(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F16F15/02 A
F16F15/02 C
(21)【出願番号】P 2020082339
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年7月1日 https://www.akita-pu.ac.jp/system/me/tomioka/index.html https://www.akita-pu.ac.jp/system/me/tomioka/富岡研究室紹介20190515_p3.pdf https://www.akita-pu.ac.jp/system/me/tomioka/researches/index.html 令和2年2月20日 第1回本莊由利テクノネット 令和2年4月1日 https://www.akita-pu.ac.jp/system/me/tomioka/index.html https://www.akita-pu.ac.jp/system/me/tomioka/第1回%20本莊由利テクノネットポスター発表20200220_樋口.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】富岡 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】樋口 京哉
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018004578(DE,A1)
【文献】特開平01-220741(JP,A)
【文献】特表2009-516811(JP,A)
【文献】実開昭62-052342(JP,U)
【文献】特開平03-265735(JP,A)
【文献】特開2005-069279(JP,A)
【文献】特開2004-122845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性体に質量体が埋め込まれて構成される
複数個の制振体
と、
複数個の前記制振体をそれぞれ収納する孔が形成された支持体と、を備え、
複数個の前記制振体の固有振動数は、制振対象の構造物が有する2以上の固有振動数にそれぞれ相当する値に振り分けられていることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
前記支持体は、変形しない材料で構成されていること特徴とする請求項1記載の制振装置。
【請求項3】
前記制振体の固有振動数は、前記質量体の大きさもしくは質量と、前記粘弾性体の大きさもしくは材料特性との組み合わせによって調整されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
複数個の前記制振体におけるそれぞれ前記粘弾性体は、同一の材料特性を有し、
前記制振体の固有振動数は、前記質量体の大きさと、前記粘弾性体の大きさとの組み合わせによって調整されていることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
前記質量体は、3次元方向で振動可能に前記粘弾性体に埋め込まれていることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれかに記載の制振装置。
【請求項6】
前記粘弾性体及び前記質量体は、球体であることを特徴とする請求項
5に記載の制振装置。
【請求項7】
粘弾性体に質量体が埋め込まれて構成される制振体と、
前記制振体を収納する孔が形成された支持体と、を備え、
前記質量体は、3次元方向で振動可能に前記粘弾性体に埋め込まれ、
前記粘弾性体もしくは前記質量体の大きさは、前記質量体が振動する方向によって異なり、前記質量体の多方向への振動の固有振動数が独立に調整されていることを特徴とする制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物から発生する騒音と弾性振動を低減する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両や航空機といった高速かつ軽量化が求められる構造物では、構造物から発生する騒音と弾性振動が問題とされている。構造物から発生する騒音と弾性振動を低減する振動低減デバイスのひとつとして、粘弾性体の水平方向の弾性変形による弾性振動モードを活用した動吸振器が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Michel Azoulay, Alexander Veprik, Vladimir Babitsky and Neil Halliwell, Distributed absorber for Noise and vibration Control, Shock and Vibration, Shock and Vibration 18 (2011) 181-219 DOI 10.3233/SAV20100608 IOS Press
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、弾性体の水平方向の弾性変形による弾性振動モードを活用しており、弾性振動モードの固有振動数を任意に調整することは困難であることから、制振対象ごとに固有振動数が異なる一般の構造物の弾性振動を低減する制振デバイスを構成することが困難である。また、構造物の弾性振動は多数の固有振動モードを有することから、効果的な振動の低減には複数の固有振動モードを同時に制振することが必要になるが、弾性振動モードを任意に調整できないため、複数の固有振動モードを同時に制振することが困難である。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決し、構造物が有する複数の固有振動モードを同時に制振するマルチモード制振を実現することができる制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の制振装置は、粘弾性体に質量体が埋め込まれて構成される複数個の制振体と、
複数個の前記制振体をそれぞれ収納する孔が形成された支持体と、を備え、複数個の前記制振体の固有振動数は、制振対象の構造物が有する2以上の固有振動数にそれぞれ相当する値に振り分けられていることを特徴とする。
さらに、本発明の制振装置は、前記支持体は、変形しない材料で構成されていること特徴とする。
さらに、本発明の制振装置は、前記制振体の固有振動数は、前記質量体の大きさもしくは質量と、前記粘弾性体の大きさもしくは材料特性との組み合わせによって調整されていても良い。
さらに、本発明の制振装置は、複数個の前記制振体におけるそれぞれ前記粘弾性体は、同一の材料特性を有し、
前記制振体の固有振動数は、前記質量体の大きさと、前記粘弾性体の大きさとの組み合わせによって調整されていても良い。
さらに、本発明の制振装置は、前記質量体は、3次元方向で振動可能に前記粘弾性体に埋め込まれていても良い。
さらに、本発明の制振装置は、前記粘弾性体及び前記質量体は、球体であっても良い。
また、本発明の制振装置は、粘弾性体に質量体が埋め込まれて構成される制振体と、前記制振体を収納する孔が形成された支持体と、を備え、前記質量体は、3次元方向で振動可能に前記粘弾性体に埋め込まれ、前記粘弾性体もしくは前記質量体の大きさは、前記質量体が振動する方向によって異なり、前記質量体の多方向への振動の固有振動数が独立に調整されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上のように構成されているので、複数個の制振体10の固有振動数を制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数に応じてそれぞれ簡単に設定することができ、構造物20が有する複数の固有振動モードを同時に制振するマルチモード制振を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る制振装置の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す制振装置と動吸振器との対応関係を説明する説明図である。
【
図3】本発明に係る制振装置の数値計算モデルを示す図である。
【
図4】
図3に示す制振体の固有振動数と粘弾性体及び質量体の大きさ(質量)との関係を示す図である。
【
図5】
図3に示す制振体の質量体の直径を変化させた場合の固有振動数の変化を示す図である。
【
図6】
図1に示す制振装置によって制振する構造物の例を示す図である。
【
図7】
図1に示す制振装置の制振効果の実証例を示す図である。
【
図8】本発明に係る制振装置の他の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の制振装置1は、
図1を参照すると、粘弾性体2と、粘弾性体2に埋め込まれた質量体3とからなる複数個の制振体10(10a、10b)と、複数個の制振体10(10a、10b)を支持する支持体4を備えている。
【0010】
粘弾性体2及び質量体3は、いずれも球体であり、互いの中心が一致するように、質量体3が粘弾性体2に埋め込まれている。そして、複数の制振体10(質量体3が埋め込まれた粘弾性体2)は、粘弾性体2とほぼ同一の直径を有する複数の球状内部空間にそれぞれ収納されている。
【0011】
粘弾性体2は、粘性と弾性とを有する公知の材料(エラストマー等)で構成され、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゲル等で構成することができる。粘弾性体2は、
図2に示すように、動吸振器において、質量mを支持するバネk及び減衰器(ダンパ)cに相当する役割を担う。
【0012】
質量体3は、粘弾性体2に埋め込まれた状態で振動可能な質量を有する材料で構成され、
図2に示すように、動吸振器において、バネk及び減衰器cに支持された質量mとしての役割を担っている。質量体3は、例えば、鉄等の金属で構成することができる。
【0013】
支持体4は、エポキシ樹脂等の変形しない材料で構成されている。
【0014】
なお、本実施の形態において、粘弾性体2は、上部半球体及び下部半球体とで構成され、支持体4は、半球状の孔が共に形成された上部ケース及び下部ケースとで構成されている。そして、上部半球体及び下部半球体を孔にそれぞれ収納した上部ケース及び下部ケースを、質量体3を挟んで貼り合わせることで、質量体3を粘弾性体2の中心に埋め込んでいる。
【0015】
図2に示すように、質量体3は、動吸振器における質量mとしての役割を担っていると共に、粘弾性体2は、動吸振器におけるバネk及び減衰器cとしての役割を担っている。すなわち、制振体10は、球状の粘弾性体2の中心に埋め込まれた球状の質量体3が多方向に振動する動吸振器として機能する。そして、質量体3は、任意方向に同じ固有振動数で振動する。
【0016】
制振体10aと、制振体10bの固有振動数は、制振対象の構造物20が有する異なる固有振動数に対する動吸振器として作用するようにそれぞれ調整され、構造物20が有する複数の固有振動モードを同時に制振するマルチモード制振を実現する。すなわち、複数個の制振体10の固有振動数は、制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数にそれぞれ相当する値に振り分けている。なお、本実施の形態では、制振装置1を2つの異なる固有振動数にそれぞれ調整された2個の制振体10で構成したが、3以上の異なる固有振動数にそれぞれ調整された3以上の制振体10で構成しても良い。そして、同じ固有振動数に調整された2以上の制振体10を設けることもできる。
【0017】
制振体10の固有振動数は、粘弾性体2及び質量体3の大きさ(質量)の組み合わせ、もしくは粘弾性体2の粘性や弾性(粘弾性特性)などの材料特性と質量体3の大きさ(質量)の組み合わせによって調整可能である。
【0018】
以下、粘弾性体2の材料特性とした場合に、粘弾性体2及び質量体3の大きさ(質量)が制振体10の振動特性に与える影響の解析結果について
図3及び
図4を参照して詳細に説明する。
【0019】
図3に示すように、制振体10を1個とした制振装置1aを加振台30の上に固定し、加振台30の中央に1Nで上下方向に加振する数値計算モデルは有限要素法の汎用ソフトを用いて構築した。そして、支持体4aの寸法を縦50mm、横50mm、高さ50mmに固定し、粘弾性体2の直径と質量体3の直径の一方の寸法を一定とし、他方の寸法を変化させて固有振動解析を行った。
【0020】
図4(a)は、に質量体3の直径を15mmに固定し、粘弾性体2の直径を変化させた場合の固有振動数の変化である。これによると、質量体3の直径を固定した場合、粘弾性体2の直径が大きくなると固有振動数は低くなる傾向にある。
【0021】
また、
図4(b)は、粘弾性体2の直径を30mmに固定し、質量体3の直径を変化させた場合の固有振動数の変化である。これによると、粘弾性体2の直径を固定した場合、質量体3の直径が大きくなると固有振動数は低くなる傾向にある。なお、質量体3の直径が15mmよりも大きくなると固有振動数が大きくなっている。しかし、これは質量体3の直径の増大に伴って、粘弾性体2の厚さが小さくなり,相対的にばね定数が増大しているためと考える。
【0022】
以上の数値解析の結果から、材料特性が同一なら、粘弾性体2と質量体3の寸法により、制振体10の固有振動数が一定方向に変化することが確認できる。これにより、制振対象の構造物20の固有振動数に応じた制振装置1の設計が可能になる。
【0023】
次に、1次モード:24.5Hz、2次モード:67.7Hz、3次モード:125.6Hz、4次モード:187.1Hz、5次モード:239.3Hzの固有振動数を有する構造物20を制振対象とした制振装置1の調整方法について
図5乃至
図7を参照して詳細に説明する。
【0024】
まず、質量体3の直径もしくは粘弾性体2の直径を固定し、他方の粘弾性体2の直径もしくは質量体3の直径を変化させた場合の固有振動数の変化を調べる。本実施の形態では、粘弾性体2の直径を50mmに固定し、他方の質量体3の直径を変化させた場合の固有振動数の変化を調べた。
図5は、その周波数応答関数(FRF)の結果であり、質量体3の直径が大きくなるほどピークは低周波へ移動する。
【0025】
そして、調べた固有振動数に基づいて、制振対象である粘弾性体2が有する固有振動数に相当する質量体3の直径を特定する。本実施の形態では、制振対象である粘弾性体2が有する固有振動数の3次モード及び4次モードの125.6Hz及び187.1Hz付近でFRFがピークとなる30mm及び15mmを質量体3の直径とした。すなわち、3次モード及び4次モードを制振対象とした。
【0026】
そして、粘弾性体2の直径を50mmとすると共に、質量体3の直径を30mmとした制振体10aと、粘弾性体2の直径を50mmとすると共に、質量体3の直径を15mmとした制振体10bとを制振装置1を製作し、制振効果を検証した。
【0027】
制振対象の構造物20は、
図6に示すように、長手方向の長さ2000mm、幅300mm、重さ10kgの鉄道車両の1/10スケールの台枠模型とした。そして、前後の先端から300mmの地点をまくらばねで支持し、前端の中央を加振点とする。そして、前端から1240mmの位置に、制振体10a及び制振体10bの中心が位置するように制振装置1を搭載し、先端から1390mmの中央を測定点とした。
【0028】
加振信号は、カットオフ周波数が5Hz及び400Hzのバンドパスフィルタを通したランダム波(バンドランダム波)とし、60秒間の加振を行った。そして、サンプリング周波数を4000Hzとして測定点の加速度(応答加速度)をAD変換し、加振点で測定した力(加振力)に対する応答加速度のFRFを求めた。
【0029】
図7は、測定点のFRFであり、点線は構造物20のみでの測定結果を、実線は制振装置1を搭載した場合の測定結果を、一転鎖線は制振装置1の同一質量の剛体質量を搭載した場合の測定結果をそれぞれ示している。
図7を参照すると、制振対象とした3次モード及び4次モードのピークが、制振装置1を搭載した場合には、構造物20のみ及び剛体質量を搭載した場合に比べて下がっていることが読み取れる。従って、制振対象の構造物20が有する異なる固有振動数にそれぞれ調整された複数の制振体10(10a、10b)を搭載することで、マルチモード制振を期待することができる。
【0030】
このように、粘弾性体2の直径を一定とした場合の質量体3のサイズ(質量)と固有振動数との関係を予め調べ、制振対象の構造物20が有する複数の固有振動数に対応する質量体3の複数のサイズ(質量)が特定されている場合、複数のサイズ(質量)の質量体3をシート状(あるいは板状)の粘弾性体2aに分散させて埋め込んで制振装置1bを構成することもできる。粘弾性体2の特性と質量体3の質量や大きさ等の組み合わせにより幅広い周波数帯域において制振効果を得ることができる。なお、分散させて埋め込むとは、他の質量体3の振動に影響を及ぼさない間隔での埋め込みを意味する。
【0031】
この場合、制振装置1bは、シート状の粘弾性体2aとして取り扱うことできる。従って、制振対象の構造物20が板状のものであれば、構造物20に制振装置1bをそのまま載置するだけでマルチモード制振を実現することができる。また、制振対象の構造物20が鉄道車両の車体などの2重パネル構造の場合、その間隙に制振装置1bを充填するだけでマルチモード制振を実現することができる。さらに、制振対象の構造物20が建築等の内装材料の一部(壁や天井板など)の場合、制振装置1bをパネルの裏面に接着するだけでマルチモード制振を実現することができる。このように、制振装置1bは、実際の構造物20に適用する際の自由度が高い。さらに、制振装置1bは、構造体を伝わる振動が壁面等から放射される音(固体伝播音)の低減にも効果を発揮する。
【0032】
なお、以上の説明では、質量体3を球体としたが、質量体3は、質量体3の振動方向によって大きさが異なる形状、例えば、楕円球やラグビーボール状に構成しても良い。また、同様に粘弾性体2も、質量体3の振動方向によって大きさ(厚さ)が異なる形状、例えば、楕円球やラグビーボール状に構成しても良い。これらの場合、質量体3の粘弾性体2中の多方向(例えば、上下・左右・前後)への振動の固有振動数を独立に調整できる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態は、動吸振器のバネk及び減衰器cとして機能する粘弾性体2に、動吸振器の質量として機能する質量体3が埋め込まれて構成される制振体を複数個備え、複数個の制振体10の固有振動数は、制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数にそれぞれ相当する値に振り分けられている。
この構成により、複数個の制振体10の固有振動数を制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数に応じてそれぞれ簡単に設定することができ、構造物20が有する複数の固有振動モードを同時に制振するマルチモード制振を実現することができる。
【0034】
さらに、本実施の形態において、制振体10の固有振動数は、質量体3の大きさもしくは質量と、粘弾性体2の大きさもしくは材料特性との組み合わせによって調整されている。
この構成により、制振体10の固有振動数を簡単に調整することができる。
【0035】
さらに、本実施の形態において、複数個の制振体10におけるそれぞれ粘弾性体2は、同一の材料特性を有し、制振体10の固有振動数は、質量体3の大きさと、粘弾性体2の大きさとの組み合わせによって調整されている。
この構成により、質量体3もしくは粘弾性体2の大きさを変更するだけで、制振体10の固有振動数をさらに簡単に調整することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態において、質量体3は、3次元方向で振動可能に粘弾性体2に埋め込まれている。
この構成により、質量体3が粘弾性体2中で多方向に振動することができ、多方向の振動に対する制振効果を得ることができる。
【0037】
さらに、本実施の形態において、粘弾性体2及び質量体3は、球体である。
この構成により、質量体3は、任意方向に同じ固有振動数で振動するため、固有振動数の調整を容易に行うことができる。
【0038】
さらに、本実施の形態では、粘弾性体2もしくは質量体3の大きさは、質量体3の振動方向によって異なる。
この構成により、質量体3の粘弾性体2中の多方向への振動の固有振動数を独立に調整できる。例えば、粘弾性体2もしくは質量体3の形状を、楕円球もしくはラグビーボール状とすることで、質量体3の振動方向に応じて固有振動数を独立に調整できる。
【0039】
さらに、本実施の形態において、複数個の制振体10を支持する支持体4を備えている。
この構成により、構造物20への搭載を容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態は、粘弾性体2aに複数個の質量体3が分散されて埋め込まれ、質量体3の大きさによって、粘弾性体2中における質量体3の振動の固有振動数は、制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数にそれぞれ相当する値に振り分けられている。
この構成により、複数個の制振体10の固有振動数を制振対象の構造物20が有する2以上の固有振動数に応じてそれぞれ簡単に設定することができ、構造物20が有する複数の固有振動モードを同時に制振するマルチモード制振を実現することができる。
【0041】
さらに、本実施の形態において、粘弾性体2aは、シート状もしくは板状である。
この構成により、制振装置1aをシート状の粘弾性体2aとして取り扱うことできるため、実際の構造物20に適用する際の自由度が高く、音(固体伝播音)の低減にも効果を発揮する。
【符号の説明】
【0042】
1、1a、1b 制振装置
2、2a 粘弾性体
3 質量体
4、4a 支持体
10、10a、10b 制振体
20 構造物
30 加振台