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特許7402028ビードインシュレーション又はビードカバー用ゴム組成物、及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】ビードインシュレーション又はビードカバー用ゴム組成物、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20231213BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231213BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20231213BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231213BHJP
   C08L 61/08 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
B60C15/04 G
B60C1/00 Z
C08L61/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019220563
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021088679
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】栃木 和真
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208348(JP,A)
【文献】特開2007-076549(JP,A)
【文献】特開2016-006134(JP,A)
【文献】特開2014-111787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
B60C 15/00- 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、カーボンブラックを含む充填剤と、フェノール系樹脂とを含有し、
前記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部以上80質量部以下であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が100m /g以下であり、
前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して35質量部以上60質量部以下である、
ことを特徴とする、タイヤのビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物。
【請求項2】
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が50m/g以上である、請求項1に記載のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物。
【請求項3】
前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して55質量部以下である、請求項1又は2に記載のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの少なくともいずれかに用いられていることを特徴とする、タイヤ。
【請求項5】
前記ゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの両方に用いられている、請求項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードインシュレーション又はビードカバー用ゴム組成物、及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのビード部に配設されるビードコアは、一般に、複数本のビードワイヤ及びこれらを被覆するビードインシュレーションゴムで構成される。更に、ビードインシュレーションゴムの外周面には、ビードカバーゴムが被覆されることも多い。そして、特にビードインシュレーションゴムは、ビードワイヤと隣接する部材であるため、高剛性であることが求められ、その材料についていくつかの検討がこれまでなされている。
【0003】
例えば、特許文献1は、ジエン系ゴム100質量部に対し、充填剤を100~180質量部、及びスチレン化フェノール化合物を0.5~10質量部配合したビードインシュレーション用ゴム組成物を開示している。
【0004】
また、例えば特許文献2は、ゴム100質量部に対し、充填剤160~220質量部を少なくとも配合したビードインシュレーション用ゴム組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-153444号公報
【文献】特開2012-246413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示されたビードインシュレーション用ゴム組成物は、ある程度高い硬度を確保できるものの、低発熱性の向上の点で改良の余地があった。
【0007】
また、特許文献1,2は、押出を実施するためにゴムの低粘度化を図るなどといった、加工性の保持に主眼を置くものであり、ビードコアに用いられるゴム組成物がタイヤの実際の操縦安定性(タイヤの横バネ、コーナリングパワーなど)に及ぼす影響については、何ら検討がなされていない。
【0008】
そこで、本発明は、低発熱性に優れるとともに、タイヤに対して高い操縦安定性を発揮することができる、タイヤのビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、低燃費性及び操縦安定性に優れるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0010】
即ち、本発明のタイヤのビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物は、ゴム成分と、カーボンブラックを含む充填剤と、フェノール系樹脂とを含有し、
前記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部以上120質量部以下であり、
前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上60質量部以下である、
ことを特徴とする。かかるビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物は、低発熱性に優れるとともに、タイヤに対して高い操縦安定性を発揮することができる。
【0011】
本発明のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物において、前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が50m2/g以上であることが好ましい。この場合、ビード捩じり剛性をより高めて、タイヤの操縦安定性をより向上させることができる。
【0012】
本発明のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物においては、前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して35質量部以上であることが好ましい。この場合、ビード捩じり剛性を一層高めるとともに、低発熱性をより高めることができる。
【0013】
本発明のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物においては、前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して55質量部以下であることが好ましい。この場合、加工性をより向上させることができる。
【0014】
また、本発明のタイヤは、上述したゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの少なくともいずれかに用いられていることを特徴とする。かかるタイヤは、低燃費性及び操縦安定性に優れる。
【0015】
本発明のタイヤは、より良好な低燃費性及び操縦安定性のバランスの観点から、前記ゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの両方に用いられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低発熱性に優れるとともに、タイヤに対して高い操縦安定性を発揮することができる、タイヤのビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低燃費性及び操縦安定性に優れるタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一例のタイヤにおけるビードコアの概略断面図である。
図2】ビード捩じり剛性の測定装置の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0019】
(ビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物)
本発明の一実施形態のビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物(以下、「本実施形態のゴム組成物」と称することがある。)は、ゴム成分と、カーボンブラックを含む充填剤と、フェノール系樹脂とを含有し、前記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部以上120質量部以下であり、前記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上60質量部以下である、ことを特徴とする。
【0020】
図1に、本実施形態のゴム組成物を適用可能な一例のタイヤにおける、ビードコアの断面図を示す。図1のビードコア100は、複数本のビードワイヤ1に、ビードインシュレーションゴム2が被覆されている。このビードワイヤ1は、例えばスチールワイヤなどとすることができる。また、ビードコア100においては、外周面が、ビードカバーゴム3により被覆されている。そして、ビードインシュレーションゴム2及びビードカバーゴム3の少なくともいずれかに対し、本実施形態のゴム組成物を用いることができる。
【0021】
本発明者は、ビードコアに用いられるゴム組成物にフェノール系樹脂を所定量配合することで、ビード捩じり剛性が有意に高まり、それがタイヤの横バネ等の操縦安定性の向上に寄与することを見出した。これは、定かではないが、ビード捩じり剛性の向上により、ビードの動きが抑制されることに起因しているものと考えられる。なお、上記の点は、通常ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムがタイヤ重量のたった1.2%程度しか占めないことからも、驚くべき発見である。そして、本実施形態のゴム組成物は、フェノール系樹脂を用いる分、充填剤の量が従来よりも低減できているため、低発熱性にも優れる。
【0022】
<ゴム成分>
ゴム成分としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエン系ゴム及び非ジエン系ゴム(ジエン系ゴム以外のゴム成分)が挙げられる。ゴム成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。ジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本実施形態のゴム組成物は、タイヤに通常求められる強度及びゴム弾性を向上させる観点から、ゴム成分として、ジエン系ゴムを含有することが好ましい。同様の観点から、本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分におけるジエン系ゴムの割合が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%である(即ち、ゴム成分がジエン系ゴムのみからなる)ことが更に好ましい。
【0024】
また、本実施形態のゴム組成物は、タイヤ強度及びゴム弾性を向上させる観点から、天然ゴム及びブタジエンゴムを含有することが好ましく、また、ゴム成分が天然ゴム及びブタジエンゴムのみからなることがより好ましい。
【0025】
ゴム組成物が天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムを含有する場合、天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムの合計含有量における天然ゴムの割合は、40質量%以上であることが好ましく、また、80質量%以下であることが好ましい。上記割合が40質量%以上であることにより、動的貯蔵弾性率をより向上させることができる。また、上記割合が80質量%以下であることにより、動的貯蔵弾性率をより向上させることができる。同様の観点から、天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムの合計含有量における天然ゴムの割合は、50質量%以上であることがより好ましく、また、70質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
ゴム組成物が天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムを含有する場合、天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムの合計含有量におけるスチレン-ブタジエンゴムの割合は、20質量%以上であることが好ましく、また、60質量%以下であることが好ましい。上記割合が20質量%以上であることにより、動的貯蔵弾性率をより向上させることができる。また、上記割合が60質量%以下であることにより、動的貯蔵弾性率をより向上させることができる。同様の観点から、天然ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムの合計含有量におけるスチレン-ブタジエンゴムの割合は、30質量%以上であることがより好ましく、また、50質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分の一部として再生ゴムを含有することができる。換言すると、本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分の一部として再生ゴムを用いて製造することができる。但し、本明細書において、「ゴム成分」、特には他の成分との組成比を示すために用いられる「ゴム成分100質量部」は、再生ゴムを考慮しないものとする。
【0028】
<充填剤>
本実施形態のゴム組成物は、充填剤を含有する。また、本実施形態のゴム組成物は、上記充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対して60質量部以上、120質量部以下である。上記含有量が60質量部未満であると、硬度が不十分となり、ビード捩じり剛性、ひいては操縦安定性を十分に向上させることができない。また、上記含有量が120質量部を超えると、低発熱性が悪化するとともに、粘度が高くなって加工性が悪化する。同様の観点から、ゴム組成物における充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して65質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、また、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが更に好ましい。
【0029】
上記充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。そして、本実施形態のゴム組成物においては、所望の効果を確実に得る観点から、充填剤として少なくともカーボンブラックを含む。なお、カーボンブラック以外の充填剤を用いる場合、当該充填剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が50m2/g以上であることが好ましい。この場合、ビード捩じり剛性をより高めて、タイヤの操縦安定性をより向上させることができる。同様の観点から、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、55m2/g以上であることがより好ましく、60m2/g以上であることが更に好ましい。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低発熱性の大幅な悪化及び高粘度化を抑制する観点から、120m2/g以下であることが好ましく、100m2/g以下であることがより好ましい。カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよいし、比表面積が互いに異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217-2に準拠して測定することができる。
【0031】
充填剤におけるカーボンブラックの割合は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の効果をより確実に得る観点から、例えば、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は100質量%などとすることができる。
【0032】
<フェノール系樹脂>
本実施形態のゴム組成物は、フェノール系樹脂を含有する。また、本実施形態のゴム組成物は、上記フェノール系樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対して25質量部以上、60質量部以下である。上記含有量が25質量部未満であると、ビード捩じり剛性を十分に高めることができず、高い操縦安定性を得ることができない。また、上記含有量が60質量部を超えると、加工性が悪化し、ビードワイヤに対してビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴムを被覆することができない虞がある。また、本実施形態のゴム組成物におけるフェノール系樹脂の含有量は、加工性をより向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して55質量部以下であることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態のゴム組成物におけるフェノール系樹脂の含有量は、ビード捩じり剛性を一層高める観点、及び低発熱性をより高める観点から、35質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、42質量部以上であることが更に好ましい。
【0034】
フェノール系樹脂としては、例えば、未変性フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等が挙げられる。フェノール系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ビード捩じり剛性及び操縦安定性をより効果的に向上させる観点から、カシュー変性フェノール樹脂を用いることが好ましい。なお、カシュー変性フェノール樹脂は、押出作業における温度域で軟化する性質があり、加工性の観点からも好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本実施形態のゴム組成物は、上述したゴム成分、充填剤及びフェノール系樹脂に加えて、目的を損なわない範囲で、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、ステアリン酸などの加硫助剤、亜鉛華などの加硫促進助剤、リターダー、老化防止剤、酸化防止剤、プロセスオイルなどの軟化剤、発泡剤、可塑剤、加工性改良剤、活性水酸化カルシウムなどの接着剤等の添加剤をそれぞれ適量含有することができる。
【0036】
ここで、加硫促進剤としては、例えば、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類などの加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
グアニジン類の加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
スルフェンアミド類の加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
チアゾール類の加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4´-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-(4-メチル-2-ベンゾチアゾリル)ジスルフィド、5-クロロ-2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、2-メルカプト-6-ニトロベンゾチアゾール、2-メルカプト-ナフト[1,2-d]チアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、6-アミノ-2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
更に、その他の加硫促進剤として、ヘキサメチレンテトラミン、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素なども挙げられる。
【0041】
本実施形態のゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、常法に従ってゴム組成物を調製することができる。例えば、上述した各成分を配合して混練した後、熱入れ、押出等を行うことで、本実施形態のゴム組成物を調製することができる。なお、混練に際しては、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー等の混練機を用いることができる。
【0042】
(タイヤ)
本発明の一実施形態のタイヤ(以下、「本実施形態のタイヤ」と称することがある。)は、上述したゴム組成物が、ビードコアにおけるビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの少なくともいずれかに用いられていることを特徴とする。言い換えると、本実施形態のタイヤは、ビードコアにおけるビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの少なくともいずれかが、上述したゴム組成物からなる。本実施形態のタイヤは、ビードコアにおけるゴム部材が上述したゴム組成物からなるため、低燃費性及び操縦安定性に優れる。
【0043】
なお、本実施形態のタイヤにおいては、上述したゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムのいずれか一方のみに用いられていてもよい。但し、本実施形態のタイヤにおいては、より良好な低燃費性及び操縦安定性のバランスの観点から、上述したゴム組成物が、ビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの両方に用いられていることが好ましい。なお、この場合、ビードインシュレーションゴム用ゴム組成物とビードカバーゴム用ゴム組成物とは、組成が互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。
【0044】
本実施形態のタイヤにおいて、上述したゴム組成物がビードカバーゴムに用いられる場合、当該ビードカバーゴムの被覆厚みは、例えば、0.1~3mmとすることができる。特に、低燃費性の観点から、当該ビードカバーゴムの被覆厚みは、2.5mm以下であることが好ましく、2mm未満であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態のタイヤは、上述したゴム組成物をビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの少なくともいずれかの作製に用いること以外、特に制限されない。また、本実施形態のタイヤの製造方法は、特に限定されず、公知のタイヤの製造方法を用いてタイヤを製造することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0047】
表1に示す配合処方に従うとともに、軟化剤系(所定のプロセスオイルから適宜選択される)、添加剤系(老化防止剤、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、亜鉛華及び加工性改良剤から適宜選択される)、並び加硫剤系(硫黄、加硫促進剤及びリターダーから適宜選択される)をそれぞれ適量加えて、常法に従ってゴム組成物を調製した。
【0048】
調製したゴム組成物について、粘弾性測定装置スペクトロメーターを用い、温度25℃、歪み0.50%、周波数52Hzの条件で損失正接(tanδ)を測定した。比較ゴム組成物の値を100として、各ゴム組成物のtanδを指数化した。結果を表1に示す。指数値が小さいほど、低発熱性に優れることを示す。
【0049】
【表1】
【0050】
*1 天然ゴム:TSR20
*2 スチレンブタジエンゴム1:SBR1500、TSRC Corporation、Taipol SBR1500E
*3 スチレンブタジエンゴム2:SBR1502、錦湖石油化学株式会社、KUMHO 1502
*4 再生ゴム:ホールタイヤリクレーム、村岡ゴム工業
*5 カーボンブラック1:HAF級、Columbian Chemicals Korea co. Ltd., KH-BLACK K340、窒素吸着比表面積:67m2/g
*6 カーボンブラック2:N550、東海カーボン、シーストF、窒素吸着比表面積:42m2/g
*7 フェノール系樹脂:カシュー変性フェノール樹脂、住友ベークライト製、スミライトレジンPR-55886
*8 活性水酸化カルシウム:白石工業、CLS-B
【0051】
表1より、本発明に従うゴム組成物A,C,Dはいずれも、比較ゴム組成物に比べて低発熱性に優れることが分かる。即ち、本発明に従うゴム組成物は、タイヤの低燃費性をより向上させることができる。
【0052】
次いで、上述したゴム組成物をビードコアの作製に用い、195/65R15サイズのタイヤを製造した。具体的に、ビードインシュレーションゴムの材料として、表2に示されるゴム組成物を選択するとともに、ビードインシュレーションゴムの被覆後の外周面に更に巻き付けるビードカバーの材料として、表2に示される材料を選択した。製造したタイヤ等を用い、以下の評価を行った。
【0053】
<ビード捩じり剛性>
実施例1及び比較例1においては、製造したタイヤにナイフを入れ、ビード部のビードコアのみを切り出し、ビードコアサンプルを得た。
一方、実施例2においては、ビードワイヤにビードインシュレーション用のゴム組成物を被覆し、更にその表面に、1mm厚のゴム(ビードカバー用のゴム組成物)を巻き付けて、ビードコア(加硫前)を準備した。このビードコアに対して、モールド設置時に間隙が埋まるよう、フィルムを巻き付け、更に適当なゴムを巻き付けた。その後、ビードコアをラボモールドに設置して加硫した。加硫後、外側に巻き付けたゴムを切り取り、フィルムを剥がして、ビードコアサンプルを得た。
【0054】
上述のようにして得られたビードコアサンプルを用い、ビード捩じり剛性の測定を行った。ここで、ビード捩じり剛性の測定に用いた装置の概要を図2に示す。この測定装置200では、リング状のビードコアサンプル21のおよそ半分(左半分)が一対のビードコア固定部22で挟持され、このビードコア固定部22が搭載された台23が、水平方向において回転する構成となっている。また、台23の回転軸26上には、チャック25(回転せず)が位置し、ビードコアサンプル21に当接できるようになっている。そして、台23が回転する(手動)ことによってビードコアサンプル21が捩じれ、その際のトルクを、チャック25に接続されたトルク検出器24で読み取ることができる。
本例では、台23の回転角度2.25°及び4.5°におけるトルクを、ビード捩じり剛性の指標としてそれぞれ測定し、その平均値を求めた。比較例1の値を100として、各例のビード捩じり剛性を指数化した。結果を表2に示す。指数値が大きいほど、ビード捩じり剛性が良好であることを示す。
【0055】
<横バネ>
横バネとは、路面に対して直角方向に試験荷重を掛けたタイヤにおいて、タイヤ回転軸と平行に移動する路面との相対変位量に対して変位方向に発生する力に関する特性を指し、操縦安定性の指標の一つである。
各タイヤをリムに装着し、内圧を210kPaに調整して、室内試験機に取り付けた。荷重を4.83kNとし、タイヤ回転軸と平行に移動する路面との相対変位量を20mmとしたときの、変位方向に発生する力(横力)を測定した。そして、かかる条件での接線勾配より、下記式より算出される横バネ定数を求めた。
横バネ定数(N/mm)=変位量10mm時の横力(N)/10(mm)
比較例1の値を100として、各例の横バネ定数を指数化した。結果を表2に示す。指数値が大きいほど、タイヤの横バネが良好であることを示す。
【0056】
<コーナリングパワー(CP)>
各タイヤをリムに装着し、内圧を210kPaに調整して、フラットベルト式操縦性試験機に取り付けた。荷重を4.83kN、試験速度を30km/hとし、タイヤの転動方向と路面との間のスリップアングル(SA)を、1°、2°、3°及び4°と変化させながら、コーナリングフォース(CF)(単位:kN)をそれぞれ測定した。このとき、スリップアングル付与速度は、0.6°/secとした。
なお、スリップアングル(SA)とは、車両が旋回運動をするために生じる、車両の進行方向に対するタイヤのずれ角を指す。また、コーナリングフォース(CF)とは、タイヤにスリップアングルがついているときの、路面から作用する力の進行方向に対して直角な水平方向の分力を指し、進行方向に対して右向きを正とする。
コーナリングフォースの測定結果から、コーナリングパワー(CP)(単位:kN)を下記式より算出した。なお、式中の(CFn)は、スリップアングル(SA)がn°のときのコーナリングフォース(単位:kN)を指す。
CP={(CF1)/1+(CF2)/2+(CF3)/3+(CF4)/4}/4
比較例1の値を100として、各例のコーナリングパワーを指数化した。結果を表2に示す。指数値が大きいほど、タイヤのコーナリングパワーが良好であることを示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2より、本発明に従うゴム組成物を少なくともビードインシュレーションゴムに用いた実施例1,2のタイヤは、比較例のタイヤに比べ、ビード捩じり剛性が良好であり、また、横バネ及びコーナリングパワー等の操縦安定性が同等であるか又は向上していることが分かる。
【0059】
更に、表2より、本発明に従うゴム組成物をビードインシュレーションゴム及びビードカバーゴムの両方に用いることで、ビード捩じり剛性が一層高まって、横バネ及びコーナリングパワー等の操縦安定性がより向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、低発熱性に優れるとともに、タイヤに対して高い操縦安定性を発揮することができる、タイヤのビードインシュレーションゴム又はビードカバーゴム用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低燃費性及び操縦安定性に優れるタイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 ビードコア;1 ビードワイヤ;2 ビードインシュレーションゴム;3 ビードカバーゴム
200 測定装置;21 ビードコアサンプル;22 ビードコア固定部;23 台;24 トルク検出器;25 チャック;26 回転軸
図1
図2