(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】トポロジー最適化による機械部品の設計
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20231213BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20231213BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019200217
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン-ピエール ヒューゴー シュミット
(72)【発明者】
【氏名】オクスキン オルトゥザール デル キャスティーヨ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベック ビッテンドルフ ペデルセン
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-350720(JP,A)
【文献】特開2014-149732(JP,A)
【文献】特開2014-149818(JP,A)
【文献】特開2004-348691(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117971(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0300831(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105095542(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/23
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料
で形成され、使用時に負荷を受け、1つ又は複数の制約境界を有する機械部品を表すモデル化
オブジェクトを設計するためのコンピュータ実施方法であって、
以下
A~Cを提供するステップと
A)有限要素メッシュ、
B)有限要素メッシュに関連付けられ
たデータであって、以下
b1~b4を含むデータ
b1)荷重の一部を表す力、
b2)1つ又は複数の制約境界の少なくとも一部を表す境界条件、
b3)材料に関連するパラメータ、及び
b4)有限要素メッシュ内の材料のグローバル量に関するグローバル量制約、及び
C)有限要素メッシュのそれぞれの
局所ゾーン内の材料のそれぞれの
局所量に関する1つ又は複数の
局所量制約の不均一分布と、
有限要素メッシュ
、前記有限要素メッシュに関連付けられたデータ、及び不均
一分布に基づいてトポロジー最適化を実行するステッ
プ
を含む方法。
【請求項2】
各局所量制約は、それぞれの局所量
【数1】
のそれぞれの上限
【数2】
を表す
請求項1に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記
有限要素メッシュは前記トポロジー最適化の反復中に変化する前記材料のそれぞれの相対密度
【数3】
を各々が有する要素
【数4】
のセット
【数5】
を有し、前記不均一分布は複数の局所量制約(各々がそれぞれの要素
【数6】
上にある)を含み、それぞれの局所量制約
【数7】
のそれぞれの局所ゾーンはそれぞれの要素
【数8】
のそれぞれの近傍
【数9】
であり、各それぞれの近傍
【数10】
のそれぞれの局所量は、それぞれの近傍
【数11】
内の前記材料の相対密度
【数12】
のそれぞれの平均
【数13】
である
請求項2に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記方法は、前記複数の
局所量制約
【数14】
を単一の集約制約
【数15】
に集約することを含む
請求項3に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記集
約制約
【数16】
は、それぞれの平均
【数17】
とそれぞれの上限
【数18】
との間の不均衡
【数19】
の、要素
【数20】
の集合
【数21】
にわたって定義された、極値
【数22】
に対する定数境界
【数23】
を表す
請求項4に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記極値は最大値であり、前記集
約制約
【数24】
は微分可能な関数で前記最大値を近似し、前記トポロジー最適化を実行することは、勾配ベースの最適化を実行することを含む
請求項5に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記微分可能な関数は、P-ノルム
【数25】
である請求項6に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記勾配ベースの最適化は、漸近線を移動させる方法である
請求項6又は7に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項9】
前記
コンピュータ実施方法は前記トポロジー最適化を実行する前に、
有限要素メッシュ及び有限要素メッシュに関連するデータに基づいて
他のトポロジー最適化を実行するステップ、及び
前記他のトポロジー最適化の結果に基づいて不均一分布を決定するステップ
を含む
請求項1~8のいずれか一項に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項10】
前記他のトポロジ
ー最適化の結果は
密度場、歪場、
応力場、及び/又は圧
縮場を含み、前記
不均
一分布を決定するステップは、
密度場、歪場、応力場、及び/又は圧縮場に基づいて自動的に1つ又は複数の局所量制約を決定するステップ、及び/又は
密度場、歪場、応力場、及び/又は圧縮場のグラフィック表現を表示するステップ、及びユーザ対話を介して1つ又は複数の局所量制約を決定するステップ、
を含む
請求項9に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記機械部品が、付
加製造
が可能
な部品、1つ以上の機能的外側領域及び1つ以上の内部領域を有する部品、及び/又は車両部品である
請求項1~9のいずれか一項に記載の
コンピュータ実施方法。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の
コンピュータ実施方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項
12に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
メモリ及びグラフィカルユーザインタフェースに結合されたプロセッサを備えるシステムであって、メモリは
、請求項
12に記載のコンピュータプログラムを
当該システム上に記録している、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータプログラム及びシステムの分野に関し、より詳細には、機械部品を表すモデル化されたオブジェクトを設計するための方法、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の設計、エンジニアリング及び製造のために、多数のシステム及びプログラムが市場に提供されている。CADはコンピュータ支援設計の頭字語であり、例えば、オブジェクトを設計するためのソフトウェアソリューションに関する。CAEはコンピュータ支援エンジニアリングの頭字語であり、例えば、将来の製品の物理的挙動をシミュレートするためのソフトウェアソリューションに関連する。CAMはコンピュータ支援製造の頭字語であり、例えば、製造プロセス及び動作を定義するためのソフトウェアソリューションに関する。そのようなコンピュータ支援設計システムでは、グラフィカルユーザインタフェースが技法の効率に関して重要な役割を果たす。これらの技術は、製品ライフサイクル管理(PLM)システム内に組み込まれてもよい。PLMとは、企業が製品データを共有し、共通のプロセスを適用し、企業知識を活用して、長期的な企業のコンセプトを越えて、コンセプトから生涯にわたる製品の開発に役立てることを支援するビジネス戦略のことをいう。(CATIA、ENOVIA及びDELMIAの商標で)ダッソーシステムズによって提供されるPLMソリューションは、製品工学知識を編成するエンジニアリングハブと、製造工学知識を管理する製造ハブと、エンタープライズ統合及びエンジニアリングハブ及び製造ハブの両方への接続を可能にするエンタープライズハブとを提供する。全体として、システムは最適化された製品定義、製造準備、生産、及びサービスを駆動する動的な知識ベースの製品作成及び意思決定サポートを可能にするために、製品、プロセス、リソースをリンクするオープン・オブジェクト・モデルを提供する。
【0003】
これらのシステムのいくつかは、トポロジー最適化を採用する機能を提供する。トポロジー最適化は、製品設計及び物理的シミュレーションの分野を橋渡しするコンピュータ実装技術である。本発明は、材料内に形成され、使用時に荷重を受け、1つ又は複数の拘束境界を有する機械部品を表すモデル化されたオブジェクトを設計するために適用される。この技法は、有限要素解析(FEA)によって典型的にシミュレートされるそれらの物理的特性及び挙動を修正することに基づいて最適化された生成設計を自動的に生成することに焦点を当てている。より具体的には、トポロジー最適化が有限要素メッシュ(FEM)を提供することによって、例えば、小さな要素内の設計空間、及びメッシュに関連するデータを離散化することによって機能する。次に、この技法は所与の目的関数(例えば、設計の剛性に関連する)及び制約のセット(例えば、許容可能な材料の総量に関連する)に関して最も効率的な要素を反復的に見つけることによって、所与の離散空間内の材料の最適な分布及びレイアウトを見つける。
【0004】
この文脈内で、使用時に荷重を受け、1つ又は複数の拘束境界を有する、材料内に形成された機械部品を表すモデル化されたオブジェクトを設計するための改善された解決策が必要である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、モデル化されたオブジェクトを設計するためのコンピュータ実施方法が提供される。モデル化されたオブジェクトは、機械部品を表している。機械部品は、材料で形成される。機械部品は使用時に負荷を受け、機械部品は1つ又は複数の拘束境界を有する。この方法は、有限要素メッシュ、有限要素メッシュに関連付けられたデータ、及び1つ又は複数の局所量制約の不均一分布を提供することを含む。有限要素メッシュに関連するデータは、力、境界条件、パラメータ、及びグローバル量制約を含む。力は荷重の一部を表す。境界条件は、1つ又は複数の制約境界の少なくとも一部を表す。パラメータは材料に関連している。グローバル量制約は、有限要素メッシュ内の材料のグローバル量に関連する。不均一分布の各局所量制約は、有限要素メッシュのそれぞれの局所ゾーン内の材料のそれぞれの局所量に対するものである。この方法はまた、有限要素メッシュ、有限要素メッシュに関連するデータ、及び不均一分布に基づいてトポロジー最適化を実行することを含む。
【0006】
この方法は、材料内に形成され、使用時に荷重を受け、1つ又は複数の拘束境界を有する機械部品を表すモデル化されたオブジェクトを設計するための改善された解決策を形成する。特に、有限要素メッシュ及び有限要素メッシュに関連するデータに基づいて、本方法はトポロジー最適化を実行し、それによって、全体的な材料量に対する制約が与えられた場合、機械的観点から最適化された設計を効率的な方法で達成する。特に、この方法は、メッシュに関連するデータに含まれる力によって表される、機械部品が使用中に受ける負荷の部分に対して最適化された結果をもたらす。さらに、この方法は1つ又は複数の局所材料量制約をトポロジー最適化に統合することを提供し、それによって、そのような局所制約に対応する各局所ゾーンにおいて、局所材料量及びその機械的効果に対する制御を可能にする。さらに、1つ又は複数の局所量制約の分布が不均一であるために、本方法は、前記機械的効果の位置的微分を可能にする。したがって、1つ又は複数の局所的な物質量の制約は、網目に関連付けられたデータに含まれる力が機械部品が使用中に受ける全ての荷重を表すことができず、表すわけではないことを補償する手段を提供する。特に、本方法は機械部品に適用されるが、トポロジー最適化問題の定式化において力として直接統合されない実際の将来の荷重を考慮して、機械的ロバスト性を増大させることを可能にする。
【0007】
この方法は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる:
・各局所量制約は、それぞれの局所量のそれぞれの上限を表す;
メッシュはトポロジー最適化の反復中に変化する材料の各の相対密度を各有する要素のセットを有し、不均一分布は各の要素上の複数の局所量制約を含み、それぞれの局所量制約の各の局所ゾーンは各の要素の各の近傍であり、それぞれの近傍の各の局所量は、各の近傍における材料の相対密度の各の平均である;
本方法は、複数の局所体積制約を単一の集約制約に集約することを含む;
・集約された制約は、要素の集合にわたって定義された、それぞれの平均とそれぞれの上限との間の不一致の極値に対する定数限界を表す;
・極値は最大であり、集約された制約は微分可能な関数を用いて前記最大値を近似し、トポロジー最適化を実行することは、勾配ベースの最適化を実行することを含む;
・微分可能な関数はPノルムである;
・勾配ベースの最適化は漸近線を移動させる方法である;
【0008】
本方法はトポロジー最適化を実行する前に、有限要素メッシュ及び有限要素メッシュに関連するデータに基づいて別のトポロジー最適化を実行し、その他トポロジー最適化の結果に基づいて不均一分布を決定するステップを含む;
【0009】
他のトポロジー最適化の結果は密度場、歪場、応力場、及び/又は圧縮場を含み、不均一分布を決定することは密度場、歪場、応力場、及び/又は圧縮場に基づいて自動的に1つ又は複数の局所量制約を決定すること、及び/又は密度場、歪場、応力場、及び/又は圧縮場のグラフ表示を表示すること、ならびにユーザ相互作用を介して1つ又は複数の局所量制約を決定することを含み、及び/又は機械部品は付加的製造可能部品、1つ又は複数の機能的外側領域及び1つ又は複数の内部領域を有する部品、及び/又は車両部品である。
【0010】
本発明はさらに、この方法によって設計可能又は入手可能なモデル化されたオブジェクトを提供する。有限要素メッシュのそれぞれの局所ゾーンにおける材料のそれぞれの局所量に対する1つ又は複数の局所量制約の非一様な分布のために、モデル化されたオブジェクトは多孔質、肺胞、及び/又は複雑な構造の非一様な分布/レイアウトを提示し、例えば、様々な材料/空隙比を有する有機アスペクトを提示する。
【0011】
本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムがさらに提供される。
さらに、モデル化されたオブジェクト及び/又はコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0012】
さらに、メモリ及びグラフィカルユーザインタフェースに結合されたプロセッサを含むシステムが提供され、メモリは、モデル化されたオブジェクト及び/又はコンピュータ・プログラムをその上に記録している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
この方法は、コンピュータで実施される。これは、該方法のステップ(又は実質的に全てのステップ)が少なくとも1つのコンピュータ又は任意のシステムによって実行されることであることを意味する。したがって、本方法のステップはコンピュータによって、場合によっては完全に自動的に、又は半自動的に実行される。例では、方法のステップのうちの少なくともいくつかのトリガがユーザ-コンピュータ対話を介して実行され得る。必要とされるユーザ-コンピュータ対話のレベルは予測される自動化のレベルに依存し、ユーザの希望を実施する必要性とバランスをとることができる。
【0015】
例では、このレベルがユーザ定義及び/又は事前定義され得る。
【0016】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的のために適合されたシステムを用いて方法を実行することである。システムはメモリに結合されたプロセッサと、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)とを備えることができ、メモリには、本方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが記録されている。メモリはまた、データベースを記憶してもよい。メモリはそのような記憶装置に適合された任意のハードウェアであり、場合によっては、いくつかの物理的に別個の部分(例えば、プログラムのための部分、及び場合によってはデータ断片ベースのための部分)を備える。
【0017】
この方法は一般に、モデル化オブジェクトを操作する。モデル化オブジェクトは、例えばデータベースに格納されたデータによって定義される任意のオブジェクトである。拡張により、表現「モデル化オブジェクト」は、データ自体を指定する。システムのタイプに応じて、モデル化オブジェクトは、異なる種類のデータによって定義されてもよい。システムは、実際にはCADシステム、CAEシステム、CAMシステム、PDMシステム、及び/又はPLMシステムの任意の組合わせであってもよい。これらの異なるシステムでは、モデル化オブジェクトが対応するデータによって定義される。したがって、CADオブジェクト、PLMオブジェクト、PDMオブジェクト、CAEオブジェクト、CAMオブジェクト、CADデータ、PLMデータ、PDMデータ、CAMデータ、CAEデータについて言うことができる。しかしながら、モデル化オブジェクトはこれらのシステムの任意の組合わせに対応するデータによって定義され得るので、これらのシステムは他のシステムのうちの1つを排他的にするものではない。したがって、システムは以下に提供されるそのようなシステムの定義から明らかになるように、CADシステム及びPLMシステムの両方であってよい。
【0018】
CADシステムとは、CATIAのような、モデル化オブジェクトのグラフィック表現に基づいてモデル化オブジェクトを設計するために少なくとも適合された任意のシステムをさらに意味する。この場合、モデル化オブジェクトを定義するデータは、モデル化オブジェクトの表現を可能にするデータを含む。CADシステムは例えば、ある場合には、面又は表面を有するエッジ又は線を使用してCADモデル化オブジェクトの表現を提供することができる。線、エッジ、又は表面は様々な方法、例えば、不均一有理Bスプライン(NURBS)で表すことができる。具体的には、CADファイルは仕様を含み、そこから幾何学的形状を生成することができ、これにより表現を生成することができる。モデル化オブジェクトの仕様は、単一のCADファイル又は複数のCADファイルに格納することができる。CADシステム内のモデル化オブジェクトを表すファイルの典型的なサイズは、部品当たり1メガバイトの範囲内である。そして、モデル化オブジェクトは、典型的には何千もの部品のアセンブリであり得る。
【0019】
CADの文脈では、モデル化オブジェクトが典型的には例えば、部品又は部品のアセンブリ、又は場合によっては製品のアセンブリなどの製品を表す3Dモデル化オブジェクトであり得る。「3Dモデル化オブジェクト」とは、その3D表現を可能にするデータによってモデリングされる任意のオブジェクトを意味する。3D表現は、全ての角度から部品を見ることを可能にする。例えば、3Dモデル化オブジェクトは3D表現される場合、その軸のいずれかの周り、又は表現が表示される画面内のいずれかの軸の周りで取り扱われ、回転され得る。これは特に、3Dモデル化されていない2Dアイコンを除外する。3D表現の表示は設計を容易にする(すなわち、設計者が彼らのタスクを達成する速度を統計的に増加させる)。これは、製品の設計が製造工程の一部であるため、産業界における製造工程を高速化する。
【0020】
3Dモデル化オブジェクトは例えばCADソフトウェアソリューション又はCADシステムを用いた仮想設計の完了後に現実世界で製造される製品の幾何学的形状、例えば部品の(例えば機械的である)部品又はアセンブリ(又は部品のアセンブリは本方法の観点から部品自体として見ることができるので、部品のアセンブリと等価なもの)、又はより一般的には任意の剛体アセンブリ(例えば可動機構)を表してもよい。CADソフトウェアソリューションは、航空宇宙、建築、建築、消費財、ハイテク装置、産業機器、輸送、海洋、及び/又は沖合の石油/ガス生産又は輸送を含む、様々な、かつ無制限の産業分野における製品の設計を可能にする。したがって、本方法によって設計された3Dモデル化オブジェクトは陸上車両の一部(例えば、自動車及び軽トラック機器、レーシングカー、オートバイ、トラック及びモータ機器、トラック及びバス、及び列車を含む)、航空車両の一部(例えば、機体機器、航空宇宙機器、推進機器、防衛機器、航空機機器、宇宙機器を含む)、海洋車両の一部(例えば、海軍機器、商用船、オフショア機器、ヨット及び作業船を含む)、一般機械部品(例えば、工業製造機械、重移動機械又は機器、設置機器、産業機器、加工金属製品、タイヤ製造製品を含む)、電気機械又は電子部品(例えば、家庭用電化製品、セキュリティ及び/又は制御及び/又は計装製品、コンピュータ及び通信機器、半導体、医療デバイス及び機器を含む)、消費財(例えば、家具、家庭用品、レジャー用品、ファッション用品、ハードグッズ小売業者の製品、ソフトグッズ小売業者の製品、包装(例えば、食品及び飲料及びタバコ、美容及びパーソナルケア、家庭用品包装を含む)など、任意の機械部品であってもよい工業製品を表してもよい。
【0021】
図1は、システムがクライアント・コンピュータ・システム、例えばユーザのワークステーションであるシステムの一例を示す。
【0022】
この例のクライアント・コンピュータは、内部通信バス1000に接続された中央処理装置(CPU)1010と、やはりバスに接続されたランダム・アクセス・メモリ(RAM)1070とを備える。クライアント・コンピュータには、さらに、BUSに接続されたビデオ・ランダム・アクセス・メモリ1100に関連するグラフィカル・プロセッシング・ユニット(GPU)1110が設けられている。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現化するのに適した大容量メモリデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMディスク1040を含む、全ての形態の不揮発性メモリを含む。前述のいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足されるか、又はその中に組み込まれてもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアント・コンピュータは、カーソル制御デバイス、キーボードなどの触覚デバイス1090も含むことができる。ユーザがディスプレイ1080上の任意の所望の位置にカーソルを選択的に位置決めすることを可能にするために、カーソル制御装置がクライアント・コンピュータ内で使用される。さらに、カーソル制御装置はユーザが様々なコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御装置は、システムに制御信号を入力するための多数の信号発生装置を含む。典型的にはカーソル制御装置がマウスであってもよく、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的に又は追加的に、クライアント・コンピュータシステムは、センシティブパッド及び/又はセンシティブスクリーンを含むことができる。
【0023】
コンピュータプログラムはコンピュータによって実行可能な命令を含むことができ、命令は、上記装置に該方法を実行させるための手段を含む。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータ記憶媒体に記録可能であってもよい。プログラムは例えば、デジタル電子回路において、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、又はそれらの組合わせにおいて実装されてもよい。プログラムは装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のための機械可読記憶デバイスに有形に具現化された製品として実装されてもよい。方法のステップは入力データ断片に対して動作し、出力を生成することによって、方法の機能を実行するための命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサはプログラム可能であり、データ断片記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ断片及び命令を受信し、それらにデータ断片及び命令を送信するように結合され得る。アプリケーション・プログラムは、高レベルの手続き型又はオブジェクト指向プログラミング言語で、あるいは必要に応じてアセンブリ言語又は機械語で実装することができる。いずれの場合も、言語は、コンパイルされた言語又は解釈された言語であってもよい。プログラムはフルインストールプログラムであってもよいし、更新プログラムであってもよい。システム上にプログラムを適用すると、いずれにしても、この方法を実行するための命令が得られる。
【0024】
「3Dモデル化オブジェクトを設計する」は、3Dモデル化オブジェクトを作成するプロセスの少なくとも一部である任意のアクション又は一連のアクションを指定する。したがって、この方法は、3Dモデル化オブジェクトをスクラッチから作成することを含むことができる。あるいは、本方法が以前に作成された3Dモデル化オブジェクトを提供するステップと、次いで、3Dモデル化オブジェクトを修正するステップとを含むことができる。
【0025】
方法は製造プロセスに含まれてもよく、製造プロセスは方法を実行した後に、モデル化オブジェクトに対応する物理的製品を生成することを含んでもよい。いずれの場合においても、本方法によって設計されたモデル化オブジェクトは、製造オブジェクトを表すことができる。したがって、モデル化オブジェクトはモデル化物体(すなわち、物体を表すモデル化オブジェクト)であり得る。製造対象物は、部品などの製品、又は部品のアセンブリであってもよい。この方法はモデル化オブジェクトの設計を改善するので、この方法はまた、製品の製造を改善し、したがって、製造プロセスの生産性を増加させる。
【0026】
この方法は、トポロジー最適化を介して、機械部品、例えば2Dモデル化オブジェクト又は3Dモデル化オブジェクトを表すモデル化オブジェクトを設計するためのものである。したがって、この方法は、例えばユーザ対話を介して、トポロジ最適化の入力を提供することを含む。
【0027】
トポロジー最適化の入力はFEMを含む。FEMは、設計されるモデル化オブジェクトを含む空間を表す。FEMは、2Dモデル化オブジェクト又は3Dモデル化オブジェクトのどちらが設計されるべきかに応じて、2D又は3Dとすることができる。FEMは規則的であっても不規則的であってもよい。通常のFEMは、トポロジー最適化中のより容易な計算を可能にする。FEMは任意のタイプのものでよく、例えば、各有限要素は、四面体又は六面体である。FEMを提供することは、設計空間及び設計空間の噛み合いを定義することを含んでもよい。この方法はFEMをユーザに表示することと、ユーザによって、例えば、表示されたFEM上でのグラフィカル・ユーザ対話によることを含む、トポロジー最適化の他の入力を定義することとを含むことができる。
【0028】
要素を定義することに関する「グラフィカル・ユーザ対話」とは、ここでは設計者が触覚システム(例えば、マウス、又は感知/タッチ・スクリーン又は感知/タッチ・パッドなどのタッチ・デバイス)を使用して、ディスプレイ・ユニットの1つ又は複数の位置をアクティブ化し、要素が配置されることになる任意のユーザ対話を意味する。シーンの位置をアクティブにすることは、その上にマウスのカーソルを配置すること、又はその上でタッチを実行することを含んでもよい。起動後、実質的にリアルタイムで、定義された要素の表現を表示することができる。
【0029】
トポロジ最適化の入力は、FEMに関連付けられ、ユーザが設計したい機械的部分に依存するデータをさらに含む。
【0030】
これらの関連データは材料に関連するパラメータ、換言すれば、機械部品が形成される材料を表すデータを含む。これらの材料パラメータは、特に材料の機械的特性を表すことができる。材料パラメータは例えば、材料のヤング率及び/又は材料のポアソン比を含んでもよい。例では、ユーザが例えばリストからの選択によって材料を指定することができ、及び/又はシステムは例えば1つ又は複数の式及び/又はデータベースに基づいて、材料パラメータを自動的に決定し、及び/又はその選択をユーザに提案することができる。材料は任意の材料、例えば、金属(例えば、鋼、銀、金、チタン)、プラスチック(例えば、ナイロン、ABS、ポリカーボネート、樹脂)、セラミック、又は複合材料などの固体及び/又は等方性材料であり得る。
【0031】
関連付けられたデータは、グローバル量制約をさらに含む。グローバル量制約は、FEM内の材料のグローバル量に関する。言い換えれば、グローバル量制約は、FEM全体における材料の総量の値を制約する。グローバル量制約は例えば、材料で満たすことができる(全体の)FEMの分率の境界、例えば、前記分率の上限として提供されてもよい。代替的に、グローバル量制約は、境界ではなく、到達されなければならない値を提供することができる。しかしながら、トポロジー最適化は最適結果において利用可能な限り多くの材料を使用する傾向がある目的関数を最適化し、そのような等価制約を上限制約と同等にすることができる。全ての場合において、分率は、体積分率(「グローバル体積制約」のような場合にはGVCとも呼ばれる)であってもよい。他の例では、グローバル量制約が材料の重量を表す値を含むことができる。
【0032】
トポロジー最適化の分野からそれ自体知られているように、関連するデータは機械部品の使用条件を表すデータをさらに含み、それに基づいて、トポロジー最適化は、そのような予測される使用を考慮して機械部品モデルを最適化することができる。
【0033】
関連するデータは特に力を含む。言い換えれば、関連するデータはそれぞれがFEMの1つ又は複数の有限要素に適用可能であり、リンクされたベクトル(例えば、ニュートン又はその倍数の大きさを有する)を含む。これらの力は、使用時に機械部品が受ける負荷を部分的に表す。言い換えれば、それぞれの力がデータ内に存在するFEMの1つ又は複数の有限要素ごとに、データは、前記1つ又は複数の有限要素に対応する位置における機械部品の材料が対応する荷重を受けることになるという事実を表す。しかし、機械部品は理論的には無限数の荷重を受けることがあるので、全ての荷重がデータに存在する力によって表されるわけではない。力は荷重の組全体、例えば、最も重要な荷重及び/又は最も代表的な荷重の組の制限を表すに過ぎない。力は各モデリング問題について決定されてもよく、物体がその寿命中に受ける可能性がある最大の(すなわち、最大の大きさの)力であるように選択されてもよく、なぜなら、これらの力は、最大の変形及び機械的応力を引き起こす傾向があるためである。これらの力は、荷重ケースと呼ばれるセットにグループ化されてもよい。産業上の問題は例えば、1~十数の負荷ケースを有することがある。例では、ユーザがFEMのグラフィカル・ユーザ対話有限要素を介して選択し、次いで、それに該当力を指定することができる。
【0034】
また、関連するデータは境界条件を含む。各境界条件は、メッシュの1つ又は複数の有限要素に適用され、リンクされ、機械部品が使用される境界上のそれぞれの制約を表す。換言すれば、各境界条件は、前記1つ以上の有限要素に対応する位置における機械部品の材料が例えばディリクレ境界条件を使用して、その変位に対する制約を受けるという事実を表す。要素は(とりわけ)平面に沿って、曲線に沿って、軸に沿って/周りに、又は点に/の周りに、その変位を拘束されてもよく、及び/又はその変位は並進のみ、回転のみ、又は並進及び回転の両方において拘束されてもよい。並進及び回転の両方の点に拘束された変位の場合、要素は3D空間に固定され、「クランプ」されていると言われる。しかしながら、要素は平面に沿った並進運動に拘束された変位を有するが、(例えば、それがベアリングに取り付けられた物体に属する場合)前記平面上で自由に、軸に沿った並進運動ではあるが前記軸上で自由に(例えば、ピストン内で)、又は軸(例えば、ロボットアームの関節)の周りの回転運動で移動することができる。
【0035】
例では、境界条件は全ての制約境界を表す。言い換えれば、拘束される(例えば、固定されたままである)材料を最終的に含むことが意図されるFEMの各有限要素について、境界(例えば、クランプ)条件を関連付けて、この事実をトポロジー最適化に統合することができる。例では、ユーザがFEMのグラフィカル・ユーザ対話有限要素を介して選択し、次いで、境界条件がそれに適用可能であることを指定することができる。
【0036】
例では、機械部品の1つ又は複数の拘束境界が1つ又は複数の固定境界を含むか、又はそれからなり(すなわち、前記1つ又は複数の境界における材料は移動できない)、対応する1つ又は複数の境界条件はクランプ条件である。
【0037】
トポロジー最適化は広く知られているように、入力に基づいて目的関数を自動的に最適化することを含むことができる。目的関数は、最適化されるべき任意の機械的特性を表すことができる。トポロジー最適化は特に、剛性を最大化することができる。目的関数は、そのためにコンプライアンス関数であってもよい。コンプライアンスは、構造の剛性の逆数である構造に対するものである。したがって、コンプライアンスは、指定された荷重シナリオ及び固定された境界条件を考慮して、構造体の変形量をカプセル化する。したがって、最適化プロセスがコンプライアンスを最小化するとき、これは、所与の質量に対する設計の剛性を最大化することに対応する。目的関数の自由変数は、FEM上の材料の量(例えば体積分率)の分布(すなわちレイアウト)とすることができる。したがって、トポロジー最適化は目的関数を最適化するために、メッシュの各有限要素内の材料量(例えば、体積分率)を変化させることができる。オブジェクション機能は材料パラメータに依存することができ(すなわち、目的機能の固定変数は材料パラメータを含むことができる)、最適化はグローバル量制約を含む制約下で実行することができる。最適化は、任意のアルゴリズム、例えば反復アルゴリズムに従って実行されてもよい。材料量が材料の体積分率である場合、最適化プロセスは、有限要素法の材料体積分率の分布を生じる。そのような場合、トポロジー最適化又は方法はフィルタリングする(例えば、自動的に)、すなわち、そのような体積分率分布に基づいて、各有限要素が材料で(完全に)充填されているかどうかを、各有限要素について判定する、さらなるステップを含むことができる。例えば、これは、(例えば、所定の)しきい値(例えば、0.1又は0.2より高く、及び/又は0.9又は0.8より低く、例えば、0.5のオーダー)との比較に基づくことができ、最適化から生じる体積分率がしきい値より高い(又は低い)場合、有限要素は材料で完全に満たされている(すなわち、完全に空である)と考えられる。本方法は実施例では結果に基づいて、境界表現(B-Rep)モデルなどの3Dモデル化オブジェクトを(例えば、自動的に)計算することをさらに含むことができる。例えば、本方法は、最適化及び/又はフィルタリングから生じる一連の有限要素に基づいて、かつそれに沿って掃引体積を計算することができる。
【0038】
それ自体知られているように、トポロジー最適化は、FEM、力、境界条件、材料パラメータ、及びグローバル量制約に基づいて、FEM内の材料の分布を決定するために既に実行されてもよい。この方法は、1つ又は複数の局所量制約の不均一分布を最適化問題に追加することによって、そのような一般的なトポロジー最適化を超える。したがって、この方法は一般的なトポロジー最適化を全く実行せず、不均一分布でトポロジー最適化を実行するだけであるか、又は後述するように、最初に一般的なトポロジー最適化を実行し、次に不均一分布でトポロジー最適化を実行することができる。両方の場合において、本方法は一般的なトポロジー最適化ワークフローのステップを統合し、そのようなステップは、一般的なトポロジー最適化ワークフローの例を通してここで議論される。
【0039】
トポロジ
ー最適化シナリオの仕様を示す
図2に示されるように、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローは入力として、設計空間22(ここでは小さな正方形要素に細分される)、1組の負荷ケース24(設計に加えられる力)、及び境界条件26(設計が変形に対して制約される位置、例えば、ここでは設計空間22の左側全体で「クランプされる」)を必要とする。追加のパラメータ、例えば、保持されなければならない外側シェル、選択された材料の機械的構成特性、目標質量、最大許容変形、又は任意の他の制約を定義することができる。設計ワークフローは、トポロジ
ー最適化の目標が空のキャンバス(設計空間である)から最適化された設計を生成することであるため、設計空間定義以外の初期ジオメトリの提供を除外することができる。
【0040】
一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローの出力は、入力仕様に可能な限り準拠する最適化設計の幾何学的形状である。
図3は最適化されている1つのそのような設計を示し、最適化プロセス中に展開する設計を示す。この例では、全体体積分率を30%に設定した。
図3は、初期設計32と、5回の最適化反復34の後の設計と、10回の最適化反復36の後の設計と、25回の最適化反復38の後の最終的な収束設計とを示す。
【0041】
図4に示されるように、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、例では以下に記載される8つのステップに従うことができる:
【0042】
1.デザインスペースのメッシング
図2に示すように、設計空間の離散化を作成する。こ
れは、空間を小さな簡単な連結要素、例えば四面体、六面体に細分化する
ことを意味する。これらの小さな要素は、後にシミュレーションのためのFEMとして、及び最適化のための設計変数としての両方の役割を果たすことができる。
【0043】
2.負荷事例と境界条件を適用する
ここで、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローは所与の入力仕様のための力及び境界条件をとり、それらをFEMのノードに適用し得る。
図2は、設計空間が規則的な正方形要素に再分割されるメッシュを示す。左側のノードはクランプされ(2D空間に固定され)、下向きの力が設計空間の中央右側に加えられる。
【0044】
3.設計変数を初期化する
各要素は、値「0」及び「1」によってそれぞれ定義される、空であるか又は材料で満たされているかを定義する所与の相対密度値を有する。さらに、最適化問題を連続的にするために、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローは、要素が0と1との間の任意の値をとることを可能にすることができる。これを「緩和」と呼ぶことがある。中間密度を有する要素の解釈はあいまいであり得るので、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、中間要素密度を、それぞれ0又は1の下限及び上限を有する要素よりも構造挙動について全体的に効率的でないように強制するペナルティ化アプローチを導入し得る。これは、
図3に示すように連続的な配合を維持しながら、中間密度の少ない最終的なデザインを生成するように最適化装置を駆動する効果を有する。
【0045】
4.均衡を求めて解く
この時点で、一般的なトポロジー最適化ワークフローは力及び境界条件でメッシュ化され、付着された完全に定義された有限要素モデルを有することができ、各要素は相対密度値を有する。それによって、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、グローバル剛性行列を組み立て、構造平衡の節変位を解くことができる。言い換えると、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、加えられた力及び境界条件について、現在の状態における構造の変形を計算することができる。
【0046】
5.目的関数値と導関数を計算する
任意のトポロジー最適化において使用され得る目的関数は、構造のコンプライアンスである。これは、剛性の逆数であり、したがって、指定された荷重シナリオ及び境界条件を考慮して、構造の変形量をカプセル化する。したがって、最適化プロセスがコンプライアンスを最小限に抑える場合、これは、所与の質量に対する設計の剛性を最大限にすることになる。さらに、工程における設計変数の数が多いため、最適化は勾配ベースの方法で実行されてもよい。したがって、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、各設計変数に関する目的関数の導関数を計算することもできる。言い換えれば、一般的なトポロジー最適化ワークフローはコンプライアンスを改善し、制約を満たすために各要素の相対密度をどのように変更すべきかを計算することができる。コンプライアンスのために、これは、周知の古典的な「Adjoint感度解析」を使用して実行されてもよい。さらに、導関数が計算された後、これらの導関数は、数値的安定性を改善するためにフィルタリングによって平滑化されてもよい。一般的なトポロジー最適化ワークフローは誤ったチェッカーボードパターンを低減し、最適化に長さスケールを導入することができ、その結果、それは明確に定義される。
【0047】
6.制約値と
導関数を計算する
一般的なトポロジー最適化ワークフローにおける制約関数は、構造の全体的な体積分率であり得る。このようなGVCは、使用が許容される最大材料体積、したがって設計を構成する材料の最大質量を規定する。その結果、最適化器は、設計空間におけるこの質量の最適な分布を見つけ、剛性を最大にしなければならない。
図3は最適化ワークフローにおける中間設計34及び36を示し、ここで、グローバル体積分率は同じであるが、工程における最適化反復中に材料の分布が変化する。この制約の導関数は、基本体積に等しく、要素のサイズが等しい場合、導関数は各要素について一定であり、したがって、計算するのは自明である。
【0048】
7.数学的プログラムを使用して設計変数を更新する
目的関数及び制約の値ならびにそれらの導関数が知られている場合、一般的なトポロジー最適化ワークフローは勾配ベースの数学的プログラムを使用して、指定されたGVCに違反することなく構造的コンプライアンスを改善するために、各要素の相対密度を修正することができる。各要素の相対密度値が数学的プログラミングによって修正され、最適化プロセスにおける所与の修正設計がまだ収束していない場合、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、ステップ4にループバックすることができる。この問題のための単純な数学的プログラムは、いわゆる最適性基準(OC)である。しかしながら、一般的なトポロジー最適化ワークフロー及びこの方法の例では、より一般的な数学的プログラミングアルゴリズムを使用することができる:漸近線の移動方法(MMA、最初に(“The method of moving asymptotes-a new method for structural optimization”,、Krister Svanberg、International Journal for Numerical Methods In Engineering、1987年2月において説明された)。MMAは複数の非線形制約を扱うことができ、この方法は多数の変数を提示し、制約がほんの少ししかないという特異性を有するので、この方法の場合に特に効率的であることが観察されている。しかしながら、任意の他の数学的プログラミングアルゴリズムを使用することもできる。
【0049】
8.最終設計を出力する
一旦収束が達成されると、一般的なトポロジー最適化ワークフローは、各要素が最適化された相対密度値を有する設計空間内に最終的な設計を提示することができる。単純なしきい値処理プロセスを介して、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローは相対密度値があるしきい値(例えば、0.5に選択される)を超える要素の集合によって定義されるジオメトリを抽出し得る。ここで、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローは、一般的なトポロジ
ー最適化ワークフローの出力で最適化された設計のジオメトリを提示することができる。
図3は、ステップ2に記載され
図2に示された仕様に最適化された最終設計38を示す。
【0050】
この方法はこの一般的なトポロジー最適化ワークフローの全てのステップを実施し、有限要素メッシュのそれぞれの局所ゾーン内の材料のそれぞれの局所量に対する1つ又は複数の局所量制約の不均一な分布であるトポロジー最適化への追加の入力を提供することによってのみ、そこから逸脱することができる。次いで、トポロジー最適化は、他の入力に加えて、そのような局所量制約に基づく。
【0051】
各局所量制約は、FEMのそれぞれの局所ゾーン内の材料の局所量に関連する。換言すれば、局所量制約は、それぞれの局所ゾーンにおける材料の総量の値を制限する。「局所ゾーン」とは、例えばFEMの有限要素の数の10%未満もしくは1%未満、又は2もしくは3個もの低い要素を含む、FEMの任意のサブパートを意味する。局所量制約は例えば、材料で満たすことができるそれぞれの局所ゾーンの部分の境界、例えば、前記部分の上限として提供することができる。分率は体積分率(「局所体積制約」におけるように、そのような場合にLVCとも呼ばれる)であってもよい。他の例では、グローバル量制約が材料の重量を表す値を含むことができる。
【0052】
上限制約は、材料の集中を禁止することによって、機械部品のロバスト性を増加させることを可能にする。特に、例えばFEMの有限要素の数の90%未満、例えば約80%を含む、FEMの小部分を形成する領域を一緒にカバーする、それぞれの局所ゾーンに対して局所量制約が提供されてもよい。各局所ゾーンは比較的小さくてもよく、例えば、各局所ゾーンは、FEMの有限要素の数の10%未満又は1%未満を含んでもよい。このような場合、この方法は、領域を形成するそれぞれの局所ゾーン内のそれぞれの上限を越えて材料の集中を禁止することによって、領域内の強制的な堅牢性を可能にする。それによって、この方法は領域内の材料の広がりを強制し、一方、最適化問題を定式化するときに、その一部への全ての荷重の低減は最適化を、前記部分について最適化されているが、使用中に発生する可能性がある他の荷重にはうまく適合されていない解に偏らせる。これにより、さらに、未定義の力に対応する荷重を考慮した構造のロバスト性を保証しながら、トポロジー最適化の入力として定義される荷重ケースの数を減らすことができる。実施例では、10又は5未満の力が本方法における入力として提供され、それぞれが1つ又は複数の対応する有限要素に適用可能である。
【0053】
各局所ゾーンは、FEMの少なくとも2つの有限要素を含むことができる。各局所ゾーンは、(トポロジーの観点から)接続された空間を形成することができる。1つ又は複数の局所量制約は少なくとも2つの異なる局所ゾーン(すなわち、それぞれが異なる局所量制約に対応する)が少なくともオーバーラップする(すなわち、非ボイド交差を有する)ようにすることができる。
【0054】
例では、FEMの各有限要素が有限要素を含むそれぞれの近傍に関する局所制約情報専用のそれぞれのデータに、データ構造内で関連付けられる(すなわち、リンクされる)ことができる。各近傍は、有限要素を中心とする球体内の全ての有限要素を含むか、又はそれらからなることができる。球は例えばFEMの有限要素のサイズの20倍、10倍、又は2倍よりも小さい、所定のサイズ(例えば、全ての球について同じ)の半径を提示してもよい(例えば、FEMは規則的であり、有限要素のサイズはFEMの有限要素のエッジの長さであり、例えば、全てのエッジの全て、例えば、同じ長さを有する六面体又は四面体の要素)。代替的に、近傍は、方向付けられた楕円、又は別の所定の形状内の全ての有限要素を含むか、又はそれらから構成されてもよい。データは(例えば、制約がないことに等しい、それぞれの近傍に存在する材料の体積分率について1に等しい上限を提供することによって)それぞれの近傍に制約がないことを表し得る。あるいは、データが対応する(真に制限的である)制約の存在を表してもよい(例えば、前記体積分率に対して0より高く1より低い上限を提供することによって)。各有限要素のそれぞれの近傍は、所定の方式に従って決定することができる。あるいは、各有限要素のそれぞれの近傍が局所的制約を表すデータ内で定義されてもよい。
【0055】
ここで、1つ又は複数の局所量制約の分布は不均一である。「不均一」とは、FEMが(局所ゾーン内の材料量に関して)異なって拘束される少なくとも2つの重なり合わない局所ゾーンを含むことを意味する。「異なって制約される」とは、2つのゾーンの一方が制約されず(すなわち、局所量制約がない)、他方が制約される(すなわち、局所量制約がある)こと、又は2つのゾーンが両方とも制約される(すなわち、それぞれ局所量制約がある)が2つの局所量制約が異なることを意味する。2つの局所量制約はそれらのそれぞれの局所ゾーンが異なるサイズ及び/又は形状である場合、及び/又は制約に含まれる量値が異なる(例えば、2つの制約が異なる体積分率上限を含む)場合に、「異なる」と言われる。
【0056】
例では、1つ又は複数の局所量制約がそれぞれ、材料で満たすことができるそれぞれの局所ゾーンの割合の上限(例えば、0と1の間)として提供され得る。これらの例では「不均一な」分布が局所量制約(すなわち、例えば、有限要素の総数の少なくとも5%に達する無制約有限要素)に対応する属さない1つ又は複数の有限要素を備えるFEMによって、及び/又は対応する異なる上限値として提供される少なくとも2つの局所量制約を備える1つ又は複数の局所量制約によって達成されてもよい(換言すれば、1つ又は複数の局所量制約は1つ又は複数の第1の局所ゾーン内の材料の体積分率に対する第1の上限と、1つ又は複数の第2の局所ゾーン内の材料の体積分率に対する第2の上限とを備え、第1の上限及び第2の上限は互いに異なるものであり、対応する厳密に0と1との間である)。
【0057】
したがって、この方法はトポロジー最適化定式化に新しいタイプの制約、すなわちLVCを追加し、これにより、局所制約にそれぞれ対応する局所ゾーンを含む領域に、いわゆる「骨様」多孔質構造が現れる。これらの軽量充填構造体は、ロバスト性に関して有用な特性を示す。
【0058】
さらに、この方法は、この新しい制約を不均一に追加する。この新しい制約を一様に使用することからなるナイーブなアプローチでは、制御の欠如が工業的設定における本アプローチの適用可能性を制限する。特に、一様なLVCを施行することは設計のいくつかの領域において応力の増大をもたらし、これは構造的破損の危険因子を増大させる。
【0059】
したがって、この方法は、プロセスの収束に影響を与えることなく、トポロジー最適化定式化におけるLVCに対する精密な制御を与える。さらに、本方法は、LVCに対するその新たなレベルの制御を自動的に利用することができる。
【0060】
本方法は例ではLVCが空間内の各点に対して異なる値で定義され得るように、LVCを定式化することができる。したがって、設計スペースにわたって変化することを可能にする。これはまた、局所体積導関数の計算の変形例につながることがあり、これらの導関数は最適化プロセスに関与することがある。
【0061】
ここで、設計空間にわたってLVC値を包括的に制御することにより、本方法は、適切で不均一な(「動的」とも呼ばれる)スカラー場を自動的に生成して、現在の制約を制御することができる。この場は特定の例ではいわゆるペナルティ化が非アクティブ化され、多くの位置で中間設計変数をもたらし、LVCが実施されない、別のトポロジー最適化の結果であることが可能である。
【0062】
この新しいアプローチは、軽量多孔質構造のロバスト性及び信頼性から利益を得ることを可能にする一方で、高応力及び変形の領域においてLVCを自動的に調節する。潜在的に、これはまた、設計及び機械的特性を手動で制御及び調整するための有用なツールである。さらに、この新しいアプローチは、最適化された設計を生成するためのワークフローに追加の計算コストをほとんど追加しない。
【0063】
本方法の理解を容易にするために、以下では、ナイーブな一様なLVCトポロジー最適化(以下では「一様なLVC最適化」と呼ぶ)の例を説明し、そのような例が前述の一般的なトポロジー最適化ワークフロー内にどのように適合するかを説明する。この方法の例がどのようにLVCを不均一に実施するかは、一様なLVC最適化の議論を参照して後に提示される。
【0064】
最適化ワークフローにLVCを追加するという概念は、
図4のワークフローに基づいて、ステップ6で最適化に追加の制約が与えられ、設計のためにその対応する導関数を計算することに相当し得る。さらに、ステップ7では、一様LVC最適化が例では特に、この追加の非線形制約を処理するためにMMAオプティマイザを使用することができる(方法の例がMMAを使用するのと同じ理由のため)。ワークフロー全体の他の全てのものは、同一のままであることができる。
【0065】
LVCは、GVCとの類似性を使用して直感的に解釈することができる。GVCは、設計空間内の材料の最大許容量を定義する。したがって、30%に設定されたGVCは、最終的な設計が最大で30%の要素が固形物質で満たされ、少なくとも70%の要素が空であることを意味する(設計空間内の設計要素が中間の比重を有しない理想的な状況を仮定する)。
【0066】
LVCは全く同じように機能するが、設計空間全体に最大許容量の材料を適用する代わりに、LVCは設計空間のより小さい区画(すなわち、局所的近傍)に最大許容量の材料を適用する。すなわち、LVCが40%に設定され、GVCが30%に設定される場合、最終設計は多くとも30%の固体材料を有する要素を有することができ、設計空間内の規定されたサイズの小さなパーティションにズームインする場合、多くとも40%の固体材料を有する要素を有することができる。
【0067】
図5は、一様なLVC最適化で最適化され、局所近傍及び局所体積分率のための区画の様々なサイズ及び大きさでそれぞれ最適化された複数の設計を示している。特に、
図5は、有限要素当たり1つのLVCを介して規則的FEM上に一定に分布された各設計のための半径R及び局所体積分率αの、設計パラメータの異なるセットのためのLVCを有する6つの収束設計を示す。また、
図5は、毎回達成されるコンプライアンスCを提供する。
図5の設計に適用される離間した設計は、
図2に示されるものである。
【0068】
したがって、LVCはGVCよりも強い(すなわち、材料レイアウトに対してより制約がある)制約であることに言及する価値がある。さらに、LVCのような制約が設計空間全体をカバーする局所近傍のパーティションのサイズについて定義された場合、それは、GVCと厳密に等価になる。
【0069】
計算と実施
設計空間内の任意の所与の要素について、一様なLVC最適化はそれらの局所近傍における密度を合計することができ、それによって、所与の区画についての局所体積分率を得ることができる。しかしながら、有限要素当たり1つの局所体積分率を有することは、標準的な数学的プログラミングアルゴリズムによって容易に解くことができないほど多くの制約を生じる。代わりに、一様なLVC最適化は任意の要素の最大局所体積分率に対する制約を考慮し、最大関数を、最終設計のために容易に解くことができる単一の集約制約に変換することができる。ネイティブ最大関数は微分不可能であるので、それを連続的かつ微分可能な集約関数、例えばP-Normで近似することもより効率的であり得る。しかし、他の連続的かつ微分可能な集約関数を使用することもできる。
【0070】
本制約の導関数を計算し、実施することができる。一様なLVC最適化はワークフローのステップ6で新しい制約を評価し、それを数学的プログラミングアルゴリズムに直接適用し、GVCと同様にステップ7で設計要素の相対密度を更新することができる。前述したように、一般的なトポロジー最適化ワークフローの残りの部分は、不変のままであってもよい。
【0071】
一様なLVC最適化に基づくがそれから逸脱する方法の例をここで説明する。
【0072】
不均一/動的局所体積制約
LVCを導入するための1つの主要な点は、よりロバストな構造を暗黙的に構築する最適化を実施することであり得る。
【0073】
安定性
構造物の剛性及び応力は、所定の荷重条件下での変形及び破損に対する抵抗性を記述する明確な尺度である。一方、ロバスト性とは、様々な条件又は予期しない事象に抵抗する構造の能力を指す。このような予期しない事象は不可避であり、例えば、力の方向、誤使用負荷の場合、製造欠陥、座屈、又は理論的に規定された仕様をそれらの現実の対応物と正確に一致させない他の事象のような負荷の場合の変化であり得る。
【0074】
設計されている機械部品がその寿命中に遭遇するあらゆる事象を完全に記述することは非常に複雑であるので、予期された、最も一般的なシナリオにおいて良好に機能するように設計を最適化することが効率的である。一方で、予期されない事象に対していくらかのロバスト性を有することもできる。したがって、本方法の設計プロセスは、予想されるシナリオの最適化と予想外のイベントのロバスト性との間のバランスをとることができる。
【0075】
一様なLVC最適化は多孔質構造を生成し、したがって、構造に冗長性を誘発し、この冗長性は、そのロバスト性に暗黙のうちにプラスの効果を有する傾向がある。しかしながら、制約は設計空間に均一に適用されるので、それはまた、例えば、境界条件、力、又は設計空間内の幾何学的に制限された領域の近くの、高い変形可能かつ応力を受けた領域において、強く、かさばり、かつ中実のサブコンポーネントを生成するための最適化を妨げる。
【0076】
この考察に基づいて、本方法は1つ又は複数のLVCを使用して得られる多孔質構造のロバスト性から利益を受ける設計を得ることができ、一方、設計空間のいくつかの重要な構造領域を材料で100%まで充填することも可能にする。これは、局所量制約の不均一な分布(以下では「動的」LVCとも呼ばれる)につながる。ここで、各局所量制約が材料のそれぞれの局所体積分率に対するそれぞれの上限を表す動的LVCの実装について説明する。これらの実施態様は、比較的ロバストかつ高速に収束する。
【0077】
前述のように、局所体積分率は尺度であり、設計空間内の各有限要素について定義することができる。これは、この方法が要素のある部分集合に対してのみ制約を適用することを考慮し、他の要素をフリーのままにすることができることを意味する。この方法は、設計空間の各要素及びその対応する区画に対して任意のLVCを可能にすることによって、この考えを一般化する。言い換えれば、この方法は所与の要素の局所体積分率を、その隣の要素について任意の値(例えば、40%)未満、及び任意の他の値(例えば、45%)未満になるように制約することができ、以下同様に、設計空間内の全ての要素について制約することができる。あるいは、この方法が各要素について考慮される局所的近傍のサイズ(パーティションのサイズ)を変調することもできる。例では、本方法が各設計要素について、所与の近傍内の局所的近傍サイズ及び局所的体積分率の両方を変調することができる。
【0078】
一様なLVCのナイーブな場合、制約は全ての要素について同じであるため、定式化が簡単であり、したがって、所与の集約関数、例えばP-Normを使用して適用することが簡単である。しかしながら、動的LVCの場合、制約は、要素ごとに異なる値を有する可能性がある。これは、メソッドがこれらの局所的な変動に適応するように制約定式化を修正することができることを意味する。これをここで説明する。
【0079】
FEM内の要素の集合を、
【数1】
とし、設計空間内の所与の要素を
【数2】
とし、所与の要素の相対密度(すなわち、所与の要素内の材料の体積分率)を
【数3】
とし、所与の要素に対して選択された近傍内の要素の集合を
【数4】
とし、所与の要素の局所近傍における平均相対密度、すなわち、その局所体積分率を
【数5】
とする。この方法は、以下を考慮することができる
【数6】
【0080】
所与の要素に対するLVC値を
【数7】
とする。デザイン空間内のどの要素に対しても、トポロジー最適化へのインプットとして以下の制約の集合を提供するダイナミックLVCの手段を強制する。
【数8】
厳密に正である
【数9】
を用いれば、これは次のように並べ替えることができる
【数10】
この方法は、例ではこの制約のセットを、最大関数を有する単一の制約に集約することができる
【数11】
【0081】
本方法は以下に説明するように、
【数12】
を用いたトポロジー最適化、又はその代わりに微分可能な関数に変換することによって制約することができる。
【0082】
(例えば、2以上及び/又は20以下又は10以下、具体的には
【数13】
である
【数14】
を用いた)P-Normに対して選択された指数値を
【数15】
とすると、本方法は、例では集約制約
【数16】
を、以下の式で近似することができる
【数17】
【0083】
微分ステップを明確にするために、我々は、以下のように
【数18】
を導入する。
【数19】
【0084】
勾配に基づく最適化の範囲内で、制約の勾配
【数20】
は、以下のような連鎖規則を使用することによって計算することができる:
【数21】
【0085】
動的LVC及びその勾配に関連して勾配ベースの数学的プログラミング方法(例えば、MMAオプティマイザ)を使用すると、この方法は、計算効率のよい方法で、設計空間全体にわたって変化するLVCを有するように設計を最適化することを可能にする。
【0086】
上述したのと同様のステップに従うことによって、制約は、他の例では以下のように定式化することができることに留意されたい:
【数22】
【0087】
さらに、上記の式は、他の微分可能な集約関数を使用して定式化することもできる。
【0088】
設計空間の要素ごとに異なる特性を有する新しい制約は、
場
【数26】
又は
場
【数27】
、あるいはこれらの
場の両方によって制御することができる。これらは制約場と呼ぶことができる。これらの
場は最適化セットアップのために、空間内の各点に対する所望の局所体積分率を定義する。
【0089】
次に、この方法を統合するワークフローについて説明する。
【0090】
ワークフローでは、局所量制約の不均一分布がFEMに関連付けられたデータ以外の情報を使用せずに(例えば、それらの位置以外の個々の有限要素特性に関する情報を使用せずに)、FEM上でユーザによって手動で設定されてもよい。
【0091】
他のワークフローでは、本方法が代替的に又は代替的に、不均一LVC分布下でのトポロジー最適化の前に、FEM及びFEMに関連付けられた汎用データに基づいて(すなわち、この時点で不均一LVC分布なしで)別の初期トポロジー最適化を実行することを含むことができる。そのような場合、本方法は前記他のトポロジー最適化の結果に基づいて、不均一分布を手動で、半自動的に、又は完全に自動的に決定することを含んでもよい。したがって、初期トポロジー最適化は、局所量制約を設定することを可能にする前処理を形成する。
【0092】
トポロジー最適化の分野からそれ自体知られているように、初期トポロジー最適化は結果として密度場(すなわち、FEMの有限要素当たりの材料の体積分率の値)を提供することができ、任意選択的に、他の結果として、前記密度場に関連する(対応する)歪場、前記密度場に関連する応力場、及び/又は前記密度場に関連する圧縮場を提供することができる。そのような場合、方法は、そのような結果として生じる場のいずれか1つ又は任意の組合せに基づいて不均一分布を決定することを含むことができる。
【0093】
例では、この方法が密度、歪み、応力、及び/又は圧縮場に基づいて1つ又は複数の局所量制約を自動的に決定することを含むことができる。初期トポロジー最適化は、問題定式化の単純化された力/荷重、及び場の形成でのその機械的特性のために最適化された材料の初期分布/レイアウトを提供し得る。本方法はLVC(複数可)を適用する必要がある場所を確立するために、この情報に依拠することができる。
【0094】
この自動化は、様々な方法で実施することができる。
【0095】
一例として、この方法はFEMの1つ又は複数の対応する有限要素に対して、密度場によって、又は密度場、歪み場、応力場、及び/又は圧縮場のいずれか1つ又はいずれかの組合せの任意の正規化関数(すなわち、0と1の間の値を有する)によって提供される値を、FEMの前記対応する有限要素に対して提供されるLVC制約の上限として直接使用することができる。このような場合、局所ゾーンは上述の任意の方法で、例えば、所定の一定の半径の近傍として定義されてもよい。
【0096】
代替例として、本方法は、前記密度場又は前記正規化関数をしきい値処理することを含むことができる。言い換えれば、本方法は初期トポロジー最適化から得られる場の値をクラスタ化し、それによってFEMを有限要素の異なる領域に分割することができる。クラスタの数は、厳密に1より多くてもよく、及び/又は厳密に20又は10より少なくてもよく、例えば2、3、4又は5に等しい。次に、それぞれの上限を、前記領域内の場の値に基づいて、各領域について定義することができる。
【0097】
例では、本方法が代替的に又は追加的に、(例えば、グレースケール又は色強度を使用して)密度場のグラフィカル表現を表示するステップと、(例えば、グラフィカル)ユーザ対話を介して1つ以上の局所量制約を決定するステップとを含んでもよい。そのような場合、制約の微分は、力を有するゾーン、クランプを有するゾーン、又はモデル化オブジェクトの狭窄ゾーンになることが予想されるゾーンなどの要因に依存することがある。
【0098】
工業的な環境では、高い歪み又は応力の領域において拘束を調節することが実用的であり、かつ望ましいことがある。したがって、これらの領域を見つけるために、提案されたアプローチは最初に、固体/空隙設計を強制するが、GVCを単に適用するLVC又はペナルティなしに、完全な(一般的である)トポロジー最適化を実行することができる。
【0099】
この非常に単純な最適化の結果は相対密度場であり得、ここで、各要素の相対密度は空隙と固体材料との間の範囲[0-1]内の任意の相対密度値を、これらの値を0又は1に強制するペナルティなしに選択する自由度を有し得る。しかしながら、いくつかの位置で予想されるように、0又は1の相対密度値が依然として観察され得る。
【0100】
この方法は、この相対密度場を使用して、ペナルティを伴う第2の完全トポロジー最適化を実行するために必要とされる制約場を作成することと、動的LVCを使用することとを含むことができる。
【0101】
上述のように、これは、第2の最適化のための制約場として、第1の収束最適化の相対元素密度場を単に転送することによって実行され得る。しかしながら、特定の実施例の数値試験は領域の区分を定義するために相対密度場の何らかの自動しきい値化を行い、次いで各領域について局所体積分率パラメータを選択することによって、これらの実施例についてより良い結果が達成され得ることを示した。
【0102】
図6は、ペナルティ化
場及びしきい値化
場のない最適化された設計を示す。この図は、相対密度場と、異なる領域に関連付けられたしきい値処理及び選択された局所体積分率上限を有するその処理されたバージョンとを示す。初期トポロジー最適化は、約0.5の相対密度を有する要素61、>0.9の相対密度を有する要素62、及び<0.1の相対密度を有する要素63を含む、LVC(又はペナルティ化)なしに最適化された設計60を提供する。相対密度値0.9での単純なしきい値処理を有する設計64は、100%に等しく選択された局所体積分率の上限を有する領域65と、50%に等しく選択された局所体積分率の上限を有する領域66とをもたらす。0.9、0.7、0.3及び0.1の相対密度値で多重しきい値を有する別の設計67は、異なるそのような領域におけるFEMのより微細な区分につながる。
【0103】
この例では、この方法が設計空間全体にわたって局所近傍サイズを一定に保っていることに留意されたい。しかしながら、この方法はまた、前述の数学的式に示されるように、それを調節することもできる。
【0104】
図7を参照すると、本発明のアプローチを検証するために、3Dシナリオについての試験が、クランプされた側部70及び力72を用いて行われた(大腿骨頭モデル)。力72の回転軸74は、ロバスト性試験のために使用される。試験は、3つの異なる最適化された設計を生成した:
・GVCのみを使用してAを設計する。
・GVCと一様なLVCを備えたB設計。
・GVC及び動的(すなわち不均一)LVCを有する設計C。
【0105】
各デザインは同じ質量(0.1%の誤差範囲内)を有し、図中にスライスビューとして表示される。示されるように、設計Aは大部分バルク領域を提示し、設計Bは大部分多孔質領域を提示するが、設計Cはバルク領域と多孔質領域の混成を形成する。
【0106】
各設計について、初期荷重ケース仕様から徐々に逸脱する荷重下で、そのコンプライアンス及び最大応力を試験した。この力の偏差は
図7に示されるように、軸74の周りに力を回転させることによって制御された。これにより、各設計の性能と、負荷が変化することにつれてこれらの性能がどのように劣化するかを評価することができ、したがって、予期しない事象に対するそれらのロバスト性を示す。
【0107】
結果を
図8-9にグラフで示す
。これらは、それぞれ、高コンプライアンスが大きな構造変形を
意味し、それによって低剛性で変化する荷重を考慮した各設計のコンプライアンスと、高最大応力が構造破壊のより高い危険性を
意味する、変化する荷重に対する各設計の最大応力とを示す。図示のように、設計Aは初期仕様からの逸脱がないが、力の向きの変化によって本明細書で定義される予期しない事象によって力が変化することにつれて、その特性が急速に劣化するときに最良に機能する。他方、設計Bは性能が悪いが、そのより良いロバスト性のために、力の向きの変化が増加することにつれて、設計Aよりも良くなる。最後に、設計Cは低い偏差については設計Aとほぼ同一の特性を示し、力の向きの高い偏差については設計Bに近い特性を示す。こ
れは、ダイナミックLVCが最適化が従来の設計手法の剛性及び多孔質設計手法のロバスト性の両方から利益を得る混成設計をもたらすことを可能にすること
を意味する。この方法は設計Cを自動的に生成することができる。
【0108】
次に、この方法によって設計することができる機械部品の例を説明する。
【0109】
実施例では、機械部品が付加的な製造可能部品である。言い換えれば、機械部品は、付加製造タイプの3D印刷プロセスを介して製造することができる部品である。先に述べたように、局所的な量の制約にそれぞれ対応する局所的なゾーンは、肺胞又は多孔質構造を呈することができる。各肺胞は局所ゾーンの直径(すなわち、最大サイズ)よりも小さいサイズを呈してもよい。したがって、機械部品は、「格子状」を意味する複雑な構造を呈してもよい。このような複雑な構造は伝統的な製造を介して製造することは困難であるが、付加製造を介して実現可能である。したがって、このような例における方法の後に、機械部品の1つ又は複数の実現を生成するための付加製造プロセスが続くことができる。付加製造プロセスは、設計されたモデル化オブジェクトを入力として取り得る。
【0110】
他の例では、機械部品が代替的に又は追加的に、1つ又は複数の機能的外側領域及び1つ又は複数の内部領域を有する部品であってもよい。「外側」領域とは、機械部品の外面(すなわち、機械部品から見て見える表面)を含む機械部品の任意の領域を意味する。「機能的」領域とは、別の部品との物理的相互作用のために、及び/又は負荷ケースを直接受け入れるために構成された領域を意味する。設計された部分と他の部分は、同じアセンブリの要素であってもよい。この方法は、その部品の各々の設計を含む、アセンブリを設計するためのプロセス内に含まれてもよい。「内部領域」は、いかなる外面も含まない領域を意味する。そのような例では内部領域が局所量制約でカバーされてもよく、一方、機能的外部領域は局所量制約がなくてもよい。したがって、この方法は機能的な外側領域における材料の集中を可能にし、内部領域における肺胞構造を強制することができる。材料許容量の濃度は機能的外側領域を耐性にする材料のバルク構造をもたらすことができ、これは、それらの機能が他の部品と物理的に相互作用するのに有用である。他方、内部領域の肺胞構造は、部品をより軽くすること、及び/又は改善された熱伝導特性を示すことを可能にし得る。特定の実施例では、外側機能領域が(機械部品を完全に取り囲む)機械部品の外側シェルを形成する。
【0111】
さらに他の例では、機械部品が代替的に又はさらに追加的に車両部品であってもよい。例えば、機械部品は、陸上、航空、又は航空空間車両部品とすることができる。そのような場合、(例えば、車両の別の部分との物理的相互作用によって)作用を対象ゾーンは、振動及び/又は乱流のみを対象ゾーンよりも制約され得る。動作の対象となるゾーンは、FEMに関連付けられたデータ内の力に関連付けられてもよい。振動及び/又は乱流にさらされるゾーンは、局所的な量の制約でカバーされ、それによってそれらのロバスト性を保証することができる。
【0112】
図10~20は、機械部品のそのような例の図を示す。
【0113】
図10は、ヘリコプタ
ー構造フレーム部品を設計するためのFEM100を示す。FE
M102のゾーンは局所的に拘束されない。このようなゾーン102は、機械部品の作動ゾーン、ここではボルト、電気及び機械部品の固定のための所定のシェル領域に対応する。この図は局所的拘束によって制御される多孔性の異なるレベル104を示しており、その結果、設計全体にわたって多孔性構造体106が得られる。多孔質構造は他の構成要素が組み立てられ、位置決めされる所定のシェル領域に適合し、支持を提供する。さらに、多孔質構造の性質はそれらを振動を減衰させるのに有効にし、したがって、前記構成要素を保護する。最適化の結果として設計されたモデル化オブジェクト111が
図11に示されている。
図11-
12は、モデル化オブジェクト111をヘリコプタ
ーの他の部分に組み立てることができる方法を示す。
【0114】
図14は、その内部構造を示す切断部を有する方法で設計され得る飛行機翼を示す。翼は、主空気力学的荷重を支えるための中実壁構造の生成を可能にする局所的な拘束を伴わない中心軸142を有する。翼はまた、小さなねじり力に対処するために、疎なトラス構造を形成するように翼形部の前部及び後部付近を局所的に拘束する領域144を有する。
【0115】
図15は、別のヘリコプター部品、すなわち電気モーターホルダー及び熱交換器を示す。この部品は熱交換を容易にするために多孔度が変化する構造152を有し、局所的に拘束されるように設計される。部品はまた、電気部品固定のための中実領域154と、局所的な拘束が設定されていないボルト固定のための中実領域156とを有する。
【0116】
図16~18は、局所的拘束のための手動領域選択を伴う方法によって設計可能なコネクタロッドを示す。ロッドは、荷重及び固定部の近くに領域162を有する。手動アプローチは、ここで
局所制約を無効にすることができる。ロッドはまた、有限要素解析によって計算されたような高い機械的応力を有する領域172を有する。手動アプローチは、ここで
局所制約を無効にすることができる。ロッドはまた、作用ゾーンから安全な距離にある領域182(すなわち、機能しない内部領域)を有する。ユーザは、この領域においてのみ
局所制約を増加させることを選択することができる。
【0117】
図19は、衝突緩衝のための自動車フロントバンパーを示す。それらの高い冗長性のために、多孔質構造は徐々に破壊及び崩壊し、固体構造は突然破壊する。多孔質構造は、衝突からのエネルギーを減衰させるのに極めて効率的である。したがって、この部品は、中実の前部ブロックの出現を可能にするために局所的な体積制約のない領域192と、冗長な多孔質構造を生成するために強い局所的な体積制約のある領域194とを有するように設計されてもよい。
【0118】
図20は、固体及び多孔質構造を混合する工業部品を示す。この部品は、機能領域及び多孔質軽量内部領域204を有する中実外殻202を含む最適化された工業部品である。