(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】デジタル傾斜計
(51)【国際特許分類】
G01B 21/22 20060101AFI20231213BHJP
G01C 9/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G01B21/22
G01C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021085733
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521220415
【氏名又は名称】パク、ソンジュ
【氏名又は名称原語表記】PARK Sun Joo
【住所又は居所原語表記】Suite 1510, 105 Harrison Garden Blvd North York ON M2N 0C3 Ontario Canada
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソンジュ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0055680(KR,A)
【文献】特開2017-148413(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0125312(KR,A)
【文献】米国特許第06547680(US,B1)
【文献】特開平08-010367(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0046805(KR,A)
【文献】中国実用新案第202569412(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/22
G01C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ場におけるグリーンの斜度を測定するためのデジタル傾斜計であって、
長手方向に延びたシャフト(3)と、
前記シャフト(3)の上面に長手方向に形成されて、前記シャフト(3)の前方側をグリーン(G)の上に押し当てて前記シャフト(3)の後方側を持ち上げるとき、上に載せたゴルフボール(B)を前記シャフト(3)に沿って下に導いて前記シャフト(3)の前方の終端の放出端(11)を介して前記グリーン(G)の上に転がして送る転がり溝(5)と、
前記シャフト(3)に設けられて、前記シャフト(3)の後方側を持ち上げることにつれて、前記放出端(11)から前記グリーン(G)の上へと転がっていった前記ゴルフボール(B)の移動距離と離隔角度を測定する計測モジュール(7)と、
を備え、
前記計測モジュール(7)は、
前記ゴルフボール(B)が前記放出端(11)から前記グリーン(G)の上を転がって移動した距離を測定する距離測定手段(13)と、
前記ゴルフボール(B)が前記放出端(11)から前記グリーン(G)の上を転がって離れた角度を測定する角度測定手段(14)と、
前記距離測定手段(13)及び前記角度測定手段(14)により測定した前記ゴルフボール(B)の移動距離と離隔角度を表示する出力手段(17)と、
を備え
、
前記計測モジュール(7)は、前記グリーン(G)の斜度を測定して前記出力手段(17)を介して出力する水平器(15)を備え、
前記計測モジュール(7)は、両側端が前側に突出して突出部(220)を形成し、それぞれの前記突出部(220)は、前記グリーン(G)の斜度を測定する水平器(215)を備えることを特徴とするデジタル傾斜計。
【請求項2】
前記距離測定手段(13)と前記角度測定手段(14)は、レーザー、赤外線または超音波のうちのいずれか一つを用いた測定器であることを特徴とする
請求項1に記載のデジタル傾斜計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル傾斜計に係り、さらに詳しくは、ゴルフ場においてホールカップがあるグリーンの特定の地点におけるスロープの急峻さを使用者がデジタル機器を用いて確認できるようにグリーンのスロープを測定する上で用いる棒状の装置、すなわち、デジタル傾斜計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スティンプメーター(Stimp-meter)は、ホールカップがあるゴルフ場のグリーンが有している速さを計測する上で用いる器具であって、グリーンをなす芝の刈り高と刈り方向に応じて変化するグリーンの速さ(グリーンスピード)を予め計測して、プレーヤーをして安定的なパッティングを行わせる。
【0003】
このようなスティンプメーターの使用要領は簡単であって、
図1に図面符号101にて示すように、速さを計測しようとするグリーンGの上のスティンプメーターの係止溝にゴルフボールBを載せて置き、シャフト103の後側の終端を徐々に持ち上げると、傾斜角qが約30°となる地点において転がり溝105に沿って下に転がり降りていったゴルフボールBはグリーンGに沿って移動して任意の位置に止まることになる。
【0004】
次いで、使用者は、シャフト103の先端からゴルフボールまでの距離を巻き尺などの測定器具を用いて測定し、例えば、同じ方向に3回、反対の方向に3回、合計で6回にわたって同じ要領で移動距離を測定して平均値により最終的なグリーンの速さを確認することになる。
【0005】
ところが、上記のような従来のスティンプメーター101は、ゴルフボールBを転がす度に使用者が測定器具を用いて手作業で移動距離を自ら測定することを余儀なくされるため、グリーンの速さの計測作業が非常に煩雑であり、不正確である他、長い時間がかかってしまうという問題があった。
【0006】
また、従来のスティンプメーター101は、グリーンGの上における互いに異なる二つの地点において測定した移動距離が同じであれば、シャフト103の軸線を延ばした仮想線からゴルフボールBが離れた離隔角度、すなわち、シャフト103の先端からゴルフボールBまでを直線状に結んだ線を移動線としたとき、この移動線と上記の仮想線とがなす角度がたとえ二つの測定地点において互いに異なるとしても、二つの測定地点のグリーンGの状態をまるで同じものであるかのように誤認させてしまうという不都合があった。すなわち、グリーンGの状態を確認するとき、グリーンGの速さのみを測定し、グリーンのスロープの急峻さは考慮することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来のスティンプメーターが有している問題を解決するために提案されたものであって、グリーンの上の特定の測定地点において測定したゴルフボールの移動距離と離隔角度を他の測定地点において測定した移動距離及び離隔角度と比較できるようにすることにより、ゴルフプレーヤーなど使用者をしてグリーンのスロープの急峻さを数値化せしめて簡便且つ正確に認知・把握せしめるところにその目的がある。
【0009】
また、上記のように異なる2以上の測定地点においてゴルフボールの移動距離と離隔角度を測定するに当たって、当該測定地点においてグリーンの前後方向または左右方向の斜度を確認できるようにして、各地点のスロープの急峻さを比較するときに各測定地点のグリーンの斜度を勘案できるようにすることにより、ゴルフプレーヤーなど使用者をしてグリーンのスロープの急峻さをさらに正確に認知・把握せしめるところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、長手方向に延びたシャフトと、前記シャフトの上面に長手方向に形成されて、前記シャフトの前方側をグリーンの上に押し当てて前記シャフトの後方側を持ち上げるとき、上に載せたゴルフボールを前記シャフトに沿って下に導いて前記シャフトの前方の終端の放出端を介して前記グリーンの上に転がして送る転がり溝と、前記シャフトに設けられて、前記シャフトの後方側を持ち上げることにつれて、前記放出端から前記グリーンの上へと転がっていった前記ゴルフボールの移動距離と離隔角度を測定する計測モジュールと、を備えるデジタル傾斜計を提供する。
【0011】
また、前記計測モジュールは、前記ゴルフボールが前記放出端から前記グリーンの上を転がって移動した距離を測定する距離測定手段と、前記ゴルフボールが前記放出端から前記グリーンの上を転がって離れた角度を測定する角度測定手段と、前記距離測定手段及び前記角度測定手段により測定した前記ゴルフボールの移動距離と離隔角度を表示する出力手段と、を備えることが好ましい。
【0012】
さらに、前記計測モジュールは、前記グリーンの斜度を測定して前記出力手段を介して出力する水平器を備えることが好ましい。
【0013】
さらにまた、前記計測モジュールは、両側端が前側に突出して突出部を形成し、それぞれの前記突出部は、前記グリーンの斜度を測定する前記水平器を備えることが好ましい。
【0014】
さらにまた、前記距離測定手段と前記角度測定手段は、レーザー、赤外線または超音波のうちのいずれか一つを用いた測定器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のデジタル傾斜計によれば、グリーンの状態を確かめようとするとき、放出端から放出されたゴルフボールがグリーンの上を移動して止まった位置までの直線移動距離とシャフトの延長線から離れた角度を両方とも測定することから、移動距離のみを測定するときや離隔角度のみを測定するときよりも正確にグリーンのスロープの急峻さを確認することが可能になる。
【0016】
また、上記のようにグリーンの上においてゴルフボールが転がっていった位置までの移動距離と離隔角度をレーザー測定機器などのデジタル装備を用いる距離測定手段や角度測定手段により測定することから、手作業による測定に比べて正確度を向上させることができ、測定過程をより便利に行うことができる。
【0017】
さらに、計測モジュールの中央または両側端の突出部にそれぞれ設けられた水平器により測定地点の前後方向または左右方向の斜度を確認することができることから、ゴルフボールの移動距離と離隔角度を確認するとき、グリーンの斜度を勘案してグリーンのスロープの急峻さをさらに正確に認知・把握することが可能になる。
【0018】
さらにまた、ゴルフボールの移動距離と離隔角度を把握するとき、上記のようにグリーンの斜度を勘案するに際しても、グリーンの上に傾斜計を位置させる方向や姿勢に応じてグリーンの斜度を勘案するようにも、あるいは勘案しないようにもできることから、グリーンのスロープの急峻さを必要に応じて適切な方式により変えていきながら便利に確認することが可能になる。例えば、測定地点において傾斜が最も大きい方向に傾斜計を配置する場合、左右の斜度の差を勘案せずともスロープの急峻さを確認することができることから、斜度が同じである二つの地点のスロープの急峻さを相対比較することが可能になる。逆に、ホールカップを向くように傾斜計を配置する場合には、斜度が最も大きい稜線方向に配置されない可能性が最も高く、したがって、左右の斜度に差が生じるので、たとえ斜度が同じであるとしても、二つの測定地点の測定結果を比較するときに斜度の影響を勘案してスロープの急峻さを確認することが可能になる。
【0019】
さらにまた、グリーンの左右の斜度に差がある場合、計測モジュールの両側端の水平器を用いて前後方向の斜度はもとより、左右方向の斜度をも測定することができることから、左右方向の斜度を比較することにより、前後方向及び左右方向の斜度を同時に勘案してグリーンのスロープの急峻さを確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明の一実施形態に係るデジタル傾斜計の平面図。
【
図5】
図2に示すデジタル傾斜計の使用状態を示す部分平面図。
【
図6】
図2に示すデジタル傾斜計の使用状態を示す側面図。
【
図7】本発明の一実施形態に係るデジタル傾斜計の側面図。
【
図8】
図7に示すデジタル傾斜計の計測モジュールを拡大して示す部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るデジタル傾斜計について詳しく説明する。
【0022】
本発明のデジタル傾斜計は、
図2から
図4に図面符号1にて示すように、大きく分けると、シャフト3と、転がり溝5及び計測モジュール7を備える。
【0023】
ここで、まず、前記シャフト3は、傾斜計1の胴体をなす部分であって、
図2から
図4に示すように、長手方向に長尺状に延びた角形の金属材から製作される。但し、傾斜計1が携行可能なものである点に鑑みて、シャフト3は、軽量の材質から製作されることが好ましい。
【0024】
また、シャフト3は、
図6に示すように、グリーンGのスロープの急峻さを計測しようとする位置において計測角度qに見合う分だけ後側が持ち上げられながら傾く。このとき、シャフト3の先端は、底面がグリーンG面と平行になるように計測角度qに見合う分だけ傾斜した斜面10を有する。なお、シャフト3は、後側が持ち上げられて計測角度qに見合う分だけ傾く前まで後方端の隣接位置にゴルフボールBを保持しているように、
図2に示すように、転がり溝5の中央に係止溝19が形成される。
【0025】
前記転がり溝5は、グリーンGのスロープの急峻さを計測するとき、ゴルフボールBがシャフト3に沿って転がれるように導くガイド手段であって、
図2から
図4に示すように、シャフト3の上面に長手方向に形成されるが、グリーンGのスロープの急峻さを計測するためにシャフト3の前方をグリーンGの上に押し当て、シャフト3の後方を持ち上げてシャフト3を計測姿勢にしたとき、後方側の係止溝19の上に載せたゴルフボールBが自重によりシャフト3に沿って下に導かれて、シャフト3の前方の終端に形成される放出端11を介してグリーンGの上に転がるようにする。
【0026】
また、転がり溝5は、ゴルフボールBが下に転がる間に左右に、すなわち、シャフト3の幅方向に揺動しないように、
図4に示すように、逆三角形の断面形状を有することが好ましい。但し、転がり溝5は、
図3に示すように、ゴルフボールBに加えられる摩擦抵抗を低減できるように、溝の深さが前方に向かって進むにつれて次第に浅くなることが好ましい。
【0027】
前記計測モジュール7は、
図5に示すように、シャフト3から放出されてグリーンGの上を転がっていったゴルフボールBの移動距離Lと離隔角度rを測定し、測定された結果を表示する手段であって、
図2から
図4に示すように、シャフト3の前方に、さらに詳しくは、シャフト3の前方の終端に取り付けられるが、少なくとも一つ以上の距離測定手段13及び角度測定手段14を備えることにより、シャフト3の後方を持ち上げたときに転がり溝5に沿って転がり降りてグリーンGの上に放出されたゴルフボールBの移動距離と離隔角度を即座でリアルタイムにて測定する。このとき、距離測定手段13及び角度測定手段14として、様々なタイプのデジタル機器が採用可能であるが、その一つの例として、レーザー測定器が挙げられ、その他にも、赤外線センサーや超音波センサーを備えた距離または角度測定器を用いることができる。但し、上記のように、離隔角度rとともに移動距離Lをも測定する理由は、たとえ異なる測定地点において測定した離隔角度rが同じであるとしても、移動距離Lが異なると、その異なる分だけスロープの急峻さもまた異なるからである。
【0028】
このように、計測モジュール7は、さらに、距離測定手段13と、角度測定手段14及び出力手段17を備える。
【0029】
ここで、まず、前記角度測定手段14は、放出端11から放出されたゴルフボールBがグリーンGの上を転がって移動した距離を測定する手段であって、
図2及び
図4に示すように、シャフト3の幅方向に複数配置されることが好ましい。このために、シャフト3の先端にはヘッド部21が設けられてもよいが、このヘッド部21は、図示のごとく、直線状に延びても良いだけではなく、図示はしないが、曲線状に延びてもよい。いうまでもなく、距離測定手段13は、放出端11の中心を通る垂線の上に1、2個のみが設けられてもよく、この場合、ヘッド部21は不要になる。また、距離測定手段13が複数配備された場合、複数の距離測定手段13のうちの一つのみが距離の測定を行う上で用いられ、用いられた距離測定手段13は、測定の対象であるグリーンGのスロープの急峻さを比較するために、基準グリーンGの速さを測定するときにも用いられなければならない。このとき、基準グリーンGとは、前後方向及び左右方向の傾斜がない平らな(フラットな)グリーン、すなわち、スロープが0であるグリーンのことをいう。一方、それぞれのレーザー距離測定器は、例えば、スピードガンに用いられるもののように、左右に一定の幅以上の測定範囲を有することが好ましい。
【0030】
また、前記角度測定手段14は、放出端11から放出されたゴルフボールBがグリーンGの上を転がってから止まったとき、シャフト3の軸線またはこの軸線を延ばした仮想線から離れた離隔角度を測定する手段であって、
図3に示すように、それぞれの距離測定手段13と一対一に対応するように同じ垂線の上において上または下に設けられる。したがって、距離測定手段13と同様に、シャフト3の幅方向に複数配置されることが好ましく、放出端11の中心を通る垂線の上に1、2個のみ設けられてもよい。したがって、角度測定手段14は、
図5に示すように、上記のようにグリーンGの上に止まったゴルフボールBがシャフト3の軸線を延ばした仮想線、またはこの仮想線と並んでおり、かつ、各角度測定手段14の中心を通る仮想線Pに対して離れた離隔角度rを測定する。
【0031】
さらに、前記出力手段17は、距離測定手段13及び角度測定手段14により測定したゴルフボールBの移動距離Lと離隔角度rを画像や音声などで表示して使用者をして測定値を確認せしめることができるが、
図2に示すように、測定値を画像で表示するようにヘッド部21に設けられるディスプレイを採用することが好ましいが、ヘッド部21が備えられていないなどの何らかの理由によりシャフト3にディスプレイを設けるスペースに限界があるときには、測定値を音声で表示する音響機器を採用してもよい。このとき、それぞれのディスプレイは、通常の液晶ディスプレイ(LCD)から構成してもよく、計測モジュール7の中央制御装置の指令に従って距離測定手段13で測定したゴルフボールBの移動距離値または角度測定手段14で測定したゴルフボールBの離隔角度値などを目視で確認できるようにする。
【0032】
一方、計測モジュール7は、スロープの急峻さを測定すべきグリーンGの斜度を測定する手段であって、
図2及び
図3に示すように、水平器15をさらに備えていてもよい。この水平器15は、シャフト3の先端の斜面10に凹む形状に取り付けられることが好ましいが、グリーンGの上に横たえたとき、グリーンGと接触するシャフト3の胴体の底面など他の個所に設けても良い。図示のごとく、斜面10に設けられた場合、水平器15は、斜面10がグリーンGと接触したとき、グリーンGの斜度を測定することになり、測定された斜度値を出力手段17を介して出力する。
【0033】
一方、本発明の他の実施形態に係るデジタル傾斜計が
図7及び
図8に図面符号201にて示される。
【0034】
この傾斜計201は、
図6に示す傾斜計1と同様に、シャフト3と、転がり溝5及び計測モジュール7を備えるが、
図7に示すように、グリーンGの上に置いた状態で転がり溝5の後側にゴルフボールBを置いて後側を角度qに見合う分だけ持ち上げると、ゴルフボールBが転がり溝5に沿って転がり降りて放出端11から放出され、次いで、グリーンGの上を移動したゴルフボールBの移動距離と離隔角度を距離測定手段13と角度測定手段を用いて測定することにより、傾斜計1と同様に、グリーンGのスロープの急峻さを出力手段17を介して表示することができる。
【0035】
但し、傾斜計201は、
図7及び
図8に示すように、計測モジュール7の両側端が前側に長尺状に突出して突出部220を形成することにより、突出部220の底面に水平器215をシャフト3の長手方向に長尺状に配置できるようにした点で傾斜計1とは相違点がある。このとき、水平器215は、傾斜計1の水平器15よりも長手方向にさらに長く形成することができるので、ゴルフボールBが放出される地点のグリーンGの斜度をより正確に測定することができる。また、水平器215は、左右に一つずつ、合計で二つが配置されるが、上記のようにそれ自体でシャフト3の長手方向、すなわち、前後方向の斜度を測定することができるだけではなく、各測定値を比較することにより、シャフト3の厚さ方向、すなわち、左右方向の斜度もまた正確に測定することが可能になる。
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態に係るデジタル傾斜計の作用について説明する。
【0037】
本発明の傾斜計1によりグリーンGのスロープの急峻さを測定するためには、
図3に示すように、傾斜計1をグリーンGの上に測定しようとする向きに横たえる。このとき、当然のことながら、放出端11は、ゴルフボールBが転がるべき側に向かわせる。
【0038】
しかる後に、
図6に示すように、シャフト3の係止溝19にゴルフボールBを載せておき、シャフト3の後方の終端部を持ち上げてシャフト3が計測角度qまで傾斜するようにする。次いで、持ち上げたシャフト3の角度が、例えば、計測角度qになると、ゴルフボールBは転がり溝5に沿って転がり降りて、
図5及び
図6に示すように、グリーンGの上の任意の位置に止まる。このとき、グリーンGに触れた水平器15は、グリーンGの斜度を測定して表示する。このとき、
図7及び
図8に示す傾斜計201を用いると、前後方向に長尺状に配置された水平器215を介してゴルフボールBが放出された地点の前後方向のグリーンGの斜度をより正確に測定することができるだけではなく、左右の水平器215の測定値を比較して当該地点の左右方向のグリーンGの斜度もまたより正確に測定することが可能になる。
【0039】
このようにして、
図5及び
図6に示すように、ゴルフボールBが任意の位置に止まると、距離測定手段13が別途のセンサーによりゴルフボールBの止まりを感知して、または、別途の作動スイッチによる外部の指令に従って、ゴルフボールBの移動距離を測定する。このとき、距離測定手段13は、
図5において、ゴルフボールBまでの直線距離Lを測定する。同様に、角度測定手段14もまた、別途のセンサーによりゴルフボールBの止まりを感知したり、別途の作動スイッチによる外部の指令に従ったりして、ゴルフボールBが仮想線Pから離れた角度、すなわち、ゴルフボールBが移動した直線距離Lを表示する線と仮想線Pとの間の角度rを測定する。
【0040】
このように、距離測定手段13により測定されたゴルフボールBの移動距離Lと角度測定手段14により測定されたゴルフボールBの離隔角度rは、ディスプレイのような出力手段17を介して直ちに使用者に出力され、使用者は、リアルタイムにてゴルフボールBが移動した直線距離Lと角度測定手段14から離れた角度rを確認することが可能になる。これにより、使用者は、グリーンGの測定対象となった地点の斜度とスロープの急峻さを認知することが可能になる。
【0041】
すなわち、予め傾斜計1により基準グリーンGの速さを測定することができるが、これは、すなわち、スロープのない平らなグリーンGの速さをゴルフボールBの移動距離Lで確認することと同様である。
【0042】
次いで、グリーンGの上の特定の地点において傾斜計1を用いてゴルフボールBの移動距離Lと離隔角度rを確認することができるが、このとき、水平器15で当該地点の斜度を確認することができるので、対象グリーンGが特定の斜度を有する地点において移動距離Lと離隔角度rを知ることが可能になる。
【0043】
対象グリーンGの他の地点において再び斜度と、移動距離L及び離隔角度rを測定すると、基準グリーンGでの測定値はもとより、直前に測定した値と比較することにより、使用者は、他の地点でのスロープの急峻さを認知することが可能になる。
【0044】
但し、グリーンGのいかなる地点においてスロープの急峻さを測定するにせよ、測定地点が決定されれば、傾斜計1は、当該地点において斜度が最も大きく測定される方向に配置されて用いられてはじめて、スロープの急峻さの測定に際して配置方向に応じて異なってくる斜度の差による影響をなくすことができる。換言すれば、グリーンGの上の傾斜面において傾斜が最も大きい方向、すなわち、稜線方向に傾斜計1を配置してはじめて、放出端11から放出されたばかりのゴルフボールBは、シャフト3の軸線を延ばした仮想線の向きに傾斜が最も急峻であるため、左右に流れずに直線するため、左右の斜度の影響を排除したままでグリーンの芝目などによる左右方向の流れを純粋に確認することが可能になる。とはいえ、パッティングをする間に、使用者は、傾斜計1をホールカップを向く方向に配置してグリーンGの当該地点のスロープの急峻さを確認することもできる。
【0045】
例えば、基準グリーンGにおいて傾斜計1により測定したゴルフボールBの移動距離が2m(メートル)であるとき、特定のグリーンGの第1の地点において測定した斜度が5°であり、ゴルフボールBの移動距離Lが2m、離隔角度rが15°であり、第2の地点において測定した斜度が同様に5°であり、ゴルフボールBの移動距離Lが2.5m、離隔角度rが18°であったならば、第2の地点は、斜度が同じである第1の地点よりもスロープの急峻度がさらに大きいことを確認することができ、第1及び第2の地点の両方とも基準グリーンGとの比較もまた可能になる。
【符号の説明】
【0046】
1、201:傾斜計
3:シャフト
5:転がり溝
7:計測モジュール
10:斜面
11:放出端
13:距離測定手段
14:角度測定手段
15、215:水平器
17:出力手段
19:係止溝
21:ヘッド部
B:ゴルフボール
G:グリーン
L:移動直線距離
P:仮想線
q:計測角度
r:離隔角度