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特許7402064燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231213BHJP
   B60K 15/07 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 Z
B60K15/07
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020008853
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021118049
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】吉房 敬二
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099059(JP,A)
【文献】特開2017-149316(JP,A)
【文献】特開2009-220680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60K 15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
源ユニットに取り付けられる燃料タンクの取り付け構造であって、
燃料タンクと、
前記燃料タンクを収容して固定する燃料タンク固定装置と
を備え、
前記燃料タンクは、円筒部と、前記円筒部の一方端に接続されている第1端部と、前記円筒部の他方端に接続されている第2端部と、前記第2端部に接続されているタンクバルブを有し、
前記タンクバルブは、前記タンクバルブにおいて前記燃料タンクの前記第2端部側とは逆側に設けられた第1部材を有し、
前記第1部材は、前記燃料タンクが前記電源ユニットに取り付けられている状態において、水平である第1面が設けられており、
前記燃料タンク固定装置は、枠状部分と、前記枠状部分の長手方向の一端部に設けられた第2部材とを有し、
前記タンクバルブは、前記燃料タンクが前記燃料タンク固定装置に搭載される際に、前記第2部材を当接させて前記燃料タンクの位置決めをするための当接面を有する燃料タンクの取り付け構造
【請求項2】
前記第1部材は、前記タンクバルブに脱着可能に保持されている、請求項1に記載された燃料タンクの取り付け構造。
【請求項3】
前記第2部材は、第2部材凸形状部を含んで形成されており、前記第1部材は、少なくとも前記第2部材凸形状部に組み合う形状である第1部材凹形状部を含んで形成されている、請求項1又は2に記載された燃料タンクの取り付け構造。
【請求項4】
前記第1部材は、前記第1面が水平になる前記燃料タンクの中心軸周りの回転方向角度位置とは異なる回転方向角度位置において水平になる第2面を有する、請求項1~3の何れか一項に記載された燃料タンクの取り付け構造。
【請求項5】
料タンクを燃料タンク固定装置に取り付ける方法であって、
前記燃料タンクは、円筒部と、前記円筒部の一方端に接続されている第1端部と、前記円筒部の他方端に接続されている第2端部と、前記第2端部に接続されているタンクバルブとを備え、
前記燃料タンク固定装置は、枠状部分を有し、電源ユニットに取り付けられており、
第1面を有する第1部材を、前記タンクバルブにおいて前記燃料タンクの前記第2端部側とは逆側に取り付ける工程と、
前記第1面に水平器を載せる工程と、
前記燃料タンクを吊り具で吊り上げる工程と、
吊り上げられている状態の前記燃料タンクを回転させて、前記水平器を確認しながら、前記第1面を水平にする工程と、
前記燃料タンクを前記燃料タンク固定装置に下ろす工程と、
前記燃料タンクを、前記燃料タンク固定装置の前記枠状部分の長手方向の一端部に設けられている第2部材側に移動させ、前記タンクバルブの当接面を前記第2部材に当接させる工程と
を含む、燃料タンクの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクと、燃料タンク固定装置とを備え、車両用電源ユニットに取り付けられる燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法に関し、特に、容易に燃料タンクの位置決めができる燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料を貯留するタンクを搭載した車両が利用されている。そのような車両用燃料として、LPG、CNGに加えて、近年水素が用いられている。水素を利用する車両は燃料電池を搭載し、燃料電池が発生する電力で走行する。燃料電池を搭載した車両としては、乗用車や産業車両が挙げられる。水素が高圧で充填される燃料タンクは、走行中の振動で動かないように、燃料タンク固定装置により電源ユニットに固定されて、車両に搭載されている。
【0003】
燃料タンクが搭載される際には、燃料タンクに取り付けられているタンクバルブの燃料配管、及び電気配線が、車両側と接続された状態で固定される。そのため、燃料タンクが電源ユニットに搭載される際には、車両の電源ユニットに備えられている燃料タンク固定装置の収容凹部において、燃料タンクの中心軸周りの回転方向位置と、燃料タンクの中心軸方向位置とが、所望の位置にセットされて搭載される必要がある。例えば、特許文献1に記載された燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-184571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている燃料タンク、及び燃料タンクの取り付け方法では、燃料タンクを車両に搭載後、燃料タンクを回転させて、燃料タンクの中心軸周りの回転方向位置を合わせていた。そのため、次のような問題が存在していた。重量物である燃料タンクを、車両に搭載した状態で人手により回転させる難作業を強いられていた。その問題を避けるためには、燃料タンクを車両に搭載した状態で回転させる特殊な設備が必要であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、上記のような難作業、及び特殊な設備を必要とせずに、容易に搭載できる燃料タンクの取り付け構造、及び燃料タンクの取り付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料タンクの取り付け構造は、電源ユニットに取り付けられる、燃料タンクの取り付け構造であって、燃料タンクと、燃料タンクを収容して固定する燃料タンク固定装置とを備え、燃料タンクは、円筒部と、円筒部の一方端に接続されている第1端部と、円筒部の他方端に接続されている第2端部と、第2端部に接続されているタンクバルブとを有し、タンクバルブは、タンクバルブにおいて燃料タンクの第2端部側とは逆側に設けられた第1部材を有し、第1部材は、燃料タンクが電源ユニットに取り付けられている状態において、水平である第1面が設けられており、燃料タンク固定装置は、枠状部分と、前記枠状部分の長手方向の一端部に設けられた第2部材とを有し、タンクバルブは、燃料タンクが燃料タンク固定装置に搭載される際に、第2部材を当接させて燃料タンクの位置決めをするための当接面を有する。
【0008】
本発明の、燃料タンクを燃料タンク固定装置に取り付ける方法であって、燃料タンクは、円筒部と、円筒部の一方端に接続されている第1端部と、円筒部の他方端に接続されている第2端部と、第2端部に接続されているタンクバルブとを備え、燃料タンク固定装置は、枠状部分を有し、電源ユニットに取り付けられており、第1面を有する第1部材を、タンクバルブにおいて燃料タンクの第2端部側とは逆側に取り付ける工程と、第1面に水平器を載せる工程と、燃料タンクを吊り具で吊り上げる工程と、水平器を用いることにより、吊り上げられている状態の燃料タンクを回転させて、第1面を水平にする工程と、燃料タンクを燃料タンク固定装置に下ろす工程と、燃料タンクを燃料タンク固定装置の枠状部分の長手方向の一端部に設けられている第2部材側に移動させ、タンクバルブの当接面を第2部材に当接させる工程と、を含んでいる。
【0009】
また、本発明の燃料タンクの取り付け構造に備えられる第1部材は、タンクバルブに脱着可能に保持されていてもよい。
【0010】
また、本発明の燃料タンクの取り付け構造に備えられる燃料タンク固定装置は、第2部材を有し、タンクバルブは、燃料タンクが燃料タンク固定装置に搭載される際に、第2部材を当接させて燃料タンクの位置決めをするための当接面を有していてもよい。
【0011】
また、本発明の燃料タンクの取り付け構造に備えられる第2部材は第2部材凸形状部、及び第2部材凹形状部の少なくとも何れか一方を含んで形成されており、第1部材は第2部材凸形状部、及び第2部材凹形状部に組み合う形状である第1部材凹形状部、及び第1部材凸形状部の少なくとも何れか一方を含んで形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明の燃料タンクの取り付け構造に備えられる第1部材は、第1面が水平になる燃料タンクの中心軸X周りの回転方向角度位置とは異なる回転方向角度位置において水平状態になる第2面を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料タンクが燃料タンク固定装置に取り付けられる前に、燃料タンクの取り付け回転方向角度位置を調整することができる。したがって、燃料タンクを燃料タンク固定装置に取り付けた後に回転方向角度位置を調整する場合に必要となる、難作業、及び特殊な設備を不要とすることができる。
【0014】
また、本発明によれば、燃料タンクが燃料タンク固定装置に取り付けられる前に、燃料タンクの取り付け回転方向角度位置を調整できる燃料タンクの取り付け構造の取り付け方法が得られる。したがって、燃料タンクを燃料タンク固定装置に取り付けた後に、回転方向角度位置を調整する場合に必要となる、難作業、及び特殊な設備を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る、燃料タンクと、燃料タンク固定装置とを示す斜視図である。
図2】燃料タンクと、燃料タンク固定装置とを示す正面図である。
図3】燃料タンクのタンクバルブと、第2部材とを示す側面図である。
図4図3における、第1部材と第2部材のみを示す正面図である。
図5図3における、第1部材と第2部材のみを示す側面図である。
図6図2において、タンクバルブのみを示す正面図である。
図7】燃料タンクを吊り具で吊り上げた状態を示す正面図である。図である。
図8図7とは異なる回転角度位置に位置決めされた状態で吊り上げられている燃料タンクを示す正面図である。
【0016】
<実施の形態>
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態の燃料タンク、及び燃料タンク取り付け方法は、燃料タンクを備えている車両であれば、乗用車や産業車両など車両全般に適用可能である。本実施の形態が適用可能な車両は、具体的には、水素燃料タンクを備える牽引車、又はフォークリフトなどが挙げられる。また、水素燃料に限らず、LPG、CNGなどの燃料タンクを備えた車両にも適用可能である。
なお、実施の形態においては、運転者が車両の運転シートに座って、車両の前進方向を向いた状態を基準に、「前後」、「左右」、及び「上下」の各方向を定義する。
【0017】
図1は、実施の形態に係る、燃料タンク10と、燃料タンク固定装置60とを示す斜視図である。各々の構造を理解しやすいように、それぞれを上下方向にずらして表記されている。また、図2は、燃料タンク10と、燃料タンク固定装置60との車両搭載状態を示す正面図である。また、図3は、燃料タンク10と、燃料タンク固定装置60との車両搭載状態であって、固定装置本体61を除いたタンクバルブ30周辺部を示す側面図である。図1図3の何れにおいても、タンクバルブ30に接続される配管類、及び配線類は、省略されている。
【0018】
車両には、燃料が高圧で充填される燃料タンク10と、燃料タンク10が固定される燃料タンク固定装置60と、図示しない燃料電池ユニットと、が搭載されている電源ユニットが備えられている。両端が半球状に形成されている略円筒形状の燃料タンク10は、燃料タンク10の中心軸X方向、すなわち長手方向を車両の進行方向に対して直角になるように搭載されている。燃料タンク10と燃料電池ユニットとは図示しない配管で接続されており、燃料タンク10に貯留されている高圧の水素燃料が燃料電池ユニットへ配管を通じて供給される。
【0019】
はじめに、燃料タンク固定装置60を説明する。燃料タンク固定装置60は、燃料タンク10を所望の搭載位置に位置決めし、固定する装置である。燃料タンク固定装置60は、固定装置本体61と、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60において所望の中心軸X方向位置に位置決めする際に利用する第2部材50とを有している。
【0020】
図1を参照しながら、固定装置本体61を説明する。固定装置本体61は、第1固定部61aと、第2固定部61bと、第3固定部61cと、第4固定部61dとを有している。第1固定部61aと、第2固定部61bとは、燃料タンク10の長手方向長さとほぼ同じ長さに形成されており、かつ、互いに平行に配置されている。第3固定部61cと、第4固定部61dとは、燃料タンク10の直径寸法とほぼ同じ長さ、かつ、互いに平行に配置されている。第1固定部61aと第2固定部61bは、第3固定部61cと第4固定部61dとに対し、直角に配置されている。固定装置本体61は、第1固定部61aと、第2固定部61bと、第3固定部61cと、第4固定部61dとにより形成されている長方形の枠状部分を有している。
【0021】
第1固定部61aと、第2固定部61bと、第3固定部61cと、第4固定部61dとにより囲まれている内側部分は、燃料タンク10より若干大きい凹部61eが形成されている。第1固定部61aは、燃料タンク10の外周面を保持する複数の傾斜面が設けられている。同様に、第2固定部61bは、燃料タンク10の外周面を保持する複数の傾斜面が設けられている。一方、第3固定部61cは、燃料タンク10の第1端部20bの半球状の外周面との干渉を避けるために、へこんだ湾曲面が設けられている。同様に、第4固定部61dは、燃料タンク10の第2端部20cの半球状の外周面との干渉を避けるために、へこんだ湾曲面が設けられている。搭載された燃料タンク10は、固定装置本体61の第1固定部61a、及び第2固定部61bに形成されている各傾斜面に支えられて、保持されている。燃料タンク10は、さらに別な固定装置、例えばバンド、または燃料タンク10を挟むように構成された複数の固定具を合わせて利用することにより、電源ユニットに強固に固定される。
【0022】
図1図3に加えて、図4図5を参照しながら、第2部材50を説明する。図4図5は、第2部材、及び第1部材のみを示している。図4図5は、それぞれ第2部材、及び第1部材を示す正面図、及び側面図である。図2図5は、燃料タンク10が燃料タンク固定装置60に正規状態で搭載されている状態を示している。
【0023】
第2部材50は、燃料タンク10の他方端に設けられているタンクバルブ30の一部が当接して、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60において所望の中心軸X方向位置に位置決めする部材である。第2部材50は、脱着可能な固定方法で、第4固定部61dの長手方向の略中央部分に固定されている。脱着可能な固定方法は、例えば、ボルトとナットとによる締結方法である。
【0024】
第2部材50は、平坦面部51と、取り付け部52とを有している。取り付け部52は、第2部材50を第4固定部61dに固定する部材である。取り付け部52は、所定の厚さの鋼板を長方形に成形加工されて形成されている。取り付け部52には、第4固定部61dへの固定用貫通穴が両端部にそれぞれ設けられている。取り付け部52は、それらの貫通穴で2本のボルトにより、第4固定部61dに固定されている。
【0025】
平坦面部51は、平坦面部51が取り付け部52に固定される下部51cと、ほぼ長方形状に形成されている上部51aと、下部51cと上部51aとを接続する中央部51bとを有している。平坦面部51は、鉛直方向に沿った面である。また、平坦面部51は、所定の厚さの鋼板を、成形加工、及び切削加工して形成されている。平坦面部51は、図4の正面図で見て、全体としてクランク形状に形成されている。図3で明らかなように、下部51cの下側部分は、平板の取り付け部52と接続しやすいように、下部51cの上側部分に対し、垂直な面として形成されている。下部51cと、取り付け部52との取り付け方法は、特に限定されない。本実施例では、ボルトとナットとで固定されている。
【0026】
第2部材50が第4固定部61dに固定されている状態では、上部51aの長手方向は、鉛直方向に沿うように構成されている。したがって、上部51aの外形辺である、長手方向の長辺、及び長辺に直交する短辺は、それぞれ鉛直方向、及び水平方向に沿っている。
【0027】
図4を参照しながら、第2部材50に形成されている、第2部材凸形状部51dと、第2部材凹形状部51eとを説明する。第2部材50の上部51aにおける第1部材40側の角部は、第2部材凸形状部51dを形成している。また、第2部材50の上部51aと中央部51bとの接続部分の第1部材40側の隅部は、第2部材凹形状部51eを形成している。
【0028】
なお、下部51cと、取り付け部52とは、両者は溶接されて固定されていてもよい。または、平坦面部51と、取り付け部52とは、1枚の鋼板を成形、及び折り曲げ加工して両者が一体的に形成されていてもよい。または、平坦面部51と、取り付け部52とは、鋳造加工により両者が一体的に形成されていてもよい。
【0029】
図1を参照しながら、燃料タンク10を説明する。燃料タンク10は、水素等の燃料を内部に高圧で貯留する装置である。燃料タンク10は、燃料を貯留するタンク本体20と、タンク本体20に設けられているタンクバルブ30と、タンクバルブ30に設けられている第1部材40とを備えている。
【0030】
次に、タンク本体20を説明する。タンク本体20は、円筒部20aと、円筒部20aの一方端に接続されている第1端部20bと、円筒部20aの他方端に接続されている第2端部20cと、第2端部20cの半球形状の中心部分に接続されているバルブ接続部20dとを有している。第1端部20bと、第2端部20cとは、半球形状に形成されている。また、バルブ接続部20dは、円筒形状に形成されており、外周面にはタンクバルブ30に設けられているねじ部が嵌め合うタンク本体20側のねじ部が設けられている。
【0031】
図6を参照しながら、タンクバルブ30を説明する。図6は、燃料タンク10を車両に搭載した状態におけるタンクバルブ30を示す正面図である。タンクバルブ30は、タンク本体20と外部との間の燃料の流入流出を制御する装置である。タンクバルブ30は、当接面32と、取り付け穴35と、配管接続部33a及び33bと、配線接続部34a及び34bとを有している。タンクバルブ30は、タンクバルブ30の当接面32と反対側の面に、図示しない円筒状の穴が設けられている。タンクバルブ30は、その穴の内周面に設けられているねじ部を、前述したバルブ接続部20dの外周面に設けられているねじ部に嵌め合わされ、タンクバルブ30自体を回転させて、ねじ嵌合させて固定される。
【0032】
当接面32は、タンクバルブ30に設けられており、鉛直方向に沿った面である。当接面32は、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60に収容するときに、燃料タンク固定装置60における燃料タンク10の中心軸X方向位置の位置決めに用いる面である。後述するように、燃料タンク10の中心軸X方向位置の位置決めは、燃料タンク10を中心軸X方向に動かし、タンクバルブ30に設けられている鉛直面である当接面32を、第2部材50の鉛直方向沿った面、すなわち平坦面部51に当接させて行う。これにより、燃料タンクを燃料タンク固定装置に、容易、かつ確実に搭載することができる
【0033】
取り付け穴35は、後述する第1部材をタンクバルブ30に固定するために用いられる穴である。取り付け穴35は、当接面32に2つ設けられている。取り付け穴35は、検査用治具をタンクバルブ30に取り付けるために設けられた穴である。検査用治具の取り付け穴を第1部材取り付け用に流用することで、コストをかけずに第1部材を取り付けることができる。
【0034】
配管接続部33a及び33bは、何れか一方が図示しない燃料電池と、何れか他方が車両の燃料充填口と、それぞれ配管で接続されている。また、配線接続部34a及び34bは、図示しない車両側の制御装置と配線で接続されており、タンクバルブの開閉量が制御されて、燃料の流入流出が制御されている。
【0035】
図2図5を参照しながら、第1部材40を説明する。第1部材40は、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60に搭載する前に、燃料タンク固定装置60における燃料タンク10の中心軸X周りの回転角度位置の位置決めに用いられる部材である。第1部材40は、長方形状に形成された第1部分40aと、長方形状に形成された第2部分40bと、三角形状に形成された第3部分40cとを有している。第1部分40aと、第2部分40bとは、互いの端部において略L字形状に接続されている。図4から明らかなように、第1部材40は、第1部分40aと、第2部分40bとの接続部分の角部に、三角形状の第3部分40cが接続されて形成されている。第1部材40は、金属部材が成形加工されて、全体が一様な厚さに形成されている。
【0036】
図4を参照しながら、第1部材40に形成されている、第1部材凹形状部40dと、第1部材凸形状部40eとを説明する。第2部材50に近接している第2部分40bの角部は、第1部材凸形状部40eを形成している。また、第1部分40aと第2部分40bとの接続部分における第2部材50側の隅部は、第1部材凹形状部40dを形成している。
【0037】
第1部材40は、さらに、第1面42を有している。第1面42は、第1部材40の厚さ方向、すなわち燃料タンク10の中心軸X方向を構成する面である。具体的には、第1面42は、第1部分40aの外周面の一部である。第1面42の回転方向角度は、燃料タンク10の回転方向角度に対応している。したがって、第1面42を水平に調整することで、燃料タンク10を所望の回転方向角度に位置決めすることができる。なお、本実施例では、燃料タンク10を所望の回転方向角度に位置決めした状態で、第1部分40aは長手方向が水平方向になるように構成されている。したがって、その状態で、第1部分40aの長手方向の2つの長辺は、水平方向に沿っている。また、その状態で、第2部分40bは長手方向が鉛直方向に沿うように構成されている。したがって、第2部分40b
の長手方向の2つの長辺は、鉛直に沿っている。
【0038】
第1部材40は、第1面42に加えて、第2面43を有している。第2面43は、第1部材40の厚さ方向、すなわち燃料タンク10の中心軸X方向を構成する面、すなわち、第3部分40cの外周面の一部である。第1面42と、第2面43とは、同一平面上の面ではなく、所定の角度で交差するよう構成されている。第2面43の回転方向角度は、燃料タンク10の回転方向角度に対応している。したがって、第1面42を利用するときと同様に、第2面43を水平に調整することで、燃料タンク10を所望の回転方向角度位置に位置決めすることができる。第1面に加えて、第1面と異なる回転方向角度位置において水平状態になる第2面を有しているので、異なる回転方向角度位置に調整する場合でも、第1部材を共通して使用することができる。したがって、複数の位置決め角度にそれぞれ合わせた複数の第1部材を作製するコスト、及び工数を低減できる。
【0039】
第1面42と、第2面43との2つの面が第1部材40に設けられていることで、1つの第1部材40で複数の回転角度位置に位置決めすることができる。例えば、配管接続部33a、33bの位置が異なる燃料タンクを車両に搭載する場合、または燃料タンク10を燃料配管の位置が異なる車両へ搭載する場合である。
【0040】
第1部材40は、ボルト45と、タンクバルブ30に設けられている複数の取り付け穴35とにより、タンクバルブ30に取り付けられる。図6には、2つの取り付け穴35が当接面32に設けられていることが示されている。
【0041】
第1面42、または第2面43の水平状態を確認するには、後述するように、何れかの面に水平器Aを載せて、水平状態を確認する。図4の実施例では、第1面42に水平器Aが載せられており、第1面42が水平状態とされている。水平器Aの形式は特に限定されず、第1面42、及び第2面43に載せられる水平器であれば、何れの形式でも使用可能である。例えば、円形部、または管に、一つの気泡を含むアルコール等の液体が封入された円形水平器、または気泡管水平器が用いられる。
【0042】
第1部材40と、第2部材50との形状について、互い組み合うような凹凸形状部をそれぞれ含んで形成されている。具体的には、第2部材50は、第2部材凸形状部51dを含んで形成されており、第1部材40は、第1部材凹形状部40dを含んで形成されている。第1部材凹形状部40dと、第2部材凸形状部51dとは、互いに組み合う形状に形成されている。さらに、第2部材50は、第2部材凹形状部51eを含んで形成されており、第1部材40は、第1部材凸形状部40eを含んで形成されている。第2部材凹形状部51eと、第1部材凸形状部40eとは、互いに組み合う形状に形成されている。
【0043】
図4に示されているように、燃料タンク10が燃料タンク固定装置60に正規状態で収容された状態では、第1部材凹形状部40dと、第2部材凸形状部51dとは、隙間L、Mを介して互いに対向するように配置されている。また、第2部材凹形状部51eと、第1部材凸形状部40eとは、隙間M、Nを介して互いに対向するように配置されている。正規状態では、隙間L、M、Nは、各隙間の長さ方向の全長にわたって所定の寸法で均一な隙間とされている。このように、燃料タンクの取り付け構造に備えられる第2部材と、第1部材とは、燃料タンクが正規状態に搭載された状態において、互いの凹凸形状が隙間を介して対向配置するように形成されているため、均一な隙間により、燃料タンクが所望の状態に搭載されていることを、容易、かつ正確に確認できる。
【0044】
次に、図7図8を参照しながら、燃料タンク10の周りの回転方向角度位置の位置決め方法、及び燃料タンク固定装置60における燃料タンク10の中心軸X方向位置の位置決め方法について説明する。図7図8は、燃料タンク10を車両に移動させるために、吊り具70で吊り上げている状態を示す正面図である。図8は、燃料タンク10が図7とは異なる回転方向角度位置に位置決めされた状態を示している。本実施の形態では、燃料タンク10の中心軸X周りの回転方向角度位置の位置決めは、燃料タンク10を車両に搭載する前に、燃料タンク10を吊り上げている状態で行われる。
【0045】
燃料タンク10の移動には、吊り具70を用いる。吊り具70は、吊り上げ部71と、燃料タンク保持部72とを有している。吊り上げ部71と、燃料タンク保持部72とは、燃料タンク10を吊り上げた時に、安定して保持できるように、燃料タンク10の中心軸X方向に所定の長さを有して形成されている。吊り上げ部71と、燃料タンク保持部72とは、燃料タンク10の重量に耐えられるように、補強材を含んだ樹脂材料で形成されている。また、燃料タンク10を吊り上げて保持している状態において、燃料タンク10を人手で容易に回せるように、燃料タンク保持部72の表面は、摩擦抵抗が小さい樹脂材料で形成されている。
【0046】
なお、第1部材40は、燃料タンク10が電源ユニットに搭載されたあとは不要であるため、タンクバルブ30から取り外される。同様に、第2部材50は、燃料タンク10を車両に搭載したあとは不要であるため、燃料タンク固定装置60から取り外される。それにより、重量軽減、及び構造の簡素化に寄与することができる。
【0047】
以下に、燃料タンク10の位置決め手順を説明する。
(1)第1部材40の取り付け
第1部材40をボルト45により、タンクバルブ30の当接面32に取り付ける。
(2)水平器Aの搭載
第1部材40の第1面42に、水平器Aを載せる。
(3)燃料タンク10の吊り上げ
燃料タンク10に吊り具70の燃料タンク保持部72を取り付け、燃料タンク10を吊り上げる。
(4)回転方向角度位置の調整
水平器Aを見ながら、吊り上げられている燃料タンク10を人手で回転させ、第1面42が水平状態となるように調整する。
(5)燃料タンク固定装置60への収容
燃料タンク10の中心軸X周りの回転方向角度位置の調整後、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60の凹部61eに下ろす。
(6)中心軸X方向位置の調整
燃料タンク10を固定装置本体61の他端側に設けられている第2部材50側へ移動させ、タンクバルブ30の当接面32を第2部材50の平坦面部51に当接させる。当接面32が平坦面部51に当接している状態で、燃料タンク10が所望の回転角度位置、及び軸方向における位置であるか、次のように目視で確認する。燃料タンク10と、燃料タンク固定装置60とを正面、すなわち図2、及び図4が示す方向から見て、隙間L、M、Nが、所定の寸法で、それぞれの隙間の全長にわたって均一であることを確認する。各隙間を確認後、第1部材40、及び第2部材50を取り外し、燃料タンク10の位置決めを完了する。
【0048】
なお、上記手順では、水平器Aを第1面42に載せて水平状態を調整している。しかし、図8に示されているように、第2面43に水平器Aを載せて、第1面42とは異なる回転方向角度位置に調整することも可能である。例えば、配管接続部33a、33bの位置が異なる燃料タンクを車両に搭載する場合、または燃料タンク10を燃料配管の位置が異なる車両へ搭載する場合であっても、同じ第1部材40を共通して使用できるので、部材作製コストの低減、及び複数の部材を使い分ける煩わしさを避けることができる。
【0049】
本実施の形態によれば、燃料タンク10に備えられているタンクバルブ30は、燃料タンク10が電源ユニットに取り付けられている状態において水平になる第1面が設けられている第1部材を有している。そのため、燃料タンク10が燃料タンク固定装置60に取り付けられる前に、燃料タンク10の取り付け回転方向角度位置を調整することができる。よって、燃料タンク10を燃料タンク固定装置60に取り付けた後に回転方向角度位置を調整する場合に必要となる、難作業、及び特殊な設備を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 燃料タンク、30 タンクバルブ、32 当接面、40 第1部材、
40d 第1部材凹形状部、 40e 第1部材凸形状部、42 第1面、
43 第2面、50 第2部材、51d 第2部材凸形状部、
51e 第2部材凹形状部、60 燃料タンク固定装置、61e 凹部、A 水平器 。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8