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  • 特許-路面標示および路面標示の施工方法 図1
  • 特許-路面標示および路面標示の施工方法 図2A
  • 特許-路面標示および路面標示の施工方法 図2B
  • 特許-路面標示および路面標示の施工方法 図3
  • 特許-路面標示および路面標示の施工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】路面標示および路面標示の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/559 20160101AFI20231213BHJP
【FI】
E01F9/559
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020025904
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130941
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】510232326
【氏名又は名称】山陽ロード工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】秋田 英次
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164359(JP,A)
【文献】特開2011-252294(JP,A)
【文献】特開平09-088024(JP,A)
【文献】特開2004-333668(JP,A)
【文献】特開昭55-159007(JP,A)
【文献】特開平03-212504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を案内するために路面に配置される路面標示であって、
前記路面と固着するために当該路面に敷設される下地部材と、
前記下地部材に融着される溶融式路面標示部材とを備え、
前記溶融式路面標示部材は、
前記下地部材に融着される側の一部に形成される切り欠き部と、
前記切り欠き部によって形成された空間に配置されるICタグと、
前記ICタグが配置された切り欠き部を閉塞するように配置される耐熱性部材とを含むことを特徴とする、路面標示。
【請求項2】
前記耐熱性部材は、少なくとも前記下地部材と前記ICタグとの間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の路面標示。
【請求項3】
前記耐熱性部材は、前記切り欠き部に配置されたICタグを覆うように配置されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の路面標示。
【請求項4】
前記耐熱性部材は、ウレタンで構成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の路面標示。
【請求項5】
前記溶融式路面標示部材は、略円形状または略楕円形状であって、周辺部分よりも中央部分の厚みが大きく形成されており、
前記切り欠き部は、前記溶融式路面標示部材の中央部分に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の路面標示。
【請求項6】
前記下地部材は、前記溶融式路面標示部材よりも大きいことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の路面標示。
【請求項7】
前記溶融式路面標示部材の表面は、曲面形状を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の路面標示。
【請求項8】
前記下地部材および前記溶融式路面標示部材は、溶融式塗料で形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の路面標示。
【請求項9】
前記溶融式路面標示部材は、ガラスビーズを含む溶融式塗料で形成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の路面標示。
【請求項10】
移動体を案内するために路面に配置される路面標示を施工する路面標示の施工方法であって、
前記路面に下地部材を敷設し、
前記路面に敷設された下地部材を加熱して溶融し、
前記溶融された下地部材に溶融式路面標示部材を配置し、
前記溶融式路面標示部材は、
前記下地部材に融着される側の一部に形成される切り欠き部と、
前記切り欠き部によって形成された空間に配置されるICタグと、
前記ICタグが配置された切り欠き部を閉塞するように配置される耐熱性部材とを含むことを特徴とする、路面標示の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面標示および路面標示の施工方法に関し、より特定的には、ICタグを備える路面標示および路面標示の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、道路を通行する歩行者および自動車等を案内するために設置される標識および路面に直接描かれたり設置されたりする路面標示がある。
【0003】
路面標示には、例えば、プラスチック樹脂製および金属製の鋲を道路に埋没させることによって形成するものや単に塗料を用いて道路に直接描くことによって形成するもの等がある。このように形成される路面標示は、設置の容易性、コスト、および視認性等を考慮して、様々な工夫を凝らしたものが普及している。
【0004】
例えば、特許文献1では、再帰反射材を有し、路面に設置される前に溶融式区画線塗料を用いて予め形成され、路面とは反対側に向かって膨らんだ形状を有する反射体が開示されている。当該反射体は、溶融式区画線塗料が硬化すると反射式道路鋲としてアスファルト舗装に固定されるため、路面の任意の箇所に容易に設置できる。
【0005】
ところで、近年、地図情報、交通情報、運転情報、および環境情報等を利用したカーナビゲーションシステムや自動運転システムに関する技術が発展している。これらのシステムにおいて、地図情報、交通情報、運転情報、および環境情報等の正確な情報をどのように取得するかが重要であり、GPS、車載カメラ、無線タグ、および通信技術等が用いられている。
【0006】
そこで、路面標示の施工時において、路面に塗布される塗料にICタグを混合して散布機等を用いて散布する技術がある(例えば、特許文献2参照)。具体的には、道路の所定位置に高温状態(約200℃)の塗料を、スプレーガン等を用いて塗布する。続いて、冷却固化する前の塗料の表面に混合されたガラスビーズとICタグとを散布機等を用いて散布する。これにより、ICタグを路面標示の表面上に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016‐164359号公報
【文献】特開2011‐252294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されている施工方法では、路面にICタグを散布することによって容易に配置することができるものの、当該路面への固着が不安定である。また、当該ICタグは被覆材で保護されているものの、路面の表面に突出して露出しているため、車両等が通過することによって摩耗し、破損することも十分に考えられる。
【0009】
それ故に、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、路面にICタグを容易に確実に固着させることができる路面標示および路面標示の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0011】
本発明の一局面に係る路面標示は、移動体を案内するために路面に配置される路面標示であって、前記路面と固着するために当該路面に敷設される下地部材と、前記下地部材に融着される溶融式路面標示部材とを備え、前記溶融式路面標示部材は、前記下地部材に融着される側の一部に形成される切り欠き部と、前記切り欠き部によって形成された空間に配置されるICタグと、前記ICタグが配置された切り欠き部を閉塞するように配置される耐熱性部材とを含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、下地部材に融着される溶融式路面標示部材における切り欠き部によって形成された空間にICタグを配置しているため、路面にICタグを容易に確実に固着させることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記耐熱性部材は、少なくとも前記下地部材と前記ICタグとの間に配置されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、前記下地部材と前記ICタグとの間に耐熱性部材が配置されるため、当該路面標示を施工する際に、熱によってICタグが破損することを回避することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記耐熱性部材は、前記切り欠き部に配置されたICタグを覆うように配置されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、ICタグを覆うように耐熱性部材が配置されるため、周辺からの熱や衝撃によってICタグが破損することを回避することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記耐熱性部材は、ウレタンで構成されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、ウレタンの耐熱性および硬質・伸縮性を利用して、ICタグをより確実に保護することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記溶融式路面標示部材は、略円形状または略楕円形状であって、周辺部分よりも中央部分の厚みが大きく形成されており、前記切り欠き部は、前記溶融式路面標示部材の中央部分に形成されていることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、仮に、車両のタイヤ等が通過した場合であっても当該車両側への衝撃を軽減するとともに、厚みが大きく形成された中央部分にICタグが配置されているため、ICタグが破損することを回避することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記下地部材は、前記溶融式路面標示部材よりも大きいことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、路面と下地部材と溶融式路面標示部材との間に隙間が形成される可能性を軽減し、密着性が高く、より確実に接着させることができる。
【0017】
また、好ましくは、前記溶融式路面標示部材の表面は、曲面形状を有することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、仮に、車両のタイヤ等が通過した場合であっても当該車両側への負担を軽減することができる。
【0018】
また、好ましくは、前記下地材および前記溶融式路面標示部材は、溶融式塗料で形成されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、同一材料で形成するため、接着性が良いとともに、作業効率および生産効率も向上することから、生産コストも軽減することができる。
【0019】
また、好ましくは、前記溶融式路面標示部材は、ガラスビーズを含む溶融式塗料で形成されることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示は、前記溶融式路面標示部材に含まれるガラスビーズによって視認性を向上させることができる。
【0020】
また、好ましくは、移動体を案内するために路面に配置される路面標示を施工する路面標示の施工方法であって、前記路面に下地部材を敷設し、前記路面に敷設された下地部材を加熱して溶融し、前記溶融された下地部材に溶融式路面標示部材を配置し、前記溶融式路面標示部材は、前記下地部材に融着される側の一部に形成される切り欠き部と、前記切り欠き部によって形成された空間に配置されるICタグと、前記ICタグが配置された切り欠き部を閉塞するように配置される耐熱性部材とを含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係る路面標示を施工する路面標示の施工方法は、下地部材に融着される溶融式路面標示部材における切り欠き部によって形成された空間にICタグを配置しているため、路面にICタグを容易に確実に固着させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、路面にICタグを容易に確実に固着させることができる路面標示および路面標示の施工方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る路面標示100を配置した道路において車両が走行している様子を示す図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る路面標示100を示す斜視図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る路面標示100を構成する溶融式路面標示部材110および下地部材200を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る路面標示100が路面20に設置された様子を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る路面標示100を路面20に施工する路面標示の施工方法400を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0024】
<路面標示の概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る路面標示100を配置した道路において車両が走行している様子を示す図である。図1において、車両(移動体)10が走行する道路(路面)20において、センターライン30として連続的に配置されている路面標示100には、ICタグが含まれている。当該ICタグを用いて、各車両、無線基地局、および管理センター等との間において種々の情報を送受信し、例えば、当該道路を走行する車両10を制御し、運転支援および自動運転等を実現することになる。
【0025】
典型的には、当該道路を走行する車両10がセンターライン30に沿うように運転支援され、または自動運転される。車両10がセンターライン30を逸脱して走行しようとすると、各路面標示100に含まれているICタグが検知し、車両10に備えられる警告装置を動作させることによって運転者に報知する。また、ICタグと車両10に備えられた運転支援システムとによって当該車両10を正しい走行路に案内したり、予め正しい走行路を走行するような自動運転システムによって制御されたりする。
【0026】
なお、このように道路に設置されたICタグを用いて取得される情報は、当該道路をまさに走行している車両のみを対象とすることに留まらない。無線基地局等を介して、地図情報、渋滞等の交通情報、および天気や気温等の環境情報等を収集および分析することも可能であり、その他道路に設置されたライブカメラや防犯カメラ、および車載カメラによって取得された画像データと組み合わせて利用し、その他様々なシステム、用途に利用することもできる。
【0027】
<路面標示の詳細な構成>
図2Aは、本発明の一実施形態に係る路面標示100を示す斜視図であり、図2Bは、本発明の一実施形態に係る路面標示100を構成する溶融式路面標示部材110および下地部材200を示す斜視図である。図2Aおよび図2Bにおいて、路面標示100は、溶融式路面標示部材110と下地部材200とを備える。
【0028】
溶融式路面標示部材110は、溶融式塗料で形成されるライン材を略円形状に固めたものであり、周辺部分よりも中央部分の厚みが大きく形成されている。車両のタイヤが当該路面標示100の上を通過することも想定され、当該溶融式路面標示部材110が略円形状であって、中央部分よりも周辺部分の厚みが小さいと、当該路面標示100に対していずれの方向からタイヤが通過したとしても、当該車両に対する衝撃等の影響を緩和することができる。その結果、車両のタイヤへの負担や当該車両そのものへの負担を軽減することができ、運転者、同乗者、および積載物への衝撃等も軽減することができる。
【0029】
また、溶融式路面標示部材110の表面は、曲面形状を有し、なだらかな形状を有している。仮に、溶融式路面標示部材110の表面に段差形状を備えていれば、当該路面標示100の上をタイヤが通過した場合、当該段差形状によって、車両のタイヤや当該車両そのものに大きな負担を与えてしまう。
【0030】
そして、後述するように、厚みが大きく形成された中央部分にはICタグが配置されるため、当該ICタグが配置される中央部分の厚みを大きくすることによって、当該ICタグが破損することを回避している。
【0031】
さらに、溶融式路面標示部材110は、ガラスビーズを含む溶融式塗料で形成されても構わない。より具体的には、図2Aおよび図2Bに示すように、溶融式路面標示部材110の表面において、格子状に凹凸模様を形成することによって、ガラスビーズを含む溶融式塗料で形成された溶融式路面標示部材110の視認性を、さらに向上させている。
【0032】
下地部材200は、溶融式路面標示部材110よりも同等もしくは大きく形成されている。これは、溶融式路面標示部材110と下地部材200とで路面標示100を形成する際に、確実に路面20に固着する必要があるとともに、路面20と溶融式路面標示部材110と下地部材200との間に隙間が形成される可能性を軽減している。より詳細には、溶融式路面標示部材110において、後述する切り欠き部へ異物が侵入することを抑止するために、溶融式路面標示部材110と下地部材200との密着性を高くしている。
【0033】
さらに、下地部材200は、溶融式路面標示部材110で用いられる溶融式塗料と同様の溶融式塗料を適用すれば、一体性が向上し、さらに、接着性が向上するとともに、生産効率および作業効率も向上し、生産コストの軽減にも繋がる。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る路面標示100が路面20に設置された様子を示す断面図である。図3において、路面20の上に路面標示100が形成されており、当該路面標示100は、溶融式路面標示部材110と下地部材200とを備えている。
【0035】
溶融式路面標示部材110は、路面20に固着された下地部材200の上に融着され、配置されている。さらに、溶融式路面標示部材110は、下地部材200と融着される側の一部に切り欠き部111を形成し、当該切り欠き部111によって形成された空間には、ICタグ120および耐熱性部材130が配置されている。
【0036】
ICタグ120は、主に車両10に備えられた電子機器に情報を送信する無線電子機器であって、例えば、RFIDタグおよびUHFタグ等の無線タグであるが、一般的には、高温(概ね200度以上)や激しい衝撃等には弱い。
【0037】
そこで、耐熱性部材130は、ICタグ120と下地部材200とが接触することがないように、少なくともICタグ120と下地部材200との間に配置されている。下地部材200の上に溶融式路面標示部材110を融着する際には、下地部材200を加熱して溶融しながら溶融式路面標示部材110を融着するため、ICタグ120が高温部分に接触して破損しないようにしている。
【0038】
切り欠き部111によって形成された空間にICタグ120が配置されているが、当該ICタグ120を外部の異物等から保護するために、当該切り欠き部111を閉塞するように、耐熱性部材130が配置される。
【0039】
ここでは、耐熱性部材130として、熱伝導性の低く、硬質で、伸縮性のあるウレタンフォームを用いることとするが、耐熱性部材130の材料としては、ウレタンに限定されるものではない。例えば、熱伝導性が低く、切り欠き部111を閉塞するように配置することによって当該切り欠き部111の空間の密閉性を確保できるものであれば、セラミック、コルク、石膏、粘土、グラスファイバー、木材、および樹脂等であっても構わない。
【0040】
さらに、路面20に形成された路面標示100は、車両が通過したり、その他外的な衝撃等を受けたりするため、溶融式路面標示部材110の切り欠き部111によって形成された空間に配置されたICタグ120を保護する必要がある。一方で、ICタグ120は水没してしまうとデータ通信を良好に行うことができず電波障害となる可能性もある。
【0041】
このため、ICタグ120は、溶融式路面標示部材110の厚み方向に対して中央部分に配置されることが好ましい。より具体的には、溶融式路面標示部材110の最上面から3mm~6mm程度、路面20から6mm~10mm程度の位置に配置されるようにすればよい。その結果、路面標示100が摩耗したとしても、ICタグ120が即座に露出するようなことは回避できるとともに、大雨、洪水、積雪があったとしても、ICタグ120が水没して電波障害になる可能性を軽減することができる。
【0042】
<路面標示の施工方法>
次に、路面標示100を路面20に施工する路面標示の施工方法について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る路面標示100を路面20に施工する路面標示の施工方法400を示すフローチャートである。路面標示の施工方法400は、下地部材敷設ステップ410と、下地部材加熱/溶融ステップ420と、溶融式路面標示部材配置ステップ430とを含む。
【0043】
下地部材敷設ステップ410において、路面20に下地部材200を敷設する。下地部材200は、典型的には、図2Bに示したように略円形状であって、溶融式路面標示部材110よりも同等もしくは大きく形成されている。また、下地部材200の大きさや厚さは、路面20に配置する路面標示の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、直径70mm~120mm程度、厚さ1mm~3mm程度のものが用いられる。
【0044】
下地部材加熱/溶融ステップ420において、路面20に敷設された下地部材200を例えば、トーチ等を用いて加熱して溶融する。これによって、下地部材200を路面20に接着する。ここで、下地部材200は、例えば、所謂舗装接着材としてのライン材樹脂を用いるが、溶融式路面標示部材110に用いられる溶融式塗料を適用しても構わない。
【0045】
溶融式路面標示部材配置ステップ430において、下地部材加熱/溶融ステップ420で溶融されている状態の下地部材200の上に、溶融式路面標示部材110を配置する。より具体的には、下地部材200の表面が溶融されている状態で、硬化する前に、溶融式路面標示部材110を下地部材200の上に配置することによって、下地部材200に溶融式路面標示部材110を接着させる。
【0046】
ここで、溶融式路面標示部材110は、下地部材200に融着される側の一部に切り欠き部111を形成しており、当該切り欠き部111によって形成された空間には、ICタグ120が配置されている。ICタグ120は、加熱/溶融された下地部材200によって溶解したり、破損・故障したりしてしまうおそれがあるが、当該切り欠き部111を閉塞するように耐熱性部材130が配置されているため、ICタグ120は保護されている。
【0047】
路面20に接着された下地部材200に、溶融式路面標示部材110を接着することによって、溶融式路面標示部材110と下地部材200とで構成される路面標示100を路面20に確実に固着させることができる。さらには、溶融式路面標示部材110よりも下地部材200の大きさを大きく形成していることにより、路面20と溶融式路面標示部材110との間に隙間が発生し難く、その結果、切り欠き部111によって形成された空間に外部からの異物や水が浸入し難くなる。
【0048】
以上のように、本発明の一実施形態に係る路面標示100および路面標示の施工方法400によれば、下地部材200に融着される溶融式路面標示部材110における切り欠き部111によって形成された空間にICタグ120を配置しているため、路面20にICタグ120を容易に確実に固着させることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、溶融式路面標示部材110は、略円形状としていたが、これに限定されるものでなく、例えば、略楕円形状であっても構わない。楕円形状の長軸がセンターライン30に沿うように配置すれば、センターラインとして連続性を確保できる場合もあり、また、その他、駐車場での区画線や停車線に合わせて適宜視認性を考慮した形状にしても構わない。
【0050】
また、本実施形態では、下地部材200は、主に、溶融式路面標示部材110よりも大きい構成を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、同一の大きさであっても構わないし、小さい構成としても、路面20との固着性および切り欠き部111内部が密閉される構成であれば、何でも構わない。
【0051】
さらに、下地部材200は、図2Bに示したように略円形状を有する固体を想定しているが、液体状であっても構わない。その場合、液体状の下地部材を路面20に塗布し、硬化する前に、当該下地部材の上に、溶融式路面標示部材110を配置する。
【0052】
また、本実施形態では、耐熱性部材130は、ICタグ120と下地部材200とが接触することがないように、ICタグ120と下地部材200との間に配置されていたが、これに限定されるものではなく、耐熱性部材130は、切り欠き部111に配置されたICタグ120を覆うように配置されても構わない。耐熱性部材130をICタグ120を覆うように配置すれば、外的な衝撃、水、高温などから、より強固にICタグ120を保護することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、車両10が走行する道路(路面)20に形成されるセンターライン30を例に挙げたが、路面標示100は、このような道路への適用に限定されるものではなく、例えば、歩道、駐車場、その他区画線や停止線を形成するような領域において適用しても構わない。
【0054】
以上、本発明の一実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、移動体を案内する路面標示等に利用可能であって、特に、ICタグを備える路面標示等に有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両(移動体)
20 道路(路面)
30 センターライン
100 路面標示
110 溶融式路面標示部材
111 切り欠き部
120 ICタグ
130 耐熱性部材
200 下地部材
400 路面標示の施工方法
410 下地部材敷設ステップ
420 下地部材加熱/溶融ステップ
430 溶融式路面標示部材配置ステップ
図1
図2A
図2B
図3
図4