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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】アミノ酸系粒子
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/10 20060101AFI20231213BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C08G69/10
C08G59/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037472
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139104
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀二
(72)【発明者】
【氏名】小林 文明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-278974(JP,A)
【文献】特開平11-343339(JP,A)
【文献】特開2001-131283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69/00-69/50
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギン酸およびグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有するアミノ酸系粒子であり、
下記条件(a)を満たすアミノ酸系粒子:
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【請求項2】
下記条件(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1つの条件をさらに満たす請求項1に記載のアミノ酸系粒子:
(b)前記粒子を25℃、pH3の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(c)前記粒子を25℃、pH7の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(d)前記粒子を25℃、pH14の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【請求項3】
前記多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位が、多官能カルボジイミド化合物に由来する構造単位である、請求項1または2に記載のアミノ酸系粒子。
【請求項4】
ポリアスパラギン酸ナトリウムに由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物に由来する構造単位とを有するアミノ酸系粒子であり、
下記条件(a)を満たすアミノ酸系粒子:
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸系粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油原料より製造されたポリマー粒子は、樹脂フィルム用アンチブロッキング剤、静電荷像現像用トナー用添加剤、粉体塗料用添加剤、水分散体型塗料用添加剤、化粧品用充填剤および光拡散剤等の用途に用いられている。
【0003】
近年、プラスチック廃棄物による環境汚染が問題視されている。環境負荷低減の観点から、環境中において分解が進むプラスチックが注目を集めており(例えば、特許文献1参照)、様々な分野において、このような分解性プラスチック由来の粒子を使用することが進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-131283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、土壌中での分解性を有する種々の粒子が提案されているが、耐溶剤性・耐水性に優れるとともに、土壌中での分解性に優れる粒子が依然として望まれている。このため、本発明は、耐溶剤性・耐水性および土壌中での分解性に優れる粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を行った。その結果、以下の構成を有する粒子により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、例えば以下の[1]~[4]に関する。
【0007】
[1]アミノ酸に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有するアミノ酸系粒子であり、下記条件(a)を満たすアミノ酸系粒子:
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
[2]下記条件(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1つの条件をさらに満たす前記[1]に記載のアミノ酸系粒子:
(b)前記粒子を25℃、pH3の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(c)前記粒子を25℃、pH7の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(d)前記粒子を25℃、pH14の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
[3]前記アミノ酸が、アスパラギン酸およびグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種である前記[1]または[2]に記載のアミノ酸系粒子。
[4]ポリアミノ酸に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有するアミノ酸系粒子であり、下記条件(a)を満たすアミノ酸系粒子:
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐溶剤性・耐水性および土壌中での分解性に優れる粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1のアミノ酸系粒子は、アミノ酸に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有し、さらに下記条件(a)を満たす。
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【0010】
本発明の第2のアミノ酸系粒子は、ポリアミノ酸に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有し、さらに下記条件(a)を満たす。
(a)前記粒子を25℃のメチルエチルケトン中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【0011】
前記条件(a)における重量減少率は、好ましくは8.0%以下であり、重量減少率は低い方が好ましいが、一実施態様において下限値は0.5%程度であっても実用上問題ない。
【0012】
以下、本発明の第1のアミノ酸系粒子および第2のアミノ酸系粒子をまとめて「本発明の粒子」ともいう。
本発明の粒子は、通常、前記条件(a)を満たす架橋粒子である。
【0013】
本発明の粒子は、下記条件(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1つの条件をさらに満たすことが好ましく、下記条件(b)、(c)および(d)の全てをさらに満たすことがより好ましい。
(b)前記粒子を25℃、pH3の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(c)前記粒子を25℃、pH7の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
(d)前記粒子を25℃、pH14の水中に72時間放置した後の
重量減少率が10%以下である。
【0014】
前記条件(b)における重量減少率は、好ましくは8.5%以下であり、重量減少率は低い方が好ましいが、一実施態様において下限値は0.5%程度であっても実用上問題ない。
【0015】
前記条件(c)における重量減少率は、好ましくは9.0%以下であり、重量減少率は低い方が好ましいが、一実施態様において下限値は0.5%程度であっても実用上問題ない。
【0016】
前記条件(d)における重量減少率は、好ましくは6.0%以下であり、重量減少率は低い方が好ましいが、一実施態様において下限値は0.5%程度であっても実用上問題ない。
【0017】
本発明の粒子は、条件(a)を満たし、好ましくは条件(b)~(d)から選ばれる少なくとも1つの条件をさらに満たすことから、塗料添加剤などの種々の用途において粒子形状を良好に維持することができる。
【0018】
本発明の第1のアミノ酸系粒子は、通常、アミノ酸と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種との反応物を含有し、例えば、アミノ酸と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種とを反応させることで得ることができる。
【0019】
本発明の第2のアミノ酸系粒子は、通常、ポリアミノ酸と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種との反応物を含有し、例えば、ポリアミノ酸と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種とを反応させることで得ることができる。
【0020】
本発明の第1のアミノ酸系粒子および第2のアミノ酸系粒子において、アミノ酸とポリアミノ酸とを併用してもよい。以下、アミノ酸およびポリアミノ酸から選ばれる少なくとも1種を「成分(1)」ともいい、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種を「成分(2)」ともいう。
【0021】
本発明の粒子は、例えば、成分(1)と成分(2)とを水中で反応させ、水分を加熱蒸発させることにより、得ることができる。反応時の温度は、通常は65℃以上、好ましくは70~80℃である。必要に応じて、水分蒸発後の粒子を粉砕してもよく、または乾燥造粒してもよい。
【0022】
本発明の粒子における成分(1)に由来する構造単位および成分(2)に由来する構造単位の結合状態は定かではないが、以下のように推測される。
例えば成分(1)としてアミノ酸を用い、成分(2)として多官能カルボジイミド化合物を用いた場合、カルボキシ基とカルボジイミド基との反応性が高いため、アミノ酸におけるカルボキシ基と多官能カルボジイミド化合物におけるカルボジイミド基とが反応してN-アシルウレア構造を形成していると考えられる。
【0023】
また、例えば成分(1)としてアミノ酸を用い、成分(2)として多官能エポキシ化合物を用いた場合、アミノ酸におけるカルボキシ基と多官能エポキシ化合物におけるエポキシ基とが開環反応して架橋構造を形成していると推測される。
ポリアミノ酸を用いた場合も同様の反応が進行すると推測される。
【0024】
<量比>
本発明の第1のアミノ酸系粒子の製造において、成分(2)の使用量は、アミノ酸100質量部に対して、通常は10~1500質量部、好ましくは15~1300質量部、より好ましくは50~1100質量部である。
【0025】
本発明の第2のアミノ酸系粒子の製造において、成分(2)の使用量は、ポリアミノ酸100質量部に対して、通常は100~2000質量部、好ましくは100~1000質量部、より好ましくは200~1000質量部である。
【0026】
本発明の第1および第2のアミノ酸系粒子の製造においてアミノ酸およびポリアミノ酸を併用する場合、成分(2)の使用量は、アミノ酸およびポリアミノ酸の合計100質量部に対して、通常は10~2000質量部、好ましくは50~1500質量部、より好ましくは100~1000質量部、さらに好ましくは200~1000質量部である。
以下、各成分について説明する。
【0027】
<アミノ酸>
アミノ酸としては、例えば、α-アミノ酸が挙げられ、具体的には、アスパラギン酸、グルタミン酸等の負電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸、特に側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸;アルギニン、リシン、ヒスチジン、オルニチン等の正電荷をもつ側鎖を有するアミノ酸;アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン等の電荷をもたず極性の側鎖を有するアミノ酸;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン等の非極性側鎖を有するまたは側鎖を有さないアミノ酸が挙げられる。アミノ酸としては、その他、β-アラニン等のβ-アミノ酸、γ-アミノ酪酸等のγ-アミノ酸が挙げられる。アミノ酸は、後述するような金属塩、アンモニウム塩等の塩を形成していてもよい。
【0028】
アミノ酸の中でも、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物との反応性の観点から、側鎖にカルボキシ基またはアミノ基を有するアミノ酸がより好ましく、アスパラギン酸、グルタミン酸およびリシンから選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
アミノ酸は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
<ポリアミノ酸>
ポリアミノ酸としては、例えば、アミノ酸が脱水縮合して得られたポリペプチド、およびその塩が挙げられる。前記アミノ酸としては、前述した具体例が挙げられる。
ポリアミノ酸としては、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリアルギニン、ポリリシン、ポリオルニチン、ポリセリン等の1種のアミノ酸が脱水縮合して得られたポリペプチド;2種以上のアミノ酸が脱水縮合して得られたポリペプチド;およびこれらのポリペプチドの塩が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、土壌中での分解性と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物との反応性の観点から、側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸を少なくとも含むアミノ酸のポリペプチドおよびその塩が好ましく、アスパラギン酸およびグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種を含むアミノ酸のポリペプチドおよびその塩がより好ましく、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびこれらの塩が特に好ましい。
【0031】
ポリペプチドの塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩が挙げられる。
ポリアミノ酸は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
<多官能カルボジイミド化合物>
多官能カルボジイミド化合物は、1分子中に2個以上のカルボジイミド基(-N=C=N-;「NCN基」とも記載する)を有する。多官能カルボジイミド化合物は、好ましくは下記式(E1)に示す繰り返し単位を有する。
-N=C=N-R1- …(E1)
式(E1)中、R1は2価の有機基である。
カルボジイミド基はカルボキシ基およびアミノ基等の官能基と反応し、特にカルボキシ基と反応性が高いため、多官能カルボジイミド化合物はアミノ酸および/またはポリアミノ酸と反応して架橋構造を形成すると考えられる。
【0033】
カルボジイミド基の反応は、例えば、赤外吸収分光法(IR)により確認することができる。IRでは、例えば2100cm-1付近のピ-クを観察し、このピークの消失により、カルボジイミド基が反応したことがわかる。
【0034】
多官能カルボジイミド化合物におけるNCN当量は、好ましくは200~800、より好ましくは250~600である。NCN当量とは、NCN基1モル当たりの化学式量を表す。
【0035】
多官能カルボジイミド化合物は、例えば、ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応物である。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等の有機ジイソシアネートが挙げられる。具体的には、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートの中でも、得られる粒子の土壌中での分解性の観点から、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
ポリイソシアネートは1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
多官能カルボジイミド化合物におけるポリイソシアネートの重合度は、2~20が好ましく、5~20がより好ましい。多官能カルボジイミド化合物の製造において、ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応を冷却等により途中で停止させることで、重合度を制御することができる。
【0038】
多官能カルボジイミド化合物としては、公知の種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には、従来の多官能カルボジイミド化合物の製造方法[例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069-2075(1963)、Chemical Review l981,Vol.81No.4、p619-621]により、製造されたものを用いることができる。
【0039】
多官能カルボジイミド化合物は、例えば、ポリイソシアネートを、カルボジイミド化触媒の存在下で、無溶媒または不活性溶媒中、脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。ポリイソシアネートの反応温度は、例えば70℃以上、一実施態様では70~200℃である。
【0040】
カルボジイミド化触媒は、イソシアネ-ト基のカルボジイミド化反応を促進する触媒であり、例えば、有機リン系化合物、有機金属化合物が挙げられ、具体的には、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-スルフィド、1,3-ジメチル-2-ホスホレン-1-スルフィド等のホスホレン化合物;ペンタカルボニル鉄、ノナカルボニル鉄、ヘキサカルボニルタンブステン等の金属カルボニル錯体;鉄、アルミニウム、クロム、ジルコニウム等のアセチルアセトナイト錯体;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等の燐酸エステルが挙げられる。
【0041】
カルボジイミド化触媒は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
カルボジイミド化触媒の使用量は、ポリイソシアネート100質量部に対して、通常は30質量部以下、好ましくは0.01~10質量部である。
【0042】
不活性溶媒としては、例えば、1,1-ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、p-クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;2-メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2,4-ジメチル-3-ヘプタノン等のケトン溶媒;2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアセテート溶媒が挙げられる。
【0043】
多官能カルボジイミド化合物は、末端にイソシアネート基を有する多官能カルボジイミド化合物であっても、前記末端イソシアネート基を変性して得られる変性多官能カルボジイミド化合物であってもよい。
【0044】
例えば、多官能カルボジイミド化合物の末端イソシアネート基と反応する化合物(以下「末端封止剤」ともいう)を用いて、多官能カルボジイミド化合物中に残存する末端イソシアネート基の一部または全てを封止することができる。
【0045】
末端封止剤としては、例えば、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物;イソシアネート基と反応し得る活性水素化合物が挙げられる。
【0046】
イソシアネート基と反応し得る活性水素化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の水酸基含有化合物;ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のアミノ基含有化合物;コハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等のカルボキシ基含有化合物;無水酢酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;エチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等のチオール基含有化合物が挙げられる。
【0047】
本発明では、多官能カルボジイミド化合物が水等の溶媒に分散または溶解しているエマルションまたは溶液を用いることもできる。
多官能カルボジイミド化合物としては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、日清紡ケミカル社製の「カルボジライト」の商標名にて入手できるV-02、V-04、V-06、E-01、E-02、E-05等の水性タイプ(水溶液または水分散体);V-01、V-03、V-05、V-07、V-09等の油性タイプが挙げられる。
多官能カルボジイミド化合物は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0048】
<多官能エポキシ化合物>
多官能エポキシ化合物は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、好ましくは、1分子中に2~8個、より好ましくは2~6個のエポキシ基を有する。
多官能エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多官能エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物、芳香族多官能エポキシ化合物が挙げられ、土壌中での分解性の観点から、脂肪族多官能エポキシ化合物および脂環式多官能エポキシ化合物が好ましい。
【0049】
脂肪族多官能エポキシ化合物および脂環式多官能エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル系エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサンが挙げられる。芳香族多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエンが挙げられる。
多官能エポキシ化合物は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
<他の成分>
本発明の粒子は、前述した成分(1)と成分(2)との反応物の他、条件(a)(好ましくは条件(a)~(d))を満たす限り、従来公知の生分解性ポリマーをさらに含有することができる。前記生分解性ポリマーとしては、例えば、天然物系生分解性ポリマー、微生物合成系生分解性ポリマー、化学合成系生分解性ポリマーが挙げられる。
【0051】
天然物系生分解性ポリマーとしては、例えば、キトサン、デンプン、セルロースおよびその誘導体等の多糖類が挙げられる。微生物合成系生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリヒドロキシブチレートおよびその誘導体が挙げられる。化学合成系生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステルアミド共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
【0052】
前記生分解性ポリマーは1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粒子は、土壌中での分解性を抑制しない範囲で、非生分解性ポリマーをさらに含有することができる。非生分解性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0053】
前記非生分解性ポリマーは1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粒子は、添加剤をさらに含有することができる。添加剤としては、例えば、フィラー、可塑剤、軟化剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、着色剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤が挙げられる。
【0054】
前記添加剤は1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の粒子は、以上説明したように他の成分を含有することができるが、本発明の粒子において、成分(1)に由来する構造単位と成分(2)に由来する構造単位との合計含有量(あるいは、成分(1)と成分(2)との反応物の含有量)は、90質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。本発明の粒子では、成分(1)に由来する構造単位において、アミノ酸に由来する構造単位とポリアミノ酸に由来する構造単位とのいずれかが含まれなくともよい。
【0055】
<形状および用途>
本発明の粒子の形状は、粒子状であれば特に限定されず、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状が挙げられる。
本発明の粒子の平均粒子径は、特に制限されず、用途に応じて選択することができる。前記平均粒子径は、例えば、0.2~3000μm、0.3~1000μm、または0.3~500μmである。前記平均粒子径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)画像から任意に100個選択した粒子の長径の数平均値である。
【0056】
本発明の粒子は、耐溶剤性、好ましくはさらに耐水性に優れるともに、自然界の土壌中での分解性に優れている。土壌中での分解性は、土壌中に存在する微生物により分解される生分解性を本発明の粒子が有するためであると推測される。このため、本発明の粒子は、例えば、農薬、医薬、化粧品、塗料(例えば、粉体塗料、水分散体型塗料、船底用塗料)、コーティング剤、接着剤、インキ、トナー等への添加剤として、またはアンチブロッキング剤、充填剤、光拡散剤として有用である。
【0057】
また、本発明の粒子を用いて、種々の成形体を製造することができる。本発明の粒子を用いた成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形が挙げられる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の説明において、特に言及しないかぎり、「質量部」は「部」と表す。
[実施例1]
攪拌機、温度計、水分定量受器を取り付けた冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、アスパラギン酸10部、カルボジライト(登録商標)E-05(日清紡ケミカル社製、多官能カルボジイミド化合物)90部および蒸留水150部を仕込み、得られた混合物を撹拌しながら昇温し、75℃に達した時点から1時間反応させた。その後、オイルバスで水の沸点以上の温度で前記混合物を加熱し、反応装置に窒素を導入しながら、水を全て蒸発させ水分定量受器で回収し、アスパラギン酸と多官能カルボジイミド化合物との反応物である粒子1を得た。得られた粒子1を100℃の棚段乾燥機で乾燥させた。
【0059】
[実施例2~6、比較例1]
原料成分を表1に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
[比較例2]
攪拌機、温度計、冷却管および窒素導入管を備えた反応装置に、メチルメタクリレート(MMA)95部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)5部、過酸化ベンゾイル1部および蒸留水200部を仕込み、得られた混合物を30分撹拌して乳化液を得た。その後、反応装置に窒素を導入しながら昇温し、75℃に達した時点から1.5時間反応させ、さらに、95℃まで昇温し、2時間攪拌を行った。その後、ろ過、乾燥を行い、架橋PMMA粒子を得た。
【0061】
実施例で用いた製品を以下に記載する。
・アクアデュウ(登録商標)SPA-30B:ポリアスパラギン酸ナトリウム、
味の素社製
・カルボジライト(登録商標)E-05:水分散性多官能カルボジイミドエマルション、固形分40質量%、NCN当量:310(NCN基1モル当たりの化学式量)、日清紡ケミカル社製(表1中の配合量は固形分量である)
・Tetrad-C:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、三菱ガス化学社製
・Tetrad-X:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、三菱ガス化学社製
【0062】
[重量減少率]
実施例および比較例で得られた粒子を、
25℃のメチルエチルケトン(MEK)中、
25℃、pH3の水中、
25℃、pH7の水中、
25℃、pH14の水中
に72時間放置した後、前記粒子を取り出し、80℃で7時間乾燥させた。
得られた前記粒子の重量減少率を、下記式から算出した。
重量減少率(%)={1-[MEKまたは水中で前記放置し、前記乾燥後の粒子の重量]/[前記放置前の粒子の重量]}×100
【0063】
[土壌埋没試験]
実施例および比較例で得られた粒子を10μmナイロンメッシュに包み、土に埋めた。90日後、土から前記粒子が包まれたナイロンメッシュを取り出し、目視にて粒子の存在有無を確認した。
〇:目視にて粒子の存在が確認できなかった
×:目視にて粒子の存在が確認できた
【0064】
【表1】
【0065】
表1中の原料成分は固形分量である。
表1より、アミノ酸またはポリアミノ酸に由来する構造単位と、多官能カルボジイミド化合物および多官能エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位とを有する粒子は、耐溶剤性・耐水性に優れ、かつ土壌中での分解性にも優れることがわかる(実施例1~6)。一方、架橋構造を有しないポリアスパラギン酸粒子は土壌中での分解は確認されるものの、メチルエチルケトンおよび水中での重量減少率試験において粒子が溶解する結果となった(比較例1)。また、(メタ)アクリル系粒子は耐溶剤性・耐水性には優れるものの、土壌中での分解は確認されなかった(比較例2)。