(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】木質接合部材を使用した制振構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20231213BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20231213BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20231213BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E04B1/61
E04H9/02 321B
F16B5/02 F
F16F15/04 A
(21)【出願番号】P 2020022731
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-096262(JP,A)
【文献】特開2003-106006(JP,A)
【文献】特開2007-297845(JP,A)
【文献】米国特許第06223483(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61
E04H 9/02
F16B 5/02
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管とを有した拡径軸であ
り、
一方の木製部材と他方の木製部材との間に配置された板状部材を備え、
一方の木製部材に形成された貫通孔と板状部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに拡径軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造であって、
制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、
木質壁体は、木質接合部材を形成する一方の木製部材及び他方の木製部材の上端面よりも上方外側に突出する上側の板状部材の突出部が固定部として機能して建物の上階梁に固定されるとともに、一方の木製部材及び他方の木製部材の下端側に位置された板状部材が抵抗受部として機能するように構成され、
エネルギー吸収手段が抵抗受部に作用するように設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項2】
一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と
を有した拡径軸であ
り、
一方の木製部材と他方の木製部材との間に配置された板状部材を備え、
一方の木製部材に形成された貫通孔と板状部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに拡径軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造であって、
制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、
木質壁体は、木質接合部材を形成する一方の木製部材及び他方の木製部材の下端面よりも下方外側に突出する下側の板状部材の突出部が固定部として機能して建物の床に固定されるとともに、一方の木製部材及び他方の木製部材の上端側に位置された板状部材が抵抗受部として機能するように構成され、
エネルギー吸収手段が抵抗受部に作用するように設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項3】
一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と
を有した拡径軸であ
り、
一方の木製部材と他方の木製部材との間に配置された板状部材を備え、
一方の木製部材に形成された貫通孔と板状部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに拡径軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造であって、
制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、
木質接合部材は、板状部材が前記拡径軸を用いた第2連結部を介して木製部材に対して回転可能に接合されて構成された揺動体を備え、
木質壁体は、木質接合部材の揺動体の上端部が建物の上階梁に第1連結部を介して回転可能に連結され、かつ、木質接合部材の木製部材の下端側が建物の床に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、
エネルギー吸収手段が揺動体の下端側に作用するように設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項4】
一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管とを有した拡径軸であり、
一方の木製部材と他方の木製部材との間に配置された板状部材を備え、
一方の木製部材に形成された貫通孔と板状部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに拡径軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造であって、
制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、
木質接合部材は、板状部材が前記拡径軸を用いた第2連結部を介して木製部材に対して回転可能に接合されて構成された揺動体を備え、
木質壁体は、木質接合部材の揺動体の下端部が建物の床に第1連結部を介して回転可能に連結され、かつ、木質接合部材の木製部材の上端側が建物の上階梁に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、
エネルギー吸収手段が揺動体の上端側に作用するように設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項5】
前記揺動体として機能する板状部材とは別に、第1連結部を介して揺動体に回転可能に連結された持ち出し部材として機能する板状部材を備え、当該持ち出し部材として機能する板状部材が建物に固定されたことを特徴とする請求項
3又は請求項
4に記載の制振構造。
【請求項6】
第2連結部と第1連結部との間の距離Aと、第2連結部と揺動体の下端又は上端との間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定されたことを特徴とする請求項
3乃至請求項
5のいずれか一項に記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板または形鋼からなる芯材と、この芯材のウェブを両側から挟み込む一対の集成材とから構成された構造用複合材が知られている(特許文献1参照)。
即ち、一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔と一方の木製部材と他方の木製部材との間に設けた金属部材に形成された貫通孔とにボルトやドリフトピン等の軸材を貫通させて一方の木製部材と他方の木製部材とが接合された構造の木質接合部材が知られている。
当該木質接合部材の構造では、軸材が木製部材の貫通孔の内周面に接触することにより当該木製部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力が大きくなり、木製部材の貫通孔の変形や木製部材の損傷等が生じ易くなるため、当該木製部材の接合部分における強度、剛性が損なわれてしまう可能性がある。
また、木質構造材に設けられた貫通孔にドリフトピン又はボルト等の軸材を貫通させる構造において、軸材と貫通孔の内周面との間に、木質構造材と同質の高強度木材製の補強材を設けて補強した木質構造材の接合構造が知られている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-239453号公報
【文献】特開2009-215786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の構造においても、軸材が高強度木材製の補強材の内周面と接触することにより当該補強材の内周面に作用する支圧応力が大きくなることには変わりはなく、当該補強材の変形や損傷等が生じ易くなり、当該木質構造材の接合部分の強度、剛性が損なわれてしまうという課題は解消されない。
即ち、軸材の径が小さくなればなるほど、木製部材に形成された貫通孔の内周面と軸材の外周面との接触面の曲率が大きくなるので、軸材の外周面と木製部材に形成された貫通孔との接触により木製部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力が大きくなって、木製部材の貫通孔の変形や木製部材の損傷等が生じ易くなるため、当該木製部材の接合部分における強度、剛性が損なわれてしまう可能性がある。
本発明は、軸が接触する木製部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる木質接合部材を使用した制振構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る木質接合部材を使用した制振構造は、一方の木製部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材であって、軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管とを有した拡径軸であり、一方の木製部材と他方の木製部材との間に配置された板状部材を備え、一方の木製部材に形成された貫通孔と板状部材に形成された貫通孔と他方の木製部材に形成された貫通孔とに拡径軸が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材同士が接合された木質接合部材を使用した制振構造であって、制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、木質壁体は、木質接合部材を形成する一方の木製部材及び他方の木製部材の上端面よりも上方外側に突出する上側の板状部材の突出部が固定部として機能して建物の上階梁に固定されるとともに、一方の木製部材及び他方の木製部材の下端側に位置された板状部材が抵抗受部として機能するように構成され、エネルギー吸収手段が抵抗受部に作用するように設けられたことを特徴とするか、又は、木質壁体は、木質接合部材を形成する一方の木製部材及び他方の木製部材の下端面よりも下方外側に突出する下側の板状部材の突出部が固定部として機能して建物の床に固定されるとともに、一方の木製部材及び他方の木製部材の上端側に位置された板状部材が抵抗受部として機能するように構成され、エネルギー吸収手段が抵抗受部に作用するように設けられたことを特徴とする。
本発明に係る木質接合部材を使用した制振構造によれば、地震時等において当該制振構造を備えた建物に水平力が加わった場合に、木質壁体の抵抗受部にエネルギー吸収手段が作用して、地震時等に建物に加わるエネルギーが吸収され、建物の層間変形を抑制できるようになる。また、地震時等において、木質壁体の木製部材に形成された貫通孔の内周面に加わる支圧応力を軽減できるため、木質壁体の木製部材の貫通孔の変形や木製部材の損傷等が生じ難くなり、木質壁体の木製部材の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い制振構造を提供できる。
また、上述した木質接合部材を使用した別の制振構造であって、制振構造は、前記木質接合部材が建物に取付けられて構成された木質壁体と、建物に力が加わった際に木質壁体に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、木質接合部材は、板状部材が前記拡径軸を用いた第2連結部を介して木製部材に対して回転可能に接合されて構成された揺動体を備え、木質壁体は、木質接合部材の揺動体の上端部が建物の上階梁に第1連結部を介して回転可能に連結され、かつ、木質接合部材の木製部材の下端側が建物の床に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、エネルギー吸収手段が揺動体の下端側に作用するように設けられたことを特徴とするか、又は、木質接合部材は、板状部材が前記拡径軸を用いた第2連結部を介して木製部材に対して回転可能に接合されて構成された揺動体を備え、木質壁体は、木質接合部材の揺動体の下端部が建物の床に第1連結部を介して回転可能に連結され、かつ、木質接合部材の木製部材の上端側が建物の上階梁に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動するように構成され、エネルギー吸収手段が揺動体の上端側に作用するように設けられたことを特徴とする。
また、前記揺動体として機能する板状部材とは別に、第1連結部を介して揺動体に回転可能に連結された持ち出し部材として機能する板状部材を備え、当該持ち出し部材として機能する板状部材が建物に固定されたことを特徴とする。
本発明に係る木質接合部材を使用した別の制振構造によれば、揺動体が第2連結部を回転中心として揺動可能に構成されているため、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部を回転中心として揺動体を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーがエネルギー吸収手段に伝達されて当該エネルギー吸収手段により吸収されるようになる。即ち、建物に加わるエネルギーが、揺動体の揺動動作を介してエネルギー吸収手段に伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。また、一対の木製部材と揺動体とを回転可能に連結する第2連結部を構成する接合構造の軸として拡径軸を用いたことにより、木製部材に形成された貫通孔の内周面及び拡径軸の外周面の曲率を小さくできるので、拡径軸の外周面と貫通孔の内周面との接触により当該貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、木製板材、及び、揺動体への負担を小さくでき、木製板材、及び、揺動体が損傷しにくい制振構造を提供できる。
また、第2連結部と第1連結部との間の距離Aと、第2連結部と揺動体の下端又は上端との間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定されたことを特徴としたので、揺動体におけるエネルギー吸収手段側の変位及び速度が増幅されるため、エネルギーをより効率的に吸収できるようになり、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】木質パネル(木質接合部材)を使用した制振構造を示す正面図(一部断面図)(実施形態1)。
【
図5】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態1)。
【
図6】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態2)。
【
図7】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態3)。
【
図8】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態4)。
【
図9】木質パネルの接合構造の製造方法を示す断面図(実施形態5)。
【
図10】制振構造を示す正面図(一部断面図)(実施形態6)。
【
図12】木質パネル(木質接合部材)を使用した制振構造を示す正面図(一部断面図)(実施形態9)。
【
図14】制振構造を示す分解斜視図(実施形態9)。
【
図16】第1連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態9)。
【
図17】第2連結部を構成する接合構造(木質パネルの接合構造)を示す断面図(実施形態9)。
【
図18】第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態10)。
【
図19】第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態11)。
【
図20】第2連結部を構成する接合構造を示す断面図(実施形態12)。
【
図22】木質パネルを示す斜視図(実施形態17)。
【
図23】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態17)。
【
図24】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態18)。
【
図25】木質パネルの接合構造を示す断面図(実施形態19)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至
図5に示すように、実施形態1に係る木質接合部材としての木質パネル2Aを使用した制振構造1は、当該木質接合部材としての木質パネル2Aが建物に取付けられて構成された木質壁体2と、建物に力が加わった際に当該木質壁体2に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段としての例えば粘性物質5とを備えた構成である。
尚、本明細書においては、制振構造1の上、下、左、右、前、後は、
図2に示した方向と定義して説明する。
【0008】
図4に示すように、木質接合部材としての木質パネル2Aは、一方の木製部材20と、他方の木製部材20と、一方の木製部材20と他方の木製部材20との間に配置されてかつ一部が一方の木製部材20及び他方の木製部材20の端面よりも外側に突出する突出部を有した板状部材30,40を備え、
図5に示すように、一方の木製部材20に形成された貫通孔21と板状部材30又は板状部材40に形成された貫通孔31と他方の木製部材20に形成された貫通孔21とに拡径軸70が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材20,20同士が接合された構成である。
板状部材30,40は、例えば鋼板により構成される。
【0009】
木製部材20は、例えば、CLT(Cross
Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer
Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された板状部材である。
尚、CLTとは、農林水産省告示第3079号に規定されたように、「ひき板又は小角材(これらをその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したものを含む。)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものを、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせた一般材」である。
即ち、CLTは、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0010】
即ち、制振構造1は、
図1乃至
図4に示すように、木質パネル2Aが建物に取付けられて構成される木質壁体2と、建物に力が加わった際に木質壁体2に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段としての例えば粘性物質5とを備え、木質壁体2は、木質パネル2Aを形成する一方の木製部材20及び他方の木製部材20の上端面20t,20tよりも上方外側に突出する上側の板状部材30の突出部が固定部3として機能して建物の上階梁11に固定されたとともに、一方の木製部材20及び他方の木製部材20の下端面20u,20uよりも下方外側に突出する下側の板状部材40の突出部が抵抗受部4として機能するように構成され、エネルギー吸収手段としての粘性物質5が当該抵抗受部4に作用するように設けられた構成とした。
【0011】
つまり、木質パネル2Aにおける上側の板状部材30の突出部としての固定部3が溶接等の固定手段により上階梁11に固定され、かつ、木質パネル2Aにおける下側の板状部材40の突出部としての抵抗受部4に作用するように、エネルギー吸収手段としての粘性物質5が設けられたことによって、制振構造1における木質壁体2が構成される。
そして、木質壁体2における一方の木製部材20及び他方の木製部材20の左端面23,23と木質壁体2の左側に位置される柱12とが離間するとともに、木質壁体2における一方の木製部材20及び他方の木製部材20の右端面24,24と木質壁体2の右側に位置される柱12とが離間し、さらに、木質壁体2における一方の木製部材20及び他方の木製部材20の下端面20u,20uと床13とが離間するように設けられた構成とした。
尚、木質壁体2の左端面23と柱12との間、木質壁体2の右端面24と柱12との間、木質壁体2の下端面20uと床13との間は、図外の適当な目隠し板で覆うようにすればよい。
【0012】
換言すれば、建物に取付けられて木質壁体2を構成する実施形態1に係る木質接合部材としての木質パネル2Aは、上階梁11に固定される固定部3を有した上側の板状部材30としての例えば鋼板、及び、抵抗受部4を有した下側の板状部材40としての例えば鋼板と、これら鋼板を挟むように配置された2枚の木製部材20,20とを備え、2枚の木製部材20,20の上端側と上側の板状部材30を構成する鋼板の下部側とが接合構造6により接合されたとともに、2枚の木製部材20,20の下端側と下側の板状部材40を構成する鋼板の上部側とが接合構造6により接合された構成である。
【0013】
一方の木製部材20及び他方の木製部材20と上側の板状部材30を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造、及び、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と下側の板状部材40を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造は、例えば、
図5に示すような、接合構造6により構成した。
当該接合構造6は、2枚の木製部材20,20の間に上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板が配置されるとともに、木製部材20,20と上側の板状部材30又は下側の板状部材40との間に板状のスペーサ60,60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した接合構造である。
当該接合構造6は、2枚の木製部材20,20に形成された貫通孔21,21と上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板に形成された貫通孔31とスペーサ60,60に形成された貫通孔61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端部に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72とを備え、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成された拡径軸70を使用した。
当該拡径軸70を使用したことにより、当該拡径軸70の外周面となる管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70から木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6を実現した。
尚、スペーサ60は、例えばゴム板等の緩衝材、木材、合成樹脂等により形成された板状部材を用いればよい。
【0014】
また、軸材71の両端部に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68が、木質壁体2を構成する前後の木製部材20,20の外側の板面25,25より外側に突出しないように、当該前後の木製部材20,20の前後の外側の板面25,25側に、軸材71の両端部に形成されたねじ65,65及びナット68,68を収容するための座繰り孔33,33を形成することが好ましい。当該座繰り孔33は、軸通し貫通孔と連通して当該軸通し貫通孔と中心線が一致するように形成される。
【0015】
管72は、両端面が木質壁体2を構成する2枚の木製部材20,20の前後の外側の板面25,25側に形成された座繰り孔33,33の孔底面33a,33aよりも外側に突出しない長さのもの、例えば当該孔底面33a,33a間の長さと同じ長さのものを用いることが好ましい。
また、ナット68と管72の端面との間には、スプリングワッシャ69を設けることが好ましい。
また、座繰り孔33の開口を塞ぐ木製の塞材32を設けることが好ましい。
【0016】
当該接合構造6によれば、軸7として拡径軸70を用いたことにより、軸通し貫通孔の内周面及び拡径軸70の外周面の曲率を小さくできるので、拡径軸70の外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。
従って、当該接合構造6によれば、拡径軸70が接触する木製部材20の貫通孔21の内周面に作用する支圧応力を小さくでき、木製部材20の貫通孔21の変形や木製部材20の損傷等の抑制効果に優れ、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の木質パネル2A,木質壁体2,制震構造1を提供できるようになる。
【0017】
また、当該接合構造6によれば、木製部材20、及び、上側の板状部材30又は下側の板状部材40への負担を小さくでき、木製部材20、及び、上側の板状部材30又は下側の板状部材40が損傷しにくい構成の木質パネル2A,木質壁体2,制震構造1を提供できるようになる。
【0018】
尚、軸通し貫通孔の内径寸法、及び、外周面が軸通し貫通孔の内周面と接触する拡径軸70の外径寸法を、軸材71の軸径寸法の数倍、例えば軸材71の軸径寸法の1.5倍以上(例えば、1.5倍以上3倍以下程度)の大径寸法に形成して、軸通し貫通孔の内周面と拡径軸70の外周面との接触面の曲率をより小さくすることで、木製部材20,20の貫通孔21,21の内周面に加わる支圧応力がより小さくなるように構成でき、地震時において木製部材20,20に加わる応力をより軽減できて、木製部材20の貫通孔21の変形や木製部材20の損傷等の抑制効果に優れ、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の木質パネル2A,木質壁体2,制震構造1を提供できるようになる。
【0019】
また、当該接合構造6によれば、拡径軸70の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70から木製部材20,20,鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40),スペーサ60,60のすべてに力が伝達されるように構成されているため、木製部材20,20,鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40),スペーサ60,60のうちの一部の部材の貫通孔と拡径軸70との接触部に力が集中して、一部の部材の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。
言い換えれば、各部材の負担を均すことができるようになり、各部材と拡径軸70との間での力の伝達が安定かつ良好に行われる接合構造となる。
【0020】
特に、木製部材20,20に形成された貫通孔21,21の内周面と拡径軸70の外周面との接触面積が大きく、かつ、鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40)に形成された貫通孔31の内周面と拡径軸70の外周面との接触面積が小さい構成の接合構造において、拡径軸70の外周面と接触する面積が大きい木製部材20,20に力を負担させることができて、軸材71の外周面と接触する面積が小さい鋼板に加わる力を軽減できるようになるので、鋼板の負担を軽減できて、鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40)が損傷しにくい木質壁体2を構成できる。
即ち、木質壁体2、上側の板状部材30、下側の板状部材40のうちのいずれかに形成された貫通孔と拡径軸70との接触部に力が集中して、木質壁体2又は上側の板状部材30や下側の板状部材40の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。
言い換えれば、木質壁体2の負担と上側の板状部材30や下側の板状部材40の負担を均すことができるようになり、木質壁体2又は上側の板状部材30や下側の板状部材40と拡径軸70との間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになる。
【0021】
エネルギー吸収手段としての粘性物質5は、床13上に固定された粘性体収容箱50内に収容されている。
粘性体収容箱50は、例えば、床13の上面に設けられたレベル調整用モルタル14上に固定された上部開口の筐体51と、筐体51の上部開口を塞ぐとともに抵抗受部4を構成する鋼板を貫通させる貫通孔52を備えた蓋53とを備えた構成とした。
粘性体収容箱50は、上階梁11の延長方向に沿った方向に長く延長する直方体状に形成される。
そして、蓋53に形成された貫通孔52は、抵抗受部4として機能する鋼板が上階梁11の延長方向に沿った方向に移動可能なように、上階梁11の延長方向に沿った方向に長い長孔により形成される。
【0022】
図1に示すように、抵抗受部4を構成する鋼板には、当該鋼板を変形させてエネルギーを吸収させるために、例えば、上下方向に延長する細長孔(スリット)41が上階梁11の延長方向に沿った方向に所定の間隔を隔てて複数個形成されている。
そして、抵抗受部4に形成された複数の細長孔41,41…が粘性物質5中に位置された状態に設定される。
即ち、抵抗受部4は、エネルギー吸収手段としての粘性物質5と接触する位置に複数の細長孔(スリット)41,41…を設けて変形しやすい構成としたため、地震時等において変形することにより、地震時等に建物に加わるエネルギーを吸収できるようになり、エネルギー吸収効果を向上できる。
【0023】
以上のように構成された実施形態1に係る木質接合部材としての木質パネル2Aを使用した制振構造1によれば、地震時等において、当該制振構造1を備えた建物に水平力が加わった場合に、抵抗受部4にエネルギー吸収手段としての粘性物質5が作用して、地震時等に建物に加わるエネルギーが吸収され、建物の層間変形を抑制できるようになる。
従って、地震時等において、木質パネル2Aの木製部材20に形成された貫通孔21の内周面に加わる支圧応力を軽減できるため、木製部材20の貫通孔21の変形や木製部材20の損傷等の抑制効果に優れ、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の木質パネル2A,木質壁体2,制震構造1を提供できるようになる。
また、木製部材20、及び、上側の板状部材30又は下側の板状部材40への負担を小さくでき、木製部材20、及び、上側の板状部材30又は下側の板状部材40が損傷しにくい構成の木質パネル2A,木質壁体2,制振構造1を提供できる。
即ち、実施形態1に係る木質接合部材としての木質パネル2Aによれば、軸としての拡径軸70が接触する木製部材20の貫通孔21の内周面に作用する支圧応力を小さくできるので、上述した制振構造1に使用して構成された木質壁体2の木製部材20の貫通孔21の変形や木製部材20の損傷等が生じ難くなり、木質壁体2の木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い制振構造1を提供できるようになる。
【0024】
尚、実施形態1において、抵抗受部4に形成する孔は、細長孔(スリット)に限らず、どのような形状の孔(貫通孔)であってもよい。
また、抵抗受部4に設ける抵抗を増やす手段は、抵抗受部4の板面に形成された凹凸であってもよい。
尚、当該抵抗を増やす手段は、設けられていなくてもよい。
【0025】
実施形態2
また、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と上側の板状部材30を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造、及び、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と下側の板状部材40を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造は、例えば、
図6に示すような、接合構造6Aにより構成してもよい。
【0026】
当該接合構造6Aは、2枚の木製部材20,20の間に上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板が配置されるとともに、木製部材20と上側の板状部材30又は下側の板状部材40との間に板状のスペーサ60,60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した構造である。
当該接合構造6Aは、2枚の木製部材20,20に形成された貫通孔21,21と上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板に形成された貫通孔31とスペーサ60,60に形成された貫通孔61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端部に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填されたグラウト等の充填材73とを備えた拡径軸70Aを使用した。
当該拡径軸70Aを使用したことにより、当該拡径軸70Aの外周面となる管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Aから木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Aを実現した。
即ち、管72として、管径が、実施形態1の接合構造6の管72よりも大きいものを使用した。
【0027】
また、接合構造6と同様に、座繰り孔33,33を形成して、管72は、両端面が木質壁体2を構成する2枚の木製部材20,20の前後の外側の板面25,25側に形成された座繰り孔33,33の孔底面33a,33aよりも外側に突出しない長さのもの、例えば当該孔底面33a,33a間の長さと同じ長さのものを用いることが好ましい。
【0028】
また、接合構造6Aは、管72が嵌め込まれた軸通し用貫通孔の両端の開口をそれぞれ塞ぐ蓋材35,35を備える。当該蓋材35,35は、中央に軸材71の端部が貫通する貫通孔34を有するとともに、管72の端面及び座繰り孔33の孔底面33aと接触して軸通し貫通孔の両端の開口及び管72の両端の開口を塞ぐ板面を有した構成である。
また、ナット68と蓋材35との間には、スプリングワッシャ69を設けることが好ましい。
また、座繰り孔33の開口を塞ぐ木製の塞材32を設けることが好ましい。
【0029】
接合構造6Aを形成する場合、例えば、軸通し貫通孔内に管72を嵌め込んだ後に、一方の蓋材35を接着剤やねじ等の固定手段を用いて孔底面33aに固定し、その後、軸材71を一端側から一方の蓋材35の貫通孔34に通して管72内に挿入して他方の蓋材35の貫通孔34に通す。その後、当該軸材71の両端部のねじ65,65にワッシャ69及びナット68を締結する。そして、蓋材35,35に形成された図外の注入孔を介して管72内にグラウト等の充填材73を注入して充填することにより、接合構造6Aが形成される。
【0030】
当該接合構造6Aによれば、実施形態1の接合構造6と同様な効果が得られるとともに、実施形態1の接合構造6と比べて、軸7として実施形態1の拡径軸70よりも径の大きい拡径軸70Aを用いたことにより、軸通し貫通孔の内周面及び拡径軸70Aの外周面の曲率をより小さくできるので、拡径軸70Aの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力をより小さくできる。
従って、実施形態1と比べて、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難くく、また、木製部材20及び上側の板状部材30又は下側の板状部材40が損傷しにくい構成の木質パネル2B,木質壁体2,制振構造1を提供できる。
【0031】
実施形態3
また、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と上側の板状部材30を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造、及び、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と下側の板状部材40を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造は、例えば、
図7に示すような、接合構造6Bにより構成してもよい。
当該接合構造6Bでは、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填された軸材側充填材73と、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材74とを備えた拡径軸70Bを使用した。
当該拡径軸70Bを使用したことにより、拡径軸70Bの外周面となる貫通孔側充填材74の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Bから木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Bを実現した。
尚、その他の構成は、実施形態2で説明した接合構造6Aと同じである。
【0032】
接合構造6Bを形成する場合、例えば、予め管72の一端側と一方の蓋材35の面とを結合しておく。そして、管72を軸通し貫通孔の一端開口側から当該軸通し貫通孔内に挿入して一方の蓋材35を接着剤やねじ等の固定手段を用いて一方の座繰り孔33の孔底面33aに固定することによって軸通し貫通孔の一端開口を塞ぐ。
その後、他方の蓋材35と管72の他端側とを結合するとともに、他方の蓋材35の他方の座繰り孔33の孔底面33aに固定することによって軸通し貫通孔の一端開口を塞ぐ。尚、管72の一端側と一方の蓋材35の面との結合、管72の他端側と他方の蓋材35との結合は、例えば、蓋材35の板面に管72の端部側が嵌まり込むリング状凹部を形成しておけばよい。
そして、軸材71を一端側から一方の蓋材35の貫通孔34に通して管72内に挿入し、他方の蓋材35の貫通孔34に通す。その後、当該軸材71の両端部のねじ65,65にワッシャ69及びナット68を締結する。
その後、蓋材35,35に形成された図外の注入孔を介して、管72内にグラウト等の軸材側充填材73を注入して充填するとともに、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間にグラウト等の貫通孔側充填材74を注入して充填することにより、接合構造6Bが形成される。
【0033】
実施形態3の接合構造6Bによれば、実施形態2の拡径軸70Aの軸径よりもさらに大きい軸径の拡径軸70Bとなるため、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力をさらに小さくできる。
従って、実施形態2と比べて、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難くく、また、木製部材20及び上側の板状部材30又は下側の板状部材40が損傷しにくい構成の木質パネル2C,木質壁体2,制震構造1を提供できるようになる。
【0034】
実施形態4
また、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と上側の板状部材30を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造、及び、一方の木製部材20及び他方の木製部材20と下側の板状部材40を構成する鋼板とを固定状態に接合する接合構造は、例えば、
図8に示すような、接合構造6Cにより構成してもよい。
当該接合構造6Cは、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼軸等の金属製の軸材71を使用したことにより、拡径軸70Cの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、軸材71から木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Cとした。
尚、その他の構成は、実施形態1で説明した接合構造6と同じである。
即ち、木製部材20,20に形成された貫通孔21と上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板に形成された貫通孔31とに、木製部材20よりもヤング係数が大きい軸7としての鋼軸等の金属製の軸材71が嵌合状態に貫通されたことによって、木製部材20,20と上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板とが接合されて、軸材71から木製部材20,20及び上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板に力が伝達されるように構成された制振構造6Cとした。
尚、軸材71としては、両端ねじ軸、又は、ドリフトピン等の軸材を用いればよい。
【0035】
実施形態4の接合構造6Cによれば、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Cから木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達されるように構成されているため、製板材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のうちの一部の部材に形成された貫通孔と軸材71との接触部に力が集中して、一部の部材の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。
言い換えれば、各部材の負担を均すことができるようになり、各部材と軸材71との間での力の伝達が安定かつ良好に行われる接合構造となる。
【0036】
特に、木製部材20,20に形成された貫通孔21,21の内周面と軸材71の外周面との接触面積が大きく、かつ、鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40)に形成された貫通孔31の内周面と軸材71の外周面との接触面積が小さい構成の接合構造において、軸材71の外周面と接触する面積が大きい木製部材20,20に力を負担させることができて、軸材71の外周面と接触する面積が小さい鋼板に加わる力を軽減できるようになるので、鋼板の負担を軽減できて、鋼板(上側の板状部材30又は下側の板状部材40)が損傷しにくい木質パネル2Dを構成できる。
即ち、木製部材20,20、上側の板状部材30、下側の板状部材40のうちのいずれかに形成された貫通孔と軸材71との接触部に力が集中して、木製部材20,20又は上側の板状部材30や下側の板状部材40の負担が大きくなってしまうようなことを防止できる。言い換えれば、木製部材20,20の負担と上側の板状部材30や下側の板状部材40の負担を均すことができるようになり、木製部材20,20又は上側の板状部材30や下側の板状部材40と軸材71との間での力の伝達が安定かつ良好に行われる木質パネル2Dを提供できる。
【0037】
実施形態5
実施形態4で説明した接合構造6Cは、例えば、以下のように製造することが好ましい。
即ち、
図9に示すように、外径dが木製部材20に形成された貫通孔21の径d1よりも大きい軸材71を、貫通孔21に貫通させるとともに上側の板状部材30又は下側の板状部材40を構成する鋼板に形成された貫通孔31及びスペーサ60に形成された貫通孔61に貫通させることにより、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触させた構成の接合構造6Cを製造するようにした。
【0038】
例えば、
図9に示すように、軸材71の外径d、木製部材20に形成された貫通孔21の径d1、例えばゴム板により形成されたスペーサ60に形成された貫通孔61の径d2、上側の板状部材30又は下側の板状部材40を構成する鋼板に形成された貫通孔31の径d3の関係を、例えば、d3=d>d2=d1とし、軸材71を軸通し貫通孔に圧入して貫通させることにより、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とを全面接触させた構成の接合構造6Cを製造するようにした(
図9参照)。
【0039】
尚、この場合、
図9に示すように、軸材71の挿入側先端は、木製部材20に形成された貫通孔21に挿入しやすくするために,面取り加工を施すことにより、貫通孔21の径d1よりも小径の小径部eに形成しておくことが好ましい。
【0040】
このように実施形態5に係る接合構造6Cの製造方法によれば、外径dが木製部材20に形成された貫通孔21の径d1よりも大きい軸材71を、軸通し貫通孔に貫通させたので、軸材71の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、軸材71から木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達されるように構成された接合構造6Cを確実容易に製造できるようになる。
【0041】
特に、軸材71としての両端ねじ軸の軸部(両端のねじ部以外の部分)が木製部材20に形成された貫通孔21の内面に食い込む圧力(摩擦力)で当該木製部材20に固定される、所謂、シマリバメと呼ばれる状態となって、軸材71の軸部と木製部材20との一体性が高まることから、例えば上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板の負担を軽減できる接合構造6Cとなる。
【0042】
尚、当該実施形態5で説明した接合構造の製造方法は、実施形態1又は実施形態2で説明した接合構造6,6Aを製造する際にも適用可能である。
即ち、外径dが木製部材20に形成された貫通孔21の径d1よりも大きい拡径軸70,70Aの管72を、軸通し貫通孔に貫通させることにより、拡径軸70,70Aの管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70,70Aから木製部材20,20、上側の板状部材30を構成する鋼板又は下側の板状部材40を構成する鋼板、スペーサ60,60のすべてに力が伝達されるように構成された接合構造を確実容易に製造できる。
【0043】
実施形態6
制振構造は、
図10に示すように、エネルギー吸収手段として、シリンダー内にオイル等の粘性物質を封入して構成された粘性ダンパー、あるいは、摩擦ダンパー、あるいは、鋼材ダンパー等の制振ダンパー5Aを用いるようにしてもよい。
当該制振ダンパー5Aを用いる場合には、抵抗受部4における上階梁11の延長方向に沿った方向の両端側にそれぞれ制振ダンパー5A,5Aを接続する。
そして、例えば制振ダンパー5Aの一端(例えばシリンダ側一端)5xを抵抗受部4及び床13のうちのいずれか一方に接続するとともに、制振ダンパー5Aの他端(例えばピストン側一端)5yを抵抗受部4及び床13のうちの他方に接続すればよい。
当該実施形態6に係る制振構造によれば、実施形態1で説明した制振構造1と同様の効果が得られる。
【0044】
実施形態7
制振構造は、
図11に示すように、床13に固定されて上方に延長するように設けられた鋼板等の固定板15の両方の板面16,16に、エネルギー吸収手段としてのゴム、粘性物質等の抵抗体5Bを設け、これら抵抗体5Bを、木質壁体2を構成する2枚の木製部材20,20の互いに対向する抵抗受部として機能する内面26,26に作用させるような構成とした。
当該実施形態7に係る制振構造によれば、実施形態1で説明した制振構造1と同様の効果が得られる。
【0045】
実施形態8
各実施形態では、木質パネルに設けられた上側の板状部材30が上階梁11に固定されて、かつ、床13側にエネルギー吸収手段を設けた構成の制振構造1を例示したが、木質パネルの下端側に設けた下側の板状部材が床13に固定されて、かつ、上階梁11側にエネルギー吸収手段を設けた構成の制振構造としてもよい。
即ち、木質パネルの一方の木製部材20及び他方の木製部材20の下端面20u,20uよりも下方外側に突出する下側の板状部材の突出部が固定部として機能して建物の床13に固定されたとともに、一方の木製部材20及び他方の木製部材20の上端面20t,20tよりも上方外側に突出する上側の板状部材の突出部が抵抗受部として機能するように構成され、エネルギー吸収手段が抵抗受部に作用するように設けられた構成の木質壁体を備えた制振構造としても良い。
当該実施形態8に係る制振構造によれば、実施形態1の制振構造1と同様な効果が得られる。
【0046】
尚、上側の板状部材30又は下側の板状部材40として機能させる板状部材は、鋼板以外の金属板、あるいは、コンクリート板、木板、合成樹脂板等で構成してもよい。
また、エネルギー吸収手段は、上述したような粘性抵抗要素、又は、摩擦抵抗要素等であればよい。
【0047】
また、各実施形態では、2枚の木製部材20,20を接合して構成された木質パネルを使用した制振構造を例示したが、1枚の木製部材20に板状部材30及び板状部材40を設けて構成された木質パネルを用いた制振構造としてもよい。
【0048】
尚、木質パネルを現場に搬入して上階梁11又は床13に固定することにより、木質壁体2を構築できる。
例えば、実施形態1に係る制振構造1の木質壁体2を構築する場合、上述したような2枚の木製部材20,20の間に板状部材30及び板状部材40が接合された構成の木質パネルを工場にて製作して現場に搬入し、床13に設置された粘性体収容箱50内の粘性物質5中に板状部材40の抵抗受部4を挿入した後に、板状部材30の固定部3を上階梁11に固定することにより、木質壁体2を構築できる。
また、
図10に示したような制振構造1の木質壁体2を構築する場合においても、2枚の木製部材20,20の間に固定部3を備えた板状部材30が接合された構成の木質パネルを工場にて製作して現場に搬入し、現場にて木質壁体2を構築できる。
また、
図11に示したような制振構造1の木質壁体2を構築する場合、2枚の木製部材20,20と板状部材30及び板状部材40とが接合された構成の木質パネルを工場にて製作して現場に搬入し、抵抗体5Bを備えた鋼板等の固定板15を2枚の木製部材20,20に設置して床13に固定することにより、現場にて木質壁体2を構築できる。
あるいは、現場において、上階梁11から下方に延長するように設けられた固定部3となる鋼板等の板状部材、又は、床13から上方に延長するように設けられた固定部3となる鋼板等の板状部材に、木製部材20,20を接合するとともに、当該木製部材20,20に、抵抗受部4として機能する鋼板等の板状部材を接合することにより、木質パネル及び木質壁体2を構築するようにしてもよい。
【0049】
実施形態9
図12に示すように、実施形態9に係る制振構造1は、木質接合部材としての木質パネル2Bが建物の床13に固定状態に取付けられて構成された木質壁体2と、建物に力が加わった際に木質壁体2に伝達されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段として例えば
図10の実施形態6で説明した制振ダンパー5Aとを備える。
図12乃至
図17に示すように、木質パネル2Eは、一方の木製部材20と、他方の木製部材20と、一方の木製部材20と他方の木製部材20との間に配置されて揺動体9となる第1の板状部材90,90、及び、持ち出し部材として機能する第2の板状部材30(上側の板状部材30)とを備え、一方の木製部材20に形成された貫通孔21と揺動体9を構成する第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91,91と他方の木製部材20に形成された貫通孔21とに拡径軸70A(
図17参照)が嵌合状態に貫通されたことによって木製部材20,20同士が接合された構成である。
そして、木質壁体2は、第1の板状部材90,90が拡径軸70Aを用いた接合構造である第2連結部200によって一方の木製部材20及び他方の木製部材20に対して回転可能に接合されて構成された揺動体9を備え、当該揺動体9の上端部と持ち出し部材として機能する第2の板状部材30の下端部とが第1連結部100を介して回転可能に連結されたとともに、第2の板状部材30の上端部が固定部3として機能して建物の上階梁11に固定され、かつ、一方の木製部材20及び他方の木製部材20の下端20V,20V側が図外の固定手段を用いて建物の床13に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動するように構成され、そして、制振ダンパー5A,5Aが揺動体9の下端9A側に作用するように設けられた構成となっている。
尚、実施形態9に係る制振構造1の上、下、左、右、前、後は、
図13に示した方向と定義して説明する。
【0050】
言い換えれば、実施形態1に係る制振構造1は、揺動体9を構成する第1の板状部材90,90の上端部と第2の板状部材30の下端部とが第1連結部100を介して回転可能に連結されたとともに、一対の木製部材20,20と当該一対の木製部材20,20間に配置された第1の板状部材90,90とが第1連結部100と揺動体9の下端9Aとの間において第2連結部200を介して回転可能に連結された構成の木質パネル2Eを使用する制振構造1であって、当該揺動体9を備えた木質パネル2Eの第2の板状部材30の上端側である固定部3が上階梁11に固定されたとともに、一対の木製部材20,20の下端20V,20V側が建物の床13に固定されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動するように構成され、制振ダンパー5A,5Aが揺動体9の下端9A側に作用するように設けられた構成となっている。
【0051】
また、第2連結部200と第1連結部100との間の距離Aと第2連結部200と揺動体9の下端9Aとの間の距離Bとの関係は、距離A<距離Bとなるように設定されている。
尚、
図12に示すように、第2連結部200は、第1連結部100の中心と揺動体9の下端9Aとを結ぶ直線V上の位置に中心が位置されるように設けられ、そして、第2連結部200の中心と第1連結部100の中心との間の直線距離Aと、第2連結部200の中心と揺動体9の下端9Aとの間の直線距離Bとの関係を、直線距離A<直線距離Bとした。
【0052】
第2の板状部材(上側の板状部材)30は、例えばT字形状に形成された鋼板により構成され、T字の上端側である横延長部が固定部3として機能して溶接等の図外の固定手段によって上階梁11に固定され、T字の下端側と第1の板状部材90,90の上端部とが第1連結部100により連結される。
【0053】
揺動体9は、例えば上下方向に長い一定幅に形成された2枚の第1の板状部材90,90により構成される。当該第1の板状部材90は、例えば鋼板により形成される。
揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90の上部間で第2の板状部材30の下端部を挟み込んだ状態で、2枚の第1の板状部材90,90の上端部と第2の板状部材30の下端部とが第1連結部100により連結される。
また、揺動体9の下端9A側は、揺動体9が揺動した場合に床13に接触しないように、例えば第2連結部200の中心を回転中心とした円弧面に形成されている。
【0054】
制振ダンパー5Aは、揺動体9の下端9Aの左右側(揺動体9の揺動方向両側)の連結部9B,9Bに、それぞれ設けられる。
即ち、制振ダンパー5Aの一端(例えばシリンダー側端)を揺動体9の下端9A側及び床13のうちのいずれか一方に接続するとともに、制振ダンパー5Aの他端(例えばピストン側端)を揺動体9の下端9A側及び床13のうちの他方に接続すればよい。
例えば、制振ダンパー5Aの一端と床13に固定された取付部55とが連結され、制振ダンパー5Aの他端と揺動体9の下端9A側の連結部9Bとが連結されている。
【0055】
揺動体9の下端9Aの左右側(揺動体9の揺動方向両側)の連結部9B,9Bに、それぞれ連結される制振ダンパー5A,5Aは、
図12に示すように、軸線が、揺動体9の下端9Aが揺動する際の揺動軌跡9Sに沿って延長するような状態に設置すれば、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動する際において、制振ダンパー5Aのピストン等の可動体の可動ストロークの範囲が大きくなるので、制振ダンパー5Aの性能を十分に発揮させることができる。
例えば、
図12に示すように、床13に取付けられる制振ダンパー5Aの一端(例えばピストン側端)の取付位置を、揺動体9の下端9Aの左右側の連結部9Bに取付けられる制振ダンパー5Aの他端(例えばシリンダ側端)の取付位置よりも上方に位置させるために、床13に、制振ダンパー5Aの一端(例えばピストン側端)の取付部55を設けるようにすればよい。
【0056】
図12乃至
図15に示すように、木質パネル2Eは、第1の板状部材90,90を構成する例えば2枚の鋼板と、第2の板状部材30を構成する例えば鋼板と、左右の制振ダンパー5A,5Aを挟むように配置された2枚の木製板材20,20とが接合されて構成される。
【0057】
2枚の木製板材20,20は、それぞれ下端側が固定金具等の図外の固定手段によって床13に固定されている。
2枚の木製板材20,20の上端側は、上階梁11に固定されておらず、2枚の木製板材20,20の上端と上階梁11との間には間隔が形成されている。
例えば、
図14に示すように、上階梁11の下面に固定される固定基板19aと、前側の木製板材20の前面を形成する外側の板面25と平行に対向する前側ガイド板19fと、後側の木製板材20の後面を形成する外側の板面25と平行に対向する後側ガイド板19rと、を備えた構成の断面コ字状のガイドレール19を設けたことによって、木質壁体2がガイドレール19の前側ガイド板19f及び後側ガイド板19rの板面に沿って移動可能なように構成されている。
尚、ガイドレール19の固定基板19aの外面が溶接等の図外の固定手段によって上階梁11の下面に固定され、一方の木製部材20及び他方の木製部材20の上端面20t,20tよりも上方外側に突出する第2の板状部材30の突出部(T字の上端側である横延長部)が固定部3として機能して溶接等の図外の固定手段によってガイドレール19の固定基板19aの内面に固定されたことによって、第2の板状部材30がガイドレール19を介して上階梁13に固定される。
さらに、2枚の木製板材20,20の左右端側は、柱12に固定されておらず、2枚の木製板材20,20の左端面23と柱12との間、及び、2枚の木製板材20,20の右端面24と柱12との間には間隔が形成されている。
尚、木質壁体2の左端面23と柱12との間、木質壁体2の右端面24と柱12との間は、図外の適当な目隠し板で覆うようにすればよい。
【0058】
木質壁体2は、例えば、以下のように構築される。
まず、ガイドレール19を上階梁13に固定した後に、ガイドレール19の固定基板19aの内面に第2の板状部材30の固定部3を固定し、その後、第2の板状部材30の下端部と揺動体9を構成する第1の板状部材90,90の上端部とを第1連結部100を介して回転可能に連結する。
そして、揺動体9の下端9Aの左右側(揺動体9の揺動方向両側)の左右側の床13にそれぞれ取付部55を設置するとともに、揺動体9の連結部9Bと取付部55とに制振ダンパー5Aを取付ける。
そして、揺動体9及び制振ダンパー5A,5Aを前後から挟み込むように揺動体9及び制振ダンパー5A,5Aの前後に、一方の木製部材20と他方の木製部材20とを配置して、第1連結部100と揺動体9の下端9Aとの間において、これら一対の木製部材20,20と当該一対の木製部材20,20間に配置された第1の板状部材90,90とを第2連結部200を介して回転可能に連結するとともに、一対の木製部材20,20の下端20V,20V側を建物の床13に固定する。
以上により、木質壁体2が構築される。
【0059】
揺動体9の上端部と板状部材30とを回転可能に連結する第1連結部100は、例えば、
図16に示すような接合構造6Zにより構成される。
第1連結部100を構成する接合構造6Zは、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90の上端部の間に第2の板状部材30の下端部が配置されるとともに、第1の板状部材90と第2の板状部材30との間に板状のスペーサ60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した接合構造であって、2枚の第1の板状部材90,90に形成された貫通孔92,92と第2の板状部材30に形成された貫通孔31とスペーサ60,60に形成された貫通孔61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成とした。
尚、スペーサ60は、例えばゴム板等の緩衝材、木材、合成樹脂等により形成された板状部材を用いればよい。
【0060】
当該接合構造6Zにおいて使用される軸7は、例えば、鋼軸等の金属製の軸材71と軸材71の周囲を囲むように設けられた鋼管等の金属製の管72とを有した拡径軸70により構成した。
軸7は、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成される。
軸材71は、例えば、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90の前後の外側の板面95,95よりも突出する両端部にねじ65,65が形成された両端ねじ軸を用いる。
管72は、両端面が揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90の前後の外側の板面95,95よりも外側に突出しない長さのもの、例えば2枚の第1の板状部材90,90の前後の外側の板面95,95間の長さと同じ長さのものを用いることが好ましい。
また、ナット68と管72の端面との間には、スプリングワッシャ69を設けることが好ましい。
【0061】
また、第2の板状部材30に形成する貫通孔31及びスペーサ60,60に形成する貫通孔61,61は、揺動体9に連結された拡径軸70が揺動体9の揺動に伴って上下方向に移動できるように上下方向に長い長孔に形成される。
また、拡径軸70が揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90に形成された貫通孔92,92を嵌合状態で貫通するように設けられる。
当該第1連結部100を構成する接合構造6Zによれば、揺動体9の上端部と第2の板状部材30とを回転可能に連結するとともに、揺動体9の揺動に伴って拡径軸70が上下方向に移動できるように構成したので、第2の板状部材30、及び、揺動体9への負担を小さくでき、第2の板状部材30、及び、揺動体9が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0062】
また、一対の木製部材20,20と揺動体9とを回転可能に連結する第2連結部200は、例えば
図17に示すような、接合構造6Aにより構成される。
即ち、
図6に示した実施形態2と同じ拡径軸70Aを使用した接合構造6Aにより第2連結部200を構成した。
尚、
図17において、
図6に示した実施形態2の接合構造6Aを構成する部材と同一又は相当する部材には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
当該接合構造6Aは、木質壁体2を構成する2枚の木製板材20,20の間に揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90が配置されるとともに、木製板材20と第1の板状部材90との間、及び、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90間には板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した構造である。
当該接合構造6Aは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91,91とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填されたグラウト等の充填材73とを備えた拡径軸70Aを使用したことにより、拡径軸70Aの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Aから木製板材20,20,第1の板状部材90,90,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Aとした。
【0064】
当該接合構造6Aによれば、軸7として拡径軸70Aを用いたことにより、軸通し貫通孔の内周面及び拡径軸70Aの外周面の曲率を小さくできるので、拡径軸70Aの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、木製板材20,20、及び、揺動体9への負担を小さくでき、木製板材20,20、及び、揺動体9が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
特に、当該接合構造6Aによれば、地震時等において、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21の内周面に加わる支圧応力を軽減できるため、木製板材20に亀裂等の損傷がより発生し難いように、木製板材20,20を好適に接合できる。
【0065】
実施形態9に係る制振構造1では、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されているため、地震時等において当該制振構造1を備えた建物に外力が加わった場合、上階梁11側の水平方向への変動量と床13側の水平方向への変動量との差、即ち、層間変形に応じて第1連結部100が水平方向に移動するのに伴って、第2連結部200を回転中心として揺動体9を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体9の下端9A側の連結部9B,9Bを介してエネルギー吸収手段としての制振ダンパー5A,5Aに伝達されて当該制振ダンパー5A,5Aにより吸収される。
【0066】
実施形態9に係る制振構造1によれば、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されているため、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部200を回転中心として揺動体9を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体9の下端9A側の連結部9B,9Bを介してエネルギー吸収手段としての制振ダンパー5A,5Aに伝達されて当該制振ダンパー5A,5Aにより吸収される。
つまり、実施形態9に係る制振構造1によれば、建物に加わるエネルギーが、揺動体9の揺動動作を介してエネルギー吸収手段としての制振ダンパー5A,5Aに伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造1となる。
【0067】
また、実施形態9においては、第2連結部200と第1連結部100との間の距離Aと、第2連結部200と揺動体9の下端9Aとの間の距離Bとの関係を、距離A<距離Bになるよう設定したので、第2連結部200が支点、第1連結部100が作用点、揺動体9の下端9Aが力点となるてこの原理が成立する。
てこの原理では、「大きな力×小さな変位(作用点側)=小さな力×大きな変位(力点側)」という関係が成り立つので、力点となる下端9A側には、例えば最大減衰力の小さなオイルダンパーを使用することで、第2連結部200を回転中心として揺動体9を揺動させようとするエネルギーを吸収できるようになる。
即ち、実施形態9によれば、距離A<距離Bになるよう設定して、揺動体9におけるエネルギー吸収手段側の変位及び速度が増幅される構造としたため、エネルギーをより効率的に吸収できるようになり、エネルギー吸収効果に優れた制振構造1を提供できる。
【0068】
実施形態10
一対の木製部材20,20と揺動体9とを連結する第2連結部200は、例えば、
図18に示すような、接合構造6Bにより構成してもよい。
即ち、
図7に示した実施形態3と同じ拡径軸70Bを使用した接合構造6Bにより第2連結部200を構成した。
尚、
図18において、
図7に示した実施形態3の接合構造6Bを構成する部材と同一又は相当する部材には、同一符号を付し、その説明を省略する。
即ち、当該接合構造6Bは、2枚の木製板材20,20の間に揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90が配置されるとともに、木製板材20と第1の板状部材90との間、及び、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90間には板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した構造である。
当該接合構造6Bは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と2枚の第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91,91とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填された軸材側充填材73と、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材74とを備えた拡径軸70Bを使用したことにより、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Bから木製板材20,20,第1の板状部材90,90,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Bとした。
【0069】
実施形態10の接合構造6Bによれば、実施形態9の拡径軸70Aの軸径よりもさらに大きい軸径の拡径軸70Bとなるため、拡径軸70Bの外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力をさらに小さくできるので、木製板材20,20、及び、揺動体9への負担をより小さくでき、木製板材20,20、及び、揺動体9がより損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0070】
実施形態11
一対の木製部材20,20と揺動体9とを連結する第2連結部200は、例えば、
図19に示すような、接合構造6により構成してもよい。
即ち、
図5に示した実施形態1と同じ拡径軸70を使用した接合構造6により第2連結部200を構成した。
尚、
図19において、
図5に示した実施形態1の接合構造6を構成する部材と同一又は相当する部材には、同一符号を付し、その説明を省略する。
当該接合構造6は、2枚の木製板材20,20の間に揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90が配置されるとともに、木製板材20と第1の板状部材90との間、及び、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90間には板状のスペーサ60,60,60が配置されて、これら各板状部材の板面同士を接触させた状態でこれら各板状部材を接合した構造である。
当該接合構造6は、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91,91とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72とを備え、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成された拡径軸70を使用したことにより、拡径軸70Cの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70から木製板材20,20,第1の板状部材90,90,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6とした。
【0071】
実施形態11の接合構造6によれば、軸材71の径よりも大径の拡径軸70を用いたので、拡径軸70の外周面と軸通し貫通孔の内周面との接触により当該軸通し貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。従って、木製板材20,20、及び、揺動体9への負担を小さくでき、木製板材20,20、及び、揺動体9が損傷しにくい制振構造1を提供できる。
【0072】
実施形態12
一対の木製部材20,20と揺動体9とを連結する第2連結部200は、例えば
図20に示すような、接合構造6Cにより構成されていてもよい。
即ち、
図8に示した実施形態4と同じ軸7を使用した接合構造6Cにより第2連結部200を構成した。
尚、
図20において、
図8に示した実施形態4の接合構造6Cを構成する部材と同一又は相当する部材には、同一符号を付し、その説明を省略する。
当該接合構造6Cは、2枚の木製板材20,20に形成された貫通孔21,21と第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91,91とスペーサ60,60,60に形成された貫通孔61,61,61とが連続するように構成された軸通し貫通孔と、当該軸通し貫通孔を嵌合状態で貫通するように設けられた軸7と、軸7の両端に形成されたねじ65,65に締結されたナット68,68とを備えた構成である。
そして、軸通し貫通孔に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として木製板材20よりもヤング係数が大きい鋼軸等の金属製の軸材71を使用したことにより、拡径軸70Cの外周面と軸通し貫通孔の内周面とが全面接触して、拡径軸70Cから木製板材20,20,第1の板状部材90,90,スペーサ60,60,60のすべてに力が伝達される構成の接合構造6Cとした。
即ち、木製板材20,20に形成された貫通孔21と揺動体9を構成する第1の板状部材90,90に形成された貫通孔91とに木質壁体を構成する木製板材20よりもヤング係数が大きい軸7としての軸材71が嵌合状態に貫通されたことによって木質壁体2と揺動体9とが接合された接合構造により構成され、軸材71から木質壁体2を構成する木製板材20,20及び揺動体9を構成する第1の板状部材90,90の両方に力が伝達されるように構成された接合構造6Cとした。
【0073】
実施形態12の接合構造6Cによれば、上述した実施形態4と同様な効果が得らえる。
また、実施形態12の接合構造6Cは、
図10に示した実施形態5に係る接合構造6Cの製造方法を用いて製造することが好ましい。
【0074】
実施形態13
揺動体9を備えた制振構造1において、
図21に示すように、エネルギー吸収手段として、
図1の実施形態1で説明したオイル等の粘性物質5を用いるようにしてもよい。
この場合、揺動体9の下端4A側には、実施形態1で説明した抵抗を増やす手段としての図外の細長孔(スリット)が設けられていても良いし、設けられていなくてもよい。
【0075】
実施形態14
揺動体9を備えた制振構造1において、
図11の実施形態7で説明した構成と同じように、床13に固定されて上方に延長するように設けられた鋼板等の固定板15の両方の板面16,16に、エネルギー吸収手段5としてのゴム等の摩擦抵抗体や粘性抵抗体等の抵抗体5B,5Bを設け、これら抵抗体5B,5Bを、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90の互いに対向する内面に作用させるような構成としてもよい。
【0076】
実施形態13,14に係る制振構造1によれば、実施形態9で説明した制振構造1と同様の効果が得られる。
【0077】
実施形態15
実施形態9,13,14に係る制振構造1の構成を上下逆にした構成の制振構造としてもよい。
即ち、揺動体9と、揺動体9の揺動時のエネルギーを吸収するエネルギー吸収手段とを備え、揺動体9の下端部が建物の床13に固定された持ち出し部材として機能する板状部材に第1連結部100を介して回転可能に連結されたとともに、建物の上階梁11に固定された一対の木製部材20,20と揺動体9とが第1連結部100と揺動体9の上端との間において第2連結部200を介して回転可能に連結されたことによって、建物に力が加わった場合に、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動するように構成され、エネルギー吸収手段が揺動体9の上端部に作用するように設けられた構成の制振構造としてもよい。
当該実施形態15に係る制振構造であっても、実施形態9,13,14に係る制振構造1と同様な効果が得られる。
【0078】
実施形態16
尚、上記各実施形態9乃至実施形態15では、第2連結部200と第1連結部100との間の距離Aと、第2連結部200と揺動体9の下端9Aとの間の距離Bとの関係が、距離A<距離Bに設定された制振構造を例示したが、当該条件を満たさずとも、揺動体9が揺動可能に設けられた制振構造であればよい。
【0079】
即ち、上記各実施形態9乃至実施形態15では、距離A<距離Bに設定した例を示したが、距離A=距離Bに設定されていても良い。
この場合でも、揺動体9が第2連結部200を回転中心として揺動可能に構成されていることにより、建物に外力が加わった場合において層間変形量が小さくても、第2連結部200を回転中心として揺動体9を揺動させようとするエネルギーが発生し、当該エネルギーが揺動体9の下端9A側の連結部9B,9Bを介してエネルギー吸収手段(例えば制振ダンパー5A,5A)に伝達されて当該エネルギー吸収手段により吸収される。
【0080】
即ち、距離A=距離Bに設定された場合であっても、建物に加わったエネルギーが、揺動体9の揺動動作を介してエネルギー吸収手段に伝達されるため、建物に加わるエネルギーを効率的に吸収でき、エネルギー吸収効果に優れた制振構造となる。
【0081】
また、揺動体9を構成する2枚の第1の板状部材90,90や第2の板状部材30は、鋼板以外の金属板、あるいは、コンクリート板、木板、合成樹脂板等で構成してもよい。
また、エネルギー吸収手段は、上述したような粘性抵抗要素、又は、摩擦抵抗要素等であればよい。
【0082】
尚、各実施形態9乃至実施形態16の制振構造1においては、木質パネルを現場に搬入して上階梁11又は床13に固定することにより、木質壁体2を構築することも可能である。
例えば、実施形態9に係る制振構造1の木質壁体2を構築する場合、上述したような2枚の木製部材20,20の間に板状部材30及び揺動体9が接合された構成の木質パネルを工場にて製作して現場に搬入して、板状部材30の固定部3を上階梁11に固定することにより、木質壁体2を構築できる。尚、この場合、例えば、一方の木製部材20に、取付部55、制振ダンパー5Aを設置するための作業用の切欠きを設けるようにすればよい。
また、
図21に示したような制振構造1の木質壁体2を構築する場合においても、例えば、一方の木製部材20に、床13に設置された粘性体収容箱50を避ける切欠きを設けるようにすればよい。
【0083】
また、各実施形態9乃至実施形態16においては、2枚の木製部材20,20及び2枚の第1の板状部材90,90を接合して構成された木質パネルを使用した制振構造を例示したが、1枚の木製部材20と揺動体を構成する1枚の第1の板状部材90とを接合して構成された木質パネルを用いた制振構造としてもよい。
【0084】
尚、上階梁11は、鉄骨梁、木梁、鉄筋コンクリート梁のいずれであってもよい。
また、床13は、鉄筋コンクリート床、鉄骨床、木造床のいずれであってもよい。
また、木製部材20,20に亀裂等の損傷が発生し難いように、上述したスペーサ60を用いることが好ましいが、当該スペーサ60は用いなくてもよい。
【0085】
実施形態17
本発明に係る木質接合部材としての木質パネルは、
図22,
図23に示すように、一方の木製部材20と他方の木製部材20とに形成された貫通孔21,21に軸7を嵌合状態で貫通させた接合構造8により板材20,20同士が接合された木質パネル2Xであって、貫通孔21,21に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、例えば鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72とを備え、軸材71が管72の管孔に嵌合状態に貫通して嵌め込まれて形成された拡径軸70を使用した構成の木質パネル2Xであってもよい。
【0086】
実施形態18
本発明に係る木質接合部材としての木質パネルは、
図24に示すように、一方の木製部材20と他方の木製部材20とに形成された貫通孔21,21に軸7を嵌合状態で貫通させた接合構造8Aにより板材20,20同士が接合された木質パネル2Yであって、貫通孔21,21に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、例えば鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填されたグラウト等の充填材73とを備えた拡径軸70Aを使用した構成の木質パネル2Yであってもよい。
【0087】
実施形態19
本発明に係る木質接合部材としての木質パネルは、
図25に示すように、一方の木製部材20と他方の木製部材20とに形成された貫通孔21,21に軸7を嵌合状態で貫通させた接合構造8Aにより板材20,20同士が接合された木質パネル2Zであって、貫通孔21,21に嵌合状態で貫通するように設けられた軸7として、例えば鋼軸等の金属製の軸材71と、軸材71の周囲を囲むように設けられて木製部材20よりもヤング係数が大きい鋼管等の金属製の管72と、当該軸材71の外周面と管72の内周面との間に充填された軸材側充填材73と、管72の外周面と軸通し貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材74とを備えた拡径軸70Bを使用した構成の木質パネル2Zであってもよい。
【0088】
実施形態17の木質パネル2X、実施形態18の木質パネル2Y、実施形態19の木質パネル2Zによれば、一方の木製部材20と他方の木製部材20とに形成された貫通孔21,21の内周面及び拡径軸70,70A,70Bの外周面の曲率をより小さくできるので、拡径軸70,70A,70Bの外周面と貫通孔21,21の内周面との接触により当該貫通孔21,21の内周面に作用する支圧応力をより小さくできる。
従って、木製部材20の貫通孔21の変形や木製部材20の損傷等の抑制効果に優れ、木製部材20の接合部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の木質パネル(木質接合部材)を提供できるようになる。
【0089】
実施形態20
上述した各木質パネルにおいて、木製部材20とスペーサ60との接触面、板状部材とスペーサ60との接触面、木製部材20と木製部材20との接触面を、凹凸面に形成すれば、各部材相互間の位置ずれ防止効果が向上して、貫通孔相互間の位置ずれ防止効果が向上するので、鋼板の貫通孔と拡径軸材との接触部の負担軽減効果、及び、各部材の各貫通孔の内周面に作用する支圧応力軽減効果を向上できる。
【0090】
尚、上述した「外周面と内周面との全面接触」とは、完全な全面接触だけでなく、例えば、外周面の一部又は内周面の一部に窪み部分等が存在して、当該一部の窪み部分等が接触していないような場合も含む。
【符号の説明】
【0091】
1 制振構造、2 木質壁体、2A~2H,
2X~2Z 木質パネル(木質接合部材)、3 固定部(突出部)、
4 抵抗受部(突出部)、5 粘性物質(エネルギー吸収手段)、
5A 制振ダンパー(エネルギー吸収手段)、6,6A,6B,6C 接合構造、
7 軸、8,8A,8B 接合構造、9 揺動体、11 上階梁、13 床、
20 木製部材、21 貫通孔、30 上側の板状部材、31 貫通孔、
40 下側の板状部材、70,70A,70B 拡径軸、71 軸材、
72 管、73 軸材側充填材、74 貫通孔側充填材、90 板状部材、
100 第1連結部、200 第2連結部。