(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】可撓性カートリッジに収容された注射剤を注入するための注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/28 20060101AFI20231213BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
A61M5/28 520
A61M5/24 530
(21)【出願番号】P 2021518623
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2019057978
(87)【国際公開番号】W WO2020070577
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】102018000009134
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】320001798
【氏名又は名称】オロフィーノ・ファーマシューティカルズ・グループ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】OROFINO PHARMACEUTICALS GROUP S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】エルネスト・オロフィーノ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/109840(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/127287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0047162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/28
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性カートリッジ(1)に収容された注射液を注入するための注射器(100)であって、
可撓性カートリッジ(1)を受容するための受容区画(106)を備えた本体(101)であって、第1開口部(103)が存在する第1端部(102)と、第2開口部(105)が存在する対向する第2端部(104)との間で延びる本体と、
収縮位置と前進位置との間で本体(101)に対して摺動するプランジャ(200)と、可撓性カートリッジ(1)を変
形するために、受容区画(106)の内部で本体(101)に対してスライドする破砕ヘッド(201)と、を有する破砕装
置と、
前記プランジャ(200)が摺動可能に拘束される
、プランジャ(200)の支持固定要素(120)と、
支持固定要素(120)と本体(101)との間の相互位置を変更するように、支持固定要素(120)を本体(101)に結合することができる結合手段と、
を備え
、
前記結合手段は、支持固定要素(120)を本体(101)に回転又は摺動可能とする、注射器(100)。
【請求項2】
前記結合手段は、支持固定要素(120)を本体(101)に取り外し可能に結合することができ、支持固定要素(120)及び本体(101)にそれぞれ設けた
着脱可能なスナップ要素からなる、請求項1に記載の注射器(100)。
【請求項3】
前記結合手段は、支持固定要素(120)と本体(101)との間で回転軸を中心として回転させることができる円筒形のヒンジからなる、請求項
1に記載の注射器(100)。
【請求項4】
可撓性カートリッジ(1)を受容区画(106)に挿入できるように、及び/又は可撓性カートリッジ(1)を受容区画(106)から取り出すことができるように、支持固定要素(120)が第1開口部(103)を閉鎖する構成と、支持固定要素(120)が第1開口部(103)
へアクセス
するのを可能にする構成との、少なくとも2つの操作形態を取ることができる、請求項1から
3のいずれか1項に記載の注射器(100)。
【請求項5】
前
記プランジャ(200)は、互いに間隔を空けて配置された2つの平行なステム(202)からなる、請求項1から
4のいずれか1項に記載の注射器(100)。
【請求項6】
前記受容区画(106)は、
前記可撓性カートリッジ(1)が摺動軸に沿ってガイドされ
て摺動
するように可撓性カートリッジ(1)を挿入することを可能にするように構成された1つ又は複数のガイド溝(107)を備える、請求項1から
5のいずれか1項に記載の注射器(100)。
【請求項7】
前
記プランジャ(200)の支持固定要素(120)が
、プランジャ(200)が格納位置にあるときに破砕ヘッド(201)を受け入れるように構成された受け座(121)を備える、請求項1から
6のいずれか1項に記載の注射器(100)。
【請求項8】
前記プランジャ(200)の支持固定要素(120)が、可撓性カートリッジ(1)を受容区画(106)に挿入する前に、本体(101)に対して可撓性カートリッジ(1)を少なくとも部分的に整列させることができる少なくとも1つの事前整列要素(127)を備える、請求項1から
7のいずれか1項に記載の注射器(100)。
【請求項9】
注射液を注入するための注射キットであって、請求項1から
8のいずれか1項に記載の注射器(100)と、注射液を含む少なくとも1つの可撓性カートリッジ(1)とを備え、前記可撓性カートリッジ(1)が前記注射器
(100)に挿入される、又は挿入可能である注射キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射装置の技術分野に関するものであり、特に、可撓性カートリッジに収容された注射剤を注入するための注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、粉末状の無菌原料は、主に有効成分メーカーによって、アルミ製の容器か、一般にはポリエチレンのプラスチック製の袋に包装されている。
【0003】
メーカーが販売するためには、各原料が無菌状態を維持していることに加えて、使用する容器や袋の中で一定期間安定していること、言い換えれば、そのような容器や袋の中で保管しても所定年数は腐敗しないことを保証しなければならない。
【0004】
無菌状態の原料は最終医薬品メーカーに販売される。メーカーは公知技術を用いて原料を分別し、無菌粉末状の最終製品をボトルに入れて販売する。このボトルには、溶媒が入ったガラス製のバイアルが添付される。
【0005】
バイアル(ガラス)に高品質の材料を使用し、無菌粉末に互換性のある材料を使用し、使い捨て注射器を使用することで、このシステムは全体として非常に高価なものとなる。
【0006】
使用の瞬間まで特別な柔らかい仕切りによって各収容チャンバに分離された医薬物質を含む柔軟な材料で形成された可撓性カートリッジを受け入れるための受容区画を備えた注射器を使用することが、この分野で公知である。そのような装置の例は、米国特許出願公開第2001/47162号明細書に記載されており、そのような公知の装置のさらなる例は、国際公開第2017/137854号に記載されている。
【0007】
しかしながら、先行技術の注射器では、可撓性カートリッジを注射器に挿入する操作が比較的複雑であることが分かっている。さらに、挿入が正しく行われないと、カートリッジが損傷し、注射が正しく行われない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2001/47162号明細書
【文献】国際公開第2017/137854号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述した先行技術の可撓性カートリッジ用の注射器の問題点を解決することである。特に、本発明の目的は、可撓性カートリッジに含まれる注射液を注射するための注射器であって、カートリッジを注射器自体に容易かつ正確に挿入することができる注射器を提供することである。
【0010】
このような目的は、請求項1に記載の可撓性カートリッジに収容された注射液を注入するための注射器、及び請求項9に記載の注射キットによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明に係る注射器の特徴及び利点は、添付図面に従って、非限定的な例として提示される以下の説明から明らかになる。
【
図1】本実施形態に係る可撓性カートリッジの平面図である。
【
図3】
図1の可撓性カートリッジの分離装置の側面図である。
【
図4】
図1の可撓性カートリッジの軸方向の側面図である。
【
図5】
図1の可撓性カートリッジの2つの部分が互いに分離している状態を示す軸方向の側面図である。
【
図6】
図1のカートリッジと、本発明に係る非限定的な実施形態の注射器とを備え、注射器を第1の操作形態で示すキットの軸方向の図である。
【
図7】注射器を第1の操作形態で示す
図6のキットの別の側面図である。
【
図8】
図6の注射器を単独で、第2の操作形態で示す軸方向の斜視図である。
【
図9】
図6の注射器の一部の軸方向の断面図である。
【
図10】
図6の注射器の別の部分の軸方向の斜視図である。
【
図11】可撓性カートリッジが取り外された
図6の注射器の軸方向の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
類似又は同等の要素は、前述の図において、同一の参照符号で示す。
【0013】
注射器を説明する前に、そのような注射器と一緒に使用することができる可撓性カートリッジの非限定的な例を説明する。
図1から
図5は、本発明に係る注射器で使用することができる可撓性カートリッジ1の非限定的な実施形態を示す。
可撓性カートリッジ1は、
少なくとも1つの注射液の第1成分の第1収容チャンバ11であって、少なくとも1つの第1圧縮変形可能な壁を備える第1収容チャンバ11と、
少なくとも1つの注射液の第2成分の第2収容チャンバ21であって、第2成分が第2収容チャンバ21から第1収容チャンバ11に移送されることを可能にするために、少なくとも1つの圧縮変形可能な第2壁を備え、第1成分に第2成分を混合させる第2収容チャンバ21と、
を含むカートリッジ本体10、20を備える。
【0014】
特に有利な実施形態によれば、カートリッジ本体10、20はブリスターである。この場合、前述の圧縮変形可能な壁は、第1収容チャンバ11及び第2収容チャンバ21をそれぞれ構成する少なくとも2つのブリスターポケットの壁である。代替的な実施形態によれば、カートリッジ本体10、20は、柔軟な壁を有する1又は複数のバッグからなる。
【0015】
第1収容チャンバ11及び第2収容チャンバ21は、以下、本明細書ではそれぞれ前方チャンバ11及び後方チャンバ21という表現も使用する。なお、後方チャンバ21の数を増やすことで、構造を変化させることも可能である。
【0016】
有利で非限定的な実施形態によれば、収容チャンバ11、12の外壁は、注射剤が再構成される前に除去することができる保護接着フィルムで少なくとも部分的に被覆されている。このようなフィルムは、保管条件下で収容チャンバ間の分離性を高めることを可能にする。
【0017】
なお、本明細書の教示は、単一の収容チャンバを有する可撓性カートリッジ、すなわち工場で既に構成された注射剤を含むカートリッジにも及ぶ。しかし、以下では、可撓性カートリッジが2つの収容チャンバからなる場合について言及するが、それによってはいかなる限定もされないものとする。
【0018】
各収容チャンバ11、21は、注射液の成分の1つを含む。例えば、前方チャンバ11は、滅菌薬剤粉末形態の第1成分を含む。後方チャンバ21は、液体成分である第2成分、一般には、溶媒又はさらなる活性医薬成分を含む。例えば、無菌薬剤粉末は、結晶化した粉末又は溶液の凍結乾燥によってバルクで得られた粉末である。粉末に代わるものとして、第1成分は、粒状物質、無菌錠剤又は圧縮された粉末である。可能な実施形態によれば、第1成分は、2つの異なる物質からなり、例えば、2つの異なる錠剤の形で、それぞれが前記2つの異なる物質のうちの1つを含む。
【0019】
第1成分は、例えば、セファロスポリン系抗生物質などのβ-ラクタム系抗生物質、細胞毒性抗がん物質、ホルモン、生物学的製剤などの高活性物質である。第1成分は、高活性物質として定義できない通常の活性物質であってもよい。
【0020】
可撓性カートリッジ1の実施形態では第1成分と第2成分の両方が液体物質であると想定できるので、前記第1成分は液体成分であってもよい。
【0021】
好ましくは、第2成分は注射用の溶媒であり、例えばWFI(Water For Injection)溶媒、リドカイン溶液、水とベンジルアルコールの溶液、塩化ナトリウムの生理食塩水、又は一般に別の固体又は液体物質を再構成することができる任意の注射用物質である。第2成分は、API(Active Pharmaceutical Ingredient)であってもよいし、APIを含んでいてもよい。
【0022】
特に有利な実施形態によれば、可撓性カートリッジ1は、第1収容チャンバ11と第2収容チャンバ12との間に動作可能に介在する分離装置12、22であって、装置本体内に区画された少なくとも1つの流体連通ダクト2を含む装置本体を有する分離装置12、22をさらに備える。装置本体は、好ましくは単独の本体であり、第1収容チャンバの変形可能な壁及び第2の収容チャンバの変形可能な壁よりも剛性が高いのが好ましい。このような装置本体は、カートリッジ本体10、20に挿入されるか、又はカートリッジ本体10、20に取り付けられるか、例えば、カートリッジ本体10、20に挿入されるか、又はカートリッジ本体10、20に係合されるかのいずれかであり、変形可能なブリスター型カートリッジに挿入されるのが好ましい。複数の連通ダクト2を設けることが可能である。
【0023】
好ましくは、可撓性カートリッジ1は、分離装置12、22の流体連通ダクト2が第2の構成要素により連通できなくなる第1の操作形態と、流体連通ダクト2が第2の構成要素によって連通可能となる第2の操作形態とを取るのに適している。言い換えれば、第1の操作形態では、分離装置12、22は第2チャンバ21と第1チャンバ11との間で流体を流動させないが、第2の操作形態では、分離装置12、22は第2チャンバ21と第1チャンバ11との間で流体を流動可能とする。
【0024】
特に有利な実施形態によれば、分離装置12、22は、フィルタ、弁又はコネクタを備える。例えば、分離装置12、22は、流体連通管2内の一方向の流れを可能にするのに適した弁を備える。追加又は代替で、このような弁は、第2チャンバ内の圧力が閾値を超えた場合にのみ流体連通管2内への液体成分の流れを可能にする。このタイプの弁は、2以上のチャンバを有する再構成注射器で公知であり、使用されている。
【0025】
分離装置12、22がコネクタで構成されている場合、そのようなコネクタは、コネクタ自体に組み込まれたフィルタ及び/又はバルブをさらに備えていてもよい。
【0026】
好ましくは、分離装置の本体は、第1収容チャンバ11に面する第1面31と、第1面31とは反対側で第2収容チャンバ21に面する第2面32との間に延びている。より好ましくは、流体連通ダクト2は、第1面31から第2面32まで延びる凹部又は穴である。
【0027】
分離装置12、22の本体の第1面31と第2面32との間には、第3平坦面33と第4湾曲凸状面34とがある。
【0028】
有利な実施形態によれば、流体連通ダクト2は、分離装置本体12、22よりも断面が小さい。
【0029】
可撓性カートリッジ1は、カートリッジ本体10、20に固定され、第1チャンバ11に流体接続されるように構成された針保持部品3をさらに備え、第1チャンバ11は、針保持部品3と分離装置12、22との間に動作可能に介在、例えば配置されている。好ましくは、可撓性カートリッジ1は、針保持部品3に取り付けた注射針4と、注射針4又は針保持部品3のいずれかに取り付けた取り外し可能な保護キャップ5とをさらに備える。
【0030】
有利な実施形態によれば、カートリッジ本体10、20は、
第1収容チャンバ11を形成するために、例えば溶接又は接着で接合された第1シート部13及び第2シート部14と、
第2収容チャンバ21を形成するために、例えば溶接又は接着で接合された第3シート部23及び第4シート部24と、を備える。
【0031】
シート部は、加熱するか高周波又は超音波エネルギーを付与するか、あるいは他の適切な溶接技術によって溶接することができる。
【0032】
例えば、第1シート部13及び第3シート部23は、同じ第1シートの2つの部分であり、例えば、最内層が好ましくはポリエチレン層である多層フィルム、又は単層のポリエチレンフィルムである。例えば、第2シート部14及び第4シート部24も、同じ第2シートの2つの部分である。また第2シートは、内層が好ましくはポリエチレン層である多層フィルムであってもよいし、単層のポリエチレンフィルムであってもよい。このような態様では、例えば、収容チャンバ11、21に凹部を形成するように第1シートを成形し、そのような凹部の外側で、第1シートと第2シートとを、前記シートの周縁部である接合縁部で、例えば溶接又は接着により互いにシールすることによりカートリッジ本体10、20が得られる。
【0033】
特に有利な実施形態によれば、分離装置12、22、特に装置本体は、第1シート部13と第2シート部14との間、及び第3シート部23と第4シート部24との間に介在しており、例えば、分離装置12、22は、前述の第1シートと第2シートとの間に介在して固定され、例えば、前述の第1のシートに画定されている相互に対向する形状の凹部に収容されている。
【0034】
好ましくは、第1シート部13及び第3シート部23は、それぞれ第2シート部14及び第4シート部24よりも相対的に柔軟であり、第1収容チャンバ11及び第2収容チャンバ21の上述の変形可能な壁をそれぞれ構成する。
【0035】
一実施形態によれば、第1シート部13及び第3シート部23は、それぞれ少なくとも1つの第1及び第2の変形可能な丸みを帯びた凹部を構成し、その下に第1収容チャンバ11及び第2収容チャンバ21がそれぞれ設けられる。このような実施形態では、第2シート部14及び第4シート部24は、
図2に示すように、平坦であり、同一平面に位置している。
【0036】
これらの考察は、第1シート部13及び第3シート部23が相互に異なるシート部であり、第2シート部14及び第4シート部24が相互に異なるシート部である場合にも適用される。本明細書の目的のため、「別個のシート」とは、単一の連続したシートを形成するために連続して接合されていないシートを意味する。したがって、この定義では、単一のシートから得たが、その後、例えば切断されるなどして分離されたシートも含む。
図4を参照すると、前述のケースでは、カートリッジ本体10、20は2つの異なる部分10、20で構成されており、これらの部分は分離装置12、22によって機械的結合又は結合可能となっている。
【0037】
特に有利な実施形態として、分離装置12、22が第1接続要素12と第2接続要素22を有するコネクタからなり、カートリッジ本体10、20が第1接続要素12を有する第1部分10と第2接続要素22を備えた第2部分20からなり、第1接続要素12と第2接続要素22は相互に補完的であり、機械的に結合して前記コネクタを形成し、第1部分10と第2部分20を固定して前記カートリッジ本体10、20を形成することができる実施形態を想定することができる。
【0038】
カートリッジ本体10、20が2つの離間した部品によって形成されている前記実施形態では、少なくとも最初は、例えば、針保持部品3はカートリッジ本体10、20の第1部分10に固定されている。
【0039】
分離装置12、22のいずれかがコネクタであるか、又はコネクタを備える実施形態では、そのようなコネクタを、回転して閉鎖されるコネクタとして想定すると都合が良い。例えば、接続要素12、22は、挿入回転固定システム、例えば1/4回転の挿入回転固定システムによって互いに接合してもよい。
【0040】
例えば、そのような接続要素12、22は互いに切り離されている必要はない。例えば、そのような接続要素12、22間の回転(例えば、180°に等しい)により、例えば、最初にそのようなダクトを閉鎖する障壁を破壊又は除去することにより、流体連通ダクト2を開放するような実施形態を想定することができるからである。さらなる実施形態では、接続要素21及び接続要素22にそれぞれ画定された、当初外れていた2つのダクト部分が、接続要素12、22間の回転によって軸方向に整列して第2収容チャンバ21を第1収容チャンバ11と連通させることができるダクト22を形成することができる。
【0041】
好ましい実施形態によれば、剥離可能な仕切りによって閉じられた第1チャンバ11からの出口導管18が、第1収容チャンバ11と針保持部品3との間に形成されている。このような剥離可能な仕切りは、例えば、第1シート部13と第2シート部14との間の弱い溶接、例えば、薄い溶接によって得られる。このような溶接部は、第1収容チャンバ11内の溶液の圧力が設計仕様に従って選択された圧力値に到達したときに開放するように構成されている。第1収容チャンバ11と分離装置12、22との間には、剥離可能な仕切りによって閉鎖された第1収容チャンバ11への入口ダクト19が、追加又は代替で形成されている。このような剥離可能な仕切りは、例えば、第1シート部13と第2シート部14との間の弱い溶接(例えば、薄い溶接)によって得られる。このような溶接は、第2収容チャンバ21内の溶液の圧力が、設計仕様に従って選択された圧力値に達したときに降伏するように構成されている。さらに、本項に記載の実施形態に追加的又は代替的に、剥離可能な仕切りによって閉じられた第2チャンバ21からの出口導管28が、第2収容チャンバ21と分離装置12、22との間にも形成されている。このような剥離可能な仕切りは、上述のものと同様である。
【0042】
有利な実施形態によれば、第1チャンバ11は、空間的に互いに分離され、針保持部品3と分離装置12、22との間に並列に配置された2つのチャンバ11から構成されている。さらに有利な実施形態では、カートリッジ本体10、20は、中央部15、25と、中央部15、25に対して相互に反対側に配置された2つの側部16、26とから構成されている。さらに、分離装置12、22は、前記中央部15、25上に配置され、チャンバ部11は、例えば、接着又は溶接された領域である前記中央部によって互いに分離された側部16、26に配置されている。これにより、分離装置12、22に干渉することなく、分離装置12、22上を通過するように構成された破砕装置によって、チャンバ11の2つの部分を効果的に破砕し、完全に空にすることができるという利点がある
【0043】
第2収容チャンバ21も、空間的に互いに分離し、それぞれ各側部26に配置した2つのチャンバ21を備えるのが好ましい。このように、添付図面に示す実施形態と一貫して、カートリッジ本体10、20は、好ましくは、しかし非限定的な例として、最初は相互に分離された第1部分10及び第2部分20によって形成されている。第1部分10は、第1収容チャンバの2つの部分11が中央部15によって互いに分離して収容される2つの側部16からなる。第1収容チャンバの2つの部分11は、台形又はほぼ台形の平面形状であるのが好ましい。第2部分20は、第2収容チャンバの2つの部分21が中央部25によって互いに分離して収容される2つの側部26からなる。第2収容チャンバの2つの部分21は、台形又はほぼ台形の平面形状であるのが好ましい。分離装置12、22は、中央部15、25の間に介在している。有利な実施形態によれば、第1部分10及び第2部分20は、六角形状、又はほぼ六角形状の平面、例えば、丸みを帯びた角を有する六角形状の平面を有している。2つの部分10、20は、六角形の片側で接合されており、カートリッジ本体10、20は、ほぼ蝶形である。
【0044】
可能な実施形態によれば、第1収容チャンバ11の2つの部分は、最初から、又は1以上の介在する剥離可能なパーティションの破壊後に、互いに流体連通している。第2収容チャンバ21の2つのチャンバ21も同様である。
【0045】
しかしながら、有利なことに、第1成分と第2成分との間の混合のより良い制御を保証することができる実施形態では、
第1収容チャンバ11の2つのチャンバ部11が互いに流体的に隔離され、
第2収容チャンバ21の2つのチャンバ部21は、互いに流体的に隔離され、
分離装置12、22は、第2収容チャンバ21の2つのチャンバ部の一方のみを、第1収容チャンバの2つのチャンバ部11の一方のみと相互に流体接続するように構成された第1連通ダクト、及び第2収容チャンバ21の2つのチャンバ部の他方を、第1収容チャンバの2つのチャンバ部11の他方のみと相互に流体接続するように構成された第2連通ダクトと、
を備えている。
【0046】
上述の最後の実施形態では、第1収容チャンバの2つのチャンバ部11内で2つの成分を混合した後に含まれる溶液は、第1収容チャンバ11の2つの部分の一方と他方にそれぞれ接続した3つのポートを有する、図示しない、例えばT字型又はY字型の分岐した流体ダクトを設けることにより針4に移送することができ、場合によっては針保持部品3を用いて針4に移送することができる。
【0047】
図6から
図10までは、本発明に係る注射器100の有利で非限定的な実施形態を示す。この注射器100は、例えば、注射を行うために上述した可撓性カートリッジ1と共に使用することができる。
【0048】
一般的な実施形態では、注射器100は、
可撓性カートリッジ1を受容するための受容区画106を備えた本体101であって、第1開口部103のある第1端部102と第2開口部105のある対向する第2端部104との間に延在する本体101と、
本体101に対して後退位置と前進位置との間を摺動するプランジャ200を備え、可撓性カートリッジ1を変形、特に破砕するために、受容区画106の内部で本体101に対して摺動する破砕ヘッド201を支持する破砕装置と、
を備える。
【0049】
本明細書の目的のために、後退位置及び前進位置という表現は、注射器100の本体101に関するものである。
【0050】
一実施形態によれば、注射器100の本体101は、好ましくは平坦化された管状体であり、第1端部102と第2端部104との間で主として主軸Xに沿って延びている。
【0051】
注射器100は、プランジャ200が摺動可能とされる摺動プランジャ200の支持固定要素120をさらに備える。
【0052】
特に有利な実施形態によれば、注射器100は、支持固定要素120の本体101への取り外し可能な結合を可能にする結合手段、及び/又は、支持固定要素120と本体101との間の相互位置を変更できるように支持固定要素120を本体101に結合することができる結合手段を備える。
【0053】
例えば、前述の結合手段が、支持固定要素120の本体101への取り外し可能な結合を可能にする場合、そのような結合手段は、支持固定要素120及び本体101にそれぞれ設けた可逆的な連動スナップ要素を結合してもよい。このように、支持固定要素120を本体101に繰り返し着脱することができる。
【0054】
前記結合手段が、支持固定要素120と本体101の間の相互位置を変更するように、支持固定要素120を本体101に結合することを可能にし、かつ、前記手段が、本体101に対して支持固定要素120を回転又は摺動可能とする場合、このような手段を用いることができる。この手段は、例えば、支持固定要素120と本体101との間で回転軸を中心に相互に回転することを可能にする円筒形のヒンジを備える。例えば、このような円筒形のヒンジは、注射器1の本体101から突出する円筒形のピン109を備え、さらに、支持固定要素120に設けた、ピン109が挿入される穴又は開口部を備える。なお、ピンの配置と穴や開口部の配置とは逆にすることも可能である。
【0055】
前述の結合手段によって、注射器100は少なくとも2つの操作形態を取ることができる。そのような操作形態の1つである
図8に示す操作形態では、支持固定要素120が第1開口部103を閉鎖している。したがって、そのような操作形態は閉鎖動作位置として言及することができる。
図6及び
図7に示す他の操作形態では、可撓性カートリッジ1を受容区画106に挿入するために、及び/又は可撓性カートリッジ1を受容区画106から取り出すために、支持固定要素120が第1開口部103へのアクセスを可能にしている。したがって、そのような操作形態は開放操作位置として言及することができる。
【0056】
有利な実施形態によれば、注射器100は、注射器を取り外して閉鎖操作構成に固定可能にする固定手段130、131を備えている。このような固定手段は、例えば、本体101に設けた歯130と、歯130に対して好ましくはカウンター形状であり、歯130を挿入することができる支持固定要素120に設けた凹部131とを有する内部固定システムを備える。歯130及び凹部131の位置を逆にできることは明らかである。
【0057】
有利な実施形態によれば、凹部204は、可撓性カートリッジ1に設ける場合、分離装置12、22を通過可能とする破砕ヘッド201内に画定される。
【0058】
好都合なことに、凹部204は、分離装置12、22に触れることなく、及び/又はそれを押しつぶすことなく、分離装置12、22を通過するような形状及び大きさである。
【0059】
破砕ヘッド201は、可撓性カートリッジ1に対して、並進のみの運動、又は並進と回転を組み合わせた運動に応じて移動するように構成することができる。後者の場合、破砕ヘッド201は、可撓性カートリッジ1で回転して摺動するように構成された少なくとも1つのロールであるか、又は少なくとも1つのロールを備えることができる。例えば、ロールの凹部204は、円筒形の壁に設けた連続的な円形の溝である。
【0060】
前述のように、摺動プランジャ200は破砕ヘッド201を支持している。破砕ヘッド201は、第1開口部103を介して本体101内に挿入され、摺動プランジャ200とともに本体101内を摺動することができる。
【0061】
摺動プランジャ200は、好ましくは、少なくとも1つのステム202を備える。このステム202は、一端に破砕ヘッド201を有し、他端にスラスト要素203を有する。ユーザは、プランジャ200、ひいては破砕ヘッド201を、本体101及び可撓性カートリッジ1に対して摺動させるため、このようなスラスト要素203に、例えば親指を使って手動でスラスト力を作用させることができる。有利な実施形態によれば、摺動プランジャ200は、相互に間隔を空けて配置した2つの平行なステム202を備える。これにより、プランジャ200を後退位置から前進位置に摺動させる際に、ステム202の不要なたわみを制限又は防止し、摺動動作をより滑らかで安定したものにすることができる。
【0062】
上述のように、注射器100の本体101は、内部に受容区画106を有する。このような受容区画106には、第1開口部103を介してアクセスして可撓性カートリッジ1を収容可能となっている。有利な実施形態によれば、受容区画106は、1又は複数のガイド溝107、例えば2つの平行かつ相互に間隔を空けた溝を備えている。このガイド溝107は、摺動軸、例えば主軸Xに沿ってガイドされた摺動のために、変形可能なカートリッジ1を受容区画106に挿入可能となるように構成されている。このようなガイド溝107は、カートリッジ本体10、20の各周縁部を受け入れるように構成されるのが好ましい。
【0063】
第2開口部105は、可撓性カートリッジ1の受容区画106への挿入中、針4が通過できるようになっている。さらに、針保持部品3は、例えば形状結合又は干渉によって、第2開口部105に固定できるのが好ましい。
【0064】
有利な実施形態によれば、破砕ヘッド201が可撓性カートリッジ1に対して単独で移動する(すなわち、ロールから解放される)ように構成されている場合、そのような破砕ヘッド201は、可撓性カートリッジ1側で優先的な破砕を達成するために、主軸Xに対して非対称な形状となっている。有利な実施形態によれば、破砕ヘッド201は、平坦な面と、反対側の凸状で膨らんだ面とを備えている。凹部204は、好ましくは平坦面に形成されている。平坦面は、カートリッジ1の変形可能な壁を破砕するように構成されている。
【0065】
有利な実施形態によれば、受容区画106は、破砕ヘッド201と相補的であり、可撓性カートリッジ1の破砕に追従するように、破砕ヘッド201に対して逆形状をした凹状の底部107を有している。
【0066】
有利な実施形態によれば、スライド式プランジャ200の支持固定要素120は、スライド式プランジャ200が格納位置にあるときに破砕ヘッド201を受け入れるように構成された受け座121を備える。スライド式プランジャ200の支持固定要素120は、スライド式プランジャ200の少なくとも1つのステム202が貫通する受け座121と連通する貫通開口122を備えるのが好ましい。図に示す例では、2つの貫通開口122があり、各貫通開口122は各ステム202を貫通する。
【0067】
特に有利な実施形態によれば、プランジャ200の支持固定要素120は、可撓性カートリッジ1を受容区画106に挿入する前に、場合によってはカートリッジ自体の挿入中にも、本体101に対する可撓性カートリッジ1の少なくとも部分的な整列を可能にする少なくとも1つの事前整列要素を備える。前記事前整列要素は、例えば、ガイド溝127を備える。
【0068】
通常の動作では、注射器100は最初、可撓性カートリッジ1を収容するように構成された受容区画106を自由にするために、スライド式プランジャ200が後退位置にある開始構成となっている。
【0069】
注射器100のそのような構成では、プランジャ200の支持固定要素120は、注射器1の本体101から離脱しているか、又は、第1開口部103へのアクセス及び第1開口部103からの可撓性カートリッジ1の受容区画106への挿入を可能にするように方向付けられ、すなわち一般的に配置されている。
【0070】
分離装置12、22がコネクタであるか、又はコネクタを備える場合、カートリッジ本体10、20は、例えば、最初は2つの部分に分離されている。注射器1への挿入の前に、カートリッジ本体の2つの部分10、20は、コネクタ12、22を用いて一緒に固定される。
【0071】
挿入が完了すると、プランジャ200の支持固定要素120は、第1開口部103を閉鎖するように、例えば回転させて配置される。
【0072】
プランジャ200に作用することにより、破砕ヘッド201は可撓性カートリッジ1を破砕する。例えば、破砕ヘッド201は、最初に第2収容チャンバ21の変形可能な壁を破砕する。第2収容チャンバ21内が所定圧力に到達すると、第2収容チャンバ21に収容された液体成分は、分離装置12、22に設けた流体連通ダクト2を通過して第1収容チャンバ11に入る。破砕ヘッド201は、第2収容チャンバ21が完全に空になるまで前進し続ける。凹部204により、破砕ヘッド201は、通過する分離装置12、22を妨害することなく乗り越える。この時、オペレータは、スライド式プランジャ200の前進を中断し、第1収容チャンバ11内の注射液の再構成を容易にするために、注射器を振ることができる。破砕ヘッド201は分離装置12、22の通過後も前進を続け、第1収容チャンバ11の変形可能な壁を破砕する。第1収容チャンバ11内が所定圧力に到達すると、第1収容チャンバ11の間に設けた剥離可能な仕切りが剥がされ、場合によっては不要な空気が放出された後、破砕ヘッド201がさらに前進して注入可能な溶液を注入する。
【0073】
注入後、注射器100を開き、カートリッジ1を取り出して、例えば材料回収サイクルに回すことができる。他方、注射器100は再使用可能であるのが好ましい。
【0074】
注射器100と可撓性カートリッジ1とを備えた注射キットは、本発明のさらなる目的である。変形実施形態では、注射キットは、注射器100と、複数の可撓性カートリッジ1とを備える。
【0075】
本発明による注射器は、先行技術の注射器を参考にして、上述した要件を満足するようにした革新的なものである。実際、上述の注射器によれば、注射器内に可撓性カートリッジを容易かつ正確に挿入することができる。
【0076】
また、このシステムは、注射器100が再利用可能であるため、エンドユーザにとっては低コストであり、環境にとっても有益である。
【0077】
当業者は、偶発的なニーズを満たすために、以下の請求項で定義される保護範囲に含まれるすべての上述の注射器に変更を加えることができることが明らかである。