(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】製糸方法
(51)【国際特許分類】
D06B 3/08 20060101AFI20231213BHJP
D06B 23/20 20060101ALI20231213BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20231213BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
D06B3/08 Z
D06B23/20
D04B1/22
D04B21/20 Z
(21)【出願番号】P 2023098637
(22)【出願日】2023-06-15
【審査請求日】2023-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510331009
【氏名又は名称】澤田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】南川 真之
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-240174(JP,A)
【文献】特開平07-090778(JP,A)
【文献】特開2001-049575(JP,A)
【文献】特開2001-131861(JP,A)
【文献】特開平09-119033(JP,A)
【文献】特開2003-227055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00-23/30
D02G 1/00- 3/48
D04B 1/00- 1/28,
21/00-21/20
D01F 1/00- 6/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤が添加された
紐状の合成繊維を、筒状に編み込
み着色リリヤン糸を生成するステップと、
前記着色リリヤン糸を、輪の形状に巻いて重ねた綛に形成するステップと、
前記綛をチャンバーにセットするステップと、
前記チャンバーの内部を真空状態にするとともに、前記チャンバーの内部に蒸気を充満させて、前記綛に
前記蒸気を浸透さ
せるステップと
を含
み、
前記蒸気を浸透させるステップにおいて、前記着色リリヤン糸が収縮して膨張する、製糸方法。
【請求項2】
膨張した前記着色リリヤン糸を前記綛から糸球に綛繰りするステップを更に含む、請求項1に記載の製糸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製糸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の布地の製造方法は、ポリエステル繊維を含む第1の糸状物に分散染料を付与する工程を含み、第1の糸状物に前記分散染料を付与する工程の前に、前記第1の糸状物を整経する工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第1の糸状物に前記分散染料を付与する工程において、分散染料のポリエステル繊維への染着を目的として、熱処理が行われる。一般的に、ポリエステル繊維への熱処理によって、ポリエステル繊維が収縮しポリエステル繊維の柔軟性が低下することがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より柔軟性の高い、着色された糸を生成することが可能になる製糸方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る製糸方法は、着色剤が添加された合成繊維を、筒状に編み込むリリヤン加工を施して着色リリヤン糸を生成するステップと、前記着色リリヤン糸を、輪の形状に巻いて重ねた綛に形成するステップと、前記綛に対して真空状態で蒸気を浸透させて前記着色リリヤン糸を膨張させるステップとを含む。
【0007】
本発明の製糸方法において、膨張した前記着色リリヤン糸を前記綛から糸球に綛繰りするステップを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より柔軟性の高い、着色された糸を生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る糸の製造工程を示すフローチャートである。
【
図2】第1工程に投入前の合成繊維を示す図である。
【
図6】第3工程を経る前の糸と第3工程を経た糸との比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0011】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る糸1の製造方法を説明する。
図1は、本実施形態に係る糸1の製造工程を示すフローチャートである。本実施形態に係る糸1の製造工程は、製糸方法の一例である。
【0012】
図1に示すように、まず、着色剤が添加された合成繊維2がリリヤン加工されて糸1A(着色リリヤン糸)が生成される(ステップS11)。
【0013】
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る糸1の製造工程の一部について説明する。
図2は、第1工程に投入前の合成繊維2を示す図である。
図3は、第1工程を経た糸1Aを示す図である。
【0014】
図2及び
図3に示すように、糸1の製造工程において、第1工程は、リリヤン加工工程である。リリヤン加工工程は、
図1のステップS11に相当する。第1工程において、紐状の合成繊維2(
図2)は、図示しない加工機3によってリリヤン加工が施され、糸1Aに編み込まれる。リリヤン加工は、紐状の合成繊維2を筒状に編み込む加工を示す。つまり、糸1Aは、筒状の形状を有する(
図3)。
【0015】
本実施形態において、合成繊維2は、例えば、ポリエステル繊維である。また、合成繊維2には、顔料又は染料等の着色剤が添加されている。つまり、合成繊維2は、一般的に無色透明な合成繊維と異なり、着色済みのポリエステル繊維である。なお、合成繊維2は、ポリエステル繊維に限定されない。また、合成繊維2の色は、特に限定されず、白色を含む。
【0016】
加工機3にロール状の合成繊維2がセットされ、加工機3に対してリリヤン加工の開始をする指示が与えられると、加工機3は、合成繊維2をリリヤン加工して糸1Aを生成する。以下、糸1Aを着色リリヤン糸と記載することがある。例えば、加工機3は、生成した糸1Aを加工機3に設けられた芯に巻き付け、糸1Aをロール状に形成する。ロール状に形成された糸1Aは、加工機3から取り外し可能である。
【0017】
次に、
図1及び
図4を参照して、本実施形態に係る糸1の製造工程のうち第2工程について説明する。
図4は、第2工程を経た糸1Aを示す図である。
【0018】
図1に示すように、糸1の製造工程において、第2工程は、第1工程において生成された糸1Aが綛11に形成(綛(かせ)上げ)される綛上げ工程である(ステップS12)。具体的には、第2工程において、ロール状に形成された糸1Aは、図示しない綛上げ機4によって綛11に形成される。具体的には、形成された糸1Aが綛上げ機4にセットされ、綛上げ機4に対して綛上げの開始をする指示が与えられると、綛上げ機4は、糸1Aを綛11に形成する。綛11は、糸1Aが所定の径を有する輪の形状に巻いて重ねられた状態を示す(
図4)。
【0019】
次に、
図1、
図5及び
図6を参照して、本実施形態に係る糸1の製造工程のうち第3工程について説明する。
図5は、第3工程を経た糸1Bを示す図である。
図6は、糸1Aと糸1Bとの比較を示す図である。
図5において、向かって左側に綛11に形成された糸1Aが示され、向かって右側に綛11に形成された糸1Bが示されている。
【0020】
図1に示すように、糸1の製造工程において、第3工程は、真空セット工程である。真空セット工程は、綛11に形成された糸1Aに対して、真空状態で蒸気を浸透させる工程を示す(ステップS13)。真空セット工程には、例えば、図示しない真空セット機5が用いられる。
【0021】
第3工程において、綛11(糸1A)は、真空セット機5の図示しないチャンバー51の内部にセットされる。綛11(糸1A)がチャンバー51にセットされた状態で、真空セット機5に対して処理の開始をする指示が与えられると、真空セット機5は、チャンバー51の内部を真空状態にするとともに、チャンバー51の内部に略90℃の蒸気を充満させる。例えば、第3工程における真空状態の継続期間であって蒸気の充満期間、つまり、綛11(糸1A)に対する加熱期間は、略10分間である。
【0022】
真空状態での略90℃の蒸気による略10分間の加熱において、糸1Aは、収縮した後膨張する(
図5)。その結果、糸1Bが生成されるして糸1Bが生成される(ステップS14)。
図6に示すように、第3工程を経た糸1Bには、第3工程を経る前の糸1Aに比べてより多くの空気が含まれる。したがって、本実施形態の糸1の製造工程によれば、より柔軟性の高い、着色された糸1の生成が可能になる。
【0023】
次に、
図1及び
図7を参照して、本実施形態に係る糸1の製造工程のうち第4工程について説明する。
図7は、第4工程を経た糸1を示す図である。
【0024】
図1に示すように、糸1の製造工程において、第4工程は、綛(かせ)繰り工程である。第4工程において、糸1Bは、図示しない綛繰り機6によって綛11から球状の糸球12に綛繰りされる(ステップS15)。具体的には、膨張した糸1B(綛11)が綛繰り機6にセットされ、綛繰り機6に対して綛繰りの開始をする指示が与えられると、綛繰り機6は、糸1を糸球12に形成する(
図7)。このように、膨張した糸1を球状の糸球12に形成することで、糸1の持ち運びが容易になる。
【0025】
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0027】
実施例に係る糸1Aは、第1工程及び第2工程によって生成された綛11である。実施例に係る糸1Bは、糸1Aに対して第3工程(真空セット工程)が施されることにより生成されている。
【0028】
一方、比較例に係る糸7Aは、無色透明な合成繊維をリリヤン加工した後に、着色処理が施されることにより生成されている。比較例に係る糸7Bは、糸7Aに対して第3工程(真空セット工程)が施されることにより生成されている。
【0029】
(実施例及び比較例の結果)
次に、
図6及び
図8を参照して、実施例に係る糸1と、比較例に係る糸7とを比較しながら説明する。
図8は、比較例に係る糸7を示す図である。
【0030】
(比較例)
図8において、向かって左側に糸7Aが示され、向かって右側に糸7Bが示されている。糸7Aは、着色処理の際に、加熱される。したがって、糸7Aは、糸1と異なり、第3工程(真空セット工程)より前の工程で加熱処理が施される。一般的に、合成繊維は、加熱により収縮する。その結果、糸7Aは、第3工程(真空セット工程)より前の工程で既に収縮した状態になる。
図7に示すように、収縮した状態の糸7Aは、第3工程(真空セット工程)を経ても膨張しない(糸7B)。よって、糸7A及び糸7Bにおいて、含まれる空気の量は同じ程度である。
【0031】
(実施例)
一方、実施例に係る糸1は、上述のように、第3工程を経た後の糸1Bに、第3工程を経る前の糸1より多くの空気が含まれるため、糸7より柔軟性が高くなる。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0033】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、合成繊維の製糸の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 :糸
1A :糸
1B :糸
2 :合成繊維
11 :綛
12 :糸球
【要約】
【課題】より柔軟性の高い、着色された糸を生成する。
【解決手段】製糸方法は、着色剤が添加された合成繊維2を、筒状に編み込むリリヤン加工を施して糸1Aを生成するステップと、糸1Aを、輪の形状に巻いて重ねた綛11に形成するステップと、綛11に対して真空状態で蒸気を浸透させて糸1Aを膨張させるステップとを含む。
【選択図】
図1