(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】部材連結構造、及び、部材連結構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/38 20060101AFI20231213BHJP
【FI】
E04B1/38 400Z
(21)【出願番号】P 2020022765
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】増子 寛
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真理恵
(72)【発明者】
【氏名】中里 太亮
(72)【発明者】
【氏名】前川 利雄
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016807(JP,A)
【文献】実開平02-103402(JP,U)
【文献】特開2013-014932(JP,A)
【文献】特開2000-129798(JP,A)
【文献】特開2005-188722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0025217(US,A1)
【文献】実開平03-006105(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/26
F16B 5/00
F16B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい軸材を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、
一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、軸材は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、
軸材が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、軸材の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、軸材の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、軸材から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とする部材連結構造。
【請求項2】
一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい拡径軸を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、
一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、拡径軸は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、
拡径軸は、軸材と、当該軸材の周囲を囲むように設けられた管とを備え、
拡径軸が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、拡径軸の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、拡径軸の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とす
る部材連結構造。
【請求項3】
軸材の外周面と管の内周面との間に充填材を備え、充填材がコンクリート又はグラウトであることを特徴とする請求項
2に記載の部材連結構造。
【請求項4】
一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい拡径軸を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、
一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、拡径軸は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、
拡径軸は、軸材と、当該軸材の周囲を囲むように設けられた管と、軸材の外周面と管の内周面との間に充填された軸材側充填材と、管の外周面と一方の貫通孔の内周面及び他方の貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材とを備え、
軸材側充填材及び貫通孔側充填材がコンクリート又はグラウトであり、
拡径軸が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、拡径軸の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、拡径軸の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とす
る部材連結構造。
【請求項5】
一方の部材と他方の部材との接触面が、凹凸面であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の部材連結構造。
【請求項6】
一方の部材が木部材であり、他方の部材が金属部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の部材連結構造。
【請求項7】
請求項1に記載の部材連結構造の製造方法であって、
外径が一方の貫通孔の径よりも大きい軸材を、一方の貫通孔に貫通させるとともに他方の貫通孔に貫通させることにより、軸材の外周面と一方の貫通孔の内周面とを
全面接触させるとともに、軸材の外周面と他方の貫通孔の内周面とを
全面接触させたことを特徴とする部材連結構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とに一方の部材よりもヤング係数が大きい軸材を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
一方の部材としての木部材に形成された貫通孔(接合孔)と当該一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材としての金属部材(金属接合プレート)に形成された貫通孔(接合孔)とにドリフトピンやボルト等の軸材を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の部材連結構造において、軸材としてドリフトピンを用いるドリフトピン工法では、一般的に、ドリフトピンを金属部材(金属接合プレート)に形成された貫通孔に強嵌合させることにより、金属製のドリフトピンと金属部材とを強固に結合する一方で、ドリフトピンを貫通孔に貫通させ易くするために、木部材に形成する貫通孔の径を金属部材に形成する貫通孔の径よりも若干大きくするようにしている。
即ち、従来の部材連結構造においては、木部材よりもヤング係数が大きい金属部材に形成された貫通孔と金属製の軸材との接触部での結合を優先しており、木部材に形成された貫通孔の内周面と軸材の外周面との接触による力の伝達が行われにくい構造となっている。
つまり、木部材よりもヤング係数が大きい金属部材の貫通孔と金属製の軸材との接触部に力が集中する構造となっているため、金属部材の負担が大きくなってしまう。
上述したように、一方の部材(木部材)に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材(金属部材)に設けられた他方の貫通孔とに一方の部材よりもヤング係数が大きい軸材(金属軸材)を貫通させて部材同士が連結された従来の部材連結構造においては、一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔と軸材との接触部に力が集中する一方で、一方の部材に設けられた一方の貫通孔の内周面と軸材の外周面との接触による力の伝達が行われにくい構造となっているため、他方の部材の負担が大きくなってしまうという課題があった。
本発明は、一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とに軸材を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造において、一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材の負担を軽減できるようにした部材連結構造等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る部材連結構造は、一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい軸材を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、軸材は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、軸材が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、軸材の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、軸材の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、軸材から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とする。
本発明に係る部材連結構造によれば、軸材から一方の部材及び他方の部材の両方の部材に力が伝達されるため、他方の部材の負担を軽減できる部材連結構造を提供できる。
また、一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい拡径軸を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、拡径軸は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、拡径軸は、軸材と、当該軸材の周囲を囲むように設けられた管とを備え、拡径軸が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、拡径軸の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、拡径軸の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とするので、拡径軸が各貫通孔の内周面に接触することにより当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力が軽減する。従って、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたとともに、一方の部材及び他方の部材の負担を軽減でき、しかも、強度、剛性の高い部材連結構造を提供できる。
また、軸材の外周面と管の内周面との間に充填材を備え、充填材がコンクリート又はグラウトであることを特徴とするので、一方の部材及び他方の部材に設けられた各貫通孔の内周面と拡径軸の外周面との接触面の曲率をさらに小さくできるようになるため、拡径軸の外周面と各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力をさらに小さくできる。従って、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されるとともに、一方の部材及び他方の部材の負担をより軽減でき、さらに、より強度、剛性の高い部材連結構造を提供できるようになる。
また、一方の部材に設けられた一方の貫通孔と一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材に設けられた他方の貫通孔とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい拡径軸を貫通させて部材同士が連結された構成の部材連結構造であって、一方の貫通孔の径は他方の貫通孔の径よりも小さく形成されて、かつ、拡径軸は外径が一方の貫通孔の径よりも大きく形成され、拡径軸は、軸材と、当該軸材の周囲を囲むように設けられた管と、軸材の外周面と管の内周面との間に充填された軸材側充填材と、管の外周面と一方の貫通孔の内周面及び他方の貫通孔の内周面との間に充填された貫通孔側充填材とを備え、軸材側充填材及び貫通孔側充填材がコンクリート又はグラウトであり、拡径軸が、一方の貫通孔を貫通したとともに他方の貫通孔を貫通して、拡径軸の外周面と一方の貫通孔の内周面とが全面接触したとともに、拡径軸の外周面と他方の貫通孔の内周面とが全面接触したことにより、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されたことを特徴とするので、拡径軸の外周面と各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力をさらに小さくできる。従って、拡径軸から一方の部材及び他方の部材の両方に力が伝達されるように構成されるとともに、一方の部材及び他方の部材の負担をより軽減でき、さらに、より強度、剛性の高い部材連結構造を提供できるようになる。
また、一方の部材と他方の部材との接触面が、凹凸面であるので、各部材相互間の位置ずれ防止効果が向上して、貫通孔相互間の位置ずれ防止効果が向上するので、金属部材の貫通孔と軸材との接触部の負担軽減効果、及び、各部材の各貫通孔の内周面に作用する支圧応力軽減効果を向上できる。
また、一方の部材が木部材であり、他方の部材が金属部材であることを特徴とするので、金属部材の負担を軽減できる部材連結構造を提供できる。
本発明に係る上述した部材連結構造の製造方法は、外径が一方の貫通孔の径よりも大きい軸材を、一方の貫通孔に貫通させるとともに他方の貫通孔に貫通させることにより、軸材の外周面と一方の貫通孔の内周面とを全面接触させるとともに、軸材の外周面と他方の貫通孔の内周面とを全面接触させたことを特徴とするので、軸材から一方の部材及び他方の部材の両方の部材に力が伝達されて、他方の部材の負担を軽減できる部材連結構造を確実かつ容易に製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態1に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図2】実施形態2に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図3】実施形態3に係る部材連結構造制震構造の製造方法を示す断面図。
【
図4】実施形態4に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図5】実施形態5に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図6】実施形態6に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図7】実施形態7に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【
図8】実施形態8に係る部材連結構造制震構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る部材連結構造は、
図1(a)乃至
図1(c)に示すように、一方の部材Aに設けられた一方の貫通孔H1と一方の部材Aよりもヤング係数が大きい他方の部材Bに設けられた他方の貫通孔H2とにヤング係数が他方の部材のヤング係数と同じか又は大きい軸材Cを貫通させて部材A,B同士が連結された構成の部材連結構造であって、一方の貫通孔H1の径と他方の貫通孔H2の径とが同径(径寸法が同じ寸法)であり、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とが全面接触するとともに、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが全面接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成した。
即ち、ヤング係数の大小関係が、一方の部材A<他方の部材B≦軸材Cである。
【0008】
例えば、
図1(a)は、一方の部材Aとしての木部材を他方の部材Bとしての金属部材で挟み込むようにして、木部材に設けられた一方の貫通孔H1と金属部材に設けられた他方の貫通孔H2とに軸材Cとしての金属部材である両端ねじ軸を貫通させて当該両端ねじ軸の両端のねじ部にそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して木部材と金属部材とを連結した部材連結構造である。
また、
図1(b)は、一方の部材Aとしての木部材に形成された溝A1に他方の部材Bとしての金属部材を挿入して、木部材に設けられた一方の貫通孔H1と金属部材に設けられた他方の貫通孔H2とに軸材Cとしての金属部材である両端ねじ軸を貫通させて当該両端ねじ軸の両端のねじ部にそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して木部材と金属部材とを連結した部材連結構造である。
さらに、
図1(c)は、一方の部材Aとしての木部材と他方の部材Bとしての金属部材とを隣り合わせた状態にして、木部材に設けられた一方の貫通孔H1と金属部材に設けられた他方の貫通孔H2とに軸材Cとしての金属部材である両端ねじ軸を貫通させて当該両端ねじ軸の両端のねじ部にそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して木部材と金属部材とを連結した部材連結構造である。
【0009】
尚、軸材Cとしての両端ねじ軸は、両端のねじ部以外の軸部が貫通孔内に配置されて貫通孔の外側に配置された両端のねじ部にナットE2が締結されることで固定される。
【0010】
実施形態1に係る部材連結構造によれば、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とが全面接触するとともに、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが全面接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されているため、従来のように、一方の部材よりもヤング係数が大きい他方の部材(金属部材)に形成された他方の貫通孔と軸材との接触部に力が集中して、他方の部材の負担が大きくなってしまうことを防止でき、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造を提供できる。
言い換えれば、一方の部材Aの負担及び他方の部材Bの負担を均すことができるようになり、各部材(一方の部材A及び他方の部材B)と軸材Cとの間での力の伝達が安定かつ良好に行われるようになって、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造となる。
【0011】
特に、一方の部材Aが木部材であり、他方の部材Bが金属プレート等の金属部材であり、軸材Cが円柱棒状の金属部材である場合、例えば、
図1(a),(b)に示すように、木部材に形成された一方の貫通孔H1の内周面と軸材Cの外周面Dとの接触面積が大きく、かつ、金属部材に形成された他方の貫通孔H2の内周面と軸材Cの外周面Dとの接触面積が小さい構成の部材連結構造となり、軸材Cの外周面Dと接触する面積が大きい木部材が大きな力を負担できるようになるとともに、軸材Cの外周面Dと接触する面積が小さい金属部材に負担させる力を小さくすることができるようになるので、金属プレート等の金属部材(他方の部材B)の負担を軽減できる部材連結構造を提供できるようになる。
【0012】
実施形態2
実施形態2に係る部材連結構造は、
図2に示すように、一方の部材Aに設けられた一方の貫通孔H1と一方の部材Aよりもヤング係数が大きい他方の部材Bに設けられた他方の貫通孔H2とに一方の部材Aよりもヤング係数が大きい軸材Cを貫通させて部材A,B同士が連結された構成の部材連結構造であって、一方の貫通孔H1の径d1が他方の貫通孔H2の径d2よりも小さく、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とが全面接触するとともに、軸材Cから一方の貫通孔H1の内周面に所定の力が加わった場合に、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成した。
【0013】
尚、
図2に示すように、軸材Cの外径d、一方の部材Aに形成された一方の貫通孔H1の径d1、他方の部材Bに形成された他方の貫通孔H2の径d2とした場合、各径の大小関係は、d2>d≧d1とした。
【0014】
即ち、実施形態2に係る部材連結構造では、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面との間に若干の隙間が生じるように構成され、部材連結構造に力が加わっていない状態では、軸材Cから他方の部材Bに力が伝達されない構造となっているが、例えば地震等の強い力が部材連結構造に加わることにより、軸材Cから一方の貫通孔H1の内周面に所定の力が加わった場合に、一方の貫通孔H1の内周面が軸材Cで押圧されて変形することにより、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成した。
【0015】
従って、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面との間に生じる隙間、即ち、d2-dは、できるだけ小さい方が好ましいため、例えば、数mm以下、好ましくは、1mm以下にする。
【0016】
実施形態2に係る部材連結構造によれば、例えば、地震時等において、軸材Cから一方の貫通孔H1の内周面に所定の力が加わった場合に、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるので、一方の部材(例えば金属部材)Aよりもヤング係数が大きい他方の部材(例えば木部材)Bに形成された他方の貫通孔H2と軸材Cとの接触部に力が集中して、他方の部材Bの負担が大きくなってしまうことを防止でき、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造を提供できる。
【0017】
実施形態3
一方の部材Aに設けられた一方の貫通孔H1と一方の部材Aよりもヤング係数が大きい他方の部材Bに設けられた他方の貫通孔H2とに一方の部材Aよりもヤング係数が大きい軸材Cを貫通させて部材A,B同士が連結され、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成された部材連結構造の製造方法は、
図3に示すように、外径dが一方の貫通孔H1の径d1よりも大きい軸材Cを、一方の貫通孔H1に貫通させるとともに他方の貫通孔H2に貫通させることにより、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とを全面接触させるとともに、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とを全面接触させた構成の部材連結構造を製造するようにした。
【0018】
例えば、
図3に示すように、軸材Cの外径d、一方の部材Aに形成された一方の貫通孔H1の径d1、他方の部材Bに形成された他方の貫通孔H2の径d2の関係を、d2=d>d1とし、軸材Cを一方の貫通孔H1及び他方の貫通孔H2に圧入して貫通させることにより、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とが全面接触するとともに、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが全面接触する構成の部材連結構造を製造するようにした(
図1参照)。
【0019】
尚、この場合、軸材Cの挿入側先端は、貫通孔H1に挿入しやすくするために,面取り加工を施すことにより、一方の貫通孔H1の径d1よりも小径の小径部eに形成しておくことが好ましい。
【0020】
実施形態3に係る部材連結構造の製造方法によれば、外径dが一方の貫通孔H1の径d1よりも大きい軸材Cを、一方の貫通孔H1に貫通させるとともに他方の貫通孔H2に貫通させたので、軸材Cの外周面Dと一方の貫通孔H1の内周面とが全面接触するとともに、軸材Cの外周面Dと他方の貫通孔H2の内周面とが全面接触して、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されて、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造を確実かつ容易に製造できる。
【0021】
特に、一方の部材Aが木部材、軸材Cが両端ねじ軸等の金属部材、他方の部材Bが金属プレート等の金属部材であれば、両端ねじ軸の軸部(両端のねじ部以外の部分)が木部材に形成された一方の貫通孔H1の内面に食い込む圧力(摩擦力)で当該木部材に固定される、所謂、シマリバメと呼ばれる状態となって、両端ねじ軸(軸材C)の軸部と木部材(一方の部材A)との一体性が高まることから、例えば金属プレート(他方の部材B)の負担を軽減できる部材連結構造となる。
【0022】
実施形態4
実施形態4に係る部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法は、実施形態1及び実施形態2で説明した部材連結構造、実施形態3で説明した部材連結構造の製造方法において、一方の部材Aと他方の部材Bとの間に中間部材Fが設けられた構成とした。
なお、
図4(a)乃至
図4(c)において、
図1(a)乃至
図1(c)と同一又は相当部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0023】
例えば、
図4(a)乃至
図4(c)に示すように、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1と他方の部材Bに設けられた貫通孔H2と中間部材Fに設けられた貫通孔H3とに軸材Cとしての両端ねじ軸を貫通させて当該両端ねじ軸の両端のねじ部にそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して一方の部材Aと他方の部材Bとを連結したことにより、軸材Cから、一方の部材A、他方の部材B、中間部材Fの全ての部材に力が伝達されるように構成した。
【0024】
尚、中間部材Fとしては、ヤング係数が、一方の部材Aを形成する木部材のヤング係数以上で、かつ、他方の部材Bを形成する金属部材のヤング係数以下の部材を用いることが好ましく、例えば、樹脂部材、金属部材、木部材等を用いればよい。
また、中間部材Fに設けられた貫通孔H3の径は、一方の部材Aの径と同径にすればよい。
【0025】
実施形態4に係る部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法によれば、軸材Cから一方の部材A、他方の部材B、中間部材Fの全ての部材に力が伝達されるように構成したため、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法を提供できる。
【0026】
実施形態5
実施形態5に係る部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法は、実施形態1及び実施形態2で説明した部材連結構造、実施形態3で説明した部材連結構造の製造方法において、上述した軸材Cの代わりに、
図5(a)乃至
図5(c)に示すように、当該軸材Cと当該軸材Cの周囲を囲むように設けられた管C1とを備えて構成された拡径軸CA、即ち、軸材Cよりも拡径された拡径軸CAを用いるようにした。
なお、
図5(a)乃至
図5(c)において、
図1(a)乃至
図1(c)と同一又は相当部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0027】
例えば、
図5(a)乃至
図5(c)に示すように、一方の部材Aに設けられた貫通孔H1Aと他方の部材Bに設けられた貫通孔H2Aとに拡径軸CAを貫通させて当該拡径軸CAの両端に設けられて貫通孔H1A,H2Aの外側に配置された両端のねじ部にそれぞれ座金E1及びナットE2を締結して一方の部材Aと他方の部材Bとを連結したことにより、軸材Cから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成した。
【0028】
実施形態5に係る部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法によれば、拡径軸CAから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されたので、他方の部材Bの負担を軽減できる部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法を提供できる。
【0029】
さらに、実施形態5によれば、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔H1A,H2Aの内周面と拡径軸CAの外周面DAとの接触面の曲率を小さくできるので、拡径軸CAが各貫通孔H1A,H2Aの内周面に接触することにより当該各貫通孔H1A,H2Aの内周面に作用する支圧応力が軽減する。従って、拡径軸CAから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されたとともに、一方の部材A及び他方の部材Bの負担を軽減でき、しかも、強度、剛性の高い部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法を提供できる。
【0030】
実施形態6
実施形態6に係る部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法は、実施形態5に係る部材連結構造、当該部材連結構造の製造方法において、
図6(a)乃至
図6(c)に示すように、一方の部材Aと他方の部材Bとの間に中間部材Fが設けられた構成とした。
実施形態6に係る部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法によれば、実施形態4及び実施形態5に係る部材連結構造及び当該部材連結構造の製造方法と同じ効果が得られる。
なお、
図6(a)乃至
図6(c)において、
図4(a)乃至
図4(c)及び
図5(a)乃至
図5(c)と同一又は相当部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0031】
実施形態7
上述した拡径軸CAの代わりに、
図7に示すような、拡径軸CAXを用いても良い。
当該拡径軸CAXは、上述した軸材Cと、軸材Cの周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材Cの外周面と管C2の内周面との間に充填されたコンクリートやグラウト等の充填材C3とで構成された拡径軸とした。
【0032】
実施形態7に係る部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法によれば、拡径軸CAXを用いたので、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔H1B,H2Bの内周面と拡径軸CAXの外周面DBとの接触面の曲率を実施形態5,6よりもさらに小さくできるようになるため、拡径軸CAXの外周面DBと各貫通孔H1B,H2Bの内周面との接触により当該各貫通孔H1B,H2Bの内周面に作用する支圧応力を実施形態5,6よりもさらに小さくできる。従って、拡径軸CAXから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されるとともに、一方の部材A及び他方の部材Bの負担をより軽減でき、さらに、より強度、剛性の高い部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法を提供できるようになる。
【0033】
実施形態8
上述した拡径軸CAの代わりに、
図8に示すような、拡径軸CAYを用いても良い。
当該拡径軸CAYは、軸材Cと、軸材Cの周囲を囲むように設けられた管C2と、当該軸材Cの外周面と管C2の内周面との間に充填されたコンクリートやグラウト等の充填材である軸材側充填材C3と、管C2の外周面と貫通孔H1C,H2Cの内周面との間に充填されたコンクリートやグラウト等の充填材である貫通孔側充填材C4とで構成された拡径軸とした。
【0034】
実施形態8に係る部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法によれば、拡径軸CAXを用いたので、拡径軸CAYの外周面DCと各貫通孔H1C,H2Cの内周面との接触により当該各貫通孔H1C,H2Cの内周面に作用する支圧応力を実施形態7よりもさらに小さくできる。従って、拡径軸CAYから一方の部材A及び他方の部材Bの両方に力が伝達されるように構成されるとともに、一方の部材A及び他方の部材Bの負担をより軽減でき、さらに、より強度、剛性の高い部材連結構造、及び、当該部材連結構造の製造方法を提供できるようになる。
【0035】
実施形態9
一方の部材A(例えば木部材)と他方の部材B(例えば金属部材)との接触面、一方の部材A(例えば木部材)と中間部材F(例えば樹脂部材)との接触面、他方の部材B(例えば金属部材)と中間部材F(例えば樹脂部材)との接触面を、凹凸面に形成すれば、各部材相互間の位置ずれ防止効果が向上して、貫通孔相互間の位置ずれ防止効果が向上するので、金属部材の貫通孔と軸材との接触部の負担軽減効果、及び、各部材の各貫通孔の内周面に作用する支圧応力軽減効果を向上できる。
【0036】
尚、拡径軸CAの管C1、拡径軸CAX,CAYの管C2は、各貫通孔を貫通して両端が各部材の外面よりも外側に突出しないで各部材の外面と同一平面上に位置されるような管長のものを用いることが好ましい。
また、拡径軸CA,CAX,CAYの外径寸法を、軸材Cの外径寸法の数倍、例えば、1.5倍以上に設定することにより、一方の部材A及び他方の部材Bに設けられた各貫通孔の内周面と拡径軸の外周面との接触面の曲率を小さくできるようになるため、拡径軸の外周面と各貫通孔の内周面との接触により当該各貫通孔の内周面に作用する支圧応力をより小さくできる。
【0037】
また、軸材Cとしては、両端ねじ軸の代わりに、ドリフトピン等の軸材を用いてもよい。
また、上述した「外周面と内周面との全面接触」とは、完全な全面接触だけでなく、例えば、外周面の一部又は内周面の一部に窪み部分等が存在して、当該一部の窪み部分等が接触していないような場合も含む。
【符号の説明】
【0038】
A 一方の部材、B 他方の部材、C 軸材、C1,C2 管、
CA,CAX,CAY 拡径軸、D,DA,DB,DC 軸材又は拡径軸の外周面、
F 中間部材、H1,H1A,H1B,H1C 一方の貫通孔、
H2,H2A,H2B,H2C 他方の貫通孔、d 軸材の径、
d1 一方の貫通孔の径、d2 他方の貫通孔の径。