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  • 特許-部材連結構造 図1
  • 特許-部材連結構造 図2
  • 特許-部材連結構造 図3
  • 特許-部材連結構造 図4
  • 特許-部材連結構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】部材連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/38 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
E04B1/38 400Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020022764
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021127606
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-313946(JP,A)
【文献】実開平06-020609(JP,U)
【文献】実開平01-100803(JP,U)
【文献】特開2005-188722(JP,A)
【文献】特開2009-215786(JP,A)
【文献】特開2018-012934(JP,A)
【文献】特開2010-121289(JP,A)
【文献】特開2007-039888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0025217(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102251588(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/26
F16B 5/00
F16B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材に設けられた貫通孔と他方の部材に設けられた貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって部材同士が連結された部材連結構造であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と、当該軸材の外周面と管の内周面との間に充填された充填材とを備えて、各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくするための拡径軸であり、充填材がコンクリート又はグラウトであることを特徴とする部材連結構造。
【請求項2】
一方の部材に設けられた貫通孔と他方の部材に設けられた貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって部材同士が連結された部材連結構造であって、
軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と、当該軸材の外周面と管の内周面との間に充填された軸材側充填材と、管の外周面と貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材とを備えて、各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくするための拡径軸であり、軸材側充填材及び貫通孔側充填材がコンクリート又はグラウトであることを特徴とする部材連結構造。
【請求項3】
部材の貫通孔と接触する拡径軸の外周部を形成する材料のヤング係数は、部材のヤング係数よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の部材連結構造。
【請求項4】
拡径軸の外径寸法が、軸材の外径寸法の数倍であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の部材連結構造。
【請求項5】
一方の部材と他方の部材との接触面が、凹凸面であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の部材連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の部材に設けられた貫通孔と他方の部材に設けられた貫通孔とに軸材が嵌合状態に貫通されたことによって部材同士が連結された部材連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の部材に設けられた貫通孔と他方の部材に設けられた貫通孔とにボルト等の軸材を貫通させて部材同士が連結された部材連結構造が知られている(特許文献1参照)。
当該部材連結構造では、軸材が部材の貫通孔の内周面に接触することにより当該部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力が大きくなる。
また、木質構造材に設けられた貫通孔にドリフトピン又はボルト等の軸材を貫通させる構造において、軸材と貫通孔の内周面との間に、木質構造材と同質の高強度木材製の補強材を設けて補強した部材連結構造が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-45559号公報
【文献】特開2009-215786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の構造においても、軸材が高強度木材製の補強材の内周面と接触することにより当該補強材の内周面に作用する支圧応力が大きくなることには変わりはなく、当該補強材の変形や損傷等が生じ易くなり、当該部材連結構造の連結部分の強度、剛性が損なわれてしまうという課題は解消されない。
即ち、軸材の径が小さくなればなるほど、部材に形成された貫通孔の内周面と軸材の外周面との接触面の曲率が大きくなるので、軸材の外周面と木製部材に形成された貫通孔との接触により部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力が大きくなって、部材の貫通孔の変形や部材の損傷等が生じ易くなるため、部材の連結部分における強度、剛性が損なわれてしまう可能性がある。
本発明は、軸が接触する部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできる部材連結構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る部材連結構造は、一方の部材に設けられた貫通孔と他方の部材に設けられた貫通孔とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって部材同士が連結された部材連結構造であって、軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と、当該軸材の外周面と管の内周面との間に充填された充填材とを備えて、各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくするための拡径軸であり、充填材がコンクリート又はグラウトであるか、又は、軸が、軸材と、軸材の周囲を囲むように設けられた管と、当該軸材の外周面と管の内周面との間に充填された軸材側充填材と、管の外周面と貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材とを備えて、各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくするための拡径軸であり、軸材側充填材及び貫通孔側充填材がコンクリート又はグラウトであることを特徴とするので、拡径軸が接触する部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくでき、部材の貫通孔の変形や部材の損傷等の抑制効果に優れ、部材の連結部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の部材連結構造を提供できる。
また、部材の貫通孔と接触する拡径軸の外周部を形成する材料のヤング係数は、部材のヤング係数よりも大きいことを特徴とするので、拡径軸が接触する部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできるとともに、各部材と拡径軸との間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになる。
また、拡径軸の外径寸法が、軸材の外径寸法の数倍であることを特徴とするので、拡径軸が接触する部材の貫通孔の内周面に作用する支圧応力をより小さくできる。
また、一方の部材と他方の部材との接触面が、凹凸面であることを特徴とするので、各部材相互間の位置ずれ防止効果が向上して、貫通相互間の位置ずれ防止効果が向上するので、各部材の各貫通孔の内周面に作用する支圧応力軽減効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1に係る部材連結構造を示す断面図。
図2】実施形態1に係る部材連結構造を示す断面図。
図3】実施形態1に係る部材連結構造を示す断面図。
図4】実施形態2に係る部材連結構造を示す断面図。
図5】実施形態3に係る部材連結構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図3に示すように、実施形態1に係る部材連結構造は、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1と他方の部材Bに設けられた貫通孔H2とに軸が嵌合状態に貫通されたことによって部材A,B同士が連結された部材連結構造であって、軸が、軸材C1と、軸材C1の周囲を囲むように設けられた管C2とを備えた拡径軸Cである部材連結構造とした。
【0008】
図1は、例えば、一方の部材Aを他方の部材Bで挟み込むようにして、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1と他方の部材Bに設けられた貫通孔H2とに拡径軸Cを嵌合状態に貫通させるとともに、軸材C1としての両端ねじ軸の両端のねじにそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して、一方の部材Aと他方の部材Bとを連結した部材連結構造である。
【0009】
図2は、例えば、一方の部材Aに形成された溝A1に他方の部材Bを挿入して、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1と他方の部材Bに設けられた貫通孔H2とに拡径軸Cを嵌合状態に貫通させるとともに、軸材C1としての両端ねじ軸の両端のねじにそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して、一方の部材Aと他方の部材Bとを連結した部材連結構造である。
【0010】
図3は、例えば、一方の部材Aと他方の部材Bとを隣り合わせた状態にして、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1と他方の部材Bに設けられた貫通孔H2とに拡径軸Cを嵌合状態に貫通させるとともに、軸材C1としての両端ねじ軸の両端のねじにそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して、一方の部材Aと他方の部材Bとを連結した部材連結構造である。
【0011】
実施形態1に係る部材連結構造によれば、軸材C1の周囲を囲むように管C2を取付けた拡径軸C、即ち、軸材C1を管C2内に例えば嵌合状態で貫通させた拡径軸Cを作成するとともに、当該拡径軸Cの径に対応した径に形成された一方の部材Aの貫通孔H1及び他方の部材Bの貫通孔H2に当該拡径軸Cを嵌合状態で貫通させて部材A,B同士を連結したので、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔H1,H2の内周面と拡径軸Cの外周面Dとの接触面の曲率を小さくできるため、拡径軸Cの外周面Dと各貫通孔H1,H2の内周面との接触により当該各貫通孔H1,H2の内周面に作用する支圧応力を小さくできる。即ち、拡径軸Cが各貫通孔H1,H2の内周面にめり込み難くなる。
従って、部材A;Bの貫通孔H1,H2の変形や部材A;Bの損傷等の抑制効果に優れ、部材A;Bの連結部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の部材連結構造を提供できる。
【0012】
実施形態2
図4に示すように、実施形態2に係る部材連結構造は、拡径軸として、軸材C1と、軸材C1の周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材C1の外周面と管C2の内周面との間に充填されたコンクリートやグラウト等の充填材C3とで構成された拡径軸CAを用いるようにした。充填材C3は、例えば座金E1に形成された図外の充填口を介して充填すればよい。
【0013】
尚、図4では、一方の部材Aと他方の部材Bとを隣り合わせた状態で連結した部材連結構造を例示したが、実施形態2の拡径軸CAを用いる形態は、図1に示したように、一方の部材Aを他方の部材Bで挟み込むようにして連結した部材連結構造や、図2に示したように、一方の部材Aに形成された溝A1に他方の部材Bを挿入して連結した部材連結構造にも適用できることは言うまでもない。
【0014】
実施形態2に係る部材連結構造によれば、拡径軸として、軸材C1と、軸材C1の周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材C1の外周面と管C2の内周面との間に充填されたコンクリートやグラウト等の充填材C3とで構成された拡径軸CAを用いたので、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔H1A,H2Aの内周面と拡径軸CAの外周面DAとの接触面の曲率を実施形態1よりもさらに小さくできるようになるため、拡径軸CAの外周面DAと各貫通孔H1A,H2Aの内周面との接触により当該各貫通孔H1A,H2Aの内周面に作用する支圧応力を実施形態1よりもさらに小さくできる。
従って、実施形態1よりもさらに部材A;Bの貫通孔H1A,H2Aの変形や部材A;Bの損傷等の抑制効果に優れ、部材A;Bの連結部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の部材連結構造を提供できる。
【0015】
実施形態3
図5に示すように、実施形態3に係る部材連結構造は、拡径軸として、軸材C1と、軸材C1の周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材C1の外周面と管C2の内周面との間に充填された軸材側充填材C3と、管C2の外周面と貫通孔H1,H2の内周面との間に充填された貫通孔側充填材C4とで構成された拡径軸CBを用いるようにした。
軸材側充填材C3及び貫通孔側充填材C4は、例えばコンクリートやグラウト等の充填材を用いればよい。軸材側充填材C3及び貫通孔側充填材C4は、例えば座金E1に形成された図外の充填口を介して充填すればよい。
【0016】
尚、図5では、一方の部材Aと他方の部材Bとを隣り合わせた状態で連結した部材連結構造を例示したが、実施形態3の拡径軸CBを用いる形態は、図1に示したように、一方の部材Aを他方の部材Bで挟み込むようにして連結した部材連結構造や、図2に示したように、一方の部材Aに形成された溝A1に他方の部材Bを挿入して連結した部材連結構造にも適用できることは言うまでもない。
【0017】
実施形態3に係る部材連結構造によれば、拡径軸として、軸材C1と、軸材C1の周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材C1の外周面と管C2の内周面との間に充填された軸材側充填材C3と、管の外周面と貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材C4とで構成された拡径軸CBを用いたので、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔H1B,H2Bの内周面と拡径軸CBの外周面DBとの接触面の曲率を実施形態2よりもさらに小さくできるようになる。
よって、拡径軸CBの外周面DBと各貫通孔H1B,H2Bの内周面との接触により当該各貫通孔H1B,H2Bの内周面に作用する支圧応力を実施形態2よりもさらに小さくできる。
従って、実施形態2よりもさらに部材A;Bの貫通孔H1B,H2Bの変形や部材A;Bの損傷等の抑制効果に優れ、部材A;Bの連結部分における強度、剛性が損なわれ難い構成の部材連結構造を提供できる。
【0018】
実施形態4
各部材A,Bの貫通孔と接触する拡径軸の外周部を形成する材料として、ヤング係数が部材A又は部材Bのヤング係数よりも大きい材料を用いるようにした。
尚、実施形態4における拡径軸の外周部は、実施形態1の拡径軸Cの場合は管C2であり、実施形態2の拡径軸CAの場合は管C2であり、実施形態3の拡径軸CBの場合は貫通孔側充填材C4である。
【0019】
実施形態4によれば、拡径軸の外周面と各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力を小さくできて、部材A;Bの貫通孔の変形や部材A;Bの損傷等の抑制効果に優れ、部材A;Bの連結部分における強度、剛性が損なわれ難い構成で、かつ、各部材A,Bと拡径軸Cとの間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになる部材連結構造を提供できる。
【0020】
実施形態5
拡径軸の外径寸法を、軸材C1の外径寸法の数倍、例えば、1.5倍以上(例えば1.5倍~3倍程度)に設定することにより、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔の内周面と拡径軸の外周面との接触面の曲率を小さくできるようになるため、拡径軸の外周面と各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力をより小さくできる。
【0021】
実施形態6
一方の部材Aと他方の部材Bとの接触面を、凹凸面に形成すれば、各部材A,B相互間の位置ずれ防止効果が向上して、貫通相互間の位置ずれ防止効果が向上するので、各部材A,Bの各貫通孔の内周面に作用する支圧応力軽減効果を向上できる。
【0022】
尚、一方の部材A及び他方の部材Bの材料、軸材C1及び管C2の材料は、特に限定されず、当該一方の部材A、他方の部材B、軸材C1、管C2は、木部材、金属部材、樹脂部材等で構成すればよい。
具体的には、例えば、一方の部材Aを木製部材とし、他方の部材Bを金属部材とし、軸材C1及び管C2を金属部材としたり、あるいは、一方の部材A及び他方の部材Bを木製部材とし、軸材C1及び管C2を金属部材とすればよい。
【0023】
また、管C2は、各部材A,Bの各貫通孔を貫通して両端が各部材の外面よりも外側に突出しないで各部材の外面と同一平面上に位置されるような管長のものを用いることが好ましい。
また、軸材C1としては、両端ねじ軸の代わりに、ボルト又はドリフトピン等の軸材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
A 一方の部材、B 他方の部材、C,CA,CB 拡径軸、C1 軸材、C2 管、
C3 充填材又は軸材側充填材、C4 貫通孔側充填材、
D,DA,DB 拡径軸の外周面、
H1,H2,H1A,H2A,H1B,H2B 貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5