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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/00 20060101AFI20231213BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20231213BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20231213BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231213BHJP
【FI】
H01S3/00 B
G02B6/036
G02B6/26
B23K26/064 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019212063
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021086840
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】松本 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 究
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159857(WO,A1)
【文献】特表2018-524174(JP,A)
【文献】特表2000-502821(JP,A)
【文献】特開2017-028185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光ファイバであって、
中心に形成されるセンタコアと、
前記センタコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記センタコアの周囲を覆う内側クラッドと、
前記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、前記内側クラッドの周囲を覆うリングコアと、
前記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質と
を有する出力光ファイバと、
赤外光波長域の波長を有する赤外レーザ光を生成する少なくとも1つの赤外レーザ光源と、
可視光波長域の波長を有する可視レーザ光を生成する少なくとも1つの可視レーザ光源と、
前記少なくとも1つの赤外レーザ光源に接続される少なくとも1つの赤外光ファイバと、
前記少なくとも1つの可視レーザ光源に接続される少なくとも1つの可視光ファイバと、
前記出力光ファイバの前記センタコアに前記少なくとも1つの可視光ファイバのうち少なくとも1つを接続するとともに、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち少なくとも1つを接続する光コンバイナと、
前記少なくとも1つの赤外レーザ光源と前記少なくとも1つの可視レーザ光源とを制御して前記出力光ファイバから出力される出力レーザ光のビームプロファイルを変化させる制御部と
を備える、レーザ装置。
【請求項2】
前記コンバイナは、
前記少なくとも1つの可視光ファイバのコアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って前記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、前記光軸方向において前記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、
前記ブリッジファイバの前記ブリッジ出射面に接続されるコアを含む中間光ファイバと
を含み、
前記出力光ファイバの前記センタコアは、前記中間光ファイバの前記コアに接続され、
前記出力光ファイバの前記リングコアは、前記少なくとも1つの赤外光ファイバのコアに接続される、
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記光コンバイナは、前記出力光ファイバの前記センタコアに前記少なくとも1つの赤外光ファイバのいずれも接続せずに前記少なくとも1つの可視光ファイバを接続するように構成される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光コンバイナは、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記少なくとも1つの可視光ファイバのいずれも接続せずに前記少なくとも1つの赤外光ファイバを接続するように構成される請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記光コンバイナは、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記少なくとも1つの可視光ファイバのいずれも接続せずに前記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち一部を接続するとともに、前記出力光ファイバの前記センタコアに前記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち他の一部と前記少なくとも1つの可視光ファイバとを接続するように構成される、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
出力光ファイバであって、
中心に形成されるセンタコアと、
前記センタコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記センタコアの周囲を覆う内側クラッドと、
前記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、前記内側クラッドの周囲を覆うリングコアと、
前記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、前記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質と
を有する出力光ファイバと、
赤外光波長域の波長を有する赤外レーザ光を生成する複数の赤外レーザ光源と、
可視光波長域の波長を有する可視レーザ光を生成する少なくとも1つの可視レーザ光源と、
前記複数の赤外レーザ光源に接続される複数の赤外光ファイバと、
前記少なくとも1つの可視レーザ光源に接続される少なくとも1つの可視光ファイバと、
前記出力光ファイバの前記センタコアに前記複数の赤外光ファイバのうち一部を接続するとともに、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記少なくとも1つの可視光ファイバのうち少なくとも1つと前記複数の赤外光ファイバのうち他の一部とを接続する光コンバイナと、
前記複数の赤外レーザ光源と前記少なくとも1つの可視レーザ光源とを制御して前記出力光ファイバから出力される出力レーザ光のビームプロファイルを変化させる制御部と
を備える、
レーザ装置。
【請求項7】
前記光コンバイナは、
前記複数の赤外光ファイバのうち前記一部のコアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って前記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、前記光軸方向において前記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、
前記ブリッジファイバの前記ブリッジ出射面に接続されるコアを含む中間光ファイバと、
を含み、
前記出力光ファイバの前記センタコアは、前記中間光ファイバの前記コアに接続され、
前記出力光ファイバの前記リングコアは、前記複数の赤外光ファイバのうち前記他の一部のコアと前記少なくとも1つの可視光ファイバのコアに接続される、
請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記光コンバイナは、前記出力光ファイバの前記センタコアに前記少なくとも1つの可視光ファイバのいずれも接続せずに前記複数の赤外光ファイバのうち前記一部を接続するとともに、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記複数の赤外光ファイバのうち前記他の一部と前記少なくとも1つの可視光ファイバとを接続するように構成される、請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記光コンバイナは、前記出力光ファイバの前記センタコアに前記複数の赤外光ファイバのうち前記一部と前記少なくとも1つの可視光ファイバのうち一部とを接続するとともに、前記出力光ファイバの前記リングコアに前記複数の赤外光ファイバのうち前記他の一部と前記少なくとも1つの可視光ファイバのうち他の一部とを接続するように構成される、請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記赤外レーザ光源で生成される赤外レーザ光のパワーと前記可視レーザ光源で生成される可視レーザ光のパワーとを制御するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記出力光ファイバから出力される前記出力レーザ光を加工対象物に向けて照射するレーザ照射部をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置に係り、特に複数の光導波路を有する出力光ファイバからレーザ光を出力可能なレーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工の分野では、加工速度や加工品質などの加工性能を向上する上で、加工対象物に照射するレーザ光のビームプロファイルを加工対象物の材料や厚みに合わせて変更することが重要である。近年、このような観点から、出力側の光ファイバに複数の光導波路を形成し、これらの光導波路のそれぞれに導入するレーザ光を制御することによって、加工対象物に照射されるレーザ光のビームプロファイルを所望の形態に変化させる技術も開発されている。例えば、異なる光源からのレーザ光を出力光ファイバの中心コアとその周囲に配置された外側コアとに導入してレーザ加工を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザ光は波長によって光学特性が異なるため、加工対象物に対するレーザ光の加工特性も波長によって異なる。例えば、可視レーザ光は、赤外レーザ光に比べて金属材料に対する吸収率が高く、金属材料からなる加工対象物を加熱するのに適している。一方、赤外レーザ光は、可視光に比べてNAが低く、光密度が高いため、加工対象物の局所的な加熱やピアシング(穿孔)を行うのに適している。しかしながら、このような異なる加工特性を有する可視レーザ光と赤外レーザ光の両方を含む出力レーザ光を出力できるようなレーザ装置は未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-524174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、可視レーザ光と赤外レーザ光の両方を含む出力レーザ光を出力可能なレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、可視レーザ光と赤外レーザ光とを用いて加工対象物の特性に応じた柔軟な加工を実現することができるレーザ装置が提供される。このレーザ装置は、第1の光導波路及び第2の光導波路を含む出力光ファイバと、赤外光波長域の波長を有する赤外レーザ光を生成する少なくとも1つの赤外レーザ光源と、可視光波長域の波長を有する可視レーザ光を生成する少なくとも1つの可視レーザ光源と、上記少なくとも1つの赤外レーザ光源に接続される少なくとも1つの赤外光ファイバと、上記少なくとも1つの可視レーザ光源に接続される少なくとも1つの可視光ファイバと、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち少なくとも1つを接続するとともに、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に上記少なくとも1つの可視光ファイバのうち少なくとも1つを接続する光コンバイナと、上記少なくとも1つの赤外レーザ光源と上記少なくとも1つの可視レーザ光源とを制御して上記出力光ファイバから出力される出力レーザ光のビームプロファイルを変化させる制御部とを備える。
【0007】
このような構成によれば、制御部によって出力レーザ光の中心側に含まれる赤外レーザ光とその外側に含まれる可視レーザ光を制御することができるので、これら2種類のレーザ光を含む出力レーザ光のビームプロファイルを柔軟に制御することが可能となる。
【0008】
上記制御部は、上記赤外レーザ光源で生成される赤外レーザ光のパワーと上記可視レーザ光源で生成される可視レーザ光のパワーとを制御するように構成されていることが好ましい。このように制御部を構成することで、出力レーザ光の中心側に含まれる赤外レーザ光のパワーとその外側に含まれる可視レーザ光のパワーとを制御することができるので、これら2種類のレーザ光を用いたより柔軟な加工を実現することが可能となる。
【0009】
上記出力光ファイバは、中心に形成される上記第1の光導波路としてのセンタコアと、上記センタコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記センタコアの周囲を覆う内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆う上記第2の光導波路としてのリングコアと、上記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質とを有していてもよい。このような構成によれば、内側に赤外レーザ光が含まれ、その外側に可視レーザ光が含まれる出力レーザ光を出力光ファイバから出力することができる。この場合には、内側の赤外レーザ光を切断用途、外側の可視レーザ光を予備加熱用途に用いることができるため、安定した加工を行うことが可能となる。
【0010】
あるいは、上記出力光ファイバは、中心に形成される上記第2の光導波路としてのセンタコアと、上記センタコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記センタコアの周囲を覆う内側クラッドと、上記内側クラッドの屈折率よりも高い屈折率を有し、上記内側クラッドの周囲を覆う上記第1の光導波路としてのリングコアと、上記リングコアの屈折率よりも低い屈折率を有し、上記リングコアの周囲を覆う低屈折率媒質とを有していてもよい。
【0011】
上記光コンバイナは、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に上記少なくとも1つの可視光ファイバのいずれも接続せずに上記少なくとも1つの赤外光ファイバを接続するとともに、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのいずれも接続せずに上記少なくとも1つの可視光ファイバを接続するように構成されていてもよい。
【0012】
あるいは、上記光コンバイナは、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバと上記少なくとも1つの可視光ファイバのうち一部とを接続するとともに、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのいずれも接続せずに上記少なくとも1つの可視光ファイバのうち他の一部を接続するように構成されていてもよい。
【0013】
あるいは、上記光コンバイナは、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に上記少なくとも1つの可視光ファイバのいずれも接続せずに上記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち一部を接続するとともに、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち他の一部と上記少なくとも1つの可視光ファイバとを接続するように構成されていてもよい。
【0014】
あるいは、上記光コンバイナは、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち一部と上記少なくとも1つの可視光ファイバのうち一部とを接続するとともに、上記出力光ファイバの上記第2の光導波路に上記少なくとも1つの赤外光ファイバのうち他の一部と上記少なくとも1つの可視光ファイバのうち他の一部とを接続するように構成されていてもよい。
【0015】
上記レーザ装置は、それぞれコアを含み、上記少なくとも1つの赤外レーザ光源及び上記少なくとも1つの可視レーザ光源の一方に接続される複数の第1の入力光ファイバと、上記複数の第1の入力光ファイバの上記コアに接続されるブリッジ入射面と、光軸方向に沿って上記ブリッジ入射面から離れるにつれて次第に径が小さくなる縮径部と、上記光軸方向において上記ブリッジ入射面とは反対側のブリッジ出射面とを有するブリッジファイバと、上記ブリッジファイバの上記ブリッジ出射面に接続されるコアを含む中間光ファイバと、コアを含み、上記少なくとも1つの赤外レーザ光源及び上記少なくとも1つの可視レーザ光源の他方に接続される少なくとも1つの第2の入力光ファイバとをさらに備えていてもよい。上記出力光ファイバの上記第1の光導波路及び第2の光導波路の一方は、上記中間光ファイバの上記コアに接続され、上記出力光ファイバの上記第1の光導波路及び第2の光導波路の他方は、上記少なくとも1つの第2の入力光ファイバの上記コアに接続されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、複数の第1の入力光ファイバのコアを伝搬する光をブリッジファイバでビーム径を小さくした後に出力光ファイバの第1の光導波路及び第2の光導波路の一方に導入しているため、第1の入力光ファイバの径を小さくすることなく第1の入力光ファイバをブリッジファイバに接続することができる。したがって、第1の入力光ファイバの機械的強度を維持することができるため、光コンバイナの製造も容易である。また、第1の入力光ファイバの径を小さくすることなく、第1の入力光ファイバの数を増やすことができるため、出力光ファイバの第1の光導波路及び第2の光導波路の一方に導入する光のパワーを高めることも容易となり、第1の光導波路及び第2の光導波路の一方を伝搬する光と第1の光導波路及び第2の光導波路の他方を伝搬する光の出力バランスを調整することも容易となる。
【0017】
上記レーザ装置は、上記出力光ファイバから出力される上記出力レーザ光を加工対象物に向けて照射するレーザ照射部をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、制御部によって出力レーザ光の中心側に含まれる赤外レーザ光とその外側に含まれる可視レーザ光を制御することができるので、これら2種類のレーザ光を含む出力レーザ光のビームプロファイルを柔軟に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ装置の構成を示す模式的ブロック図である。
図2図2は、図1に示すレーザ装置の出力光ファイバの断面を半径方向に沿った屈折率分布とともに示す図である。
図3図3は、図1に示すレーザ装置の光コンバイナを示す斜視図である。
図4図4は、図3に示す光コンバイナの分解斜視図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態におけるレーザ装置の構成を示す模式的ブロック図である。
図6図6は、図5に示すレーザ装置の光コンバイナを示す斜視図である。
図7図7は、図6に示す光コンバイナの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るレーザ装置の実施形態について図1から図7を参照して詳細に説明する。図1から図7において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図7においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるレーザ装置1の構成を示す模式的ブロック図である。図1に示すように、本実施形態におけるレーザ装置1は、赤外光波長域の波長を有する赤外レーザ光を生成する赤外レーザ光源10と、可視光波長域の波長を有する可視レーザ光を生成する複数の可視レーザ光源20と、赤外レーザ光源10から延びる赤外光ファイバ30と、可視レーザ光源20のそれぞれから延びる可視光ファイバ40と、内部に複数の光導波路を有する出力光ファイバ50と、赤外光ファイバ30及び可視光ファイバ40を出力光ファイバ50に接続する光コンバイナ60と、出力光ファイバ50の下流側の端部に設けられたレーザ出射部70と、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20を制御する制御部80と、加工対象物Wを保持するステージ90とを備えている。なお、本実施形態では、特に言及がない場合には、レーザ光源10,20からレーザ出射部70に向かう方向を「下流側」といい、それとは逆の方向を「上流側」ということとする。
【0022】
レーザ光源10,20としては例えばファイバレーザや半導体レーザを用いることができる。例えば、赤外レーザ光源10としてはYb添加ファイバを用いたファイバレーザやYAGレーザ、ディスクレーザを用いることができ、可視レーザ光源20として半導体レーザや赤外レーザ(例えばYAGレーザ)と非線形結晶(例えばLBO結晶)を用いた波長変換レーザなどを用いることができる。赤外レーザ光源10の定格出力は例えば1kw以上であり、可視レーザ光源20の定格出力は例えば100W以上である。本明細書において、赤外光波長域とは760nm~1100nmの波長域をいい、可視光波長域とは380nm~750nmの波長域をいう。例えば、赤外レーザ光源10により生成される赤外レーザ光としては、波長1000nm~1100nmの近赤外光を用いることができる。また、可視レーザ光源20により生成される可視レーザ光としては、青色波長域や緑色波長域のレーザ光や赤外レーザ光の第2高調波(SHG)を用いることができる。なお、本実施形態におけるレーザ装置1は、1つの赤外レーザ光源10と6つの可視レーザ光源20とを含んでいるが、レーザ光源10,20の数はこれらに限られるものではない。また、ビーム位置の確認のためなどに用いられるガイド光は、加工対象物Wを加工するのに必要なパワーを有するものではないため、本実施形態における赤外レーザ光源10や可視レーザ光源20により生成されるレーザ光とは本質的に異なるものである。
【0023】
図2は、出力光ファイバ50の断面を半径方向に沿った屈折率分布とともに示す図である。図2に示すように、出力光ファイバ50は、センタコア51と、センタコア51の周囲を覆う内側クラッド52と、内側クラッド52の周囲を覆うリングコア53と、リングコア53の周囲を覆う外側クラッド54とを有している。内側クラッド52の屈折率はセンタコア51及びリングコア53の屈折率よりも低くなっており、外側クラッド54の屈折率はリングコア53の屈折率よりも低くなっている。これにより、センタコア51の内部にレーザ光が伝搬する光導波路(例えば第1の光導波路)が形成され、リングコア53の内部にレーザ光が伝搬する光導波路(例えば第2の光導波路)が形成される。このように、本実施形態では、それぞれ独立した光導波路であるセンタコア51とリングコア53とが出力光ファイバ50の内部に同心状に配置されている。また、本実施形態では、リングコア53の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率媒質として、リングコア53の周囲に外側クラッド54が形成されているが、このような低屈折率媒質は、外側クラッド54のような被覆層に限られるものではなく、例えばリングコア53の周囲に空気の層を形成し、この空気の層を低屈折率媒質として用いてもよい。
【0024】
出力光ファイバ50のセンタコア51の外径、内側クラッド52の外径、リングコア53の外径、及び外側クラッド54の外径はレーザ出射部70から出射される出力レーザ光Lの強度分布を決定する重要なファクターであるが、レーザ装置1の用途や出力仕様に応じて任意に設定することができる。また、内側クラッド52の屈折率と外側クラッド54の屈折率とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
図3は光コンバイナ60を示す斜視図、図4は分解斜視図である。図3及び図4に示すように、この光コンバイナ60は、赤外光ファイバ30の下流側端部と、可視光ファイバ40の下流側端部と、出力光ファイバ50の上流側端部とを含んでいる。本実施形態における光コンバイナ60は、赤外光ファイバ30の下流側端部を出力光ファイバ50のセンタコア51に接続し、6本の可視光ファイバ40の下流側端部を出力光ファイバ50のリングコア53に接続するものである。
【0026】
赤外光ファイバ30は、コア31と、コア31の周囲を覆うクラッド32とを有しており、クラッド32の屈折率はコア31の屈折率よりも低くなっている。これにより、赤外光ファイバ30のコア31の内部に赤外レーザ光が伝搬する光導波路が形成される。したがって、赤外レーザ光源10で生成された赤外光波長域の赤外レーザ光は、赤外光ファイバ30のコア31の内部を伝搬するようになっている。
【0027】
可視光ファイバ40は、コア41と、コア41の周囲を覆うクラッド42とを有しており、クラッド42の屈折率はコア41の屈折率よりも低くなっている。これにより、可視光ファイバ40のコア41の内部に可視レーザ光が伝搬する光導波路が形成される。したがって、可視レーザ光源20で生成された可視光波長域の可視レーザ光は、可視光ファイバ40のコア41の内部を伝搬するようになっている。
【0028】
赤外光ファイバ30の下流側端部は、赤外光ファイバ30のコア31が出力光ファイバ50のセンタコア51の領域内に位置するように出力光ファイバ50の上流側端部に融着接続されている。また、可視光ファイバ40の下流側端部は、すべての可視光ファイバ40のコア41が出力光ファイバ50のリングコア53の領域内に位置するように出力光ファイバ50の上流側端部に融着接続されている。このとき、6本の可視光ファイバ40は、赤外光ファイバ30を取り囲んでその外周面に接するように配置され、隣り合う可視光ファイバ40は互いに接した状態となっている。
【0029】
このような構成において、赤外レーザ光源10で生成された赤外レーザ光は、赤外光ファイバ30のコア31を伝搬して光コンバイナ60により出力光ファイバ50のセンタコア51に導入される。出力光ファイバ50のセンタコア51に入射した赤外レーザ光は、センタコア51の内部を伝搬してレーザ出射部70から出力レーザ光Lの一部としてステージ90上の加工対象物Wに向けて出射される(図1参照)。また、それぞれの可視レーザ光源20で生成された可視レーザ光は、可視光ファイバ40のコア41を伝搬して光コンバイナ60により出力光ファイバ50のリングコア53に導入される。出力光ファイバ50のリングコア53に入射した可視レーザ光は、リングコア53の内部を伝搬してレーザ出射部70から出力レーザ光Lの一部としてステージ90上の加工対象物Wに向けて出射される(図1参照)。このように、本実施形態のレーザ装置1のレーザ出射部70からは、中心側に赤外レーザ光、その外側に可視レーザ光を含む出力レーザ光Lがステージ90上の加工対象物Wに向けて照射される。
【0030】
ここで、制御部80は、例えば赤外レーザ光源10に供給する電流及び可視レーザ光源20に供給する電流を制御することなどによって、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20を制御できるようになっている。このように、制御部80によって赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20を制御することによって、赤外レーザ光源10によって生成される赤外レーザ光のパワー及び可視レーザ光源20によって生成される可視レーザ光のパワーを調整することができる。したがって、制御部80によって赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20を制御して、赤外レーザ光源10から出力光ファイバ50のセンタコア51に導入される赤外レーザ光の強度と、可視レーザ光源20から出力光ファイバ50のリングコア53に導入される可視レーザ光の強度の割合を調整することが可能である。このような制御部80による制御により、レーザ装置1のレーザ出射部70から出力される出力レーザ光Lの中心側の赤外レーザ光のパワーとその外側の可視レーザ光のパワーを調整することができ、出力レーザ光Lのビームプロファイルを例えば加工対象物Wの材料や厚みに応じて柔軟に変化させることができる。
【0031】
例えば、銅などの金属材料は赤外光に比べて可視光の光吸収率が高いため、加工対象物Wが銅などの金属材料からなる場合には出力レーザ光Lの外側の可視レーザ光のパワーを上げることで加工対象物Wを効率的に加熱することができる。また、赤外光は可視光に比べてNAが低く、光密度が高いため、出力レーザ光Lの内側の赤外レーザ光のパワーを上げることで加工対象物Wの局所的な加熱やピアシングを行うことができる。また、このような赤外レーザ光と可視レーザ光とを含む出力レーザ光Lを加工対象物Wに照射すれば、加工部中心の周囲の領域を可視レーザ光で加熱して材料の溶融を促し、溶融した材料を赤外レーザ光で加工することができるので、加工中に生じるスパッタが抑制される。また、制御部80によって出力レーザ光Lにおける赤外レーザ光と可視レーザ光のパワーを制御することで、出力レーザ光Lのビームプロファイルを柔軟に制御することができるので、より柔軟な加工が可能となる。例えば、最初に可視レーザ光のみを加工対象物Wに照射して、加工対象物Wを加熱及び溶融した後に、赤外レーザ光を照射して加工対象物Wの光吸収を高めることで、より効率的な加工が可能となる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、中心側に赤外レーザ光が含まれ、その外側に可視レーザ光が含まれる出力レーザ光Lを出力光ファイバ50から出力することができる。また、制御部80によって出力レーザ光Lの中心側に含まれる赤外レーザ光のパワーとその外側に含まれる可視レーザ光のパワーを調整することができるので、これら2種類のレーザ光を用いた柔軟な加工を実現することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のように、赤外光ファイバ30を出力光ファイバ50のセンタコア51に接続し、可視光ファイバ40を出力光ファイバ50のリングコア53に接続した場合には、以下のような利点がある。銅などの金属材料は固体と液体とで赤外光吸収率が異なる。したがって、このような金属材料の固体を赤外レーザ光のみで加熱して加工すると、同じパワーで赤外レーザ光を照射していても、金属材料が溶融した瞬間に急激に赤外レーザ光が吸収されて急激に加熱され加工が難しくなる場合がある。一方、可視レーザ光は、固体の金属材料であっても光吸収率が高いため、効率的に金属材料を加熱し溶融させることができる。したがって、赤外光ファイバ30を出力光ファイバ50のセンタコア51に接続し、可視光ファイバ40を出力光ファイバ50のリングコア53に接続することで、外側の可視レーザ光によって加工対象物Wを効率的に加熱して溶融し、中心側の赤外レーザ光が溶融された金属材料にのみ照射されるようにすることができる。これにより、加工対象物Wが固体から液体に変化する際の赤外レーザ光による加工の不安定性を抑制しつつ、高いビーム密度で安定して加工対象物Wを加熱して加工することができる。
【0034】
本実施形態では、制御部80が赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20に制御信号を送信し、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20のオン・オフあるいは赤外レーザ光源10からの赤外レーザ光のパワー及び可視レーザ光源20からの可視レーザ光のパワーを制御して出力レーザ光Lのビームプロファイルを変化させるようにしているため、自由空間での光路の制御や光ファイバに応力や熱を作用させる付加的な部材を必要とせずに、高速かつ安定的にビームプロファイルを制御することが可能である。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施形態におけるレーザ装置101の構成を示す模式的ブロック図である。図5に示すように、本実施形態におけるレーザ装置101は、第1の実施形態における赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20に加えて、可視光波長域の波長を有する可視レーザ光を生成する複数の可視レーザ光源120をさらに備えている。また、レーザ装置101は、可視レーザ光源120のそれぞれから延びる可視光ファイバ140と、赤外光ファイバ30及び可視光ファイバ40,140を出力光ファイバ50に接続する光コンバイナ160と、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20,120を制御する制御部180とを備えている。
【0036】
可視レーザ光源120としては可視レーザ光源20と同様に例えばファイバレーザや半導体レーザを用いることができる。例えば、可視レーザ光源120により生成される可視レーザ光としては、青色波長域や緑色波長域のレーザ光や赤外レーザ光の第2高調波(SHG)を用いることができる。この可視レーザ光源120により生成される可視レーザ光の波長は可視レーザ光源20により生成される可視レーザ光の波長と同一であってもよいし、異なっていてもよい。可視レーザ光源120の定格出力は例えば100W以上である。なお、本実施形態におけるレーザ装置101は、1つの赤外レーザ光源10と6つの可視レーザ光源20と6つの可視レーザ光源120とを含んでいるが、レーザ光源10,20,120の数はこれらに限られるものではない。
【0037】
図6は光コンバイナ160を示す斜視図、図7は分解斜視図である。図6及び図7に示すように、本実施形態における光コンバイナ160は、第1の入力光ファイバとしての赤外光ファイバ30の下流側端部と、第1の入力光ファイバとしての可視光ファイバ40の下流側端部と、これらの光ファイバ30,40が接続されるブリッジファイバ161と、ブリッジファイバ161に接続される中間光ファイバ162と、第2の入力光ファイバとしての可視光ファイバ140の下流側端部と、出力光ファイバ50の上流側端部とを含んでいる。本実施形態における光コンバイナ160は、赤外光ファイバ30及び可視光ファイバ40を出力光ファイバ50のセンタコア51に接続し、可視光ファイバ140を出力光ファイバ50のリングコア53に接続するものである。
【0038】
可視光ファイバ140は、コア141と、コア141の周囲を覆うクラッド142とを有しており、クラッド142の屈折率はコア141の屈折率よりも低くなっている。これにより、可視光ファイバ140のコア141の内部に可視レーザ光が伝搬する光導波路が形成される。したがって、可視レーザ光源120で生成された可視光波長域の可視レーザ光は、可視光ファイバ140のコア141の内部を伝搬するようになっている。
【0039】
図6及び図7に示すように、本実施形態においては、可視光ファイバ40と赤外光ファイバ30とが、可視光ファイバ40が赤外光ファイバを取り囲んでその外周面に接するように配置された状態でブリッジファイバ161に接続されている。このとき、隣り合う可視光ファイバ40は互いに接した状態となっている。
【0040】
ブリッジファイバ161は、コア171と、コア171の周囲を覆うクラッド172とを有している。クラッド172の屈折率はコア171の屈折率よりも低くなっており、コア171の内部にはレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。例えば、コア171の周囲に空気の層を形成し、この空気の層をクラッド172の代わりに用いることも可能である。このようなコア-クラッド構造を内部に有するブリッジファイバ161は、光軸に沿って一定の外径で延びる第1の円筒部163と、第1の円筒部163から光軸に沿って次第に外径が小さくなる縮径部164と、縮径部164から光軸方向に沿って一定の外径で延びる第2の円筒部165とを含んでいる。
【0041】
第1の円筒部163の端面には、上述した可視光ファイバ40と赤外光ファイバ30とが融着接続されている。また、第2の円筒部165の端面には、中間光ファイバ162の上流側端部が融着接続されている。ブリッジファイバ161の上流側端面におけるコア171の大きさは、赤外光ファイバ30のコア31及びすべての可視光ファイバ40のコア41を内部に包含できるような大きさとなっており、赤外光ファイバ30と可視光ファイバ40とは、赤外光ファイバ30のコア31及びすべての可視光ファイバ40のコア41がブリッジファイバ161の上流側端面におけるコア171の領域内に位置するように融着接続される。
【0042】
このように、ブリッジファイバ161は、赤外光ファイバ30のコア31を伝搬する赤外レーザ光と可視光ファイバ40のコア41を伝搬する可視レーザ光とをそのコア171の内部に伝搬させ、縮径部164によってそのビーム径を小さくするように構成されている。なお、赤外光ファイバ30のコア31及び可視光ファイバ40のコア41からブリッジファイバ161のコア171にレーザ光が入射する際の反射を抑えるために、ブリッジファイバ161のコア171の屈折率は、赤外光ファイバ30のコア31及び可視光ファイバ40のコア41の屈折率と略同一であることが好ましい。
【0043】
中間光ファイバ162は、コア181と、コア181の周囲を覆うクラッド182とを有している。クラッド182の屈折率はコア181の屈折率よりも低くなっており、コア181の内部にはレーザ光が伝搬する光導波路が形成されている。中間光ファイバ162のコア181の大きさは、ブリッジファイバ161の下流側端面におけるコア171の大きさ以上となっており、ブリッジファイバ161と中間光ファイバ162とは、ブリッジファイバ161の下流側端面におけるコア171が中間光ファイバ162のコア181の領域内に位置するように融着接続される。このように、中間光ファイバ162は、ブリッジファイバ161から伝搬してきた赤外レーザ光及び可視レーザ光をそのコア181の内部に伝搬させるように構成されている。なお、ブリッジファイバ161のコア171から中間光ファイバ162のコア181にレーザ光が入射する際の反射を抑えるために、中間光ファイバ162のコア181の屈折率は、ブリッジファイバ161のコア171の屈折率と略同一であることが好ましい。
【0044】
中間光ファイバ162の下流側端部は、中間光ファイバ162のコア181が出力光ファイバ50のセンタコア51の領域内に位置するように出力光ファイバ50の上流側端部に融着接続されている。また、可視光ファイバ140の下流側端部は、すべての可視光ファイバ140のコア141が出力光ファイバ50のリングコア53の領域内に位置するように出力光ファイバ50の上流側端部に融着接続されている。このとき、6本の可視光ファイバ140は、中間光ファイバ162を取り囲んでその外周面に接するように配置され、隣り合う可視光ファイバ140は互いに接した状態となっている。
【0045】
このような構成において、赤外レーザ光源10で生成された赤外レーザ光は、赤外光ファイバ30のコア31を伝搬して光コンバイナ160のブリッジファイバ161のコア171に導入される。また、それぞれの可視レーザ光源20で生成された可視レーザ光は、可視光ファイバ40のコア41を伝搬して光コンバイナ160のブリッジファイバ161のコア171に導入される。このように、ブリッジファイバ161のコア171に赤外レーザ光と可視レーザ光とが入射し、赤外レーザ光及び可視レーザ光は縮径部164によってそのビーム径が小さくされた状態で中間光ファイバ162のコア181に入射する。中間光ファイバ162のコア181に入射した赤外レーザ光及び可視レーザ光は、コア181を伝搬して出力光ファイバ50のセンタコア51に導入される。出力光ファイバ50のセンタコア51に入射した赤外レーザ光及び可視レーザ光は、センタコア51の内部を伝搬してレーザ出射部70から出力レーザ光Lの一部としてステージ90上の加工対象物Wに向けて照射される(図5参照)。また、それぞれの可視レーザ光源120で生成された可視レーザ光は、可視光ファイバ140のコア141を伝搬して光コンバイナ160により出力光ファイバ50のリングコア53に導入される。出力光ファイバ50のリングコア53に入射した可視レーザ光は、リングコア53の内部を伝搬してレーザ出射部70から出力レーザ光Lの一部としてステージ90上の加工対象物Wに向けて出射される(図1参照)。このように、本実施形態のレーザ装置101のレーザ出射部70からは、中心側に赤外レーザ光及び可視レーザ光、その外側に可視レーザ光を含む出力レーザ光Lがステージ90上の加工対象物Wに向けて照射される。
【0046】
制御部180は、例えば赤外レーザ光源10に供給する電流、可視レーザ光源20に供給する電流、及び可視レーザ光源120に供給する電流を制御することなどによって、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20,120を制御できるようになっている。このように、制御部180によって赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20,120を制御することによって、赤外レーザ光源10によって生成される赤外レーザ光のパワー、可視レーザ光源20によって生成される可視レーザ光のパワー、及び可視レーザ光源120によって生成される可視レーザ光のパワーを調整することができる。したがって、制御部180によって赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20,120を制御して、赤外レーザ光源10及び可視レーザ光源20から出力光ファイバ50のセンタコア51に導入される赤外レーザ光の強度と可視レーザ光の強度との割合、あるいはセンタコア51に導入されるレーザ光の強度と可視レーザ光源120から出力光ファイバ50のリングコア53に導入される可視レーザ光の強度の割合を調整することが可能である。このような制御部180による制御により、レーザ装置101のレーザ出射部70から出力される出力レーザ光Lの中心側の赤外レーザ光及び可視レーザ光のパワーとその外側の可視レーザ光のパワーを調整することができ、出力レーザ光Lのビームプロファイルを例えば加工対象物Wの材料や厚みに応じて柔軟に変化させることができる。
【0047】
第1の実施形態における光コンバイナ60は、出力光ファイバ50のセンタコア51に赤外光ファイバ30を接続し、出力光ファイバ50のリングコア53に可視光ファイバ40のすべてを接続するものである。また、第2の実施形態における光コンバイナ160は、出力光ファイバ50のセンタコア51に赤外光ファイバ30と可視光ファイバ40,140の一部(可視光ファイバ40)とを接続し、出力光ファイバ50のリングコア53に可視光ファイバ40,140の他の一部(可視光ファイバ140)を接続するものである。しかしながら、赤外光ファイバ30及び可視光ファイバ40と出力光ファイバ50のセンタコア51及びリングコア53との接続形態はこれらの例に限られるものではない。例えば、上述の第1の実施形態において、出力光ファイバ50のセンタコア51に可視光ファイバ40の少なくとも1つを接続し、出力光ファイバ50のリングコア53に赤外光ファイバ30の少なくとも1つを接続するように光コンバイナ60を構成してもよい。また、可視レーザ光源20及び可視光ファイバ40の組の一部を赤外レーザ光源10及び赤外光ファイバ30とは別の赤外レーザ光源及び赤外光ファイバの組に入れ替えて、出力光ファイバ50のセンタコア51に赤外光ファイバ30を接続するとともに、出力光ファイバ50のリングコア53に赤外光ファイバと可視光ファイバ40とを接続するように光コンバイナ60を構成してもよい。また、上述の第の実施形態において、出力光ファイバ50のセンタコア51に可視光ファイバ40,140の少なくとも1つを接続し、出力光ファイバ50のリングコア53に赤外光ファイバ30を接続するように光コンバイナ160を構成してもよい。また、可視レーザ光源120及び可視光ファイバ140の組の一部を赤外レーザ光源10及び赤外光ファイバ30とは別の赤外レーザ光源及び赤外光ファイバの組に入れ替えて、出力光ファイバ50のセンタコア51に赤外光ファイバ30と可視光ファイバ40とを接続するとともに、出力光ファイバ50のリングコア53に赤外光ファイバと可視光ファイバ140とを接続するように光コンバイナ160を構成してもよい。
【0048】
また、複数の可視レーザ光源20の間又は複数の可視レーザ光源120の間で可視レーザ光の波長が異なっていてもよい。さらに、複数の赤外レーザ光源10を設けてもよく、その場合には、これらの赤外レーザ光源10の間で赤外レーザ光の波長が異なっていてもよい。
【0049】
また、上述した光コンバイナ60,160は、光ファイバを融着接続することにより構成される光コンバイナであるが、赤外光ファイバ30及び可視光ファイバ40,140と出力光ファイバ50のセンタコア51及びリングコア53とを接続する光コンバイナの形態はこれに限られるものではない。例えば、特定の波長を選択的に反射するミラーや回折格子を用いて光コンバイナを構成することも可能である。
【実施例
【0050】
上述の第1の実施形態の構成において実験を行った。赤外レーザ光源10としては波長1070nmの赤外レーザ光を生成するファイバレーザを用い、可視レーザ光源20としては波長450nmの可視光を生成する半導体レーザを用いた。出力光ファイバ50としては、センタコア51の外径が100μm、リングコア53の外径が400μmであるものを用いた。赤外レーザ光の出射端面でのNAは約0.08、可視レーザ光の出射端面でのNAは約0.24であった。このとき、センタコア51から出射されるビームのビームパラメータ積(BPP)は4、リングコア53から出射されるビームのBPPは48であった。センタコア51から出射されるビームとリングコア53から出射されるビームの出射端面における断面積比は約100:7であるから、光密度はセンタコア51から出射される赤外レーザ光よりもリングコア53から出射される可視レーザ光の方が低くなる。しかしながら、可視レーザ光の金属に対する光吸収率は赤外レーザ光の光吸収率よりも高く、例えば銅であれば、波長450nm付近の吸収率は波長1070nm付近の吸収率と比べて5~6倍高い。したがって、その分、リングコア53から出射される可視レーザ光による加熱効率が改善する。他の金属であっても一般的に同様の性質を有する。
【0051】
また、焦点深度の目安となるレイリー長Zrは、センタコア51から出射される赤外レーザ光については0.67mm、リングコア53から出射される可視レーザ光については0.83mmであった。このように、センタコア51から出射されるレーザ光とリングコア53から出射されるレーザ光は、波長、ビーム径、及びNAにおいて異なっているが、焦点深度については同程度となることがわかった。したがって、異なる波長のレーザ光を同時に使用して加工する際に、深さ方向に対する安定性が向上する効果が見込まれる。
【0052】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 レーザ装置
10 赤外レーザ光源
20 可視レーザ光源
30 赤外光ファイバ
40 可視光ファイバ
50 出力光ファイバ
51 センタコア
52 内側クラッド
53 リングコア
54 外側クラッド(低屈折率媒質)
60 光コンバイナ
70 レーザ出射部
80 制御部
90 ステージ
101 レーザ装置
120 可視レーザ光源
140 可視光ファイバ
160 光コンバイナ
161 ブリッジファイバ
162 中間光ファイバ
163 第1の円筒部
164 縮径部
165 第2の円筒部
171 コア
172 クラッド
180 制御部
181 コア
182 クラッド
L 出力レーザ光
W 加工対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7