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特許7402008傷病名推論システム、傷病名推論方法、傷病名推論プログラム、及びデータ構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】傷病名推論システム、傷病名推論方法、傷病名推論プログラム、及びデータ構造
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20231213BHJP
【FI】
G16H20/10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019186247
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060932
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-05-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.[発行者名] 株式会社イーエムシステムズ [刊行物名] 薬局向け業務支援ンステム「MAPs for PHARMACY」記者会見のご案内 [発行日] 平成31年4月16日 2.[集会名] 「MAPs for PHARMACY」発表記者会見 [開催場所] 東京都千代田区神田錦町3-6 共同ビル2F 株式会社イーエムシステムズプレゼンテーションルーム [開催日] 令和元年5月15日 3.[発行者名] 株式会社薬事日報社 [刊行物名] 薬事日報第8面 [発行日] 令和元年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】599020519
【氏名又は名称】株式会社イーエムシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120053
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】國光 宏昌
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-141063(JP,A)
【文献】特開2018-124702(JP,A)
【文献】特開2020-095518(JP,A)
【文献】特開2019-121390(JP,A)
【文献】特開2014-063396(JP,A)
【文献】特開2004-185196(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130495(WO,A1)
【文献】特開2009-076102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムであって、
前記プロセッサは、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬の用法の処方日数、処方回数、及び診療日の少なくとも1つを複数のグループに分類することにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の処方箋データから前記傷病名を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする傷病名推論システム。
【請求項2】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムであって、
前記プロセッサは、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、診療日を季節、四半期、月、及び曜日の少なくとも1つに分類するデータを用いることにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の処方箋データから前記傷病名を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする傷病名推論システム。
【請求項3】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムであって、
前記プロセッサは、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、所定の基準診療科名が診療科名と部分一致する場合に、一致する部分ごとに診療科名を設定することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の処方箋データから前記傷病名を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする傷病名推論システム。
【請求項4】
プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムであって、
前記プロセッサは、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬のデータとして医薬品コードを用い、前記医薬品コードの一部を抽出することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、
前記学習済みモデルに入力された推論用の処方箋データから前記傷病名を推論する推論部と、
を備えることを特徴とする傷病名推論システム。
【請求項5】
前記機械学習部は、前記処方薬に加えて、前記処方薬の効能、効果、用法、用量、処方種別、診療日、及び診療科名の少なくとも1つと前記傷病名データとが関連付けられた前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項6】
前記機械学習部は、患者の属性データを含む前記処方箋データと前記傷病名データとを関連付けることにより拡張された前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成し、
前記推論部は、推論用の患者の属性データを含む前記推論用の処方箋データを前記学習済みモデルに入力することにより前記傷病名を推論することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項7】
前記機械学習部は、前記患者の年齢、性別、体重、妊娠の有無、既往症、副作用歴、アレルギー歴、併用薬、生活習慣、嗜好、及び家族既往歴の少なくとも1つを含む前記属性データを前記傷病名データと関連付けることにより拡張された前記学習用データに基づいて、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項6に記載の傷病名推論システム。
【請求項8】
前記機械学習部は、前記処方箋データが前記傷病名データ又は他の前記処方箋データと矛盾する場合又は前記矛盾を規定する所定の条件を満たす場合に、前記処方箋データ又は前記傷病名データを前記学習用データとして用いずに、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項9】
前記機械学習部は、前記処方箋データのグループが前記傷病名データ、前記処方薬、前記処方薬の効能、効果、用法、用量、及び処方種別の少なくとも1つと矛盾する場合又は前記矛盾を規定する所定の条件を満たす場合に、前記処方箋データ又は前記傷病名データを前記学習用データに用いずに、前記機械学習により前記学習済みモデルを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項10】
前記機械学習部は、前記処方箋データを入力層として前記傷病名データを出力層とするニューラルネットワークにより前記学習済みモデルを生成する請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項11】
前記推論部は、推論された前記傷病名が、前記学習済みモデルに入力された前記処方箋データの患者の属性データと矛盾する場合又は前記矛盾を規定する所定の条件を満たす場合に、矛盾する前記傷病名を推論結果から除外することを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の傷病名推論システム。
【請求項12】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論する傷病名推論方法であって、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬の用法の処方日数、処方回数、及び診療日の少なくとも1つを複数のグループに分類することにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成するステップと、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論するステップと、
を備えることを特徴とする傷病名推論方法。
【請求項13】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論する傷病名推論方法であって、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、診療日を季節、四半期、月、及び曜日の少なくとも1つに分類するデータを用いることにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成するステップと、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論するステップと、
を備えることを特徴とする傷病名推論方法。
【請求項14】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論する傷病名推論方法であって、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、所定の基準診療科名が診療科名と部分一致する場合に、一致する部分ごとに診療科名を設定することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成するステップと、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論するステップと、
を備えることを特徴とする傷病名推論方法。
【請求項15】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論する傷病名推論方法であって、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬のデータとして医薬品コードを用い、前記医薬品コードの一部を抽出することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成するステップと、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論するステップと、
を備えることを特徴とする傷病名推論方法。
【請求項16】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論するコンピュータで実行される傷病名推論プログラムであって、
前記コンピュータが、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬の用法の処方日数、処方回数、及び診療日の少なくとも1つを複数のグループに分類することにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習機能と、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論する推論機能と、
を実現させることを特徴とする傷病名推論プログラム。
【請求項17】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論するコンピュータで実行される傷病名推論プログラムであって、
前記コンピュータが、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、診療日を季節、四半期、月、及び曜日の少なくとも1つに分類するデータを用いることにより拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習機能と、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論する推論機能と、
を実現させることを特徴とする傷病名推論プログラム。
【請求項18】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論するコンピュータで実行される傷病名推論プログラムであって、
前記コンピュータが、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、所定の基準診療科名が診療科名と部分一致する場合に、一致する部分ごとに診療科名を設定することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習機能と、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論する推論機能と、
を実現させることを特徴とする傷病名推論プログラム。
【請求項19】
プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムを用いて傷病名を推論するコンピュータで実行される傷病名推論プログラムであって、
前記コンピュータが、
処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられ、前記処方薬のデータとして医薬品コードを用い、前記医薬品コードの一部を抽出することにより、複数のグループに分類することで拡張された学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習機能と、
前記学習済みモデルに入力された処方箋データから前記傷病名を推論する推論機能と、
を実現させることを特徴とする傷病名推論プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傷病名推論システム、傷病名推論方法、及び傷病名推論プログラムに関し、特に、機械学習により処方箋データから傷病名を推論する傷病名推論システム、傷病名推論方法、傷病名推論プログラム、及びデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
病院やクリニックで診療を受けた患者は、病院やクリニックから発行された処方箋を薬局に持参し、処方箋に基づいて薬剤を受け取り、用法用量についての説明や服薬指導を薬剤師から受ける。
【0003】
しかしながら、病院やクリニックが発行する処方箋には傷病名が記載されておらず、患者の傷病に応じた適切な服薬指導を行うことが困難であった。例えば、薬剤に副作用がある場合、傷病によって副作用の説明が異なり、用法用量に関する注意事項も異なるが、処方箋からでは傷病名を把握することができず、適切な服薬指導を行うことが困難であった。
【0004】
このような課題に鑑み、処方データベースと、薬剤データベースと、傷病データベースとが互いに関連付けて検索可能である病態推測データベースが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開第2004-185196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される病態推測データベースでは、互いに関連付けられているデータベースから検索できるにすぎず、処方箋データから傷病名を高精度で推論することはできない。例えば、複数の薬剤が処方されている場合、それぞれの薬剤ごとに照合が行われるため、複数の薬剤を総合的に考慮して傷病名を高精度で推論することはできない。
【0007】
また、特許文献1に示される病態推測データベースでは、患者ごとの体質や病歴、薬歴等を記憶した患者情報データベースを格納することにより、その患者に対して服薬指導を行うことができるが、投薬条件テーブルで、投薬される患者の症状の程度が表示されるだけであり、患者の体質等から傷病名を推論することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の傷病名推論システムは、プロセッサと記憶装置を含み、前記プロセッサが傷病名を推論する傷病名推論システムであって、前記プロセッサは、処方箋データの処方薬と傷病名データとが関連付けられた学習用データに基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成する機械学習部と、前記学習済みモデルに入力された推論用の処方箋データから前記傷病名を推論する推論部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械学習により処方箋データから傷病名を総合的に推論するため、傷病名を高精度で推論することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の傷病名推論システムのシステム構成の例を示すブロック図である。
図2】本実施形態の人工知能サーバのシステム構成の例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の学習用データベースサーバのシステム構成の例を示すブロック図である。
図4】学習用データとして格納されるデータの例を示す図である。
図5】処方箋データの少なくとの1つを複数のグループに分類することにより拡張された学習用データについて説明する図である。
図6】本実施形態の傷病名推論方法の例を示すフローチャートである。
図7】各種データの取得及び前処理、並びに学習済みモデルの生成及び格納の動作の例を示すシーケンス図である。
図8】学習済みモデルによる推論及び推論結果の決定の動作の例を示すシーケンス図である。
図9】コンピュータのディスプレイに表示された推論結果の第1の例を示す図である。
図10】コンピュータのディスプレイに表示された推論結果の第2の例を示す図である。
図11】コンピュータのディスプレイに表示された推論結果の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の傷病名推論システムについて、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の傷病名推論システムのシステム構成の例を示すブロック図である。傷病名推論システム1は、傷病名を推論する。
【0012】
図1に示すように、傷病名推論システム1は、ネットワーク2を介して電気的に接続され、相互に通信可能な人工知能サーバ3、学習用データベースサーバ4、及びコンピュータ(PC)5を備える。
【0013】
図2は、本実施形態の人工知能サーバのシステム構成の例を示すブロック図である。図2に示すように、人工知能サーバ3は、プロセッサ21、記憶装置(例えば、ROMやRAMやHDD等)22、入力装置23、インターフェース24、及び出力装置25を備える。
【0014】
プロセッサ21は、CPUやMPUやGPU等の制御装置であり、データ取得部32、機械学習部34、学習済みモデル格納部35、及び推論部36を備える。データ取得部32、前処理部33、機械学習部34、学習済みモデル格納部35、及び推論部36はバス(図示せず)により電気的に接続され、相互に通信可能である。
【0015】
図3は、本実施形態の学習用データベースサーバのシステム構成の例を示すブロック図である。図3に示すように、学習用データベースサーバ4は、プロセッサ37、学習用データベース41、記憶装置(例えば、ROMやRAMやHDD等)42、入力装置43、インターフェース44、及び出力装置45を備える。プロセッサ37は、CPUやMPUやGPU等の制御装置であり、データ格納部38、データ取得部39、及び前処理部40を備える。学習用データベース41は、カルテデータ46、処方箋データ48、及び学習用データ80を含む。
【0016】
カルテデータ46は、病院やクリニックから取得されたカルテデータであり、処方箋を発行された患者の傷病名データ47を含み、傷病名と処方薬と患者属性(氏名や保険者番号や被保険者証の記号・番号等)のデータ(図示せず)を含む。処方箋データ48は、処方薬と患者の属性データ(氏名や保険者番号や被保険者証の記号・番号等)49とを含む。カルテデータ46の患者属性と処方箋データ48の患者の属性データ49を関連付けることにより、傷病名ごと又は処方箋ごとに傷病名データ47と処方箋データ48とが関連付けられる。関連付けられた傷病名データ47と処方箋データ48とが、学習用データ80として、学習用データベース41に格納される。学習用データ80は、人工知能サーバ3の機械学習部34の機械学習に用いられるデータである。
【0017】
なお、図3では、カルテデータ46及び処方箋データ48には、処方薬の薬剤データ(薬剤名や薬剤コード)が含まれるが、カルテデータ46及び処方箋データ48が薬剤データを含む代わりに、カルテデータ46及び処方箋データ48とは別に薬剤データが学習用データベース41に格納されて、当該薬剤データがカルテデータ46及び処方箋データ48とそれぞれ関連付けられてもよい。また、処方箋データ48には、処方される薬剤の効能/効果データが含まれるが、処方箋データ48が効能/効果データを含む代わりに、処方箋データ48とは別に効能/効果データが学習用データベース41に格納されて、当該効能/効果データが処方箋データ48の薬剤データ又は処方箋データ48とは別の薬剤データと関連付けられてもよい。
【0018】
図4は、学習用データ80として格納されるデータの例を示す図である。図4に示すように、傷病名データ47及び処方箋データ48が患者や処方箋等を特定するID50(患者の氏名や保険者番号や被保険者証の記号・番号等)で関連付けられている。データ取得部39が、傷病名データ47及び処方箋データ48を取得する。前処理部40が、カルテデータ46の患者の氏名や保険者番号や被保険者証の記号・番号等のIDに基づいて傷病名データ47と処方箋データ48とを関連付ける。関連付けられたデータは、学習用データ80として学習用データベース41に格納される。
【0019】
カルテデータ46の傷病名データ47に基づいて、傷病名データ51が学習用データ80として格納される。処方箋データ48に基づいて、薬剤名(薬名)52、薬剤コード53、効能/効果54、用法/用量55、診療日56、診療科57、及び患者属性58が学習用データ80として格納される。このように、傷病名ごと又は処方箋ごとに、患者の属性データ(患者属性)58を含む処方箋データ52~58と傷病名データ51とが関連付けられて、学習用データ80が生成される。
【0020】
図4では、ID50が「1」の学習用データ80について、複数の処方薬(薬剤名(薬名)52又は薬剤コード53)に傷病名データ51「高コレステロール血症」が関連付けられている。これは、1つの処方箋に複数の処方薬が含まれている例である。
【0021】
用法/用量55の用法には、処方薬の処方日数(服薬日数)、処方回数(服薬回数)、服薬時点(食前、食後、及び食間等)、投与経路/部位(右眼に点眼、患部に塗布等)、及び投与量等がデータとして格納されており、用量には、1日分、1回分、もしくは1日分の投与量と、1日の投与回数がデータとして格納されている。
【0022】
本実施形態では、用法/用量55として、処方薬の処方日数、処方回数、及び処方種別が格納される。例えば、処方種別は、内滴、内服、浸煎、湯、頓服、外用、注射、自費、及び器材等に分類される。
【0023】
患者属性58として、患者の年齢、性別、体重、妊娠の有無、既往症、副作用歴、アレルギー歴、併用薬、生活習慣、嗜好、及び家族既往歴が格納される。このように、患者の年齢、性別、体重、妊娠の有無、既往症、副作用歴、アレルギー歴、併用薬、生活習慣、嗜好、及び家族既往歴の少なくとも1つを含む属性データ(患者属性)58を傷病名データ51と関連付けることにより、学習用データ80が拡張される。
【0024】
図5は、処方箋データ52~58の少なくとの1つを複数のグループに分類することにより拡張された学習用データ80について説明する図である。
【0025】
図5(a)に示すように、属性データ(患者属性)58の年齢64を複数のグループ(新生児65、乳幼児66、小児67、高齢68)に分類することにより、学習用データ80が拡張される。また、体重を複数のグループに分類してもよい。また、生活習慣(飲酒や喫煙の頻度及び睡眠時間等)を複数のグループに分類してもよい。このように、属性データ(患者属性)58を複数のグループに分類することにより、学習用データ80が拡張される。
【0026】
図5(b)に示すように、処方日数70を複数のグループ(適用なし=2、急性=1、及び慢性=0)に分類することにより、学習用データ80が拡張される。処方種別に頓服や注射等を表すデータが格納されている場合や用法に処方日数(服薬日数)を表すデータが格納されていない場合は、「適用なし」を表すデータ「0」が格納される。また、用法に処方日数(服薬日数)を表すデータが格納されており、処方日数(服薬日数)が所定の日数(例えば、14日)未満であれば、「急性」を表すデータ「1」が格納され、所定の日数(例えば、14日)以上であれば、「慢性」を表すデータ「2」が格納される。所定の日数は、処方薬等に応じて変動可能である。また、処方回数を複数のグループに分類することにより、学習用データ80が拡張されてもよい。
【0027】
図5(c)に示すように、診療日56を複数のグループ(季節又は四半期61、月62、及び曜日63)に分類することにより、学習用データ80が拡張される。診療日56を季節、四半期、月、及び曜日の少なくとも1つに分類するデータを用いることにより、学習用データ80が拡張される。
【0028】
図5(d)に示すように、診療科57を複数のグループ(複数の診療区分69)に分類することにより、学習用データ80が拡張される。所定の基準診療科名が診療科57の診療科名と部分一致する場合に、一致する部分ごとに診療科名を設定することにより、複数のグループに分類することで、学習用データ80が拡張される。基準診療科名は、厚生労働省の診療科区分から「科」を除いたものが用いられてもよいし、データベース化された他の診療科区分が用いられてもよい。厚生労働省の診療科区分としては、内(科)、整形外(科)、眼(科)心療内(科)形成外(科)、耳鼻咽喉(科)、及び精神(科)等の診療科区分がある。例えば、図5(d)に示すように、診療科57が「神経内科」である場合は、基準診療科名「内(科)」と「精神(科)」が「神経内科」と部分一致するため、「神経内科」は複数のグループ「内科」と「精神科」に分類され、診療区分69には、「内科」と「精神科」を表すデータが格納される。
【0029】
また、処方薬のデータとして医薬品コードを用い、医薬品コードの一部を抽出することにより、複数のグループに分類することで、学習用データ80が拡張されてもよい。医薬品コードとして、薬価基準収載医薬品コード又はYJコードが用いられてもよい。YJコードを用いる場合、YJコードを上1桁、上2桁、上3桁、上4桁、上5~7桁目、上8桁目、及び上9桁に分類することにより、学習用データ80が拡張されてもよい。例えば、ロキソプロフェンナトリウム水和物錠の60mg/1錠のYJコードは、「1149019F1242」であるので、「1」、「11」、「114」、「1149」、「019」、「F」、及び「1149019F1」に分類されることにより、学習用データ80が拡張される。
【0030】
このように、処方箋データ52~58を複数のグループに分類することにより、学習用データ80が拡張される。
【0031】
図6は、本実施形態の傷病名推論方法の例を示すフローチャートである。図7及び図8は、本実施形態の傷病名推論プログラムにより実行される動作の例を示すシーケンス図である。図7は、各種データの取得及び前処理、並びに学習済みモデルの生成及び格納の動作の例を示すシーケンス図である。図8は、学習済みモデルによる推論及び推論結果の決定の動作の例を示すシーケンス図である。傷病名推論プログラムは記録媒体に搭載されてもよい。
【0032】
図6及び図7に示すように、ステップS1において、コンピュータ5のプロセッサ(図示せず)が、各種データの格納命令を学習用データベースサーバ4へ送信し(110)、学習用データベースサーバ4のデータ格納部38は、各種データの格納命令を実行し(111)、コンピュータ5又は入力装置43から入力された各種データを学習用データベース41に格納する。格納される各種データには、カルテデータ46、傷病名データ47、処方箋データ48、及び属性データ49が含まれる。
【0033】
コンピュータ5のプロセッサが、各種データの取得命令及び前処理命令を学習用データベースサーバ4へ送信する(112)。ステップS2において、学習用データベースサーバ4のデータ取得部39は、各種データの取得命令を実行し(113)、各種データを学習用データベース41から取得する。ステップS3において、学習用データベースサーバ4の前処理部40は、各種データの関連付け命令を実行し(113)、傷病名データ47と処方箋データ48とを学習用データ80として関連付ける。
【0034】
ステップS4において、データ格納部38が、学習用データ80の格納命令を実行し(115)、学習用データ80を学習用データベース41に格納する。また、前処理部40が、学習用データ80の拡張命令を実行し(115)、学習用データ80を拡張する。前処理部40が、患者の属性データ(患者属性)58と処方箋データ52~57とを関連付けることにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、患者の年齢、性別、体重、妊娠の有無、既往症、副作用歴、アレルギー歴、併用薬、生活習慣、嗜好、及び家族既往歴の少なくとも1つを含む属性データ(患者属性)58を処方箋データ52~57と関連付けることにより、学習用データ80をデータ拡張する。
【0035】
また、前処理部40が、処方箋データ52~57及び属性データ(患者属性)58の少なくとの1つを複数のグループに分類することにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、処方薬に加えて、処方薬の効能、効果、用法、用量、処方種別、診療日、診療科名、及び患者の属性データの少なくとも1つを分類することにより、学習用データ80をデータ拡張する。例えば、前処理部40が、属性データ(患者属性)58の年齢64を複数のグループ(新生児65、乳幼児66、小児67、高齢68)に分類することにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、処方日数70を複数のグループ(適用なし=2、急性=1、及び慢性=0)に分類することにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、診療日56を季節、四半期、月、及び曜日の少なくとも1つに分類するデータを用いることにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、診療科57を複数のグループ(複数の診療区分69)に分類することにより、学習用データ80をデータ拡張する。前処理部40が、処方薬のデータとして医薬品コードを用い、医薬品コードの一部を抽出することにより、学習用データ80をデータ拡張する。
【0036】
ステップS5において、前処理部40が、学習用データ80のフィルタ処理命令を実行し(116)、ID50ごとにフィルタ処理を行う。前処理部40は、処方箋データ52~58が傷病名データ51又は他の処方箋データ52~58と矛盾する場合又は所定の条件を満たす場合に、そのID50の傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除くことにより、フィルタ処理を行う。なお、前処理部40は、矛盾するデータ部分のみを除外してもよい。この結果、傷病名を高精度で推論することができる。
【0037】
前処理部40は、処方箋データ52~58のグループが傷病名データ、処方薬、処方薬の効能、効果、用法、用量、及び処方種別の少なくとも1つと矛盾する場合又は所定の条件を満たす場合に、そのID50の傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除くことにより、フィルタ処理を行う。
【0038】
属性データ(患者属性)58の年齢64が複数のグループ(新生児65、乳幼児66、小児67、高齢68)に分類されて、学習用データ80がデータ拡張されており、分類が、傷病名データ51、効能/効果54、及び用法/用量55の少なくとの1つと矛盾する場合又は所定の条件を満たす場合に、前処理部40は、傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除く。例えば、所定のID50の年齢64では新生児65に分類されているが、効能/効果54には妊婦に関する傷病名データ51が含まれている場合、前処理部40は、そのID50の処方箋データの効能/効果54から妊婦に関する傷病名データ51を除外する。
【0039】
また、処方日数70が複数のグループ(適用なし=2、急性=1、及び慢性=0)に分類されて、学習用データ80がデータ拡張されており、分類が、傷病名データ51、効能/効果54、及び用法/用量55の少なくとの1つと矛盾する場合又は所定の条件を満たす場合に、前処理部40は、そのID50の傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除く。例えば、所定のID50の処方日数70では「慢性=0」に分類されているが、傷病名データ51には「急性胃炎」のように「急性」の文字列データが含まれている場合、前処理部40は、そのID50の処方日数70の分類データを除外する。
【0040】
また、性別が複数のグループ(男=1及び女=2)に分類されて、学習用データ80がデータ拡張されており、分類が、傷病名データ47、効能/効果54、及び用法/用量55の少なくとの1つと矛盾する場合又は所定の条件を満たす場合に、前処理部40は、そのID50の傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除く。例えば、所定のID50の性別では「女=2」に分類されているが、効能/効果54には前立腺に関する傷病名のデータが含まれている場合、前処理部40は、そのID50の効能/効果54から前立腺に関する傷病名データ51を除外する。
【0041】
また、薬剤名又は薬剤コードに対して傷病名データに所定の条件を満たす文字列が含まれている場合に、前処理部40は、そのID50の傷病名データ51又は処方箋データ52~58を学習用データ80から除く。例えば、鎮痛薬による胃の荒れを予防する目的で処方される胃薬に対して、傷病名データに「慢性胃炎」の文字列が含まれている場合、処方の目的が傷病名と異なるため、前処理部40は、鎮痛薬と胃薬が組み合わされて処方されていることを判断し、そのID50の傷病名データ51から「慢性胃炎」の文字列を含む傷病名のデータを除外する。
【0042】
このように、不適切なデータの組み合わせを除外して機械学習を行うことにより、傷病名を高精度で推論することができる。矛盾するデータの組み合わせは、傷病名データ47又は処方箋データ48に基づいて自動的に生成されてもよいし、予め作成されたデータベースとして学習用データベース41に格納されてもよい。
【0043】
ステップS6において、学習済みモデルが生成される。コンピュータ5のプロセッサは、機械学習によるモデル生成命令を人工知能サーバ3へ送信する(120)。人工知能サーバ3のデータ取得部32は、インターフェース24を介して、学習用データ80の取得命令を学習用データベースサーバ4へ送信し(121)、学習用データベースサーバ4は、学習用データ80の送信命令を実行し、学習用データベース41に格納された学習用データ80を、インターフェース44を介して、人工知能サーバ3へ送信する(122)。データ取得部32は、学習用データベース41から学習用データ80を取得し、機械学習部34は、傷病名データ47と処方箋データ48とが関連付けられた学習用データ(拡張された学習用データを含む)80に基づいて、機械学習による学習済みモデルの生成/格納命令を実行する(123)。
【0044】
機械学習部34は、処方箋データ52~58を入力層に入力し、傷病名データ51を出力層の正解値として入力するニューラルネットワークにより学習済みモデルを生成する。ニューラルネットワークの中間層には、Affine層又はConvolution層が設けられる。適宜、ダウンサンプリング処理等が行われてもよい。また、中間層の層数、ニューロン数、及び活性化関数は、推論結果が高精度となるように、最適なものが選択される。ニューラルネットワークとして、Feed Forward Neural Network(FFNN)やRecurrent Neural Network(RNN)等が用いられる。機械学習部34は、乱数等の所定の値で初期化されたパラメータ(重み)を用いて、処方箋データ52~58が入力層に入力された際に出力層に出力された値と出力層の正解値(傷病名データ51)との乖離を表すロス関数を算出し、ロス関数の微分値を勾配として、出力層に出力された値と出力層の正解値との乖離が小さくなるように、パラメータ(重み)を変化させることで、学習済みモデルを生成する。
【0045】
薬剤は傷病に応じて処方されるので、処方箋データ52,53の処方薬と傷病名は一定の関係性がある。したがって、処方薬を学習用データとして傷病名を推論する学習済みモデルを生成することにより、傷病名を高精度に推論することができる。特に、1つの処方箋に複数の薬剤が処方されている場合、複数の処方薬の組み合わせを機械学習すれば、より高精度に傷病名を推論することができる。つまり、学習データ80は、少なくとも複数の薬剤名52又は複数の薬剤コード53が傷病名データ47と関連付けられていればよい。
【0046】
また、薬剤の適応症は処方薬の効能や効果によって定められており、処方薬の用法や用量等は傷病や症状に応じて変化するため、処方箋データ54~57の効能、効果、用法、用量、処方種別、診療日、及び診療科名と傷病名は一定の関係性がある。例えば、同じ抗生剤であっても、眼科で処方される場合は麦粒腫の可能性が高く、婦人科で処方される場合は膀胱炎である可能性が高くなる。
【0047】
また、季節性のある傷病があったり(例えば、インフルエンザは1月~2月に流行する)、傷病に応じて患者の行動特性に影響を与える場合があったりするため、診療日56と傷病名は一定の関係性がある。したがって、処方薬に加えて、処方薬の効能、効果、用法、用量、処方種別、診療日、及び診療科名の少なくとも1つを含む処方箋データを学習用データ80として、傷病名を推論する学習済みモデルを生成することにより、傷病名を総合的に高精度で推論することができる。
【0048】
さらに、同じ処方薬であっても、患者の年齢、性別、体重、妊娠の有無、既往症、副作用歴、アレルギー歴、併用薬、生活習慣、嗜好、及び家族既往歴等の患者の属性データに応じて傷病名が異なる場合がある。したがって、処方薬に加えて、患者の属性データ58を学習用データ80として、傷病名を推論する学習済みモデルを生成することにより、傷病名を高精度で推論することができる。
【0049】
ステップS7において、学習済みモデル格納部35は、学習済みモデルの格納命令を実行することにより、生成された学習済みモデルを記憶装置22に記憶させる(123)。
【0050】
ステップS8において、傷病名を推論するステップに進む場合は、ステップS9に進み、傷病名を推論するステップに進まない場合は処理を終了する。
【0051】
図6及び図8に示すように、ステップS9において、コンピュータ5のプロセッサは、入力装置23により推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)を入力し、推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)を人工知能サーバ3へ送信する(129)。そして、コンピュータ5のプロセッサは、傷病名の推論命令を人工知能サーバ3へ送信する(130)。
【0052】
ステップ10において、推論部36は、データチェック命令を実行し、コンピュータ5から送信された推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)のデータフォーマットを確認し、正しいデータフォーマットであるか否かを判定する(131)。誤ったデータフォーマットである場合は、推論部36は、その旨を示すデータをコンピュータ5へ送信する。
【0053】
正しいデータフォーマットである場合は、ステップS11において、推論部36は、データ前処理命令を実行し、推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)を学習時のエンコード方針に従ってエンコードする(131)。学習時に用いられていない値が推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)に含まれている場合は、推論部36は、その値を除外するか、所定の条件に従って所定の値を割り当てる。例えば、学習用データ80の患者の年齢64の上限が「100歳」であり、推論用の患者の年齢が「103歳」であった場合、推論部36は、推論用の処方箋データから「103歳」の年齢データを除外するか、学習用データ80の上限である「100歳」を「103歳」の代わりに割り当てる。
【0054】
ステップS12において、推論部36は、推論命令を実行し、記憶装置22に記憶された学習済みモデルを読み出し、推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)を学習済みモデルに入力し、学習済みモデルに入力された処方箋データ(患者の属性データを含む)から傷病名を推論する(132)。
【0055】
この場合、推論部36は、推論された傷病名が、学習済みモデルに入力された処方箋データ(患者の属性データを含む)と矛盾する場合に、矛盾する傷病名を推論結果から除外する。推論部36は、矛盾する傷病名が出力されないように、出力に対するマスクを生成する。例えば、推論用に入力される患者の属性データの年齢が「72歳」である場合、新生児、乳幼児、及び小児に関する傷病名がマスクされて除外される。また、推論用に入力される患者の属性データの性別が「男」である場合、婦人病に関する傷病名がマスクされて除外される。この結果、傷病名を高精度で推論することができる。
【0056】
推論部36は、インターフェース24を介して、推論結果の送信命令を実行し、推論結果をコンピュータ5へ送信する(133)。
【0057】
ステップS13において、コンピュータ5のプロセッサは、送信結果の表示命令を実行し、ディスプレイ等に推論結果を表示させる(134)。
【0058】
図9乃至図11は、コンピュータ5のディスプレイ(図示せず)に表示された推論結果の例を示す図である。図9乃至図11に示すように、画面500,600,700には、患者の属性領域501,601,701、診療科/診療日領域502,602,702、処方薬/用法/用量領域505,605,705、上位推論結果領域506,606,706、全表示指示領域507,607,707、全推論結果領域508、過去データ領域509,609,709、選択領域510,610,710、薬局/薬剤師領域511,611,711、及び情報更新領域512,612,712が表示される。なお、アムロジン、クレストール、バルトレックス、及びフロモックスは登録商標である。
【0059】
診療科/診療日領域502,602,702には、医療機関、診察科(診療科目)、及び医師名が医療機関領域503,603,703に表示され、診療日が診療日領域504,604,704に表示される。処方薬/用法/用量領域505,605,705には、薬剤名、用法、及び用量が表示される。上位推論結果領域506,606,706には、推論結果のうち推論確率が高い傷病名の上位3件が表示される。全表示指示領域507をカーソル等で指定すると、全推論結果(10件)が全推論結果領域508に表示される。過去データ領域509,609には、過去の処方箋における医療機関、診察科(診療科目)、医師名、薬剤名、用法、及び用量が表示される。選択領域510,610,710で過去の処方箋を選択することができる。図9乃至図11では、医療機関及び診療科目が一致する過去の処方箋が選択されている。薬局/薬剤師領域511,611,711には、薬局名及び薬剤師名が表示される。情報更新領域512,612,712をカーソル等で指定すると、画面500,600,700に表示されている情報が更新される。
【0060】
図10及び図11では、共に「バルトレックス顆粒50%」が処方されているが、用法、用量、及び患者の属性(年齢等)に応じて、推論結果の傷病名は異なっている。このように、薬剤名を含む処方箋データ48と傷病名データ47とが関連付けられた学習用データ80に基づいて、機械学習により学習済みモデルを生成することで、処方箋データから傷病名を高精度で推論することができる。
【0061】
ステップS14において、コンピュータ5の入力装置(図示せず)が正しい傷病名を入力することにより、コンピュータ5のプロセッサが推論結果の決定命令を実行する(135)。例えば、薬剤師が患者に問診することにより、コンピュータ5の入力装置(図示せず)から正しい傷病名が入力される。この場合、上位推論結果領域506又は全推論結果領域508に表示される傷病名をカーソル等で指定することにより、正しい傷病名が入力されてもよい。
【0062】
ステップS15において、正しい傷病名が傷病名データ51として、推論用の処方箋データ(患者の属性データを含む)と関連付けられて、学習用データベース41の学習用データ80に格納されたか否かを、コンピュータ5が判定する。学習用データベース41の学習用データ80に格納されていない場合は、コンピュータ5のプロセッサ(図示せず)が、正しい傷病名と処方箋データ(患者の属性データを含む)とが関連付けられたデータを学習用データベースサーバ4へ送信し(136)、学習用データベースサーバ4のデータ格納部38は、学習データの格納命令を実行し(137)、コンピュータ5から送信されたデータを学習用データベース41に格納する。これにより、学習用データベース41の学習用データ80が増え、傷病名をさらに高精度で推論することができる。
【0063】
正しい傷病名と処方箋データ(患者の属性データを含む)とが関連付けられたデータが学習用データベース41の学習用データ80に格納されている場合は、処理を終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、処方箋データから傷病名を高精度で推論することができ、傷病名が記載されていない処方箋からでも傷病名を把握することができ、適切な服薬指導を行うことができる。
【0065】
以上、本発明にかかる実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において変更・変形することが可能である。
【0066】
本実施形態には、処方箋データ52~58と傷病名データ51とが関連付けられた学習用データ80のデータ構造であって、ニューラルネットワークの入力層に入力可能な処方箋データ52~58と、ニューラルネットワークの出力層の正解値として入力可能な傷病名データ51とを備え、学習用データ80は、所定の値で初期化されたパラメータ(重み)を用いて、処方箋データ52~58が入力層に入力された際に出力層に出力された値と正解値との乖離を表すロス関数の微分値を勾配として、乖離が小さくなるようにパラメータ(重み)を変化させて学習済みモデルを生成するために用いられることを特徴とするデータ構造が含まれる。この場合、学習用データ80は、処方薬に加えて、処方薬の効能、効果、用法、用量、処方種別、診療日、及び診療科名の少なくとも1つを含む処方箋データ52~57と傷病名データ51とが関連付けられることを特徴とするデータ構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、機械学習により処方箋データから傷病名を総合的に推論するため、傷病名を高精度で推論することができる傷病名推論システムとして有用である。特に、複数の薬剤を総合的に考慮して傷病名を高精度で推論することができる傷病名推論システムとして有用である。
【符号の説明】
【0068】
1…傷病名推論システム
3…人工知能サーバ
4…学習用データベースサーバ
5…コンピュータ
32…データ取得部
33,40…前処理部
34…機械学習部
35…モデル格納部
36…推論部
38…データ格納部
39…データ取得部
41…学習用データベース
46…カルテデータ
47…傷病名データ
48…処方箋データ
49…属性データ
80…学習用データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11