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特許7402020燃焼装置、筒内情報検出器及び信号処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】燃焼装置、筒内情報検出器及び信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/12 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
F23N5/12 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019205823
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021076354
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】519048584
【氏名又は名称】株式会社セイブ・ザ・プラネット
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泉 光宏
(72)【発明者】
【氏名】楠原 功
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184179(JP,A)
【文献】特開昭54-030536(JP,A)
【文献】特開2007-040697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回流とされた混合気を導引させ筒内で前記混合気を燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼に関する筒内情報を得るためのイオン電流検出用の第1イオンプローブ及び第2イオンプローブと、
これらのイオンプローブから検出情報を受け、前記検出情報を電気信号として出力するイオン検出回路部と、
前記イオン検出回路部からの信号が入力される演算部と、を備え 、
前記第1イオンプローブ及び第2イオンプローブが、前記燃焼筒内の互いに異なる燃焼状態とされた領域に配置され
前記演算部は、
前記第1イオンプローブから検出されたイオン電流及び前記第2イオンプローブから検出されたイオン電流のうち少なくとも一方に係数を乗算し、この乗算後にこれらを加算することで前記燃焼筒全体のイオン電流を求める、燃焼装置。
【請求項2】
旋回流とされた混合気を導引させ筒内で前記混合気を燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼に関する筒内情報を得るためのイオン電流検出用の第1イオンプローブ及び第2イオンプローブと、
これらのイオンプローブから検出情報を受け、前記検出情報を電気信号として出力するイオン検出回路部と、
前記イオン検出回路部からの信号が入力される演算部と、を備え 、
前記第1イオンプローブ及び第2イオンプローブが、前記燃焼筒内の互いに異なる燃焼状態とされた領域に配置され、
前記演算部は、
前記第1イオンプローブからのイオン電流に基づいて当量比に対する第1の傾き情報を算出する処理と、
前記第2イオンプローブからのイオン電流に基づいて当量比に対する第2の傾き情報を算出する処理と、
所定の当量比に対する前記第1の傾き情報と前記第2の傾き情報とのパターンを特定し、これに基づいて当量比の状態を判定する処理と、を実行させる、燃焼装置
【請求項3】
前記混合気を前記燃焼筒の筒軸心線回りに旋回させるスワラが、前記燃焼筒の底壁に配置されている、請求項1又は2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記第1イオンプローブが前記混合気の前記旋回流の主流の内部の領域に配置され、前記第2イオンプローブが前記混合気の前記旋回流の前記主流の外部の領域に配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブのうち、少なくとも一方が配置される前記領域は、前記混合気の再循環領域である、請求項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブがそれぞれ配置される前記領域は、いずれもが前記混合気の再循環領域である、請求項に記載の燃焼装置。
【請求項7】
混合気の旋回流が投入される燃焼筒内の、互いに異なる燃焼状態とされた領域に配置されているイオン電流検出用の第1イオンプローブ及び第2イオンプローブと、
これらのイオンプローブからの検出情報を受け、前記検出情報を電気信号として出力するイオン検出回路部と、
前記イオン検出回路部からの信号が入力される演算部とを備え、
前記演算部は、
前記第1イオンプローブから検出されたイオン電流及び前記第2イオンプローブから検出されたイオン電流のうち、少なくとも一方に係数を乗算し、この乗算後にこれらを加算することで前記燃焼筒全体のイオン電流を求める、燃焼筒内情報検出器。
【請求項8】
混合気の旋回流が投入される燃焼筒内の、互いに異なる燃焼状態とされた領域に配置されているイオン電流検出用の第1イオンプローブ及び第2イオンプローブと、
これらのイオンプローブからの検出情報を受け、前記検出情報を電気信号として出力するイオン検出回路部と、
前記イオン検出回路部からの信号が入力される演算部とを備え、
前記演算部は、
前記第1イオンプローブから検出されたイオン電流に基づいて当量比に対する第1の傾き情報を算出する処理と、
前記第2イオンプローブから検出されたイオン電流に基づいて当量比に対する第2の傾き情報を算出する処理と、
所定の当量比に対する前記第1の傾き情報と前記第2の傾き情報とのパターンを特定し、これに基づいて当量比の状態を判定する処理と、を実行させる、燃焼筒内情報検出器
【請求項9】
前記第1イオンプローブが前記混合気の前記旋回流の主流の内部の領域に配置され、前記第2イオンプローブが前記混合気の前記旋回流の前記主流の外部の領域に配置されている、請求項7又は8に記載の燃焼筒内情報検出器。
【請求項10】
前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブは、双方ともに、前記混合気の再循環領域に配置されている、請求項7から9のいずれかに記載の燃焼筒内情報検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼装置、燃焼に関する筒内情報検出器及び信号処理装置に関し、より詳しくは、連続燃焼を行う燃焼システム、高熱炉、ガスバーナーあるいはバイオマス燃焼システム等において、アンモニア等の難燃性の燃料を用いる燃焼装置、筒内情報検出器及び信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量削減の要求に伴い、炭素系の燃料に代わる燃料として、燃焼しても二酸化炭素を排出しないアンモニアへの期待が高まっている。一方、アンモニアは難燃性燃料であり、炭素系燃料と比較すると、初期着火に困難性があるばかりでなく、連続燃焼時における安定した燃焼状態の維持にも課題が残る。
【0003】
連続燃焼時に、アンモニアを含む混合気を、旋回流として燃焼筒内に送り込むことにより、広範囲に保炎できることが知られている。一方、実用条件を考慮すると、温度等の外部条件や燃焼装置の経時変化等の様々な外乱が懸念され、常に最適な燃焼状態を維持するためには、燃料流量や機関出力等の入出力情報にだけとどまらず、直接燃焼状態を把握することが求められる。
【0004】
昨今、直接燃焼状態を把握する手段として、イオン電流検出用のイオンプローブを用いる技術が開発されている。特許文献1は、点火プラグにイオン電流検出用の電極を追加した構造であり、一対の電極の一方に電圧を印加した時に流れる電流の大きさから、イオン電流を測定し、それにより、点火プラグ近傍の燃焼状態を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-159705号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、燃料混合気を旋回流にして、燃焼筒内に送り込んでいる燃焼装置では、燃焼状態が異なる複数の燃焼領域が生じ、一ヶ所でイオン電流を測定するだけでは、燃焼筒内全体の燃焼状態を正確に把握することは、困難であった。
【0007】
本発明の目的は、燃焼筒内において、燃焼状態の異なる複数の燃焼領域が生じている場合でも、全体の燃焼状態を、前記従来技術よりも、正確に把握できる燃焼装置を提供することである。さらに、全体の正確な燃焼状態の把握に役立つ筒内情報検出器及び信号処理装置を提供することも目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃焼装置は、旋回流とされた混合気を導引させ筒内で前記混合気を燃焼させる燃焼筒と、前記燃焼に関する筒内情報をイオン電流から得るための複数のイオンプローブと、を備え、前記複数のイオンプローブは、各々が、前記燃焼筒内の空間のうち、異なる燃焼状態とされた領域に配置されている。
【0009】
この燃焼装置によると、複数の異なる燃焼状態の領域を、それぞれに配置されたイオンプローブにより、検出するので、燃焼筒内全体の燃焼状態を、従来よりも正確に把握できる。
【0010】
一実施形態の燃焼装置では、前記燃焼装置において、前記混合気を前記燃焼筒の筒軸心線回りに旋回させるスワラが、前記燃焼筒の底壁に配置されている。
【0011】
この燃焼装置によると、燃焼中、スワラにより、常に燃料混合気を強制的に旋回させているので、燃料混合気を燃焼筒内全体に広範囲に行き渡らせ、燃料効率が向上する。
【0012】
一実施形態の燃焼装置では、前記本発明又は前記最初の一実施形態において、前記複数のイオンプローブは、前記複数の領域のうち、前記混合気の前記旋回流の主流の内部の領域に配置されている第1イオンプローブと、前記複数の領域のうち、前記混合気の前記旋回流の前記主流の外部の領域に配置されている第2イオンプローブと、を含んでいる。
【0013】
この燃焼装置によると、旋回流の主流の内外に形成される両領域において、確実に燃焼状態を把握できる。
【0014】
一実施形態の燃焼装置では、二番目の一実施形態の燃焼装置において、前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブのうち、少なくとも一方が配置される前記領域は、前記混合気の再循環領域である。
【0015】
この燃焼装置によると、少なくとも一方のイオンプローブは、再循環領域に配置されるので、その領域における火炎の状態を、より確実に把握できる。
【0016】
一実施形態の燃焼装置では、二番目の一実施形態の燃焼装置において、前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブがそれぞれ配置される前記領域は、いずれもが前記混合気の再循環領域である。
【0017】
この燃焼装置によると、前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブともに、それぞれ再循環領域内に配置されるので、燃焼筒内全体において、さらに、確実に火炎の状態を把握できる。
【0018】
本発明に係る筒内情報検出器は、燃焼筒内の異なる燃焼状態とされた複数の領域に配置されている複数のイオンプローブからイオン電流に基づく検出情報を受け、前記検出情報を電気信号として出力するイオン検出部を備える。
【0019】
この筒内情報検出器によると、複数の異なる燃焼状態の領域を、それぞれに配置されたイオンプローブにより、イオン検出するので、燃焼筒内全体の燃焼状態を、従来よりも正確に把握できる。
【0020】
一実施形態の筒内情報検出器は、前記筒内情報検出器において、前記複数のイオンプローブは、前記複数の領域のうち、混合気の旋回流の主流の内部の領域に配置されている第1イオンプローブと、前記複数の領域のうち、前記主流の外部の領域に配置されている第2イオンプローブと、を含んでおり、前記イオン検出回路部は、前記第1イオンプローブから与えられた信号と、前記第2イオンプローブから与えられた信号と、を検出する。
【0021】
この筒内情報検出器によると、旋回流の主流の内外に形成される両領域において、確実に燃焼状態を把握できる。
【0022】
一実施形態の筒内情報検出器は、前記一実施形態の筒内情報検出器において、前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブは、双方ともに、前記混合気の再循環領域に配置されている。
【0023】
この筒内情報検出器によると、前記第1イオンプローブ及び前記第2イオンプローブともに、それぞれ再循環領域内に配置されるので、燃焼筒内全体において、さらに、確実に火炎の状態を把握できる。
【0024】
本発明に係る信号処理装置は、前記いずれかの実施形態に記載の筒内情報検出器と、前記筒内情報検出器から出力された異なる燃焼状態の領域に関する複数の出力信号が入力され、前記複数の出力信号を合成する、演算部と、を備える。
【0025】
この信号処理装置よると、異なる燃焼状態の領域に関する複数の出力信号を合成するので、筒内全体の燃焼状態を、正確に推定することができる。
【0026】
一実施形態の信号処理装置は、前記信号処理装置において、前記演算部は、前記第1イオンプローブから与えられた信号をAD変換して第1の情報として記録する処理と、前記第2イオンプローブから与えられた信号をAD変換して第2の情報として記録する処理と、前記第1の情報及び前記第2の情報のうち少なくともいずれか一方の情報に係数を乗算し補正情報を作成する処理と、前記第1の情報と前記第2の情報に係る補正情報、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報、又は、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報に係る補正情報、これらの何れかを加算させる処理と、を実行させる。
【0027】
この信号処理装置よると、異なる燃焼状態の領域に関する複数の出力信号を合成するので、筒内全体の燃焼状態を、より一層正確に、推定することができる。
【0028】
一実施形態の信号処理装置は、前記信号処理装置において、前記演算部は、前記第1の情報と前記第2の情報に係る補正情報、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報、又は、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報に係る補正情報、これらの何れかを加算させる処理と、を実行させる。
【0029】
この信号処理装置によると、異なる燃焼状態の領域に関するイオン検出量の変化から、燃料混合気の燃料及び空気の当量比を、グラフにより簡単に確認できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、燃料混合気を旋回流として燃焼筒内に供給して、燃焼するので、アンモニア等の難燃性の燃料を使用する場合でも、広範囲に燃料を供給し、燃料を無駄なく効率良く燃焼させることができる。しかも、複数の異なる燃焼状態の領域を、それぞれに配置されたイオンプローブにより、イオン検出するので、燃焼筒内全体の燃焼状態を、従来よりも正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る燃焼装置の全体概略図である。
図2図1の燃焼装置の燃焼筒を模式的に示す縦断面簡略図である。
図3図1の燃焼筒の底壁に配置されたスワラを上面から見た拡大平面図である。
図4図1の各イオン検出器及び信号処理装置(制御部)の接続を示すブロック図である。
図5図1の各イオン検出器を示す回路図である。
図6】内部再循環領域と外部再循環領域において、燃料混合気の当量比と、イオン電流の変化と、の関係を示すグラフである。
図7図6のグラフにおいて、当量比増の際のイオン電流の動きから、当量比を推定する表である。
図8図1の燃焼装置において、燃料の流速とイオン電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は本発明の実施形態に係る燃焼装置1の全体概略図であり、燃焼筒2は縦断面で示している。図1の燃焼装置1は、筒状の周壁3の上下端に上壁5及び底壁4を有する燃焼筒2と、底壁4の中央に形成された燃料投入用の投入口6の下側に配置された旋回流形成用のスワラ(旋回羽根)10と、スワラ10の下側に接続されてアンモニアガス等の燃料混合気をスワラ10に供給する燃料供給部11と、燃焼筒2内の燃焼状態、特に火炎の状態をイオン電流により検出する第1イオンプローブ21及び第2イオンプローブ22と、を備えて構成されている。上壁5の中央部には火炎が噴出する出力口9が形成されている。スワラ10は円筒状に構成されると共に、その軸心線が燃焼筒2の筒軸心線C1と同心で、上下方向に沿うように配置されている。なお、投入口6の範囲内又は範囲外には、二点鎖線で示すように、点火プラグ12が配置される場合もある。
【0034】
燃料供給部11には、燃料供給管31が接続され、該燃料供給管31の上流側は2つの分岐管32a、32bに分岐している。一方の分岐管32aには、アンモニアを収納する燃料タンク33が第1バルブ34を介して接続され、他方の分岐管32bには、エアコンプレッサ35が第2バルブ36を介して接続されている。
【0035】
スワラ10は、複数の傾斜羽根を有しており、燃料供給部11から供給されるアンモニアとエアとの混合気を、燃焼筒2内に旋回流として送り込む。投入口6から燃焼筒2内に送り込まれる前記旋回流の主流S0は、筒軸心線C1回りに旋回し、かつ、上方に向けて概ね円錐状に広がりながら上方に進む。
【0036】
燃焼筒2内の空間は、前記旋回流の主流S0により、該主流S0より内側(筒軸心線C1側)の内部再循環領域(Inner Recirculation zone、IRZ)Z1と、主流S0より外側の外部再循環領域(Outer Recirculation zone、ORZ)Z2と、に区画されている。内部再循環領域Z1では、燃焼中、前述の旋回流の主流S0の移動に伴い、燃料混合気が主流S0に引っ張られ、矢印S1のように、上方外方へと流れると共に、上部で筒軸心線C1側に渦巻き状に湾曲する内部再還流が生じる。一方、外部再循環領域Z2では、燃焼中、前述の旋回流の主流S0の移動に伴い、燃料混合気が主流S0に引っ張られ、矢印S2のように、上方外方へと流れると共に、上部で下方に渦巻き状に湾曲する外部再還流S2が生じる。
【0037】
イオン検出用の第1イオンプローブ21は、底壁4と平行な同一直線上で相対向する第1印加用電極21a及び第1接地用電極21bから構成されると共に、内部再循環領域Z1内で、筒軸心線C1近傍に配置されている。また、第1印加用電極21a及び第1接地用電極21bは、燃焼筒2の底壁4に立設された一対の第1支持脚25、25により支持されている。第1印加用電極21aに接続された電線41は、第1支持脚25内を絶縁状態で通って燃焼筒2の外部に導き出され、第1イオン検出回路部51に接続されている。第1接地用電極21bは、導電性の第1支持脚25及び導電性の底壁4を介して、接地用電線43に接続している。
【0038】
イオン検出用の第2イオンプローブ22は、底壁4と平行な同一直線上で相対向する第2印加用電極22a及び第2接地用電極22bから構成されると共に、外部再循環領域Z2内に配置されている。また、第2印加用電極22a及び第2接地用電極22bは、燃焼筒2の底壁4に立設された一対の第2支持脚26、26により支持されている。第2印加用電極22aに接続された電線45は、第2支持脚26内を絶縁状態で通って燃焼筒2の外部に導き出され、第2イオン検出回路部52に接続されている。第2接地用電極22bは、第1接地用電極21bと同様、底壁4を介して、接地用電線43に接続している。
【0039】
第1イオン検出回路部51及び第2イオン検出回路部52は、共通の信号処理装置(制御装置)53に接続されている。信号処理装置53の信号出力部は、電線54、55介して、第1、第2バルブ34、36の駆動アクチュエータ部34a、36aに接続されている。信号処理装置53の出力信号を各駆動アクチュエータ部34a、36aに送ることにより、第1、第2バルブ34、36の開閉及び開度を制御し、燃料タンク33からのアンモニア(燃料)及びエアコンプレッサ35からの圧縮エアの吐出量を調節できる。
【0040】
図2は、図1の燃焼装置1の燃焼筒2を模式的に示す縦断面簡略図である。この図2において、旋回流の主流S0、内部再還流S1及び外部再還流S2を、直線及び楕円の単純な形状で表すことにより、内部再循環領域Z1及び外部再循環領域Z2の構成を、分かりやすくしている。
【0041】
図3は、前述のスワラ10の平面図であり、多数の傾斜羽根10aが周方向に等間隔をおいて配置されており、また、筒軸心線C1にスワラ10の中心が位置するように、底壁4の中央に配置されている構成を明確に示している。
【0042】
図4は、第1、第2イオンプローブ21、22、第1、第2イオン検出回路部51、52、信号処理装置53、及び第1、第2バルブ34、36の接続を示すブロック図である。第1イオンプローブ21及び第1イオン検出回路部51により、第1イオン検出器61を構成し、第2イオンプローブ22及び第2イオン検出回路部52により、第2イオン検出器62を構成している。
【0043】
信号処理装置53には、第1、第2イオン検出回路部51、52からの電気の出力信号が入力される演算部65であって、予め組み込まれた設定プログラムに基づいて、種々の要望に沿う演算を行う演算部65と、演算部65の演算結果に基づいて、第1、第2バルブ34、36の開度調節を行う、バルブ制御部66と、メモリ部67と、が内蔵されている。
【0044】
図5は、第1、第2イオン検出器61、62の回路図であり、この図5において、第1、第2イオン検出回路部51、52は、それぞれ、電源51a、52a、抵抗51b、52b、及び電圧計測部51c、52cを備えて構成されている。電源51a、52aは、抵抗51b、52bを通して、第1、第2イオンプローブ21、22の第1、第2印加用電極21a、22aにそれぞれ電圧を印加する。この実施形態では、負の電圧が印加されるように電源51a、52aが配置される。
【0045】
電源51a、52aの電圧は、例えば-200Vとなるように構成される。第1イオンプローブ21の周辺にイオンが存在する時には、このイオンが第1印加用電極21aに引き寄せられ、電流(イオン電流)が流れる。存在するイオンが多い程、大きな電流が流れる。電圧計測部51cは、イオン電流により抵抗51bの両端部に発生した電位差を検知し、これらを増幅し、イオン電流に比例した電圧を検出し、これらの電圧からイオン電流値を得る。
【0046】
また、第2イオンプローブ22の周辺にイオンが存在する時には、このイオンが第2印加用電極22aに引き寄せられ、電流(イオン電流)が流れる。存在するイオンが多い程、大きな電流が流れる。電圧計測部52cは、イオン電流により抵抗52bの両端部に発生した電位差を検知し、これらを増幅し、イオン電流に比例した電圧を検出し、これらの電圧からイオン電流値を得る。
【0047】
なお、第1、第2イオン検出回路部51、52の電源51a、52aは、第1、第2印加用電極21a、22aに、正の電圧を印加する構成とすることも可能である。たとえば、電源51a、52aの電圧が200Vとなるように構成されてもよい。
【0048】
演算部65における各種処理のプログラミングを説明する。
【0049】
[プログラム1]
プログラム1は、次の処理を順次実行するように、メモリ部67に組み込まれ、保存されている。処理1と処理2は順序を逆にすることもできる。
【0050】
処理1:第1イオンプローブ21から与えられた信号をAD変換(交流直流変換)して第1の情報として記録する。
【0051】
処理2:第2イオンプローブ22から与えられた信号をAD変換(交流直流変換)して第2の情報として記録する。
【0052】
処理3:第1の情報及び第2の情報のうち少なくともいずれか一方の情報に係数を乗算し補正情報を作成する。
【0053】
処理4:演算部は、第1の情報と前記第2の情報に係る補正情報、第1の情報に係る補正情報と第2の情報、又は、第1の情報に係る補正情報と第2の情報に係る補正情報、これらの何れかを加算させる。
【0054】
[プログラム2]
プログラム2は、次の処理を順次実行するように、メモリ部67に組み込まれて、保存されている。処理1と処理2は順序を逆にすることもできる。
【0055】
処理1:第1イオンプローブ21から与えられた信号をAD変換して第1の情報とし、該第1の情報に基づいて当量比に対する第1の傾き情報を算出する。
【0056】
処理2:第2イオンプローブ22から与えられた信号をAD変換して第2の情報とし、該第2の情報に基づいて当量比に対する第2の傾き情報を算出する。
【0057】
処理3:所定の当量比に対する前記第1の傾き情報と前記第2の傾き情報とのパターンを特定し、これに基づいて当量比の状態を判定する。
【0058】
以上のように構成された燃焼装置1の動作について以下に説明する。
【0059】
図1において、燃料タンク33からのアンモニアと、エアコンプレッサ35からのエアと、が燃料供給部11内で混合され、アンモニアガス(燃料混合気)となり、スワラ10でガイドされることにより、旋回流として燃焼筒2内に送り込まれる。
【0060】
燃焼筒2内は、旋回流の主流S0により、内部再循環領域Z1と、外部再循環領域Z2と、に区画され、内部再循環領域Z1では内部再還流S1生じ、外部再循環領域Z2では外部再還流S2が生じる。
【0061】
点火プラグ12あるいはその他の点火手段により、アンモニアガスに点火され、燃焼筒2内で燃焼し、火炎が形成される。この燃焼及び火炎の形成により、燃焼筒2内にイオンが発生する。
【0062】
燃焼時、図5の第1、第2イオンプローブ21、22において、第1、第2印加用電極21a、22aにそれぞれ電圧が印加される。これにより、第1、第2イオンプローブ21、22近傍のイオンがそれぞれ第1、第2印加用電極21a、22aに引き寄せられ、第1、第2イオン検出回路部51、52にそれぞれ電流が流れる。すなわちイオン電流が発生する。
【0063】
これらのイオン電流は、第1、第2イオン検出回路部51、52内をそれぞれ流れ、イオン電流により抵抗51b、52bの両端で発生した電位差を検知し、増幅する。電圧計測部51c、52cは、イオン電流に比例した電圧を計測し、この電圧からイオン電流の大きさの変化等が得られる。
【0064】
図4において、各第1、第2イオン検出回路部51、52からは、イオン電流の大きさに対応する電気信号が出力され、これら電気信号は信号処理装置53の演算部65に入力される。
【0065】
演算部65では、第1、第2イオン検出回路部51、52から入力された電気信号を、予め設定されたプログラム1あるいはプログラム2に基づいて演算処理し、その演算結果をバルブ制御部66に伝達する。
【0066】
たとえば、プログラム1を利用して、燃焼筒2全体の燃焼状態を把握する場合は、以下のように実行される。
【0067】
処理1:第1イオンプローブ21から与えられた電気信号をAD変換して第1の情報として記録する。
【0068】
処理2:第2イオンプローブ22から与えられた電気信号をAD変換して第2の情報として記録する。
【0069】
処理3:前記第1の情報及び前記第2の情報のうち、少なくともいずれか一方の情報に補正の係数αを乗算し、補正情報を作成する。
【0070】
処理4:前記第1の情報と前記第2の情報に係る補正情報、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報、又は、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報に係る補正情報、これらの何れかを加算させる。
【0071】
たとえば、前記第1の情報と前記第2の情報に係る補正情報とを用いて演算する場合には、内部再循環領域Z1のイオン電流Iz1と、外部再循環領域Z2のイオン電流Iz2を補正したイオン電流α×Iz2とを加算することにより、燃焼筒2内全体の燃焼状態を把握する。
【0072】
ここで、燃焼筒2全体のイオン電流Iallは、次式で表される。
【0073】
【数1】
【0074】
補正の係数αは、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2との体積比、燃料混合気の流速比及びその他の環境条件、たとえば、流量比や燃焼筒温度等によって、的確に燃焼筒2内の全体の燃焼状態が表されるように切り換えられる。ちなみに、燃料混合気の流速とイオン電流との関係は、図8に示すように燃料混合気の流速が増加するに伴い、イオン電流が増加する傾向にある。
【0075】
前記処理4において、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報とを加算する場合には、燃焼筒2全体のイオン電流Iallは、次式で表される。
【0076】
【数2】
【0077】
また、前記第1の情報に係る補正情報と前記第2の情報に係る補正情報とを加算する場合には、燃焼筒2全体のイオン電流Iallは、次式で表される。
【0078】
【数3】
【0079】
前記符号βは、第1イオンプローブ21の情報に係る補正の係数であり、第2イオンプローブ22の補正の係数αと同様、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2との体積比、燃料の流速比及びその他の環境条件、たとえば、流量比や燃焼筒温度等から設定される。
【0080】
図6は、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2について、燃料やエアの流量等を変化させることにより、空燃比を変化させ、当量比を0.8から1.4まで増加させた時のイオン電流の変化を示している。ここで、当量比(φ)は以下で表される。
【0081】
当量比(φ)=理論空燃比/実際の空燃比((A/F)st/(A/F))
【0082】
上述した式において、燃料混合気の実際の空燃比が理論空燃比と一致すると、当量比は1となる。そして、実際の空燃比が理論空燃比よりも燃料希薄側であると、当量比は1.0より小さく、実際の空燃比が理論空燃比よりも燃料過濃側であると、当量比は1.0より大きくなる。
【0083】
図6において、内部再循環領域Z1では、燃料希薄側から燃料割合が増加して理論空燃比(当量比1.0)に近づくにつれ、イオン電流が増加する傾向にある。燃料過濃側では、当量比1.1を最小値としてV字型に変化する傾向にある。すなわち、当量比が1.0から1.1まで燃料過濃側へ変化すると、イオン電流が減少し、当量比が1.1からさらに燃料過濃側へ増加すると、イオン電流が増加していることが理解できる。
【0084】
一方、外部再循環領域Z2では、燃料希薄側から当量比が1.0を超え、1.1に至るまでは、燃料割合が増加するにつれ、イオン電流が増加する傾向にある。そして、当量比が1.1から燃料過濃側に変化すると、イオン電流が減少していることが理解できる。
【0085】
この図6の内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2のイオン電流の変化を対比すると、当量比1(理論空燃比時)から当量比1.1の間で、内部再循環領域Z1のイオン量が減少するのに対して外部再循環領域Z2のイオン量が最大値まで増加している。これは、当量比が1.0付近で外部再循環領域Z2において火炎が発生始め、当量比が1.1付近で、最も火炎が多く発生していることを示していると推測できる。このように、当量比が1.0から1.1において、外部再循環領域Z2でイオン量が大きく増加することは、内部再循環領域Z1で発生するイオンの一部が外部再循環領域Z2へ移動したことを示しており、内部再循環領域Z1で急激にイオン量が減少していることを示している。
【0086】
図7は、実際の燃焼時において、図6の関係に基づき、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2の各イオン電流の変化から、実際の当量比を推定する場合の表である。すなわち、当量比が希薄側から増加する場合において、内部再循環領域Z1のイオンが増加し、外部再循環領域Z2のイオンも増加していることを検出している場合には、実際の当量比が1.0以下であると推定できる。内部再循環領域Z1のイオンが減少し、外部再循環領域Z2のイオンが増加していることを検出している場合には、実際の当量比が1.0~1.1の間であると推定できる。外部再循環領域Z2の当量比が減少していることを検出している場合には、内部再循環領域Z1のイオンの増減にかかわらず、実際の当量比が1.1より大きくなっていることが理解できる。
【0087】
したがって、図4の演算部65によって演算された内部再循環領域Z1及び外部再循環領域Z2のイオンの増減の結果から、バルブ制御部66では、当量比が、たとえば1.0~1.1の最適な値となるように、第1、第2バルブ34、36の開度を制御する。すわわち、理論空燃比に近い最良の燃焼状態となるように、燃料タンク33のアンモニア及びエアコンプレッサ35のエアの量を制御する。
【0088】
以上説明したように本実施形態によると、旋回流の主流S0で区画される燃焼状態の異なる領域、すなわち内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2のそれぞれに、イオン電流検出用の第1、第2イオンプローブ21、22を配置し、各々でイオン電流を検出しているので、燃焼筒2内全体の広い範囲で、燃焼状態及び火炎の状態を把握することができるのは勿論のこと、それらイオン量の演算結果に基づき、最良の燃焼状態維持のために、当量比や空燃比等を的確に制御することができる。
【0089】
スワラ10により、燃料混合気を旋回流として燃焼筒2内に送り込むので、燃料混合気を燃焼筒2の広範囲に行き渡らせることができ、燃費及び燃焼効率が向上する。
【0090】
前述の実施形態では、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2にそれぞれイオンプローブを一個ずつ配置しているが、複数個する構成とすることも可能である。
【0091】
なお、旋回流の主流S0により、燃焼状態の異なる2つの領域、すなわち、内部再循環領域Z1と外部再循環領域Z2とに区画しているが、3つの再循環領域あるいは4つ以上の再循環領域に区画する構成にも適用可能である。
【0092】
ここまで、本発明の実施形態を説明したが、前記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
2 燃焼筒
10 スワラ
21 第1イオンプローブ
22 第2イオンプローブ
51 第1イオン検出回路部
52 第2イオン検出回路部
53 信号処理装置
61 第1イオン検出器
62 第2イオン検出器
65 演算部
Z1 内部再循環領域
Z2 外部再循環領域
S0 旋回流の主流
S1 内部再還流
S2 外部再還流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8