(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】車両の自動運転制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231213BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20231213BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20231213BHJP
B60W 50/12 20120101ALI20231213BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/18
B60W40/09
B60W50/12
(21)【出願番号】P 2019169704
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】桑原 敬祐
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168739(WO,A1)
【文献】特開2019-125235(JP,A)
【文献】特開2000-268297(JP,A)
【文献】特開2018-135058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転モードとして、ドライバが自車両の運転操作を手動により行う手動運転モードと、
設定された目標走行経路に沿って運転操作を自動により行う自動運転モードと、を選択的に切換可能な車両の自動運転制御装置であって、
前記手動運転モードによる走行中の前記ドライバによる運転操作をモニタリングして前記ドライバによる運転技能を評価する運転技能評価手段と、
少なくとも前記運転技能評価手段による前記ドライバに対する評価値が予め設定された閾値を超えていることを条件として、前記運転モードを前記自動運転モードに切換可能な状態に制御する運転モード切換手段と、を有
し、
前記運転技能評価手段は、前記運転モード切換手段により過去設定期間内に同一の前記ドライバについて前記運転モードを前記自動運転モードに切換可能な状態に制御していたときは、前記運転技能の評価を行わないことを特徴とする車両の自動運転制御装置。
【請求項2】
車外の走行環境を認識する走行環境認識手段を有し、
前記運転技能評価手段は、前記走行環境認識手段で認識した走行環境に対して自車両が所定範囲走行する間の挙動に基づいて前記運転技能を評価することを特徴とする請求項1に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項3】
前記運転技能評価手段は、自車両の加減速度が閾値を超えた回数が多くなるほど前記評価値を低く算出することを特徴とする請求項2に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項4】
前記運転技能評価手段は、前記走行環境認識手段により認識した自車走行路の中心に対する横ずれが発生した回数が多くなるほど前記評価値を低く算出することを特徴とする請求項2に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項5】
前記運転技能評価手段は、前記走行環境認識手段により認識した自車走行路に対するふらつきが発生した回数が多くなるほど前記評価値を低く算出することを特徴とする請求項2に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項6】
前記運転技能評価手段は、自車両の横加速度が閾値を超えた回数が多くなるほど前記評価値を低く算出することを特徴とする請求項2に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項7】
前記所定範囲とは、所定距離又は所定時間であることを特徴とする請求項2乃至請求項6の何れか1項に記載の車両の自動運転制御装置。
【請求項8】
前記ドライバを特定するドライバ特定手段を有し、
先記運転技能評価手段は、前記ドライバ特定手段により特定した同一の前記ドライバ毎に前記運転技能を評価することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の車両の自動運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが運転操作を行う手動運転モードと、ドライバの運転操作を必要としない自動運転モードとを切り換えることができる車両の自動運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、ドライバの運転操作を必要としない自動運転モードによる走行を行うための自動運転制御装置が開発されている。
【0003】
この種の車両の自動運転制御装置では、自動運転モードによる走行中に、走行環境の変化やシステムの失陥等の要因によって自動運転モードを継続できないと判断した場合には、運転モードを自動運転モードから手動運転モード等へと切り換えることにより走行を継続することが可能となっている。
【0004】
従って、この種の自動運転制御装置では、目的地までの途中においてドライバが自動運転モードから運転を引き継げる状態にあるか否かを予め検証しておくことが重要となる。これに対し、例えば、特許文献1には、車両の自動運転走行を開始する前に、ドライバの運転能力として覚醒度を判定し、復帰判断部により運転能力がないと判断された場合に自動運転モードによる走行を禁止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえ適正な覚醒度が保たれていたとしても、乗車しているドライバの運転技能が劣る場合に、運転モードが自動運転モードから手動運転モードへと移行されると、走行中の車両の運転操作を適切に引き継ぐことが困難な場合がある。従って、このようなドライバに対しては、初めから自動運転モードを許可しない方が、却って安全性を確保する上で好ましい場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、乗車したドライバが自動運転モードでの走行を許可するのに適しているか否かを的確に判断することができる車両の自動運転制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による車両の自動運転制御装置は、運転モードとして、ドライバが自車両の運転操作を手動により行う手動運転モードと、設定された目標走行経路に沿って運転操作を自動により行う自動運転モードと、を選択的に切換可能な車両の自動運転制御装置であって、前記手動運転モードによる走行中の前記ドライバによる運転操作をモニタリングして前記ドライバによる運転技能を評価する運転技能評価手段と、少なくとも前記運転技能評価手段による前記ドライバに対する評価値が予め設定された閾値を超えていることを条件として、前記運転モードを前記自動運転モードに切換可能な状態に制御する運転モード切換手段と、を有し、前記運転技能評価手段は、前記運転モード切換手段により過去設定期間内に同一の前記ドライバについて前記運転モードを前記自動運転モードに切換可能な状態に制御していたときは、前記運転技能の評価を行わないものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の自動運転制御装置によれば、
乗車したドライバが自動運転モードでの走行を許可するのに適しているか否かを的確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】自動運転モードの開始制御ルーチンを示すフローチャート
【
図3】ドライバの技能に基づく自動運転制御モードへの切換許可判定のサブルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図4】ドライバの技能に基づく自動運転制御モードへの切換許可判定のサブルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図5】ドライバの技能に基づく自動運転制御モードへの切換許可判定のサブルーチンを示すフローチャート(その3)
【
図6】ドライバの自車両に対する経験値に基づく自動運転制御モードへの切換許可判定のサブルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図7】ドライバの自車両に対する経験値に基づく自動運転制御モードへの切換許可判定のサブルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図8】運転経験評価値と移行許可時間との関係を示すマップ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら、本発明の一態様の実施形態について詳細に説明する。
図1に示す自動運転制御装置1は、自動車などの車両(自車両)に搭載されている。この自動運転制御装置1は、車外の走行環境を認識するためのセンサユニット(走行環境認識手段)として、ロケータユニット11及びカメラユニット21を有し、これらの両ユニット11,21が互いに依存することのない完全独立の多重系を構成している。また、運転支援装置1は、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下「E/G_ECU」と称す)23と、パワーステアリング制御ユニット(以下「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下「BK_ECU」と称す)25と、を備え、これら各制御ユニット22~25が、ロケータユニット11およびカメラユニット21と共に、CAN(Controller Area Network)などの車内通信回線10を介して接続されている。
【0012】
ロケータユニット11は、道路地図上の自車位置を推定するものであり、自車位置を推定するロケータ演算部12を有している。このロケータ演算部12の入力側には、自車両の前後加速度を検出する前後加速度センサ13、前後左右各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ14、自車両の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサ15、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機16など、自車両の位置(自車位置)を推定するに際し、必要とするセンサ類が接続されている。
【0013】
また、ロケータ演算部12には、記憶手段としての高精度道路地図データベース18が接続されている。高精度道路地図データベース18は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度などを保有している。この車線データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
【0014】
ロケータ演算部12は、自車位置を推定する自車位置推定部12a、地図情報取得部12bを備えている。地図情報取得部12bは、例えばドライバが自動運転に際してセットした目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を高精度道路地図データベース18に格納されている地図情報から取得する。
【0015】
また、地図情報取得部12bは、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ)を自車位置推定部12aへ送信する。自車位置推定部12aは、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づき自車両の位置座標を取得する。また、自車位置推定部12aは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に走行車線を特定し、道路地図データに記憶されている走行車線中央の道路曲率を取得する。
【0016】
さらに、自車位置推定部12aは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機16の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境において、車輪速センサ14で検出した車輪速に基づき求めた車速、ジャイロセンサ15で検出した角速度、前後加速度センサ13で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切換えて、道路地図上の自車位置を推定する。
【0017】
カメラユニット21は、車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21aおよびサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21cおよび走行環境認識部21dを有している。
【0018】
IPU21cは、両カメラ21a,21bで撮像した自車両前方の前方走行環境画像情報を所定に画像処理し、対応する対象の位置のズレ量から求めた距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0019】
走行環境認識部21dは、IPU21cから受信した距離画像情報などに基づき、自車両が走行する進行路(自車進行路)の左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、および左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、および車幅の求め方は種々知られているが、例えば、走行環境認識部21dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、さらに、両区画線間の曲率の差分から車幅を算出する。
【0020】
そして、走行環境認識部21dは、この左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率を求め、さらに、車線中央を基準とする自車両の横位置偏差、正確には、車線中央から自車両の車幅方向中央までの距離である自車横位置偏差Xdiffを算出する。
【0021】
また、走行環境認識部21dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石および立体物の認識を行う。ここで、走行環境認識部21dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度などの認識が行われる。
【0022】
さらに、カメラユニット21は、自車両の左右側後方を撮像するための側後方カメラ21l,21rを有する。これら側後方カメラ21l,21rによって撮像された自車両の側方走行環境画像情報がIPU21cに入力されると、IPU21cは、エッジ検出などの所定の画像処理を行う。さらに、走行環境認識部21dは、IPU21cにおいて検出されたエッジ情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、自車両の側方に存在する並走車や後方に存在する後続車などの立体物の認識を行う。
【0023】
ロケータ演算部12の自車位置推定部12aで推定した自車位置、カメラユニット21の走行環境認識部21dで求めた自車横位置偏差Xdiffおよび立体物情報などは、走行_ECU22で読込まれる。また、走行_ECU22の入力側には、各種スイッチ・センサ類として、ドライバが自動運転(運転支援制御)のオン/オフ切換等を行うモード切換スイッチ33と、ドライバがステアリングを保舵(把持)しているときオンするハンドルタッチセンサ34と、ドライバによる運転操作量としての操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ35と、ドライバによる運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキセンサ36と、ドライバによる運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサ37と、ドライバのドライバシートへの着座状態を検出するドライバ特定手段としての着座センサ38と、ドライバシートに着座したドライバの情報を認識するドライバ特定手段としてのドライバ認識装置39と、が接続されている。
【0024】
ここで、ドライバ認識装置39は、例えば、ドライバシートに着座したドライバを撮像するカメラを有し、撮像した画像を画像処理して顔認証等を行うことによりドライバの認識を行うとともに、認識したドライバの表情の変化や顔の向きの変化等に基づいてドライバの覚醒度や脇見等をモニタリングことが可能となっている。なお、このドライバ認識装置39は、IC免許証に登録された顔写真とカメラによって撮像した画像とを比較することにより、ドライバを認識するように構成しても良い。
【0025】
走行_ECU22には、運転モードとして、手動運転モードと、第1の運転支援モードと、第2の運転支援モードと、退避モードと、が設定されている。
【0026】
ここで、手動運転モードとは、ドライバ100による保舵を必要とする運転モードであり、例えば、ドライバ100によるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両を走行させる運転モードである。
【0027】
また、第1の運転支援モードも同様に、ドライバ100による保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の運転支援モードは、ドライバ100による運転操作を反映しつつ、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御(Adaptive Cruise Control)と、車線維持(Lane Keep Assist)制御および車線逸脱防止(Lane Departure Prevention)制御とを組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両を走行させる、いわば半自動運転モードである。
【0028】
また、第2の運転支援モードとは、ドライバ100による保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御と、車線維持制御および車線逸脱防止制御とを組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両を走行させる自動運転モードである。
【0029】
退避モードは、例えば、第2の運転支援モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の運転支援モードに遷移できなかった場合)に、自車両を路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。
【0030】
このように設定された各運転モードは、モード切換スイッチ33に対する操作状況等に基づき、走行_EUC22において選択的に切換可能となっている。
【0031】
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
【0032】
PS_ECU24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線維持制御、および自車両を隣接車線へ移動させる車線変更制御(追越制御などのための車線変更制御)が実行される。
【0033】
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、強制的に減速される。
【0034】
ところで、自動運転制御装置1においては、例えば、目的地までの途中で走行環境の変化やシステムの失陥等が発生して運転モードが自動運転モード(第2の運転支援モード)から手動運転モードへと移行した場合にも、走行中の自車両に対してドライバが適正な運転操作を行えることが、安全上特に重要となる。
【0035】
このため、本実施形態の自動運転制御装置1において、走行_ECU22は、手動運転モードによる走行時におけるドライバのモニタリングを通じて、予めドライバの適性評価を行い、当該ドライバに適性があると判断した場合にのみ、自動運転モードへの切換が可能な状態とする。
【0036】
具体的には、走行_ECU22は、手動運転モードにおける走行中のドライバによる運転操作を所定範囲の車両の挙動等に基づいてモニタリングし、ドライバの運転技能を評価する。
【0037】
また、車両(車種等)毎に操舵特性や加減速特性等が相違することを考慮し、当該車両に不慣れなドライバが乗車した際には自動運転モードへの移行前に予め運転経験を積ませるため、走行_ECU22は、手動運転モードにおける走行中のドライバをモニタリングし、当該車両に対する運転経験値(慣れ具合)を評価する。
【0038】
そして、走行_ECU22は、少なくとも、ドライバの運転技能が所定以上であると評価した場合に、運転モードを自動運転モードに切り換えることを許容する。このように、本実施形態において、走行_ECU22は、運転技能評価手段、及び、運転モード切換手段としての機能を有する。
【0039】
次に、走行_ECU22において実行される自動運転モード(第2の運転支援モード)の開始制御について、
図2に示す自動運転モードの開始制御ルーチンに従って説明する。
【0040】
このルーチンは設定時間毎に繰り返し実行されるものであり、ルーチンがスタートすると、走行_ESU22は、先ず、ステップS101において、現在、手動運転モードの実行中であるか否かを調べる。
【0041】
そして、走行_ECU22は、現在実行されている運転モードが手動運転モードであると判定した場合にはステップS102に進み、現在実行されている運転モードが手動運転モード以外(すなわち、半自動運転モード(第1の運転支援モード、自動運転モード(第2の運転支援モード、或いは、退避モード)であると判定した場合にはステップS104に進む。
【0042】
ステップS101からステップS102に進むと、走行_ECU22は、手動運転モード時におけるドライバの運転技能に基づき、自動運転モードへの切換を許可するか否かの判定を、例えば、
図3~
図5に示すサブルーチンに従って行う。
【0043】
この判定は、現在乗車しているドライバの手動運転モードによる走行中の運転操作をモニタリングすることでドライバの運転技能を評価し、自動運転モードへの切換を許可するか否かの判定を行うものである。より具体的には、この判定では、現在乗車しているドライバが自車両を手動運転モードによって走行させた際の走行履歴のうち、直近の所定区間における自車両の挙動等に基づいてドライバによる運転操作をモニタリングすることで、当該ドライバの運転技能を評価する。
【0044】
サブルーチンがスタートすると、走行_ECU22は、ステップS201において、ドライバ認識装置39からの情報に基づき、現在ドライバシートに着座しているドライバの情報を取得する。
【0045】
続くステップS202において、走行_ECU22は、過去設定期間内(例えば、1ヶ月以内)に、ステップS201において認識したドライバに対し、運転技能に基づいて自動運転モードへの切換を許可する判定がなされているか否かを調べる。
【0046】
そして、ステップS202において、設定期間内に自動運転モードへの切換を許可する判定がなされていると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS203に進み、自動運転モードへの切換を許可する判定を維持したまま、サブルーチンを抜ける。
【0047】
一方、ステップS202において、設定期間内に自動運転モードへの切換を許可する判定がなされていないと判定した場合、走行_ECU22は、ステップS204に進み、現在自車両が走行中であるか否かを調べる。
【0048】
そして、ステップS204において、現在自車両が走行中である判定した場合、走行_ECU22は、ステップS205に進み、走行履歴に関する情報を更新した後、ステップS206に進む。ここで、走行履歴に関する情報は、例えば、走行_ECU22の記憶媒体等に累積的に蓄積されるものである。この走行履歴に関する情報は、ドライバ毎に取得されるものであり、例えば、自車両が走行した道路情報(道路幅、カーブ曲率、制限速度等)、自車速、加減速度、車線中央に対する自車横位置偏差、ふらつきの有無、横加速度、運転日時、走行場所、及び走行距離等の各種情報が含まれている。
【0049】
一方、ステップS204において、現在自車両が停車中であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS206にジャンプする。
【0050】
ステップS204、或いは、ステップS205からステップS206に進むと、走行_ECU22は、当該ドライバについて蓄積された走行履歴の中から直近の設定距離(例えば、数Km~10Km程度)の走行履歴を抽出する。なお、走行_ECU22は、設定距離に代えて直近の設定時間の走行履歴を抽出するようにしても良い。
【0051】
続くステップS207において、走行_ECU22は、抽出した走行履歴の走行距離が当該ドライバの技量を判定するのに十分な距離であるか否か(すなわち、設定距離分の走行履歴が得られているか否か)を調べる。
【0052】
そして、ステップS207において、抽出した走行履歴の走行距離が不十分であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままサブルーチンを抜ける。
【0053】
一方、ステップS207において、抽出した走行履歴の走行距離が十分であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS208に進み、以下のステップS223までの処理において、ドライバの運転技能を評価するための評価値の基準値を設定する。
【0054】
続くステップS209において、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、制限速度違反が発生しているか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、制限速度を20Km/h以上超過した状態で500m以上走行している場合に、制限速度違反が発生していると判定する。
【0055】
そして、ステップS209において、制限速度違反が発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS210に進み、評価値から、制限速度違反の発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS211に進む。なお、このポイントは、制限速度違反の回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されるものである。
【0056】
一方、ステップS209において、制限速度違反が発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS211に進む。
【0057】
ステップS209、或いは、ステップS210からステップS211に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、急加速が発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、自車両に0.4G以上の加速度が発生している場合に、急加速が発生していると判定する。なお、この加速度の閾値は、例えば、自車走行路の制限速度と道路曲率に基づいて可変に設定することも可能である。
【0058】
そして、ステップS211において、急加速が発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS212に進み、評価値から、急加速の発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS213に進む。なお、このポイントは、急加速が発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0059】
一方、ステップS211において、急加速が発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS213に進む。
【0060】
ステップS211、或いは、ステップS212からステップS213に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、急減速が発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、自車両に0.3G以上の減速度が発生している場合に、減速速が発生していると判定する。なお、この減速度の閾値は、例えば、自車走行路の制限速度と道路曲率に基づいて可変に設定することも可能である。
【0061】
そして、ステップS213において、減速速が発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS214に進み、評価値から、急減速の発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS215に進む。なお、このポイントは、急減速が発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0062】
一方、ステップS213において、急減速が発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS215に進む。
【0063】
ステップS213、或いは、ステップS214からステップS215に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、直線路での横ずれが発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、道路半径R>1000の道路を直線路とみなし、道路幅がWの道路(自車走行路)に対し自車両が道路中心より(1/4W)以上離れた状態にて100m以上走行した場合に横ずれが発生していると判定する。
【0064】
そして、ステップS215において、直進路での横ずれが発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS214に進み、評価値から、直進路での横ずれの発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS217に進む。なお、このポイントは、横ずれが発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0065】
一方、ステップS215において、直進路での横ずれが発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS217に進む。
【0066】
ステップS215、或いは、ステップS216からステップS217に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、カーブでの横ずれが発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、道路半径R≦1000の道路をカーブとみなし、道路幅がWの道路(自車走行路)に対し自車両が道路中心より(1/4W)以上離れた状態にて10m以上走行した場合に横ずれが発生していると判定する。
【0067】
そして、ステップS217において、カーブでの横ずれが発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS218に進み、評価値から、カーブでの横ずれの発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS219に進む。なお、このポイントは、横ずれが発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0068】
一方、ステップS217において、直進路での横ずれが発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS219に進む。
【0069】
ステップS217、或いは、ステップS218からステップS219に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、自車両にふらつきずれが発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、カメラユニット21により撮像した画像に基づき、設定距離走行する間に自車走行路の白線(車線区画線)から3回以上はみだした場合にふらつきが発生していると判定する。
【0070】
そして、ステップS219において、ふらつきが発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS220に進み、評価値から、ふらつきの発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS221に進む。なお、このポイントは、ふらつきが発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0071】
一方、ステップS219において、ふらつきが発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS221に進む。
【0072】
ステップS219、或いは、ステップS220からステップS221に進むと、走行_ECU22は、抽出した走行履歴に基づき、自車両に設定値以上の横加速度が発生したか否かを調べる。具体的には、走行_ECU22は、例えば、自車両に0.1G以上の横加速度が発生した場合に設定値以上の横加速度が発生していると判定する。なお、この横加速度の閾値は、例えば、自車走行路の制限速度と道路曲率に基づいて可変に設定することも可能である。
【0073】
そして、ステップS221において、設定値以上の横加速度が発生していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS222に進み、評価値から、横加速度の発生に対して予め設定されているポイントを減算した後、ステップS223に進む。なお、このポイントは、設定値以上の横加速度が発生した回数が多くなるほど、大きな減算量となるように設定されている。
【0074】
一方、ステップS221において、設定値以上の横加速度が発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままステップS223に進む。
【0075】
ステップS221、或いは、ステップS222からステップS223に進むと、走行_ECU22は、ステップS208からステップS222までの処理により算出した評価値が予め設定された閾値以上であるか否かを調べる。
【0076】
そして、ステップS223において、評価値が閾値以上であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS223に進み、ドライバの運転技能に対する評価に基づき、自動運転モードへの切換を許可する旨の判定を行った後、サブルーチンを抜ける。
【0077】
一方、ステップS223において、評価値が閾値未満であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままサブルーチンを抜ける。
【0078】
図2のメインルーチンにおいて、ステップS102からステップS103に進むと、走行_EUC22は、手動運転モード時におけるドライバの経験値に基づき、自動運転モードへの切換を許可するか否かの判定を、例えば、
図6,7に示すサブルーチンに従って行う。
【0079】
この判定は、現在乗車しているドライバの手動運転モードによる運転操作をモニタリングすることでドライバの運転経験値を評価し、自動運転モードへの切換を許可するか否かの判定を行うものである。より具体的には、この判定では、現在乗車しているドライバが自車両を手動運転モードによって走行させた際の走行履歴に基づき、自車両に対して十分な運転経験を積んでいるか否かの評価を行い、自車両に対する運転経験が不足していると評価した場合には、手動運転モードによる所定時間の運転経験をドライバに積ませた上で、自動運転モードへの切換を可能な状態とする。
【0080】
サブルーチンがスタートすると、走行_ECU22は、ステップS301において、ドライバ認識装置39からの情報に基づき、現在ドライバシートに着座しているドライバの情報を取得する。
【0081】
続くステップS302において、走行_ECU22は、自車両のイグニッションキーがオンされた後において、後述する移行許可時間が既に設定されているか否かを調べる。ここで、移行許可時間とは、自動運転モードへの移行に先立ち、ドライバに自車両に対する手動運転の経験を積ませるための時間であり、自動運転モードへの移行を許可可能な状態とするまでにドライバに対して要求する手動運転モードによる走行時間である。
【0082】
そして、ステップS302において、移行許可時間を設定済みであると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS311に進む。
【0083】
一方、ステップS302において、未だ移行許可時間が設定されていないと判定した場合、走行_ECU22は、ステップS303に進み、自車両に対するドライバの慣れ具合を評価するための運転経験評価値の基準値を設定する。
【0084】
ステップS303からステップS304に進むと、走行_ECU22は、例えば、当該走行_ECU22の記憶媒体等にドライバ毎に累積的に蓄積されている走行履歴(すなわち、上述のステップS205において更新された走行履歴)の中から、ステップS301において認識したドライバの走行履歴を読み出す。
【0085】
ステップS304からステップS305に進むと、走行_ECU22は、ステップS304で読み出した走行履歴から、当該ドライバが手動運転により最後に自車両を運転した日時を調べる。そして、走行_ECU22は、最後に運転した日時に基づき、運転経験評価値の基準値に乗算するための係数k1を算出する。この係数k1は、例えば、最後に運転した日時が近いほど(すなわち、自車両を運転していない空白期間が短いほど)大きくなるように設定される。
【0086】
ステップS305からステップS306に進むと、走行_ECU22は、ステップS304で読み出した走行履歴から、当該ドライバが手動運転により自車両を走行させた走行場所の履歴を調べる。そして、走行_ECU22は、走行場所の履歴に基づき、運転経験評価値の基準値に乗算するための係数k2を算出する。この係数k2は、例えば、過去に同じ走行場所を走行している回数が多いほど、大きくなるように設定される。或いは、係数k2は、例えば、現在地図情報取得部12bに設定されている目的地までのルートを当該ドライバが走行した回数が多いほど、大きくなるように設定することも可能である。
【0087】
ステップS306からステップS307に進むと、走行_ECU22は、ステップS304で読み出した走行履歴から、当該ドライバが手動運転により自車両を走行させた総走行距離を調べる。そして、走行_ECU22は、総走行距離に基づき、運転経験評価値の基準値に乗算するための係数k3を算出する。この係数k3は、例えば、当該ドライバが自車両を走行させた総走行距離が長いほど、大きくなるように設定される。
【0088】
ステップS307からステップS308に進むと、走行_ECUI22は、ステップS304で読み出した走行履歴から、当該ドライバが手動運転により自車両を走行させた際の技能に関する情報を調べる。そして、走行_ECU22は、技能に関する情報に基づき、運転経験評価値の基準値に乗算するための係数k4を算出する。ここで、技能に関する情報としては、例えば、走行中の自車速と道路形状(道路幅、曲率など)から設定されるレーン中心からの横位置ずれ閾値を自車両が超えた回数、及び、走行中の自車速と道路形状(道路幅、曲率など)から設定されるふらつき閾値を自車両が超えた回数等が抽出される。これらの回数が多いほど、当該ドライバは自車両に対して不慣れであると推測できる。従って、係数k4は、自車両が横位置ずれ閾値を超えた回数が多いほど、又、自車両がふらつき閾値を超えた回数が多いほど、小さくなるように設定される。
【0089】
ステップS308からステップS309に進むと、走行_ECU22は、運転経験評価値の基準値に対して係数k1~k4を乗算することにより、運転経験評価値を算出する。
【0090】
ステップS309からステップS310に進むと、走行_ECU22は、算出した運転経験評価値から、自動運転モードへの移行を許可する前に、ドライバに対して手動運転による走行を経験させるための時間である移行許可時間を設定する。この移行許可時間の設定は、例えば、
図8に示すマップ等を参照して行われるものであり、運転経験評価値が大きいほど移行許可時間が短くなるように設定される。ここで、
図8からも明らかな通り、例えば、自車両を毎日運転しており自車両の運転に慣れ親しんでいるドライバ等のように、運転経験評価値が高いドライバに対しては、移行許可時間が「0」に設定される場合がある。
【0091】
ステップS302或いはステップS310からステップS311に進むと、走行_ECU22は、現在自車両が走行中であるか否かを調べる。
【0092】
そして、ステップS311において、現在自車両が走行中である判定した場合、走行_ECU22は、ステップS312に進み、イグニッションスイッチがオンされてから現在までに当該ドライバが手動運転により自車両を走行させた時間を示す連続走行時間を更新した後、ステップS313に進む。ここで、例えば、連続走行時間のカウントは、ドライバ認識装置39による認識結果に基づいて同一のドライバが手動運転による走行を行っているか否かの判断を行った上で行われる。或いは、ドライバを一旦認識した後は、着座センサ38からの出力信号に基づいて同一のドライバが手動運転による走行を行っているか否かを判定することも可能である。但し、ドライバがサービスエリア等において休憩した場合等に連続走行時間がクリアされることを防止するため、ドライバが一旦降車した場合にも、同一ドライバが設定時間以内(例えば、1時間以内)に再びドライバシートに着座した場合には連続走行時間のカウントを継続するように構成してもよい。
【0093】
一方、ステップS311において、現在自車両が停車中であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS313にジャンプする。
【0094】
ステップS311或いはステップS312からステップS313に進むと、走行_ECU22は、連続走行時間が移行許可時間以上となったか否かを調べる。
【0095】
そして、ステップS313において、連続走行時間が移行許可時間以上であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS314に進み、ドライバの自車両に対する経験値に対する評価に基づき、自動運転モードへの切換を許可する旨の判定を行った後、サブルーチンを抜ける。
【0096】
一方、ステップS313において、連続走行時間が移行許可時間未満であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままサブルーチンを抜ける。
【0097】
図2のメインルーチンにおいて、ステップS101或いはステップS103からステップS104に進むと、走行_ECU22は、ステップS102で行われた技能に基づく切換許可判定の結果、及び、ステップS103で行われた運転経験値に基づく切換許可判定の結果が、ともに肯定的な判定結果であったか否かを調べる。
【0098】
そして、ステップS104において、技能に基づく切換許可判定の結果、或いは、運転経験値に基づく切換許可判定の結果のうちの少なくとも何れか一方が否定的な判定結果であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
【0099】
一方、ステップS104において、技能に基づく切換許可判定の結果、及び、運転経験値に基づく切換許可判定の結果の何れもが肯定的な判定結果であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS105に進み、現在既に、自動運転モードが実行中であるか否かを調べる。
【0100】
そして、ステップS105において、現在自動運転モードの実行中であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
【0101】
一方、ステップS105において、現在自動運転モードの実行中ではないと判定した場合(すなわち、手動運転モード、半自動運転モード(第1の運転支援モード)、或いは、退避モードであると判定した場合)、走行_ECU22は、ステップS106に進み、ロケータユニット11及びカメラユニット21により認識した走行環境が自動運転モードに適合した走行環境として成立しているか否かを調べる。
【0102】
そして、ステップS106において、走行環境が自動運転モードに適合した走行環境でないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
【0103】
一方、ステップS106において、走行環境が自動運転モードに適合した走行環境として成立していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS107に進み、自動運転制御装置1のシステム条件が成立しているか否かを調べる。
【0104】
そして、ステップS107において、システム条件が不成立であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
【0105】
一方、ステップS107において、システム条件が成立していると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS108に進み、モード切換スイッチ33において自動運転モードが選択されているか否かを調べる。
【0106】
そして、ステップS108において、自動運転モードが選択されていないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
【0107】
一方、ステップS108において、自動運転モードが選択されていると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS109に進み、現在の運転モードからのモード切換により自動運転モードを開始した後、ルーチンを抜ける。
【0108】
このような実施形態によれば、走行_ECU22は、手動運転モードにより走行中のドライバによる運転操作をモニタリングしてドライバによる運転技能を評価し、少なくとも、運転技能の評価値が予め設定された閾値を超えていることを条件として、運転モードを自動運転モードに切換可能な状態とすることにより、乗車したドライバが自動運転モードでの走行を許可するのに適しているか否かを的確に判断することができる。
【0109】
また、走行_ECU22は、ドライバの手動運転モードによる走行履歴に基づいて自車両に対するドライバの運転経験値を評価するとともに、評価した運転経験値に基づいて手動運転モードから自動運転モードへの移行を許可するまでの移行許可時間を設定し、少なくとも、ドライバによる手動運転モードでの運転時間が移行許可時間を超えていることを条件として、運転モードを自動運転モードに切換可能な状態に制御することにより、乗車したドライバが自動運転モードでの走行を許可するのに適しているか否かを的確に判断することができる。
【0110】
そして、乗車したドライバが自動運転モードでの走行を許可するのに適していない場合には自動運転モードへの切換を許可可能な状態に制御しないことにより、目的地までの途中において、走行中の自車両の運転モードが自動運転モードから手動運転モードへと切り換えられることを防止することができ、安全性を確保することができる。
【0111】
なお、自動運転制御装置1を構成するロケータユニット11、カメラユニット21、及び、各ECU22~26は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAMなどの記憶装置などを含むプロセッサを有している。また、プロセッサの複数の回路の全て若しくは一部の構成は、ソフトウェアで実行してもよい。例えば、ROMに格納された各機能に対応する各種プログラムをCPUが読み出して実行するようにしてもよい。
【0112】
さらに、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0113】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0114】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0115】
1 … 自動運転制御装置
10 … 車内通信回線
11 … ロケータユニット
12 … ロケータ演算部
12a … 自車位置推定部
13 … 前後加速度センサ
14 … 車輪速センサ
15 … ジャイロセンサ
16 … GNSS受信機
21 … カメラユニット
21a … メインカメラ
21b … サブカメラ
21c … IPU
21d … 走行環境認識部
21l … 側後方カメラ
21r … 側後方カメラ
22 … 走行制御ユニット(走行_ECU)
23 … エンジン制御ユニット(E/G_ECU)
24 … パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)
25 … ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)
27 … スロットルアクチュエータ
28 … 電動パワステモータ
29 … ブレーキアクチュエータ
33 … モード切換スイッチ
34 … ハンドルタッチセンサ
35 … 操舵トルクセンサ
36 … ブレーキセンサ
37 … アクセルセンサ
38 … 着座センサ
39 … ドライバ認識装置