(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】配管構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20231213BHJP
F16L 55/033 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L55/033
(21)【出願番号】P 2018071789
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-04
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 武司
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】土屋 真理子
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-14762(JP,A)
【文献】特開2002-275975(JP,A)
【文献】特開2013-117245(JP,A)
【文献】特開2016-69974(JP,A)
【文献】特開2016-142003(JP,A)
【文献】特開2010-236688(JP,A)
【文献】特開2009-257562(JP,A)
【文献】特開2003-314781(JP,A)
【文献】特開2011-208474(JP,A)
【文献】国土交通大臣認定書 認定番号PS060FL-0933
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12-1/33,F16L51/00-55/48,F16L1/00-1/26,F16L5/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦管に接続可能な縦管接続部と、前記縦管接続部の側面に突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有する集合継手と、
前記縦管接続部を覆う吸音層と、前記吸音層を覆い、横方向が前記吸音層の横方向よりも長い遮音層と、を有する遮音カバーと、を備えた配管構造であって、
前記遮音カバーは、前記縦管接続部を覆う吸音シートと、前記吸音シートを覆う遮音シートと、を有し、
前記吸音シートおよび前記遮音シートには、前記横管接続部が挿通される嵌合口が設けられ、
前記遮音シートの横方向の両端部同士が、前記縦管接続部の側面のうち、前記縦管接続部の軸線方向から見たときに前記横管接続部が突設されていない部分で径方向に互いに重ね合わされた状態で接続され、
前記
縦管接続部の下部は、建築構造物の床スラブ内に埋設され、
前記遮音カバーの下端部は、前記床スラブの上面と下面との間に配置され、
前記遮音シートの両端部は、前記両端部に設けられた面ファスナーにより接続されている配管構造。
【請求項2】
縦管に接続可能な縦管接続部と、前記縦管接続部の側面に突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有する集合継手と、
前記縦管接続部を覆う吸音層と、前記吸音層を覆い、横方向が前記吸音層の横方向よりも長い遮音層と、を有する遮音カバーと、を備えた配管構造であって、
前記遮音カバーは、前記縦管接続部を覆う吸音シートと、前記吸音シートを覆う遮音シートと、を有し、
前記吸音シートおよび前記遮音シートには、前記横管接続部が挿通される嵌合口が設けられ、
前記遮音シートの横方向の両端部同士が、前記縦管接続部の側面のうち、前記縦管接続部の軸線方向から見たときに前記横管接続部が突設されていない部分で径方向に互いに重ね合わされた状態で接続され、
前記
縦管接続部の下部は、建築構造物の床スラブ内に埋設され、
前記遮音カバーの下端部は、前記床スラブの上面と下面との間に配置され、
前記集合継手の外周面であって、前記横管接続部よりも下方かつ前記床スラブ内に埋設される前記縦管接続部の外周面には、熱膨張性シートが貼付されている配管構造。
【請求項3】
縦管に接続可能な縦管接続部と、前記縦管接続部の側面に突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有する集合継手と、
前記縦管接続部を覆うシート状のフェルトである吸音層と、前記吸音層を覆い、横方向が前記吸音層の横方向よりも長い遮音層と、を有するとともに、横方向の両端部同士が、前記縦管接続部の軸線方向から見たときに前記横管接続部が突設されていない部分で径方向に互いに重ね合わされた状態で接続された遮音カバーと、を備えた配管構造であって、
前記集合継手は、建築構造物の床スラブ内に埋設され、前記縦管接続部の下方に接続される接続管部と、前記床スラブの下方に位置し、前記接続管部の下方に接続されると共に下方に向かうに従い縮径する傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続される下側管部とを有する下部接続管を備え、
前記遮音カバーには、前記横管接続部が挿通される嵌合口が設けられ、
前記遮音カバーの下端部は、前記床スラブの上面と下面との間であって、前記横管接続部の下端よりも下、かつ、前記下部接続管の上端よりも上に配置され、
前記集合継手のうち、少なくとも前記床スラブ内に埋設された部分は、熱膨張管とされている配管構造。
【請求項4】
縦管に接続可能な縦管接続部と、前記縦管接続部の側面に突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有する集合継手と、
前記縦管接続部を覆う吸音層と、前記吸音層を覆い、横方向が前記吸音層の横方向よりも長い遮音層と、を有するとともに、横方向の両端部同士が、前記縦管接続部の軸線方向から見たときに前記横管接続部が突設されていない部分で径方向に互いに重ね合わされた状態で接続された遮音カバーと、を備えた配管構造であって、
前記集合継手は、建築構造物の床スラブ内に埋設され、前記縦管接続部の下方に接続される接続管部と、前記床スラブの下方に位置し、前記接続管部の下方に接続されると共に下方に向かうに従い縮径する傾斜管部と、前記傾斜管部の下端部に接続される下側管部とを有する下部接続管を備え、
前記遮音カバーには、前記横管接続部が挿通される嵌合口が設けられ、
前記遮音カバーの下端部は、前記床スラブの上面と下面との間であって、前記横管接続部の下端よりも下、かつ、前記下部接続管の上端よりも上に配置され、
前記集合継手の外周面であって、前記横管接続部よりも下方かつ前記床スラブ内に埋設される前記縦管接続部の外周面には、熱膨張性シートが貼付されている配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1および特許文献2に示すような配管構造が知られている。これらの配管構造では、遮音カバーが集合継手を覆っている。集合継手は、縦管に接続可能な縦管接続部と、縦管接続部の側面から突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有している。
特許文献1に記載の遮音カバーは、集合継手の形状に合わせた3次元形状を呈する。この遮音カバーは弾性を備え、変形されながら集合継手に取付けられる。
特許文献2に記載の遮音カバーは平面形状を呈する。この遮音カバーには横管接続部が挿入される貫通孔が形成され、集合継手に巻き付けられて取付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-050444号公報
【文献】特開2010-236688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の配管構造では、例えば集合継手のうち、遮音カバーが取付けられていない部分を建築構造物の床スラブに埋設して施工することがあった。このような場合には、集合継手の内部を流下する排水が集合継手に衝突することで振動が生じ、この振動が床スラブに伝わることで異音が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、施工される建築構造物の床スラブを介して異音が生じるのを確実に抑制することができる配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る配管構造は、縦管に接続可能な縦管接続部と、前記縦管接続部の側面に突設されて横管を接続可能な横管接続部と、を有する集合継手と、前記縦管接続部を覆う吸音層と、前記吸音層を覆う遮音層と、を有する遮音カバーと、を備えた配管構造であって、前記集合継手の下部は、建築構造物の床スラブ内に埋設され、前記遮音カバーの下端部は、前記床スラブの上面と下面との間に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、集合継手が床スラブに形成された貫通孔内に挿入され、集合継手の下部が、床スラブ内に埋設されている。そして、集合継手を覆う遮音カバーの下端部が、床スラブの上面と下面との間に配置されている。このため、集合継手の外周面と、床スラブの上面における貫通孔の開口周縁部と、の間に遮音カバーを介在させることができる。
【0008】
これにより、床スラブのうち、集合継手からの振動が顕著に伝わりやすい上面に、集合継手からの振動が伝わるのを、遮音カバーの吸音層および遮音層により遮断することが可能になる。このようにして、施工される建築構造物の床スラブを介して異音が生じるのを確実に抑制することができる。
【0009】
また、前記遮音カバーの下端部には、全周にわたって発泡テープが貼付されてもよい。
この場合には、遮音カバーの下端部に全周にわたって発泡テープが貼付されているので、遮音カバーの下端縁から外部に音が漏れ出るのを発泡テープが吸収することができる。
【0010】
また、前記集合継手のうち、少なくとも前記床スラブ内に埋設された部分は、熱膨張管とされてもよい。
【0011】
この場合には、集合継手のうち、床スラブ内に埋設された部分が熱膨張管であるため、仮に床スラブの階下で火災等による温度上昇があった場合に、熱膨張管が膨張することで、床スラブの上層階に階下からの熱が伝わるのを防ぐことができる。
【0012】
またこの際、遮音カバーの下端部が、床スラブの上面と下面との間に配置されているので、仮に遮音カバーが、床スラブの貫通孔周りに形成された段部に配置されている場合には、遮音カバーが床スラブの段部と上下方向に係合していることとなる。このため、遮音カバーが床スラブの段部に引っかかることで、温度上昇により劣化した床スラブにおける貫通孔から、集合継手が自重により抜け落ちるのを防ぐことができる。
【0013】
また、前記集合継手および前記遮音カバーのうち、少なくともいずれか一方の外周面には、熱膨張性シートが全周にわたって貼付されてもよい。
この場合には、集合継手および前記遮音カバーのうち、少なくともいずれか一方の外周面に、熱膨張性シートが全周にわたって貼付されているので、熱膨張性シートが膨張することで、床スラブの上層階に階下からの熱が伝わるのを防ぐことができる。
【0014】
またこの際、遮音カバーの下端部が、床スラブの上面と下面との間に配置されているので、仮に遮音カバーが、床スラブの貫通孔周りに形成された段部に配置されている場合には、遮音カバーが床スラブの段部と上下方向に係合していることとなる。このため、遮音カバーが床スラブの段部に引っかかることで、温度上昇により劣化した床スラブにおける貫通孔から、集合継手が自重により抜け落ちるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工される建築構造物の床スラブを介して異音が生じるのを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る配管構造における集合継手の正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る配管構造を示す一部断面正面図である。
【
図5】
図2に示す吸音シートの端部同士を接着テープにより貼り合わせた状態を示す背面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る配管構造を示す一部断面正面図である。
【
図7】
図6に示す配管構造の変形例を示す一部断面正面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る配管構造を示す一部断面正面図である。
【
図9】
図8に示す配管構造の変形例を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図5を参照し、本発明の第1実施形態に係る配管構造1について説明する。
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る配管構造1は、集合継手(集合管継手)10と、この集合継手を覆う遮音カバー20と、を備えている。
集合継手10は、上部接続管11と、上部接続管11に接続された下部接続管12と、を備えている。上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、を有している。上部接続管11の上端部に第1の縦管P1が接続される。
【0018】
以下の説明において、縦管接続部13の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向に沿う縦管接続部13の上部接続管11側を上方、下部接続管12側を下方という。また、軸方向から見た平面視で、中心軸線Oと直交する方向を径方向といい、軸方向から見た平面視で中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
縦管接続部13の上端部には、径方向の外側に向けて突出するリブ19が複数形成されている。図示の例では、リブ19は軸方向に間隔をあけて3つ配置されているとともに、周方向に間隔をあけて4組配置されている。
4組のリブ19は、互いに等間隔に配置されている。リブ19の径方向の大きさは、後述する遮音シート22の径方向の厚みよりも小さくなっている。
集合継手10を建築構造物に施工する際に、支持金具(図示せず)がリブ19に対して径方向の外側から当接することで保持される。
【0020】
横管接続部14は、縦管接続部13の周壁から径方向の外側に向けて延びている。図示の例では横管接続部14は3つ配置されている。
3つの横管接続部14のうちの2つが中心軸線Oを径方向に挟む位置に各別に配置されている。残りの横管接続部14は、径方向のうち、前記2つの横管接続部14それぞれが延びる方向と、上面視で90°をなす方向に延びている。なお、このような態様に限られず、横管接続部14の数量および延びる方向は、任意に変更することができる。
図1に示すように、横管接続部14における径方向の外端部には、横管P3が各別に接続される接続環15が取付けられている。接続環15の外径は、横管接続部14の外径よりも大きくなっている。
【0021】
集合継手10における上部接続管11および下部接続管12を、透明にしてもよい。これにより、上部接続管11および下部接続管12の接続状態を視認することができる。また、非熱膨張黒鉛や水酸化マグネシウムなどの難燃剤を配合しても良い。
【0022】
下部接続管12は、上方よりも下方が縮径された管状をなしている。下部接続管12は、上端部に位置し、上部接続管11の下方に接続される接続管部16と、接続管部16の下方に接続されるとともに、下方に向かうに従い漸次、縮径する傾斜管部17と、傾斜管部17の下端部に接続されるとともに、第2の縦管P2が接続される下側管部18と、を備えている。接続管部16、傾斜管部17、および下側管部18は、例えば合成樹脂材料の射出成形により一体に形成されている。
【0023】
接続管部16の外径は、上部接続管11における縦管接続部13の外径と同等になっている。傾斜管部17の下端部における外径は、接続管部16の外径よりも小さくなっている。傾斜管部17の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも大きくなっている。
【0024】
接続管部16は、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物を含有する。すなわち、接続管部16は、樹脂組成物を成形することによって作製される。通常、接続管部16は、樹脂組成物を押出成形することによって作製される。
接続管部16は、接続管部16の全体が樹脂組成物からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物から形成されていればよい。例えば、接続管部16が、表層と中間層と内層とからなる3層構造である場合には、中間層が樹脂組成物から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は前記吸熱剤を含有していてもよい。
【0025】
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
表層および内層の厚みとしては、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下が好ましい。被覆層の厚みが0.3mm以上であれば、管としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
また、接続管部16は、JIS K6741に記載の性能を満たすものであることが好ましい。
【0026】
下側管部18の外径は、接続管部16の外径よりも小さく、かつ傾斜管部17における下端部の外径よりも大きくなっている。下側管部18の軸方向の大きさは、接続管部16の軸方向の大きさよりも小さくなっている。下側管部18の内側に、第2の縦管P2が下方から嵌合されることにより、第2の縦管P2が下部接続管12に接続される。
【0027】
そして
図2に示すように、本実施形態に係る遮音カバー20は、上部接続管11に径方向の外側から巻きつけられて縦管接続部13を覆う吸音シート(吸音層)21と、吸音シート21を覆う遮音シート22(遮音層)22と、を有している。吸音シート21および遮音シート22はそれぞれ、可撓性を有している。
【0028】
吸音シート21は、縦管接続部13に巻きつけられる前の状態で矩形状を呈している。吸音シート21は、正面視で縦方向よりも横方向(長辺方向)に長い矩形状を呈している。吸音シート21は、縦方向が集合継手10の軸方向と一致するように、上部接続管11に取付けられる。
吸音シート21には、横管接続部14が嵌合される第1嵌合口24が形成されている。図示の例では、第1嵌合口24は、横方向に間隔をあけて3つ配置されている。
【0029】
第1嵌合口24は、正面視で楕円状をなし、長軸方向が縦方向と一致し、短軸方向が横方向と一致する。
そして第2嵌合口25は、横管接続部14が挿通されることにより、横方向に広げられて真円形状を呈する。第2嵌合口25の形状としてはこのような態様に限られず、例えば長円状や、ひし形状等であってもよい。
【0030】
吸音シート21には、縦管接続部13のリブ19が内側に配置される窓21Aが形成されている。窓21Aは横方向に間隔をあけて複数配置されている。図示の例では、2つの窓21Aが配置されている。窓21Aは正面視で縦方向よりも横方向に長い矩形状を呈している。窓21Aは、吸音シート21のうち、第2嵌合口25の上方に位置する部分に各別に配置されている。
【0031】
吸音シート21にはまた、縦管接続部13のリブ19が内側に配置される開口部21Bが形成されている。開口部21Bは、吸音シート21の横方向の両端部に一対配置されている。一対の開口部21Bは、縦方向の外側に向けて開口している。
開口部21Bは、正面視で縦方向よりも横方向に長い矩形状を呈している。開口部21Bの縦方向の位置は、窓21Aの縦方向の位置と一致している。一対の窓21Aは、吸音シート21の両端部が重ねられた状態で、内側にリブ19が配置される。
【0032】
吸音シート21は、繊維材料によりシート状に形成されている。吸音シート21の素材としては、例えばフェルト、グラスウール、ロックウール等を採用することができる。吸音シート21の厚みは1~20mmで面密度は0.1~2kg/m2となっている。
なお、吸音シート21の材料としては、繊維材料でなくてもよく、上記厚みおよび面密度の範囲内であれば、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンのような多孔質材料を用いても良い。
【0033】
図4に示すように、遮音シート22は、正面視で縦方向よりも横方向(長辺方向)に長い矩形帯状を呈している。遮音シート22は、縦方向が集合継手10の軸方向と一致するように、上部接続管11に取付けられる。
遮音シート22には、横管接続部14が嵌合される第2嵌合口25が形成されている。図示の例では、第2嵌合口25は、横方向に間隔をあけて3つ配置されている。
【0034】
第2嵌合口25は、正面視で楕円状をなし、長軸方向が縦方向と一致し、短軸方向が横方向と一致している。
そして第2嵌合口25は、横管接続部14が挿通されることにより、横方向に広げられて真円形状を呈する。第2嵌合口25の形状としてはこのような態様に限られず、例えば長円状や、ひし形状等であってもよい。
【0035】
遮音シート22のうち、縦方向の両端縁には、正面視で三角形状をなす切欠き22Aが一対形成されている。一対の切欠き22Aは、横方向に間隔をあけて2組配置されている。切欠き22Aは遮音シート22の横方向の両端部を重ね合わせる際に、位置合わせとして用いられる。切欠き22Aの形状としては三角形状に限られず、任意に変更することができる。
【0036】
遮音シート22を吸音シート21の径方向の外側に巻きつける際には、第2嵌合口25が拡がるように遮音シート22を弾性変形させながら、横管接続部14が第2嵌合口25に挿入されて嵌合される。このため、遮音シート22の弾性復元力により、第2嵌合口25の内周縁部が、横管接続部14の外周面に密に当接している。
【0037】
遮音シート22の横方向の両端部同士は、縦管接続部13の側面のうち、横管接続部14が突設されていない部分で互いに接続される。
図5に示すように、遮音シート22の横方向の両端部同士は、2組の切欠き22A同士を重ねるように、径方向に互いに重ね合わされた状態で、接着テープ40により固定される。図示の例では、接着テープ40の横方向の大きさは、2組の開口部21B同士の間の横方向の間隔と同等となっている。
【0038】
接着テープ40としては、例えば接着性および止水性のあるブチルゴムテープ等を用いることができる。
なお、遮音シート22の両端部同士は、接着テープ40に代えて、接着剤により互いに接続されてもよい。また、両端部に設けられたファスナーや面ファスナー等により着脱可能に接続されてもよい。
【0039】
遮音シート22は、基材樹脂100重量部に対して、無機フィラーを300~3000重量部含有する樹脂組成物により形成されている。基材樹脂としては、オレフィン系樹脂を採用することができる。遮音シート22の厚みは1~5mmで、面密度は1~8kg/m2である。
なお、遮音シート22の基材樹脂としては、オレフィン系樹脂に限られず、改質アスファルトやエラストマー、ゴム、ポリオレフィン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等といった弾性を備えた材料であってもよい。
【0040】
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられ、これらのうち、重量とコストのバランスから炭酸カルシウム、硫酸バリウムを用いることが好ましい。なお、これらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
遮音シート22は可撓性を有している。遮音シート22の引張弾性率は5~500kg/cm2であることが好ましい。集合継手10に巻きつけることが容易であるためである。100kg/cm2程度が柔らかすぎず、硬すぎず巻きやすい。
なお、遮音シート22の片面または両面に、合成繊維不織布やガラス繊維不織布等の表面材を積層してもよい。
【0042】
そして本実施形態では、集合継手10の下部は、建築構造物の床スラブ50内に埋設されている。床スラブ50には貫通孔51が形成されている。
集合継手10の下部は、床スラブ50の貫通孔51内に挿入されている。貫通孔51の内周面のうち、下側に位置する部分には、径方向の内側に向けて張り出した段部52が形成されている。
段部52は筒状に形成され、貫通孔51と同軸に配置されている。段部52には、上方を向く載置面52Aが形成されている。
【0043】
そして遮音カバー20の下端部は、床スラブ50の上面50Aと下面50Bとの間に配置されている。遮音カバー20の下端部は、貫通孔51内における段部52の載置面52Aに載置されている。
貫通孔51の内径は、遮音カバー20の外径よりも大きくなっている。貫通孔51の段部52の内径は、径方向に対向する集合継手10の下部接続管12における接続管部16の外径よりも大きくなっている。
【0044】
また、本実施形態では、集合継手10のうち、少なくとも床スラブ50内に埋設された部分は、熱膨張管とされている。図示の例では、下部接続管12の接続管部16が熱膨張管とされている。
熱膨張管は、例えば床スラブ50の階下で火災が発生する等して加熱されることで、膨張して拡径する。これにより、接続管部16の外周面が、床スラブ50における貫通孔51内の段部52の内周面に当接する。このようにして、火災により発生した炎や熱が、床スラブ50の上の階に伝わることなく、遮断される。
【0045】
ここで、床スラブ50への配管構造からの振動の伝達について説明する。
集合継手10の内部に排水が流下すると、排水が集合継手10の内面に衝突することで集合継手10が振動する。この振動が集合継手10の外周面から貫通孔51の内周面を介して床スラブ50に伝達されることがある。
【0046】
ここで一般に、床スラブ50の貫通孔51から内周面に伝達された振動は、床スラブ50の上面50Aおよび下面50Bにおいて顕著に伝達される。振動のエネルギーが表面に偏ることで、減衰が小さく振幅が大きくなるためである。
このため、本実施形態の配管構造1では、遮音カバー20の下端部を段部52に配置することで、集合継手10の外周面と、床スラブ50の上面50Aにおける貫通孔51の開口周縁部と、の間に遮音カバー20を介在させている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る配管構造によれば、集合継手10が床スラブ50に形成された貫通孔51内に挿入され、集合継手10の下部が、床スラブ50内に埋設されている。そして、集合継手10を覆う遮音カバー20の下端部が、床スラブ50の上面50Aと下面50Bとの間に配置されている。このため、集合継手10の外周面と、床スラブ50の上面50Aにおける集合継手10の貫通孔51の開口周縁部と、の間に遮音カバー20を介在させることができる。
【0048】
これにより、床スラブ50のうち、集合継手10からの振動が顕著に伝わりやすい上面50Aに、集合継手10からの振動が伝わるのを、遮音カバー20の吸音シート21および遮音シート22により遮断することが可能になる。このようにして、施工される建築構造物の床スラブ50を介して異音が生じるのを確実に抑制することができる。
【0049】
また、集合継手10のうち、床スラブ50内に埋設された部分が熱膨張管であるため、仮に床スラブ50の階下で火災等による温度上昇があった場合に、熱膨張管が膨張することで、床スラブ50の上層階に階下からの熱が伝わるのを防ぐことができる。
【0050】
またこの際、遮音カバー20の下端部が、床スラブ50の上面50Aと下面50Bとの間、すなわち、床スラブ50の貫通孔51周りに形成された段部52に配置されているので、遮音カバー20が床スラブ50の段部52と上下方向に係合していることとなる。このため、遮音カバー20が床スラブ50の段部52に引っかかることで、温度上昇により劣化した床スラブ50における集合継手10の貫通孔51から、集合継手10が自重により抜け落ちるのを防ぐことができる。
【0051】
次に、本実施形態の第2実施形態に係る配管構造2について、
図6および
図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、遮音カバー20の下端部には、全周にわたって発泡テープ30が貼付されている。
【0052】
発泡テープ30は薄膜状をなしている。発泡テープ30は集合継手10の外周面と、遮音シート22の外周面と、にまたがって貼付されている。このため、発泡テープ30は吸音シート21および遮音シート22の下端縁を閉塞している。
【0053】
なお、発泡テープ31は、
図7に示すような変形例に係る配管構造2Bのように、径方向の厚みをそなえてもよい。本変形例に係る発泡テープ31は、径方向に所定の厚みを備え、集合継手10の外周面のうち、吸音シート21の下側に連なる部分に配置されている。
発泡テープ31の径方向の厚みは、吸音シート21の径方向の厚みと同等となっている。発泡テープ31の外周面と、遮音シート22の外周面と、にまたがって接着シール33が貼付されている。
【0054】
次に、本実施形態の第3実施形態に係る配管構造3について、
図8および
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、集合継手10および遮音カバー20のうち、少なくともいずれか一方の外周面には、熱膨張性シート32が全周にわたって貼付されている。図示の例では、集合継手10の外周面に熱膨張性シート32が貼付されている。
【0055】
熱膨張性シート32は、上部接続管11と下部接続管との間に貼付されている。熱膨張性シート32のうち、上側に位置する部分には、吸音シート21が径方向の外側から巻かれている。
熱膨張性シート32は例えば床スラブ50の階下で火災が発生する等して、加熱されることで膨張して拡径する。これにより、熱膨張性シート32の径方向の外側に位置する遮音カバー20が、床スラブ50における貫通孔51の内周面に当接する。このようにして、火災により発生した炎や熱が、床スラブ50の上の階に伝わることなく、遮断される。
【0056】
なお、熱膨張性シート32は、
図9に示すような変形例に係る配管構造3Bのように、遮音カバー20の外周面に貼付してもよい。この場合には、遮音カバー20が熱により拡径することで、遮音カバー20の外周面と、貫通孔51の内周面とが当接する。これにより、火災により発生した炎や熱が、床スラブ50の上の階に伝わることなく、遮断される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る配管構造3、3Bによれば、集合継手10および前記遮音カバー20のうち、少なくともいずれか一方の外周面に、熱膨張性シート32が全周にわたって貼付されている。このため、熱膨張性シート32が膨張することで、床スラブ50の上層階に階下からの熱が伝わるのを防ぐことができる。
【0058】
またこの際、遮音カバー20の下端部が、床スラブ50の上面50Aと下面50Bとの間に配置されている。このため、仮に遮音カバー20が、床スラブ50の貫通孔51周りに形成された段部52に配置されている場合には、遮音カバー20が床スラブ50の段部52と上下方向に係合していることとなる。
したがって、遮音カバー20が床スラブ50の段部52に引っかかることで、温度上昇により劣化した床スラブ50における集合継手10の貫通孔51から、集合継手10が自重により抜け落ちるのを防ぐことができる。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記各実施形態においては、遮音カバー20は、正面視で縦方向よりも横方向に長い矩形帯状を呈している構成を示したが、このような態様に限られない。遮音カバー20の正面視形状は任意に変更可能である。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3 配管構造
10 集合継手
20 遮音カバー
21 吸音シート(吸音層)
22 遮音シート(遮音層)
30 発泡テープ
31 発泡テープ
32 熱膨張性シート