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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】硫酸基を有する糖の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 11/00 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
C07H11/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018504533
(86)(22)【出願日】2017-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2017009106
(87)【国際公開番号】W WO2017154938
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2016045534
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512088316
【氏名又は名称】株式会社糖鎖工学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】梶原 康宏
(72)【発明者】
【氏名】満保 章泰
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健文
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-16704(JP,A)
【文献】特開平6-298805(JP,A)
【文献】特開平6-322002(JP,A)
【文献】国際公開第2002/103025(WO,A1)
【文献】特開2001-19698(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080603(WO,A1)
【文献】特開平2-191601(JP,A)
【文献】T.Yoshida 外5名、Carbohydrate Research、2001年、335、p.167~180
【文献】M.R.Pratt 外1名、Organic Letters、2004年、Vol.6、No.14、p.2345~2348
【文献】F.Belot 外3名、Tetrahedron Letters、2002年、43、p.7743~7747
【文献】A.Lubineau 外3名、Carbohydrate Research、1998年、305、p.501~509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H11/00
CASREACT STN
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580 JDREAMIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸基を有する酸素で連なったを製造する方法であって、
(a)「無保護の硫酸基を有する第1の糖」と、「無保護の硫酸基を有する第2の糖」を調製するステップ、及び、
(b)上記ステップ(a)で調製された第1の糖と第2の糖と酸の存在下で互いに縮合させるステップ
を含み、
ここで、前記第1の糖および前記第2の糖が、下記式で表され、
【化1】
[式中、
Lは脱離基であり;
Aは、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である]
前記酸は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチル(メチルチオ)スルホニウム(DMTST)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリプロピルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルシリル又はトリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルメチルシリル、およびトリフルオロメタンスルホン酸銀から選択される、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記第1の糖および前記第2の糖は同一の糖である、
方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法であって、
式中、
Aは、-CH-Rであり;
2~Rは、無保護の硫酸基、保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、
但し、R2~R4の少なくとも一つは、無保護の硫酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基である;
方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法であって、
前記糖残基は、グルクロン酸残基である、
方法。
【請求項5】
請求項3に記載の製造方法であって、
前記糖残基は、糖の2位炭素原子に硫酸基を有するグルクロン酸残基である、
方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の製造方法であって、
前記第1の糖および前記第2の糖が、下記式で表される、
【化2】
[式中、
Lは脱離基であり;
AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である]
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法であって、
式中、
Aは、-CH-Rであり;
Bは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
2~Rは、それぞれ独立に、無保護の硫酸基、および保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、
但し、R2~Rの少なくとも一つは、無保護の硫酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基である;
方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法であって、
2糖~100糖の多糖の製造方法である、
方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法であって、
コンドロイチン硫酸またはヘパラン硫酸の製造方法である、
方法。
【請求項10】
硫酸基を有する酸素で連なったを含む化合物を製造する方法であって、
(a1)「無保護の硫酸基を有する第1の糖」を調製するステップ、及び、
(b1)上記ステップ(a1)で調製された第1の糖と、「求核性基を有する化合物」とを酸の存在下で縮合させるステップを含み、
前記第1の糖が、下記式に示す構造を有する化合物であり、
【化3】
[式中、
Lは脱離基であり;
Aは、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基を有する]、
前記酸は、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチル(メチルチオ)スルホニウム(DMTST)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリプロピルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルシリル又はトリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルメチルシリル、およびトリフルオロメタンスルホン酸銀から選択される、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法であって、
(c1)前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基を有する糖を含む化合物」と、
「無保護の硫酸基を有する糖」、「求核性基を有する化合物」、および、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基を有する糖を含む化合物」から選択される化合物とを、さらに縮合させるステップ
を含む、
方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の製造方法であって、
求核性基を有する化合物は、糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、及び、これらの誘導体から選択される、
方法。
【請求項13】
請求項10に記載の製造方法であって、
式中、
Aは、-CH-Rであり;
は、無保護の硫酸基、保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され;
は、無保護の硫酸基、及び、保護または無保護の水酸基から選択され;
但し、RおよびRの少なくとも一方は、無保護の硫酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基であり;および
は、無保護の水酸基または糖残基である;
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖、または前記糖を含む化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸基を分子内に含有する糖は、様々な生理作用を有し得ることが知られている。例えば、グリコサミノグリカンの一種であるコンドロイチン硫酸やデルマタン硫酸は、プロテオグリカンの側鎖として細胞表面や細胞外マトリックスに存在し、硫酸化二糖単位の配列の違いによって種々の機能ドメインを形成し、多様な生理機能を発揮することが知られている。これら硫酸化糖は、生体内においてごく微量で種々の生理活性を示す多くのサイトカインや増殖因子と親和性が高く、これらの因子の局在化を生じ、種々の生理作用を促進していると考えられている。
【0003】
これまでに、このような硫酸化糖の製造方法として、サメ軟骨などの天然物から回収する方法、硫酸化試薬を用いる方法(特許文献1~4)、酵素を用いる方法(特許文献5~7)、化学合成による方法(特許文献8および9)などが開発されている。しかし、これらの方法はいずれも、製造される硫酸化糖の構造の均一性、製造効率などの点で、必ずしも十分ではない。
【0004】
例えば、天然物から硫酸化糖を回収する場合、一般的に、得られる硫酸化糖の構造は不均一であり、また、混在する不純物の制御も困難であると考えられる。硫酸化試薬を用いる方法は、反応性が低く、効率的な硫酸化が困難である。
【0005】
酵素を用いる方法は、硫酸基の導入位置や使用される基質が限定されるなどの問題があり、また、使用される酵素も高価であることから、経済的な方法であるとは言えない。また、硫酸基を有する糖から化学合成によって調製する場合、硫酸基の保護が必要である一方、硫酸基の保護および脱保護は困難であり、特に、硫酸基の脱保護は、目的とする糖が高分子であるほどいっそう困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-007643号
【文献】特開2007-332226号
【文献】特開2005-232064号
【文献】特開平06-065273号
【文献】再表02/103025号
【文献】特開2001-019698号
【文献】特開平09-263595号
【文献】特開2014-047155号
【文献】再表2013/141350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、分子内に硫酸基および/またはリン酸基を有する糖、または前記糖を含む化合物を、効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明はまた、分子内に硫酸基および/またはリン酸基を有する均一な構造の糖を、効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、特に、従来は合成が困難であるとされていた、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む長鎖の化合物を、効率的に製造することを可能にする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。化学合成を用いる従来法は、所望の位置に硫酸基を有する糖供与体および糖受容体を調製し合成するため、製造する硫酸化糖の構造を制御することができ、したがって均一な構造の硫酸化糖を製造するのに有効である。しかし、化学合成において、糖供与体または糖受容体の少なくともいずれかに硫酸基を有する糖を縮合(グリコシル化)に用いる場合には、硫酸基の保護が必要であると考えられていた。これが従来法を複雑にし、硫酸化糖を含有する化合物の製造経路、製造できる化合物のバリエーションを制限していた。したがって、構造が制御された長鎖の硫酸化糖を含有する化合物の製造は実質的には不可能であった。また、保護硫酸基は、電子吸引性を有することから、脱離基としての機能も有し、使用可能な保護基、反応経路を制限するという問題があった。
【0009】
そこで本発明者らは、あえて、分子内に無保護の硫酸基を有する糖を用いて縮合反応を行ったところ、意外にも、硫酸基を無保護のまま反応に用いても、構造的に制御された硫酸化糖またはこれを含有する化合物の製造が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の製造方法は、従来の保護硫酸基を利用する方法と比較して、硫酸基に脱離基としての機能はないため、利用可能な保護基、反応経路が飛躍的に増加する。したがって、硫酸化糖またはこれを含有する化合物を従来よりも簡便に効率よく製造でき、従来は合成が困難であったタイプの硫酸化糖またはこれを含有する化合物の合成も可能となる。本発明の製造方法は、さらに、長鎖(例えば10糖~100糖程度)の均一な構造の硫酸化糖またはこれを含有する化合物を合成する上で有用である。
【0011】
本発明は、また、硫酸基を有する糖だけではなく、リン酸基を有する糖を、無保護のリン酸基を有する糖供与体または糖受容体から調製する方法にそのまま応用することができる。
【0012】
したがって、本発明は、一態様において、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を製造する方法を提供する。この製造方法は、一実施形態において、以下のステップ:
(a)「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する第1の糖」と、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する第2の糖」を調製するステップ、及び、
(b)上記ステップ(a)で調製された第1の糖と第2の糖と互いに縮合させるステップ、
を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖が、糖の1位炭素原子に脱離基を有し、かつ、求核性基を有する糖であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖は同一の糖であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一実施形態においては、求核性基は、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖が、6員環を構成する糖であり、糖の1位炭素原子に脱離基を有し、少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに求核性基を有し、少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖が、6員環を構成する糖であり、糖の1位炭素原子に脱離基を有し、少なくとも糖の3位または4位のいずれかに求核性基を有し、少なくとも糖の2位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖が、下記式で表されることを特徴とする。
【化1】
[式中、
Lは脱離基であり;
Aは、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である]
【0019】
また、本発明の一実施形態においては、前記式中、
Aは、-CH-Rであり;
2~Rは、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、
但し、R2~R4の少なくとも一つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基である
ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一実施形態においては、前記糖残基は、グルクロン酸残基であることを特徴とする。本発明の別の実施形態においては、前記糖残基は、糖の2位炭素原子に硫酸基を有するグルクロン酸残基であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の別の実施形態においては、前記第1の糖および前記第2の糖が、下記式で表されることを特徴とする。
【化2】
[式中、
Lは脱離基であり;
AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である]
【0022】
また、本発明の一実施形態においては、前記式中、
Aは、-CH-Rであり;
Bは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
2~Rは、それぞれ独立に、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、および保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、
但し、R2~Rの少なくとも一つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基である;
ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の一実施形態においては、本発明の製造方法は、2~100糖の多糖の製造方法であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の一実施形態においては、本発明の製造方法は、コンドロイチン硫酸またはヘパラン硫酸の製造方法であることを特徴とする。
【0025】
別の態様において、本発明は、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物を製造する方法に関する。この製造方法は、以下のステップ:
(a1)「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する第1の糖」を調製するステップ、及び、
(b1)上記ステップ(a1)で調製された第1の糖と、「求核性基を有する化合物」とを縮合させるステップを含む、
ことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖が、糖の1位に脱離基を有する糖であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の一実施形態においては、(c1)前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」、「求核性基を有する化合物」、および、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」から選択される化合物とを、さらに縮合させるステップを含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の一実施形態においては、前記求核性基は、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択されることを特徴とする。また、本発明の一実施形態においては、前記求核性基を有する化合物は、糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、及び、これらの誘導体から選択されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の一実施形態においては、前記「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」が、6員環を構成する糖であり、糖の1位炭素原子に脱離基を有し、少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに求核性基を有し、少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖が、6員環を構成する糖であり、糖の1位炭素原子に脱離基を有し、少なくとも糖の3位または4位のいずれかに求核性基を有し、少なくとも糖の2位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基を有することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の一実施形態においては、前記第1の糖が、下記式に示す構造を有する化合物であることを特徴とする。
【化3】
[式中、
Lは脱離基であり;
Aは、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基を有する]
【0032】
また、本発明の一実施形態においては、前記式中、
Aは、-CH-Rであり;
は、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され;
は、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、及び、保護または無保護の水酸基から選択され、
但し、RおよびRの少なくとも一方は、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基であり;および
は、無保護の水酸基または糖残基である;
ことを特徴とする。
【0033】
以上述べた本発明の一又は複数の特徴を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれることを、当業者であれば理解するであろう。
【発明の効果】
【0034】
本発明の製造方法によれば、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖、または前記糖を含む化合物を、効率的に製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、分子内に硫酸基および/またはリン酸基を有する均一な構造の糖を、効率的に製造することができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖、または前記糖を含む化合物を製造するための反応経路、および利用可能な保護基が飛躍的に増加するため、硫酸化糖および/またはリン酸化糖を含有する化合物を従来よりも簡便に効率よく製造することができる。本発明の製造方法によれば、さらに、従来は製造が困難であるとされていた、長鎖の均一な構造の硫酸化糖および/またはリン酸化糖、またはこれを含有する化合物を合成する上で有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書中において、「糖」または「糖残基」とは、単位糖(単糖及び/又はその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物(本明細書中「糖鎖」とも称する)をいう。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される単糖類及び多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれらの複合体及び誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解又は誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。
【0036】
また、本明細書中において、「糖」または「糖残基」には糖の誘導体も含まれる。糖の誘導体としては、糖の任意の炭素原子の水酸基が他の置換基によって置換されたもの、保護基やその他の置換基が結合することにより誘導体化されたものが含まれ、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシル基を有する糖(例えば、C-1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D-グルコースが酸化されたD-グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(例えば、D-グルコースが酸化されたD-グルクロン酸))、アミノ基又はアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミンなど)、アミノ基及びカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N-アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N-アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2-デオキシ-D-リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
本明細書中、硫酸基を含む糖は、「硫酸化糖」とも記載され、リン酸基を含む糖は、「リン酸化糖」とも記載される。また、硫酸基とリン酸基の両方を有する糖は、「硫酸化/リン酸化糖」とも記載される。
【0038】
本発明において、特に、製造対象である硫酸化糖、リン酸化糖、および硫酸化/リン酸化糖について使用される「均一な構造」とは、縮合(または重合)されるこれらの糖または化合物の構成単位である糖骨格の、硫酸基の位置および数、構成する糖の種類、および糖間の結合様式が同一であることをいう。
【0039】
なお、本明細書中、「糖」、「糖残基」および「アミノ酸」に関し、D-体及びL-体を区別することなく記載されている場合には、いずれの立体異性体も含むものと解釈される。
【0040】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0041】
本発明は、一態様において、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を製造する方法に関し、当該方法は、以下のステップ:
(a)「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する第1の糖」と、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する第2の糖」を調製するステップ、及び、
(b)上記ステップ(a)で調製された第1の糖と第2の糖とを互いに縮合させるステップを含むことを特徴とする。
本明細書中において、本発明の製造方法の原料として使用される「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」は、任意の炭素原子の置換基に、少なくとも1つの硫酸化された水酸基(-O-SOH、-O-SO 、-O-SONa、または-O-SOmetal)またはリン酸化された水酸基(-O-POまたは-O-PO 2-)を、保護基を含まない状態で有する、任意の糖を指す。なお、本明細書中、「硫酸基」と「硫酸化された水酸基」、および「リン酸基」と「リン酸化された水酸基」は、相互に交換可能に使用される。
【0042】
本発明の方法において、第1の糖および第2の糖は、いずれか一方が糖供与体として機能し、いずれか一方が糖受容体として機能するものとして定義される。この関連で、第1の糖が糖供与体として機能し、かつ、第2の糖が糖受容体として機能してもよいし、あるいはその逆であってもよい。また、第1の糖および第2の糖は、それぞれ、単糖であってもよいし、二糖、三糖、四糖またはそれ以上の糖骨格を有するものであってもよい。
【0043】
糖供与体としての機能は、糖がその任意の炭素原子の位置に脱離基を有することにより、保持される。本発明の特定の実施形態では、糖供与体として機能する「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する(第1のまたは第2の)糖」は、1位の炭素原子の位置に脱離基を有する糖である。この実施形態において、糖供与体として機能する前記糖が、二糖以上の糖骨格を有する場合には、前記糖供与体は、還元末端の1位の炭素原子の位置に脱離基を含む。
【0044】
一方、糖受容体としての機能は、糖がその任意の炭素原子の位置に求核性基を有することにより保持される。本発明でいう求核性とは、ルイス酸の陽イオン元素と反応しやすい性質を指す。本発明において、求核性基はこのような性質を有している官能基であれば特に制限されない。本発明において、前記求核性基は、特に、水酸基、アミノ基またはチオール基から選択される官能基である。
【0045】
本発明の一実施形態において、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する(第1のまたは第2の)糖」は、糖供与体としての機能と、糖受容体としての機能の両方を有していてもよい。この場合、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する(第1のまたは第2の)糖」は、脱離基と、求核性基の両方を有している。本発明の一実施形態において、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する(第1のまたは第2の)糖」は、1位の炭素原子の位置に脱離基を有し、かつ、求核性基を有する糖である。
【0046】
本発明において、第1の糖と第2の糖は、同一の糖であってもよいし、異なる糖であってもよい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、第1の糖と第2の糖は、それぞれ、以下の性質を有する:
-6員環を構成する;
-糖の1位炭素原子に脱離基を有する;
-少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに求核性基を有する;および
-少なくとも糖の2位、3位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基または無保護のリン酸基を少なくとも一つ有する。
好ましくは、第1の糖および第2の糖は、糖の3位または4位のいずれかに求核性基を有する、および/または、少なくとも糖の2位、4位、または6位のいずれかに無保護の硫酸基または無保護のリン酸基を有する。
【0048】
本発明のさらに好ましい実施形態において、第1の糖と第2の糖は、それぞれ、下記式で表される糖である。
【化4】
上記式中:
Lは脱離基であり;
Aは、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である。
好ましい実施形態では、Aは、-CH-Rであり、RおよびRのいずれか一方は、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基である。別の好ましい実施形態では、Aは、-CH-Rであり、RおよびRの両方が、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基である。
好ましい実施形態では、式中のRは、保護または無保護のアミノ基である。
好ましい実施形態では、式中のRは、無保護の水酸基または糖残基である。
特に好ましい実施形態では、上記式中:
Aは、-CH-Rであり;
は、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され;
は、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、及び、保護または無保護の水酸基から選択され、
但し、RおよびRの少なくとも一方は、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
は、保護または無保護のアミノ基であり;かつ
は、無保護の水酸基または糖残基である。
そのような糖には、これに限定されるものではないが、例えば無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を含む、グルコサミン、ガラクトサミン、およびこれらに任意の糖残基が結合した化合物が含まれる。
本発明の特に好ましい実施形態では、Rは、グルクロン酸残基である。そのような糖には、これに限定されるものではないが、例えば、コンドロイチン4-硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6-硫酸(コンドロイチン硫酸C)、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、およびヘパラン硫酸から選択されるグリコサミノグリカンの構成単位である二糖が含まれる。
本発明の別の好ましい実施形態では、Rは、糖の2位炭素原子に硫酸基を有するグルクロン酸残基である。そのような糖には、これに限定されるものではないが、例えば、コンドロイチン硫酸Dなどのグリコサミノグリカンの構成単位である二糖が含まれる。
本発明のさらに好ましい実施形態では、第1の糖と第2の糖は、同一の糖である。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態において、第1の糖と第2の糖はそれぞれ、下記式で表される糖である。
【化5】
式中、
Lは脱離基であり;
AおよびBは、それぞれ独立に、水素原子、保護または無保護のカルボキシル基、保護または無保護のアミド基、および-CH-Rからなる群から選択され;
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、保護または無保護の水酸基、保護または無保護のアミノ基、保護または無保護のチオール基、および糖残基からなる群から選択され;
~Rの少なくとも1つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
~Rの少なくとも1つは、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される求核性基である。
なお、上記実施形態において、AおよびBの両方が-CH-Rである場合、A中のRとB中のRとは、互いに同一であっても、異なってもよい。
好ましい実施形態では、Aは、-CH-Rであり、および/または、Bは、保護または無保護のカルボキシル基である。好ましくは、Aは、-CH-Rであり、かつ、R、RおよびRのいずれか1つまたは2つが、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基である。好ましくは、RおよびRは、保護または無保護の水酸基である。
別の好ましい実施形態では、Aは、保護または無保護のカルボキシル基であり、および/または、Bは、-CH-Rである。好ましくは、Bは、-CH-Rであり、かつ、R、RおよびRのいずれか1つまたは2つが、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基である。好ましくは、RまたはRは、保護または無保護の水酸基である。
別の好ましい実施形態では、上記式中:
Aは、-CH-Rであり;
Bは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
2~Rは、それぞれ独立に、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、および保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、但し、R2~Rの少なくとも一つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
は、保護または無保護のアミノ基である。
別の好ましい実施形態では、上記式中:
Aは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
Bは、-CH-Rであり;
2~Rは、それぞれ独立に、無保護の硫酸基、無保護のリン酸基、および保護または無保護の水酸基、及び、糖残基から選択され、但し、R2~Rの少なくとも一つは、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;かつ
は、保護または無保護のアミノ基である。
特に好ましい実施形態では、上記式中:
Aは、-CH-Rであり;
Bは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
、RおよびRのいずれか1つまたは2つが、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
およびRは、保護または無保護の水酸基であり;かつ
は、保護または無保護のアミノ基である。
特に好ましい別の実施形態では、上記式中:
Aは、保護または無保護のカルボキシル基であり;
Bは、-CH-Rであり;
、RおよびRのいずれか1つまたは2つが、無保護の硫酸基または無保護のリン酸基であり;
またはRは、保護または無保護の水酸基であり;かつ
は、保護または無保護のアミノ基である。
上記の糖としては、これに限定されるものではないが、例えばコンドロイチン4-硫酸(コンドロイチン硫酸A)、コンドロイチン6-硫酸(コンドロイチン硫酸C)、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)、コンドロイチン硫酸Dおよびヘパラン硫酸から選択されるグリコサミノグリカンの構成単位である二糖が含まれる。
【0050】
本発明の製造方法は、(c)ステップ(b)によって縮合された糖と、第3の糖とをさらに縮合させるステップを含むことができる。「第3の糖」は、糖供与体として使用しても、糖受容体として使用してもよく、また、ステップ(b)によって縮合された糖と同一の糖であっても異なる糖であってもよい。
「ステップ(b)によって縮合された糖」および「第3の糖」のいずれも脱離基を有していない場合には、さらなる縮合のために、いずれかの糖に脱離基を導入する処理を行うことができる。
好ましい実施形態において、ステップ(c)は複数回実施される。ステップ(c)を複数回行うことによって、構造を制御しながら、所望の長さの糖を調製することができる。
【0051】
本発明の製造方法が、単回または複数回のステップ(c)を含む場合、ステップ(b)と単回または複数回のステップ(c)は同時に行われてもよいし、異時に行われてもよい。ステップ(b)と、複数回のステップ(c)とを同時に行う場合には、連続的な縮合(重合)を可能にするために、「第1の糖」、「第2の糖」、および「第3の糖」として、その還元末端に1位の炭素原子の位置に脱離基を有し、かつ、求核性基を有する糖を使用することが好ましい。この実施形態において、構造が制御された糖を製造する観点から、「第1の糖」、「第2の糖」、および「第3の糖」には、無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する、同一の糖を使用することがさらに好ましい。例えば、同一の位置に、無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基、脱離基、および求核性基をそれぞれ有する、同一構造の単糖の均一な集団を調製し、これらの単糖をそれぞれ縮合(重合)させることによって、構造が制御された長鎖の糖を製造することができる。
【0052】
例示的な実施形態において、本発明の製造方法は、「第1の糖」、「第2の糖」、および「第3の糖」の糖として、コンドロイチンA、コンドロイチンC、コンドロイチンD、コンドロイチンE、またはヘパラン硫酸の構成単位である二糖骨格からなる均一な集団を調製し、これらを縮合(重合)させることによって、下記式に示すコンドロイチン硫酸またはヘパラン硫酸を製造する方法である。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
なお、上に示すコンドロイチンA、コンドロイチンC、コンドロイチンD、コンドロイチンE、またはヘパラン硫酸の構成単位である二糖骨格において、当該二糖骨格を構成するアミノ糖およびウロン酸の位置が逆であってもよいことは言うまでもない。
例示的に、本発明の製造方法は、下記に示すヘパラン硫酸を製造する方法を含むことが当然に意図される。
【化11】
【0053】
上記式中のnは、1~50、好ましくは1~25、より好ましくは1~10である。
したがって、一実施形態において、本発明の製造方法は、2糖~100糖、好ましくは2糖~50糖、より好ましくは2糖~20糖の硫酸化糖、リン酸化糖、または硫酸化/リン酸化糖を製造する方法である。
【0054】
別の態様において、本発明の製造方法は、硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物を製造する方法に関する。この態様において、「求核性基を有する化合物」が、前記「第2の糖」に代えて使用され、前記「第1の糖」と縮合される。
したがって、この態様において、本発明の製造方法は、
(a1)「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」を調製するステップ、及び、
(b1)上記ステップ(a1)で調製された「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」と、「求核性基を有する化合物」とを縮合させるステップ
を含むことを特徴とする。
この態様において、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」は、「求核性基を有する化合物」に対する糖供与体として使用される。したがって、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」は、脱離基を有する糖であり、典型的には糖の1位の炭素原子の位置に脱離基を有する糖である。
【0055】
「求核性基を有する化合物」の「求核性基」は、上で定義されたものと同様であり、ルイス酸の陽イオン元素と反応しやすい性質を有する任意の官能基を指す。一実施形態において、そのような官能基は、水酸基、アミノ基、およびチオール基から選択される。「求核性基を有する化合物」は、求核性基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、糖のほか、アミノ酸、ペプチド、およびタンパク質などが含まれる。
【0056】
本発明において、「アミノ酸」とは、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸、例えばセリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、アラニン(Ala)、チロシン(Tyr)、グリシン(Gly)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、プロリン(Pro)のみならず、アミノ酸変異体及び誘導体といったような非天然アミノ酸を含む。当業者であれば、この広い定義を考慮して、本発明におけるアミノ酸として、例えばL-アミノ酸;D-アミノ酸;アミノ酸変異体及び誘導体等の化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β-アラニン、オルニチン等生体内でタンパク質の構成材料とならないアミノ酸;及び当業者に公知のアミノ酸の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられることを理解するであろう。
【0057】
本明細書において、アミノ酸誘導体は、アミノ酸の側鎖置換基がさらに他の置換基によって置換されたもの、アミノ基やカルボキシル基等の官能基に対して、保護基やその他の置換基が結合することにより誘導体化されたものを含む。すなわち、本明細書において、アミノ酸誘導体は、これらの例のように誘導体化されたものを含めたアミノ酸を総称するために用いられるもので、誘導体化されていないアミノ酸を排除する趣旨ではない。
【0058】
本明細書において、ペプチドまたはタンパク質の誘導体には、アミノ酸誘導体を含むペプチド、タンパク質のほか、ペプチド、タンパク質を酸、アルカリまたは酵素で部分的に加水分解して得られるタンパク質加水分解物や、これらのカチオン化物、アシル化物、アルキルエステル化物、シリコーン化物等の誘導体が含まれる。
【0059】
本発明の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」において、当該化合物を構成する分子の数は、2、3、4、5またはそれ以上であってもよい。
【0060】
本発明の製造方法は、好ましい実施形態において、(c1)前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」、「求核性基を有する化合物」、および、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」から選択される化合物とを、さらに縮合させるステップを含む。この実施形態において、さらなる縮合に供される前記「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」中の硫酸基および/またはリン酸基は、無保護である。
【0061】
ステップ(c1)が、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」とを縮合するステップである場合には、「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、糖供与体として使用しても、糖受容体として使用してもよい。「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」、および「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」のいずれも、脱離基を有していない場合には、さらなる縮合のために、いずれかに対して脱離基を導入する処理を行うことができる。
【0062】
ステップ(c1)が、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、「求核性基を有する化合物」とを縮合するステップである場合には、「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、糖供与体として使用することができる。「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」が、脱離基を有していない場合には、さらなる縮合のために、脱離基を導入する処理を行うことができる。
【0063】
ステップ(c1)が、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、前記ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と縮合するステップである場合、前記「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」として、脱離基を有し、かつ、求核性基を有する化合物が使用される。「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」が、脱離基を有していない場合には、さらなる縮合のために、脱離基を導入する処理を行うことができる。
【0064】
好ましい実施形態において、ステップ(c1)は、複数回実施される。ステップ(c1)を複数回行うことによって、構造が制御された所望の長さの化合物を調製することができる。ステップ(c1)は、複数回を同時に行ってもよいし、異時に行ってもよい。
【0065】
本発明の製造方法において、複数回のステップ(c1)を同時に行う場合には、構造が制御された化合物を製造する観点から、ステップ(c1)は、ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」と、ステップ(b1)で調製された「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」とを縮合させるステップであることが好ましい。例えば、同一の位置に、無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基、脱離基、および求核性基をそれぞれ有する、同一構造の化合物の均一な集団を調製し、これらの化合物をそれぞれ縮合(重合)させることによって、構造が制御された長鎖の化合物を製造することができる。
【0066】
本発明の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、2糖、4糖、6糖、8糖、10糖またはそれ以上の糖である。
【0067】
本発明の他の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、コンドロイチンA、コンドロイチンC、コンドロイチンD、コンドロイチンE、またはヘパラン硫酸の構成単位である2糖骨格である。
【0068】
本発明の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、2分子骨格を有する硫酸化糖、リン酸化糖、硫酸化/リン酸化糖を含有する化合物であり、ステップ(c1)において、当該2分子骨格を縮合または重合単位とする4分子、6分子、8分子、10分子またはそれ以上の長さの化合物が製造される。
【0069】
本発明の他の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、コンドロイチンA、コンドロイチンC、コンドロイチンD、コンドロイチンE、またはヘパラン硫酸の構成単位である2糖、4糖、6糖、8糖、10糖またはそれ以上の糖であり、ステップ(c1)において、これらの糖を縮合または重合単位とした、さらに長鎖のグリコサミノグリカンが製造される。
【0070】
本発明の他の例示的な実施形態において、ステップ(b1)で調製される「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」は、コンドロイチンA、コンドロイチンC、コンドロイチンD、コンドロイチンE、またはヘパラン硫酸の構成単位である2糖であり、ステップ(c1)において、前記2糖を縮合または重合単位とする4糖、6糖、8糖、10糖またはそれ以上の長さのグリコサミノグリカンが製造される。
【0071】
本発明の原料である「無保護の硫酸基を有する糖」は、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、これに限定されるものではないが、無保護の水酸基を有する所与の糖に対して、硫酸化剤を作用させることによって調製することができる。具体的には、無保護の水酸基を有する所与の糖を原料として、硫酸化剤を、例えばDMF等の適当な溶媒中、適当な当量(1から100当量)、適当な反応温度(0から100℃)および反応時間(10分から2日間)の条件で反応させることにより、水酸基が硫酸化された糖を合成することができる。
【0072】
硫酸化剤としては、糖質化合物の硫酸化に用いられるものであれば何でもよいが、例えば、三酸化イオウ-ピリジン錯体、三酸化イオウ-トリメチルアミン錯体、クロロスルホン酸-ピリジン錯体、ジシクロヘキシルカルボジイミド-硫酸等を挙げることができ、好ましくは、三酸化イオウ-ピリジン錯体、三酸化イオウ-トリメチルアミン錯体が挙げられる。
【0073】
選択した位置に硫酸基を導入する方法も、当業者の公知である。例えば、硫酸化剤との反応の前に、硫酸化しない水酸基を選択的に保護することによって、特定の水酸基のみが硫酸化された糖を調製することができる。その他、糖の特定の位置に硫酸基を導入することが可能な酵素を使用することによって、特定の位置に硫酸基を導入することもできる。
【0074】
また、本発明の原料である「無保護のリン酸基を有する糖」は、一般的に、硫酸化と同様に行うことができる。すなわち、無保護の水酸基を有する所与の糖に対して、リン酸化剤を作用させることによって調製することができる。適切なリン酸化剤としては、これに限定されるものではないが、例えば、リン酸、ポリリン酸、五酸化リン、POClなどを挙げることができる。
【0075】
得られた化合物は、必要に応じてシリカゲル等を用いた高性能薄層クロマトグラフィー、あるいは、アミドカラム等を用いた高性能液体クロマトグラフィー等を用いて分離・精製することができる。
【0076】
本発明において、縮合反応は、当業者に周知の方法にしたがって行うことができる。例えば、本発明において、縮合反応は、糖供与体と糖受容体とを酸の存在下で反応させる方法を用いることによって行うことができる。
【0077】
本発明の製造方法に使用することが可能な酸は、これに限定されるものではないが、硫酸等の無機酸、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(BF3・OEt2)、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチル(メチルチオ)スルホニウム(DMTST)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリプロピルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルエチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルシリル又はトリフルオロメタンスルホン酸トリベンジルメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸銀、シクロペンタジエニル塩化ハフニウム、シクロペンタジエニル塩化ジルコニウム、塩化錫等のルイス酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロメタンスルホン酸等の有機酸などを挙げることができる。
【0078】
これらの酸は、1種または2種以上を併用することができる。また、酸の使用量は、糖供与体に対して0.1~5当量、例えば0.2~1.5当量とすることができる。糖供与体として使用する糖または化合物と、糖受容体として使用する糖または化合物とが互いに異なる化合物である場合、糖供与体と糖受容体との使用割合は任意の割合とすることができる。例えば、糖供与体1モルに対して、糖受容体を0.2~10モル、好ましくは0.7~4モルとすることができる。
【0079】
本発明の一実施形態において、縮合反応において、N-ヨードスクシンイミド等の活性剤が、単独で、またはテトラフルオロメタンスルホン酸トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のルイス酸と組み合わせて使用される。ルイス酸に活性化剤を併用する場合の使用割合は、例えば、糖供与体に対して、ルイス酸を0.1~2当量程度、活性化剤を1~5当量程度とすればよい。
【0080】
縮合反応に使用する溶媒は、反応に不活性な溶媒であれば制限されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、アセトニトリル、プロパンニトリル等のニトリル類又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0081】
縮合反応に使用される温度は、-80℃~40℃、例えば-40℃~25℃の範囲である。
本発明の製造方法においては、下記実施例で示すように、縮合反応の際の反応温度を制御することにより、製造される糖の立体構造を制御することができる。具体的には、縮合反応時の温度が、上記温度範囲内でより低い場合には、β-グリコシド結合で結合した糖または糖を含む化合物が取得される傾向があり、縮合反応時の温度が、上記温度範囲内でより高い場合には、α-グリコシド結合で結合した糖または糖を含む化合物を取得される傾向がある。
【0082】
また、縮合反応に先立って、系内の水及びハロゲン化水素酸等を除去しておくことが好ましい。この目的のために、例えば、モレキュラーシーブ等の捕捉体を使用することができる。
【0083】
本発明の製造方法は、任意に、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」、または「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」に、脱離基を導入するステップを含むことができる。本発明に使用される脱離基は、糖供与体と糖受容体との縮合反応条件下において、置換される原子又は原子団よりも求核性が低く、脱離される機能を有するものであれば特に限定されない。
【0084】
具体的に、本発明に使用される脱離基は、これに限定されるものではないが、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の-O-アルキル基、置換もしくは非置換の-O-アルケニル基、置換もしくは非置換の-O-アルキニル基、置換もしくは非置換の-O-アリール基、置換もしくは非置換の-O-ヘテロアリール基、置換もしくは非置換の-S-アルキル基、置換もしくは非置換の-S-アルケニル基、置換もしくは非置換の-S-アルキニル基、置換もしくは非置換の-S-アリール基、または、置換もしくは非置換の-S-ヘテロアリール基が挙げられる。
【0085】
脱離基の導入は、常法にしたがって行うことができる。例えば、ハロゲン化剤によるハロゲン化反応、酸または塩基の存在下でのチオール化合物との反応によって行うことができる。
【0086】
本発明において使用可能なハロゲン化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、臭化水素などが挙げられる。
【0087】
ハロゲン化反応に使用する溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸、水等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0088】
チオール化合物としては、メチルチオール、イソプロピルチオール、チオフェノール、p-トルエンチオール等が挙げられる。
【0089】
酸としては、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(BF3・OEt2)などのルイス酸が挙げられる。また、塩基としては、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0090】
チオール化合物との反応使用される溶媒としては、これに限定されるものではないが、ジクロロメタン、アセトニトリル、トルエンなどを挙げることができ、これらの溶媒を単独または組み合わせて使用することができる。
【0091】
本発明の製造方法は、任意に、「無保護の硫酸基および/または無保護のリン酸基を有する糖」、または「硫酸基および/またはリン酸基を有する糖を含む化合物」中の側鎖の水酸基、アミノ基等を、保護および脱保護するステップを含んでもよい。
当業者は、当該技術分野で公知の保護基から、選択した反応経路に応じて、適宜適切な保護基を選択することができる。
【0092】
本発明の製造方法において、水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、アセチル(Ac)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、tert-ブチルジメチルシリル(TBSまたはTBDMS)基などを挙げることができる。アミノ基の保護基としては、例えば、脂溶性保護基として、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(troc)基、アリルオキシカルボニル基、アセチル基などの、カーボネート系またはアミド系の保護基等を挙げることができる。
【0093】
本発明の製造方法によれば、従来の合成方法とは異なり、硫酸基またはリン酸基の保護・脱保護を行う必要がないことから、より簡便に、構造が制御された硫酸化糖、リン酸化糖、および硫酸化/リン酸化糖を製造することができる。また、硫酸基またはリン酸基の保護・脱保護を行う必要がないことから、硫酸基またはリン酸基の保護を考慮することなく反応経路を設計することができる。これにより、反応経路に利用可能な保護基、反応経路が飛躍的に増加し、硫酸化糖、リン酸化糖、および硫酸化/リン酸化糖またはこれを含有する化合物を従来よりも簡便に効率よく製造でき、従来は合成が困難であったタイプの硫酸化糖、リン酸化糖、および硫酸化/リン酸化糖またはこれを含有する化合物の合成が可能となる。本発明の製造方法によれば、さらに、長鎖の均一な構造の硫酸化糖、リン酸化糖、および硫酸化/リン酸化糖またはこれを含有する化合物を合成する上で極めて有用である。
【0094】
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0095】
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
【0096】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0097】
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
【実施例
【0099】
実施例1(硫酸化単糖の縮合による硫酸化糖の製造)
以下の反応式に表されるように、5位の炭素原子の位置に無保護の硫酸基を有し、1位の炭素原子の位置に脱離基を有する単糖を調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化12】
【0100】
Thioglycoside 2
アルゴン雰囲気下、原料(4.0g 8.4mmol)を乾燥させたDCMに溶かした。その後、氷冷した。BF・OEt(3.5mL 28mmol)とp-トルエンチオール(1.4g 11mmol)を加え、室温に戻し、20時間反応させた。EtN(3.5mL 25mmol)を加えて反応をクエンチし、反応溶液をDCMで希釈し、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、濃縮した。シリカゲルカラム(1/2 AcOEt/Hex to 2/1 AcOEt/Hex)によって試薬をのぞき、熱エタノールから再結晶を行い、Thioglycoside を白色固体として得た。H NMR(400MHz CDCl)7.87(m,2H),7.76(m,2H),7.30(d,2H,J=7.8Hz),7.08(d,2H,J=7.8Hz),5.78(t,1H,J=9.7Hz),5.65(d,1H,J=10.7Hz),5.12(5,1H,9.7Hz),4.36-4.25(m,2H),4.20(dd,1H,J=1.3Hz,J=12.2Hz),3.88(m,1H),2.33(s,3H),2.11(s,3H),2.02(s,3H),1.83(s,3H),ESI-MS[M+Na] calcd for C2727NOSNa:564.1 found 564.1。
【0101】
1-STol-2-NPhth-Gulcose 3
アルゴン雰囲気下、Thioglycoside (462mg 0.85mmol)をメタノールに溶かした。そこにナトリウムメトキシド(10.3mg 0.19mmol)を加え60分撹拌した。DOWEX 50Wx8を加えて反応をクエンチし、濾過によってDOWEX 50Wx8を取り除いた。ろ液を濃縮し、白色固体として目的物を得た。更なる精製を行わずに次の反応に用いた。H NMR(400MHz MeOD)7.94-7.82(m,4H),7.28(d,2H,J=8.2Hz),7.05(d,2H,J=8.2Hz),5.52(d,1H,J=10.4Hz),4.24(dd,1H,J=8.1Hz,J=10.2Hz),4.08(t,1H,J=10.2Hz),3.94(dd,1H,J=1.8Hz,J=12.0Hz),3.75(dd,1H,J=5.3Hz,J=12.0Hz),3.48-3.39(m,2H),2.28(s,3H),ESI-MS[M+Na] calcd for C2121NOSNa:438.1 found 438.1。
【0102】
1-STol-2-NPhth-6-OSO Na-Gulcose 4
アルゴン雰囲気下、1-STol-2-NPhth-Gulcose (186mg 0.45mmol)及びSO・Py(76.6mg 0.48mmol)をDMF(9.6mL)に溶かし、3時間半撹拌した。飽和NaHCO水溶液を過剰量加えて、1時間激しく撹拌した後、反応溶液を濃縮した。シリカゲルカラム精製(6/2/1 AcOEt/MeOH/HO)を行い原料(82.5mg 44%)と目的物(88.9mg 38%)を得た。H NMR(400MHz DO)7.95-7.75(m,4H),7.25(d,2H,J=8.1Hz),7.08(d,2H,J=8.1Hz),5.64(d,1H,J=10.2Hz),4.42(dd,1H,J=1.8Hz,J=11.4Hz),4.33-4.36(m,2H),4.13(t,1H,10.28Hz),3.93(m,1H),3.62(t,1H,J=9.55Hz),2.23(s,3H),ESI-MS[M-Na] calcd for C2120NO: 494.1 found 493.7。
【0103】
下記の反応式に表されるように、硫酸化糖から硫酸化二糖を調製した。
【化13】
【0104】
ポリメリゼーション(Polymerization)
アルゴン雰囲気下、硫酸化糖(117mg 0.23mmol)をアセトニトリルに溶かし、モレキュラーシーブ3Aを加え氷冷した。TfOH(1.9μL)とN-ヨードスクシンイミド(51.2mg)をアセトニトリル(1mL)に溶かして、先の糖溶液に滴下し30分撹拌した。常温に戻し、一晩撹拌した後に、シリカゲルカラム(3/1 AcOEt/MeOH)に反応溶液をそのままアプライし、原料と試薬を取り除いた。その後HPLCにより硫酸化2糖を単離した。H NMR(400MHz DO)7.97-7.60(m,8H),5.34(d,1H,J=8.42Hz),5.27(d,1H,J=8.60Hz),4.59(dd,1H,J=8.4Hz,J=10.9Hz),4.46-4.21(m,4H),4.10(dd,1H,J=8.7Hz,J=10.6Hz),4.05-3.93(m,2H),3.86(m,2H),3.70(t,1H,J=9.0Hz),3.58(t,1H,J=9.3Hz),ESI-MS[M-2Na+H] calcd for C282719 :759.1 found: 758.7。
【0105】
実施例2(硫酸化二糖の縮合による硫酸化糖の製造)
以下の反応式に表されるように、還元末端の6位の炭素原子の位置に無保護の硫酸基を有し、1位の炭素原子の位置に脱離基を有する二糖を調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化14】
【0106】
コンドロサミンアセテート 1(Chondrosamin acetate 1)
コンドロサミン (Chondrosamin 1)は既報(Jean-Claude Jacquinet,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,2574-2578)に従って調製した。
【0107】
2-NHTrocコンドロサミンメチルエステルパーアセテート 2(2-NHTroc Chondrosamin methyl ester per acetate 2)
アルゴン雰囲気下、塩化アセチル(120μL 1.6mmol)をメタノール(13mL)に加えて氷浴中で30分間撹拌した。コンドロサミンアセテート (Chondrosamin acetate 1)(340mg 0.82mmol)を加え、20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、メタノールを加え、濃縮を複数回繰り返した。濃縮残渣とNaHCO(240mg 2.85mmol)を水(7.4mL)に溶かし、30分間激しく撹拌した。クロロギ酸2,2,2-トリクロロエチル(2,2,2-trichloroethyl chloro-formate)(260μL 1.9mmol)をゆっくりと滴下し、2時間撹拌した。そこにDOWEX 50Wx8を加えて反応をクエンチし、濾過によってDOWEX 50Wx8を除いた。DOWEX 50Wx8はメタノールで3回洗浄した。ろ液を濃縮し、シリカゲルカラム精製(6/2/1 AcOEt/MeOH/HO)を行ったところ、N-Trocコロンドサミンメチルエステル(N-Troc Chondrosamin methylester)が得られた(353mg 79%)。アルゴン雰囲気下、N-Trocコロンドサミンメチルエステル(N-Troc Chondrosamin methylester)(350mg 0.65mmol)をAcO/ピリジン(1/1 7mL)に溶かした。N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(N,N-dimethyl-4-aminopyridine)(7.9mg 0.065mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、反応溶液を氷冷し、過剰のメタノールをゆっくりと加え、反応をクエンチした。反応溶液を濃縮し、シリカゲル精製(1/1 AcOEt/Hex)によって目的物を得た(470mg 3steps 72% α/β~1:1)H NMR(400Hz CDCl)6.57(d,J=6.8Hz,β-アノマー),6.32(d,J=3.04,α-anomer),5.80(t,J=8.6Hz),5.44-4.96(m),4.89-4.54(m),4.34(dt,J=3.5Hz,J=10.5Hz),4.30-3.95(m),ESI-MS[M+Na] calcd for C2836 35ClNO19Na: 818.1 found 818.1。
【0108】
1-STol-2-NHTrocコンドロサミンメチルエステルパーアセテート 3(1-STol-2-NHTroc chondrosamin methyl ester per acetate 3)
アルゴン雰囲気下N-Trocコンドロサミンメチルエステルパーアセテート (N-Troc Chondrosamin methyl ester per acetate 2)(717mg 0.90mmol)とp-トルエンチオール(111mg 0.89mmol)をDCMに溶かし、氷冷した。BF・OEt(338μL 2.7mmol)を滴下し、30分間撹拌した。その後、室温で一晩撹拌した。EtN(375μL 2.7mmol)を加えて反応をクエンチした。反応溶液にDCMを加えて希釈し、飽和NaHCO水溶液と飽和NaCl水溶液で洗浄した。有機層は硫酸ナトリウムによって乾燥させたのち、濾過し、濃縮した。残渣のシリカゲルカラム精製(1/2 AcOEt/Hexから1/1 AcOEt/Hex)により、目的化合物を白色固体として得た。(436mg 56%);H NMR(400MHz CDCl) 7.41(d,2H,J=8.0Hz),7.11(d,2H,J=8.0Hz),5.41(d,1H,J=7.9Hz),5.38(d,1H,J=2.7Hz),5.22-5.13(m,2H),4.99-4.93(m,2H),4.86(d,1H,J=12.1Hz),4.73(d,1H,J=7.9Hz),4.64(d,1H,J=12.1Hz),4.31(dd,1H,J=3.1Hz,J=10.5Hz),4.19-3.95(m,3H),3.86(t,1H,J=6.42Hz),3.75(s,3H),3.65(m,1H),2.34(s,3H),2.08(s,3H),2.05(s,3H),2.04(s,3H),2.01(s,3H),1.99(s,3H)ESI-MS[M+Na] calcd for C3340 35ClNO17SNa. 882.1 found 882.1。
【0109】
1-STol-2NHTrocコンドロサミンメチルエステル 4(1-STol-2NHTroc chondrosamin methyl ester 4)
アルゴン雰囲気下、1-STol-2-NHTrocコンドロサミンメチルエステルパーアセテート(1-STol-2-NHTroc chondrosamin methyl ester per acetate 3)(510mg 0.59mmol)を乾燥メタノールに溶かした。ナトリウムメトキシドを加え、1時間半室温で撹拌した。DOWEX 50Wx8を加えて反応をクエンチし、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム精製(50/3 AcOEt/MeOH)し、目的化合物を白色固体として得た。;H NMR(400MHz DO)7.36(d,2H,J=8.1Hz),7.16(d,2H,J=8.1Hz),4.89(d,1H,J=12.4Hz),4.74(d,1H),4.59(d,1H,J=12.4Hz),4.54(d,1H,J=8.15Hz),4.07(d,1H,J=2.56Hz),3.96(d,1H,J=9.7Hz),3.73(s,3H),3.71-3.57(m,3H),3.48(t,1H,J=9.2Hz),3.41(t,1H,J=9.1Hz),3.28(dd,1H,J=7.92Hz,J=8.79Hz),2.24(s,3H),ESI-MS[M+Na] calcd for C2330 35ClNO12SNa: 672.0 found 672.0。
【0110】
1-STol-2NHTroc-6-OSO Naコンドロサミンメチルエステル 5(1-STol-2NHTroc-6-OSO 3 Na chondrosamin methyl ester 5)
アルゴン雰囲気下、1-STol-2NHTrocコンドロサミンメチルエステル (1-STol-2NHTroc chondrosamin methyl ester 4)とSO・PyをDMFに溶かし、室温で一晩撹拌した。その後、飽和NaHCOを過剰量加え、30min激しく撹拌した。反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム精製(6/1/1 AcOEt/MeOH/HO)によって目的物を得た。H NMR(400MHz MeOD)7.42(d,2H,J=8.1Hz),7.13(d,2H,J=8.1Hz),4.90(d,1H,J=12.1Hz),4.73(d,1H,J=10.3Hz),4.67(d,1H,J=12.1Hz),4.52(d,1H,J=7.5Hz),4.20(dd,1H,J=5.9Hz,J=10.7Hz),4.16(dd,1H,J=6.4Hz,J=10.6Hz),4.09(d,1H, 2.7Hz),3.91(t,1H,J=10.3Hz),3.86-3.74(m,6H),3.55(5,1H,J=9.1Hz),3.40-3.26(m,2H),2.31(s,3H),ESI-MS[M-H] calcd for C2329 35ClNO15: 728.0 found 727.8。
【0111】
1-STol-2-NHTroc-6-OSO Na-2’,3’-O-イソップ コンドロサミンメチルエステル 6(1-STol-2-NHTroc-6-OSO 3 Na-2’,3’-O-isop chondrosamin methylester 6)
アルゴン雰囲気下、1-STol-2NHTroc-6-OSONa コンドロサミンメチルエステル (1-STol-2NHTroc-6-OSO3Na chondrosamin methyl ester 5)をDMFに溶かした。2-メトキシプロペンとピリジニウムp-トルエンスルホネートを加え、室温で30min撹拌した。飽和NaHCOを加えて反応をクエンチした後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラム精製(6/1/1 AcOEt/MeOH/HO)し、目的物を得た。H NMR(400MHz DMSO)7.32(d,2H,J=8.2Hz),7.11(d,2H,J=8.2Hz),5.77(d,1H,J=5.6Hz),4.93(d,1H,J=7.9Hz),4.86(d,1H,J=12.1Hz),4.77(d,1H,J=4.8Hz),4.68-4.60(m,2H),3.88-3.58(m,11H),3.43(t,1H,J=9.1Hz),3.26(t,1H,J=8.3Hz),2.27(s,3H),ESI-MS[M+Na]calcd for C2633ClNO15:768.0 found 767.8。
【0112】
次いで、下記の反応式に示されるように、硫酸化二糖を重合化させた。
【化15】
アルゴン雰囲気下、1-STol-2-NHTroc-6-OSONa-2’,3’-O-イソップ コンドロサミンメチルエステル (1-STol-2-NHTroc-6-OSO3Na-2’,3’-O-isop chondrosamin methylester 6)をアセトニトリルに溶かした。そこに活性化したモレキュラーシーブ3Aを加えた。DMTSTを加え反応を開始した。10分後溶液の一部を取り出し、EtNにてクエンチ後、ESI-MSを測定した。ESI-MS[M-2Na+H] calcd for C3851Cl30 :1289.0 found: 1288.6。
ESI-MSの結果により、上記重合化反応によって合成された生成物は、下記構造を有していると推定された。
【化16】
【0113】
(実施例3)硫酸化二糖(グリコシル o-ヘキシニルベンゾエート)ドナーの合成
以下の反応式に表されるように、還元末端の6位の炭素原子の位置に無保護の硫酸基を有し、1位の炭素原子の位置に脱離基を有する硫酸化二糖ドナーを調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化17】
p-トリル(メチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラニド 2(p-Tolyl(Methyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranide 2)
p-トリル(メチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガルクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galctopyranoside 1)(72mg、0.11mmol)とトリフェニルメチルクロリド(Triphenylmethyl Chloride)(34mg、0.12mmol)をアルゴン雰囲気下、ピリジン(1.16mL)に溶かした。50℃で一晩撹拌したのち、反応溶液を濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラム(AcOEt:MeOH 50:3)により精製し、目的物(90mg、0.09mmol,77%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl)7.45-7.37(m,7H),7.31-7.19(m,10H),7.04(d,J=8.0Hz,2H),5.51(d,J=8.1Hz,2H),5.40(d,J=2.85Hz,2H),5.22-5.12(m,2H),4.99-4.91(m,2H),4.85(d,J=12.2Hz,1H),4.73(d,J=7.9Hz,1H),4.64(d,J=12.2Hz,1H),4.24(dd,J=2.8Hz,J=10.8Hz,1H),3.99(d,J=9.3Hz,1H),3.76-3.61(m,5H),3.31(dd,J=6.9Hz,J=9.9Hz,1H),3.04(dd,J=5.7Hz,J=9.9Hz,3H),2.30(s,3H) ESI-MS[M+Na] calcd for C4244 35ClNNaO12S: 914.2 found 914.5
【0114】
p-トリル(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノシド 3(p-Tolyl(Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranoside 3)
p-トリル(メチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranide 2)(150mg、0.168mmol)をアルゴン雰囲気下、ピリジン/無水酢酸 1:1(3.3mL)に溶かした。室温で一晩撹拌後、反応溶液を氷冷し、過剰のメタノールをゆっくり加え反応をクエンチした。反応溶液を濃縮し、シリカゲルカラム(AcOEt:Hex 2:3)により精製し、目的物(177mg 0.167mmol,99%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl) 7.41(d,J=7.8Hz,8H),7.31-7.20(m,9H),7.04(d,J=7.7Hz,2H),5.43-5.38(m,2H),5.22-5.12(m,2H),4.99-4.91(m,2H),4.85(d,J=12.1Hz,1H),4.73(d,J=7.8Hz,1H),4.63(d,J=12.1Hz,1H),4.24(dd,J=3.0Hz,J=10.5Hz,1H),3.99(d,J=9.4Hz,1H),3.70-3.61(m,4H),3.31(dd,J=7.0Hz,J=9.8Hz,1H),3.04(dd,J=5.4Hz,J=9.5Hz,1H),2.31(s,3H),2.04(s,3H),2.01(s,3H),2.00(s,3H),1.88(s,3H) ESI-MS[M+Na] calcd for C5052 35ClNNaO16S: 1082.2 found 1082.2
【0115】
(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノース 4(Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranose 4)
p-トリル(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranoside 3)(230mg、217mmol)をHO/アセトン 1:10(2.3mL)に溶かした。溶液を氷冷し、N-ブロモスクシンイミド(116mg 0.65mmol)を加えて20分撹拌した。反応溶液をAcOEtで希釈し、有機相を飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムによって乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除いて減圧濃縮を行なった。残渣をシリカゲルカラム(AcOEt:Hex 1:1)により精製し、目的物(159mg、0.166mmol、77%)を得た。
H NMR α-anomer(400Hz CDCl)7.44-7.35(m,6H),7.31-7.19(m,9H),5.71(d,J=9.0Hz,1H),5.49(d,J=2.2Hz,1H)5.27-5.14(m,3H),4.88-4.70(m,2H),4.70-4.60(m,1H),4.33(t,J=6.6Hz,1H),4.21(dd,J=3.1Hz,J=10.5 1H),4.15-3.97(m,2H),3.74-3.65(m,4H),3.17(dd,J=6.6Hz,J=9.2Hz,1H),3.08-2.99(m,1H),2.10-2.00(m,12H) ESI-MS[M+Na] calcd for C4346 35ClNNaO17: 976.2 found 976.7
【0116】
(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガラクトピラノシル o-ヘキシニルベンゾエート 5((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranosyl o-hexynylbenzoate 5)
メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノース ((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranose 4)(159mg,0.166mmol)とo-ヘキシニル安息香酸 (o-hexynylbenzoic acid 7)(101mg、0.499mmol)をアルゴン雰囲気下、DCM(1.7mL)に溶かした。N,N-ジメチルアミノピリジン(2mg、0.02mmol)とN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(78uL、0.499mmol)を加えて室温で一晩撹拌した。反応溶液をDCMで希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムによって乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除き、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(AcOEt:Hex 2:3)により精製し、目的物(126mg,0.11mmol,67%)を得た。
H NMR α-anomer(400Hz CDCl)8.02(d,J=8,2Hz,1H),7.63(d,J=7.9Hz,1H),7.53(dt,J=1.3Hz,J=7.5Hz 1H),7.47-7.41(m,1H)7.40-7.35(m,7H),7.29-7.26(m,4H),7.21-7.15(m,4H),6.45(d,J=3.3Hz,1H),6.02(d,J=8.7Hz,1H),5.63(b,1H),5.26-5.19(m,2H),4.87(d,J=7.6Hz,1H),4.81(d,J=12.0Hz,H),4.54-4.49(m,2H),4.38-4.32(m,1H),4.29-4.24(m,1H),4.09(d,J=9.3Hz,1H),3.43(s,3H),3.31(dd,J=5.5Hz,J=9.1Hz,1H),2.97(t,J=9.1Hz,1H),2.67-2.49(m,2H),2.16(s,3H),2.06(s,6H),1.85(s,3H),1.66-1.57(m,2H),1.51-1.47(m,2H),0.89(t,J=7.3Hz,3H) ESI-MS[M+Na] calcd for C5658 35ClNNaO18: 1160.3 found 1160.9
【0117】
(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-6-O-スルホ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガルクトピラノシルo-ヘキシニルベンゾエート,モノナトリウム塩 6((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-6-O-sulfo-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galctopyranosyl o-hexynylbenzoate, monosodium salt 6)
(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-6-O-トリフェニルメチル-β-D-ガルクトピラノシルo-ヘキシニルベンゾエート ((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-6-O-triphenylmethyl-β-D-galctopyranosyl o-hexynylbenzoate 5)(50.0mg 0.044mmol)をDCM(440uL)に溶かした。トリフルオロ酢酸(44uL)とトリイソプロピルシラン(45uL)を加えて室温で3分撹拌した。過剰の飽和重曹水加えて反応をクエンチしたのち、AcOEtで抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムによって乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除き、減圧濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下でDMF(440uL)に溶かし、SO・Py(14mg 0.088mmol)を加えて撹拌した。2時間後、反応溶液に飽和重曹水(1.0mL)を加えてさらに30分間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮後、シリカゲルカラム(AcOEt:MeOH 10:1)により精製し、目的物(29.8mg 0.030mmol 68%)を得た。
H NMR(α anomer)(400Hz MeOD)8.06-8.00(m,1H),7.55-7.49(m,2H),7.45-7.40(m,1H),6.50(d,J=2.47Hz,1H),5.60(b,1H),5.26(t,J=9.2Hz 1H),5.09(t,J=9.8Hz,1H),4.96-4.87(m,3H),4.65-4.58(m,2H),4.32-4.28(m,2H),4.20(d,J=9.8Hz,1H),4.13-4.07(m,1H),3.99-3.93(m,1H),3.73(s,3H),2.48(t,J=6.8,2H),2.15(s,3H),2.02(s,3H),1.99(s,3H),1.97(s,3H),1.67-1.50(m,4H),0.99(t,J=7.2Hz,3H) ESI-MS[M-H] calcd for C3743 35ClNO21S: 974.1 found 973.9
【0118】
二糖アクセプターの合成
以下の反応式にしたがって二糖アクセプター11を調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化18】
【0119】
p-トリル(メチル2,3-O-イソプロピリデン-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-4,6-O-イソプロピリデン-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 8(p-Tolyl(Methyl 2,3-O-isopropylydene-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-4,6-O-isopropylydene-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 8)
p-トリル(メチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 1)(332mg,0.51mmol)をアルゴン雰囲気下、DMF(5.1mL)に溶かした。PPTS(64mg,0.25mmol)と2-methoxypropene(490uL,5.mmol)を加えて室温で15分間撹拌した。反応系を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムによって乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除き、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(AcOEt/Hex 2:3)により精製し、目的物(204mg,0.279mmol,55%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl)7.56(d,J=8.0Hz,2H),7.10(d,J=8.0Hz,2H),5.58(d,J=6.5Hz,1H),5.28(d,J=10.0Hz,1H),4.88(d,J=7.66Hz 1H),4.74(d,J=12.0Hz,1H),4.69(d,J=12.0Hz,1H),4.08-4.00(m,3H),3.84(s,3H),3.68(d,J=8.8Hz,1H),3.49-3.42(m,3H),3.37(dd,J=7.7Hz,J=9.1Hz 1H),2.33(s,3H),1.44-1.39(m,12H) ESI-MS[M+Na] calcd for C2938 35ClNNaO12S: 752.1 found 752.1
【0120】
p-トリル(メチル2,3-O-イソプロピリデン-4-O-レブリノイル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-4,6-O-イソプロピリデン-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 9(p-Tolyl(Methyl 2,3-O-isopropylydene-4-O-levulinoyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-4,6-O-isopropylydene-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 9)
p-トリル(メチル2,3-O-イソプロピリデン-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-4,6-O-イソプロピリデン-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl 2,3-O-isopropylydene-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-4,6-O-isopropylydene-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 8)(63mg 0.086mmol)をアルゴン雰囲気下、DCM(862uL)に溶かした。DMAP(2mg,0.02mmol),LevOH(26uL,0.26mmol),DIC(40uL,0.26mmol)を加えて室温で一晩撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水と飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムにより乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除いて減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(AcOE/Hex3:2)により精製し目的物(50mg 0.060mmol 70%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl)7.55(d,J=8.0Hz,2H),7.11(d,J=8.0Hz,2H),5.32-5.16(m,3H),4.83-4.78(m,2H),4.62(d,J=12.1Hz 1H),4.46(d,J=9.8Hz,1H),4.37(d,J=2.8Hz,1H),4.05-3.95(m,2H),3.88-3.78(m,2H),3.72(s,3H),3.58-3.47(m,2H),3.42(b,1H),2.79-2.59(m,4H),2.33(s,3H),2.20(s,3H),1.15(s,6H),1.13(s,6H) ESI-MS[M+K] calcd for C3444 35ClKNO14S: 866.1 found 866.0
【0121】
p-トリル(メチル 2,3-ジ-O-アセチル-4-O-レブリノイル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4,6-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 10(p-Tolyl(Methyl 2,3-di-O-acetyl-4-O-levulinoyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4,6-di-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 10)
p-トリル(メチル 2,3-O-イソプロピリデン-4-O-レブリノイル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-2-デオキシ-4,6-O-イソプロピリデン-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド (p-Tolyl(Methyl 2,3-O-isopropylydene-4-O-levulinoyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-2-deoxy-4,6-O-isopropylydene-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 9)(227mg,0.274mmol)を80%酢酸水溶液(2.74mL)に溶かし、2時間室温で撹拌した。反応後、飽和重曹水(ca.3mL)で反応溶液を中和し、酢酸エチルで3度抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムによって乾燥させた。濾過により、硫酸ナトリウムを除き、減圧濃縮を行なった。アルゴン雰囲気下、残渣を無水酢酸(1.4mL),ピリジン(1.4mL)に溶かし、DMAP(3mg,0.03mmol)を加えて室温で撹拌した。反応溶液を氷冷し、過剰のメタノールを加えて反応をクエンチした。減圧濃縮ののち、シリカゲルカラム(AcOEt/Hex 1:1)により精製し、目的物10(201mg 0.219mmol,80%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl)7.36(d,J=8.0Hz,2H),7.05(d,J=8.0Hz,2H),5.59(d,J=8.3Hz,1H),5.33(d,J=3.0Hz,1H),5.17-5.09(m,2H),4.96-4.87(m,2H),4.79(d,J=12.1Hz,1H),4.71(d,J=7.8Hz,1H),4.63(d,J=7.8Hz,1H),4.23(dd,J=3.0Hz,J=10.3Hz,1H),4.09(dd,J=5.3Hz,J=11.8Hz,1H),4.00-3.90(m,2H),3.81(dd,J=5.7Hz,J=6.8Hz,1H),3.72-3.61(m,4H),2.70-2.62(m,2H),2.47-2.40(m,2H),2.29(s,3H),2.10(s,3H),2.03(s,3H),2.01(s,3H),2.00(s,3H),1.99(s,3H) ESI-MS[M+Na] calcd for C3644 35ClNNaO18S: 938.1 found 938.1
【0122】
p-トリル(メチル2,3-ジ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4,6-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 11(p-Tolyl(Methyl 2,3-di-O-acetyl -β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4,6-di-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 11)
p-トリル(メチル2,3-ジ-O-アセチル-4-O-レブリノイル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4,6-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 10(p-Tolyl(Methyl 2,3-di-O-acetyl-4-O-levulinoyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4,6-di-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 10)(201mg、0.219mmol)をアルゴン雰囲気下、pyrdine(1.09mL),酢酸(1.09mL)に溶かした。ヒドラジン一水和物(13uL、0.263mmol)を加えて室温で30分撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過により硫酸ナトリウムを除き、減圧濃縮をおこなった。残渣をシリカゲルカラム(AcOEt/Hex 3:2)により精製し、目的物11(121mg 0.148mmol 68%)を得た。
H NMR(400Hz CDCl)7.41(d,J=8.0Hz,2H),7.11(d,J=8.0Hz,2H),5.44(d,J=2.8Hz,1H),5.05-4.99(m,2H),4.89-4.80(m,2H),4.71-4.65(m,2H),4.37-4.32(m,1H),4.18-4.02(m,2H),3.96-3.83(m,6H),3.62-3.52(m,1H),2.34(s,3H),2.07(s,3H),2.06(s,3H),2.05(s,3H),2.04(s, 3H) ESI-MS[M+K] calcd for C3138 35ClKNO16S: 856.6 found 856.0
【0123】
(合成例1)(硫酸化四糖の合成)
上記のようにして調製された硫酸化二糖ドナーと二糖アクセプター11を、以下の反応式のとおり縮合させて、目的の硫酸化四糖12を調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化19】
【0124】
p-トリル(メチル2,3-ジ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4,6-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 11(p-Tolyl(Methyl 2,3-di-O-acetyl -β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4,6-di-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 11)(12.0mg 0.015mmol)と(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-6-O-スルホ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシルo-ヘキシニルベンゾエート,モノナトリウム塩 ((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-6-O-sulfo-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galctopyranosyl o-hexynylbenzoate, monosodium salt 6)(12.6mg,0.013mmol)をアルゴン雰囲気下、MeCN(126uL)に溶かした。活性化したMS-300(12mg)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液を氷冷したのち、PPhAuNTf・0.5Toluene(6mg 3.7umol)を加えて反応を開始した。0℃で15分撹拌し、反応溶液をそのままシリカゲルカラムにアプライした。質量分析において4糖12のイオンピークが観察された。(yield ca.5%)また、NMR解析によって、本反応で形成されたグリコシル結合部位のアノマー部位(1位)のCHカップリング定数(J値)がJCH=178Hzであることが確認でき、得られた4糖がα結合で連結した化合物12であることが示唆された。ESI-MS[M-H] calcd for C5567 35Cl35: 1589.1 found 1589.1
【0125】
(合成例2)(硫酸化四糖の合成)
上記のようにして調製された硫酸化二糖ドナーと二糖アクセプター11を、以下の反応式のとおり縮合させて、目的の硫酸化四糖13を調製した。調製例における化合物の名称後に記載されている化合物番号は、下記の反応式に記載の化合物番号を示す。
【化20】
【0126】
p-トリル(メチル2,3-ジ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4,6-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシド 11(p-Tolyl(Methyl 2,3-di-O-acetyl -β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4,6-di-O-acetyl-2-deoxy-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galactopyranoside 11)(28.0mg 0.034mmol)と(メチル-2,3,4-トリ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシルウロネート)-(1→3)-4-O-アセチル-2-デオキシ-6-O-スルホ-1-チオ-2-(2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルアミノ)-β-D-ガラクトピラノシルo-ヘキシニルベンゾエート,モノナトリウム塩 ((Methyl-2,3,4-tri-O-acetyl-β-D-glucopyranosyluronate)-(1→3)-4-O-acetyl-2-deoxy-6-O-sulfo-1-thio-2-(2,2,2-trichloroethoxycarbonylamino)-β-D-galctopyranosyl o-hexynylbenzoate, monosodium salt 6)(28.0mg,0.028mmol)をアルゴン雰囲気下、MeCN(280uL)に溶かした。活性化したMS-300(12mg)を加えて室温で1時間撹拌した。反応溶液を-5℃に冷却したのち、PPhAuNTf・0.5Toluene(13mg 8.4umol)を加えて反応を開始した。-5℃下で3時間攪拌し、反応溶液をそのままシリカゲルカラムにアプライした。質量分析において4糖12のイオンピークが観察された。(yield ca.10%)また、NMR解析によって、本反応で形成されたグリコシル結合部位のH-1とH-2のJ値がJ1,2=8.3Hzであることが確認でき、得られた4糖がβ結合で連結した化合物13であることが示唆された。ESI-MS[M-H] calcd for C5567 35Cl35: 1589.1 found 1589.1