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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20231213BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
B60C19/00 H
B60C19/00 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020004565
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110704
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
(72)【発明者】
【氏名】足立 重之
(72)【発明者】
【氏名】浅川 寿昭
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0318356(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0035603(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0172527(US,A1)
【文献】特開平06-300649(JP,A)
【文献】特開平02-157625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/18-1/20
G01L 5/00
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体用のタイヤであって、
前記タイヤの内側にセンサが設けられ、
前記センサは、
絶縁層と、
前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された複数の第1抵抗部と、
前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の第2抵抗部と、
各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部の両端部に設けられた1対の電極と、を有し、
各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部は、前記1対の電極の間に形成されたジグザグのパターンであり、
各々の前記第1抵抗部と各々の前記第2抵抗部とは、平面視で1点のみで交差し、
前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr、CrN、及びCr Nを含む膜から形成され、
前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部に含まれるCrN及びCr Nの割合は、20重量%以下であり、
前記CrN及び前記Cr N中の前記Cr Nの割合は、80重量%以上90重量%未満であり、
前記第1抵抗部及び/又は前記第2抵抗部が押圧されると、押圧された前記第1抵抗部及び/又は前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値が加わる圧力の大きさに応じて連続的に変化するタイヤ。
【請求項2】
前記センサは、前記タイヤの内周側の幅方向の全体及び周方向の全体に貼り付けられているか、又は埋め込まれている請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部は、前記1対の電極の間に形成されたジグザグのパターンである請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1抵抗部の抵抗値の変化及び前記第2抵抗部の抵抗値の変化に基づいて、前記タイヤの圧力分布の検出が可能である請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記膜の下層に、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層を有し、
前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を形成する機能を有する請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記膜は、前記α-Crを80重量%以上含む請求項1乃至5の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記絶縁層の一方の面側又は他方の面側に実装された電子部品を有する請求項1乃至の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記電子部品は、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値を電圧に変換してデジタル信号として出力する請求項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記絶縁層の一方の面側又は他方の面側に実装され、前記電子部品と電気的に接続されて前記電子部品に給電する電源を有する請求項又はに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のタイヤの空気圧は気温で変化し、タイヤが暖まった状態では膨張して空気圧が高くなり、下がったときには逆に低くなるため、リアルタイムでの空気圧の測定は困難である。又、タイヤの空気圧は一般に空気圧ゲージを使用した測定となるため、時間を要したり手間のかかる作業となり問題となる。
【0003】
走行中でも空気圧がチェックできる空気圧センサ付きバルブ等も知られているが、バルブの配置された特定箇所の圧力のみの検出となるため、タイヤ全体にかかる圧力分布を把握することは困難である。
【0004】
自動車等のタイヤは、コーナーでスピードを出し過ぎた場合や、空気圧不良等の異常がある場合に片減りが発生する。タイヤが片減りを起こしたまま走行すると、タイヤがバースト(破裂)するおそれや、ハンドルがとられて事故を起こすおそれがあり大変危険である。
【0005】
以上のような点から、タイヤにかかる圧力分布を測定することは、自動車等が安全に走行する上で極めて重要である。そのため、例えば、変形検出素子をタイヤの内表面、タイヤの外表面、タイヤの補強層に取り付けることで、タイヤの変形状態を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-249567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の測定方法では、タイヤの部分的な変形状態しか検出できず、タイヤにかかる圧力分布を測定することは困難であった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、圧力分布を測定できるセンサを搭載したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本タイヤは、移動体用のタイヤであって、前記タイヤの内側にセンサが設けられ、前記センサは、絶縁層と、前記絶縁層の一方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された複数の第1抵抗部と、前記絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の第2抵抗部と、各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部の両端部に設けられた1対の電極と、を有し、各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部は、前記1対の電極の間に形成されたジグザグのパターンであり、各々の前記第1抵抗部と各々の前記第2抵抗部とは、平面視で1点のみで交差し、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr、CrN、及びCr Nを含む膜から形成され、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部に含まれるCrN及びCr Nの割合は、20重量%以下であり、前記CrN及び前記Cr N中の前記Cr Nの割合は、80重量%以上90重量%未満であり、前記第1抵抗部及び/又は前記第2抵抗部が押圧されると、押圧された前記第1抵抗部及び/又は前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値が加わる圧力の大きさに応じて連続的に変化する。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、圧力分布を測定できるセンサを搭載したタイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その1)である。
図2】第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その2)である。
図3】第1実施形態に係るセンサを例示する平面図である。
図4】第1実施形態に係るセンサを例示する断面図(その1)である。
図5】第1実施形態に係るセンサを例示する断面図(その2)である。
図6】第1実施形態に係る圧力分布検出装置を例示するブロック図である。
図7】第1実施形態に係る圧力分布検出装置の制御装置を例示するブロック図である。
図8】第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する断面図である。
図9】第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する断面図である。
図10】第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その1)であり、タイヤを幅方向に切断した断面を示している。図2は、第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その2)であり、タイヤを幅方向の中央で幅方向に垂直な方向に切断した断面を示している。なお、図2は、図1とは縮尺が異なり、又、図1に示した構成要素の一部が省略されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、タイヤ100は、トレッド部110と、左右のサイドウォール部120と、左右のビード部130とを有している。トレッド部110は、タイヤ100の路面に接する部分である。サイドウォール部120は、タイヤ100の側面となる部分である。ビード部130は、タイヤ100をホイールのリムに固定する部分である。
【0015】
タイヤ100の内側には、インナーライナー140が設けられている。インナーライナー140は、例えば、ゴムで形成された層である。インナーライナー140の外側には、トレッド部110と左右のサイドウォール部120とを通って左右のビード部130間に伸びるカーカス150が設けられている。カーカス150は、例えば、繊維やスチールをゴムで被覆した層である。カーカス150の両端部は、ビードコア160及びビードフィラー170を挟み込むようにして折り返されている。トレッド部110のカーカス150の外周側には、複数のベルト180が設けられている。
【0016】
インナーライナー140の内周側(タイヤ100の中心に近い側)には、センサ1が貼り付けられている。センサ1は、インナーライナー140の内周側の幅方向の全体及び周方向の全体に貼り付けられていることが好ましい。なお、センサ1をインナーライナー140の内周側に貼り付けることに代えて、タイヤ100の最外周(路面に接する面)よりも内側に位置する何れかの部分に埋め込んでもよい。例えば、センサ1をインナーライナー140に埋め込んでもよい。
【0017】
センサ1は、タイヤ100が自動車等の移動体に装着されているときに、タイヤ100にかかる圧力分布を検出するために設けられている。タイヤ100にかかる圧力には、タイヤ100の外部からの圧力(路面からの圧力)やタイヤ100の内部からの圧力(空気圧)があるが、センサ1は、これらを合成した圧力の分布を検出できる。なお、移動体とは、例えば、自動車、自動二輪車、ロボット等のタイヤ100を装着して移動可能な物体を指す。
【0018】
図3は、第1実施形態に係るセンサを例示する平面図である。図4は、第1実施形態に係るセンサを例示する断面図であり、図3のA-A線に沿う断面を示している。
【0019】
図3及び図4は、センサ1がタイヤ100に配置される前の状態を示している。又、X方向はタイヤ100の幅方向に相当し、Y方向はタイヤ100の周方向に相当し、Z方向はタイヤ100の半径方向に相当する。
【0020】
図3及び図4を参照すると、センサ1は、基材10と、抵抗体30(複数の抵抗部31及び32)と、複数の端子部41及び42とを有している。センサ1は、並置された複数の抵抗部31及び32の長手方向(Y方向)をタイヤ100の周方向に向けてタイヤ100に配置される。ここでは、センサ1の抵抗部31側がインナーライナー140側を向くように配置されるものとする。
【0021】
なお、本実施形態では、便宜上、センサ1において、基材10の抵抗部31が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗部32が設けられている側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗部31が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗部32が設けられている側の面を他方の面又は下面とする。但し、センサ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0022】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、抵抗部31及び32のひずみ感度誤差を少なくできる点で好ましい。
【0023】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0024】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0025】
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材10上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0026】
抵抗体30は、基材10上に形成されており、加わる圧力に応じて連続的に抵抗値が変化する受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10a及び下面10bに直接形成されてもよいし、基材10の上面10a及び下面10bに他の層を介して形成されてもよい。
【0027】
抵抗体30は、基材10を介して積層された複数の抵抗部31及び32を含んでいる。すなわち、抵抗体30は、複数の抵抗部31及び32の総称であり、抵抗部31及び32を特に区別する必要がない場合には抵抗体30と称する。なお、図3では、便宜上、抵抗部31及び32を梨地模様で示している。
【0028】
複数の抵抗部31は、基材10の上面10aに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された薄膜である。複数の抵抗部32は、基材10の下面10bに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜である。
【0029】
なお、本実施形態では、複数の抵抗部31と複数の抵抗部32とは平面視で直交しているが、これには限定されない。すなわち、複数の抵抗部31と複数の抵抗部32とは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
【0030】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0031】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0032】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗体30の厚さが1μm以下であると、抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0033】
抵抗体30の幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~1000μm(1mm)程度とすることができる。隣接する抵抗体30のピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mm~100mm程度とすることができる。なお、抵抗部31及び32は、実際には数100~数10000本程度設けられる。
【0034】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、抵抗体30の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗体30の感度の向上を実現できる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、抵抗体30の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗体30の感度の向上を実現する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0035】
又、抵抗部31及び32がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0036】
又、CrN及びCrN中のCrNの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCrN中のCrNの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCrNにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減が成される。
【0037】
一方で、膜中に微量のNもしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0038】
端子部41は、基材10の上面10aにおいて、各々の抵抗部31の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部31よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、加わる圧力により生じる抵抗部31の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41の上面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0039】
端子部42は、基材10の下面10bにおいて、各々の抵抗部32の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部32よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部42は、加わる圧力により生じる抵抗部32の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42の上面を、端子部42よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32と端子部42とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
【0040】
なお、基材10を貫通する貫通配線(スルーホール)を設け、端子部41及び42を基材10の上面10a側又は下面10b側に集約してもよい。
【0041】
抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように基材10の上面10aにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。又、抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように基材10の下面10bにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗部31及び32に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗部31及び32を湿気等から保護できる。なお、カバー層は、端子部41及び42を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0042】
カバー層は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0043】
センサ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに図3に示す平面形状の抵抗部31及び端子部41を形成する。抵抗部31及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗部31と端子部41とは、同一材料により一体に形成できる。
【0044】
抵抗部31及び端子部41は、例えば、抵抗部31及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗部31及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0045】
抵抗部31の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現する観点から、抵抗部31及び端子部41を成膜する前に、下地層として所定の膜厚の機能層を真空成膜することが好ましい。機能層は、例えば、コンベンショナルスパッタ法により成膜できる。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗部31及び端子部41を形成後、フォトリソグラフィによって抵抗部31及び端子部41と共に図3に示す平面形状にパターニングされる。
【0046】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗部の酸化を防止する機能や、基材10と抵抗部との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0047】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗部がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗部の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0048】
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0049】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0050】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0051】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0052】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0053】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0054】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることよりが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0055】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層クラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0056】
なお、機能層の平面形状は、例えば、図3に示す抵抗部の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗部の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗部の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗部が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0057】
又、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗部が発熱した際の熱を基材10側へ放熱できる。その結果、センサ1において、抵抗部の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0058】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0059】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0060】
機能層の材料と抵抗部31及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗部31及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0061】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNの割合、並びにCrN及びCrN中のCrNの割合を調整できる。
【0062】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、抵抗部31の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0063】
なお、抵抗部31がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗部31の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による抵抗部31の酸化を防止する機能、及び基材10と抵抗部31との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0064】
このように、抵抗部31の下層に機能層を設けることにより、抵抗部31の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗部31を作製できる。その結果、センサ1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。又、機能層を構成する材料が抵抗部31に拡散することにより、センサ1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、加わる圧力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。
【0065】
次に、基材10の下面10bに図3に示す平面形状の抵抗部32及び端子部42を形成する。抵抗部32及び端子部42は、抵抗部31及び端子部41と同様の方法で形成できる。抵抗部32及び端子部42を成膜する前に、下地層として、基材10の下面10bに機能層を成膜することが好ましい点も同様である。
【0066】
抵抗部31及び端子部41並びに抵抗部32及び端子部42を形成後、必要に応じ、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するカバー層を、基材10の下面10bに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するカバー層を設けてもよい。これにより、センサ1が完成する。
【0067】
カバー層は、例えば、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。又、カバー層は、例えば、基材10の下面10bに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層は、絶縁樹脂フィルムのラミネートに代えて、液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0068】
なお、抵抗部31及び端子部41の下地層として基材10の上面10aに機能層を設け、抵抗部32及び端子部42の下地層として基材10の下面10bに機能層を設けた場合には、センサ1は図5に示す断面形状となる。符号20a及び20bで示す層が機能層である。機能層20a及び20bを設けた場合のセンサ1の平面形状は、図3と同様である。
【0069】
図6に示すように、センサ1及び制御装置2により圧力分布検出装置3を実現できる。圧力分布検出装置3は、路面からタイヤ100にかかる圧力分布を検出する装置である。圧力分布検出装置3において、センサ1の各々の端子部41及び42は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、制御装置2に接続されている。
【0070】
制御装置2は、センサ1の端子部41及び42を介して得られた情報に基づいて、路面からタイヤ100にかかる圧力分布を検出できる。すなわち、センサ1の抵抗部31はX座標の検出に用いることができ、抵抗部32はY座標の検出に用いることができるため、圧力が加わった位置のXY座標と、加わる圧力の大きさを検出できる。
【0071】
図7に示すように、制御装置2は、例えば、アナログフロントエンド部21と、信号処理部22とを含む構成にできる。
【0072】
アナログフロントエンド部21は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)等を備えている。アナログフロントエンド部21は、温度補償回路を備えていてもよい。
【0073】
アナログフロントエンド部21では、例えば、センサ1の全ての端子部41及び42が入力信号選択スイッチに接続され、入力信号選択スイッチにより1対の電極が選択される。入力信号選択スイッチで選択された1対の電極は、ブリッジ回路に接続される。
【0074】
すなわち、ブリッジ回路の1辺が入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、入力信号選択スイッチは、信号処理部22から制御可能に構成されている。
【0075】
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、信号処理部22に送られる。アナログフロントエンド部21が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が信号処理部22に送られる。入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、センサ1の全ての端子部41及び42の抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で信号処理部22に送ることができる。
【0076】
信号処理部22は、アナログフロントエンド部21から送られた情報に基づいて、路面からタイヤ100にかかる圧力分布を検出できる。
【0077】
なお、加わる圧力の大きさによっては、抵抗部31及び抵抗部32のうち、何れか一方のみに圧力がかかる場合がある。この場合には、何れか一方の抵抗部の1対の電極間の抵抗値のみが加わる圧力の大きさに応じて連続的に変化するが、この場合も、信号処理部22は、抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、加わる圧力の大きさを検出できる。
【0078】
つまり、抵抗部31及び/又は抵抗部32に圧力がかかると、加圧された抵抗部(抵抗部31及び/又は抵抗部32)の1対の電極間の抵抗値が加わる圧力の大きさに応じて連続的に変化する。そして、信号処理部22は、抵抗部31と抵抗部32の一方が加圧されたか両方が加圧されたかにかかわらず、加圧された抵抗部の抵抗値の変化の大小に基づいて、加わる圧力の大きさを検出できる。
【0079】
信号処理部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成にできる。
【0080】
この場合、信号処理部22の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、信号処理部22の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、信号処理部22は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
【0081】
このように、センサ1の抵抗部31及び32が加圧されると、加圧された抵抗部31及び32が加わる圧力の大きさに応じて撓み、加圧された抵抗部31及び32の1対の電極間の抵抗値が加わる圧力の大きさに応じて連続的に変化する。すなわち、センサ1では、3次元情報(圧力が加わった位置の座標と、加わる圧力の大きさ)を得ることができる。
【0082】
圧力分布検出装置3において、センサ1で得られた3次元情報は制御装置2に送られ、制御装置2はセンサ1で得られた3次元情報に基づいて、タイヤ100にかかる圧力分布を検出できる。
【0083】
例えば、初期状態(例えば、タイヤ100に片減りがなく、空気圧が正常な状態)の圧力分布を記憶しておき、移動体の走行中にセンサ1の出力をモニタして初期状態と比較することで、タイヤ100の接地面の摩耗状態や空気圧の変化をリアルタイムで監視できる。その結果、タイヤ100の片減りを検出できる。又、タイヤ100の空気圧が適切か否かを検出できる。又、タイヤ100の調整角度やタイヤ100の交換時期について把握できる。
【0084】
又、タイヤ100にかかる異常な圧力分布をリアルタイムで検出可能となり、無線等で運転者に伝えることで、タイヤ100について、より正確な状態管理ができる。
【0085】
又、タイヤ100の接地面の摩耗状態を常に把握できるようになるので、バースト(破裂)による事故やハンドル操作にりよる事故等が発生するリスクを回避可能となる。
【0086】
特に、抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗部31及び32がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、加わる圧力に対する抵抗値の感度(同一の圧力がかかったときの抵抗部31及び32の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合、加わる圧力に対する抵抗値の感度は、抵抗部31及び32がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗部31及び32をCr混相膜から形成することで、圧力が加わった位置の座標の検出精度を向上できると共に、加わる圧力を高感度で検出できる。
【0087】
又、加わる圧力に対する抵抗値の感度が高いことで、加わる圧力が小であることを検出した場合には所定の動作を行い、加わる圧力が中であることを検出した場合には他の動作を行い、加わる圧力が大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。或いは、加わる圧力が小又は中であることを検出した場合には動作を行わず、加わる圧力が大であることを検出した場合にのみ所定の動作を行うような制御の実現が可能となる。
【0088】
又、加わる圧力に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部21のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できるため、入力信号選択スイッチを更に高速で切り替えることが可能となる。その結果、センサ1では、比較的早い圧力分布も検出できる。
【0089】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、基材の一方の面側又は他方の面側に実装された電子部品を有するセンサの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0090】
図8は、第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する断面図であり、図4に対応する断面を示している。図8を参照すると、センサ1Aは、基材10の下面10bに電子部品200が実装された点が、センサ1(図3及び図4参照)と相違する。
【0091】
電子部品200は、例えば、図7に示すアナログフロントエンド部21をIC化して外部通信機能(例えば、IC等のシリアル通信機能)を持たせたものである。すなわち、電子部品200は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、A/D変換回路、外部通信機能等を備えたICであり、抵抗部31及び32の1対の電極間の抵抗値を電圧に変換してデジタル信号として出力できる。電子部品200は、温度補償回路を備えていてもよい。電子部品200は、外部通信機能により制御装置2の信号処理部22と情報の送受信を行うことができる。
【0092】
電子部品200は、例えば、基材10の下面10bに形成されたパッドにフリップチップ実装できる。或いは、電子部品200は、基材10の下面10bにダイアタッチフィルム等の接着層を介して搭載され、基材10の下面10bに形成されたパッドにワイヤボンディングされてもよい。又、電子部品200と共に、コンデンサ等の受動部品が搭載されてもよい。
【0093】
電子部品200は、図示しない配線パターンや貫通配線(スルーホール)を介して、全ての端子部41及び42と接続されている。又、電子部品200は、センサ1Aの外部から電源を供給可能に構成されている。
【0094】
抵抗部31及び端子部41を被覆するように基材10の上面10aにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。又、抵抗部32、端子部42、及び電子部品200を被覆するように基材10の下面10bにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗部31及び32、端子部41及び42、並びに電子部品200に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗部31及び32、端子部41及び42、並びに電子部品200を湿気等から保護できる。
【0095】
このように、センサ1Aでは、基材10に電子部品200が実装されているため、配線パターンや貫通配線(スルーホール)を介して、端子部41及び42と電子部品200とを短距離で接続可能である。そのため、小型のセンサ1Aを実現できる。この構造は、特に、抵抗体と電子部品とをリード線を用いてはんだ等で接続することが困難な小型のセンサに有効である。
【0096】
又、端子部41及び42から電子部品200までの距離を短くすることにより、ノイズ耐性を向上できる。
【0097】
なお、電子部品200は、アナログフロントエンド部21の機能を有するICには限定されず、例えば、アナログフロントエンド部21及び信号処理部22の機能を有するICとしてもよい。
【0098】
すなわち、制御装置2の一部又は全部がセンサ1Aと一体化されてもよい。ここで、センサ1Aと一体化するとは、制御装置2に使用される基材や電子部品の一部又は全部と、センサ1Aに使用される基材や電子部品の一部又は全部とが兼用されることを含む。
【0099】
又、制御装置2に、信号処理部22による検出結果を無線により送信する集積回路等を設けてもよい。信号処理部22による検出結果を、無線により、例えば自動車に搭載されたECU(Electronic Control Unit)に送信してもよい。制御装置2から無線によりタイヤ100の圧力分布の情報を得たECUは、例えば、圧力分布が異常である場合に、警告表示やブザー等により運転者に異常を知らせることができる。これにより、自動車を安全に走行させて、事故を未然に防ぐことができる。
【0100】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、基材の一方の面側又は他方の面側に実装された電源を有するセンサの例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0101】
図9は、第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する断面図であり、図4に対応する断面を示している。図9を参照すると、センサ1Bは、電源300が実装された点が、センサ1A(図8参照)と相違する。
【0102】
電源300は、例えば、リチウムイオン電池等の小型バッテリーである。電源300は、例えば、基材10の下面10b側に実装され、電子部品200と電気的に接続されている。電源300は、基材10の上面10a側に実装されてもよい。
【0103】
このように、センサ1Bでは、電子部品200に給電する電源300が実装されている。これにより、外部からの給電を不要とした、小型のセンサ1Bを実現できる。
【0104】
センサ1Bにおいて、抵抗体30を薄膜化することで、センサ1Bを特に低消費電力化及び小型化可能である。
【0105】
すなわち、抵抗体30の材料として例えばCu-NiやNi-Crの箔を用いた場合には抵抗体30の抵抗値が1kΩ程度となるが、抵抗体30の材料として薄膜化したCr混相膜を用いた場合には抵抗体30の抵抗値を5kΩ以上にすることができる。そのため、抵抗体30の材料としてCr混相膜を用いた場合には、抵抗体30に流れる電流が少なくなり、低消費電力化が可能となる。又、低消費電力化により電源300から供給する電流が少なくて済むため、小型の電源300を用いることが可能となり、センサ1B全体を小型化できる。
【0106】
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、センサの抵抗部をジグザグパターンにする例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0107】
図10は、第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する平面図であり、図3に対応する平面を示している。図10を参照すると、センサ1Cは、抵抗体30が抵抗体30Cに置換された点が、センサ1(図3及び図4参照)と相違する。
【0108】
抵抗体30Cは、抵抗部31C及び32Cを含んでいる。抵抗部31Cは、1対の端子部41の間に形成されたジグザグのパターンである。又、抵抗部32Cは、1対の端子部42の間に形成されたジグザグのパターンである。抵抗部31C及び32Cの材料や厚さは、例えば、抵抗部31及び32の材料や厚さと同様にできる。
【0109】
このように、抵抗部31C及び32Cをジグザグパターンにすることで、直線状のパターンにした場合と比べて、1対の端子部41間の抵抗値及び1対の端子部42間の抵抗値を高くできる。その結果、加圧された際の1対の端子部41間の抵抗値の変化量及び1対の端子部42間の抵抗値の変化量が大きくなるため、タイヤ100にかかる圧力分布の検出精度を更に向上できる。
【0110】
又、1対の端子部41間の抵抗値及び1対の端子部42間の抵抗値を高くできるため、センサ1Cを低消費電力化可能である。
【0111】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0112】
例えば、センサ1では、絶縁層である基材10の上面10aに抵抗部31を設け、下面10bに抵抗部32を設ける例を示したが、絶縁層の一方の側に抵抗部32を設け、他方の側に抵抗部32を設ける構造であれば、これには限定されない。例えば、基材10の上面10aに抵抗部31を設け、基材10の上面10aに抵抗部31を被覆する絶縁層を設け、絶縁層上に抵抗部32を設けてもよい。又、抵抗部31を設けた第1基材と、抵抗部32を設けた第2基材を作製し、抵抗部31と抵抗部32を内側に向けて、絶縁層を挟んで抵抗部31を設けた第1基材と抵抗部32を設けた第2基材を貼り合わせてもよい。又、抵抗部31を設けた第1基材と、抵抗部32を設けた第2基材を作製し、抵抗部31を設けた第1基材と抵抗部32を設けた第2基材を同一方向に積層してもよい。センサ1A、1B、及び1Cについても同様である。
【符号の説明】
【0113】
1、1A、1B、1C センサ、2 制御装置、3 圧力分布検出装置、10 基材、10a 基材の上面、10b 基材の下面、20a、20b 機能層、21 アナログフロントエンド部、22 信号処理部、30、30C 抵抗体、31、31C、32、32C 抵抗部、41、42 端子部、100 タイヤ、110 トレッド部、120 サイドウォール部、130 ビード部、140 インナーライナー、150 カーカス、160 ビードコア、170 ビードフィラー、180 ベルト、200 電子部品、300 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10