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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】排水集合継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20231213BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20231213BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L5/00 A
F16L41/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020008621
(22)【出願日】2020-01-22
(62)【分割の表示】P 2014201618の分割
【原出願日】2014-09-30
(65)【公開番号】P2020073771
(43)【公開日】2020-05-14
【審査請求日】2020-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正勝
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-6893(JP,A)
【文献】特開2013-238011(JP,A)
【文献】特開2009-264577(JP,A)
【文献】特開2012-97551(JP,A)
【文献】特開2011-85012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12-1/122
F16L41/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の最下階にのみ設けられ、上階の排水を流下させる立管と接続可能な上側接続部と最下階スラブ上に配置される横枝管と接続可能な枝管接続部とを有する樹脂製の本体部と、最下階スラブの下側に配置された横主管に接続される脚部継手と当該本体部とを繋ぐ樹脂製の接続縦管と、を備える排水集合継手であって、
上記本体部における上記枝管接続部の下側には、円筒状の下側接続部が形成され、
上記接続縦管は、上記本体部とは別体で且つ外形がストレート形状で内部に付属部品が設けられていない樹脂管であって、その上端部が上記下側接続部に差し込まれている一方、その下端部が最下階スラブに形成された貫通孔を通って上記脚部継手と直接に接続されており、
上記接続縦管を覆う円筒状の遮音防振体をさらに備え、
上記接続縦管の下端が上記遮音防振体から突出していることを特徴とする排水集合継手。
【請求項2】
建物の最下階にのみ設けられ、上階の排水を流下させる立管と接続可能な上側接続部、当該上側接続部の下側に位置する略円筒状の集合部、および、最下階スラブ上に配置される横枝管と接続可能な枝管接続部を有する樹脂製の本体部と、最下階スラブの下側に配置された横主管に接続される脚部継手と当該本体部とを繋ぐ樹脂製の接続縦管と、を備える排水集合継手であって、
上記本体部における上記枝管接続部の下側には、円筒状の下側接続部が形成され、
上記接続縦管は、上記本体部とは別体で且つ外形がストレート形状の樹脂管であって、その上端部が上記下側接続部に差し込まれている一方、その下端部が最下階スラブに形成された貫通孔を通って上記脚部継手と直接に接続されており、
上記集合部の内周面と上記下側接続部の内周面とは円環状の段差面を介して繋がっており、
上記接続縦管の内周面は、上記集合部の内周面と面一になっているとともに、当該接続縦管の上端部が上記段差面に当たっており、
上記接続縦管を覆う円筒状の遮音防振体をさらに備え、
上記接続縦管の下端が上記遮音防振体から突出していることを特徴とする排水集合継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の最下階に設けられる排水集合継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数階の集合住宅やホテルなどの建物には、通常、各階からの排水を流下させるための立管と、各階の住戸からの排水を流すための横枝管とが接続される排水集合継手が設けられている。また、近年、最下階住戸の排水を立管に合流させる最下階合流システムの採用も増えている。最下階合流システムの場合、最下階に設置された集合継手は最下階スラブの下側に配置された横主管に脚部継手を介して接続されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排水の流入口である上部管用接続部と、排水の流出口である下部管用接続部と、上部管用接続部と下部管用接続部との間に位置する枝管用接続部と、上部管用接続部と枝管用接続部とからの排水が流入する集水室を備え、上部管用接続部および下部管用接続部が一体不可分に形成された排水集合継手が開示されている。
【0004】
ところで、排水集合継手は、その内部で排水の合流や方向変更や減勢などが行われるため、発生する騒音が立管や横枝管と比べて大きいという問題がある。このような問題を解決するために、例えば、複数枚の遮音シートを貼り合わせて排水集合継手の外面全体を覆うことも考えられるが、排水集合継手の外面は複雑な立体形状をしているので、遮音シートの切り抜きや、巻き付けや、貼り合わせが煩雑になるという問題がある。
【0005】
そこで、例えば特許文献2には、横枝管接続部の中央部よりも上側の部分を被覆可能な立体形状を有する上部遮音カバーと、横枝管接続部の中央部よりも下側の部分を被覆可能な立体形状を有する下部遮音カバーとを有する遮音カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許4471712号公報
【文献】特開2013-117245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものによれば、下部管用接続部を下端から適当なところで切断することによって短寸法にし、脚部継手との接続距離を短縮化させることにより、床スラブの下側で脚部継手を介して横主管を接続したときの納まりをコンパクト化することができるとされている。
【0008】
ところで、特許文献1には、排水集合継手における騒音については何ら記載されていないが、仮に特許文献1のものに上記特許文献2の遮音カバーを適用しようとすると、下部管用接続部の切断長さに合わせて、立体形状を有する下部遮音カバーを別途製造しなければならず、コストが嵩むおそれがある。
【0009】
一方、特許文献1のものでは、床スラブのスラブ厚が厚い場合には、上部管用接続部および下部管用接続部が一体不可分に形成されているため、下部管用接続部を延長しようとすると、排水集合継手全体を別途製造しなければならず、コストが嵩むおそれがある。また、特許文献1のものにおいて、下部管用接続部と脚部継手との間に延長管を配管することも考えられるが、下部管用接続部と延長管との接続箇所がフランジ状になると、特許文献2の下部遮音カバーを被せることが困難となったり、遮音シートの貼り付けが煩雑になったりするという問題がある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脚部継手との接続距離が短い場合にも長い場合にも対応でき、且つ、遮音措置を容易に施すことができる排水集合継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る排水集合継手では、排水が流入する本体部と、排水を脚部継手へ流す接続縦管とを別体とし、接続縦管にて接続距離を調整するようにしている。
【0012】
具体的には、本発明は、建物の最下階にのみ設けられ、上階の排水を流下させる立管と接続可能な上側接続部と最下階スラブ上に配置される横枝管と接続可能な枝管接続部とを有する樹脂製の本体部と、最下階スラブの下側に配置された横主管に接続される脚部継手と当該本体部とを繋ぐ樹脂製の接続縦管と、を備える排水集合継手を対象としている。
【0013】
そして、上記本体部における上記枝管接続部の下側には、円筒状の下側接続部が形成され、上記接続縦管は、上記本体部とは別体で且つ外形がストレート形状で内部に付属部品が設けられていない樹脂管であって、その上端部が上記下側接続部に差し込まれている一方、その下端部が最下階スラブに形成された貫通孔を通って上記脚部継手と直接に接続されており、上記接続縦管を覆う円筒状の遮音防振体をさらに備え、上記接続縦管の下端が上記遮音防振体から突出していることを特徴としている。
【0014】
この構成によれば、本体部と脚部継手との接続距離が短い場合には、本体部とは別体である接続縦管を切断することで、最下階スラブの下側で脚部継手を介して横主管を接続したときの納まりをコンパクト化することができる。
【0015】
一方、最下階スラブのスラブ厚が厚い場合など本体部と脚部継手との接続距離が長い場合には、スラブ厚に見合った長さの接続縦管を選択し、本体部の下側接続部に差し込むことで、排水集合継手を別途製造することなく、本体部と脚部継手とを接続することができる。したがって、コストが嵩むのを抑えることができる。
【0016】
また、本発明は、建物の最下階にのみ設けられ、上階の排水を流下させる立管と接続可能な上側接続部、当該上側接続部の下側に位置する略円筒状の集合部、および、最下階スラブ上に配置される横枝管と接続可能な枝管接続部を有する樹脂製の本体部と、最下階スラブの下側に配置された横主管に接続される脚部継手と当該本体部とを繋ぐ樹脂製の接続縦管と、を備える排水集合継手であって、上記本体部における上記枝管接続部の下側には、円筒状の下側接続部が形成され、上記接続縦管は、上記本体部とは別体で且つ外形がストレート形状の樹脂管であって、その上端部が上記下側接続部に差し込まれている一方、その下端部が最下階スラブに形成された貫通孔を通って上記脚部継手と直接に接続されており、上記集合部の内周面と上記下側接続部の内周面とは円環状の段差面を介して繋がっており、上記接続縦管の内周面は、上記集合部の内周面と面一になっているとともに、当該接続縦管の上端部が上記段差面に当たっており、上記接続縦管を覆う円筒状の遮音防振体をさらに備え、上記接続縦管の下端が上記遮音防振体から突出していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように本発明に係る排水集合継手によれば、脚部継手との接続距離が短い場合にも長い場合にも対応でき、且つ、遮音措置を容易に施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る排水集合継手を模式的に示す図である。
図2】本体部および接続縦管を模式的に示す図であり、同図(a)は、本体部と接続縦管とを接続する前の状態を示し、同図(b)は、本体部と接続縦管とを接続した後の状態を示す。
図3】遮音カバーを模式的に示す斜視図である。
図4】本体部と脚部継手との接続距離が短い場合における排水集合継手の設置状態を模式的に示す図である。
図5】本体部と脚部継手との接続距離が長い場合における排水集合継手の設置状態を模式的に示す図である。
図6】実施形態2に係る排水集合継手を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
-全体構成-
図1は、本実施形態に係る排水集合継手1を模式的に示す図である。この排水集合継手1は、複数階の集合住宅やホテルなどの建物の最下階に設けられ、立管14内を流下する上階の排水や、最下階スラブ12上に配置された横枝管15内を流れる排水を集合させて、最下階スラブ12の下側に配置された横主管16に排出するためのものである(図4および図5参照)。排水集合継手1は、立管14と横枝管15とが接続可能な樹脂製の本体部2と、横主管16に接続される脚部継手17と本体部2とを繋ぐ接続縦管3と、これら本体部2および接続縦管3を覆う遮音カバー4と、を備えている。
【0021】
図2は、本体部2および接続縦管3を模式的に示す図であり、同図(a)は、本体部2と接続縦管3とを接続する前の状態を示し、同図(b)は、本体部2と接続縦管3とを接続した後の状態を示す。本体部2は、図2に示すように、円筒状の上側接続部5と、上側接続部5の下側に位置する略円筒状の集合部6と、水平方向に90°の間隔を開けて集合部6から三方に延びる3つの円筒状の枝管接続部8と、集合部6の下側に位置する円筒状の下側接続部7と、を有している。この本体部2は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛を1~10重量部の割合で含む耐火熱膨張性樹脂組成物から形成されている。
【0022】
図4および図5に示すように、上側接続部5には立管14が接続されるとともに、枝管接続部8には横枝管15が接続される。なお、横枝管15の本数が3本未満の場合には、使用しない枝管接続部8は蓋(図示せず)等によって塞がれる。下側接続部7は、図2(a)に示すように、上側接続部5および集合部6よりも薄く形成されていて、その内径が上側接続部5および集合部6の内径よりも拡径されている。このため、下側接続部7の内周面は、円環状の段差面7aを介して、集合部6の内周面と繋がっている。
【0023】
接続縦管3は、本体部2とは別体で且つ外形がストレート形状の樹脂管である。より詳しくは、接続縦管3は、硬質ポリ塩化ビニルからなる内面層および外面層と、熱膨張性黒鉛を含む塩化ビニル系樹脂組成物からなる中間層と、を有する三層構造の熱膨張性パイプである。接続縦管3は、その内径が上側接続部5および集合部6の内径と略等しい一方、その外径が下側接続部7の内径よりも若干小さく形成されていて、図2(b)に示すように、その上端が段差面7aに当たるまで、下側接続部7に挿入可能となっている。このように、接続縦管3の内径が上側接続部5および集合部6の内径と略等しいことから、接続縦管3を下側接続部7に挿入すると、上側接続部5および集合部6の内周面と接続縦管3の内周面とが面一となる。この接続縦管3は、図2(b)に示すように、その上端部が下側接続部7に差し込まれた状態で工場から出荷される。なお、下側接続部7と接続縦管3との接続方法は特に限定されず、環状の止水ゴム(図示せず)を用いたゴム輪接合、接着剤を用いた接着接合、締結部材(図示せず)を用いたフランジ接合等により、本体部2と接続縦管3とを接続することができる。
【0024】
遮音カバー4は、図3に示すように、本体部2を覆う本体部遮音カバー(第1遮音体)9と、本体部遮音カバー9とは別体の、接続縦管3を覆う縦管遮音カバー(第2遮音体)10と、を有している。本体部遮音カバー9は、上下2分割構造であり、本体部2の上半分(枝管接続部8の筒軸よりも上側)の外形に対応する立体形状を有する上側遮音カバー9aと、本体部2の下半分(枝管接続部8の筒軸よりも下側)の外形に対応する立体形状を有する下側遮音カバー9bと、に分かれている。
【0025】
このように、本体部遮音カバー9を上下2分割構造とすることにより、上側遮音カバー9aと下側遮音カバー9bとによって本体部2を上下に挟むという簡単な作業で、複雑な形状の本体部2を被覆することができるようになっている。また、縦管遮音カバー10はストレート形状の遮音管であり、ストレート形状の接続縦管3を当該縦管遮音カバー10に挿入するだけで、接続縦管3を簡単に被覆することができるようになっている。
【0026】
これら上側遮音カバー9a、下側遮音カバー9bおよび縦管遮音カバー10は、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを高充填した樹脂材料によって構成される。具体的には、オレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーを300~600重量部含有する樹脂組成物から構成されることが好ましい。このように、無機フィラーを高充填した樹脂材料は、単位体積当たりの重量が大きくなることによって、遮音効果を発揮する。
【0027】
以上のように構成された、排水集合継手1は、工場または施工現場にて、本体部2および接続縦管3に遮音カバー4を被せた後、図4および図5に示すように、最下階スラブ12に形成された貫通孔13に接続縦管3および下側接続部7を挿通した状態で、これら接続縦管3および下側接続部7と貫通孔13を区画する孔壁との間にモルタル18を打設することで最下階に設置される。そうして、接続部19を介して立管14を上側接続部5に接続するとともに、接続部20を介して横枝管15を枝管接続部8に接続し、且つ、接続縦管3の下端部を脚部継手17と接続することで、上階の排水や最下階住戸の排水を集合させて横主管16に排出可能な状態が形成される。なお、脚部継手17は、金属製でも樹脂製でもよく、また、脚部継手17と接続縦管3との接続方法は特に限定されず、接着接合やフランジ接合等を採用することができる。
【0028】
このように、排水集合継手1は、枝管接続部8の下側に形成された下側接続部7が最下階スラブ12に埋設された状態で最下階に設置されることから、横枝管15の管底が下がるので、最下階スラブ12上の排水系統の納まりをコンパクト化することができる。
【0029】
また、本実施形態の排水集合継手1では、本体部2が耐火熱膨張性樹脂組成物から形成されているとともに、接続縦管3が熱膨張性黒鉛を含む塩化ビニル系樹脂組成物からなる中間層を有しているので、例えば最下階スラブ12の下側から火災が発生しても、下側接続部7および接続縦管3が大きく膨張して、貫通孔13内に耐火層を形成することから、最下階スラブ12の上側への熱の流入を抑制することができる。
【0030】
さらに、本体部2や接続縦管3では、排水の合流や方向変更や減勢などが行われるため、立管14や横枝管15と比べて大きい騒音が発生するおそれがあるが、本実施形態の排水集合継手1では、上側遮音カバー9a、下側遮音カバー9bおよび縦管遮音カバー10を本体部2および接続縦管3に被せていることから、排水に起因する騒音を確実に低減することができる。
【0031】
-施工方法-
次に、本実施形態の排水集合継手1の施工方法について、本体部2と脚部継手17との接続距離が短い場合と長い場合とに分けて説明する。
【0032】
〈本体部と脚部継手との接続距離が短い場合〉
先ず、最下階スラブ12のスラブ厚が薄い等により、本体部2と脚部継手17との接続距離が短い場合には、標準的な長さの接続縦管3を本体部2の下側接続部7に差し込んで接着接合した排水集合継手1を、施工現場に搬入する。
【0033】
そうして、接続縦管3を、脚部継手17と本体部2との距離に応じて最適な長さに切断する。ここで、例えば、本体部2と接続縦管3とが一体に形成され且つ接続縦管3の下端部にフランジが形成されているような排水集合継手の場合には、接続縦管3を途中で切断すると、フランジがなくなるため脚部継手17との接続が困難となる。これに対し、本実施形態の排水集合継手1では、ストレート形状の接続縦管3を用いていることから、切断後も切断前と同じ態様で脚部継手17との接続を行うことができる。
【0034】
次いで、縦管遮音カバー10を、接続縦管3の切断長と、接続縦管3と脚部継手17との接続代と、に応じて切断する。具体的には、切断後の接続縦管3における下側接続部7から露出している部分の長さから、接続縦管3と脚部継手17との接続代を減じた長さとなるように、縦管遮音カバー10を切断する。
【0035】
そうして、上側遮音カバー9aと下側遮音カバー9bとによって本体部2を上下に挟むように覆うとともに、縦管遮音カバー10をストレート形状の接続縦管3の下端から被せる。次いで、最下階スラブ12に形成された貫通孔13に接続縦管3および下側接続部7を挿通した状態で、これら接続縦管3および下側接続部7と貫通孔13を区画する孔壁との間にモルタル18を打設する。その後、接続部19,20を介して立管14および横枝管15を上側接続部5および枝管接続部8にそれぞれ接続するとともに、接続縦管3の下端部を脚部継手17と接続する。
【0036】
以上のように、本実施形態の排水集合継手1の施工方法によれば、接続縦管3および縦管遮音カバー10を切断するという簡単な作業で、最下階スラブ12の下側で脚部継手17を介して横主管16を接続したときの納まりをコンパクト化することができるとともに、脚部継手17と本体部2との接続距離に応じた遮音措置を施すことができる。
【0037】
〈本体部と脚部継手との接続距離が長い場合〉
一方、最下階スラブ12のスラブ厚が厚い等により、本体部2と脚部継手17との接続距離が長い場合には、標準的な長さの接続縦管3よりも長い、脚部継手17と本体部2との距離に合った長さを有する接続縦管3を、本体部2の下側接続部7に差し込んで接着接合する。また、接続縦管3における下側接続部7から露出している部分の長さから、接続縦管3と脚部継手17との接続代を減じた長さを有する縦管遮音カバー10を用意する。
【0038】
そうして、上側遮音カバー9aと下側遮音カバー9bとによって本体部2を上下に挟むように覆うとともに、縦管遮音カバー10をストレート形状の接続縦管3の下端から被せる。次いで、最下階スラブ12に形成された貫通孔13に接続縦管3および下側接続部7を挿通した状態で、これら接続縦管3および下側接続部7と貫通孔13を区画する孔壁との間にモルタル18を打設した後、接続部19,20を介して立管14および横枝管15を上側接続部5および枝管接続部8にそれぞれ接続するとともに、接続縦管3の下端部を脚部継手17と接続する。
【0039】
ここで、例えば、本体部2と接続縦管3とが一体に形成された排水集合継手の場合には、接続縦管3のみを長くすることはできず、長い接続縦管3を有する排水集合継手を別途製造するか、接続縦管3の下端部に延長管(図示せず)等を接続しなければならない。そうして、接続縦管3と延長管との接続箇所がフランジ状になると、縦管遮音カバー10を下方から接続縦管3に被せることが困難となるおそれがある。これに対し、本実施形態の排水集合継手1では、スラブ厚に見合った長さの接続縦管3を選択し、本体部2の下側接続部7に差し込むことで、本体部2と脚部継手17とを容易に接続することができる。また、ストレート形状の接続縦管3を用いるので、フランジ等が引っ掛ることなく、縦管遮音カバー10を下方から接続縦管3に容易に被せることができる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態は、遮音カバー4とともに遮音防振シート11を用いている点が、上記実施形態1とは異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0041】
上述の如く、本体部2や接続縦管3では、立管14や横枝管15と比べて大きい騒音が発生するおそれがある他、最下階スラブ12に埋設された接続縦管3および下側接続部7の振動が最下階スラブ12を伝播して居住スペース等に伝わるおそれがある。このため、最下階スラブ12に埋設されていない部分(上側接続部5、集合部6、枝管接続部8、および、接続縦管3における最下階スラブ12よりも下側に突出している部分)については遮音措置を施す一方、最下階スラブ12に埋設されている部分(下側接続部7、および、接続縦管3における最下階スラブ12に埋設されている部分)については防振措置を施すことが理に適っている。
【0042】
そこで、本実施形態では、最下階スラブ12に埋設されていない部分については、実施形態1と同様に、遮音カバー4を被せる一方、最下階スラブ12に埋設されている部分については、実施形態1と異なり、例えばロックウールシート、ガラスウールシート、スチールウールシート等の遮音防振シート11を巻き付けるようにしている。
【0043】
具体的には、図6に示すように、上側接続部5、集合部6および枝管接続部8を、上側遮音カバー9aと下側遮音カバー9bにおける下側接続部7に対応する部分を切断したもので覆うとともに、接続縦管3における最下階スラブ12よりも下側に突出している部分を、縦管遮音カバー10で覆う。一方、下側接続部7および接続縦管3における最下階スラブ12に埋設されている部分には、遮音防振シート11を巻き付ける。
【0044】
これにより、排水の合流や方向変更や減勢などによって発生する騒音を、遮音カバー4によって抑えることができるとともに、振動が最下階スラブ12を伝播して居住スペース等に伝わるのを、遮音防振シート11によって抑えることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0046】
上記各実施形態では、本体部2を耐火熱膨張性樹脂組成物から形成するとともに、接続縦管3を熱膨張性パイプとしたが、これに限らず、例えば、本体部2および接続縦管3をポリ塩化ビニル系樹脂で形成し、これら本体部2および接続縦管3に熱膨張性シート(例えば積水化学工業株式会社製フィブロック(登録商標))を巻き付けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記各実施形態では、本体部2を耐火熱膨張性樹脂組成物から形成するとともに、接続縦管3を熱膨張性パイプとしたが、下側接続部7および接続縦管3の少なくとも一方が膨張して耐火層を形成すればよいことから、例えば、本体部2をポリ塩化ビニル系樹脂で形成し、接続縦管3のみを熱膨張性パイプとし、または、接続縦管3のみに熱膨張性シートを巻き付けるようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記各実施形態では、3つの枝管接続部8を有する排水集合継手1に本発明を適用したが、これに限らず、例えば、4つの枝管接続部8を有する排水集合継手1や2以下の枝管接続部8を有する排水集合継手1に本発明を適用してもよい。
【0049】
また、上記各実施形態では、下側接続部7を上側接続部5および集合部6よりも薄く形成したが、これに限らず、例えば、下側接続部7を上側接続部5および集合部6と同じ厚さに形成するとともに、下側接続部7の内径および外径を上側接続部5および集合部6の内径および外径よりも拡径してもよい。
【0050】
さらに、上記実施形態1では、第1および第2遮音体として遮音カバー4を採用したが、これに限らず、例えば第1および第2遮音体として遮音シート(図示せず)を採用し、遮音シートを貼り合わせて排水集合継手1を覆うようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態2では、遮音カバー4と遮音防振シート11とを併用したが、これに限らず、例えば遮音防振シート11のみで排水集合継手1を覆うようにしてもよい。
【0052】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によると、脚部継手との接続距離が短い場合にも長い場合にも対応でき、且つ、遮音措置を容易に施すことができるので、建物の最下階に設けられる排水集合継手に適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0054】
1 排水集合継手
2 本体部
3 接続縦管
5 上側接続部
7 下側接続部
8 枝管接続部
9a 上側遮音カバー(第1遮音体)
9b 下側遮音カバー(第1遮音体)
10 縦管遮音カバー(第2遮音体)
11 遮音防振シート(第2遮音体)
12 最下階スラブ
13 貫通孔
14 立管
15 横枝管
16 横主管
17 脚部継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6