(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】硬貨搬送装置および硬貨釣銭機
(51)【国際特許分類】
G07D 11/10 20190101AFI20231213BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G07D11/10
G07G1/00 331A
(21)【出願番号】P 2020022186
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄亮
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-272026(JP,A)
【文献】特開平08-287320(JP,A)
【文献】特開2019-003709(JP,A)
【文献】国際公開第2009/095995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/10
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送された硬貨を受け入れる受入部と、
一または複数の突起が一定間隔で形成され、回転することで前記受入部に搬送された硬貨の外周部に前記突起の一つを当接させて搬送する搬送ベルトと、
前記受入部付近の前記搬送ベルトを、前記受入部が前記硬貨を受け入れ可能な第1位置と前記突起が前記硬貨の外周部に当接して前記搬送ベルトが前記硬貨を搬送可能な第2位置との間で移動させる移動機構と、
前記受入部に搬送された硬貨を検知し、かつ前記受入部に前記突起が位置していないことを検知した場合に、前記受入部付近の前記搬送ベルトを前記第1位置から前記第2位置に移動させるよう前記移動機構を制御する制御手段と、
を備えた硬貨搬送装置。
【請求項2】
前記硬貨が前記受入部に位置する硬貨を検出する硬貨センサと、
前記突起が前記受入部に位置しないことを検出する突起センサと、
を備え、
前記制御手段は、前記硬貨センサが硬貨を検知し、前記突起センサが突起が前記受入部に位置していないことを検知した場合に前記受入部付近の前記搬送ベルトを前記第1位置から前記第2位置に位置させるように前記移動機構を制御する
請求項1に記載の硬貨搬送装置。
【請求項3】
前記受入部に前記硬貨を搬送する搬入ベルト、を備え、
前記搬入ベルトと前記搬送ベルトは、
略直交して配置される、
請求項1または2に記載の硬貨搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、前記硬貨を、硬貨を金種別に選別する硬貨選別部に搬送する、
請求項1乃至3のいずれか一に記載の硬貨搬送装置。
【請求項5】
硬貨を投入する硬貨投入口と、
投入された硬貨を前記硬貨選別部に搬送する請求項4に記載の硬貨搬送装置と、
前記硬貨選別部で選別された硬貨を釣銭として払い出す硬貨払出口と、
を備えた硬貨釣銭機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、硬貨搬送装置および硬貨釣銭機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、店舗での商品の販売に係り、顧客から受け取った入金した硬貨を金種別に選別して収納する硬貨釣銭機に用いられる硬貨搬送装置は、投入された複数の硬貨を受けて連続して硬貨選別部まで搬送する。
【0003】
ところが、このような硬貨搬送装置では、硬貨の搬送途中の硬貨が詰まることがある。硬貨が詰まると、硬貨釣銭機を空けて当該硬貨を取り除かなければならず、店舗の運営の妨げとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、搬送途中の硬貨の詰りを防止することが可能な硬貨搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の硬貨搬送装置は、搬送された硬貨を受け入れる受入部と、一または複数の突起が一定間隔で形成され、回転することで前記受入部に搬送された硬貨の外周部に前記突起の一つを当接させて搬送する搬送ベルトと、前記受入部付近の前記搬送ベルトを、前記受入部が前記硬貨を受け入れ可能な第1位置と前記突起が前記硬貨の外周部に当接して前記搬送ベルトが前記硬貨を搬送可能な第2位置との間で移動させる移動機構と、前記受入部に搬送された硬貨を検知し、かつ前記受入部に前記突起が位置していないことを検知した場合に、前記受入部付近の前記搬送ベルトを前記第1位置から前記第2位置に移動させるよう前記移動機構を制御する制御手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る硬貨釣銭機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、硬貨釣銭機の内部構造を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、投入された硬貨の硬貨搬送装置への搬送を示す説明図である。
【
図5】
図5は、硬貨搬送装置の異なる状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、硬貨釣銭機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、硬貨釣銭機の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、硬貨釣銭機の制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、硬貨搬送装置の変形例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、硬貨搬送装置の変形例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、硬貨搬送装置の変形例の異なる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係る硬貨釣銭機の外観を示す斜視図である。
図2は、硬貨釣銭機の内部を示す平面図である。硬貨釣銭機1は、奥行が長い筐体2を備えている。筐体2の上面手前側の右側には、上方に開口した硬貨投入口3が設けられている。硬貨投入口3は、筐体2内へ入金する硬貨Cを受け入れる口である。硬貨投入口3へは、1枚または複数枚の硬貨Cを一度に投入することができる。硬貨投入口3は、回転する平ベルト3aを底部に備えている。平ベルト3aは、図示しないモータによって回転する。回転した平ベルト3aは、硬貨投入口3に投入された硬貨Cを筐体2の内部に向けて1枚ずつ搬送して入金する。
【0009】
筐体2の前面左側には硬貨払出口4が設けられている。硬貨払出口4は、釣銭を払い出す(出金する)口である。筐体2の硬貨払出口4の手前側には、硬貨払出口4が払い出した硬貨Cを受ける受皿5が設けられている。
【0010】
また、筐体2の硬貨投入口3の手前下側には、変形硬貨や外国銭、偽貨、記念硬貨等の、硬貨釣銭機1内に収納すべきではない硬貨Cを排出するためのリジェクト口6が設けられている。リジェクト口6の手前側の筐体2には、リジェクト口6が排出した硬貨Cを受け止める受皿7が設けられている。硬貨釣銭機1は、リジェクト部(図示せず)で排除された外国銭、偽貨、記念硬貨等の硬貨Cを、リジェクト口6から排出する。
【0011】
図1に示す筐体2の上面手前側の左側には操作表示部14が設けられている。操作表示部14は、釣銭の払い出し操作を開始するボタン等を有する操作部15と、入金額、出金額およびエラーメッセージ等を表示する表示部16を備えている。
【0012】
図2は、硬貨釣銭機1の内部構造を概略的に示す平面図である。硬貨釣銭機1は、硬貨投入口3の下面部に、硬貨検出部18を備える。また硬貨釣銭機1は、筐体2内部に、収納部8、入金搬送部9、入金識別部10、搬入搬送部12、選別搬送部17を備えている。
【0013】
硬貨検出部18は、一対の透過型センサ3個で構成される。硬貨検出部18は、硬貨投入口3に投入された硬貨Cを検出する。硬貨釣銭機1は、硬貨検出部18が硬貨Cを検出すると、平ベルト3aを駆動して、硬貨Cを筐体2の内部に搬送して入金する。入金された硬貨Cは、入金搬送部9によってさらに筐体2の内部に搬送される。
【0014】
入金搬送部9は、硬貨投入口3の平ベルト3aが入金した硬貨Cを、所定の間隔で順次搬送する。入金搬送部9は、入金ベルト9aと搬送路9cを備える。入金ベルト9aは、搬送路9cに沿って硬貨Cを搬送する。入金識別部10は、種々のセンサを備え、入金ベルト9aで搬送される硬貨Cが硬貨釣銭機1内に収納すべきではない硬貨Cであるかを判断する。搬入搬送部12は、搬入ベルト12aを備え、入金搬送部9によって搬送された硬貨Cを受け継いで受入部13まで搬送する。選別搬送部17は、選別ベルト17a(搬送ベルト)と搬送路17bを備える。搬入ベルト12aと選別ベルト17aとは略直交して配置される。また、搬送路9cと搬送路17bとは直交して形成される。受入部13は、搬入ベルト12aと選別ベルト17aの交点付近に形成される領域である。搬入ベルト12aによって搬送された硬貨Cは、受入部13において選別ベルト17aに受け渡される。受け渡された硬貨Cは、選別ベルト17aによって
図4で後述する硬貨選別部21へと搬送される。硬貨選別部21は、6種類の選別孔を備えており、選別ベルト17aの搬送方向に沿って(
図2の右から左に向けて)、小さな孔から順に大きな孔へと並んで配置されている。
【0015】
次に、投入された硬貨Cの受入部13までの搬送について説明する。
図3は、投入された硬貨Cの受入部13までの搬送を示す説明図である。硬貨投入口3に投入された硬貨Cは、入金ベルト9aによって硬貨釣銭機1の内部の搬送路9cを搬送され、搬入ベルト12aに渡される。その後、硬貨Cは、搬入ベルト12aによって、受入部13まで搬送される。受入部13には硬貨センサ24が設けられている。硬貨センサ24は、受入部13に硬貨Cが位置していることを検知する。硬貨センサ24は、受入部13に硬貨Cが位置していることを検知した場合に、硬貨Cを検知したことを示す信号を出力する。後述する制御部500は、硬貨センサ24から硬貨Cを検知したことを示す信号が出力されると、受入部13に硬貨Cが位置していると判断する。選別ベルト17aは、受入部13に位置している硬貨Cを硬貨選別部21へと搬送する。
【0016】
選別ベルト17aは、外周部に、所定間隔で1個または複数個の凸部17c(突起)を備える。実施形態では、選別ベルト17aは複数個の凸部17cを備える。凸部17cが複数個ある場合は、当該複数の凸部17cは、選別ベルト17aの外周に一定間隔で配置される。選別ベルト17aが回転することで、凸部17cのうちの一つは、受入部13に位置している硬貨Cの搬送方向最後部に当接する。凸部17cは、当接した硬貨Cの最後部を押しながら硬貨選別部21へと搬送する。
【0017】
図2の説明に戻る。選別ベルト17aは、硬貨Cを硬貨選別部21に搬送する。硬貨選別部21は、硬貨Cが落下する6個の選別孔を備える。選別孔は、硬貨Cの搬送方向(
図2の右側から左側)に沿って、1円硬貨を選別する選別孔、50円硬貨を選別する選別孔、5円硬貨を選別する選別孔、100円硬貨を選別する選別孔、10円硬貨を選別する選別孔、500円硬貨を選別する選別孔を備える。各選別孔の下方には、落下した硬貨Cを収納する収納部8を備える。収納部8は、硬貨Cを金種別に収納する収納庫20を備える。選別孔を落下した硬貨Cは、対応する金種の収納庫20に収納される。
【0018】
入金識別部10は、通過する硬貨Cの特性に応じた電圧を出力する。入金識別部10は、外径センサ、材質センサおよび厚みセンサを有する。外径センサは通過する硬貨Cの外形(特性)を検出する。材質センサは、通過する硬貨Cの材質(特性)を検出する。厚みセンサは、通過する硬貨Cの厚み(特性)を検出する。そして、各センサは、検出結果に応じた出力をする。後述する制御部500は、入金識別部10からの出力に基づいて硬貨Cの金種および真贋を判断する。
【0019】
また、各収納庫20は、出金搬送部23と出金識別部22とを備える。出金搬送部23は、払出径路23aと払出ベルト23bを備える。払出ベルト23bは、収納庫20に収納された硬貨Cを、払出径路23aに沿って硬貨払出口4に搬送する。出金識別部22は、各収納庫20の硬貨払出口4の直前の払出径路23aに設けられる。出金識別部22は、入金識別部10と同様の構成であり、外形センサと材質センサと厚みセンサとを有する。外径センサは、出金識別部22を通過する硬貨Cの外形を検出する。材質センサは、出金識別部22を通過する硬貨Cの材質を検出する。厚みセンサは、出金識別部22を通過する硬貨Cの厚みを検出する。そして、各センサは、検出結果に応じた出力をする。また、後述する制御部500は、出金識別部22からの出力に基づいて硬貨Cの種別および真贋を判断する。
【0020】
次に、硬貨釣銭機1に備えられた硬貨搬送装置Kについて説明する。
図4は、硬貨搬送装置Kを示す説明図である。
図4に示すように、実施形態の硬貨搬送装置Kは、駆動ローラP1、従動ローラP2、選別ベルト17aを備える。駆動ローラP1は、選別搬送部17(
図6を参照)に含まれる図示しないモータが駆動することで回転する。選別ベルト17aは、駆動ローラP1と従動ローラP2間に架け渡される。従動ローラP2は、駆動ローラP1の回転に伴う選別ベルト17aの回転によって回転する。すなわち、選別ベルト17aは、駆動ローラP1と従動ローラP2間を回転する。選別ベルト17aの回転に伴い、凸部17cは、選別ベルト17aとともに移動する。すなわち、凸部17cは、駆動ローラP1と従動ローラP2間を回転する選別ベルト17aとともに移動する。
【0021】
また、硬貨搬送装置Kは、自由に回転する2個のプーリーP3を備える。プーリーP3は、選別ベルト17aに臨んで、あるいは接して配置されている。プーリーP3は、選別ベルト17aとの接点Tにおいて、選別ベルト17aを屈曲させて、選別ベルト17aの搬送方向を変更させている。
図4の実施形態では、プーリーP3は接点Tにおいて、選別ベルト17aを上方(矢印Y1方向)に屈曲させている。
【0022】
また、硬貨搬送装置Kは、従動ローラP2を一方向に移動させるソレノイド26(移動機構)を備える。実施形態では、ソレノイド26に通電すると、従動ローラP2は下方(矢印Y2方向)に移動する。ソレノイド26への通電を停止すると、従動ローラP2は上方(矢印Y1方向)に移動する。すなわち、ソレノイド26への通電を停止している
図4の状態では、従動ローラP2は上方の退避位置(第1位置)に位置しているため、凸部17cは受入部13より上方に退避しており、凸部17cは空間ができており、搬入ベルト12aによって搬送された硬貨Cは受入部13に搬入されて位置させる。この際、凸部17cが受入部13に位置していても、当該は硬貨Cが受入部13に搬入される際に邪魔にならない。硬貨センサ24は、硬貨Cが受入部13に位置していることを検知する。
【0023】
また、硬貨搬送装置Kは、凸部17cの移動経路中に、突起センサ25を備える。突起センサ25は、選別ベルト17aの回転に伴って移動する凸部17cを検知する。突起センサ25は、凸部17cを検知した場合に、凸部17cを検知したことを示す信号を出力する。突起センサ25が凸部17cを検知した場合には、受入部13には凸部17cは位置していない。具体的には、後述する制御部500は、突起センサ25から凸部17cを検知したことを示す信号が出力された場合、受入部13には凸部17cは位置していないと判断する。
【0024】
次に、ソレノイド26を通電すると、従動ローラP2は退避位置から下方の突出位置(第2位置)に移動する(
図5の状態)。すると、受入部13付近の選別ベルト17aも突出位置に移動する。この際、受入部13には凸部17cは位置していないため、選別ベルト17aが突出位置に移動した際に凸部17cが受入部13に位置する硬貨Cに乗り上げることがない。
【0025】
従動ローラP2が突出位置に移動した状態で選別ベルト17aが回転すると、凸部17cは受入部13に位置する硬貨Cの最後部に当接する。また、従動ローラP2が突出位置に位置している場合、選別ベルト17aは、プーリーP3によって屈曲されることがない、またはほとんど屈曲されない。選別ベルト17aは、凸部17cが当接させた硬貨Cを硬貨選別部21方向に搬送する。この際、選別ベルト17aはプーリーP3によって屈曲されないため、搬送される硬貨Cは途中で硬貨詰まりを起こすことなく硬貨選別部21方向に搬送される。
【0026】
なお、従動ローラP2が突出位置に位置している状態では、搬入ベルト12aによって搬送された次の硬貨Cを受入部13に搬入することができない。次の硬貨Cは、ソレノイド26への通電を停止して従動ローラP2が退避位置に移動した場合に、受入部13に搬入される。
【0027】
ここからは、実施形態に係る硬貨釣銭機1のハードウェアについて説明する。
図6は、硬貨釣銭機1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6に示すように、硬貨釣銭機1は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、メモリ部54等を備えている。CPU51は制御主体となる。ROM52は各種プログラムを記憶する。RAM53はプログラムや各種データを展開する。メモリ部54は各種プログラムを記憶する。CPU51、ROM52、RAM53、メモリ部54は、互いにバス55を介して接続されている。CPU51とROM52とRAM53が、制御部500を構成する。すなわち、制御部500は、CPU51がROM52やメモリ部54に記憶されRAM53に展開された制御プログラムに従って動作することによって、後述する硬貨搬送装置Kを含む硬貨釣銭機1の制御処理を実行する。
【0028】
メモリ部54は、HDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリ等で構成されており、電源を遮断しても記憶内容を維持する。メモリ部54は、制御プログラム部541を備える。制御プログラム部541は、硬貨釣銭機1を制御するための制御プログラムを記憶する。
【0029】
また、制御部500は、バス55とコントローラ56を介して、操作部15、表示部16、入金搬送部9、入金識別部10、搬入搬送部12、選別搬送部17、出金識別部22、出金搬送部23、硬貨センサ24、突起センサ25、ソレノイド26を接続する。操作部15は、硬貨釣銭機1を操作するためのボタンである。表示部16は、硬貨釣銭機1を操作する操作者に向けてエラー情報等の情報を表示する。入金搬送部9は、入金ベルト9aを回転させるための駆動部(例えばモータ)を含む。搬入搬送部12は、搬入ベルト12aを回転させるための駆動部(例えばモータ)を含む。選別搬送部17は、選別ベルト17aを回転させるための駆動部(例えばモータ)を含む。出金搬送部23は、払出ベルト23bを回転させるための駆動部(例えばモータ)を含む。硬貨センサ24は、例えば光反射型のフォトセンサであり、硬貨Cが受入部13に位置していることを検知する。突起センサ25は、例えば光透過型のフォトセンサであり、凸部17cを検知する。突起センサ25は、突起センサ25が凸部17cを検知した場合に、受入部13に凸部17cが位置していないように配置される。ソレノイド26は、従動ローラP2、あるいは従動ローラP2を取り付けた板(図示せず)に接続されている。ソレノイド26への通電を停止している状態では、従動ローラP2は退避位置に位置している。ソレノイド26に通電されると、従動ローラP2は突出位置に移動する。
【0030】
また、制御部500は、バス55を介して、通信部(I/F)27と接続している。通信部27は、例えばPOS(Point of Sales)端末(図示せず)と接続しており、POS端末から釣銭情報等の情報を受信するとともに、例えばエラー情報や収納庫20に収納されている金銭情報をPOS端末に送信する。
【0031】
ここからは、硬貨釣銭機1の機能構成について説明する。
図7は、硬貨釣銭機1の機能構成を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、硬貨釣銭機1の制御部500は、制御プログラム部541に記憶され、RAM53に展開された制御プログラムに従うことで、判断手段501、制御手段502として機能する。
【0032】
判断手段501は、受入部13に硬貨Cが位置しており、かつ受入部13に凸部17cが位置していないかを判断する。具体的には、判断手段501は、硬貨センサ24が硬貨Cを検出しており、かつ突起センサ25が凸部17cを検出しているかを判断する。実施形態において、判断手段501は、硬貨搬送装置Kが備える構成である。
【0033】
制御手段502は、受入部13に搬送された硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようソレノイド26を制御する。実施形態では、制御手段502は、硬貨センサ24が硬貨Cを検出しており、かつ突起センサ25が凸部17cを検出していると判断手段501が判断した場合に、受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようソレノイド26を制御する。実施形態において、制御手段502は、硬貨搬送装置Kが備える構成である。
【0034】
ここからは、硬貨釣銭機1の制御について説明する。
図8は、硬貨釣銭機1の制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、初期状態において、従動ローラP2は退避位置に位置している。
【0035】
図8に示すように、硬貨釣銭機1の制御部500は、硬貨検出部18が硬貨投入口3に投入された硬貨Cを検知したかを判断する(S11)。硬貨検出部18が硬貨投入口3に投入された硬貨Cを検知するまで待機し(S11のNo)、硬貨検出部18が硬貨投入口3に投入された硬貨Cを検知したと判断した場合には(S11のYes)、制御部500は、平ベルト3aを回転させる(S12)。また、制御部500は、入金搬送部9を制御して入金ベルト9aを回転させる(S12)。また、制御部500は、搬入搬送部12を制御して搬入ベルト12aを回転させる(S12)。また、制御部500は、選別搬送部17を制御して選別ベルト17aを回転させる(S12)。そして、硬貨投入口3に投入された硬貨Cは、平ベルト3a、入金ベルト9a、搬入ベルト12aによって、1枚ずつ順に受入部13まで搬送される。
【0036】
次に、判断手段501は、受入部13において硬貨センサ24が搬送された硬貨Cを検出したかを判断する(S13)。硬貨センサ24が硬貨Cを検出するまで待機し(S13のNo)、硬貨センサ24が硬貨Cを検出したと判断した場合には(S13のYes)、次に判断手段501は、突起センサ25が凸部17cを検知したかを判断する(S14)。突起センサ25が凸部17cを検知するまで待機し(S14のNo)、突起センサ25が凸部17cを検知したと判断した場合には(S14のYes)、制御手段502は、受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようソレノイド26を制御する(S15)。すなわち、制御手段502は、ソレノイド26に通電して、退避位置に位置している従動ローラP2を突起位置まで移動させる。従動ローラP2が突起位置に移動すると、受入部13付近の選別ベルト17aは突起位置に移動する。
【0037】
選別ベルト17aが突起位置に移動すると、選別ベルト17aが回転しているため、凸部17cが受入部13に位置している硬貨Cの最後部に当接する。凸部17cが当接した硬貨Cは、凸部17cによって最後部を押され、選別ベルト17aによって受入部13から硬貨選別部21に搬送される。そして硬貨Cは硬貨選別部21によって金種別に選別され、それぞれの収納庫20に収納される。収納された硬貨Cは、POS端末から受信した釣銭情報に基づいて、金種毎に必要な枚数の硬貨Cが出金識別部22で識別されて、硬貨払出口4から排出される。
【0038】
次に制御部500は、硬貨センサ24が受入部13で硬貨Cを検知しなくなったかを判断する(S16)。硬貨センサ24が受入部13で硬貨Cを検知している間は待機し(S16のNo)、硬貨センサ24が受入部13で硬貨Cを検知しなくなった場合には(S16のYes)、制御手段502は、受入部13付近の選別ベルト17aを突出位置から退避位置に移動させるようソレノイド26を制御する(S17)。すなわち、制御手段502は、ソレノイド26への通電を停止して、突出位置に位置している従動ローラP2を退避位置まで移動させる。従動ローラP2を退避位置に移動すると、受入部13付近の選別ベルト17aは退避位置に移動する。
【0039】
次に制御部500は、未だ硬貨検出部18が硬貨投入口3において硬貨Cを検知しているかを判断する(S18)。未だ硬貨検出部18が硬貨Cを検知していると判断した場合には(S18のYes)、まだ硬貨投入口3に投入された硬貨Cが搬入されずに残っているため、S13に戻ってS13~S17の判断と処理を繰り返す。一方、硬貨検出部18が硬貨投入口3で硬貨Cを検知しないと判断した場合には(S18のNo)、すでに最後の硬貨Cが搬入されているため、当該最後の硬貨Cが選別されるのに必要な所定時間が経過したかを判断する(S19)。所定時間が経過していないと判断した場合には(S19のNo)、制御部500は、S13に戻ってS13~S17の判断と処理を継続する。一方、所定時間が経過したと判断した場合には(S19のYes)、制御部500は、S12で駆動した平ベルト3a、入金ベルト9a、搬入ベルト12a、選別ベルト17aの回転を停止させる。すなわち、制御部500は、平ベルト3aの回転を停止させる(S20)。また、制御部500は、入金搬送部9を制御して入金ベルト9aの回転を停止させる(S20)。また、制御部500は、搬入搬送部12を制御して搬入ベルト12aの回転を停止させる(S20)。また、制御部500は、選別搬送部17を制御して選別ベルト17aの回転を停止させる(S20)。そして制御部500は、S11に戻る。
【0040】
このような実施形態によれば、硬貨搬送装置Kは、搬送された硬貨Cを受け入れる受入部13と、一または複数の凸部17cが所定間隔で形成され、回転することで受入部13に搬送された硬貨Cの外周部に凸部17cを当接させて搬送する選別ベルト17aと、受入部13付近の選別ベルト17aを、凸部17cを上方に退避させて受入部13が硬貨Cを受け入れ可能な退避位置と凸部17cが硬貨Cの外周部に当接して選別ベルト17aが硬貨Cを搬送可能な突出位置との間で移動させるソレノイド26と、受入部13に搬送された硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようソレノイド26を制御する制御手段502と、を備える。このような硬貨搬送装置Kは、デフォルトでは受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置に移動させて凸部17cを上方に退避させておき、硬貨Cを受入部13まで搬送可能とするとともに、受入部13において硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようにしたため、選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させたときに、凸部17cが硬貨C上に乗り上げることがなく、凸部17cが硬貨Cの最後部を確実に押す。そのため、選別ベルト17aによる搬送途中の硬貨Cの詰りを防止することが可能となる。
【0041】
また、実施形態の硬貨釣銭機1は、硬貨Cを投入する硬貨投入口3と、投入された硬貨Cを硬貨選別部21に搬送する請求項4に記載の硬貨搬送装置Kと、硬貨選別部21によって選別された硬貨Cを釣銭として払い出す硬貨払出口4と、を備える。このような硬貨釣銭機1は、硬貨搬送装置Kが、デフォルトでは受入部13付近の選別ベルト17aを退避位置に移動させて凸部17cを上方に退避させておき、硬貨Cを受入部13まで搬送可能とするとともに、受入部13において硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させるようにしたため、選別ベルト17aを退避位置から突出位置に移動させたときに、が硬貨C上に乗り上げることがなく、凸部17cが硬貨Cの最後部を確実に押す。そのため、選別ベルト17aによる搬送途中の硬貨Cの詰りを防止することが可能となる。
【0042】
ここからは、実施形態に係る硬貨搬送装置Kの変形例について説明する。
図9~
図11に硬貨搬送装置Kの変形例を示す。
図9は、硬貨搬送装置Kの変形例を示す平面図である。
図10は、硬貨搬送装置Kの変形例を側面から見た説明図である。
図11は、硬貨搬送装置Kの変形例の他の状態を側面から見た説明図である。なお、変形例において、実施形態と同じ構成には同じ参照符号を付し、説明を省略する。
【0043】
図9において、駆動ローラP1と従動ローラP2の間に従動ローラP4を有する。従動ローラP4は、駆動ローラP1および従動ローラP2より軸方向の厚さが厚い。また、駆動ローラP1と従動ローラP4との間に選別ベルト17a1が架け渡される。また、従動ローラP2と従動ローラP4との間に選別ベルト17a2が架け渡される。すなわち、従動ローラP4には、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2が同軸状に架け渡される。従動ローラP4は、軸中心に回転するが、従動ローラP2のように退避位置と突出位置とを移動はしない。
【0044】
そして、ソレノイド26に通電して、従動ローラP2が突出位置に突出している状態では、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2は略一直線上であるが、ソレノイド26への通電を停止して、従動ローラP2が退避位置に位置している状態では、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2は、従動ローラP4を頂点として上向きに凹の略「く」の字型に角度を有する。
図10は、従動ローラP2が退避位置に位置し、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2が略「く」の字型に角度を有して配置された状態を示す。
図11は、従動ローラP2が突出位置に位置し、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2が略一直線上に配置されている状態を示す。
【0045】
なお、
図8に示す硬貨搬送装置Kに係る制御は、変形例にも適用される。すなわち、選別ベルト17a2に設けられた凸部17cを硬貨Cの最後部に当接させて選別ベルト17a2に硬貨Cを搬送させ、その後、選別ベルト17a1が選別ベルト17a2から硬貨Cの搬送を引き継いで硬貨選別部21に搬送する。なお、一つの従動ローラP4において選別ベルト17a1と選別ベルト17a2を回転させるため、選別ベルト17a1の回転と選別ベルト17a2の回転は常に同期している。そのため、選別ベルト17a1と選別ベルト17a2の間で、硬貨Cの引き渡すタイミングを決めておけば、選別ベルト17a2から選別ベルト17a1に硬貨Cを引き渡す際に、選別ベルト17a1に設けられた凸部17cが硬貨C上に乗り上げることを防止できる。
【0046】
このような実施形態の変形例においても、硬貨搬送装置Kは、デフォルトでは受入部13付近の選別ベルト17a2を退避位置に移動させておき、硬貨Cを受入部13まで搬送可能とするとともに、受入部13において硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、受入部13付近の選別ベルト17a2を退避位置から突出位置に移動させるようにしたため、選別ベルト17a2を退避位置から突出位置に移動させたときに、凸部17cが硬貨C上に乗り上げることがなく、凸部17cが硬貨Cの最後部を確実に押す。そのため、選別ベルト17a1および選別ベルト17a2による搬送途中の硬貨Cの詰りを防止することが可能となる。
【0047】
また、変形例に係る硬貨釣銭機1は、硬貨搬送装置Kが、デフォルトでは受入部13付近の選別ベルト17a2を退避位置に移動させておき、硬貨Cを受入部13まで搬送可能とするとともに、受入部13において硬貨Cを検知し、かつ受入部13に凸部17cが位置していないことを検知した場合に、受入部13付近の選別ベルト17a2を退避位置から突出位置に移動させるようにしたため、選別ベルト17a2を退避位置から突出位置に移動させたときに、凸部17cが硬貨C上に乗り上げることがなく、凸部17cが硬貨Cの最後部を確実に押す。そのため、選別ベルト17a1および選別ベルト17a2による搬送途中の硬貨Cの詰りを防止することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0049】
例えば、実施形態では、硬貨搬送装置Kは硬貨を硬貨選別部21まで搬送するようにした。しかしながらこれに限らず、硬貨搬送装置Kは硬貨を硬貨選別部21まで搬送しないものであってもよい。
【0050】
また、実施形態では、硬貨搬送装置Kは判断手段501と制御手段502を備える構成であるとした。しかしながらこれに限らず、硬貨搬送装置Kは、必ずしも判断手段501を備えなくてもよい。
【0051】
なお、実施形態の硬貨搬送装置Kで実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0052】
また、実施形態の硬貨搬送装置Kで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、実施形態の硬貨搬送装置Kで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0053】
また、実施形態の硬貨搬送装置Kで実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 硬貨釣銭機
3 硬貨投入口
3a 平ベルト
4 硬貨払出口
9 入金搬送部
9a 入金ベルト
P1 駆動ローラ
P2 従動ローラ
P3 プーリー
P4 従動ローラ
10 入金識別部
12 搬入搬送部
12a 搬入ベルト
13 受入部
17c 凸部
17 選別搬送部
17a 選別ベルト
20 収納庫
21 硬貨選別部
22 出金識別部
23 出金搬送部
23a 払出径路
23b 払出ベルト
24 硬貨センサ
25 突起センサ
26 ソレノイド
17a1 選別ベルト
17a2 選別ベルト
500 制御部
501 判断手段
502 制御手段
K 硬貨搬送装置
T 接点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】