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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ズボン
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/06 20060101AFI20231213BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A41D1/06 N
A41D1/06 L
A41D27/20 A
A41D27/20 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019100067
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193414
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年9月22日 山形県寒河江市 パラスポーツカーニバルにて公開 〔刊行物等〕 2018年9月23日 山形新聞 朝刊 にて公開 〔刊行物等〕 2019年3月23日 未来を車椅子とファッションを通じて考えるトークショーにて公開 〔刊行物等〕 2019年3月26日 繊研新聞にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】396015426
【氏名又は名称】丸安毛糸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 博之
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0116901(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第2899442(FR,A1)
【文献】特開2016-199843(JP,A)
【文献】中国実用新案第205728231(CN,U)
【文献】米国意匠特許発明第792681(US,S)
【文献】米国意匠特許発明第804147(US,S)
【文献】特開2003-129308(JP,A)
【文献】登録実用新案第3206093(JP,U)
【文献】特開2015-209604(JP,A)
【文献】米国特許第5182815(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/06、13/00、27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズボン本体と、
前記ズボン本体の、着用時において着用者の下半身正面に沿う前身頃において、前記着用者の大腿部に沿って設けられるポケットと、
を備え、
前記ポケットは、前記着用時に着座した場合に、前記大腿部の上面に位置するものであり、
前記ポケットは、開口部と、前記開口部から挿入される物体を収容する収容部と、を有し、
前記開口部は大腿部の長さ方向において膝側に設けられ、前記収容部の底は、前記開口部よりも腰側に位置してい
前記ズボン本体は、前記前身頃と後身頃とが互いに連結されて構成され、
前記前身頃は、着用時において、
前記着用者の大腿部に沿う前身頃上部と、
前記着用者の膝に沿う前身頃中部と、
前記着用者の脛部に沿う前身頃下部と、
を備え、
前記前身頃上部と前記前身頃下部とは、自然状態において、前記前身頃中部を介して屈曲して連結されている、
ズボン。
【請求項2】
前記開口部は、前記前身頃において前記大腿部の周方向に沿って設けられている、
請求項1記載のズボン。
【請求項3】
前記収容部は、前記開口部よりも腰側に伸び出るように、前記前身頃に固定されている、
請求項1又は2記載のズボン。
【請求項4】
前記開口部の開口端には、前記収容部に収容される物品の突出を規制する規制部が設けられている、
請求項1乃至3のいずれかに記載のズボン。
【請求項5】
前記規制部は、第1端が前記開口部の膝側端辺に渡って連結され、第2端が前記収容部側に向かって伸び出ている返しである、
請求項4記載のズボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズボンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前方大腿部に口がついており、口のところにファスナを取り付け内側にポケットを付けたズボンが開示されている。
【0003】
特許文献2には、膝部から上側部に備えたポケット部が、ズボン側に縫着される外皮部材の4辺のうちの隣り合う2辺に、スライドファスナをそれぞれ有する物品出入れ用の第1及び第2の開口部をそれぞれ独立して備え、起立姿勢においては第1開口部からポケット部の物品が出入れ可能であり、座った姿勢においては第2開口部からポケット部の物品が出入れ可能になっているズボンが開示されている。
【0004】
特許文献3には、ポケットを斜め方向に取り付けることで座った時にポケットの上部開口部が上になるようにし、さらにポケットを多重にする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平6-73109号公報
【文献】特開2009-62657号公報
【文献】実開昭49-096117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
着用時の腸骨付近にポケットを備えるズボンがよく知られている。しかしながら、着座時には、このポケット付近の身頃が圧縮され、ポケットの収容部が屈曲するため、スマートホンなどの大きな物品を収容したり、物品の出入れをするのが困難である。特に、車椅子での生活時や、長時間のデスクワークを行う際には、腸骨付近のポケットを活用することができず、不便である。そこで、着座時にポケットから物品の出入れが容易なズボンが必要とされている。
【0007】
特許文献1記載のズボンは、着座時の使用を想定しておらず、着座時には収容部が膝に沿って湾曲するため、出入れが困難である。特許文献2および3記載のズボンは、着座時に物品を出し入れする場合、ポケットの収容部が大腿部の周方向に沿って湾曲するため、収容できる物品の大きさに限りがある。
【0008】
そこで、本発明は、着座時にポケットから物品を容易に出入れ可能なズボンを得ることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係るズボンは、ズボン本体と、前記ズボン本体の前身頃において、着用時において着用者の大腿部に沿って設けられるポケットと、を備え、前記ポケットは、開口部と、前記開口部から挿入される物体を収容する収容部と、を有し、前記開口部は大腿部の長さ方向において膝側に設けられ、前記収容部の底は、前記開口部よりも腰側に位置している。
【0010】
前記開口部は、前記前身頃において前記大腿部の周方向に沿って設けられていてもよい。
【0011】
前記収容部は、前記開口部よりも腰側に伸び出るように、前記前身頃に固定されていてもよい。
【0012】
前記開口部の開口端には、前記収容部に収容される物品の突出を規制する規制部が設けられていてもよい。
【0013】
前記規制部は、第1端が前記開口部の膝側端辺に渡って連結され、第2端が前記開口部の大腿部側に向かって伸び出ている返しであってもよい。
【0014】
前記ズボン本体は、前身頃と後身頃とが互いに連結されて構成され、前記前身頃は、着用時において、前記着用者の大腿部に沿う前身頃上部と、前記着用者の膝に沿う前身頃中部と、前記着用者の脛部に沿う前身頃下部と、を備え、前記前身頃上部と前記前身頃下部とは、自然状態において、前記前身頃中部を介して屈曲して連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着座時にポケットから物品を容易に出入れ可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかるズボンの実施の形態を示す概略斜視図である。
図2】上記ズボンの(a)右側面図、(b)左側面図である。
図3】上記ズボンの概略正面図である。
図4図3のA-A端面図である。
図5】上記ズボンの部分拡大正面図であって、(a)スライドファスナを閉じた状態の図、(b)スライドファスナを開けた状態の図である。
図6】上記ズボンの概略背面図である。
図7】上記ズボンの(a)平面図、(b)底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるズボンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、ズボン1は、ズボン1の外形を構成するズボン本体10と、ポケット13と、により構成される。ズボン本体10は、前身頃11と、後身頃12と、が互いに連結されて形成されている。前身頃11は、着用時において着用者の下半身正面に沿う布地である。前身頃11は、2個の帯状の布地を、長手方向の上端部において互いに連結したような形状をしている。後身頃12は、着用者の背面に沿う布地であり、前身頃11と同様、2個の帯状の布地を長手方向の上端部において互いに連結したような形状であるが、詳細な形状は前身頃11とは異なっている。なお、図1乃至図4、ならびに図6及び図7は、ズボン1の各部位に張力の掛からない状態、すなわち自然状態のズボン1を示している。以降の説明において、着用者の背面側から正面側へ向かう方向を+x方向、着用者の左側面側から右側面側へ向かう方向を+y方向、+x方向および+y方向に直行する方向を+z方向とする。
【0019】
図2(a)および(b)に示すように、前身頃11は、前身頃上部111、前身頃中部112および前身頃下部113がーz方向にこの順に連結されて構成されている。前身頃上部111は、着用時において大腿部に沿う略部分円筒形状であり、当該円筒の円筒軸は+x、-y方向に伸びている。前身頃中部112は、着用者の膝部を覆う部分である。前身頃下部113は、脛部に沿う略部分円筒形状であり、当該円筒の円筒軸は-z方向に沿って伸びている。すなわち、前身頃上部111と前身頃下部113は、前身頃中部112が凸となるように、前身頃中部112を介して屈曲して連結されている。
【0020】
後身頃12は、後身頃上部121、後身頃中部122および後身頃下部123がーz方向にこの順に連結されて構成されている。後身頃上部121は、着用時において大腿部背面側に沿う略部分円筒形状である。後身頃下部123は、着用者のふくらはぎに沿う着部分円筒形状である。後身頃上部121と後身頃下部123は、後身頃中部122が凹となるように、後身頃中部122を介して屈曲して連結されている。
【0021】
すなわち、ズボン1は、自然状態において膝が屈曲した下肢に沿った形状である。本構成によれば、着座時、特に椅座位にズボン1に生じる張力が小さいため、快適に椅座位姿勢を維持することができる。特に、ズボン1が伸びにくい生地、例えばデニム生地で形成されたジーンズである場合にも、快適に椅座位姿勢を維持できる。また、座ったときにウエストラインが下がらず、膝を曲げても裾が上がらないため、着座後にズボン1の形状を整える必要がない。
【0022】
側面視において、後身頃12は、前身頃11よりも大きく屈曲している。すなわち、後身頃上部121の円筒軸と後身頃下部123の円筒軸の成す角θ2は、前身頃上部111の円筒軸と前身頃下部113の円筒軸の成す角θ1よりも小さい。本構成によれば、腰部から膝部に向かって次第に小さくなる、椅座位における一般的な大腿部の形状に沿っているため、快適に椅座位姿勢を維持することができる。
【0023】
図1に示すように、前身頃11の腸骨上付近には、四半円と矩形をつなぎ合わせた形状の破線のステッチ14、15が左右それぞれに形成されている。ステッチ14、15は、それぞれ二重線になっている。ステッチ14、15は、従来のズボン、特にジーンズに設けられているポケットのデザインを模したものである。腸骨上にポケットが形成されていても、椅座位においては腰が屈曲して当該箇所が圧縮されるため、出入れが困難である。腸骨上にポケットがない構成によれば、腸骨上の生地を少ない枚数で構成できるため、柔軟に伸縮し、快適に椅座位姿勢を維持することができる。また、従来のデザインを模したステッチ14、15によれば、見た目の違和感なく自然に着用することができる。
【0024】
図3および図4に示すように、前身頃上部111には、着用時において着用者の大腿部上面に沿うポケット13が設けられている。
【0025】
ポケット13は、開口部131と、収容部132と、を備える。開口部131は、前身頃上部111において大腿部の周方向に沿って設けられているスリット状の開口である。より具体的には、開口部131は、膝側端辺131aと腰側端辺131bが対向して形成されている。開口部131は、前身頃上部111の円筒軸に略直交している。また、開口部131は、前身頃上部111の長手方向中央より膝側に設けられている。
【0026】
収容部132は、開口部131の開口端に連結され、開口部131から挿入される物品50を収容する空間を画する部材である。本実施形態においては、開口部131の膝側端辺131aおよび腰側端辺131bに袋状の収容部132が連結されていて、収容部132の内部が収容空間となっている。収容部132の外側は、略矩形のポケット外被134に覆われていてもよい。また、収容部132は、前身頃上部111とポケット外被134により構成されていてもよい。
【0027】
なお、収容部132の形状は、略矩形に限られず、略円形又は略多角形など、適宜の形状であってよい。
【0028】
収容部132は、着用時において、着用者の膝側から腰側に向かって設けられ、開口部131よりも腰側に底132aを有する。すなわち、物品50は、大腿部に沿って膝側から腰側に挿入される。大腿部は、椅座位においても長さ方向に略平坦であり、曲率も小さいため、スマートホンのような平板状の物品であっても、収容部132に滑らかに収容することができる。また、収容部132が腰側から膝側に向かって設けられているものとすると、物品が腰部又は腹部に接触するのを避けるため、出入れ時に不自然な姿勢となる場合がある。収容部132が膝側から腰側に向かって物品50を挿入可能となっている構成によれば、開口部131前方が膝の上方に位置し、開放されているため、椅座位において物品を容易に出入れすることができる。
【0029】
収容部132は、前記開口部よりも腰側に伸び出るように、前身頃上部111に固定されている。本実施形態においては、収容部132の底132aが前身頃上部111およびポケット外被134と共に縫合されている。この構成によれば、収容部132の向きが膝側から腰側に向かう方向に規定され、物品50を収容部132に滑らかに収容することができる。
【0030】
なお、開口部131の開口端、すなわち膝側端辺131aと腰側端辺131bには、収容部132に収容される物品50の突出を規制する規制部を備えている。本実施形態においては、図4に示すように、ポケット13の開口部131には、返し133が連結されている。返し133は、第1端が開口部131の膝側端辺131aに渡って連結される、帯状の部材である。返し133の第2端は、開口部131の大腿部側に向かって伸び出ている。物品50は、返し133と腰側端辺131bとの間から、収容部132に収容可能である。物品50は、収容部132内において前身頃上部111と返し133との間に保持される。この構成によれば、物品50がポケット13から滑り出ることを防止することができる。
【0031】
規制部は、返し133の構成に替えて、例えば、スライドファスナ、面ファスナ、または磁性体など、着用者が容易に着脱可能な構成であってもよい。
【0032】
なお、ポケット13は、本実施形態においては、右大腿部上に設けられていたが、左大腿部上に設けられていてもよいし、左右の大腿部上に設けられていてもよい。
【0033】
また、ポケット13は、大腿部上面にあるものとしたが、大腿部の外側面に設けられていてもよい。また、大腿部上面および大腿部の外側面の両方に設けられていてもよい。
【0034】
図1および図5(a)、(b)に示すように、前身頃11の上端略中央には、ボタン21およびボタンホール22が形成されている。ボタン21の下方にはz方向に伸びる前立て23と、スライドファスナ24が設けられている。スライドファスナ24は、前身頃11の股部分端部まで連結されている。この構成によれば、前立て23が大きく開放されるので、立位が困難な着用者に対して介助者が着脱する場合であっても、着脱が容易である。
【0035】
図1および図6に示すように、ズボン本体10の上端開口周辺には、全周に渡って複数のベルトループ31乃至35が設けられている。ベルトループ31乃至35は、z方向上端および下端がズボン本体10に連結されて、ループを形成している帯状の部材である。背面側のベルトループ33乃至35の帯幅、すなわち周方向の幅は、正面側のベルトループ31および32の周方向の幅よりも大きい。介助者がズボン1の着用を介助する際や、着用者の身体を支える際に、背面側のベルトループ33乃至35を把持して引き上げる場合がある。本構成によれば、ベルトループ33乃至35が把持しやすく、強度も大きいため、介助しやすい。また、正面側のベルトループ31乃至33の帯幅は、一般的なズボンと同幅である。この構成によれば、正面からの見た目の違和感を抑えることができる。
【0036】
このように、本発明にかかるズボンによれば、着座時にポケットから物品を容易に出入れ可能である。
【0037】
1 ズボン
10 ズボン本体
11 前身頃
13 ポケット
131 開口部
132 収容部
132a 底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7