(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 7/17 20060101AFI20231213BHJP
F16K 7/12 20060101ALI20231213BHJP
F16K 1/42 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
F16K7/17 C
F16K7/12 A
F16K1/42 A
(21)【出願番号】P 2019196268
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【氏名又は名称】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中田 朋貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-293518(JP,A)
【文献】特開2012-092861(JP,A)
【文献】特開2017-223318(JP,A)
【文献】特開2019-100525(JP,A)
【文献】特開2004-263576(JP,A)
【文献】特開2001-295948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
7/00- 7/20
13/00-13/10
25/00-25/04
29/00-29/02
31/12-31/165
31/36-31/42
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室、前記弁室に開口する環状溝、および、流体通路が形成されたボディと、
前記環状溝に配置され前記ボディに保持された環状のシートと、
前記シートに当接および離間することで前記流体通路を開閉するダイヤフラムと、を備え、
前記ボディは、前記ダイヤフラムに向かって突出する内側環状部と、前記内側環状部の外周に位置し前記ダイヤフラムに向かって突出する外側環状部と、を有し、
前記環状溝は、前記内側環状部と前記外側環状部とにより画成され、
前記シートは、環状のゴム部材と、前記ゴム部材の内周側に配置された環状の金属部材と、を有し、
前記ゴム部材は、前記ボディに保持された基部と、前記基部の前記弁室側の端面から前記ダイヤフラムに向かって突出する突出部と、を有し、
前記シートの軸方向において、前記内側環状部の先端は、前記基部の前記端面から前記突出部の先端までの高さの半分の位置よりも前記端面側に位置
し、
前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押さえの下面は、球面状をなしており、
前記端面は、前記突出部の内側に位置する環状の内側端面と、前記突出部の外側に位置する環状の外側端面と、を有し、
前記ゴム部材の径方向において、前記内側端面の幅は、前記外側端面の幅と同じまたは前記外側端面の幅より狭く構成されている、バルブ。
【請求項2】
前記内側環状部の先端は、前記基部の前記端面と同一平面上または前記端面よりも弁室側に対する反対側に位置する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記内側環状部および前記外側環状部は、前記シート側へ加締められている、請求項1または請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記ゴム部材は、フッ素ゴムにより構成されている、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記ダイヤフラムの前記シート側の面には、炭素膜またはフッ素樹脂膜からなる薄膜層が形成されている、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造装置等に用いるバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム部材と金属部材とを係合させた部材を弁座とし、当該金属部材に対して、静止シール体の突出部を塑性変形させて押圧し、弁座を静止シール体に固定したバルブがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のバルブでは、静止シール体の突部の先端の位置が、ダイヤフラムに対して近いため、ダイヤフラムが静止シール体の突出部に接触する恐れがあった。
【0005】
そこで本開示は、閉状態において、ダイヤフラムがシートを保持するボディに接触するのを抑制することができるバルブを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本開示の一態様であるバルブは、弁室、前記弁室に開口する環状溝、および、流体通路が形成されたボディと、前記環状溝に配置され前記ボディに保持された環状のシートと、前記シートに当接および離間することで前記流体通路を開閉するダイヤフラムと、を備え、前記ボディは、前記ダイヤフラムに向かって突出する内側環状部と、前記内側環状部の外周に位置し前記ダイヤフラムに向かって突出する外側環状部と、を有し、前記環状溝は、前記内側環状部と前記外側環状部とにより画成され、前記シートは、環状のゴム部材と、前記ゴム部材の内周側に配置された環状の金属部材と、を有し、前記ゴム部材は、前記ボディに保持された基部と、前記基部の前記弁室側の端面から前記ダイヤフラムに向かって突出する突出部と、を有し、前記シートの軸方向において、前記内側環状部の先端は、前記基部の前記端面から前記突出部の先端までの高さの半分の位置よりも前記端面側に位置する。
【0007】
前記内側環状部の先端は、前記基部の前記端面と同一平面上または前記端面よりも弁室側に対する反対側に位置もしてもよい。
【0008】
前記内側環状部および前記外側環状部は、前記シート側へ加締められてもよい。
【0009】
前記ダイヤフラムを押圧するダイヤフラム押さえの下面は、球面状をなしており、前記端面は、前記突出部の内側に位置する環状の内側端面と、前記突出部の外側に位置する環状の外側端面と、を有し、前記ゴム部材の径方向において、前記内側端面の幅は、前記外側端面の幅と同じまたは前記外側端面の幅より狭く構成されていてもよい。
【0010】
前記ゴム部材は、フッ素ゴムにより構成されていてもよい。
【0011】
前記ダイヤフラムの前記シート側の面には、炭素膜またはフッ素樹脂膜からなる薄膜層が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、閉状態において、ダイヤフラムがシートを保持するボディに接触するのを抑制することができるバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る開状態にあるバルブの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一実施形態に係るバルブ1について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る開状態にあるバルブ1の部分断面図である。
図2は、バルブ1のシート20近傍の拡大断面図である。
【0016】
図1に示すように、バルブ1は、弁部10と、アクチュエータ2と、を備える。なお、以下の説明において、バルブ1の、アクチュエータ2側を上側、弁部10側を下側として説明する。なお、本実施形態に係るバルブ1は、通常状態(駆動流体が供給されていない状態)では閉状態である。
【0017】
弁部10は、ボディ11と、弁座であるシート20と、ボンネット12と、ダイヤフラム13と、押えアダプタ14と、ダイヤフラム押え15と、ホルダ16と、圧縮コイルスプリング17と、を備える。
【0018】
図1、2に示すように、ボディ11には、弁室11aと、流入路11b、流出路11c、および環状溝11dが形成されている。流入路11bおよび流出路11cは、弁室11aに連通している。ボディ11は、弁室11aへ突出する環状部11Eを有する。環状部11Eはその先端部に、ダイヤフラム13に向かって突出する内側環状部11Fと、内側環状部11Fの外周に位置しダイヤフラム13に向かって突出する外側環状部11Gとを有する。環状溝11dは、内側環状部11Fと外側環状部11Gとにより画成され、弁室11aに向かって開口している。流入路11bおよび流出路11cは流体通路に相当する。
【0019】
シート20は、環状をなし、環状溝11dに配置され、環状部11Eに保持されている。内側環状部11Fおよび外側環状部11Gは、シート20側へ加締められており、これにより、シート20はボディ11に保持される。シート20の構成については後述する。
【0020】
図1に示すように、ボンネット12は、有蓋の略円筒状をなし、その下端部をボディ11に螺合させることにより、弁室11aを覆うようにボディ11に固定されている。
【0021】
ダイヤフラム13は、ボンネット12の下端に配置された押えアダプタ14とボディ11の弁室11aを形成する底面とにより、その外周縁部が挟圧され保持されている。ダイヤフラム13は、金属製からなり、例えば、ニッケルコバルト合金、ステンレス鋼等により構成されている。ダイヤフラム13がシート20に対し離間および当接(圧接)することによって、流体通路の開閉が行われる。
【0022】
図2に示すように、ダイヤフラム13のシート20側の接液面13Aには、薄膜層13Bが形成されている。薄膜層13Bは、例えば、炭素膜またはフッ素樹脂膜である。炭素膜は、例えば、DLC(Diamond like Carbon)膜であり、フッ素樹脂膜は、例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)や四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)である。
【0023】
図1、2に示すように、ダイヤフラム押え15は、ダイヤフラム13の上側に設けられ、ダイヤフラム13の中央部を押圧可能に構成されている。ダイヤフラム押さえ15は、ホルダ16に嵌合されている。ダイヤフラム押え15の下面は、球面状をなしている。
【0024】
ホルダ16は、略円柱状をなし、ボンネット12内に上下移動可能に配置されている。アクチュエータ2の図示せぬステムは、ホルダ16の上部に対し螺合されている。
【0025】
圧縮コイルスプリング17は、ボンネット12内に設けられ、ホルダ16を常に下側に付勢している。バルブ1は、圧縮コイルスプリング17によって、通常時(アクチュエータ2の非作動時)は閉状態に保たれる。
【0026】
アクチュエータ2は、例えば、エア駆動式であり、全体で略円柱形状をなしている。駆動流体によって、図示せぬステム、ホルダ16、およびダイヤフラム押え15がダイヤフラム13から離間する側へ移動し、ダイヤフラム13がシート20から離間して、流入路11bと流出路11cとが連通し、バルブ1は開状態となる。
【0027】
次に、シート20について
図2、3を参照して説明する。
図3は、シート20の一部の断面図である。
【0028】
シート20は、ゴム部材21と、金属部材22とを備える。ゴム部材21は、例えば、フッ素ゴム(例えば、パーフルオロエラストマー(FFKM))により構成されている。FFKMとしては、例えば、カルレッツ(登録商標)、バイトン(登録商標)が挙げられる。
【0029】
ゴム部材21は、環状をなし、基部23と、突出部24とを有する。基部23は、内周全体に渡って内周溝23dを有し、断面形状が略横U字状をなしている。基部23は、弁室11a側に端面23Aを有する。端面23Aは、シート20の軸方向に対し直交している。端面23Aは、突出部24の内側に位置する環状の内側端面23Bと、突出部24の外側に位置する環状の外側端面23Cとを有する。ゴム部材21の径方向において、内側端面23Bの幅W1は、外側端面23Cの幅W2と同じまたは外側端面23Cの幅W2より狭く構成されている。突出部24は、基部23の端面23Aからダイヤフラム13に向かって突出している。バルブ1が閉状態のときに、ダイヤフラム13は突出部24に当接する。
【0030】
金属部材22は、環状をなし、例えば、ステンレス鋼により構成されている。金属部材22は、外周全体に渡って突出するフランジ部25を有する。フランジ部25が、基部23の内周溝23dに挿入されて、ゴム部材21と金属部材22とが一体化されている。金属部材22は、ゴム部材21の端面23Aと面一の端面22Aを有する。また、ゴム部材21の内周面と金属部材22の内周面とは面一に構成されている。
【0031】
図2に示すように、シート20の軸方向において、内側環状部11Fの先端は、基部23の端面23Aから突出部24の先端までの高さの半分の位置よりも端面23A側に位置する。本実施形態では、シート20の軸方向において、内側環状部11Fの先端は、基部23の端面23Aと同一平面上に位置する。なお、シート20の軸方向において、内側環状部11Fの先端は、基部23の端面23Aよりも弁室11a側に対する反対側に位置してもよい。
【0032】
以上説明した本実施形態のバルブ1によれば、ボディ11は、ダイヤフラム13に向かって突出する内側環状部11Fと、内側環状部11Fの外周に位置しダイヤフラム13に向かって突出する外側環状部11Gとを有し、ゴム部材21は、ボディ11に保持された基部23と、基部23の端面23Aからダイヤフラム13に向かって突出する突出部24とを有し、シート20の軸方向において、内側環状部11Fの先端は、基部23の端面23Aから突出部24の先端までの高さの半分の位置よりも端面23A側に位置する。
【0033】
かかる構成によれば、閉状態におけるバルブ1において、ダイヤフラム押え15に押圧され突出部24に当接するダイヤフラム13が、ボディ11の内側環状部11Fに接触するのを抑制することができる。
【0034】
シート20の軸方向において、内側環状部11Fの先端を、基部23の端面23Aと同一平面上または、基部23の端面23Aよりも弁室11a側に対する反対側に位置させることにより、ダイヤフラム13が、内側環状部11Fに接触するのを確実に抑制することができる。
【0035】
内側環状部11Fおよび外側環状部11Gは、シート20側へ加締められているので、シート20がボディ11へ強固に固定される。
【0036】
ダイヤフラム押え15の下面は、球面状をなし、ゴム部材21の径方向において、内側端面23Bの幅W1は、外側端面23Cの幅W2と同じまたは外側端面23Cの幅W2より狭く構成されている。かかる構成によれば、内側端面23Bの幅W1が外側端面23Cの幅W2よりも広く構成されている場合と比較して、突出部24を内方側に位置させることができる。これにより、突出部24がダイヤフラム13と接触する位置が、より内方側になるので、ダイヤフラム13が、内側環状部11Fに接触するのをさらに防止することができる。また、面圧を小さくすることができ、少ない推力でバルブ1を閉めることができる。
【0037】
ゴム部材21は、フッ素ゴムにより構成され、ダイヤフラム13のシート20側の接液面13Aには、炭素膜またはフッ素樹脂膜からなる薄膜層13Bが形成されている。これにより、高温でも使用可能なバルブ1を提供することができ、ゴム部材21のダイヤフラム13への転写を抑制することができる。
【0038】
なお、本開示は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本開示の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1:バルブ
11:ボディ
11a:弁室
11b:流入路
11c:流出路
11d:環状溝
11F:内側環状部
11G:外側環状部
13:ダイヤフラム
20:シート
21:ゴム部材
22:金属部材
23:基部
24:突出部
23A:端面
23B:内側端面
23C:外側端面