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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ホームドア設置構造
(51)【国際特許分類】
   E01F 1/00 20060101AFI20231213BHJP
   B61B 1/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E01F1/00
B61B1/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097038
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188450
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592145268
【氏名又は名称】JR東日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593092482
【氏名又は名称】JR東日本メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】下垣 正宏
(72)【発明者】
【氏名】布施 毅
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正志
(72)【発明者】
【氏名】木村 敬
(72)【発明者】
【氏名】満重 智仁
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】花岡 聖
(72)【発明者】
【氏名】本橋 孝章
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-017801(JP,A)
【文献】特開2014-062407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 1/00
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擁壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その擁壁が盛土を支えている構造の駅ホームにおけるホームドア設置構造であって、
前記盛土の上層部分が締め固められて、その上面が摩擦抵抗を増すように形成されている盛土改質層と、
前記擁壁の上端面に固定されている沓と、
下面が前記盛土改質層と前記沓に圧接された状態で配設されている床スラブと、
を備え、
前記床スラブ上にホームドアユニットが設置され、
前記床スラブは、前記ホームドアユニットの荷重を前記駅ホームの中央側に分散させるように構成された重量物であることを特徴とするホームドア設置構造。
【請求項2】
前記擁壁の延設方向に亘って複数の前記床スラブが並設され、その並設された複数の前記床スラブの上に、複数の前記ホームドアユニットが並設されており、
前記各ホームドアユニットは、それぞれ1枚の前記床スラブに対して取り付けられており、
前記沓は、少なくとも前記ホームドアユニットが取り付けられている前記床スラブが載置される位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のホームドア設置構造。
【請求項3】
前記擁壁の上端面と前記沓の間に、前記擁壁と前記床スラブの間に所定の空間を設けるために空間形成部材が固定されており、
前記沓は、前記空間形成部材を介して前記擁壁に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のホームドア設置構造。
【請求項4】
前記空間形成部材によって設けられた前記空間には、前記擁壁の延設方向に亘って前記盛土を支えるための空間保持部材が配設されていることを特徴とする請求項3に記載のホームドア設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土式の駅ホームにホームドアを設置するためのホームドア設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の上に土が盛られて押し固められたホーム基礎部を基礎構造部分としている盛土式の駅ホームに、ホームドアを設置したホームドア構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このホームドア構造は、ホーム基礎部から地盤に達するように鋼管杭が埋設されてなる鉛直埋設部分と、水平方向に延在するようにホーム基礎部に埋設されるとともに鉛直埋設部分の上端部に溶接された鋼材である水平埋設部分と、水平埋設部分や鉛直埋設部分を含んで構成されている支持構造部に支持されているドアユニット等を備えている。
このホームドア構造では、ホーム基礎部に埋設されている水平埋設部分や鉛直埋設部分を有する支持構造部にドアユニットが支持されているので、ドアユニットに風などの荷重が作用する場合でも、その荷重を支持構造部が受け支えることでドアユニットが設置位置からずれたり傾倒したりしないようになっている。
つまり、このホームドア構造では、ドアユニットに荷重が強く作用したことでドアユニットが傾倒してしまわないように、ホーム基礎部から地盤に達するように埋設した鋼管杭を利用してドアユニットを強固に支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-237403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のホームドア構造の場合、駅ホームの盛土(ホーム基礎部)に鋼管杭を埋設する施工作業が大掛かりになるため、ホームドアの設置にかかる工期や工費が増大するという問題があった。
また、駅ホームの盛土内に支障物があるなどして鋼管杭を埋設することができない場合には、このホームドア構造を構築できないことがある。
そこで、本発明者らが鋭意検討して、大掛かりな作業を要せずに、盛土式の駅ホームにホームドアを設置するための技術を開発するに至った。
【0005】
本発明の目的は、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができるホームドア設置構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
擁壁が駅ホームの延在方向に沿って延設されており、その擁壁が盛土を支えている構造の駅ホームにおけるホームドア設置構造であって、
前記盛土の上層部分が締め固められて、その上面が摩擦抵抗を増すように形成されている盛土改質層と、
前記擁壁の上端面に固定されている沓と、
下面が前記盛土改質層と前記沓に圧接された状態で配設されている床スラブと、
を備え、
前記床スラブ上にホームドアユニットが設置され、
前記床スラブは、前記ホームドアユニットの荷重を前記駅ホームの中央側に分散させるように構成された重量物であるようにした。
【0007】
かかる構成のホームドア設置構造であれば、駅ホームに鋼管杭を埋設するような大掛かりな施工作業を要さないので、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
【0008】
そして、このホームドア設置構造では、ホームドアユニットが固定されている床スラブがホームドアユニットの荷重を駅ホームの中央側に分散させているので、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用しても、その荷重も駅ホームの中央側に分散させることができ、ホームドアユニットの設置位置に荷重が集中することはない。また、重量物である床スラブは、床スラブに固定されているホームドアユニットが転倒しないように受け支えることができる。
さらに、床スラブを支持している盛土改質層は、その床スラブが横滑りしないように支持する摩擦抵抗力を有しているので、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用しても、床スラブがずれることはない。
つまり、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニットとともに床スラブの配置がずれたり、ホームドアユニットとともに床スラブが傾倒したりすることはない。
【0009】
また、擁壁の上端面に固定されている沓は、床スラブの下面に圧接しているので、床スラブが横滑りしようとする横方向の力が作用しても、その力は沓のせん断変形によって吸収されて擁壁に伝達されないので、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用した場合でも、擁壁の安定性が損なわれることはない。
【0010】
このようなホームドア設置構造であれば、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニットとともに床スラブの配置がずれたり、床スラブが傾倒したりすることはなく、また、擁壁の安定性が損なわれることもないので、駅ホームにてホームドアを好適に活用することができる。
【0011】
また、望ましくは、
前記擁壁の延設方向に亘って複数の前記床スラブが並設され、その並設された複数の前記床スラブの上に、複数の前記ホームドアユニットが並設されており、
前記各ホームドアユニットは、それぞれ1枚の前記床スラブに対して取り付けられており、
前記沓は、少なくとも前記ホームドアユニットが取り付けられている前記床スラブが載置される位置に設けられているようにする。
なお、ホームドアユニットは、スライドドアと、スライドドアをスライド移動可能に支持するとともに内部に収容可能なドア収納部を有しており、このドア収納部が床スラブに対して取り付けられるようになっている。
【0012】
ホームドアユニットが1枚の床スラブに対して取り付けられていれば、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用した場合に、その荷重は隣接する床スラブであってホームドアユニットが取り付けられていない床スラブには作用しない。
そして、ホームドアユニットが取り付けられている床スラブが載置される位置に沓が設けられていれば、ホームドアユニットに強風などによる荷重が作用して床スラブが横滑りしようとする横方向の力が生じても、その力は沓のせん断変形によって効率よく吸収されて擁壁に伝達されないので、擁壁の安定性が損なわれることはない。
【0013】
また、望ましくは、
前記擁壁の上端面と前記沓の間に、前記擁壁と前記床スラブの間に所定の空間を設けるために空間形成部材が固定されており、
前記沓は、前記空間形成部材を介して前記擁壁に固定されているようにする。
【0014】
擁壁と沓の間であって擁壁と床スラブの間に空間形成部材が設けられて、擁壁と床スラブの間に所定の空間を設けることができれば、その空間をホームドアユニットに接続される各種ケーブルを通すためのキャビネットとして利用することができる。
【0015】
また、望ましくは、
前記空間形成部材によって設けられた前記空間には、前記擁壁の延設方向に亘って前記盛土を支えるための空間保持部材が配設されているようにする。
【0016】
空間形成部材によって設けられた空間に、土留めの機能を有する空間保持部材が配設されていれば、空間形成部材が形成した空間に盛土の土がこぼれ出なくなり、その空間を有効利用し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1のホームドア設置構造を示す正面図である。
図2】実施形態1のホームドア設置構造を示す上面図である。
図3図1のIII-III線における断面図である。
図4図1のIV-IV線における断面図である。
図5】実施形態1のホームドア設置構造における沓の拡大説明図である。
図6】実施形態2のホームドア設置構造を示す正面図である。
図7図6のVII-VII線における断面図である。
図8図6のVIII-VIII線における断面図である。
図9】実施形態2のホームドア設置構造における沓の拡大説明図である。
図10】実施形態3のホームドア設置構造を示す正面図である。
図11図10のXI-XI線における断面図である。
図12図10のXII-XII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るホームドア設置構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
本実施形態では、擁壁2が内側の盛土3を支えている構造の盛土式の駅ホームであって、駅ホームの延在方向に沿って擁壁2が延設されている駅ホームにホームドアを設置するためのホームドア設置構造について説明する。
【0021】
(実施形態1)
本実施形態のホームドア設置構造100は、例えば、図1から図4に示すように、盛土3の上層部分が締め固められて、その上面が摩擦抵抗を増すように形成されている盛土改質層10と、擁壁2の上端面に固定されている沓20と、下面が盛土改質層10と沓20に圧接された状態で配設されている床スラブ30等を備え、その床スラブ30上にホームドアユニット40が設置されるようになっている。
【0022】
ここでの擁壁2は、複数の石積ブロック1が積み重ねられてなる既設のブロック擁壁である。なお、本実施形態でいう石積ブロック1は、石材からなるブロックと、コンクリート製のブロックのいずれであってもよい。
この擁壁2は、石積ブロック1が6段積みされてなり、下から2段目の途中まで地中に埋没している。
また、この擁壁2の最上段の石積ブロック1は、ホームドアの設置位置の高さ調整のために切断などの加工が施されて、厚みが薄く形成されている。
また、この擁壁2の上から3段目の石積ブロック1には、擁壁2の延設方向に亘って、長尺な鋼板製の平板部材1aがボルトによって固定されている。この平板部材1aは、石積ブロック1からなる擁壁2を補強するために設けられている。
【0023】
盛土改質層10は、盛土改質層10の上に配設される床スラブ30が沈下しないように支持する強度と、盛土改質層10の上に配設される床スラブ30が横滑りしないように支持する摩擦抵抗力を有している。
この盛土改質層10は、例えば、グランドセル(登録商標)を用いたグランドセル工法と称される周知の地盤補強工法によって盛土上層側が補強された改質層である。
具体的には、盛土改質層10は、盛土3上に展開して敷設したグランドセルに土や砕石などの中詰材を充填した後、転圧などによって締め固め、その上面にモルタルを敷設して形成することができる。なお、モルタルの敷設によって床スラブ30の高さ調整を行っている。また、床スラブ30を設置するために掘り起こした盛土3の上層部分の土を中詰材の一部として使うことができる。
特に、グランドセル工法によって形成された盛土改質層10であれば、盛土改質層10の上面のモルタルが床スラブ30との摩擦抵抗を大きくする滑り止めになるので、盛土改質層10の上面の摩擦抵抗を好適に増大することができる。
【0024】
沓20は、例えば、図5に示すように、2枚の鋼板21の間にクロロプレンゴム製のゴム板22が圧着されてなるゴム沓であり、ゴム板22の鉛直変形とせん断変形によって、沓20にかかる荷重を吸収する機能を有している。
この沓20の下面側の鋼板21は、ゴム板22や上面側の鋼板21よりも大きいサイズを有しており、その下面側の鋼板21がボルトBによって擁壁2の上端面に固定されている。
また、この沓20の上面側の鋼板21は、床スラブ30とは一体化されておらず、床スラブ30の下面に圧接している。
【0025】
床スラブ30は、例えば、プレキャストRC板(RCスラブ)であって、その上面に設置されるホームドアユニット40の荷重を駅ホームの中央側に分散させるように構成された重量物である。
駅ホームには、擁壁2の延設方向に亘って複数の床スラブ30が並設されている。本実施形態では、比較的幅が広い床スラブ30と比較的幅が狭い床スラブ30とが交互に配設されている。
この床スラブ30は、駅ホームの擁壁2側の端から駅ホームの中央側の端まで、例えば1350mmの長さを有している。
そして、比較的幅が広い床スラブ30の幅は例えば3100mmであり、その平面寸法はこの場合3100mm×1350mmである。また、比較的幅が狭い床スラブ30の幅は例えば1820mmであり、その平面寸法はこの場合1820mm×1350mmである。なお、床スラブ30の厚さは例えば150mmである。
また、床スラブ30上には、誘導ブロック(点字ブロック)やノンスリップタイルなどのタイル材Tが固設されている。
【0026】
ホームドアユニット40は、スライドドア41と、スライドドア41が収納されるドア収納部42を有している。ドア収納部42には、スライドドア41をスライド移動させる駆動部(図示省略)が設けられている。
このホームドアユニット40のドア収納部42が床スラブ30にボルトBによって固定されている。なお、ホームドアユニット40は、床スラブ30における擁壁2側の上面に固定されている。
本実施形態のホームドアユニット40は、フレーム構造を有するドアユニットであり、比較的軽量であって、風を受け難い態様になっている。
【0027】
駅ホームにおいては、擁壁2の延設方向に亘って並設された複数の床スラブ30の上に、複数のホームドアユニット40が並設されており、各ホームドアユニット40は、それぞれ1枚の床スラブ30に対して取り付けられている。
本実施形態では、比較的幅が広い床スラブ30と比較的幅が狭い床スラブ30とが交互に配設されており、比較的幅が広い床スラブ30に対してホームドアユニット40がボルトBで固定されている。そして、スライドドア41は、比較的幅が狭い床スラブ30の上方でスライド移動するように配されている。
なお、ホームドアユニット40に接続される各種ケーブルは、例えば、駅ホームに埋設されている図示しないケーブルトラフに通されている。
【0028】
また、沓20は、ホームドアユニット40が取り付けられている床スラブ30が設置される位置であって、その床スラブ30と接触する配置に設けられている。本実施形態では、比較的幅が広い床スラブ30と比較的幅が狭い床スラブ30とに接触するように、それら床スラブ30の継ぎ目の下に配設されている。
つまり、複数の沓20が床スラブ30の継ぎ目の下に配設されるように、間隔をあけて並設されている。
なお、本実施形態では、沓20の2/3が比較的幅が広い床スラブ30に接触し、沓20の1/3が比較的幅が狭い床スラブ30に接触するように配設されている。この沓20は、擁壁2の延設方向に沿う長さ(ここでは沓20のゴム板22の長さ)が、例えば430mmに形成されており、その平面寸法は430mm×145mmである。
【0029】
このようなホームドア設置構造100であれば、駅ホームに鋼管杭を埋設するような大掛かりな施工作業を要さないので、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
【0030】
そして、このホームドア設置構造100では、ホームドアユニット40が固定されている床スラブ30がホームドアユニット40の荷重を駅ホームの中央側に分散させているので、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用しても、その荷重も駅ホームの中央側に分散させることができ、ホームドアユニット40の設置位置に荷重が集中することはない。また、重量物である床スラブ30は、床スラ30に固定されているホームドアユニット40が転倒しないように受け支えることができる。
さらに、床スラブ30を支持している盛土改質層10は、その床スラブ30が横滑りしないように支持する摩擦抵抗力を有しているので、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用しても、床スラブ30がずれることはない。
つまり、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニット40とともに床スラブ30の配置がずれたり、ホームドアユニット40とともに床スラブ30が傾倒したりすることはない。
【0031】
また、擁壁2の上端面に固定されている沓20は、床スラブ30の下面に圧接しているので、床スラブ30が横滑りしようとする横方向の力が作用しても、その力は沓20のせん断変形によって吸収されて擁壁2に伝達されないので、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用した場合でも、擁壁2の安定性が損なわれることはない。
【0032】
また、このホームドア設置構造100におけるホームドアユニット40は、比較的幅が広くて大きな床スラブ30に対して固定されており、その1枚の床スラブ30がホームドアユニット40を支持しているので、ホームドアユニット40の荷重やホームドアユニット40にかかる荷重を床スラブ30が好適に分散させるようにして、そのホームドアユニット40を好適に支持することができる。
そして、ホームドアユニットが1枚の床スラブ30に対して固定されており、ホームドアユニット40が取り付けられている床スラブ30が載置される位置に沓20が設けられていれば、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用して床スラブ30が横滑りしようとする横方向の力が生じても、その横方向の力は沓20のせん断変形によって効率よく吸収されて擁壁2に伝達されないので、擁壁2の安定性が損なわれることはない。
【0033】
以上のように、本実施形態のホームドア設置構造100であれば、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
特に、このホームドア設置構造100であれば、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニット40とともに床スラブ30の配置がずれたり、床スラブ30が傾倒したりすることはなく、また、擁壁2の安定性が損なわれることもないので、駅ホームにてホームドアを好適に活用することができる。
【0034】
(実施形態2)
次に、本発明に係るホームドア設置構造100の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
実施形態2のホームドア設置構造100は、例えば、図6から図8に示すように、盛土3の上層部分が締め固められて、その上面が摩擦抵抗を増すように形成されている盛土改質層10と、擁壁2の上端面に固定されている空間形成部材50と、空間形成部材50の上に固定されている沓20と、下面が盛土改質層10と沓20に圧接された状態で配設されている床スラブ30等を備え、その床スラブ30上にホームドアユニット40が設置されるようになっている。
【0036】
実施形態2での擁壁2は、石積ブロック1が5段積みされてなり、下から2段目の途中まで地中に埋没している。
また、この擁壁2の最上段の石積ブロック1は、ホームドアの設置位置の高さ調整のためと、擁壁2と床スラブの30間に所定の空間Sを設けるために、切断などの加工が施されて、厚みが薄く形成されている。
また、この擁壁2の上から2段目の石積ブロック1には、擁壁2の延設方向に亘って、長尺な鋼板製の平板部材1aがボルトによって固定されている。この平板部材1aは、石積ブロック1からなる擁壁2を補強するために設けられている。
【0037】
空間形成部材50は、例えば、H鋼を所定の長さに切断して形成した受桁部材であり、空間形成部材50の下側のフランジがボルトBによって擁壁2の上端面に固定されている。なお、本実施形態の空間形成部材50(H鋼)は、擁壁2の延設方向に沿う長さが、例えば470mmに形成されている。
この空間形成部材50は、擁壁2と床スラブ30の間に所定の空間Sを設けるために、床スラブ30の擁壁2側の端部を支持するように設置されている。
そして、この空間形成部材50の上側のフランジに沓20が固定されており、その沓20を介して空間形成部材50が床スラブ30を支持している。
なお、上記実施形態1の構造を基準にして、空間形成部材50の態様を説明すれば、空間形成部材50は擁壁2の上端面と沓20の間に配設された部材であり、沓20は空間形成部材50を介して擁壁2に固定された状態になっている。
【0038】
沓20は、例えば、図9に示すように、2枚の鋼板21の間にクロロプレンゴム製のゴム板22が圧着されてなるゴム沓であり、ゴム板22の鉛直変形とせん断変形によって、沓20にかかる荷重を吸収する機能を有している。
この沓20の下面側の鋼板21は、ゴム板22や上面側の鋼板21よりも大きいサイズを有しており、その下面側の鋼板21がボルトBによって空間形成部材50の上側のフランジに固定されている。
また、この沓20の上面側の鋼板21は、床スラブ30とは一体化されておらず、床スラブ30の下面に圧接している。
なお、上記実施形態1と同様に、沓20の2/3が比較的幅が広い床スラブ30に接触し、沓20の1/3が比較的幅が狭い床スラブ30に接触するように配設されている。
つまり、沓20および空間形成部材50は、比較的幅が広い床スラブ30と比較的幅が狭い床スラブ30の継ぎ目の下に配設されている。
【0039】
また、空間形成部材50によって設けられた空間Sには、擁壁2の延設方向に亘って盛土3を支えるための空間保持部材60が配設されている。この空間保持部材60を設置したことで、空間形成部材50が形成した空間Sに盛土3の土がこぼれ出なくなる。
空間保持部材60は、例えば、断面視略L字形状を呈する樹脂製トラフであり、本実施形態ではケーブルキャビネットとして用いている。
つまり、空間形成部材50が形成して空間保持部材60が保持している空間Sは、ホームドアユニット40に接続される各種ケーブルを通すためのキャビネットとして使用することができる。
【0040】
このようなホームドア設置構造100であっても、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
そして、このホームドア設置構造100であれば、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニット40とともに床スラブ30の配置がずれたり、床スラブ30が傾倒したりすることはなく、また、擁壁2の安定性が損なわれることもないので、駅ホームにてホームドアを好適に活用することができる。
【0041】
(実施形態3)
次に、本発明に係るホームドア設置構造100の実施形態3について説明する。なお、実施形態1,2と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
実施形態3のホームドア設置構造100は、例えば、図10から図12に示すように、盛土3の上層部分が締め固められて、その上面が摩擦抵抗を増すように形成されている盛土改質層10と、擁壁2の上端面に固定されている空間形成部材50と、空間形成部材50の上に固定されている沓20と、下面が盛土改質層10と沓20に圧接された状態で配設されている床スラブ30と、床スラブ上に設置されているホームドアユニット40等を備えている。
空間形成部材50は、擁壁2と床スラブ30の間に所定の空間Sを設けるために設置された部材(H鋼を所定の長さに切断して形成した受桁部材)であり、空間形成部材50によって設けられた空間Sには、その空間Sに盛土3の土がこぼれ出ないように支えるための空間保持部材60(樹脂製トラフ)が配設されている。
【0043】
実施形態3での擁壁2は、RC造の重量式擁壁である。
既設の擁壁2の上端側の一部は、ホームドアの設置位置の高さ調整のためと、擁壁2と床スラブの30間に所定の空間Sを設けるために、切断などの加工によって除去されており、当初の擁壁2の高さよりも低い態様に形成されている。
【0044】
この実施形態3のホームドア設置構造100は、実施形態2のホームドア設置構造100と擁壁2のタイプが異なるのみであり(擁壁2がブロック積かRC造かの違い)、他の構成は同一である。
つまり、このホームドア設置構造100であっても、盛土式の駅ホームにホームドアを比較的容易に設置することができる。
そして、このホームドア設置構造100であれば、実施形態1,2と同様に、ホームドアユニット40に強風などによる荷重が作用した場合でも、ホームドアユニット40とともに床スラブ30の配置がずれたり、床スラブ30が傾倒したりすることはなく、また、擁壁2の安定性が損なわれることもないので、駅ホームにてホームドアを好適に活用することができる。
【0045】
なお、以上の実施の形態においては、ホームドアの設置位置の高さ調整のためや、擁壁2と床スラブの30間に所定の空間を設けるために、擁壁2の最上段の石積ブロック1の厚みを薄くする加工を施すとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、石積ブロック1を一段撤去するようにして、ホームドアの設置位置の高さ調整や、擁壁2と床スラブの30間に所定の空間を設けるようにしてもよい。
また、高さ調整などの必要がなければ、擁壁2の最上段の石積ブロック1に加工を施さずに、そのままの擁壁2に沓20や空間形成部材50を固定するようにしてもよい。
【0046】
また、床スラブ30における駅ホームの中央側に配される端部の下面にカウンターウエイトとして機能する突起や錘を設けるようにしてもよい。
床スラブ30にカウンターウエイトが設けられていれば、床スラブ30がより一層横滑りし難くなったり、ホームドアユニット40とともに床スラブ30が傾倒し難くなったりするので好ましい。
【0047】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 石積ブロック
2 擁壁
3 盛土
10 盛土改質層
20 沓
21 鋼板
22 ゴム板
30 床スラブ
40 ホームドアユニット
41 スライドドア
42 ドア収納部
50 空間形成部材
60 空間保持部材
100 ホームドア設置構造
S 空間
B ボルト
T タイル材
図1
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