(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】既設管更生用帯状部材、並びにその製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20231213BHJP
B29C 48/03 20190101ALI20231213BHJP
B29C 48/12 20190101ALI20231213BHJP
【FI】
B29C63/32
B29C48/03
B29C48/12
(21)【出願番号】P 2019223433
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】上田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】宮武 優太
(72)【発明者】
【氏名】山下 卓也
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010809(JP,A)
【文献】特開2018-052014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
B29C 48/00 - 48/96
F16L 1/00
F16L 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部とを含み、既設管を更生する更生管となる帯状部材を製造する方法であって、
前記主帯部の前記中間部にウェルドラインが形成されるように、前記帯状部材を押出成形する工程と、
前記主帯部を前記ウェルドラインにおいて割断する工程と
を備えたことを特徴とする既設管更生用の帯状部材の製造方法。
【請求項2】
前記割断工程においては、前記帯状部材を前記ウェルドラインにおいて屈曲させることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材の製造方法。
【請求項3】
前記割断工程においては、前記ウェルドラインにカッターを当てるとともに前記帯状部材を前記カッターに対して帯長方向へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材の製造方法。
【請求項4】
帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部とを含み、既設管を更生する更生管となる帯状部材を製造する製造装置であって、
前記主帯部の前記中間部にウェルドラインが形成されるように、前記帯状部材を押出成形する押出成形部と、
前記主帯部を前記ウェルドラインにおいて割断する割断機構と
を備えたことを特徴とする既設管更生用の帯状部材の製造装置。
【請求項5】
前記押出成形部が、前記主帯部を成形する第1ダイと、前記主帯部の中間部と前記伸縮帯部とで囲まれた空間部を形成する第2ダイと、前記第2ダイを前記第1ダイに連結するブリッジとを含み、前記ブリッジの押出方向を向く先端が、前記主帯部の前記中間部を形成する位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記割断機構が、互いに対向するように同一軸線上に配置されるとともに対向面へ向かって縮径するテーパ状の一対のテーパローラを含む屈曲ローラと、前記帯状部材を前記屈曲ローラとの間に挟み、かつ前記一対のテーパローラどうしの間に向けて押す押さえローラとを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造装置。
【請求項7】
前記割断機構が、前記ウェルドラインに当てられるカッターを含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の製造装置。
【請求項8】
前記割断機構に対して前記帯状部材を前記帯幅方向へ位置決めする位置決め機構を、更に備えたことを特徴とする請求項4~7の何れか1項に記載の製造装置。
【請求項9】
既設管を更生する更生管となる帯状部材であって、
帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、
前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部と、
を備え、前記主帯部の前記中間部には互いに対向する一対の割断面が
、前記主帯部を厚み方向に貫いて前記主帯部の内周側面から外周側面に達するように形成され、
各割断面は、前記主帯部の内周側面と比べ表面粗さが大きい粗面になっており、自然状態においてこれら割断面
の前記粗面どうしが合わさって
当接されていることを特徴とする既設管更生用の帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管を更生する更生管となる帯状部材、並びにその製造方法及び製造装置に関し、特に帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部を有する帯状部材の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生するために、帯状部材を既設管の内周面に沿って螺旋状に巻回して更生管を製管する方法は公知である(例えば特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献2の帯状部材(ジョイナー)は2つの板部分に分割され、ベローズ状の伸縮帯部がこれら2つの板部分に跨っている。2つの板部分の対向端面どうし間に約1mm以下の隙間が形成されている。更に、2つの板部分の間には、隙間を跨ぐ断面U字状の屈曲部が設けられている。屈曲部の中央部には条溝が形成されている。地震時には、屈曲部が条溝において破断されてベローズ状の伸縮帯部が伸縮可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の隙間は1mm以下とは言っても、異物の詰まり等が発生して流下能力が損なわれる可能性がある。また、地震時に屈曲部が条溝において必ずしも破断するとは限らず、破断が起きないと伸縮帯部が伸縮されないために耐震性能を発現し得ない。
本発明は、かかる考察に鑑み、平常時は流下能力を担保し、かつ耐震性能を確実に発現し得る既設管更生用帯状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部とを含み、既設管を更生する更生管となる帯状部材を製造する方法であって、
前記主帯部の前記中間部にウェルドラインが形成されるように、前記帯状部材を押出成形する工程と、
前記主帯部を前記ウェルドラインにおいて割断する工程と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
主帯部の中間部にウェルドラインを形成しておくことで、該ウェルドラインが脆弱部となって容易に割断できる。かつ割断によって生成された一対の割断面はぴったり合わさる。したがって、割断面どうし間に隙間が形成されて異物の詰まり等が発生するのを防止でき、流下能力を確保できる。帯状部材の製造時に主帯部を予め割断しておくことによって、製管後、伸縮帯部が地震動に追従して確実に伸縮でき、耐震性能を確実に発現し得る。
【0008】
前記割断工程においては、前記帯状部材を前記ウェルドラインにおいて屈曲させることが好ましい。
これによって、脆弱部であるウェルドラインに曲げ応力が集中する。したがって、帯状部材を前記ウェルドラインにおいて確実に割断できる。かつ帯状部材のウェルドライン以外の部分が割れたり塑性変形を来したりするのを防止できる。
割断後、主帯部を非屈曲状態に戻すと、一対の割断面がぴったり合わさる。
【0009】
前記割断工程においては、前記ウェルドラインにカッターを当てるとともに前記帯状部材を前記カッターに対して帯長方向へ移動させることが好ましい。
これによって、主帯部がウェルドラインに沿って切り裂かれるように割断される。
【0010】
本発明装置は、帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部とを含み、既設管を更生する更生管となる帯状部材を製造する製造装置であって、
前記主帯部の前記中間部にウェルドラインが形成されるように、前記帯状部材を押出成形する押出成形部と、
前記主帯部を前記ウェルドラインにおいて割断する割断機構と
を備えたことを特徴とする。
これによって、帯状部材の製造時に主帯部の中間部を割断しておくことができる。脆弱部であるウェルドラインにおいて割断することで、一対の割断面どうし間に隙間が形成されるのを防止でき、製管後の流下能力を確保できる。かつ地震時には、伸縮帯部の伸縮によって耐震性能を確実に発現し得る。
【0011】
前記押出成形部が、前記主帯部を成形する第1ダイと、前記主帯部の中間部と前記伸縮帯部とで囲まれた空間部を形成する第2ダイと、前記第2ダイを前記第1ダイに連結するブリッジとを含み、前記ブリッジの押出方向を向く先端が、前記主帯部の前記中間部を形成する位置に配置されていることが好ましい。
これによって、帯状部材の溶融樹脂原料を押しだす押出流路が、ブリッジを挟んで2つの流路部に分かれる。この結果、主帯部の中間部にウェルドラインが形成される。
【0012】
前記割断機構が、互いに対向するように同一軸線上に配置されるとともに対向面へ向かって縮径するテーパ状の一対のテーパローラを含む屈曲ローラと、前記帯状部材を前記屈曲ローラとの間に挟み、かつ前記一対のテーパローラどうしの間に向けて押す押さえローラとを含むことが好ましい。
これによって、帯状部材を主帯部の中間部ひいてはウェルドラインにおいて屈曲させることができる。
【0013】
前記割断機構が、前記ウェルドラインに当てられるカッターを含むことが好ましい。
これによって、主帯部をウェルドラインに沿って切り裂くように割断できる。
カッターは、回転式でもよく固定式でもよい。
【0014】
前記割断機構に対して前記帯状部材を前記帯幅方向へ位置決めする位置決め機構を、更に備えたことが好ましい。
これによって、主帯部をウェルドラインにおいて確実に割断できる。
【0015】
また、本発明に係る既設管更生用の帯状部材は、既設管を更生する更生管となる帯状部材であって、
帯幅方向の両端部に製管のための嵌合部が設けられた主帯部と、
前記主帯部の帯幅方向の中間部を跨ぐとともに両端部が前記主帯部と一体に連なり前記帯幅方向へ伸縮可能な伸縮帯部と、
を備え、前記主帯部の前記中間部には互いに対向する一対の割断面が形成され、自然状態においてこれら割断面どうしが合わさっていることを特徴とする。
前記割断面は、当該帯状部材の押出成形によって出来たウェルドラインが割断されて形成されたものであることが好ましい。割断によって生成された一対の割断面は、凹凸などが形成された粗面であるが、ぴったりと合わさる。
自然状態とは、帯状部材に対して特に帯幅方向への引張、圧縮、曲げなどの変形を引き起こし得る外力が加えられていない状態を言う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、平常時は流下能力を担保し、かつ耐震性能を確実に発現し得る既設管更生用帯状部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る帯状部材を含む更生帯材を、帯長方向と直交する断面で示す断面図である。
【
図2(a)】
図2(a)は、
図4のIIa-IIa線に沿う、前記帯状部材の断面図である。
【
図2(b)】
図2(b)は、
図4のIIb-IIb線に沿う、前記帯状部材の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る帯状部材製造装置の解説側面図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿う、前記製造装置の押出成形金型の正面断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う、前記押出成形金型の解説平面断面図である。
【
図7(a)】
図7(a)は、
図4のVIIa-VIIa線に沿う、前記製造装置の前段の位置決め機構の正面断面図である。
【
図7(b)】
図7(b)は、
図4のVIIb-VIIb線に沿う、前記製造装置の後段の位置決め機構の正面断面図である。
【
図8】
図8は、
図4のVIII-VIII線に沿う、前記製造装置の割断機構の正面断面図である。
【
図9(a)】
図9(a)は、前記更生帯材からなる更生管によって更生された既設管の断面図である。
【
図9(b)】
図9(b)は、
図9(a)の円部IXの拡大断面図である。
【
図9(c)】
図9(c)は、地震時における前記円部IXの拡大断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材製造装置における割断処理部の解説側面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3実施形態に係る帯状部材製造装置における割断機構の正面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4実施形態に係る帯状部材製造装置における割断機構の正面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第5実施形態に係る帯状部材製造装置における割断機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図9)>
図1は、例えば老朽化した下水道管等の既設管を更生するための更生帯材9を示したものである。更生帯材9は、帯状部材10と、補強帯材18を備え、一定の断面を有して、
図1の紙面と直交する帯長方向へ延びている
【0019】
図9(a)に示すように、帯状部材10を含む更生帯材9は、老朽化した既設管1である下水道管の内周に沿って螺旋状に巻回されて、螺旋管状の更生管3に製管される。これによって、既設管1が更生される。
既設管1としては、下水道管の他、農業用水管、上水道管、水力発電導水管、トンネルなどが挙げられる。トンネルは、地山に穴が掘られただけの構造でもよく、穴の内面をセグメントやモルタルで補強した構造であってもよい。
【0020】
<帯状部材10>
更生帯材9の帯状部材10は、樹脂の押出成形品である。帯状部材10の樹脂材質として、ポリ塩化ビニルが挙げられるが、これに限らず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどであってもよい。
図1に示すように、帯状部材10の外周側部(製管されたとき外周側を向く側部、
図1において上側部)には、概略M字断面の鋼製の補強帯材18が嵌め込まれている。補強帯材18によって帯状部材10が補強されている。
【0021】
図2(b)に示すように、帯状部材10は、主帯部11と、伸縮帯部12とを備えている。主帯部11は、一定の厚さの平帯板状に形成され、帯長方向(同図の紙面直交方向)に沿って延びている。主帯部11における帯幅方向(同図の左右方向)の両端部には、製管のための凹凸断面形状の嵌合部13,14が設けられている。
図9(b)に示すように、更生管3においては、螺旋状に巻回された帯状部材10の帯幅方向の両端部における互いに一周ずれて対向する嵌合部13,14どうしが凹凸嵌合によって接合されている。
【0022】
図2(b)に示すように、主帯部11の外周側面(製管されたとき外周側を向く面、
図2(b)において上面)には、伸縮帯部12が設けられている。伸縮帯部12は、ベローズ状又はC字状等の帯幅方向へ伸縮可能な断面形状を有している。伸縮帯部12が、主帯部11の帯幅方向の中間部11cを跨いでいる。伸縮帯部12の帯幅方向の両端部12eが、主帯部11と一体に連なっている。
【0023】
図2(a)に示すように、後述する割断工程前の帯状部材10においては、主帯部11の中間部11cに、成形によるウェルドライン15が形成されている。ウェルドライン15は、主帯部11を厚み方向に貫いて、主帯部11の外周側面及び内周側面(製管されたとき内周側を向く面)に達するとともに、帯長方向(
図2(a)において紙面直交方向)へ延びている。
【0024】
図3に示すように、製造後の帯状部材10においては、主帯部11のちょうど前記ウェルドライン15が在った箇所に割断部16が形成されている。主帯部11が、割断部16において割断され、2つの片帯部分11a,11bに分かれている。
図2(b)に示すように、伸縮帯部12が、2つの片帯部分11a,11bに跨り、これら片帯部分11a,11bどうしを連結している。
【0025】
2つの片帯部分11a,11bにおける互いに対向する対向面が、一対の割断面16a,16bとなっている。各割断面16a,16bひいては割断部16は、主帯部11を厚み方向に貫くとともに、主帯部11の帯長方向の全長にわたって延びている。各割断面16a,16bは、帯状部材10の内周側面(
図2(b)において下面)等の成形面と比べ表面粗さが大きく、粗面ないしは凸凹面になっている。
帯状部材10に帯幅方向への引っ張りや曲げなどの外力が作用していない自然状態においては、一対の割断面16a,16aどうしがぴったり合わさって当接されている。一対の割断面16a,16a間には隙間が形成されていない。
【0026】
図9(c)に示すように、例えば製管後、地震などによって帯状部材10に前記外力が作用すると、片帯部分11a,11bどうしが離れ、割断面16a,16b間に間隙16cが形成される。伸縮帯部12は、帯幅方向へ伸び変形される。
【0027】
<帯状部材製造装置20>
図4に示すように、帯状部材10の製造装置20は、押出成形部21と、冷却部29と、割断処理部30を含む。押出成形部21は、ホッパー等の原料投入部22と、ヒータ及びスクリューを含む加熱混錬部23と、押出成形金型24を含む。押出成形部21によって、原料樹脂19から帯状部材10が押出成形される。
【0028】
図5に示すように、押出成形金型24は、第1ダイ25と、第2ダイ26と、ブリッジ27を備えている。第1ダイ25によって、主帯部11(中間部11cの外周側面を除く)及び嵌合部13,14が成形されるとともに、伸縮帯部12の外面が形成される。第1ダイ25における前記伸縮帯部12の外面を形成する空間25bの内部に第2ダイ26が収容されている。第2ダイ26によって、主帯部11の中間部11cの外周側面と、伸縮帯部12の内面が形成される。すなわち、中間部11cと伸縮帯部12とで囲まれた空間部10cが形成される。
【0029】
これらダイ25,26によって、押出流路28が画成されている。押出流路28の上流端は、加熱混錬部23に連なっている。押出流路28の下流端は押出口28e(
図4)となっている。押出口28eは、帯状部材10の断面形状に合わせた形状になっている。
【0030】
図5に示すように、押出流路28における主帯部11と対応する部分の中央部には、ブリッジ27が設けられている。第2ダイ26が、ブリッジ27を介して第1ダイ25に連結されて支持されている。ブリッジ27によって、押出流路28における主帯部11と対応する部分が2つの流路部28a,28bに仕切られている。
図6に示すように、ブリッジ27は、押出口28eへ向かって先細りになっている。ブリッジ27における押出口28e(押出方向)を向く先端27eが、主帯部11の中間部11cを形成する位置に配置されている。
【0031】
図4に示すように、成形された帯状部材10の送り方向MDに沿って、押出成形部21の下流側(
図4において左側)には冷却槽などを含む冷却部29が配置されている。冷却部29のさらに下流側(
図4において左側)には割断処理部30が配置されている。
【0032】
図4に示すように、割断処理部30は、
図4において概略的に示す支持フレーム31と、位置決め機構32,34と、割断機構33を備えている。割断機構33を挟んで、送り方向MDの上流側(
図4において右側)に前段位置決め機構32が配置され、送り方向MDの下流側(
図4において左側)に後段位置決め機構34が配置されている。
【0033】
図7(a)に示すように、前段位置決め機構32は、一対の円盤状の位置ずれ防止ローラ32a,32bを含む。これら位置ずれ防止ローラ32a,32bが、同じ回転軸32c上に配置されて、支持フレーム31に回転可能に支持されている。回転軸32cの軸線は、送り方向MD(
図7(a)において紙面と直交する方向)に対して直交する幅方向TDへ向けられている。
一方の位置ずれ防止ローラ32aは、搬送中の帯状部材10の第1嵌合部13と伸縮帯部12との間の溝部17aに挿し入れられる。他方の位置ずれ防止ローラ32bは、帯状部材10の伸縮帯部12と第2嵌合部14との間の溝部17bに挿し入れられる。
【0034】
図7(b)に示すように、後段位置決め機構34は、2つの円柱状の位置ずれ防止ローラ34a,34bを含む。各位置ずれ防止ローラ34a,34bは、軸線を鉛直に向けて、支持フレーム31に回転可能に支持されている。これら位置ずれ防止ローラ34a,34bが、幅方向TDの外側から帯状部材10の両端部に宛がわれる。
【0035】
図4に示すように、割断機構33は、屈曲ローラ35と押さえローラ36の組になっている。これらローラ35,36が、帯状部材10の搬送ラインを挟んで高さ方向に対向している。
図8に示すように、屈曲ローラ35は、搬送中の帯状部材10の主帯部11の内周側面に面するように、前記搬送ラインの下方に配置されている。屈曲ローラ35は、一対のテーパローラ37を含む。一対のテーパローラ37は、幅方向TDに沿う同一軸線上に並んで配置され、かつ支持フレーム31に回転可能に支持されている(詳細図省略)。これらテーパローラ37の外周面は、互いに相手側との対向面37bへ向かうにしたがって縮径するテーパ面37aとなっている。これらテーパローラ37の対向面37bどうしが、互いに近接又は当接されている。2つのテーパローラ37のテーパ面37aによって、V字環状溝35cが形成されている。
【0036】
図8に示すように、押さえローラ36は、搬送中の帯状部材10の伸縮帯部12に面するように、搬送ラインの上方に配置されている。押さえローラ36は、回転軸線を幅方向TDへ向けて、支持フレーム31に回転可能に支持されている(詳細図省略)。
V字環状溝35cの谷部35d(すなわち一対のテーパローラ37どうしの中間位置)の真上に、押さえローラ36の中央部が配置されている。
【0037】
<製造方法>
帯状部材10は、次のようにして製造される。
<押出成形工程>
図4に示すように、帯状部材10の原料樹脂19が、原料投入部22に投入され、加熱混錬部23で加熱溶融及び混錬されて溶融原料樹脂19Aとなり、金型24において帯状部材10の形状に成形される。
図6の白抜き矢印に示すように、溶融原料樹脂19Aは、押出流路28の2つの流路部28a,28bに分かれて流れ、ブリッジ27の先端27eの延長線27L上で合流しながら、押出口28eから帯状部材10となって押し出される。これによって、
図2(a)に示すように、帯状部材10における主帯部11の中間部11cには前記合流によるウェルドライン15(脆弱部)が形成される。
【0038】
<冷却硬化工程>
図4に示すように、前記押出成形された帯状部材10は、冷却部29において冷却されて硬化される。
<割断工程>
その後、割断処理部30へ導入される。
割断処理部30においては、位置決め機構32,34によって、帯状部材10が、幅方向TDへの位置ずれを防止される。
図8に示すように、該帯状部材10が、屈曲ローラ35と押さえローラ36の間に通される。このとき、帯状部材10の主帯部11の帯幅方向の両側部分11a,11bが、屈曲ローラ35の一対のテーパ面37aにそれぞれ当たって、各テーパ面37aに倣うように傾けられる。同時に、伸縮帯部12が、押さえローラ36によって、V字環状溝35cの谷部35d(一対のテーパローラ37どうしの中間部)へ向かって押え付けられる。これによって、帯状部材10が、ちょうどウェルドライン15においてV字状に屈曲される。このため、ウェルドライン15に局所的に曲げ応力が発生する。この結果、主帯部11が、ウェルドライン15において割断されて割断部16が形成される。
ウェルドライン15は帯状部材10における脆弱部であるから、そこに応力を集中させることで、ウェルドライン15においてきれいに割断できる。かつ帯状部材10におけるウェルドライン15以外の部分で割れが起きたり、ウェルドライン15から周りの部分に割れが伝搬したりするのを回避できる。さらに、帯状部材10におけるウェルドライン15すなわち割断部16以外の部分が塑性変形を引き起こすことがなく、白化等が発生することがない。
【0039】
片帯部分11a,11bが、それぞれ対応するテーパ面37aと面で接触されることで、主帯部11がV字環状溝35cに嵌って安定するため、帯状部材10のズレが発生するのを防止できる。
加えて、位置決め機構32,34によって、帯状部材10を割断機構33に対して幅方向TDに正確に位置決めすることができる。送り方向MDに沿って割断機構33の上流側だけでなく、割断機構33を挟んで送り方向MDの両側に位置決め機構32,34を設けることによって、帯状部材10を割断機構33に対して幅方向TDに一層正確に位置決めできる。したがって、ウェルドライン15に確実に応力集中が起きるようにでき、帯状部材10をウェルドライン15において確実に屈曲させて割断できる。
【0040】
さらに、図示しない引き取り機構によって、帯状部材10を送り方向MDに沿って引き取ることで、主帯部11がウェルドライン15において連続的に割断されていく。
図7(b)に示すように、割断機構33を通過した帯状部材10は、主帯部11が平らな非屈曲状態に戻され、一対の割断面16a,16bどうしがぴったりと合わさる。割断部16に隙間が形成されることは殆ど無い。
このようにして、帯状部材10の製造工程において、割断部16が形成される。更生管施工現場ではなく帯状部材の製造工場で割断を行うことで、例えば検査機(図示せず)などを用いて、割断がなされているか否かを容易に点検できる。したがって、品質管理が容易である。
【0041】
<補強帯材嵌め込み工程>
さらに、
図1に示すように、帯状部材10の外周側部に補強帯材18を嵌め込むことによって、更生帯材9が形成される。割断面16a,16bどうしがぴったり合わさっているため、補強帯材18の嵌め込み操作に支障を来すことがない。
その後、更生帯材9は、ドラム(図示せず)に巻き取られて保管される。
【0042】
<既設管更生工程>
図9(a)に示すように、前記更生帯材9が既設管1の更生施工現場に搬入されて、ドラムから引き出されて更生管3に製管される。帯状部材10の製造時に割断部16が形成済であるため、更生管の製管時には割断部16の形成工程を省くことができる。
【0043】
図9(b)に示すように、前記帯状部材10からなる更生管においては、割断部16に隙間が形成されていないために、割断部16に異物が詰まるのを防止できる。したがって、更生管の流下能力を確保できる。
更に、
図9(c)に示すように、帯状部材10の全長ひいては更生管の全域にわたって予め割断部16が形成されているために、地震の際は、伸縮帯部12が地震動に確実に追従して伸縮できる。これによって、地震エネルギーを吸収できる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図10)>
図10に示すように、第2実施形態の帯状部材製造装置20Bにおいては、割断機構33が、屈曲ローラ35と押さえローラ36からなる2組(複数組)の割断ローラユニット33a,33bを備えている。2組の割断ローラユニット33a,33bは、送り方向MDに沿って並べられている。これによって、前段の割断ローラユニット33aで割断されなかった場合、後段(予備)の割断ローラユニット33bで割断することができる。これによって、割断漏れを無くすことができる。
【0045】
<第3実施形態(
図11)>
図11に示すように、第3実施形態の帯状部材製造装置20Cにおいては、割断機構33の屈曲ローラ35が帯状部材10の外周側部(製管されたとき外周側を向く側部)に面している。屈曲ローラ35の一対のテーパローラ37は、それぞれ嵌合部13,14に当たって、これら嵌合部13,14を斜め下方へ押している。これらテーパローラ37の対向面37b間に伸縮帯部12が配置されている。
【0046】
押さえローラ36は、2つのテーパローラ37の対向面37bどうしの間の下方に配置され、帯状部材10の内周側面に面している。該押さえローラ36が、ウェルドライン15に直接当たって押し上げている。これによって、帯状部材10を正確にウェルドライン15において割断することができる。
【0047】
<第4実施形態(
図12)>
図12に示すように、第4実施形態の帯状部材製造装置20Dにおいては、割断機構33が、回転式の円盤形状のカッター38を備えている。カッター38の中心軸38cは、幅方向TDに向けられるとともに支持フレーム31に回転可能に支持されている。カッター38における刃部分の最大厚みは、好ましくは0.5mm~2mm程度である。
【0048】
カッター38が、帯状部材10のウェルドライン15に当てられる。位置決め機構32,34(
図4)によって、帯状部材10をカッター38に対して幅方向TDに位置決めすることによって、カッター38がウェルドライン15に正確に当てることができる。同時に、帯状部材10が送り方向すなわち帯長方向(
図13の紙面と直交する方向)に沿って引き取られる。すなわち、帯状部材10がカッター38に対して帯長方向へ移動される。これによって、帯状部材10がウェルドライン15において切り裂かれるように割断される。
切削ではなく、切り裂くような割断であるため、カッター通過後の帯状部材10は、割断面16a,16b(
図3)どうしが隙間無くぴったりと合わさる。
【0049】
<第5実施形態(
図13)>
図13に示すように、第5実施形態の帯状部材製造装置20Eにおいては、割断機構33が、固定の板状のカッター39を備えている。カッター39は、鉛直に立てられ、下端部が支持フレーム31に固定されている。カッター39における刃部分の最大厚みは、好ましくは0.5mm~2mm程度である。
第4実施形態(
図12)と同様に、カッター39が、帯状部材10のウェルドライン15に当てられるとともに、帯状部材10が送り方向すなわち帯長方向(
図13の紙面と直交する方向)へ引き取られることによって、帯状部材10がウェルドライン15において裂かれるように割断される。カッター通過後の帯状部材10は、割断面16a,16b(
図3)どうしが隙間無くぴったりと合わさる。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、前段位置ずれ防止ローラ32a,32bが、
図7(b)の後段位置ずれ防止ローラ34a,34bと同様に、幅方向TDの外側から帯状部材10に宛がわれるように配置されていてもよい。
後段位置ずれ防止ローラ34a,34bが、
図7(a)の前段位置ずれ防止ローラ32a,32bと同様に溝部17a,17bに嵌るように配置されていてもよい。
割断工程は、帯状部材10の冷却工程後、補強帯材18の嵌め込み工程等の二次加工までの間であれば、どのタイミングで行ってもよい。後述するように、補強帯材19を省略する場合、割断工程は、帯状部材の製造時に限らず、製管前であれば、更生施工現場でドラムから引き出すときなどに行ってもよい。補強帯材19が有る場合でも、更生施工現場などで割断工程を行なってもよい。
帯状部材の断面形状は、実施形態のものに限らず種々改変できる。補強帯材18を省略してもよく、更生帯材9が帯状部材10だけで構成されていてもよい。
更生管が、第1の帯状部材(ストリップ)と第2の帯状部材(ジョイナー)との二重螺旋状になっていてもよい。
更生管が、管軸方向に延びる帯状部材を複数、管周方向に環状に並べた構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば老朽化した下水道管などの既設管を更生する更生材としての帯状部材に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
MD 送り方向
TD 幅方向
1 既設管
3 更生管
9 更生帯材
10 帯状部材
10c 主帯材の中間部と伸縮帯部とで囲まれた空間部
11 主帯部
11c 中間部
12 伸縮帯部
13,14 嵌合部
15 ウェルドライン
16 割断部
16a,16b 割断面
18 補強帯材
19A 溶融原料樹脂
20 帯状部材製造装置
20B,20C,20D,20E 帯状部材製造装置
21 押出成形部
24 押出成形金型
25 第1ダイ
26 第2ダイ
27 ブリッジ
27e 先端
27L 延長線
28 押出流路
28a,28b 流路部
28e 押出口
29 冷却部
30 割断処理部
32,34 位置決め機構
33 割断機構
33a,33b 割断ローラユニット
35 屈曲ローラ
35c V字環状溝
35d 谷部
36 押さえローラ
37 テーパローラ
37a テーパ面
37b 対向面
38 回転式のカッター
39 固定式のカッター