(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】金属製品の払出装置及び金属製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20231213BHJP
B21D 45/04 20060101ALI20231213BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20231213BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B21D28/02 F
B21D45/04 J
B21D28/02 Z
H01F41/02 B
H02K15/02 E
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2019157860
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-05-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】早田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】占部 彰浩
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088618(WO,A1)
【文献】特開2002-151339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
B21D 45/04
H01F 41/02
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンピングオイルが塗布された金属板から
金型によって打ち抜かれて得られた金属製品を支持する支持部と、
前記支持部を昇降させるように構成された駆動部と、
前記支持部の下方への降下時に、前記支持部に支持されている前記金属製品との間に引力を作用させるように構成された姿勢保持部とを備える、金属製品の払出装置。
【請求項2】
前記姿勢保持部は、永久磁石、電磁石、真空吸着機構及び静電吸着機構の少なくとも一つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記姿勢保持部は前記支持部に設けられている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記姿勢保持部は前記支持部の上面に露出していない、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記支持部に支持されている前記金属製品を搬出路に押し出すように構成されたプッシャをさらに備え、
前記金属製品は、その下端面から下方に突出する突起を含み、
前記姿勢保持部は、前記突起の移動軌跡を避けるように前記支持部に配置されており、
前記移動軌跡は、前記プッシャによって前記金属製品が前記支持部から前記搬出路に押し出される際に、前記突起が前記支持部の上面に当接しながらスライドするときの前記突起の経路である、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
スタンピングオイルが塗布された金属板を
金型によって打ち抜くことによって金属製品を支持部上に形成することと、
前記支持部に支持されている前記金属製品との間に引力を作用させた状態で、前記金属製品を支持している前記支持部を駆動部によって下方に降下させることとを含む、金属製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属製品の払出装置及び金属製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、積層鉄心の製造装置を開示している。当該装置は、間欠的に送り出される帯状の金属板をパンチで所定形状に順次打ち抜いて複数の打抜部材を形成するように構成されている。当該装置は、金属板から打ち抜かれた打抜部材が一枚ずつ積層されるように構成された支持台と、支持台を昇降させるように構成された駆動機構とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支持台上において複数の打抜部材が積層されて積層体が得られると、当該積層体を搬出路に排出するために、駆動機構は、積層体を支持する支持台を所定位置まで降下させる。この支持台の降下の際に生ずる振動で、支持台上の積層体が転倒、回転、移動等(以下、まとめて「姿勢変動」という。)してしまうことがある。この場合、積層体の搬出路への排出や、後続の積層体の形成に影響が生じうる。
【0005】
そこで、本開示は、支持台上における金属製品の姿勢変動を抑制することが可能な金属製品の払出装置及び金属製品の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係る金属製品の払出装置は、金型によって金属板から打ち抜かれて得られた金属製品を支持する支持部と、支持部を昇降させるように構成された駆動部と、支持部に支持されている金属製品との間に斥力又は引力を作用させるように構成された姿勢保持部とを備える。
【0007】
本開示の他の観点に係る金属製品の製造方法は、金型によって金属板を打ち抜くことによって金属製品を支持部上に形成することと、支持部に支持されている金属製品との間に斥力又は引力を作用させた状態で、金属製品を支持している支持部を駆動部によって昇降させることとを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る金属製品の払出装置及び金属製品の製造方法によれば、支持台上における金属製品の姿勢変動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、払出装置の一例を示す垂直断面図である。
【
図5】
図5は、払出装置の動作を説明するための垂直断面図である。
【
図6】
図6は、払出装置の動作を説明するための垂直断面図である。
【
図7】
図7は、払出装置の他の例を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0011】
[回転子積層鉄心]
まず、
図1及び
図2を参照して、回転子積層鉄心1(金属製品)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、図示しない端面板及びシャフトが回転子積層鉄心1に取り付けられることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータの一部を構成してもよいし、他の種類のモータの一部を構成してもよい。
【0012】
回転子積層鉄心1は、積層体10(金属製品)と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0013】
積層体10は、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。軸孔10aは、積層体10の高さ方向(上下方向)に延びている。積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通される。
【0014】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は、
図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、
図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は高さ方向に延びている。
【0015】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。本明細書において、
図2に示されるように、積層体10の最下層以外を構成する打抜部材Wを「打抜部材W1」と称し、積層体10の最下層を構成する打抜部材Wを「打抜部材W2」(第2の金属板)と称することがある。
【0016】
積層体10は、いわゆる転積又はスキューによって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、積層体10の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。「スキュー」とは、中心軸Axに対して捩れ角を有するように複数の打抜部材Wを積層することをいう。スキューは、コギングトルク、トルクリップル等の低減を目的に実施される。転積又はスキューの角度は、任意の大きさに設定されてもよい。
【0017】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、
図1及び
図2に示されるように、カシメ部18によって締結されている。具体的には、カシメ部18は、
図2に示されるように、打抜部材W1に形成されたカシメ20と、打抜部材W2に形成された貫通孔22とを含む。
【0018】
カシメ20は、打抜部材W1の表面S1側に形成された窪み20aと、打抜部材W1の裏面S2側に形成された突起20bとで構成されている。カシメ20は、例えば、全体として山型状を呈している。このような形状のカシメ20は、「V字形カシメ」とも言われる。
【0019】
一の打抜部材W1の窪み20aは、当該一の打抜部材W1の表面S1側に隣り合う他の打抜部材W1の突起20bと嵌合している。一の打抜部材W1の突起20bは、当該一の打抜部材W1の裏面S2側において隣り合うさらに他の打抜部材W1の窪み20aと接合される。すなわち、さらに他の打抜部材の窪み20aは、一の打抜部材W1の突起20bを収容している。
【0020】
貫通孔22は、カシメ20の外形に対応した形状を呈する長孔である。カシメ20がV字形カシメである場合、貫通孔22は矩形状を呈する。貫通孔22には、打抜部材W2に隣接する打抜部材W1Nの突起20bが嵌合される。すなわち、貫通孔22は、打抜部材W1Nの突起20bを収容している。貫通孔22は、積層体10を連続して製造する際、既に製造された積層体10に対し、続いて形成された打抜部材Wがカシメ20(突起20b)によって締結されるのを防ぐように構成されている。
【0021】
図2に示されるように、カシメ20の突起20bの先端部は、貫通孔22から外方に突出している。すなわち、積層体10の下端面が下向きの状態において、カシメ20の突起20bの底部は当該下端面から下方に突出している。裏面S2からのカシメ20の突出量は、打抜部材W1の板厚よりも大きくてもよい。
【0022】
永久磁石12は、
図1及び
図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、例えば直方体形状を呈していてもよい。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0023】
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入された状態の磁石挿入孔16内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定するように構成されている。固化樹脂14は、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合するように構成されている。
【0024】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図3及び
図4を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MS(電磁鋼板)から回転子積層鉄心1を製造するように構成されている。製造装置100は、
図1に示されるように、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130(金型)と、磁石取付装置(図示せず)と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0025】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0026】
打抜装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されている。打抜装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を製造するように構成されている。
【0027】
打抜装置130は、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137とを含む。
【0028】
ベース131は、床面上に設置されており、ベース131に載置された下型132を支持する。下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を保持する。下型132は、
図2に示されるように、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が通過可能な排出孔132aを含む。排出孔132aは、下型132の所定の位置に設けられており、鉛直方向に沿って延びている。打抜部材Wが排出される排出孔132aには、後述する払出装置200が配置されている。
【0029】
ダイプレート133は、複数のパンチPと共に金属板MSをプレス加工するように構成されている。ダイプレート133は、複数のダイD(金型)を含む。複数のダイDはそれぞれ、各パンチPに対応する位置に配置されており、対応するパンチPが挿通可能なダイ孔Daを含む。パンチPの先端面には、複数の押圧突起Paが設けられている。押圧突起Paは、当該先端面から下方に突出している。複数の押圧突起Paはそれぞれ、打抜部材Wの各カシメ20に対応するように位置している。
【0030】
ストリッパ134は、各パンチPで金属板MSを打ち抜く際に、金属板MSをダイプレート133との間で挟持するように構成されている。ストリッパ134は、各パンチPが金属板MSを加工する際に各パンチPに食いついた金属板MSを、各パンチPから引き剥がすように構成されている。上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、各パンチPの基端部が取り付けられている。
【0031】
天板136は、上型135の上方において上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、各パンチPが全体的に上下動する。
【0032】
磁石取付装置は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置は、各磁石挿入孔16に永久磁石12を挿通するように構成されている。磁石取付装置は、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填するように構成されている。
【0033】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、磁石取付装置及び払出装置200をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、これらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0034】
[払出装置の構成]
続いて、
図4を参照して、払出装置200の構成について説明する。払出装置200は、打抜装置130によって形成された複数の打抜部材W(積層体10)を排出孔132a内において支持して、打抜装置130の外部に払い出すように構成されている。払出装置200は、昇降シリンダ210と、プッシャ220と、搬出路230と、姿勢保持部240とを含む。
【0035】
昇降シリンダ210は、支持台211(支持部)と、直動機構212(駆動部)とを含む。支持台211は、ダイDのダイ孔Daの直下に配置されている。支持台211は、パンチP及びダイDによって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wを支持するように構成されている。
【0036】
直動機構212は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、支持台211を鉛直方向に沿って直線的に動作させるように構成されている。直動機構212は、例えば、支持台211上に打抜部材Wが一枚ずつ積み重ねられるごとに支持台211を間欠的に下方に移動させるように構成されている。支持台211上において複数の打抜部材Wが所定枚数積層されることにより、支持台211の上面Sに積層体10が形成される。
【0037】
直動機構212は、パンチP及びダイDによって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wを支持するための上昇位置と、積層体10を搬出路230に払い出すための下降位置との間で支持台211を昇降させるように構成されている。直動機構212は、例えば、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータ、電動アクチュエータ、電磁ソレノイドなどであってもよい。
【0038】
プッシャ220は、押出部材221と、直動機構222とを含む。押出部材221は、積層体10を支持している支持台211が下降位置にあるときに、積層体10の周面に当接して積層体10を押し出すように構成されている。直動機構222は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、押出部材221を水平方向に沿って直線的に動作させるように構成されている。直動機構222は、例えば、油圧アクチュエータ、空圧アクチュエータ、電動アクチュエータ、電磁ソレノイドなどであってもよい。
【0039】
搬出路230は、排出孔132aの下部と連通しており、水平方向に沿って延びている。搬出路230は、下型132の一部で構成された天壁、側壁及び底壁で構成されている。積層体10は、当該天壁、当該側壁及び当該底壁で囲まれた空間内を通過可能である。
【0040】
姿勢保持部240は、支持台211に支持されている積層体10との間に引力を作用させるように構成されている。積層体10は、姿勢保持部240から作用する引力によって、支持台211の上面Sにおいて起立した状態が保たれる。
【0041】
姿勢保持部240は、例えば、永久磁石、磁性体、電磁石、真空チャック(真空吸着機構)、静電チャック(静電吸着機構)、マグネットチャック(磁力吸着機構)などで構成されていてもよい。姿勢保持部240が永久磁石、磁性体、電磁石、マグネットチャックなどで構成されている場合、姿勢保持部240は、磁力に由来する引力が積層体10に作用する。姿勢保持部240が真空チャックなどで構成されている場合、負圧に由来する引力が積層体10に作用する。姿勢保持部240が静電チャックなどで構成されている場合、クーロン力又はジョンセン・ラーベック力に由来する引力が積層体10に作用する。
【0042】
姿勢保持部240が永久磁石、磁性体、電磁石などで構成されている場合、姿勢保持部240は、支持台211の上面Sに露出するように支持台211に取り付けられていてもよいし、支持台211の上面Sから露出しないように支持台211の内部に配置されていてもよい(
図4参照)。姿勢保持部240が真空チャック、静電チャック、マグネットチャックなどで構成されている場合、姿勢保持部240は、支持台211の上面Sに露出するように支持台211に取り付けられていてもよい。
【0043】
[払出装置の動作]
続いて、
図4~
図6を参照して、払出装置200の動作について説明する。まず、
図4に示されるように、コントローラCtrからの支持信号に基づいて、直動機構212が支持台211を制御する。例えば、パンチP及びダイDによって金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが一枚ずつ支持台211上に積み重ねされるごとに、一枚の打抜部材Wの厚さのぶんだけ支持台211が間欠的に下方に降下するように、直動機構212が支持台211を制御する。これにより、支持台211の上面Sに積層体10が形成される。このとき、積層体10は、姿勢保持部240から作用する引力によって、支持台211の上面Sにおいて転倒することなく起立した状態が保たれる。
【0044】
ここで、パンチPによる金属板MSからの打抜部材W2の打ち抜き時には、押圧突起Paは貫通孔22内に挿入されるので、金属板MSは押圧突起Paによって加工されない。一方、パンチPによる金属板MSからの打抜部材W1の打ち抜き時には、押圧突起Paは、対応するカシメ20の窪み20aを押圧する。これにより、カシメ20の突起20bは、カシメ20の窪み20a内又は貫通孔22内に圧入され、両者が嵌合する。
【0045】
続いて、
図5に示されるように、コントローラCtrからの支持信号に基づいて、直動機構212が支持台211を制御する。例えば、下降位置に至るまで支持台211が降下するように、直動機構212が支持台211を制御する。支持台211が下降位置にある場合、支持台211の上面Sは、搬出路230の底壁面と同等の高さに位置していてもよいし、搬出路230の底壁面よりも上方に位置していてもよい。
【0046】
続いて、
図6に示されるように、コントローラCtrからの支持信号に基づいて、直動機構222が押出部材221を制御する。例えば、支持台211上の積層体10を押出部材221によって搬出路230の底壁上に押し出すように、直動機構222が押出部材221を搬出路230に向けて進出動作させてもよい。その後、押出部材221が初期位置に戻るように、直動機構222が押出部材221を退行動作させる。以上により、払出装置200による一連の動作が完了する。
【0047】
[作用]
以上の例によれば、姿勢保持部240と、支持台211に支持されている積層体10との間に作用する引力によって、支持台211上の積層体10の姿勢が保持される。そのため、支持台211の昇降に伴って振動が生じたとしても、支持台211上における積層体10の姿勢変動を抑制することが可能となる。
【0048】
ところで、パンチPによる打ち抜きをスムーズに行うため金属板MSにはスタンピングオイルが塗布されているので、既に支持台211上に形成された積層体10と、形成途中の後続の積層体10との間に表面張力が作用することがある。しかしながら、上記のとおり、姿勢保持部240と、支持台211に支持されている積層体10との間に作用する引力によって、表面張力に抗して支持台211上の積層体10の姿勢が保持される。そのため、支持台211上において積層体10の姿勢が乱れることを抑制することが可能となる。
【0049】
以上の例によれば、姿勢保持部240は支持台211に設けられていてもよい。この場合、姿勢保持部240と積層体10との距離が近づくので、積層体10に対して引力がより作用しやすくなる。そのため、支持台211上における積層体10の姿勢変動をより効果的に抑制することが可能となる。
【0050】
以上の例によれば、姿勢保持部240は支持台211の上面Sに露出していなくてもよい。この場合、積層体10が支持台211の上面Sをスライドしても、積層体10が姿勢保持部240と接触しない。そのため、姿勢保持部240の損耗等を防止することが可能となる。
【0051】
以上の例によれば、直動機構212は、金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが支持台211に積み重ねられるごとに支持台211を間欠的に下方に移動させるように構成されていてもよい。この場合、金属板MSから打抜部材Wが打ち抜かれる際、打抜部材WがパンチPと支持台211との間で常に挟持される。そのため、打抜部材Wにおける反りの発生を抑制することが可能となる。
【0052】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0053】
(1)以上の例において、プッシャ220が支持台211上の積層体10を搬出路230に押し出す際、積層体10の下端面から下方に突出する突起20bは、支持台211の上面Sに当接しながらスライドする。そこで、上方から見たときに、姿勢保持部240は、上面Sにおける突起20bの経路(移動軌跡)を避けるように(移動軌跡と重なり合わないように)、支持台211に配置されていてもよい。この場合、積層体10が支持台211の上面Sをスライドしても、姿勢保持部240からの引力が突起20bに対して作用し難くなる。そのため、姿勢保持部240と積層体10との間に作用する引力が部分的に大きくなってしまうことが抑制される。したがって、支持台211上の積層体10をプッシャ220によってスムーズに搬出路230に押し出すことが可能となる。特に、姿勢保持部240が支持台211の上面Sに露出している場合、突起20bが姿勢保持部240と当接することによる姿勢保持部240の損耗等を防止することが可能となる。
【0054】
(2)姿勢保持部240が永久磁石、磁性体、電磁石などで構成されている場合、永久磁石、電磁石などの数は少なくとも一つであってもよい。永久磁石は、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石などであってもよい。支持台211自体が永久磁石、磁性体、電磁石などで構成されていてもよい。
【0055】
(3)
図7に示されるように、姿勢保持部240は、排出孔132aの側壁面に設けられていてもよい。この場合、姿勢保持部240は、当該側壁面に露出していてもよいし、当該側壁の内部に配置されていてもよい。当該側壁面に設けられる姿勢保持部240の数は、少なくとも一つであってもよい。鉛直方向に沿って並ぶように複数の電磁石が当該側壁面に設けられている場合、積層体10が降下するにつれて上から順にOFFとなるように電磁石が制御されてもよいし、積層体10が降下するにつれて上から順に磁極が変化するように電磁石が制御されてもよい。
【0056】
(4)直動機構212は、支持台211を間欠的に下方に移動させるように構成されていなくてもよい。
【0057】
(5)払出装置200は、回転子積層鉄心1を構成する積層体10に限らず、他の金属製品を払い出すように構成されていてもよい。他の金属製品は、例えば、固定子積層鉄心を構成する積層体、非積層型の回転子鉄心、非積層型の固定子鉄心、リードフレームであってもよい。固定子積層鉄心は、複数の鉄心片が組み合われてなる分割型の鉄心ブロックで構成されていてもよいし、非分割型の鉄心ブロックで構成されていてもよい。非分割型の固定子積層鉄心は、円環状を呈する打抜部材Wが複数積層されたものであってもよい。あるいは、非分割型の固定子積層鉄心は、一つのヨークに複数のティースが設けられており、ティース間において折り曲げられることによって環状となる折り曲げ型の打抜部材が複数積層されたものであってもよい。
【0058】
(6)姿勢保持部240は、支持台211に支持されている積層体10との間に斥力を作用させるように構成されていてもよい。
【0059】
[他の例]
例1.本開示の一つの例に係る金属製品の払出装置(200)は、金型(D)によって金属板(MS)から打ち抜かれて得られた金属製品(10)を支持する支持部(211)と、支持部を昇降させるように構成された駆動部(212)と、支持部(211)に支持されている金属製品(10)との間に斥力又は引力を作用させるように構成された姿勢保持部(240)とを備える。この場合、姿勢保持部と、支持部に支持されている金属製品との間に作用する斥力又は引力によって、支持部上の金属製品の姿勢が保持される。そのため、支持部の動作に伴って振動が生じたとしても、支持部上における金属製品の姿勢変動を抑制することが可能となる。
【0060】
例2.例1の装置(200)において、姿勢保持部(240)は、永久磁石、電磁石、真空吸着機構及び静電吸着機構の少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0061】
例3.例1又は例2の装置(200)において、姿勢保持部(240)は支持部(211)に設けられていてもよい。この場合、姿勢保持部と金属製品との距離が近づくので、金属製品に対して斥力又は引力がより作用しやすくなる。そのため、支持部上における金属製品の姿勢変動をより効果的に抑制することが可能となる。
【0062】
例4.例3の装置(200)において、姿勢保持部(240)は支持部(211)の上面(S)に露出していなくてもよい。この場合、金属製品が支持部の上面をスライドしても、金属製品が姿勢保持部と接触しない。そのため、姿勢保持部の損耗等を防止することが可能となる。
【0063】
例5.例3又は例4の装置(200)は、支持部(211)に支持されている金属製品(10)を搬出路(230)に押し出すように構成されたプッシャ(220)をさらに備え、金属製品(10)は、その下端面から下方に突出する突起(20b)を含み、姿勢保持部(240)は、突起(20b)の移動軌跡を避けるように支持部(211)に配置されており、移動軌跡は、プッシャ(220)によって金属製品(10)が支持部(211)から搬出路(230)に押し出される際に、突起(20b)が支持部(211)の上面(S)に当接しながらスライドするときの突起(20b)の経路であってもよい。この場合、金属製品が支持部の上面をスライドしても、姿勢保持部からの斥力又は引力が金属製品の突起に対して作用し難くなる。そのため、姿勢保持部と金属製品との間に作用する斥力又は引力が部分的に大きくなってしまうことが抑制される。したがって、支持部上の金属製品をプッシャによってスムーズに搬出路に押し出すことが可能となる。
【0064】
例6.例1~例5のいずれかの装置(200)において、駆動部(212)は、金属板(MS)から打ち抜かれた打抜部材(W)が支持部(211)に積み重ねられるごとに支持部(211)を間欠的に下方に移動させるように構成されていてもよい。この場合、金属板から打抜部材が打ち抜かれる際、打抜部材が金型のパンチと支持部との間で常に挟持される。そのため、打抜部材における反りの発生を抑制することが可能となる。
【0065】
例7.本開示の他の例に係る金属製品の製造方法は、金型によって金属板を打ち抜くことによって金属製品を支持部上に形成することと、支持部に支持されている金属製品との間に斥力又は引力を作用させた状態で、金属製品を支持している支持部を駆動部によって昇降させることとを含む。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0066】
1…回転子積層鉄心(金属製品)、10…積層体(金属製品)、20b…突起、100…製造装置、130…打抜装置(金型)、133…ダイプレート、200…払出装置、210…昇降シリンダ、211…支持台(支持部)、212…直動機構(駆動部)、220…プッシャ、230…搬出路、240…姿勢保持部、D…ダイ(金型)、MS…金属板、S…上面。