表面層10への頭部の荷重が解除されたときに、表面層10の変形が元に戻って再度空間部Cが形成される。従って、空間部Cにおける表面層10の変形を繰り返すことにより、枕1に対する空気流通を促進させることができるので、クッション性を高めると共に通気性を向上させることができる。また、通気性を向上させることにより、頭部に接触して暖まったゲル層の温度を下げることができる。
【0054】
図4に示されるように、ゲル層30は、表面層10側を向く上面31に溝32を有してもよい。この場合、ゲル層30の上面31に溝32が形成されるので、溝32をゲル層30の上面31の空気流路とすることができる。すなわち、ゲル層30の上面31の溝32に空気を流しやすくすることができるので、通気性をより高めることができる。また、通気性を向上させることにより、頭部に接触して暖まったゲル層の温度を下げることができる。
【0055】
図2及び図4に示されるように、ゲル層30は、第3方向D3に延びる第1貫通穴41を有し、底面層20は、第1貫通穴41に連通すると共に鉛直下方に開口する第2貫通穴42を有してもよい。この場合、第1貫通穴41及び第2貫通穴42によって、ゲル層30の上面31から底面層20の下面20dまで延びる貫通穴40が形成されるので、ゲル層30から底面層20までの空気流路Rを確保して通気性をより向上させることができる。従って、枕1の内部に熱を籠もりにくくすることができる。
【0056】
底面層20は、平面視の中央を含む領域において鉛直下方に窪む第1凹部51を有し、ゲル層30は、第1凹部51に倣って形成される第2凹部52を有し、第2凹部52の底部52bの深さEは、2cm以上且つ10cm以下であってもよい。この場合、ゲル層30の平面視の中央を含む領域に形成される第2凹部52の深さEが2cm以上であることにより、表面層10とゲル層30との間に形成される空間部Cの容積を大きく確保することができるので、通気性の更なる向上に寄与する。また、第2凹部52の深さEが10cm以下であることにより、第2凹部52が深くなりすぎて使用者に違和感を与えることを回避することができる。
【0057】
図1に示されるように、表面層10は、第1方向D1の中央に位置する中央部2と、中央部2の第1方向D1の両側に位置する両側部3と、を有し、両側部3は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する両側凸部13cを含んでおり、中央部2は、鉛直上方に向けられると共に平面視において長方形状を呈する中央側凸部13bを含んでおり、中央側凸部13bの幅は、両側凸部13cの幅よりも狭くてもよい。
【0058】
この場合、枕1の中央部2に位置する中央側凸部13bの幅が両側凸部13cの幅よりも狭い。従って、中央側凸部13bの幅が狭いことにより、使用者の頭部が載せられたときに中央部2をより頭部の形状に追従させやすくすることができる。すなわち、中央側凸部13bの幅が狭い場合、より多くの中央側凸部13bを使用者の頭部の形状に沿ってより柔軟に変形させることができるので、表面層10の中央部2と空間部Cとの空気流通をより促進させることができる。従って、更なる通気性の向上に寄与する。
【0059】
図5(a)及び図5(b)に示されるように、ゲル層30は、第1方向D1の中央に位置する第1肉薄部34と、第1方向D1の両端のそれぞれに位置する第2肉薄部38と、第1肉薄部34及び第2肉薄部38の間に位置する肉厚部36とを有してもよい。この場合、第1方向D1の中央に位置する第1肉薄部34と第1方向D1の両端のそれぞれに位置する第2肉薄部38の間にゲル層30の肉厚部36が設けられる。従って、第1方向D1の中央と両端の間にゲル層30の肉厚部36が設けられることにより、使用者の頬が肉厚部36に当てられたときにより高いクッション性及びより高い冷涼感を使用者に感じさせることができる。
【0060】
以上、本開示に係る枕の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る枕は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形されたものであってもよい。すなわち、枕の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0061】
例えば、前述の実施形態では、蝶形を呈する枕1について説明した。しかしながら、枕の外形は、例えば直方体状等、蝶形以外の形状であってもよい。また、前述の実施形態では、ウレタンフォームの2次元カット加工によって形成された複数の凸部13及び凹部14を有する表面層10を備えた枕1について例示した。しかしながら、枕の凸部及び溝の形状、大きさ、数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。枕の穴の形状、大きさ、数及び配置態様も前述の実施形態の例に限られず適宜変更可能である。更に、凹凸を有しない枕であってもよい。
【0062】
また、前述の実施形態では、無膜ウレタンフォームで構成された第1層11、及び反発弾性が15%~50%のウレタンフォームで構成された第2層12を備えた表面層10、モールドウレタンフォームによって構成された底面層20、並びに、ウレタンゲルによって構成されたゲル層30、について例示した。しかしながら、表面層、底面層及びゲル層の構成及び材料は、上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0063】
また、前述の実施形態では、上面31に格子状の溝32及び円形状の第1貫通穴41を有するゲル層30について例示した。しかしながら、ゲル層の溝及び貫通穴の形状、大きさ、数及び配置態様は上記の例に限られず適宜変更可能である。更に、本開示に係る枕は、溝及び貫通穴の少なくともいずれかを有しないゲル層を備えた枕であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…枕、1b…長辺、1c…短辺、1d…外縁部分、2…中央部、2A…中央領域、2B…両側領域、3…両側部、3A…中央領域、3B…両側領域、10…表面層、11…第1層、12…第2層、12b…裏面、12c…溝、12d…細溝、12f…太溝、12g…横溝、12h,13…凸部、13b…中央側凸部、13c…両側凸部、14…凹部、15…貫通穴、15b…長穴、15c…幅広穴、20…底面層、20c…上面、20d…下面、25…側面、30…ゲル層、31…上面、32…溝、32b…第1溝、32c…第2溝、33…凸部、34…第1肉薄部、35…第1中間部、36…肉厚部、37…第2中間部、38…第2肉薄部、40…貫通穴、41…第1貫通穴、42…第2貫通穴、50…凹部、51…第1凹部、52…第2凹部、52b…底部、C…空間部、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、F…フィルム、L1,L2…基準線、P…接着部、R…空気流路、X…交差部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6