(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ワーク加工用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231213BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231213BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231213BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231213BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
H01L21/78 M
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019060408
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】福元 孝斉
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/001713(WO,A1)
【文献】特開2016-034993(JP,A)
【文献】国際公開第2008/081725(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/142085(WO,A1)
【文献】特開2013-209559(JP,A)
【文献】特開2005-281419(JP,A)
【文献】国際公開第2009/144985(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
H01L21/301;21/304;21/463;21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用粘着シートであって、
前記粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤からなり、
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体、架橋剤および光重合開始剤を含有する粘着性組成物から形成されたものであり、
前記アクリル系重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、シアノ基を有するモノマーを含まないか、または、シアノ基を有するモノマーを0.2質量%以下で含み、
前記架橋剤は、金属キレート化合物であり、
前記光重合開始剤は、オリゴマー型の光重合開始剤であり、
前記粘着性組成物中における前記光重合開始剤の含有量は、前記側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部に対して、0.05質量部以上、3.0質量部未満であり、
前記基材における前記粘着剤層とは反対側の面から100cm離間して配置された蛍光灯を光源として、前記面に対して光束2100ルーメンの可視光を14日間照射する蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力が、1600mN/25mm以上であり、
前記ワーク加工用粘着シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシートおよびピックアップシートの少なくとも1種である
ことを特徴とするワーク加工用粘着シート。
【請求項2】
前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力は、3000mN/25mm以上、30000mN/25mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項3】
前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力に対する、前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、35%以上であることを特徴とする請求項2に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項4】
前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力に対する、前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、90%以上、140%以下であり、
前記活性エネルギー線照射は、紫外線照射装置を用いて、照度:230mW/cm
2および光量:190mJ/cm
2で紫外線を照射するものである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シート。
【請求項5】
前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力は、50mN/25mm以上、320mN/25mm以下であり、
前記活性エネルギー線照射は、紫外線照射装置を用いて、照度:230mW/cm
2および光量:190mJ/cm
2で紫外線を照射するものである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のワーク加工用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークの加工に好適に使用することができるワーク加工用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハや各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、素子小片(半導体チップ)に切断(ダイシング)され、剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等のワークは、基材および粘着剤層を備えるワーク加工用粘着シートに貼着された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
また、パワーデバイス用の金膜付きの半導体ウエハを作製する場合には、通常、ワーク加工用粘着シート上に固定された半導体ウエハをメッキ液に浸漬することが行われる。この場合、ワーク加工用粘着シートは、半導体ウエハとともにメッキ液に曝されることとなるため、このようなワーク加工用粘着シートには、メッキ液に曝されたとしても、その機能を維持できるような耐メッキ性を有することが求められる。具体的には、ワーク加工用粘着シートとワークとの界面にメッキ液が浸み込むことを抑制したり、当該界面における気泡の発生を抑制できる性能が求められる。特許文献1には、このような耐メッキ性を有するワーク加工用粘着シートの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワーク加工用粘着シートには、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤を用いて粘着剤層が形成されたものも存在する。このようなワーク加工用粘着シートでは、加工完了後、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することで粘着剤層を硬化させることができる。それにより、ワークに対する粘着力が良好に低下し、加工完了後のワークをワーク加工用粘着シートから容易に分離することが可能となる。
【0006】
しかしながら、上述したような活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層を備えるワーク加工用粘着シートは、その使用前に蛍光灯下で長期間保管した場合に、活性エネルギー線の照射に起因した粘着力の低下を十分に生じさせることができず、ワークを分離し難くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐メッキ性を有するとともに、蛍光灯下で長期間保管された場合であっても良好なワークの分離性を発揮できるワーク加工用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用粘着シートであって、前記粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤からなり、前記基材における前記粘着剤層とは反対側の面から100cm離間して配置された蛍光灯を光源として、前記面に対して光束2100ルーメンの可視光を14日間照射する蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力が、1600mN/25mm以上であることを特徴とするワーク加工用粘着シートを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用粘着シートでは、上述した蛍光灯処理を行った後において温水中にて測定される粘着力が上記範囲であることで、優れた耐メッキ性を発揮することができるとともに、蛍光灯下で長期間保管された場合であってもワークに対して良好な分離性を発揮することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力は、3000mN/25mm以上、30000mN/25mm以下であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明2)において、前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力に対する、前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、35%以上であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1~3)において、前記蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力に対する、前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、90%以上、140%以下であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明1~4)において、前記蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力は、50mN/25mm以上、320mN/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体、架橋剤および光重合開始剤を含有する粘着性組成物から形成されたものであることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明6)において、前記光重合開始剤は、オリゴマー型の光重合開始剤であることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明6,7)において、前記粘着性組成物中における前記光重合開始剤の含有量は、前記側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部に対して、0.05質量部以上、3.0質量部未満であることが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明6~8)において、前記架橋剤は、金属キレート化合物であることが好ましい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明6~9)において、前記アクリル系重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、シアノ基を有するモノマーを含まないか、または、シアノ基を有するモノマーを0.2質量%以下で含むことが好ましい(発明10)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るワーク加工用粘着シートは、耐メッキ性を有するとともに、蛍光灯下で長期間保管された場合であっても良好なワークの分離性を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、基材と、当該基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。そして、本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤からなる。
【0021】
1.ワーク加工用粘着シートの物性
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、基材における粘着剤層とは反対側の面から100cm離間して配置された蛍光灯を光源として、上記面に対して光束2100ルーメンの可視光を14日間照射する蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力が、1600mN/25mm以上である。
【0022】
ここで、上記蛍光灯処理の詳細および上記粘着力の測定方法の詳細は、それぞれ後述する試験例に記載の通りである。また、上記粘着力は、ワーク加工用粘着シートに活性エネルギー線を照射していない状態で測定された粘着力である。これと同様に、本願明細書では、活性エネルギー線照射について特に言及のない粘着力については、ワーク加工用粘着シートに活性エネルギー線を照射していない状態で測定された粘着力をいうものとする。
【0023】
上記粘着力が1600mN/25mm未満であると、ワーク加工用粘着シートの耐メッキ性が不十分となり、メッキ液に浸漬したときに、粘着剤層における基材と反対の面(以下、「粘着面」という場合がある。)とワークとの界面におけるメッキ液の浸み込みや気泡の発生が生じるものとなる。また、上記粘着力が1600mN/25mm未満であると、ワーク加工用粘着シートを蛍光灯下にて長期間保管した場合において、その後に活性エネルギー線を照射しても粘着力を十分に低下させることができないものとなる。それにより、ワークの分離性が不十分となり、糊残りやワークの破損等の問題が生じる。これらの問題をより回避し易くする観点から、上記粘着力は、2500mN/25mm以上であることが好ましく、特に5000mN/25mm以上であることが好ましい。
【0024】
一方、上記粘着力は、20000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が20000mN/25mm以下であることで、ワーク加工用粘着シートの粘着力が過度に高まることを抑制し易いものとなり、活性エネルギー線後の粘着力を適度に低い値に調整し易いものとなる。それにより、ワークの分離性がより良好となり、糊残りやワークの破損等を効果的に抑制し易くなる。この観点から、上記粘着力は、特に15000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには10000mN/25mm以下であることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、上述した蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力が、3000mN/25mm以上であることが好ましく、特に4000mN/25mm以上であることが好ましく、さらには5000mN/25mm以上であることが好ましい。また、上記粘着力は、30000mN/25mm以下であることが好ましく、特に25000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには20000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力がこれらの範囲であることで、蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについて90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力を、前述した範囲に調整し易いものとなる。なお、蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0026】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力に対する、蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートについて、90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、35%以上であることが好ましく、特に45%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。上記割合が35%以上であることにより、ワーク加工用粘着シートが、蛍光灯下に長期間保管された場合であっても粘着力を維持し易いものとなり、また、活性エネルギー線を照射した場合に、良好に粘着力を低下させることができ、優れた分離性を発揮し易いものとなる。なお、上記割合の上限値については、特に限定されない。
【0027】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力に対する、蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力の割合は、140%以下であることが好ましく、特に120%以下であることが好ましい。上記割合が140%以下であることで、蛍光灯下に保管された場合であっても、活性エネルギー線を照射した場合に、粘着力を良好に低下させ易くなり、それにより優れた分離性を発揮し易いものとなる。なお、上記割合の上限値については、特に限定されず、例えば、90%以上であることが好ましく、特に100%以上であることが好ましい。また、蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力、および蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力は、それぞれ後述する試験例に記載の通りである。
【0028】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、蛍光灯処理を行ったワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が、320mN/25mm以下であることが好ましく、特に250mN/25mm以下であることが好ましく、さらには220mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が320mN/25mm以下であることにより、蛍光灯下に長期間保管された場合であっても、活性エネルギー線を照射した場合に、粘着力を良好に低下させ易くなり、それにより優れた分離性を発揮し易いものとなる。なお、上記粘着力の下限値については、特に限定されず、例えば、50mN/25mm以上であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、蛍光灯処理を行っていないワーク加工用粘着シートにおける、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が、320mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が320mN/25mm以下であることにより、活性エネルギー線を照射した場合に、粘着力を良好に低下させ易くなり、それにより優れた分離性を発揮し易いものとなる。なお、上記粘着力の下限値については、特に限定されず、例えば、50mN/25mm以上であることが好ましい。
【0030】
2.ワーク加工用粘着シートの構成部材
(1)基材
本実施形態における基材としては、ワーク加工用粘着シートの使用の際に所望の機能を発揮するものである限り限定されないものの、耐メッキ性を有するものであることが好ましい。特に、基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましい。その具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0031】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0032】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0033】
基材の厚さは、ワーク加工用粘着シートが使用される方法に応じて適宜設定でき、例えば、50μm以上であることが好ましく、特に60μm以上であることが好ましい。また、基材の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。
【0034】
(2)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層を構成する粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性粘着剤であるとともに、ワークの加工のために十分な対ワーク粘着力を発揮することができる限り、特に限定されない。
【0035】
本実施形態における粘着剤層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されていることにより、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を硬化させて、ワーク加工用粘着シートの被着体に対する粘着力を低下させることができる。これにより、加工後のワークをワーク加工用粘着シートから容易に分離することが可能となる。
【0036】
粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0037】
最初に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0038】
活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖に活性エネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化性重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化性重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0039】
上述した官能基含有モノマーとしては、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、ベンジル基、グリシジル基等の官能基とを分子内に有するモノマーが好ましく、これらの中でも、官能基としてヒドロキシ基を含有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)を使用することが好ましい。
【0040】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましい。なお、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0041】
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、アクリル酸を使用することが好ましい。
【0042】
上記アミノ基含有モノマーまたはアミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
アクリル系重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、5質量%以上含有することが好ましく、特に7質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、35質量%以下で含有することが好ましく、特に30質量%以下で含有することが好ましく、さらには20質量%以下で含有することが好ましい。アクリル系重合体(a1)が官能基含有モノマーを上記範囲で含有することにより、所望の活性エネルギー線硬化性重合体(A)を形成し易いものとなる。
【0044】
アクリル系重合体(a1)は、所望の性能を有する粘着剤を形成し易いという観点から、アクリル系重合体(a1)を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル含有することも好ましい。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~18であるものが好ましく、特に炭素数が1~4であるものが好ましい。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルの少なくとも1種を使用することが好ましく、特にメタクリル酸メチルおよびアクリル酸n-ブチルの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0046】
アクリル系重合体(a1)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位を、50質量%以上含有することが好ましく、特に60質量%以上含有することが好ましく、さらには70質量%以上含有することが好ましい。また、アクリル系重合体(a1)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構成単位を、98質量%以下で含有することが好ましく、特に95質量%以下で含有することが好ましく、さらには90質量%以下で含有することが好ましい。アクリル系重合体(a1)が(メタ)アクリル酸アルキルエステルを上記範囲で含有することにより、所望の性能を有する粘着剤を形成し易いものとなる。
【0047】
アクリル系重合体(a1)は、上述した官能基含有モノマーおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに、その他のモノマーを共重合したものであってもよい。
【0048】
上記その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン等の窒素含有複素環を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル;スチレンなどが挙げられる。
【0049】
また、アクリル系重合体(a1)は、蛍光灯下で長期間保管された後におけるワークに対する分離性をより良好に発揮し易くなるとともに、環境負荷を低減し易いという観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルリロニトリルといったシアノ基を有するモノマーを含まないことが好ましい。また、シアノ基を有するモノマーを含む場合であっても、その含有量は、0.2質量%以下であることが好ましい。
【0050】
アクリル系重合体(a1)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。また、重合法に関しては特に限定されず、一般的な重合法、例えば溶液重合法により重合することができる。
【0051】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0052】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基またはアミド基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系重合体(a1)が有する官能基がグリシジル基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0053】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-(1-アジリジニル)エチル、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0054】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系重合体(a1)の官能基含有モノマーのモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
【0055】
アクリル系重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0056】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化性重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、特に15万以上であることが好ましく、さらには20万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0057】
活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性重合体(A)といった活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0058】
活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0059】
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
活性エネルギー線硬化性重合体(A)に対し、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、活性エネルギー線硬化性粘着剤中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0061】
ここで、活性エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましい。この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0062】
光重合開始剤(C)の具体例としては、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート;オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン]等が例示できる。
【0063】
光重合開始剤(C)は、蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについての90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力を前述した範囲に調整し易いという観点から、オリゴマー型の光重合開始剤であることが好ましい。この場合、光重合開始剤(C)の重量平均分子量は、300以上であることが好ましく、特に450以上であることが好ましい。一方、重量平均分子量の上限値は、例えば、900以下であってもよく、特に750以下であってもよい。オリゴマー型の光重合開始剤の好ましい例としては、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン]が挙げられる。
【0064】
上述した光重合開始剤(C)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.05質量部以上、特に0.07質量部以上、さらには1質量部以上の量で用いられることが好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が0.05質量部以上であることで、活性エネルギー線の照射によって、粘着剤層の硬化を良好に促進させ易くなる。それにより、ワークに対する粘着力が良好に低下するものとなり、ワークに対する優れた分離性を達成し易いものとなる。また、光重合開始剤(C)は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)(活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、活性エネルギー線硬化性重合体(A)および活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して3.0質量部未満、特に2.0質量部以下、さらには1.0質量部以下の量で用いられることが好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が3.0質量部未満であることで、蛍光灯処理を行った後のワーク加工用粘着シートについての90℃の温水中にて測定されるシリコンウエハに対する粘着力を、前述した範囲に調整し易いものとなる。
【0066】
活性エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0067】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000~250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)を活性エネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されず、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して0質量部超、50質量部以下の範囲で適宜決定される。
【0068】
架橋剤(E)の使用は、粘着剤層の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整し易いという観点から好ましい。架橋剤(E)としては、活性エネルギー線硬化性重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0069】
これらの中でも、粘着剤層が耐メッキ性を発揮し易いものとなるという観点から、架橋剤として金属キレート化合物を使用することが好ましい。金属キレート化合物の例としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0070】
上記アルミニウムキレート化合物の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート(トリスアセチルアセトナトアルミニウム)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート(ジイソプロポキシアルミニウム3-エトキシカルボニル-2-プロペン-2-イルオキシド)等が挙げられる。上記チタンキレート化合物の例としては、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)チタニウム等が挙げられる。上記ジルコニウムキレート化合物の例としては、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム等が挙げられる。
【0071】
架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化性重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましい。
【0072】
次に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0073】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0074】
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー1質量部以上であるのが好ましく、特に60質量部以上であるのが好ましい。また、当該配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー200質量部以下であるのが好ましく、特に160質量部以下であるのが好ましい。
【0075】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0076】
粘着剤層の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層の厚さは、60μm以下であることが好ましく、特に40μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが上記範囲であることで、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートが所望の粘着性を発揮し易いものとなる。
【0077】
(3)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートでは、粘着剤層における粘着面に剥離シートが積層されていてもよい。この剥離シートは、粘着剤層形成のための工程材料であってもよいし、ワーク加工用粘着シートをワークに貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するものであってもよい。なお、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートにおいて、剥離シートは省略されてもよい。
【0078】
剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系の剥離剤等を用いることができ、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系剥離剤が好ましい。剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0079】
3.ワーク加工用粘着シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートの製造方法は特に限定されず、好ましくは、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、基材の片面側に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0080】
基材の片面側への粘着剤層の積層は、公知の方法により行うことができる。例えば、剥離シート上において形成した粘着剤層を、基材の片面側に転写することが好ましい。この場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離処理された面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、ワーク加工用粘着シートをワークに貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するために用いてもよい。
【0081】
粘着剤層を形成するための塗工液が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内の活性エネルギー線硬化性重合体(A)または活性エネルギー線非硬化性ポリマーと架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層させた後、得られたワーク加工用粘着シートを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0082】
上述のように剥離シート上で形成した粘着剤層を基材の片面側に転写する代わりに、基材上で直接粘着剤層を形成してもよい。この場合、前述した粘着剤層を形成するための塗工液を基材の片面側に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成する。
【0083】
4.ワーク加工用粘着シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、ワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートの粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用粘着シート上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用することができる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
【0084】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、優れた耐メッキ性を発揮することができる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、ワークのメッキのために使用することに好適である。
【0085】
本実施形態に係るワーク加工用粘着シート上にてワークの加工が完了し、加工後のワークをワーク加工用粘着シートから分離する場合には、当該分離の前にワーク加工用粘着シートにおける粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、粘着剤層が硬化して、加工後のワークに対するワーク加工用粘着シートの粘着力が良好に低下し、加工後のワークの分離が容易となる。特に、本実施形態に係るワーク加工用粘着シートは、蛍光灯下で長期間保管された場合であっても、活性エネルギー線を照射することにより、粘着力を良好に低下させることができる。
【0086】
上述した活性エネルギー線としては、例えば、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを使用でき、具体的には、紫外線や電子線などを使用することができる。特に、取扱いが容易な紫外線が好ましい。紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、LED等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下であることが好ましい。また、光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、特に80mJ/cm2以上であることが好ましく、さらには200mJ/cm2以上であることが好ましい。また、光量は、10000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に5000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには2000mJ/cm2以下であることが好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
【0087】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0088】
例えば、剥離シートは無くてもよいし、基材における粘着剤層とは反対側の面には、他の層が設けられてもよい。
【実施例】
【0089】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0090】
〔実施例1〕
(1)粘着性組成物の調製
アクリル酸n-ブチル69質量部と、メタクリル酸メチル10質量部と、アクリル酸1質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体と、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体中のアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当するメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法にて測定したところ、60万であった。
【0091】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部と、架橋剤としてのアルミニウムキレート化合物(綜研化学社製,製品名「M-5A」)0.4質量部と、光重合開始剤としてのオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン](DKSH社製,製品名「ESACURE KIP 150」)2.9質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0092】
(2)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記粘着性組成物の塗布液を塗布し、加熱により乾燥させることで、剥離シート上に、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
【0093】
(3)ワーク加工用粘着シートの作製
上記工程(2)で形成した粘着剤層の露出面と、基材としてのポリプロピレンフィルム(厚さ:80μm)の片面とを貼り合わせることで、剥離シートと粘着剤層と基材とがこの順に積層してなるワーク加工用粘着シートを得た。
【0094】
〔実施例2~5,比較例1~3〕
光重合開始剤の含有量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0095】
〔比較例4〕
アクリル酸n-ブチル68質量部と、メタクリル酸メチル10質量部と、アクリル酸1質量部と、アクリロニトリル1質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル10質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体と、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体中のアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当するメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を後述する方法にて測定したところ、60万であった。
【0096】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を使用するとともに、架橋剤および光重合開始剤の含有量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワーク加工用粘着シートを製造した。
【0097】
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0098】
〔試験例1〕(温水中における粘着力の測定)
【0099】
実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートを、長さ300mm、幅25mmに裁断し、短冊状のサンプルとした。続いて、当該サンプルの一端から剥離シートを剥離して、粘着剤層を部分的に露出させるとともに、その粘着剤層の露出した面を、23℃、相対湿度50%の環境下で、鏡面加工した6インチシリコンウエハの鏡面に重ね合わせ、2kgのローラーを1往復させることにより荷重をかけて貼合した。
【0100】
貼合から20分後、上記シリコンウエハを、90℃の温水中に沈めた。このとき、上記サンプルにおける一端は、シリコンウエハに貼付された状態とし、他端は温水の外に出る状態とした。そして、シリコンウエハを、サンプルの一端とともに上記温水中で30分間加温した。
【0101】
加温の完了後、上記サンプルにおける温水外に位置する一端をプッシュプルゲージ(荷重測定装置)(アイコーエンジニアリング社製,型式「9020A」)の計測軸に固定した。続いて、シリコンウエハを温水中に固定した状態で、上記プッシュプルゲージを引き上げることにより、シリコンウエハからサンプルを剥離させた。このとき、剥離角度は180°、剥離速度は300mm/minとなるようにした。そして、上記剥離に要する力(mN/25mm)を上記プッシュプルゲージから読み取り、それを温水中における粘着力とした。結果を表1に示す。特に、表1には、「蛍光灯処理無しでの測定値(A)」として示す。
【0102】
また、実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートに対して、以下のような蛍光灯処理を行ったものについても、上記と同様にして温水中における粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、表1中「蛍光灯処理有りでの測定値(B)」として示す。
【0103】
上記蛍光灯処理は、以下のように行った。ワーク加工用粘着シートを、その基材側の面が上側となるように水平な台の上に置いた。続いて、当該基材側の面からの距離が100cmとなるとともに、当該面と平行となるように丸管蛍光灯(パナソニック社製,製品名「FCL30ECW/28XF パルック 30W クール色」,ガラス管径:29mm,外径:225mm,内径:167mm,質量:158g、光束:2100ルーメン)を設置した。そして、上記丸管蛍光灯を点灯させ、14日間放置することで、上記丸管蛍光灯から可視光を照射した。
【0104】
さらに、以上のようにして得られた「蛍光灯処理無しでの測定値(A)」に対する「蛍光灯処理有りでの測定値(B)」の割合(B/A)(%)を算出し、その結果も表2に示す。
【0105】
〔試験例2〕(活性エネルギー線照射後の粘着力の測定)
実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートを、長さ300mm、幅25mmに裁断し、サンプルとした。続いて、当該サンプルから剥離シートを剥離して、粘着剤層を露出させるとともに、その粘着剤層の露出した面を、23℃、相対湿度50%の環境下で、鏡面加工した6インチシリコンウエハの鏡面に重ね合わせ、2kgのローラーを1往復させることにより荷重をかけて貼合し、20分間放置した。
【0106】
続いて、ワーク加工用粘着シートにおけるシリコンウエハとは反対側の面に、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm2,光量:190mJ/cm2)、粘着剤層を硬化させた。
【0107】
そして、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用粘着シートを剥離し、JIS Z0237:2000に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、活性エネルギー線照射後の粘着力として表2に示す。特に、表2では、「蛍光灯処理無しでの測定値(C)」として示す。
【0108】
また、実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートに対して、試験例1に示した蛍光灯処理を行ったものについても、上記と同様にして活性エネルギー線照射後の粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、表2に、「蛍光灯処理有りでの測定値(D)」として示す。
【0109】
さらに、以上のようにして得られた「蛍光灯処理有りでの測定値(D)」に対する「蛍光灯処理無しでの測定値(C)」の割合(D/C)(%)を算出し、その結果も表2に示す
【0110】
〔試験例3〕(分離性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートに対して、試験例1に示した蛍光灯処理を行った。その後、ワーク加工用粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面を、鏡面加工したシリコンウエハ(直径:6インチ,厚さ:150μm)の鏡面に貼付した。このときの貼付条件は、温度23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒とした。次いで、貼付したこの粘着シートの外周部を、樹脂製のリングフレームに同じ条件で貼付した。
【0111】
続いて、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD-6361」)を用いて、以下のダイシング条件で切断部に流水を供給しながらシリコンウエハ側から切断するダイシングを行った。
【0112】
<ダイシング条件>
・ダイシング装置:ディスコ社製 DFD-6361
・ブレード :ディスコ社製 NBC-2H 2050 27HECC
・ブレード幅 :0.025~0.030mm
・刃先出し量 :0.640~0.760mm
・ブレード回転数:50000rpm
・切削速度 :20mm/sec
・切り込み深さ :ワーク加工用粘着シートにおける粘着剤層側の面から15μm
・流水供給量 :1.0L/min
・流水温度 :室温
・カットサイズ :10mm×10mm
【0113】
ダイシング完了後、ワーク加工用粘着シート側の面に、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線を照射し(照度:230mW/cm2,光量:190mJ/cm2)、粘着剤層を硬化させた。その後、得られたチップからランダムに10個をワーク加工用粘着シートからピックアップした。
【0114】
このとき、エキスパンド装置(JCM社製,製品名「SE-100」)を用いて、リングフレームを5mm/sの速さで、5mm引き落とすことで、ワーク加工用粘着シートをエキスパンドした。さらに、ワーク加工用粘着シートにおけるガラスチップが貼付された面とは反対側の面から、ニードルによる突き上げを行った(ニードル数:4本,突き上げ速度:50mm/秒,突き上げ高さ:0.5mm)。
【0115】
そして、ピックアップした10個のチップにおいて、糊残りおよび割れを確認し、以下の基準に基づいて、チップをワーク加工用粘着シートから分離する際の分離性を評価した。結果を表2に示す。
◎:糊残りおよび割れがともにないチップの個数が、10個であった。
〇:糊残りおよび割れがともにないチップの個数が、9~6個であった。
×:糊残りおよび割れがともにないチップの個数が、5~0個であった。
【0116】
〔試験例4〕(耐メッキ性の評価)
実施例および比較例で製造したワーク加工用粘着シートに対して、試験例1に示した蛍光灯処理を行った。その後、ワーク加工用粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の露出面を、鏡面加工したシリコンウエハ(直径:6インチ,厚さ:150μm)の鏡面に貼付した。このときの貼付条件は、温度23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒とした。次いで、貼付したこの粘着シートの外周部を、樹脂製のリングフレームに同じ条件で貼付した。
【0117】
続いて、シリコンウエハおよびリングフレームを貼付したワーク加工用粘着シートを、80℃に加熱したニッケルメッキ溶液(上村工業社製,製品名「エピタスNPR-18」)に、20分間で浸漬した。その後、ニッケルメッキ溶液から引き上げたワーク加工用粘着シートについて、シリコンウエハとの界面における、ニッケルメッキ溶液の浸み込みおよび気泡の発生を目視で確認し、以下の基準に基づいて、ワーク加工用粘着シートの耐メッキ性を評価した。結果を表2に示す。
○:ニッケルメッキ溶液の浸み込みおよび気泡がともに生じなかった。
×:ニッケルメッキ溶液の浸み込みおよび気泡の少なくとも一方が生じた。
【0118】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
BA:アクリル酸n-ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MOI:メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
AN:アクリロニトリル
【0119】
【0120】
【0121】
表2から分かるように、実施例で得られたワーク加工用粘着シートは、蛍光灯処理を受けた場合であっても、活性エネルギー線を照射することにより、良好な分離性を発揮することができた。また、実施例で得られたワーク加工用粘着シートは、優れた耐メッキ性を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のワーク加工用粘着シートは、ワークの加工、特にメッキ処理を含むワークの加工に使用することができる。