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特許7402054カメラ防水構造、防水レンズユニット及びカメラセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】カメラ防水構造、防水レンズユニット及びカメラセット
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/08 20210101AFI20231213BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231213BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20231213BHJP
【FI】
G03B17/08
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G03B17/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019571164
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004565
(87)【国際公開番号】W WO2019156205
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018021544
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101867
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 寿武
(72)【発明者】
【氏名】富永 修一
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190182(WO,A1)
【文献】特開2000-075385(JP,A)
【文献】特開平10-123602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/08
G02B 7/02
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を内蔵するとともに、前面に開口するマウント部を備え、前記マウント部の開口周面をマウント面とするカメラ本体と、
基端部の端面から軸方向へ延出する被マウント部を備え、当該被マウント部を前記マウント部へ装着することで、前記カメラ本体の前面に固定される防水レンズユニットと、
を含むカメラセットに適用されるカメラ防水構造であって、
前記防水レンズユニットの基端部の端面と、前記カメラ本体のマウント面と、防水壁と、を含み、
前記防水壁は、前記防水レンズユニットの被マウント部が貫通しない寸法で且つ前記カメラ本体のマウント部が貫通する寸法を持つ装着孔が穿設され、
前記防水壁の前記装着孔を通して前記カメラ本体のマウント部に前記防水レンズユニットの被マウント部を装着することで、前記カメラ本体の前面を前記防水壁より前方の空間から仕切る構成としたことを特徴とするカメラ防水構造。
【請求項2】
前記カメラ本体の周囲を覆うカメラケースを備え、当該カメラケースの前面壁が前記防水壁を形成することを特徴とする請求項1に記載のカメラ防水構造。
【請求項3】
前記防水レンズユニットの基端部の端面と前記防水壁の表面との間で、且つ前記被マウント部の周囲に、弾力性を有する環状の防水パッキンを配置し、前記防水レンズユニットと前記防水壁とで前記防水パッキンを圧迫する構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ防水構造。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカメラ防水構造に使用され、
固定側筒体と、複数枚のレンズが組み込まれた可動側レンズ鏡筒とを備え、前記固定側筒体の基端部の端面から軸方向に被マウント部が延出しており、当該被マウント部をカメラ本体の前面に開口するマウント部へ装着することで、当該カメラ本体の前面に固定され、且つ前記固定側筒体に対して前記可動側レンズ鏡筒を軸方向へ移動させることで撮像したい目標位置にピントを合わせる構成を含む防水レンズユニットであって、
前記固定側筒体の基端部が前記防水レンズユニットの基端部を形成し、
前記防水壁を取り除き、前記カメラ本体においてマウント面を形成する前記マウント部の開口周面に、前記固定側筒体における基端部の端面を位置決めした状態で、
撮像したい目標位置を無限遠に設定し、当該目標位置にピントを合わせたときの、前記固定側筒体に対する前記可動側レンズ鏡筒の移動位置から、
さらに前記防水壁の厚さ以上の距離を、前記可動側レンズ鏡筒が、前記カメラ本体に内蔵した前記撮像素子に向かって接近できる構成としたことを特徴とする防水レンズユニット。
【請求項5】
前記被マウント部は、外周面に雄ねじが形成され、当該雄ねじを前記カメラ本体に形成された雌ねじに対してねじ込んで装着するマウント構造を構成していることを特徴とする請求項に記載の防水レンズユニット。
【請求項6】
前記被マウント部の外周面に形成した雄ねじは、
前記固定側筒体の基端部の端面と、前記カメラ本体のマウント面との間に、防水壁を挟み込んで設けた状態で、
前記カメラ本体に形成された雌ねじに螺合する長さを有していることを特徴とする請求項に記載の防水レンズユニット。
【請求項7】
前記固定側筒体の内周面と、前記可動側レンズ鏡筒の外周面との間の隙間を閉塞する防水部材を設けたことを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の防水レンズユニット。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカメラ防水構造を備えたことを特徴とするカメラセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像素子を内蔵するカメラ本体への水分(水滴や湿気等)の浸入を防ぐためのカメラ防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般ユーザ向けの携帯カメラはすでに広く普及していることは周知のとおりであり、企業向けにも、次のような用途にカメラセットが広く用いられている。例えば、工場内での製造ラインには、ライン上を流れる部品や製品を画像認識して、製造装置の制御や製造した製品の検査が行われており、かかる部品や製品の画像認識にカメラセットが用いられている。また、セキュリティ対策用の防犯カメラや監視カメラとしてもカメラセットは用いられている。さらには、近年飛躍的に技術開発が進んでいる各種用途のロボットにも画像認識センサとしてカメラセットが用いられている。
このように種々の用途に広く普及しているカメラセットは、その使用環境によって防水機能を必要とすることがあり、従来も種々のカメラ防水構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、カメラセット(カメラ本体とレンズユニット)の全体をカメラケースに収納する方式のカメラ防水構造を開示している。
また、特許文献2は、防水構造のカメラ本体に、同じく防水構造の交換レンズユニットを装着するマウント部における防水構造を開示している。
さらに、特許文献3は、防水構造のカメラ本体に対し、防水性能を有しないレンズユニットを装着する前提において、レンズユニットを収納する防水ケースと、その防水ケースのカメラ本体に対する接合部の防水構造とを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-126742号公報
【文献】特開平6-294994号公報
【文献】特開2014-026188号公報
【文献】国際公開WO2015/190182号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来から種々のカメラ防水構造が提案されているものの、防水性能を有しないカメラ本体に対し、防水構造のレンズユニットを交換可能に装着することを前提としたカメラセットに関しては、未だそれに好適なカメラ防水構造は提案されていなかった。
【0006】
一般に、カメラ本体が防水性能を有しない場合は、特許文献1に開示されたような防水ケースが用いられ、カメラ本体とレンズユニットの全体(すなわち、カメラセットの全体)を収納する方式が採られていた。
しかし、防水ケースにカメラセットの全体を収納する方式では、大きさの異なる各種交換レンズユニットに対して、個々にサイズが適合する防水ケースを用意する必要が生じ、汎用性に欠ける。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、防水性能を有しないカメラ本体に対して、防水性能を有する防水レンズユニットを装着するカメラセットに適用される汎用性の高いカメラ防水構造と、その防水構造に使用される防水レンズユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るカメラ防水構造は、撮像素子を内蔵するとともに、前面に開口するマウント部を備え、マウント部の開口周面をマウント面とするカメラ本体と、
基端部の端面から軸方向へ延出する被マウント部を備え、当該被マウント部をマウント部へ装着することで、カメラ本体の前面に固定される防水レンズユニットと、
を含むカメラセットに適用されるカメラ防水構造であって、
防水レンズユニットの基端部の端面と、カメラ本体のマウント面との間に、防水壁を挟み込んで設けることで、当該防水壁によってカメラ本体の前面をそれより前方の空間から仕切る構成としたことを特徴とする。
【0009】
まず、カメラ本体に対してその前方からの水分の浸入を防止するカメラ防水構造を提案する。例えば、工場内設置したカメラセットを清掃するに際して、レンズの表面に付着した塵埃を水流を吹き付けて洗浄する場合などに、このカメラ防水構造は好適である。
すなわち、本発明によれば、防水レンズユニットの基端部の端面と、カメラ本体のマウント面との間に挟み込んで設けた防水壁により、カメラ本体をその前方の空間から仕切っているので、前方からのカメラ本体への水分の浸入を防水壁によって防止することができる。
【0010】
レンズユニットを交換可能に装着できるマウント部を備えたカメラ本体に対しては、同じマウント方式の被マウント部を備えたレンズユニットが装着される。したがって、大きさの異なる各種レンズユニットについても、マウント部と被マウント部の寸法構造は共通であるため、防水壁を挟み込む構造も共通化でき、汎用性の高いカメラ防水構造を実現することができる。
なお、本発明のカメラ防水構造は、防水性能を有する防水レンズユニットを用いることを前提としている。
【0011】
さらに、本発明に係るカメラ防水構造は、カメラ本体の周囲を覆うカメラケースを備え、当該カメラケースの前面壁が防水壁を形成する構成とすることもできる。
このようにカメラ本体の周囲をカメラケースで覆うことにより、カメラ本体に対し、前方のみならず、あらゆる方向からの水分の浸入を防止することが可能となる。また、カメラケースは、カメラ本体の周囲を覆うだけであるから、カメラ本体に装着するレンズユニットの大きさが異なっても、カメラケースを交換する必要はない。
【0012】
なお、防水レンズユニットの基端部の端面と防水壁の表面との間で、且つ被マウント部の周囲に、弾力性を有する環状の防水パッキンを配置し、防水レンズユニットと防水壁とで防水パッキンを圧迫する構成とすることが好ましい。
これにより、防水壁を挟み込んだ部分からの水分の浸入をいっそう確実に防止することができる。
【0013】
次に、本発明に係る防水レンズユニットは、次のように構成したことを特徴とする。
すなわち、防水レンズユニットは、固定側筒体と、複数枚のレンズが組み込まれた可動側レンズ鏡筒とを備え、固定側筒体の基端部の端面から軸方向に被マウント部が延出しており、当該被マウント部をカメラ本体の前面に開口するマウント部へ装着することで、当該カメラ本体の前面に固定され、且つ固定側筒体に対して可動側レンズ鏡筒を軸方向へ移動させることで撮像したい目標位置にピントを合わせる構成を含んでいる。
そして、カメラ本体においてマウント面を形成するマウント部の開口周面に、固定側筒体における基端部の端面を位置決めした状態で、
撮像したい目標位置を無限遠に設定し、当該目標位置にピントを合わせたときの、固定側筒体に対する可動側レンズ鏡筒の移動位置から、
さらに、可動側レンズ鏡筒が、カメラ本体に内蔵した撮像素子に向かって接近できる構成としてある。
【0014】
上述した防止レンズユニットは、次のように構成することで、上述した本発明のカメラ防水構造に好適な防水レンズユニットとなる。
すなわち、固定側筒体の基端部が防水レンズユニットの基端部を形成し、
防水壁を取り除き、カメラ本体においてマウント面を形成するマウント部の開口周面に、固定側筒体における基端部の端面を位置決めした状態で、
撮像したい目標位置を無限遠に設定し、当該目標位置にピントを合わせたときの、固定側筒体に対する可動側レンズ鏡筒の移動位置から、
さらに防水壁の厚さ以上の距離を、可動側レンズ鏡筒が、カメラ本体に内蔵した撮像素子に向かって接近できる構成とする。
【0015】
一般に、カメラセットのレンズマウント構造は、レンズユニットにおける基端部(固定側筒体の基端部)の端面が、カメラ本体におけるマウント面に接触させた状態で、レンズユニットをカメラ本体に装着するように設定され、この状態でフランジバックが規定されている。フランジバックとは、マウント面から撮像素子までの距離をいう。
また、一般のレンズユニットは、撮像したい目標位置を無限遠に設定したとき、可動側レンズ鏡筒が撮像素子にもっとも接近した移動端に配置され、この移動端で無限遠の位置にある像が撮像素子に結像する(すなわち、ピントが合う)ように調整されている。
【0016】
上述した本発明に係るカメラ防水構造は、これらの常識に縛られることのない発想から生み出されたもので、レンズユニットにおける基端部の端面と、カメラ本体におけるマウント面との間に防水壁を介在させることで、レンズユニットにおける基端部の端面は、カメラ本体におけるマウント面よりも前方に配置されることになる。そのため、上述した一般のレンズユニットでは、可動側レンズ鏡筒を撮像素子にもっとも接近した移動端まで移動させても、無限遠の位置にある像にピントが合わない。
【0017】
そこで、本発明に係る防水レンズユニットは、上述した一般のレンズユニットにおける可動側レンズ鏡筒の移動端(撮像素子にもっとも接近した移動端)よりも、さらに防水壁の厚さ以上の距離だけ、可動側レンズ鏡筒が撮像素子に向かって接近できる構成とすることで、無限遠の位置にある像にもピントを合わせることが可能となる。
【0018】
また、防水レンズユニットの被マウント部は、外周面に雄ねじが形成され、当該雄ねじをカメラ本体に形成された雌ねじに対してねじ込んで装着するマウント構造を構成していることが好ましい。
このようなねじ込み式のマウント構造であれば、被マウント部の外周面に形成した雄ねじの長さを延長するだけで、容易に固定側筒体の基端部の端面と、カメラ本体のマウント面との間に、防水壁を挟み込んで設けた状態で、カメラ本体に形成された雌ねじに螺合することが可能となる。
【0019】
なお、例えば、固定側筒体の内周面と、可動側レンズ鏡筒の外周面との間の隙間を防水部材により閉塞することで、レンズユニットを防水構造とすることができる。
【0020】
以上説明したように、本発明に係るカメラ防水構造によれば、防水レンズユニットの基端部の端面と、カメラ本体のマウント面との間に挟み込んで設けた防水壁により、カメラ本体をその前方の空間から仕切っているので、前方からのカメラ本体への水分の浸入を防水壁によって防止することができる。
また、本発明に係る防水レンズユニットによれば、レンズユニットにおける基端部の端面と、カメラ本体におけるマウント面との間に防水壁を挟み込んだカメラ防水構造に適用しても、無限遠の位置にある像にピントを合わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A図1Bは、本発明の第1実施形態に係るカメラ防水構造を示す図で、図1Aは正面図、図1Bは防水レンズユニット及びカメラ本体のマウント部を切断して示す端面図である。
図2図2A図2Bは、本発明の第1実施形態に係るカメラ防水構造を分解して示す図で、図1Aは正面図、図2Bは防水レンズユニット、防水壁及びカメラ本体のマウント部を切断して示す端面図である。
図3図3A図3Bは、本発明の第1実施形態に係る防水レンズユニットを示す正面端面図であり、各図はそれぞれ可動側レンズ鏡筒を異なった移動位置に移動させた状態を示している。
図4図4Aは、本発明の第1実施形態に係る防水レンズユニットを分解して示す正面端面図、図4Bは、前方レンズ固定筒への前方レンズ群の組み込み構造を拡大して示す正面端面図、図4Cは、図4BにおけるA-A線断面図である。
図5図5は、防水レンズユニットにおける可動側レンズ鏡筒の可動範囲設定を説明するための端面図である。
図6図6A図6Bは、本発明の第2実施形態に係るカメラ防水構造を示す図で、図6Aは正面図、図6Bは防水レンズユニット及びカメラケースを切断して示す端面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るカメラ防水構造を分解して示す図で、防水レンズユニット及びカメラケースを切断して示す端面図である。
図8図8は、本発明に係る防水レンズユニットの応用例を示す図で、防水レンズユニット及びカメラ本体のマウント部を切断して示す端面図である。
【符号の説明】
【0022】
10:カメラ本体、11:撮像素子、12:マウント部、12a:雌ねじ部、13:マウント面、
20:防水レンズユニット、
30:固定側筒体、30a:雌ねじ、31:固定側筒体における基端部の端面、32:被マウント部、32a:雄ねじ部、
40:可動側レンズ鏡筒、40a:雄ねじ、40b:回転操作部、41:絞り板、42:前方レンズ群、43:前方レンズ固定筒、44:スペーサ、45:固定リング、46:貫通孔、47:先端レンズ、S:空間、48:防水パッキン
50:後方レンズ群、51:後方レンズ固定筒、52:固定リング、55:防水部材、56:ナット部材、
60:防水壁、61:装着孔、62:防水パッキン、
70:カメラケース、71:前面壁、
80:コネクタ、81:信号ケーブル、82:ブッシュ
90:移動量規制リング
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1A図5Cは、本発明の第1実施形態に係るカメラ防水構造と防水レンズユニットを示す図である。
カメラ防水構造は、カメラ本体10と、防水レンズユニット20とで構成されるカメラセットに適用される。カメラ本体10は、CCDイメージセンサ等の撮像素子11を内蔵するとともに、前面に開口するマウント部12を備えており、このマウント部12に防水レンズユニット20が交換可能に装着される。カメラ本体10は、防水性能を有してなく、内部に水が浸入した場合、撮像素子11を含む内蔵部品が破損してしまうおそれがある。このため、カメラ本体10への水分の浸入を防止する目的でカメラ防水構造が組み込まれている。
【0024】
本実施形態では、特許文献4に開示された従来の防水レンズユニットを改良して、本発明のカメラ防水構造に好適な防水レンズユニット20を構成している。
すなわち、防水レンズユニット20は、固定側筒体30と、可動側レンズ鏡筒40とを備えている。図3A図3Bに示すように、可動側レンズ鏡筒40は、固定側筒体30に対して軸方向に移動可能となっており、固定側筒体30に対して可動側レンズ鏡筒40を移動させることで、撮像したい目標位置にピントを合わせる(すなわち、目標位置にある像を撮像素子11に結像する)構成となっている。
【0025】
固定側筒体30における基端部の端面31(防水レンズユニット20の基端部の端面31でもある)からは、軸方向へ筒状の被マウント部32が延出しており、この被マウント部32をカメラ本体10のマウント部12へ装着することで、カメラ本体10の前面に防水レンズユニット20が固定される。
【0026】
レンズユニットを装着するカメラのマウント方式には、種々の方式があり、カメラ本体10のマウント部12と防水レンズユニット20の被マウント部32は、共通のマウント方式で構成される。例えば、本実施形態ではCマウントと称するねじ込み式のマウント方式を採用しており、カメラ本体10におけるマウント部12の内周面に形成した雌ねじ部12aに、防水レンズユニット20における被マウント部32の外周面に形成した雄ねじ部32aをねじ込むことで、マウント部12へ被マウント部32を装着する構成となっている(図2A図1Bを参照)。
なお、本発明のカメラ防水構造が適用されるカメラセットは、Cマウント等のねじ込み式のマウント方式に限らず、他のマウント方式を採用するものであってもよい。
【0027】
図4Aに示すように、可動側レンズ鏡筒40には、複数枚のレンズと絞り板41が組み込まれている。複数枚のレンズは、可動側レンズ鏡筒40の先端側(図の左側)から組み込まれる前方レンズ群42と、可動側レンズ鏡筒40の基端側(図の右側)から組み込まれる後方レンズ群50とに分けられている。
【0028】
前方レンズ群42は、前方レンズ固定筒43に適宜スペーサ44を介在させながら前方から順次嵌め込まれ、固定リング45にて先端側から固定されている。図4B図4Cに示すように、固定リング45には、180゜隔てた2箇所に貫通孔46が形成してある。なお、図4Cは、図4Bにおける空間Sを通るA-A断面から、同図の左方向を見た図である。また、前方レンズ固定筒43に対していちばん前方の位置に嵌め込まれた先端レンズ47は、固定リング45で閉塞された外周部分に空間Sが形成してあり、この空間Sに各貫通孔46が連通している。
【0029】
前方レンズ固定筒43にレンズを組み付けた後、一方の貫通孔46を上方位置に配置し、この貫通孔46から接着剤を充填する。そうすると、接着剤は貫通孔46から空間Sに流れ込み、空間S内に隙間なく充填される。このとき、空間S内の空気は、下方位置に配置された他方の貫通孔46から排出されていく。このようにして、下方位置の貫通孔46から接着剤が溢れ出すまで、上方位置の貫通孔46から接着剤を充填する。この処理により、先端レンズ47の外周面と前方レンズ固定筒43の内周面との間に、隙間のない防水構造を形成することができる。
【0030】
なお、表面が露出する先端レンズ47は、その表面を撥水加工しておけば、水滴が付着したまま残存することがなくなり好ましい。
【0031】
図4Aに示す状態から、可動側レンズ鏡筒40の内部へ、先端側(図の左側)から絞り板41を嵌め込み、続いて前方レンズ固定筒43をねじ込むことで、絞り板41と前方レンズ群42が可動側レンズ鏡筒40の内部に組み込まれる。可動側レンズ鏡筒40の内周面と前方レンズ固定筒43との間には、環状の防水パッキン48(例えば、Oリング)を設けることで、隙間のない防水構造を形成してある。
【0032】
後方レンズ群50は、後方レンズ固定筒51に後方から順次嵌め込まれ、固定リング52にて後方から固定されている。図4Aに示すように、後方レンズ固定筒51は、可動側レンズ鏡筒40の内部へ、基端側(図の右側)からをねじ込まれる。これにより、後方レンズ群50が可動側レンズ鏡筒40の内部に組み込まれる。
【0033】
図4Aに示すように、固定側筒体30の内周面には、基端部から軸方向に一定の範囲で雌ねじ30aが形成してある。また、可動側レンズ鏡筒40の外周面には雄ねじ40aが形成してある。可動側レンズ鏡筒40は、固定側筒体30の内部に嵌め込まれ、雌ねじ30aに雄ねじ40aが螺合している。可動側レンズ鏡筒40の先端部外周には回転操作部40bが形成してあり、この回転操作部40bを回転することで、雌ねじ30aと雄ねじ40aによるねじ機構をもって、固定側筒体30に対して可動側レンズ鏡筒40が軸方向へ移動する。
【0034】
図3A図3Bに示すように、固定側筒体30の内周面と、可動側レンズ鏡筒40の外周面との間には、環状の防水パッキン(例えば、円環状の防水パッキンであるOリング)等の防水部材55が設けてある。この防水部材55により、固定側筒体30の内周面と、可動側レンズ鏡筒40の外周面との間の隙間が閉塞されて、防水構造が形成される。なお、防水部材55は円環状の防水パッキンに限定されるものではなく、四角等の多角形状の環状に構成された防水パッキンを適用することもできる。また、防止パッキンは、Oリングに限らず、円形以外の断面形状をした防水パッキンを適用することもできる。さらにまた、防水部材55としてグリース等の粘性部材を適用し、固定側筒体30の内周面と、可動側レンズ鏡筒40の外周面との間にその粘性部材を充填することで、防水構造を形成することもできる。
【0035】
また、図3B等に示すように、可動側レンズ鏡筒40の雄ねじ40aには、ナット部材56が螺合してある。このナット部材56は、固定側筒体30に対する可動側レンズ鏡筒40の相対回転を規制するためのダブルナットを構成する。すなわち、可動側レンズ鏡筒40を回転操作して軸方向へ移動させた後、ナット部材56を回転操作して固定側筒体30の先端面にナット部材56を押し付ける。この操作をもって、特許文献4に記載されているように、可動側レンズ鏡筒40の雄ねじ40aと固定側筒体30の雌ねじ30aとの間の緩みがなくなり、振動等による可動側レンズ鏡筒40の意図しない回転を規制することができる。
【0036】
防水レンズユニット20は、固定側筒体30に対して可動側レンズ鏡筒40を軸方向へ移動させることで、撮像したい目標位置にピントを合わせる。すなわち、目標位置にある像を撮像素子11に結像させる。
【0037】
次に、本実施形態に係るカメラ防水構造を説明する。
カメラ防水構造は、図1A図2Bに示すように、防水レンズユニット20における基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60を挟み込んで設けることで構築している。
防水壁60には、図2Bに示すように、円形の装着孔61が穿設してある。装着孔61の内径は、防水レンズユニット20の被マウント部32を貫通するが、カメラ本体10のマウント部12は貫通しない寸法に設定してある。
【0038】
防水壁60は、防水レンズユニット20の被マウント部32に装着孔61を通して嵌め込む。続いて、カメラ本体10のマウント部12に防水レンズユニット20の被マウント部32をねじ込む。これにより、防水レンズユニット20における基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60が挟み込まれる。ここで、マウント面13は、マウント部12の開口周面である
カメラ本体10の前面は、防水壁60によってそれより前方の空間から仕切られる。よって、前方からのカメラ本体10への水分の浸入が阻止される。
【0039】
さらに、防水レンズユニット20における基端部の端面31と防水壁60の表面との間で、且つ被マウント部32の周囲には、弾力性を有する環状の防水パッキン62(例えば、円環状の防水パッキンであるOリング)を配置してある。この防水パッキン62は、防水レンズユニット20と防水壁60との間で圧迫されて変形する。このように防水パッキン62を介在させれば、防水壁60を挟み込んだ部分からの水分の浸入を、いっそう確実に防止することができる。
なお、防水パッキン62も円環状のOリングに限定されるものではなく、四角等の多角形状の環状に構成された防水パッキンや、円形以外の断面形状をした防水パッキンを適用することができる。
【0040】
ここで、防水レンズユニット20の被マウント部32に形成した雄ねじ部32aは、固定側筒体30の基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60を挟み込んで設けた状態で、カメラ本体10のマウント部12に形成した雌ねじ部12aへ螺合することができる長さを有している。
【0041】
さて、カメラ本体10に内蔵した撮像素子11は、マウント部12の開口周面であるマウント面13を基準として、マウント面13からあらかじめ設定した距離に設置される。このマウント面13から撮像素子11までの距離をフランジバック(fb)と称している。
一般には、図5Aに示すように、このマウント面13を、防水レンズユニット20における基端部の端面31(すなわち、固定側筒体30における基端部の端面31)に当接させた状態で、レンズユニットがカメラ本体10に装着される。
【0042】
そして、一般のレンズユニットは、この装着状態を基準にして、撮像したい目標位置を無限遠に設定したとき、固定側筒体30に対して可動側レンズ鏡筒40が撮像素子11にもっとも接近した移動端に配置され、この移動端で無限遠の位置にある像が撮像素子11に結像する(すなわち、ピントが合う)ように調整されている(図5A参照)。
【0043】
これに対して、本実施形態に係るカメラ防水構造は、上述したとおり、防水レンズユニット20における基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60を挟み込んで設けることで構築している。
そのため、カメラ本体10のマウント面13は、防水レンズユニット20における基端部の端面31(すなわち、固定側筒体30における基端部の端面31)から、防水壁60の厚さDだけ離間することになる(図5C参照)。
【0044】
したがって、上述した一般のレンズユニットでは、可動側レンズ鏡筒40を撮像素子11にもっとも接近した移動端まで移動させても、無限遠の位置にある像にピントが合わない。
そこで、本実施形態に係る防水レンズユニット20は、図5Aに示すような、一般のレンズユニットにおける可動側レンズ鏡筒40の移動端(撮像素子11にもっとも接近した移動端)よりも、さらに防水壁60の厚さD以上の距離だけ、可動側レンズ鏡筒40が撮像素子11に向かって接近できる構成としてある。
これにより、防水レンズユニット20における基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60が挟み込んであっても、無限遠の位置にある像にピントを合わせることが可能となる。
【0045】
例えば、図5Aに示したような、一般のレンズユニットと同様に設定された防水レンズユニット20に対し、図5Bに示すように、可動側レンズ鏡筒40の基端部を、防水壁60の厚さD以上の長さだけ短くする。これにより、さらに防水壁60の厚さD以上の距離を、固定側筒体30に対して可動側レンズ鏡筒40が撮像素子11に向かって接近できるようになる。
【0046】
なお、防水壁60の面積や形状は、任意に設計することができる。また、防水壁60に複数の装着孔61を設け、各装着孔61にカメラセットを取り付けて、一枚の防水壁60で複数のカメラセットを防水構造とすることも可能である。
【0047】
〔第2実施形態〕
図6及び図7は、本発明の第2実施形態に係るカメラ防水構造を示す図である。なお、これらの図に示す第2実施形態に係るカメラ防水構造において、既述した第1実施形態に係るカメラ防水構造と同一部分又は相当する部分には、同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
【0048】
第2実施形態に係るカメラ防水構造では、カメラケース70を用いてカメラ本体10の防水構造を構築している。カメラケース70は、カメラ本体10を収納できる大きさに形成してあり、前面壁71が防水壁60を形成している。すなわち、カメラケース70の前面壁71には、図7に示すように、円形の装着孔61が穿設してあり、この装着孔61の内径は、防水レンズユニット20の被マウント部32を貫通するが、カメラ本体10のマウント部12は貫通しない寸法に設定してある。
【0049】
カメラケース70に収納したカメラ本体10は、マウント部12をこの装着孔61の同軸上に配置し、マウント面13を前面壁71の内面に接触させる。そして、防水レンズユニット20の被マウント部32を、カメラケース70の外側から装着孔61に挿入し、カメラ本体10のマウント部12へねじ込んで装着する。
【0050】
これにより、防水レンズユニット20における基端部の端面31と、カメラ本体10のマウント面13との間に、防水壁60が挟み込まれてカメラ防水構造が構築される。また、カメラ本体10の周囲をカメラケース70で覆うことにより、カメラ本体10に対し、前方のみならず、あらゆる方向からの水分の浸入を防止することが可能となる。
【0051】
カメラケース70は、カメラ本体10だけを収納する構成のため、カメラ本体10に装着するレンズユニットの大きさが異なっても、カメラケース70には影響がなく、カメラケース70を交換する必要はない。
【0052】
図7に示すように、カメラ本体10には、コネクタ80を介して信号ケーブル81が接続される。この信号ケーブル81は、防水性能を有するブッシュ82を通してカメラケース70内に挿入される。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で種々の変形実施や応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、防水カメラユニットは、図8に示すように、防水壁60を使用しない一般のカメラセットにも使用することができる。その場合、無限遠の位置にピントが合う移動位置よりもさらに撮像素子11に向かって接近した位置まで、固定側筒体30に対し可動側レンズ鏡筒40が移動できるため、その移動端では無限遠の位置にピントが合わなくなってしまう。
【0054】
そこで、図8に示すように、固定側筒体30における中空部内の基端面と、可動側レンズ鏡筒40の基端面との間に、移動量規制リング90を介在させることで、必要以上の可動側レンズ鏡筒40の移動を規制することができる。
移動量規制リング90は、防水カメラユニットを一般のレンズユニットにおける可動側レンズ鏡筒40の移動端(撮像素子11にもっとも接近した移動端)よりも、さらに撮像素子11に向かって可動側レンズ鏡筒40を接近できる移動量に合わせた厚さに設定しておけばよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8