(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 33/00 20060101AFI20231213BHJP
B61D 1/04 20060101ALI20231213BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20231213BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20231213BHJP
B60N 2/01 20060101ALI20231213BHJP
B60N 2/015 20060101ALI20231213BHJP
B60N 3/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D1/04
B61D37/00 Z
A47C9/00 Z
B60N2/01
B60N2/015
B60N3/02 A
(21)【出願番号】P 2019163574
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 元気
(72)【発明者】
【氏名】中桐 隆寿
(72)【発明者】
【氏名】吉原 聖史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵子
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0229423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B61D 1/04
B61D 37/00
A47C 9/00
B60N 2/01
B60N 2/015
B60N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の内部に形成される客室と、その客室内において前記車体の前後方向に延設される仕切りと、を備え、前記仕切りが、立位の乗客の臀部を支持可能に構成される支持部を備える鉄道車両において、
前記支持部における前記車体の幅方向を向く
両側面は、凹部と凸部とが前記車体の前後方向に連続する
同位相の波形に形成され、
前記凹部は、前記乗客を受け入れ可能に構成されると共に、前記車体の前後方向に所定間隔を隔てて複数並べて設けられることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
車体の内部に形成される客室と、その客室内において前記車体の前後方向に延設される仕切りと、を備え、前記仕切りが、立位の乗客の臀部を支持可能に構成される支持部を備える鉄道車両において、
前記支持部における前記車体の幅方向を向く側面は、凹部と凸部とが前記車体の前後方向に連続する正弦波状に形成され、
前記凹部は、前記乗客を受け入れ可能に構成されると共に、前記車体の前後方向に所定間隔を隔てて複数並べて設けられることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
前記凸部は、前記乗客が寄り掛かることが可能に構成されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記車体の前後方向において前記仕切りの一部が分断されることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記仕切りは、前記支持部の上方側に配置され乗客の目隠しが可能に構成される上仕切部を備え、
前記上仕切部は、前記支持部の側面と同位相の波形に形成されることを特徴とする請求項
1から4
のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記仕切りは、前記支持部および前記上仕切部の間に配置される手摺を備え、
前記手摺は、前記支持部の側面と同位相の波形に形成されることを特徴とする請求項5記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記仕切りは、前記支持部の下面から前記客室の床面までの間の空間を閉塞する下仕切部を備え、
前記下仕切部は、前記支持部の側面と同位相の波形に形成されることを特徴とする請求項
1から6のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記支持部の下面、若しくは、前記下仕切部には、乗客が把持可能な把持部が形成されることを特徴とする請求項7記載の鉄道車両。
【請求項9】
前記仕切りは、前記車体の幅方向に複数並べて設けられ、
前記支持部の側面であって複数の前記仕切りの間で対向する一対の側面は、互いに同位相の波形に形成されることを特徴とする請求項
1から8のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項10】
立位の乗客の臀部を支持可能に構成され前記客室の内壁面に設けられる壁側支持部を備え、
前記支持部と対向する前記壁側支持部の側面は、前記支持部の側面と同位相の波形に形成されることを特徴とする請求項
1から9のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項11】
前記支持部の側面は、上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜して形成されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、居住性を向上させることができる鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前後方向に延設される仕切りが客室内に設けられる鉄道車両が知られている。例えば、非特許文献1には、立位の乗客の臀部を支持可能とされる支持部(ヒップレスト)を備える仕切りが記載されている(非特許文献1の[40000系「パートナーゾーン」イメージ]参照)。
【0003】
この仕切りによれば、仕切りの支持部によって立位の乗客を支えることにより、乗客が座るための座席を設ける場合に比べて客室のスペースを広く確保できる。よって、その分、乗客定員を増やすことができる。そして、このような車体の前後方向に延設される仕切りを客室の幅方向中央に設けることにより、車体の前後方向における乗客の移動を円滑にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】[令和1年5月28日検索]、インターネット<URL:http://tetsudo-shimbun.com/headline/entry-451.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、仕切りの支持部に複数の乗客が寄り掛かった場合、車体の前後方向で乗客同士が隣接した状態となる。よって、支持部に寄り掛かる乗客のパーソナルスペースが確保され難くなるため、居住性が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、居住性を向上させることができる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の鉄道車両は、車体の内部に形成される客室と、その客室内において前記車体の前後方向に延設される仕切りと、を備え、前記仕切りが、立位の乗客の臀部を支持可能に構成される支持部を備えるものであり、前記支持部における前記車体の幅方向を向く両側面は、凹部と凸部とが前記車体の前後方向に連続する同位相の波形に形成され、前記凹部は、前記乗客を受け入れ可能に構成されると共に、前記車体の前後方向に所定間隔を隔てて複数並べて設けられる。
本発明の鉄道車両は、車体の内部に形成される客室と、その客室内において前記車体の前後方向に延設される仕切りと、を備え、前記仕切りが、立位の乗客の臀部を支持可能に構成される支持部を備えるものであり、前記支持部における前記車体の幅方向を向く側面は、凹部と凸部とが前記車体の前後方向に連続する正弦波状に形成され、前記凹部は、前記乗客を受け入れ可能に構成されると共に、前記車体の前後方向に所定間隔を隔てて複数並べて設けられる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び2に記載の鉄道車両によれば、次の効果を奏する。支持部における車体の幅方向を向く側面は、凹部と凸部とが車体の前後方向に連続する波形に形成され、凹部は、乗客を受け入れ可能に構成されると共に、車体の前後方向に所定間隔を隔てて複数並べて設けられる。これにより、複数の凹部のそれぞれに乗客が寄り掛かった場合に、車体の前後方向における凹部の配置間隔の分、乗客同士を離れた位置に配置することができる。よって、支持部に寄り掛かる乗客同士のパーソナルスペースを確保し易くできる。
【0009】
また、請求項1記載の鉄道車両によれば、凹部および凸部は、支持部における車体の幅方向を向く両側面に形成されるので、支持部の両側面側において、凹部や凸部に寄り掛かる乗客同士のパーソナルスペースを確保できる。
【0010】
支持部の両側面は、互いに同位相の波形に形成されるので、支持部の一方の側面における凹部の形成領域において、他方の側面の凸部を形成することができる。これにより、車体の幅方向における支持部の厚み寸法を薄くしつつ、支持部の両側面に凹部(凸部)を形成することができる。よって、車体の幅方向における支持部(仕切り)の配設スペースを縮小させることができるので、その分、客室のスペースを広く確保することができる。従って、乗客同士のパーソナルスペースを確保し易くできるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0011】
また、請求項1から3に記載の鉄道車両によれば、車体の前後方向に複数の凹部が並べて設けられることにより、支持部の側面には、複数の凹部同士の間に凸部が形成される。凸部は、乗客が寄り掛かることが可能に構成されるので、その凸部や凹部のそれぞれに乗客が寄り掛かった場合には、乗客を千鳥状に配置することができる。よって、乗客のパーソナルスペースを確保し易くできる。このように、支持部(仕切り)に寄り掛かる乗客同士のパーソナルスペースを確保することにより、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0012】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車体の前後方向において仕切りの一部が分断されるので、その分断部分での乗客の移動を可能にすることができる。よって、仕切りを挟んだ反対側への乗客の移動を円滑にすることができるという効果がある。
【0013】
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。仕切りは、支持部の上方側に配置され乗客の目隠しが可能に構成される上仕切部を備えるので、仕切りを挟んで反対側に位置する乗客の視線を上仕切部によって遮ることができる。よって、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0014】
また、上仕切部は、支持部の側面と同位相の波形に形成されるので、支持部の両側面側において、凹部や凸部に寄り掛かる乗客の頭部を上仕切部によって支えることができる。よって、乗客が楽な姿勢で支持部に寄り掛かることができるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0015】
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項5記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。仕切りは、上仕切部および支持部の間に配置される手摺を備えるので、乗客の臀部と頭部との間の掴みやすい高さに手摺を配置することができる。これにより、車両がカーブを走行する場合や、急減速を行った場合でも、乗客が手摺を持つ(掴む)ことで転倒を防止できるので、安全性を向上させることができるという効果がある。
【0016】
また、手摺は、支持部の側面と同位相の波形に形成されるので、支持部の両側面側において、凹部や凸部に寄り掛かる乗客の上半身(臀部から頭部までの間の部分)を手摺によって支えることができる。よって、乗客が楽な姿勢で支持部に寄り掛かることができるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0017】
請求項7記載の鉄道車両によれば、請求項1から6のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。仕切りは、支持部の下面から客室の床面までの間の空間を閉塞する下仕切部を備え、下仕切部は、支持部の側面と同位相の波形に形成されるので、支持部の両側面側において、凹部や凸部に寄り掛かる乗客の下半身(臀部よりも下側の部分)に下仕切部が干渉することを抑制できる。よって、乗客が楽な姿勢で支持部に寄り掛かることができるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0018】
請求項8記載の鉄道車両によれば、請求項7記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部の下面、若しくは、下仕切部には、乗客が把持可能な把持部が形成されるので、乗客の臀部よりも下方側、即ち、比較的身長の低い乗客が掴みやすい高さに把持部を配置することができる。これにより、車両がカーブを走行する場合や、急減速を行った場合でも、比較的身長の低い乗客が把持部を持つ(掴む)ことで転倒を防止できるので、安全性を向上させることができるという効果がある。
【0019】
請求項9記載の鉄道車両によれば、請求項1から8のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。仕切りは、車体の幅方向に複数並べて設けられ、支持部の側面であって複数の仕切りの間で対向する一対の側面は、互いに同位相の波形に形成される。これにより、複数の仕切りの間で対向する支持部(凹部や凸部)に乗客が寄り掛かった場合に、仕切りの対向間(車体の幅方向)における乗客同士の対向間隔を、車体の前後方向にわたって一定にし易くできる。よって、複数の仕切りの対向間における乗客の移動を円滑にし易くできるという効果がある。
【0020】
請求項10記載の鉄道車両によれば、請求項1から9のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。立位の乗客の臀部を支持可能に構成され客室の内壁面に設けられる壁側支持部を備えるので、例えば、客室の内壁面側に乗客の座席を設ける場合に比べ、客室のスペースを広く確保できる。よって、乗客同士のパーソナルスペースを確保し易くできるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【0021】
また、支持部と対向する壁側支持部の側面は、支持部の側面と同位相の波形に形成されるので、壁側支持部や仕切り(支持部)に乗客が寄り掛かった場合に、壁側支持部と仕切りとの対向間(車体の幅方向)における乗客同士の対向間隔を、車体の前後方向にわたって一定にし易くできる。よって、壁側支持部と仕切りとの対向間における乗客の移動を円滑にし易くできるという効果がある。
【0022】
請求項11記載の鉄道車両によれば、請求項1から10のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。支持部の側面は、上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜して形成されるので、乗客の身長に依らず、支持部の凹部や凸部に寄り掛かり易くすることができる。即ち、例えば、立位の乗客の臀部を下方から支持可能な突出部(腰掛け)を支持部に設けた場合、比較的身長の低い乗客は、その突出部に腰掛けることができず、楽な姿勢で支持部に寄り掛かることができなくなることがある。
【0023】
これに対して請求項11によれば、支持部の側面は、上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜して形成される。これにより、上述したような突出部を設ける場合に比べ、比較的身長の高い乗客であれば臀部を支持部によって支え、比較的身長の低い乗客であれば背中を支持部によって支えることができる。よって、乗客の身長に依らず、楽な姿勢で支持部に寄り掛かることができるので、居住性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態における鉄道車両の斜視図である。
【
図2】車体の上下方向と直交する平面で切断した鉄道車両の部分拡大断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線における鉄道車両の部分拡大端面図である。
【
図5】(a)は、鉄道車両の幅方向で視た第1実施形態の仕切りの正面図であり、(b)は、
図5(a)の矢印Vb方向視における仕切りの平面図であり、(c)は、
図5(a)の矢印Vc方向視における仕切りの左側面図である。
【
図6】(a)は、
図5(c)の矢印VIa方向視における仕切りの背面図であり、(b)は、
図5(a)の矢印VIb方向視における仕切りの底面図であり、(c)は、
図5(a)の矢印VIc方向視における仕切りの右側面図である。
【
図7】(a)は、
図5(a)のVIIa-VIIa線における仕切りの断面図であり、(b)は、
図6(b)のVIIb-VIIb線における仕切りの部分拡大端面図であり、(c)は、
図6(b)のVIIc部分を拡大した仕切りの部分拡大底面図であり、(d)は、
図7(c)のVIId-VIId線における仕切りの部分拡大断面図であり、(e)は、
図7(c)のVIIe-VIIe線における仕切りの部分拡大断面図である。
【
図8】(a)は、
図5(a)のVIIIa-VIIIa線における仕切りの断面図であり、(b)は、
図5(a)のVIIIb-VIIIb線における仕切りの断面図であり、(c)は、
図5(a)のVIIIc-VIIIc線における仕切りの断面図であり、(d)は、
図5(a)のVIIId-VIIId線における仕切りの断面図である。
【
図9】第2実施形態における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【
図10】
図9のX-X線における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【
図11】(a)は、鉄道車両の幅方向で視た第2実施形態の仕切りの正面図であり、(b)は、
図11(c)の矢印XIb方向視における仕切りの背面図であり、(c)は、
図11(a)の矢印XIc方向視における仕切りの左側面図であり、(d)は、
図11(a)の矢印XId方向視における仕切りの右側面図である。
【
図12】(a)は、
図11(a)の矢印XIIa方向視における仕切りの平面図であり、(b)は、
図11(a)の矢印XIIb方向視における仕切りの底面図であり、(c)は、
図11(a)のXIIc-XIIc線における仕切りの断面図であり、(d)は、
図11(a)のXIId-XIId線における仕切りの断面図であり、(e)は、
図11(a)のXIIe-XIIe線における仕切りの断面図である。
【
図13】第3実施形態における鉄道車両の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、鉄道車両1の全体構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における鉄道車両1の斜視図である。なお、
図1では、図面を簡素化するために、鉄道車両1の一部(例えば、車輪や台車、窓等)の図示が省略され、鉄道車両1の構造を模式的に図示している。
【0026】
図1に示すように、鉄道車両1は、複数の車輪を有する台車(図示せず)と、その台車に支持される車体(構体)2と、その車体2の内部の客室Rに設けられる複数(本実施形態では、2個)の仕切り3と、その仕切り3に対向するようにして客室Rの内壁面に設けられる壁側支持部4と、を備える。
【0027】
客室Rは、台枠、側構体、妻構体、及び、屋根構体によって取り囲まれる空間であり、車体2の前後方向に延びる客室Rの空間が車体2の内部に形成される。客室Rに設けられる仕切り3及び壁側支持部4は、それぞれ立位の乗客を支える(立席を形成する)ためのものであり、本実施形態では、乗客が座るための座席を客室R内に有さない構成となっている。これにより、座席を設ける場合に比べて客室R内のスペースを広く確保することができるので、乗客定員を増加させつつ、乗客同士のパーソナルスペース(対人距離)を確保することができる。
【0028】
車体2の前後方向に沿って延設される仕切り3は、車体2の幅方向で対向するようにして一対に設けられる。即ち、一対の仕切り3が配置される領域においては、客室Rの空間が車体2の幅方向で3分割されている。よって、仕切り3と客室Rの内壁面(壁側支持部4)との対向間や、一対の仕切り3の対向間には、車体2の前後方向に延びる空間が形成されており、その空間が乗客の立席や通路として構成される。これにより、客室Rを区画する仕切り3を複数設けた場合であっても、車体2の前後方向における乗客の移動を円滑に行うことができる。
【0029】
仕切り3は、車体2の前後方向に所定間隔を隔てて並べて設けられる複数(本実施形態では、5本)の支柱30と、それら複数の支柱30同士を接続するようにして設けられる上仕切部31、手摺32、支持部33、及び、下仕切部34とを備える。
【0030】
支柱30は、車体2の上下方向に延びるポールであり、支柱30の上下の両端が客室Rの天井面および床面のそれぞれに固定される。
【0031】
詳細は後述するが、上仕切部31は、乗客の目隠しを行うことや乗客の頭部を支えるための板状の仕切りであり、手摺32は、乗客の転倒を防止するための棒状体である。また、支持部33や壁側支持部4は、乗客の臀部を支えるためのヒップレスト(所定のクッション性を有するもの)であり、下仕切部34は、子供が潜り抜けたりすることを防止するための板状の仕切りである。
【0032】
なお、以下の説明においては、支柱30を除き、上仕切部31、手摺32、支持部33、及び、下仕切部34をまとめて記載する場合には、単に「各部」と省略して記載する。
【0033】
仕切り3の各部は、車体2の前後方向に連続する波形に形成され、各部の波形形状が互いに同位相となっている。これにより、仕切り3が全体として波形の形状となるため、仕切り3の意匠性を向上させることができる。また、一対の仕切り3の各部がそれぞれ波形に形成されているため、それら一対の仕切り3の形状の統一感によっても意匠性を向上させることができる。
【0034】
このように、仕切り3が波形に形成されているため、仕切り3において乗客を主に支持する支持部33の側面(車体2の幅方向を向く面)には、凹部33aや凸部33bが車体2の前後方向に連続して形成される。この凹部33aや凸部33bの構成について、
図2を参照して説明する。
【0035】
図2は、車体2の上下方向と直交する平面で切断した鉄道車両1の部分拡大断面図である。なお、
図2では、仕切り3の上仕切部31よりも上方側で車体2を切断した断面が図示される。
【0036】
図2に示すように、仕切り3の凹部33aの凹設幅(
図2の左右方向における寸法)は、乗客P1の肩幅程度の寸法(例えば、40cm~60cm)に設定されている。即ち、仕切り3の凹部33aは、成人や子供等、一人の乗客P1を受け入れ可能な凹設幅で支持部33の側面に凹設されており、1つの凹部33aに1人の乗客P1が寄り掛かれるように構成されている。よって、凹部33aに乗客P1が寄り掛かった状態であれば、車両が急減速をしても乗客P1が転倒することを抑制できる。
【0037】
支持部33の側面には、車体2の前後方向(
図2の左右方向)で所定間隔を隔る複数の凹部33aが並べて設けられる(本実施形態では、1つの側面に4つの凹部33aが形成される)。これにより、複数の凹部33aのそれぞれに乗客P1が寄り掛かった場合に、車体2の前後方向における凹部33aの配置間隔(凸部33bの凸設幅)の分、乗客P1同士を離れた位置に配置することができる。よって、支持部33に寄り掛かる乗客P1同士のパーソナルスペースを確保し易くできるので、居住性を向上させることができる。
【0038】
また、車体2の前後方向に複数の凹部33aが並べて設けられることにより、支持部33の側面には、複数の凹部33a同士の間に凸部33bが凸設される。凸部33bの凸設幅(
図2の左右方向における寸法)は、成人の乗客P1の肩幅程度の寸法に設定されており、1つの凸部33bに1人の乗客P1が寄り掛かれるように構成されている。これにより、凹部33a及び凸部33bのそれぞれに乗客P1が寄り掛かった場合には、乗客P1を千鳥状に配置することができる。よって、乗客P1同士が車体2の前後方向に沿って隣接する場合に比べ、支持部33に寄り掛かる乗客P1同士のパーソナルスペースを確保し易くできる。
【0039】
凹部33a及び凸部33bが形成されることにより、支持部33の側面は上面視において正弦波形状になっており、その正弦波形状の変曲点が凹部33aや凸部33bの縁である。言い換えると、凹部33aにおいて最も凹んだ位置と、凸部33bにおいて最も凸となる位置との間の中点が凹部33a及び凸部33bの境界であり、その境界同士の前後方向における間隔が凹部33aの凹設幅(凸部33bの凸設幅)となる。
【0040】
このような波形の凹部33a及び凸部33bが支持部33の両側面に形成されているため、支持部33の両側面側において、凹部33aや凸部33bに寄り掛かる乗客P1同士のパーソナルスペースを確保できる。
【0041】
また、凹部33a及び凸部33bは、支持部33の両側面が互いに同位相の波形になる位置に形成されている。即ち、支持部33の一方の側面における凹部33aの形成領域において、他方の側面に凸部33bが形成されるので、車体2の幅方向(
図2の上下方向)における支持部33の厚み寸法を、支持部33の前後の両端にわたって一定にすることができる。
【0042】
これにより、支持部33の厚み寸法を薄くしつつ、支持部33の両側面に凹部33aや凸部33bを形成することができるので、車体2の幅方向における支持部33(仕切り3)の配設スペースを縮小させることができる。よって、その分、客室Rのスペースを広く確保することができるので、乗客P1同士のパーソナルスペースを確保し易くできる。
【0043】
ここで、車体2の側壁には、前後に所定間隔を隔てる乗降口20,21が設けられ、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域の略全長にわたって仕切り3が設けられている。この場合、仕切り3に多数の乗客P1が寄り掛かると、前後の乗降口20,21間での乗客の移動が困難になるおそれがある。
【0044】
これに対して本実施形態では、一対の仕切り3の間で対向する支持部33の側面は、互いに同位相の波形に形成される。即ち、一対の仕切り3の対向間において、一方の仕切り3(支持部33)の凹部33aと、他方の仕切り3(支持部33)の凸部33bとが対向する位置に形成される。
【0045】
これにより、一対の仕切り3の対向間において、多数の乗客P1が支持部33に寄り掛かった場合でも、仕切り3の対向間(車体2の幅方向)における乗客P1同士の対向間隔L1を、仕切り3の前後の両端にわたって一定にし易くできる。よって、一対の仕切り3の対向間における乗客P1の移動を円滑にできる。
【0046】
また、壁側支持部4は、車体2の幅方向両側における客室Rの内壁面に形成され、各壁側支持部4の側面には、乗客P1を受け入れ可能な凹部40や、乗客P1が寄り掛かることが可能な凸部41が形成される。仕切り3と壁側支持部4との対向間においては、仕切り3(支持部33)の凹部33aと、壁側支持部4の凸部41とが対向する位置に形成される。即ち、仕切り3と対向する壁側支持部4の側面も同様に、支持部33の側面と同位相の波形(正弦波形状)に形成される。
【0047】
これにより、仕切り3と壁側支持部4との対向間において、多数の乗客P1が支持部33や壁側支持部4に寄り掛かった場合でも、仕切り3と壁側支持部4との対向間における乗客P1同士の対向間隔L2を、仕切り3(壁側支持部4)の前後の両端にわたって一定にし易くできる。よって、仕切り3と壁側支持部4との対向間における乗客P1の移動を円滑にできる。
【0048】
また、一対の仕切り3は、車体2の幅方向において客室Rを3等分するようにして設けられており、車体2の幅方向における仕切り3と壁側支持部4との対向間隔は、一対の仕切り3の対向間隔と同一となっている。これによっても、一対の仕切り3の対向間や、仕切り3と壁側支持部4との対向間における乗客P1の移動を円滑にし易くできる。
【0049】
このように、本実施形態では、各仕切り3や壁側支持部4の対向間における乗客P1の移動を円滑にできるように構成されている。これにより、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域の略全長にわたって仕切り3が設けられる場合であっても、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21にかけた乗客の移動を円滑にすることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、車体2の前後方向における仕切り3の延設長さと、壁側支持部
4の延設長さとが同一の寸法に設定されているが、仕切り3又は壁側支持部4のいずれか一方の延設長さを長くする構成でも良い。
【0051】
次いで、
図3及び
図4を参照して、仕切り3の構成について更に説明するが、
図1,2も適宜参照しながら説明する。
図3は、
図2のIII-III線における鉄道車両1の部分拡大断面図であり、
図4は、
図2のIV-IV線における鉄道車両1の部分拡大端面図である。なお、
図3及び
図4では、
図2で図示した乗客P1とは異なる乗客P2,P3が図示されている。また、図面を簡素化するために、
図4では、支持部33や下仕切部34の内部構造の図示を省略し、断面を模式的に図示している。
【0052】
図3に示すように、一般的な身長の成人の乗客P2(以下、「成人の乗客P2」と記載する)の臀部を支持可能な高さに、仕切り3の支持部33や壁側支持部4が配置されている。一般的な身長の成人の乗客とは、例えば、身長が150~180cm程度の乗客であり、その乗客の臀部を支持可能な高さとは、例えば、客室Rの床面からの高さが60cm~130cmとなる領域である。このような高さに支持部33や壁側支持部4を設けることにより、成人の乗客P2の臀部を支持部33や壁側支持部4によって支えることができる。
【0053】
一方、仕切り3の支持部33よりも上方側には、上仕切部31が配置される。上仕切部31は、成人の乗客P2の頭部と同等の高さ(例えば、客室Rの床面からの高さが130cm~190cmとなる領域)であって、成人の乗客P2の目隠しが可能な高さに配置される。これにより、仕切り3を挟んで反対側に位置する成人の乗客P2の視線を上仕切部31によって遮ることができるので、居住性を向上させることができる。
【0054】
上仕切部31は、支持部33と上下(上面視)で重なる位置に配置されており、上仕切部31と支持部33の側面とが互いに同位相の波形に形成される(
図2参照)。これにより、支持部33の両側面側において、支持部33に寄り掛かる成人の乗客P2の頭部を上仕切部31によって支えることができる。よって、成人の乗客P2が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができる。
【0055】
また、上仕切部31は、乗客P2の視線を遮ることができる程度のものであって、所定の透光性を有するもの(本実施形態では、半透明の磨りガラス)を用いて形成されている。これにより、所定量の光を上仕切部31に透過させることができるので、上仕切部31を設けることによる客室R内の閉塞感を低減させることができる。
【0056】
また、上仕切部31が支持部33の上方に所定間隔(例えば、20cm~40cm)を隔てて配置されているため、上仕切部31と支持部33との間には隙間(空間)が形成される。この隙間によっても、上仕切部31を設けることによる閉塞感を低減させることができると共に、かかる隙間を利用して棒状の手摺32を設けることができる。
【0057】
即ち、成人の乗客P2の頭部と同等の高さに配置される上仕切部31と、成人の乗客P2の臀部を支持する支持部33との間に手摺32を設けることにより、成人の乗客P2が掴みやすい高さ(臀部と頭部との間の高さ)に手摺32を配置することができる。よって、車両がカーブを走行する場合や、急減速を行った場合でも、成人の乗客P2が手摺32を持つ(掴む)ことで転倒を防止できるので、安全性を向上させることができる。
【0058】
手摺32は、支持部33と上下(上面視)で重なる位置に配置され、手摺32と支持部33の側面とが互いに同位相の波形に形成される(
図1参照)。これにより、支持部33の両側面側において、支持部33に寄り掛かる成人の乗客P2の上半身(臀部から頭部までの間の部分)を手摺32によって支えることができる。よって、成人の乗客P2が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができる。
【0059】
このように、本実施形態では、主に成人の乗客P2の臀部から頭部までを仕切り3の各部によって支えることが可能となっているが、例えば、立位の成人の乗客P2の臀部を下方から支持可能な突出部S(
図3の2点鎖線で示すような、成人の乗客P2がほぼ立った姿勢で腰を下ろすことができる腰掛け)を支持部33に設けることも可能である。
【0060】
このような突出部Sを設けることにより、成人の乗客P2がほぼ膝を伸ばした状態で仕切り3(支持部33)に腰掛けることができるものの、様々な身長の乗客が突出部Sに腰掛けられるようにするためには、突出部Sを低い位置に設ける必要がある。突出部Sの配置を低くすると、比較的身長の高い乗客は大きく膝を曲げた状態で突出部Sに腰掛ける必要があり、その分、乗客の占有スペースが増大する(立席ではなく、座席に近いものになってしまう)。
【0061】
更に、上述したような突出部Sを支持部33に設けると、比較的身長の低い子供の乗客P3(以下、「子供の乗客P3」と記載する)は、突出部Sに腰掛けることができない場合がある。この場合には、子供の乗客P3が突出部Sを背もたれとして寄り掛かることがあるため、子供の乗客P3の上半身を全体的に支持部33で支えることが困難になる。よって、子供の乗客P3が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができなくなる。
【0062】
これに対して本実施形態では、支持部33の両側面は、上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜するテーパ状に形成される。即ち、車体2の前後方向(
図3の紙面垂直方向)と直交する平面で切断した断面視において、支持部33の側面は上述したような突出部Sを有さない直線状に形成されている。これにより、成人の乗客P2の臀部を支持部33によって支えることができることに加え、上述したような突出部Sを設ける場合に比べ、成人の乗客P2が支持部33に寄り掛かった場合に膝を曲げた姿勢となる(腰掛ける姿勢に近くなる)ことを抑制できる。よって、成人の乗客P2が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができると共に、乗客の占有スペースが増大することを抑制できる。
【0063】
更に、支持部33の側面が上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜して形成されることにより、子供の乗客P3の上半身を全体的に支持部33で支え易くすることができる。これにより、子供の乗客P3であっても、楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができる。よって、支持部33の側面を上述したようなテーパ状に形成することにより、乗客P2,P3の身長に依らず、支持部33に寄り掛かり易くすることができる。
【0064】
また、支持部33の下方には板状の下仕切部34が配置されているが、下仕切部34は、支持部33と上下(上面視)で重なる位置に配置され、支持部33の側面と下仕切部34とが互いに同位相の波形に形成される(
図1参照)。これにより、支持部33の両側面側において、支持部33に寄り掛かる乗客P2,P3の下半身(臀部よりも下側の部分)に下仕切部34が干渉することを抑制できる。よって、乗客P2,P3が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができる。
【0065】
図4に示すように、仕切り3の下仕切部34は、支持部33の下面から客室Rの床面までの間の空間を閉塞しているので、仕切り3を挟んだ反対側に子供の乗客P3が手を伸ばしたり、潜り抜けたりすることを抑制できる。よって、安全性を向上させることができる。
【0066】
また、下仕切部34よりも車体2の側方側(
図4の左右方向両側)における支持部33の下面には、子供の乗客P3が把持可能な把持部33cが形成される。把持部33cは、支持部33の下面から上方に向けて凹む溝であり、その溝状の把持部33cが支持部33の略全長にわたって波形に形成されている。
【0067】
このように、支持部33の側面(成人の乗客の臀部を支持する部位)よりも下方側に把持部33cを設けることにより、比較的身長の低い子供の乗客P3が掴みやすい高さに把持部33cを配置することができる。よって、車両がカーブを走行する場合や、急減速を行った場合でも、子供の乗客P3が把持部33cを持つ(掴む)ことで転倒を防止できるので、安全性を向上させることができる。
【0068】
また、支持部33の下面に把持部33cを設けることにより、例えば、子供の乗客P3が把持可能な凹みを支持部33の側面や下仕切部34の側面に設ける場合に比べ、ごみ等の異物が把持部33c内に溜まることを抑制できる。
【0069】
なお、
図5(a)は、鉄道車両の幅方向で視た第1実施形態の仕切り3の正面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の矢印Vb方向視における仕切り3の平面図であり、
図5(c)は、
図5(a)の矢印Vc方向視における仕切り3の左側面図である。
図6(a)は、
図5(c)の矢印VIa方向視における仕切り3の背面図であり、
図6(b)は、
図5(a)の矢印VIb方向視における仕切り3の底面図であり、
図6(c)は、
図5(a)の矢印VIc方向視における仕切り3の右側面図である。
【0070】
図7(a)は、
図5(a)のVIIa-VIIa線における仕切り3の断面図であり、
図7(b)は、
図6(b)のVIIb-VIIb線における仕切り3の部分拡大端面図であり、
図7(c)は、
図6(b)のVIIc部分を拡大した仕切り3の部分拡大底面図である。
図7(d)は、
図7(c)のVIId-VIId線における仕切り3の部分拡大断面図であり、
図7(e)は、
図7(c)のVIIe-VIIe線における仕切り3の部分拡大断面図である。
【0071】
図8(a)は、
図5(a)のVIIIa-VIIIa線における仕切り3の断面図であり、
図8(b)は、
図5(a)のVIIIb-VIIIb線における仕切り3の断面図である。
図8(c)は、
図5(a)のVIIIc-VIIIc線における仕切り3の断面図であり、
図8(d)は、
図5(a)のVIIId-VIIId線における仕切り3の断面図である。
【0072】
なお、
図5~8の矢印U-D,L-R,F-Bは、仕切り3の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示しており、仕切り3の前面側が「正面」、後面側が「背面」である。即ち、
図5~8の矢印U-D,L-R,F-Bは、鉄道車両の上下方向、左右方向、前後方向とは必ずしも一致するものではなく、後述する
図11,12においても同様とする。
【0073】
次いで、
図9及び
図10を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域の略全長にわたって仕切り3が設けられる場合を説明した。これに対して第2実施形態では、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域内で仕切り203が分断される場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図9は、第2実施形態における鉄道車両201の部分拡大断面図であり、
図10は、
図9のX-X線における鉄道車両201の部分拡大断面図である。なお、
図9では、
図2に対応する断面部分を図示している。
【0075】
図9に示すように、第2実施形態の鉄道車両201は、車体2の幅方向(
図9の上下方向)両側における客室Rの内壁面に沿って座席205が設けられる。座席205は、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域の略全長にわたって設けられるロングシートである。
【0076】
車体2の幅方向で対向する一対の座席205の間(車体2の幅方向における客室Rの中央)には、車体2の前後方向(
図9の左右方向)に延設される一対の仕切り203が設けられる。これら2つの仕切り203は、上述した第1実施形態と同様、支柱30、上仕切部31、手摺32(図示せず)、及び、支持部33を備えている。
【0077】
仕切り203の延設長さは、第1実施形態の仕切り3に比べて短く形成されており、支持部33の一対の側面のうち、一方の側面には1つの凹部33aが形成され、他方の側面には2つの凹部33aが形成される。
【0078】
一対の仕切り203は、車体2の前後方向に沿って所定間隔を隔てて配置される。言い換えると、車体2の前後方向において仕切り203の一部が分断されるようにして配置されるため、かかる分断部分での乗客の移動を可能にすることができる。よって、仕切り203を挟んだ反対側への乗客の移動、即ち、車体2の幅方向における乗客の移動を円滑にすることができる。
【0079】
また、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域に一対の仕切り203が配置されるので、かかる領域(乗降口20と乗降口21との間の中間となる前後方向位置)に一対の仕切り203の分断部分が形成される。これにより、多数の乗客が乗車している状況であっても、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21にかけた乗客の移動を円滑にすることができる。
【0080】
図10に示すように、仕切り203は、支持部33の下方に所定間隔を隔てて設けられる手摺235を備えている。手摺235は、複数の支柱30(支柱30が複数設けられる点については、
図9参照)の間を接続するようにして設けられる棒状体である。手摺235は、車体2の前後方向(
図10の紙面垂直方向)における支持部33の略全長にわたって波形に形成されている。
【0081】
このように、支持部33の側面(成人の乗客の臀部を支持する部位)よりも下方側に手摺235を設けることにより、比較的身長の低い子供の乗客P3が掴みやすい高さに手摺235を配置することができる。よって、車両がカーブを走行する場合や、急減速を行った場合でも、子供の乗客P3が手摺235を持つ(掴む)ことで転倒を防止できるので、安全性を向上させることができる。更に、第1実施形態のように、支持部33の下方側を下仕切部34で閉塞する場合(
図4参照)に比べ、支持部33の下方側の閉塞感を低減させることができる。
【0082】
また、手摺235は、支持部33と上下(上面視)で重なる位置に配置され、支持部33の側面と手摺235とが互いに同位相の波形に形成されている。これにより、支持部33の両側面側において、凹部33aや凸部33bに寄り掛かる乗客の下半身(臀部よりも下側の部分)に手摺235が干渉することを抑制できる。よって、乗客が楽な姿勢で支持部33に寄り掛かることができる。
【0083】
なお、
図11(a)は、鉄道車両の幅方向で視た第2実施形態の仕切り203の正面図であり、
図11(b)は、
図11(c)の矢印XIb方向視における仕切り203の背面図である。
図11(c)は、
図11(a)の矢印XIc方向視における仕切り203の左側面図であり、
図11(d)は、
図11(a)の矢印XId方向視における仕切り203の右側面図である。
【0084】
図12(a)は、
図11(a)の矢印XIIa方向視における仕切り203の平面図であり、
図12(b)は、
図11(a)の矢印XIIb方向視における仕切り203の底面図である。
図12(c)は、
図11(a)のXIIc-XIIc線における仕切り203の断面図であり、
図12(d)は、
図11(a)のXIId-XIId線における仕切り203の断面図であり、
図12(e)は、
図11(a)のXIIe-XIIe線における仕切り203の断面図である。
【0085】
次いで、
図13を参照して、第3実施形態について説明する。第2実施形態では、仕切り203が車体2の前後方向に沿って延設される場合を説明した。これに対して第3実施形態では、仕切り203が車体2の前後方向に対して傾斜して延設される場合について説明する。なお、上述した第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図13は、第3実施形態における鉄道車両301の部分拡大断面図である。なお、
図13では、
図2に対応する断面部分を図示している。
【0086】
図13に示すように、第3実施形態の鉄道車両301は、第2実施形態の座席205が省略される点と、仕切り203の配置(数)が異なる点と、を除き、第2実施形態の鉄道車両201と同様の構成である。このように、客室R内に座席205を配置しないように構成することにより、客室Rのスペースを広く確保できるので、乗客定員を増やすことができる。
【0087】
仕切り203は、前方側の乗降口20から後方側の乗降口21までの領域に複数(本実施形態では、4つ)配置される。より具体的には、車体2の幅方向に沿って並べて配置される一対の仕切り203を一組の仕切りとすると、二組の仕切りが車体2の前後方向に沿って並べて配置される。それら複数の仕切り203は、車体2の前後方向(
図13の左右方向)および幅方向(
図13の上下方向)においてそれぞれが所定の間隔を隔てて配置される。
【0088】
複数の仕切り203は、車体2の前後方向に対して傾斜した方向に沿って延設されるため、加速や減速による乗客の転倒を複数の仕切り203によって防止し易くできる。また、各仕切り203同士の間隔は、乗客の移動を許容できる程度に設定されているため、車体2の前後方向に対して仕切り203を傾斜して配置した場合でも、各仕切り203同士の対向間における乗客の移動(車体2の前後方向や幅方向に向けた移動)を円滑に行うことができる。
【0089】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、仕切り3,203の各部が配置される高さや、各部の寸法(例えば、凹部33aの凹設幅や凸部33bの凸設幅)は例示であり、適宜設定できる。
【0090】
上記各実施形態において、1の実施形態の一部または全部を他の1又は複数の実施形態の一部または全部と入れ替えて又は組み合わせて、鉄道車両1,201,301(仕切り3,203)を構成しても良い。よって、例えば、第1実施形態の鉄道車両1の仕切り3に対し、把持部33cを省略し(若しくは、把持部33cに加え)、第2実施形態の手摺235の構成を適用することは当然可能である。また、第2,3実施形態の鉄道車両201,301の仕切り203に対し、手摺235を省略し(若しくは、手摺235に加え)、第1実施形態の手把持部33cの構成を適用することは当然可能である。
【0091】
また、第1実施形態の仕切り3及び第2実施形態の仕切り203を、第3実施形態の仕切り203のように乗客の移動を許容できる程度に前後方向に対して傾斜させることも当然可能である。即ち、「前後方向に延設される」とは、必ずしも「前後方向に沿って延設される」ことを要件とするものではない。
【0092】
上記各実施形態では、前後の乗降口20,21の間の領域に2つ若しくは4つの仕切り3,203が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、前後の乗降口20,21の間に1つ又は3つの仕切り3,203を設けることや、5以上の仕切り3,203を設けることは当然可能であり、それら1又は複数の仕切り3,203の配置は目的に応じて適宜設定できる。
【0093】
上記各実施形態では、ヒップレストからなる壁側支持部4や、ロングシートの座席からなる座席205が客室Rの内壁面に沿って設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、客室Rの一方の内壁面側にクロスシートからなる座席を設け、そのクロスシートと他方の内壁面との間に仕切り3,203を設ける構成でも良い。
【0094】
上記各実施形態では、仕切り3,203に手摺32を設けることで乗客の転倒を防止する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、仕切り3,203や壁側支持部4に寄り掛かる乗客が把持可能な位置に吊革を設けることで乗客の転倒を防止する構成でも良い。
【0095】
上記各実施形態では、支持部33や壁側支持部4の内部構造の説明を省略したが、支持部33や壁側支持部4は、所定のクッション性を有する座席の背もたれ(例えば、発泡樹脂製のクッションパッドをフレームに支持させるもの)等、公知の構成を適用すれば良い。
【0096】
上記各実施形態では、支持部33の両側面が上端から下端側にかけて一定の勾配で下降傾斜するテーパ状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、立位の乗客の臀部を下方から支持可能な突出部S(支持部33の側面から突出し支持部33の略全長にわたって延びる腰掛け)を支持部33の側面に設けても良いし、比較的身長の低い乗客が把持可能な把持部(凹凸)を支持部33の側面に設けても良い。また、支持部33の側面が断面視において上下に延びる直線状に形成される構成でも良い。即ち、乗客の臀部を支持できる構成であれば、支持部33の側面の断面形状は適宜設定できる。
【0097】
上記各実施形態では、支持部33の両側面に凹部33aや凸部33bが形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。支持部33の一方の側面のみに凹部33aや凸部33bを形成し、他方の側面は前後に延びる平面であっても良い。
【0098】
上記各実施形態では、「1の仕切り3,203における支持部33の両側面」、「一対の仕切り3の間で対向する支持部33の側面」、「支持部33と壁側支持部4との間で対向する側面」、のそれぞれにおいて、側面同士が互いに同位相の波形に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、かかる側面同士で波形の位相はズレていても良く、互いの波形が逆位相に形成される構成でも良い。
【0099】
上記各実施形態では、仕切り3,203の各部や壁側支持部4が「波形」である場合の具体的形状の一例として、正弦波形状である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、「波形」の他の例として、矩形波形状や三角波形状、若しくは、鋸波形状が挙げられる。
【0100】
上記各実施形態では、支持部33や壁側支持部4が波形に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部33や壁側支持部4は、乗客を受け入れ可能な凹部を前後に複数備える構成であれば、波形で無くても良い。よって、例えば、支持部33や壁側支持部4の凹部を上面視円弧状(矩形)の凹みとし、凸部を矩形(円弧状)の凸とする等、凹部や凸部がそれぞれ異なる形状とされる構成でも良い。
【0101】
上記各実施形態では、支持部33の上方に上仕切部31や手摺32、支持部33の下方に下仕切部34や手摺235が配置され、それらが互いに同位相の波形に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上仕切部31、手摺32、下仕切部34、及び、手摺235を、前後方向に延びる直線状や、支持部33とは異なる位相の波形に形成する構成でも良い。
【0102】
上記各実施形態では、支持部33の上方に所定間隔を隔てて上仕切部31が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上仕切部31を省略して成人の乗客の頭部と同等の高さまで支持部33を形成し、支持部33によって乗客の頭部を支える構成でも良い。
【0103】
また、上仕切部31を支持部33の上端まで延ばして支持部33との間の空間を閉塞し、乗客の視線を完全に遮る構成でも良い。かかる構成の場合においても、上記各実施形態と同様に、乗客P2の視線を遮ることができる程度のものであって、所定の透光性を有する半透明のものを用いて上仕切部31を形成することが好ましい。これにより、上仕切部31と支持部33との間の空間が閉塞される場合であっても、所定量の光を上仕切部31に透過させることができるので、閉塞感を低減できる。
【0104】
上記各実施形態では、上仕切部31が、乗客P2の視線を遮ることができる程度のものであって、所定の透光性を有するもの(半透明の磨りガラス)を用いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、所定のクッション性を有する部材(例えば、発泡樹脂製のクッションパッドをフレームに支持させるもの)を用いて上仕切部31を構成しても良い。これにより、乗客の頭部を上仕切部31によって柔らかく支えることができるので、居住性を向上させることができる。
【0105】
上記各実施形態では、支持部33の下面に把持部33cが設けられる場合や、支持部33の下方に手摺235が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部33の側面や下仕切部34の側面に凹みを設けることや、下仕切部34を貫通する孔を設けることにより、それらの凹みや孔を把持部として機能させる構成しても良い。
【符号の説明】
【0106】
1,201,301 鉄道車両
2 車体
3,203 仕切り
31 上仕切部
32 手摺
33 支持部
33a 凹部
33c 把持部
34 下仕切部
4 壁側支持部
R 客室