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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】変圧器用コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20231213BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231213BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20231213BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01F27/28 147
H01F41/04 C
H01F30/10 C
H01F5/00 J
H01F27/28 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020007531
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114581
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】逵村 祐介
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-232202(JP,A)
【文献】特開2008-172863(JP,A)
【文献】特開2008-159840(JP,A)
【文献】特開2000-245092(JP,A)
【文献】特開2001-196238(JP,A)
【文献】特開2018-098407(JP,A)
【文献】特開2019-029521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 41/04
H01F 30/10
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線を筒状に巻回して構成され、軸方向に複数ターンからなる層を、内側の第1層から外側に向けて複数層に備え、前記平角線を巻回する上で前記軸方向の端部に生じる隙間に絶縁物からなる詰め物が配置される変圧器用コイルであって、
前記各層は、軸方向に関して一定の位置において平角線が巻回される直線部と、次のターンを巻回するために平角線を軸方向にずらす渡り部とを有して構成され、
巻初めは直線部であって、各ターンの途中部の1か所で前記渡り部が設けられ、各層の巻終りに次の層への段上り部が設けられて、前記渡り部或いは前記段上り部で生じる前記隙間に前記詰め物が配置され、
前記渡り部及び段上り部が、奇数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以降の位置に設けられ、偶数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以前の位置に設けられている変圧器用コイル。
【請求項2】
平角線を筒状に巻回して構成され、軸方向に複数ターンからなる層を、内側の第1層から外側に向けて複数層に備え、前記平角線を巻回する上で前記軸方向の端部に生じる隙間に絶縁物からなる詰め物が配置される変圧器用コイルであって、
前記各層は、軸方向に関して一定の位置において平角線が巻回される直線部と、次のターンを巻回するために平角線を軸方向にずらす渡り部とを有して構成され、
巻初めは直線部であって、各ターンの途中部の1か所で前記渡り部が設けられ、各層の巻終りに次の層への段上り部が設けられて、前記渡り部或いは前記段上り部で生じる前記隙間に前記詰め物が配置され、
前記渡り部が、奇数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以降の位置に設けられ、偶数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以前の位置に設けられていると共に、前記段上り部が、奇数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以前の位置に設けられ、偶数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以降の位置に設けられている変圧器用コイル。
【請求項3】
断面が長方形状をなる角筒形状を有するものであって、
前記平角線の1ターンにおいては、対向する2辺が長辺であり、残りの2辺が短辺とされ、前記渡り部及び段上り部は、前記長辺に位置して設けられている請求項1又は2に記載の変圧器用コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変圧器用コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高電圧受配電設備用の変圧器に使用されるコイルとしては、断面が平たい四角形状をなす平角線を、多層に巻回したものが知られている(例えば特許文献1参照)。この場合、平角線を採用することにより、丸線を用いる場合等と比較して占積率を良好にすることができる。コイルを巻回するにあたっては、例えば軸方向を上下方向とした角筒状をなす巻型の外周面に対し、平角線を、水平方向に対して1ピッチ分だけ傾けたテーパーを設けながら、軸方向全体に渡って下方向に1ターンずつ順に密に巻回することが行われる。平角線の一層分の巻回が終了すると、巻終り部分から1段上に上がって、テーパーの傾きを逆にしながら、今度は上方向に巻回していくことが行われる。これを繰返すことにより、多層のコイルが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-196238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、平角線を巻回するにあたって、軸方向全体に渡ってテーパーを設けるようにしたものでは、各層の巻始めと巻終りとの端部部分に隙間ができてしまう。そのため、平角線のターン数がn巻に対して、コイルとして、平角線のn+1本分の軸方向高さ寸法が必要となり、実際の占積率がさほど良くならない事情があった。また、多層巻きする際の巻崩れを防止するために、上記隙間に絶縁物からなる詰め物を配置せざるを得ず、巻線作業の作業性にも劣っていた。詰め物を細長い三角形状をなすような形状とする必要があり、詰め物に関するコストもかかるものとなっていた。
【0005】
そこで、高い占積率を得ることができながらも、巻線作業の作業性を良好とすることが可能な変圧器用コイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る変圧器用コイルは、平角線を筒状に巻回して構成され、軸方向に複数ターンからなる層を、内側の第1層から外側に向けて複数層に備え、前記平角線を巻回する上で前記軸方向の端部に生じる隙間に絶縁物からなる詰め物が配置されるものであって、前記各層は、軸方向に関して一定の位置において平角線が巻回される直線部と、次のターンを巻回するために平角線を軸方向にずらす渡り部とを有して構成され、巻初めは直線部であって、各ターンの途中部の1か所で前記渡り部が設けられ、各層の巻終りに次の層への段上り部が設けられて、前記渡り部或いは前記段上り部で生じる前記隙間に前記詰め物が配置され、前記渡り部及び段上り部が、奇数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以降の位置に設けられ、偶数層においては、前記巻初め位置から0.5ターン以前の位置に設けられている
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態を示すもので、変圧器用コイルの外観を概略的に示す斜視図
図2】巻回作業の途中の様子を概略的に示す斜視図(その1)
図3】巻回作業の途中の様子を概略的に示す斜視図(その2)
図4】コイルの第1層を巻回した状態を模式的に示す展開図
図5】コイルの第2層までを巻回した状態を模式的に示す展開図
図6】コイルの第3層までを巻回した状態を模式的に示す展開図
図7】コイルの第4層までを巻回した状態を模式的に示す展開図
図8】第2の実施形態を示すもので、コイルの第1層を巻回した状態を模式的に示す展開図
図9】コイルの第2層までを巻回した状態を模式的に示す展開図
図10】コイルの第3層までを巻回した状態を模式的に示す展開図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施形態
以下、第1の実施形態について、図1から図7を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る変圧器用コイル1(以下、単に「コイル1」と称する)の外観構成を示している。このコイル1は、平角線2を筒状に巻回して構成され、本実施形態では、全体として、角部に丸みを有する断面が長方形状をなす角筒形状をなしている。尚、図1では、コイル1の軸方向を上下方向として図示しており、以下、コイル1の向きを言う場合には、図1の上下方向をコイル1の上下方向として説明する。
【0009】
前記平角線2は、周知のように、断面が平らな矩形状をなす導体の外面に、絶縁被覆を設けて構成されている。コイル1は、軸方向に平角線2の複数ターン、例えば13.5ターンからなる層Lを、内側の第1層から外側に向けて複数層例えば十数層に備えて構成される。図4図7等に示すように、各層Lを区別する必要がある場合には、符号Lの後に数字を付して、第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4、等と称する。尚、図示は省略するが、コイル1には、平角線2を巻回する上で端部等に隙間が形成され、巻崩れ防止のために、その隙間に例えば合成樹脂等の帯状の絶縁物からなる詰め物が配置されている。また、層間に絶縁紙が配置されていても良い。
【0010】
さて、図2図7も参照して前記コイル1について、より具体的に説明する。ここで、コイル1は、4つの壁部言い替えれば4つの面を有している。コイル1は上面から見て長方形状をなしているので、対向する2辺が長辺であり、残りの2辺が短辺とされる。本実施形態では、図4図7に示すように、それら4つの面を、第1短辺部3、第1長辺部4、第2短辺部5、第2長辺部6と称する。
【0011】
このコイル1の各層Lは、軸方向に関して一定の位置において平角線2が巻回される直線部7と、次のターンを巻回するために平角線2を軸方向にずらす渡り部8とを有して構成される。前記直線部7においては、平角線2が図4図7で水平横方向に延びて巻回されている。前記渡り部8においては、渡り部8の初めから終わりまでの間に、平角線2が軸方向に1ピッチ分、即ち平角線2の幅寸法分だけずれるようなテーパーをなすように巻回されている。
【0012】
コイル1は、巻初め部9(図4等参照)から巻回が始まり、例えば上から見て右回り方向に、各層Lにおいて、平角線2が、前に巻回された部分と上下方向に密着しながら、1ターンずつ、軸方向にずれていくように巻回される。13ターンと約半周(0.5ターン)まで進むと、平角線2は、段上り部10を介して次の層Lに進み、巻回がなされる。次の層Lでは、巻回の進む巻進み方向が、矢印Aから矢印Bへと上下方向に反転する。本実施形態では、巻初め部9部分からしばらくは直線部7であって、各ターンの途中部の1か所で前記渡り部8が設けられ、各層Lの巻終りに次の層Lへの段上り部10が設けられている。
【0013】
このとき、図4等に示すように、平角線2の巻初め部9は、前記第1短辺部3の上部に位置し、ここから第1層L1の巻回が始まる。そして、図4図6に示すように、奇数層においては、平角線2の渡り部8及び段上り部10が、巻初め部9から0.5ターン以降の位置、具体的には第長辺部に位置して設けられ、偶数層においては、平角線2の渡り部8及び段上り部10が、巻初め部9から0.5ターン以前の位置、具体的には第長辺部に位置して設けられている。
【0014】
次に、上記コイル1を製造する場合の、作業者が実行する巻回の作業について述べる。尚、詳しく図示はしないが、コイル1の巻回作業を行う設備においては、平角線2を供給源から順送りに繰出す繰出し機構や、巻型11を備えている。図2及び図3に示すように、巻型11は、コイル1の内周部に対応した外形を有する角筒状をなしており、従って、その外周面には、第1短辺部3に対応した第1面11a、第1長辺部4に対応した第2面11b、第2短辺部5に対応した第3面11c、第2長辺部6に対応した第4面11dを有している。この巻型11は、軸方向を水平方向、つまり図で左右方向として、コイル1の中心軸でもある中心軸Oを中心に回転可能に設けられている。巻型11の図で左側が、コイル1の上方となる。
【0015】
ここで、図4図7は、コイル1の第1層L1~第4層L4における、巻枠11も含めた平角線2の巻回状態を、第2短辺部5の途中で切断した形態の展開図として夫々示している。巻回作業を行うにあたっては、まず、平角線2の先端側の巻初め部9を、図2に示すように、巻型11のうち第1面11aの途中部の左側に配置して粘着テープ等で仮止めする。引続いて、図4にも示すように、巻型11を矢印C方向に回転させながら、平角線2を、巻型11の第1面11aの後半分、第2面11b、第3面11cの外面に対して、順にテーパーを付けずに直線的に巻付けていく。
【0016】
そして、平角線2が第4面11dに差し掛かったところで、図2で右寄り(図4で下寄り)に若干のテーパーを設けながら巻回し、第4面11d内で平角線2の幅寸法分だけずれたところで、再び直線的な巻回に戻し、第1面11aに進めていく。平角線2の2ターン目では、第1面11a、第2面11b、第3面11cの外面に対して、先に巻回されている平角線2の図2で右の縁部に密着させながら、軸方向に関して一定の位置で直線的に巻回していくことが行われる。第4面11dにあっては、先に巻回されている平角線2に沿うようにしてテーパーを設けながら巻回し、再び直線的な巻回に戻し、第1面11aに進めていく。以上の巻回作業を、図2図4で矢印A方向に進めていく。
【0017】
これにより、図2図4に示すように、コイル1の第1層L1においては、巻型11のうち第1面11aから第3面11cまで延びて、直線部7が形成され、第4面11dに渡り部8が形成されながら、平角線2の巻回がなされる。これにて、第1層L1は、第1短辺部3、第1長辺部4、第2短辺部5に渡って直線部7とされ、第2長辺部6に渡り部8が形成される。平角線2の13.5ターンの巻回が終わると、図4図5に示すように、第4面11dの初め部分において段上り部10が設けられて、第1層L1の外面に対する、第2層L2の巻回作業が開始される。
【0018】
第2層L2に関する平角線2の巻回作業は、図5に矢印Bで示すように、第1層とは逆向きに進むように行われる、まず、第4面11dから第1面11aまで、平角線2をテーパーを付けずに直線的に巻回する。そして、この第2層L2では、第2面11bにおいて、図3で左寄り(図5で上寄り)に若干のテーパーを設けながら巻回し、第2面11b内で平角線2の幅寸法分だけずれたところで、再び直線的な巻回に戻し、第3面11c、更に第4面11dに進めていく。平角線2の2ターン目以降では、やはり先に巻回されている平角線2の図5で上の縁部に密着させながら、同様に巻回作業を行っていく。
【0019】
これにより、図5に示すように、コイル1の第2層L2においては、巻型11のうち第3面11c、第4面11d、第1面11aに延びて、直線部7が形成され、第2面11bに渡り部8が形成されながら、平角線2の巻回がなされる。これにて、第2層L2は、第2短辺部5、第2長辺部6、第1短辺部3に渡って直線部7とされ、第1長辺部4に渡り部8が形成される。平角線2の13.5ターンの巻回が終わると、図3並びに図5図6に示すように、第2面11bの初め部分において段上り部10が設けられて、第2層L2の外面に対する、第3層L3の巻回作業が開始される。
【0020】
第3層L3の平角線2の巻回作業については、図6に示すように、第2面11bの初めの段上り部10から、上記第1層L1の巻回作業と同様にして、矢印A方向に進みながら、巻型11のうち第1面11aから第3面11cまで延びて、直線部7が形成され、第4面11dに渡り部8が形成されるようにして行われる。第4層L4の平角線2の巻回作業については、図7に示すように、上記第2層L2の巻回作業と同様に行われる。以降の詳しい説明は省略するが、上記のような巻回作業が、所定の層数だけ行われることにより、コイル1が得られる。
【0021】
このように本実施形態のコイル1によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、コイル1においては、平角線2の巻初め部9は直線部7であって、ターンの途中部に部分的に渡り部8が設けられると共に、渡り部8以外の部分が、直線部7とされている。このとき、1ターン内での渡り部8を設ける範囲が小さくなり、ひいては、渡り部8に起因して発生するコイル1内の隙間を小さく済ませることができる。
【0022】
これにより、絶縁物からなる詰め物を配置する際に、詰め物の大きさを小さく済ませることができる等、詰め物に関する作業コストを低減することできる。また、直線部7の割合が多くなる分だけ巻回作業も容易となる。この結果、本実施形態のコイル1によれば、高い占積率を得ることができながらも、巻線作業の作業性を良好とすることができるという優れた効果を得ることができる。
【0023】
本実施形態では、渡り部8及び段上り部10が、奇数層においては、巻初め部9の位置から0.5ターン以降の位置に設けられ、偶数層においては、巻初め部9の位置から0.5ターン以前の位置に設けられている。これにより、従来のような、1ターン全体をテーパ―状に巻回するものと比べて、一層に関して、0.5ターン分だけ長く巻くことができて、その分だけ占積率を高めることができる。これと共に、詰め物が小さく且つ簡単な形状で済み、巻回作業が容易となる。
【0024】
特に本実施形態では、2つの短辺部3、5と、2つの長辺部4、6とを有する角筒形状を有するものであって、巻初め部9の位置を第1の短辺部3とし、1ターンのうち、傾斜をつける渡り部8を、どちらかの長辺部4、6に位置して設けるようにした。これにより、渡り部8が隣り合う複数面に渡ることもなく、残りの3面については直線部7を設けることになるので、平角線の巻回の作業を極めて容易に行うことができる。
【0025】
(2)第2の実施形態、その他の実施形態
図8図10は、第2の実施形態を示すものである。この第2の実施形態が、上記第1の実施形態と異なるところは、コイル(全体として図示せず)を製造する際の、平角線2の巻き方にある。この場合、上記第1の実施形態と同様に、コイルは、第1短辺部13、第1長辺部14、第2短辺部15、第2長辺部16を有する角筒形状に構成される。巻型11については、第1の実施形態と同等のものが用いられる。
【0026】
そして、図8図10に示すように、奇数層においては、平角線2の渡り部18が、巻初め部19から0.5ターン以降の位置である第2長辺部16に位置して設けられ、段上り部20が、巻初め部19から0.5ターン以前の位置である第1長辺部14に位置して設けられる。図9に示すように、偶数層においては、平角線2の渡り部18が、巻初め部19から0.5ターン以前の位置である第1長辺部14に位置して設けられ、段上り部20が、巻初め部19から0.5ターン以降の位置である第2長辺部16に位置して設けられる。
【0027】
ここで、図8図10は、コイルの第1層L1´~第3層L3´における、巻枠11も含めた平角線2の巻回状態を、第2短辺部15の途中で切断した形態の展開図として夫々示している。図8に示すように、第1層L1´においては、巻初め部19から、巻回作業が矢印A方向に進められ、巻型11のうち第1面11aから第3面11cまで延びて、直線部17が形成され、第4面11dに渡り部18が形成されながら、平角線2の巻回がなされる。そして、第2面11bの終り部分において段上り部20が設けられて、第1層L1´の外面に対する、次の第2層L2´の巻回作業が開始される。このとき、段上り部20からの部分については、巻型11の表面に第2層L2´の初め部分を巻回するための詰め物がなされる。
【0028】
図9に示すように、第2層L2´においては、矢印Bで示すように進行され、第3面11cから第1面11aまで、平角線2をテーパーを付けずに直線的に巻回する。そして、この第2層L2´では、第2面11bにおいて、若干のテーパーを設けながら巻回し、第2面11b内で平角線2の幅寸法分だけずれたところで、再び直線的な巻回に戻し、第3面11cに進めていく。このとき、先の段上り部20が渡り部18のガイドとなるようにしながら巻回作業を行うことができる。
【0029】
これにより、第2層L2´においては、巻型11のうち第3面11c、第4面11d、第1面11aに延びて、直線部17が形成され、第2面11bに渡り部18が形成されながら、平角線2の巻回がなされる。ここでは、第4面11dの終り部分において段上り部20が設けられて、第2層L2´の外面に対する、次の第3層L3´の巻回作業が開始される。
【0030】
図10に示すように、第3層L3´の平角線2の巻回作業については、第4面11dの初めの段上り部20から、上記第1層L1´の巻回作業と同様にして、矢印A方向に進みながら行われる。この場合も、第4面11dに渡り部18が形成され、このとき、先の段上り部20が渡り部18のガイドとなるようにしながら巻回作業を行うことができる。図示及び詳しい説明は省略するが、第4層以降の平角線2の巻回作業は、偶数層については図9に示す第2層L2´と同様に行われ、奇数層については、図10に示す第3層L3´と同様に行われる。上記のような巻回作業が、所定の層数だけ行われることにより、コイルが得られる。
【0031】
このような第2の実施形態によれば、上記第2の実施形態と同様に、1ターン内での渡り部18を設ける範囲が小さくなり、ひいては、渡り部18に起因して発生するコイル内の隙間を小さく済ませることができる。この結果、高い占積率を得ることができながらも、巻線作業の作業性を良好とすることができるという優れた効果を得ることができる。特に本実施形態では、段上り部20が次の層の渡り部18のガイドとなるようにしながら巻回作業を行うことができるので、作業をより一層容易に行うことができる。
【0032】
尚、上記した各実施形態では、コイルを角筒形状のものとしたが、円筒形状のものであっても良い。この場合も、1ターンのうち渡り部を部分的に設け、残りの部分を直線部にすることにより、高い占積率を得ることができながらも、巻線作業の作業性を良好とすることができる効果を得ることができる。その他、上記した実施形態における、各層の巻数(ターン数)や層数等の具体的数値としても、一例を示したに過ぎず、適宜変更することができることは勿論である。
【0033】
以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
図面中、1は変圧器用コイル、2は平角線、3、13は第1短辺部、4、14は第1長辺部、5、15は第2短辺部、6、16は第2長辺部、7、17は直線部、8、18は渡り部、9、19は巻初め部、10、20は段上り部、11は巻型、11aは第1面、11bは第2面、11cは第3面、11dは第4面、L1~L4、L1´~L3´は層を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10