(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20231213BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B23K26/10
(21)【出願番号】P 2020031335
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】徳市 広樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝則
(72)【発明者】
【氏名】平田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 成彦
(72)【発明者】
【氏名】水谷 孝樹
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516760(JP,A)
【文献】特開2013-086144(JP,A)
【文献】特開平06-062512(JP,A)
【文献】特表2017-534461(JP,A)
【文献】特開2010-029929(JP,A)
【文献】特開2013-086167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射部と、
搬送方向に沿って搬送される板材の上部で前記レーザ照射部を移動させる駆動部と、
前記板材の下部のうち前記レーザ照射部の直下に配置されるように当該レーザ照射部に追従して移動する集塵部と、を備えるレーザ加工装置であって、
前記集塵部の開口部には、前記板材の下面を吸引面へ吸引し、前記板材の下面と前記吸引面とを接触させずに前記板材を支持する非接触支持部
と、前記搬送方向に対し直交する幅方向と平行な軸回りで回転自在なローラと、が設けられ、
前記板材の下面は、前記ローラの外周面に接し、
前記開口部は、平面視では、前記幅方向に沿って延びる上流側開口縁部と、当該上流側開口縁部よりも前記搬送方向下流側において前記幅方向に沿って延びる下流側開口縁部と、を備え、
前記上流側開口縁部及び前記下流側開口縁部には、それぞれ、1以上の前記ローラと1以上の前記非接触支持部とが前記幅方向に沿って交互に設けられていることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記ローラ及び前記吸引面の周囲を覆う遮蔽板を備え、
前記非接触支持部は、前記吸引面の外周縁部に形成されたノズルからエアの旋回流を噴出させたときに前記板材の下面と前記吸引面との間に発生する負圧によって当該板材の下面を前記吸引面へ吸引し、
前記ローラの外周面の一部は、前記遮蔽板の上面から突出し、
前記吸引面は、前記遮蔽板の上面から埋没していることを特徴とする請求項
1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記遮蔽板は、前記外周縁部の少なくとも一部を覆い、
前記外周縁部と前記遮蔽板の下面との間には間隙が設けられていることを特徴とする請求項
2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記遮蔽板の下面には、前記吸引面を中心として径方向へ延びる溝が形成されていることを特徴とする請求項
2又は3に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。より詳しくは、搬送装置によって搬送される板材の上部でレーザ照射部を移動させることによって板材を切断するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置によって送り出される板材の上部において、レーザ光を照射するレーザヘッドを移動させることにより、板材を所望の形状に切断し、ブランク材とするレーザ加工装置が提案されている。このようなレーザ加工装置によって切断する板材をロール状に丸められたコイル材から連続的に送り出す場合、レーザ照射部によってレーザ光を照射する前に、レベラ装置によってくせを除き、板材を直線状に矯正する場合が多い。
【0003】
しかしながらレベラ装置では、コイル材のくせを十分に除くことができず、板材に僅かなうねりが残ってしまう場合がある。レーザヘッドへ送り出される板材にうねりが残っていると、レーザヘッドと板材との間の距離が変化し、レーザヘッドの焦点距離が変化してしまい、ひいては精度良く板材を切断加工できなくなる場合がある。そこで特許文献1に示されたレーザ加工装置では、ブラシで板材を押圧することによって、板材に残っているうねりを矯正しながらレーザヘッドを移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたレーザ加工装置によれば、板材をブラシで押圧することにより、レーザヘッドと板材との間の距離を一定に維持できるものの、例えばアルミ合金のような比較的軟らかい板材をブラシで押圧すると、板材の表面に傷がついてしまい、歩留まりが低下し、ひいてはコストが上昇するおそれがある。
【0006】
本発明は、板材の表面を傷付けずにうねりを除きながらレーザ光を照射できるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るレーザ加工装置(例えば、後述のレーザ加工装置3)は、レーザ照射部(例えば、後述のレーザヘッドH)と、搬送方向(例えば、後述の搬送方向Fy)に沿って搬送される板材(例えば、後述のワークW)の上部で前記レーザ照射部を移動させる駆動部(例えば、後述のヘッド駆動機構5)と、前記板材の下部のうち前記レーザ照射部の直下に配置されるように当該レーザ照射部に追従して移動する集塵部(例えば、後述の集塵ボックス60)と、を備えるものであって、前記集塵部の開口部(例えば、後述の開口部61)には、前記板材の下面を吸引面(例えば、後述の吸引面71)へ吸引し、前記板材の下面と前記吸引面とを接触させずに前記板材を支持する非接触支持部(例えば、後述の非接触支持パッド7)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
(2)この場合、前記開口部には、前記非接触支持部と、前記搬送方向に対し直交する幅方向(例えば、後述の幅方向Fx)と平行な軸回りで回転自在なローラ(例えば、後述の外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82)と、が設けられ、前記板材の下面は、前記ローラの外周面に接することが好ましい。
【0009】
(3)この場合、前記開口部は、平面視では、前記幅方向に沿って延びる上流側開口縁部(例えば、後述の上流側開口縁部64)と、当該上流側開口縁部よりも前記搬送方向下流側において前記幅方向に沿って延びる下流側開口縁部(例えば、後述の下流側開口縁部65)と、を備え、前記上流側開口縁部及び前記下流側開口縁部には、それぞれ、1以上の前記ローラと1以上の前記非接触支持部とが前記幅方向に沿って交互に設けられていることが好ましい。
【0010】
(4)この場合、前記ローラ及び前記吸引面の周囲を覆う遮蔽板(例えば、後述の上流側カバー66及び下流側カバー67)を備え、前記非接触支持部は、前記吸引面の外周縁部(例えば、後述の外周縁部72)に形成されたノズル(例えば、後述のノズル孔74)からエアの旋回流を噴出させたときに前記板材の下面と前記吸引面との間に発生する負圧によって当該板材の下面を前記吸引面へ吸引し、前記ローラの外周面の一部は、前記遮蔽板の上面から突出し、前記吸引面は、前記遮蔽板の上面から埋没していることが好ましい。
【0011】
(5)この場合、前記遮蔽板は、前記外周縁部の少なくとも一部を覆い、前記外周縁部と前記遮蔽板の下面との間には間隙(例えば、後述の間隙69)が設けられていることが好ましい。
【0012】
(6)この場合、前記遮蔽板の下面には、前記吸引面を中心として径方向へ延びる溝(例えば、後述の溝66c)が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
(1)本発明に係るレーザ加工装置は、搬送方向に沿って搬送される板材の上部でレーザ照射部を移動させる駆動部と、板材の下部のうちレーザ照射部の直下に配置されるようにレーザ照射部に追従して移動する集塵部と、を備える。これにより、レーザ照射部から板材にレーザ光を照射することによって生じるスパッタを集塵部で回収することができる。また本発明では、集塵部の開口部に、板材の下面を吸引面へ吸引し、板材の下面と吸引面とを接触させずに板材を支持する非接触支持部を設ける。これにより、板材のうちレーザ光が照射される部分を非接触支持部の吸引面へ引き寄せることができるので、搬送される板材にうねりがある場合であってもこのうねりを除きながらレーザ光を照射することができ、ひいては板材を精度良く切断できる。また本発明では、板材を支持する手段として、板材の下面と吸引面とを接触させずに板材を支持する非接触支持部を用いることにより、板材の表面を傷付けることなくうねりを除くことができる。
【0014】
(2)本発明では、集塵部の開口部に、非接触支持部と幅方向と平行な軸回りで回転自在なローラとを設ける。また本発明において、板材の下面は、非接触支持部の吸引面と接触していないが、ローラの外周面と接触する。よって本発明によれば、非接触支持部によって板材の下面を吸引面へ吸引し、板材の下面をローラの外周面へ押し付けることによって板材のうねりを除くことができる。またこの際、板材の下面をローラの外周面に押し付けることにより、傷付けることなく板材を搬送方向に沿って搬送することができる。
【0015】
(3)本発明では、幅方向に沿って延びる上流側開口縁部及び下流側開口縁部の両方に対し、1以上のローラと1以上の非接触支持部とを幅方向に沿って交互に設ける。これにより板材のうちレーザ照射部からのレーザ光が照射される部分を、搬送方向上流側と下流側との両方において吸引し、支持できるので、レーザ光が照射される部分のうねりをより確実に除くことができる。
【0016】
(4)本発明において、非接触支持部は、吸引面の外周縁部に形成されたノズルからエアの旋回流を噴出させたときに、板材の下面と吸引面との間に発生する負圧を利用して板材の下面を吸引面へ吸引する。また本発明では、ローラ及び吸引面の周囲を遮蔽板で覆うとともに、ローラの外周面の一部を遮蔽板の上面から突出させ、かつ吸引面を遮蔽板の上面から埋没させる。これにより、板材の下面と吸引面との間に、エアの旋回流を排出する間隙を確保できるので、エアによって板材が浮き上がるのを防止しつつ、ベルヌーイ効果によって板材の下面と吸引面との間に負圧を発生させ、この負圧を利用して板材の下面を吸引面へ吸引し、板材のうねりを除くことができる。
【0017】
(5)本発明では、吸引面の外周縁部の少なくとも一部を遮蔽板で覆い、この外周縁部と遮蔽板の下面との間には間隙を設ける。これにより、吸引面のノズルから噴出するエアの旋回流の一部を遮蔽板の下面へ導くことができるので、ベルヌーイ効果によって板材の下面と吸引面との間に負圧を発生させつつ、遮蔽板を冷却することができる。またこのように遮蔽板をエアの旋回流の一部で冷却することにより、レーザ光を照射することによって生じるスパッタを冷却できるので、このスパッタがローラや遮蔽板等に付着するのを防止できる。またこれにより、スパッタが板材に付着することを防止することができる。
【0018】
(6)本発明では、遮蔽板の下面に、吸引面を中心として径方向へ延びる溝を形成する。これにより、吸引面のノズルから噴出するエアの旋回流による遮蔽板の冷却効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工システムの構成を示す図である。
【
図2】レーザ加工装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】集塵ボックスをワーク側から視た平面図である。
【
図4】
図3において支持ローラ対と交差する線IV-IVに沿った断面図である。
【
図5】
図3において非接触支持パッドと交差する線V-Vに沿った断面図である。
【
図6A】非接触支持パッドを吸引面側から視た斜視図である。
【
図6B】
図6Aにおける線VI-VIに沿った非接触支持パッド7の断面図である。
【
図7】
図5のうち上流側開口縁部及び上流側カバーを拡大した図である。
【
図8】上流側カバーの下面を非接触支持パッド側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置3について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、レーザ加工システム1の構成を示す図である。レーザ加工システム1は、ロール状のコイル材Cから送り出される板材であるワークWのくせを除き、直線状に矯正するレベラ装置2と、レベラ装置2によって直線状に矯正されたワークWをレーザ光によって切断するレーザ加工装置3と、を備える。ワークWは、例えばアルミ合金製の板材や鋼板等であるが、本発明はこれに限らない。
【0022】
レベラ装置2は、コイル材Cから送り出されるワークWに対し鉛直方向上方側に設けられた複数(
図1の例では、3つ)の上側ローラ21と、これら上側ローラ21に対しワークWを挟んで設けられた複数(
図1の例では、4つ)の下側ローラ22と、を備える。これら上側ローラ21の回転軸と下側ローラ22の回転軸とは互いに平行である。これら下側ローラ22と上側ローラ21とは、ワークWの送り出し方向に沿って交互に設けられている。レベラ装置2は、コイル材Cから送り出されるワークWを複数の上側ローラ21及び複数の下側ローラ22によって平坦に延ばすことによって、板材のくせを除き、直線状に矯正する。レベラ装置2によって直線状に矯正されたワークWは、レーザ加工装置3へ送り出される。
【0023】
図2は、レーザ加工装置3の概略構成を示す斜視図である。レーザ加工装置3は、ワークWを搬送方向Fyに沿って搬送する搬送装置4と、レーザ光を発生し、ワークWへ照射するレーザヘッドHと、搬送方向Fyに沿って搬送されるワークWの上部でレーザヘッドHを移動させるヘッド駆動機構5と、ワークWにレーザ光を照射することによって生じるスパッタを回収する集塵装置6と、を備える。
【0024】
搬送装置4は、ベルトコンベアであり、搬送方向Fyと直交する幅方向Fxと平行な軸回りで回転自在な複数(
図2には、4本のみを図示する)のベルトローラ41,42,43,44と、これらベルトローラ41~44に掛け渡された無端帯状のベルト45と、複数のベルトローラ41~44のうちの何れか(例えば、第1ベルトローラ41)を回転駆動することにより、ベルト45を搬送方向Fyに沿って下流側へ送り出すローラ駆動装置(図示せず)と、を備える。
【0025】
第1~第4ベルトローラ41~44は、搬送方向Fyに沿って上流側から下流側へこの順で設けられている。第2ベルトローラ42と第3ベルトローラ43との間には、後述の集塵ボックス60が設けられている。またベルト45は、この集塵ボックス60を避けるようにこれら第1~第4ベルトローラ41~44に掛け渡されている。また第2ベルトローラ42と第3ベルトローラ43とは、後述のボックス駆動機構によって集塵ボックス60とともに搬送方向Fyに沿って下流側又は上流側へ摺動自在となっている。
【0026】
ヘッド駆動機構5は、ベルト45の上部において幅方向Fxに沿って延びるX軸レール51と、ベルト45の側部において搬送方向Fyに沿って延びるY軸レール52と、を備える。X軸レール51は、レーザヘッドHをその延在方向(すなわち、幅方向Fx)に沿って摺動自在に支持する。Y軸レール52は、X軸レール51をその延在方向(すなわち、搬送方向Fy)に沿って摺動自在に支持する。これによりヘッド駆動機構5は、レーザヘッドHを、搬送装置4によって搬送されるワークWの上部において搬送方向Fy及び幅方向Fxに沿って移動させることができる。
【0027】
集塵装置6は、幅方向Fxに沿って延びる箱状の集塵ボックス60と、この集塵ボックス60を搬送方向Fyに沿って移動させるボックス駆動機構(図示せず)と、を備える。
【0028】
集塵ボックス60は、ワークWの下部のうち第2ベルトローラ42と第3ベルトローラ43との間に設けられている。集塵ボックス60の上部には、平面視では幅方向Fxに沿って延びる矩形状の開口部61が形成されている。レーザヘッドHからワークWへレーザ光を照射することによって生じるスパッタは、開口部61を介して集塵ボックス60内に回収される。また集塵ボックス60内に回収されたスパッタは、側部カバー62に形成された排出部63から適宜排出される。
【0029】
ボックス駆動機構は、集塵ボックス60の開口部61がレーザヘッドHの直下に配置されるように、レーザヘッドHの搬送方向Fyに沿った移動に追従して集塵ボックス60と第2ベルトローラ42と第3ベルトローラ43とを搬送方向Fyに沿って移動させる。
【0030】
図3は、集塵ボックス60をワークW側から視た平面図である。
図3に示すように、集塵ボックス60の開口部61は、平面視では、幅方向Fxに沿って延びる上流側開口縁部64と、この上流側開口縁部64よりも搬送方向Fyの下流側において幅方向Fxに沿って延びる下流側開口縁部65と、を備える矩形状である。
【0031】
上流側開口縁部64には、平面視では円盤状である複数(
図3の例では、7つ)の非接触支持パッド7と、外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82を一組とした複数(
図3の例では、6組)の支持ローラ対8と、平面視では幅方向Fxに沿って延びる矩形状の上流側カバー66と、が設けられている。
【0032】
上流側開口縁部64には、1つの非接触支持パッド7と一組の支持ローラ対8とが幅方向Fxに沿って列状かつ交互に設けられている。なお
図3には、1つの非接触支持パッド7と一組の支持ローラ対8とを上流側開口縁部64に幅方向Fxに沿って交互に設けた場合について示すが、本発明はこれに限らない。2以上の複数の非接触支持パッド7と2以上の複数組の支持ローラ対8とを上流側開口縁部64に幅方向Fxに沿って交互に設けてもよい。
【0033】
下流側開口縁部65には、平面視では円盤状である複数(
図3の例では、7つ)の非接触支持パッド7と、複数(
図3の例では、6組)の支持ローラ対8と、平面視では幅方向Fxに沿って延びる矩形状の下流側カバー67と、が設けられている。
【0034】
下流側開口縁部65には、1つの非接触支持パッド7と一組の支持ローラ対8とが幅方向Fxに沿って列状かつ交互に設けられている。なお
図3には、1つの非接触支持パッド7と一組の支持ローラ対8とを下流側開口縁部65に幅方向Fxに沿って交互に設けた場合について示すが、本発明はこれに限らない。2以上の複数の非接触支持パッド7と2以上の複数組の支持ローラ対8とを下流側開口縁部65に幅方向Fxに沿って交互に設けてもよい。
【0035】
図4は、
図3において支持ローラ対8と交差する線IV-IVに沿った断面図である。集塵ボックス60は、断面視で略U字状である。集塵ボックス60の上流側開口縁部64には、幅方向Fx(
図3参照)と平行な軸回りで回転自在な外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82が、搬送方向Fyに沿って上流側から下流側へこの順で並列して設けられている。また集塵ボックス60の下流側開口縁部65には、幅方向Fxと平行な軸回りで回転自在な内側支持ローラ82及び外側支持ローラ81が、搬送方向Fyに沿って上流側から下流側へこの順で並列して設けられている。
【0036】
上流側カバー66には、平面視で略矩形状の開口である上流側ローラ窓66aが、幅方向Fxに沿って所定の間隔で複数(
図3の例では、6つ)形成されている。また
図4に示すように、上流側開口縁部64に設けられた計6組の外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面の一部は、これら上流側ローラ窓66aを介してワークW側へ露出している。換言すれば、外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面の一部は、上流側カバー66の上面からワークW側へ突出する。このため、搬送装置4によって搬送方向Fyに沿って搬送されるワークWの下面は、これら外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面に接触する。また
図3及び
図4に示すように、上流側カバー66のうち搬送方向Fyに沿って上流側の端部及び下流側の端部は、それぞれ鉛直方向下方側へやや折り曲げられている。このため、上流側開口縁部64に設けられた複数組の外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の周囲は、上流側カバー66によって覆われる。
【0037】
また
図4に示すように、上流側開口縁部64のうち外側支持ローラ81と第2ベルトローラ42との間には、外側支持ローラ81と平行な軸回りで回転自在なカウンタローラ9が設けられている。カウンタローラ9の外周面は、ベルト45と外側支持ローラ81とに接している。このため、ベルトコンベアである搬送装置4においてワークWを搬送方向Fyに沿って搬送するための動力の一部は、カウンタローラ9を介して外側支持ローラ81に伝達される。これにより、外側支持ローラ81は、搬送装置4によるワークWの搬送動作と同期して回転する。なお
図4には、カウンタローラ9の外周面はベルト45に接する場合を図示するが、本発明はこれに限らない。カウンタローラ9の外周面は、第2ベルトローラ42の外周面と接するようにしてもよい。
【0038】
下流側カバー67には、平面視で略矩形状の開口である下流側ローラ窓67aが、幅方向Fxに沿って所定の間隔で複数(
図3の例では、6つ)形成されている。また
図4に示すように、下流側開口縁部65に設けられた計6組の外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面の一部は、これら下流側ローラ窓67aを介してワークW側へ露出している。換言すれば、外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面の一部は、下流側カバー67の上面からワークW側へ突出する。このため、搬送装置4によって搬送方向Fyに沿って搬送されるワークWの下面は、これら外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面に接触する。また
図3及び
図4に示すように、下流側カバー67のうち搬送方向Fyに沿って上流側の端部及び下流側の端部は、それぞれ鉛直方向下方側へやや折り曲げられている。このため、下流側開口縁部65に設けられた複数組の外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の周囲は、下流側カバー67によって覆われる。
【0039】
また
図4に示すように、下流側開口縁部65のうち外側支持ローラ81と第3ベルトローラ43との間には、外側支持ローラ81と平行な軸回りで回転自在なカウンタローラ9が設けられている。カウンタローラ9の外周面は、ベルト45と外側支持ローラ81とに接している。このため、ベルトコンベアである搬送装置4においてワークWを搬送方向Fyに沿って搬送するための動力の一部は、カウンタローラ9を介して外側支持ローラ81に伝達される。これにより、外側支持ローラ81は、搬送装置4によるワークWの搬送動作と同期して回転する。なお
図4には、カウンタローラ9の外周面はベルト45に接する場合を図示するが、本発明はこれに限らない。カウンタローラ9の外周面は、第3ベルトローラ43の外周面と接するようにしてもよい。
【0040】
図5は、
図3において非接触支持パッド7と交差する線V-Vに沿った断面図である。集塵ボックス60の上流側開口縁部64及び下流側開口縁部65には、それぞれ平面視で円盤状の非接触支持パッド7が設けられている。
【0041】
図6Aは、非接触支持パッド7を吸引面71側から視た斜視図である。
図6Bは、
図6Aにおける線VI-VIに沿った非接触支持パッド7の断面図である。
【0042】
非接触支持パッド7は、円柱状である。非接触支持パッド7の吸引面71の外周縁部72には、平面視で円環状の溝部73が形成されている。溝部73には、複数(
図6Aの例では4つ)のノズル孔74が形成されている。非接触支持パッド7のうち吸引面71と反対側の底面75の略中央には、図示しないエアポンプが接続されるエア供給孔76が形成されている。また
図6Bに示すように、非接触支持パッド7の内部には、エア供給孔76と複数のノズル孔74とを連通するエア流路77が形成されている。
【0043】
このため非接触支持パッド7では、エアポンプによって圧縮したエアをエア供給孔76に供給すると、吸引面71の溝部73に形成された複数のノズル孔74から、
図6Aにおいて破線矢印で示すように径方向外側へ広がるエアの旋回流が発生する。このため吸引面71側にワークWが存在すると、ベルヌーイ効果によって吸引面71とワークWとの間に負圧が発生し、この負圧によってワークWが吸引面71へ吸引される。以上のように非接触支持パッド7は、ノズル孔74からエアの旋回流を噴出させたときにワークWの下面と吸引面71との間に発生する負圧を利用することによって、ワークWの下面を吸引面71へ吸引し、ワークWの下面と吸引面71とを接触させずにワークWを支持する。
【0044】
図7は、
図5のうち上流側開口縁部64及び上流側カバー66を拡大した図である。なお下流側開口縁部65及び下流側カバー67の構成は、
図7とほぼ同じであるので、図示及び詳細な説明を省略する。
【0045】
図7に示すように、上流側開口縁部64に設けられた複数の非接触支持パッド7の周囲は、上流側カバー66によって覆われている。また、上流側カバー66には、平面視で円形状の開口である上流側支持パッド窓66bが、幅方向Fxに沿って所定の間隔で複数(
図3の例では、7つ)形成されている。上流側開口縁部64に設けられた複数の非接触支持パッド7の吸引面71は、ワークW側から上流側支持パッド窓66bを介して視認可能となっている。またこれら上流側支持パッド窓66bの内径は、非接触支持パッド7の外径よりもやや小さい。このため、上流側カバー66は、非接触支持パッド7の外周縁部72の一部を覆う。
【0046】
上述のように外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面の一部は、上流側カバー66の上面からワークW側へ突出するのに対し、非接触支持パッド7の吸引面71は、上流側カバー66の上面から埋没している。
図7に示すように、非接触支持パッド7の外周縁部72と上流側カバー66の下面との間には、間隙69が設けられている。
【0047】
図8は、上流側カバー66の下面を非接触支持パッド7側から視た図である。
図8に示すように、上流側カバー66の下面のうち上流側支持パッド窓66bの周縁部には、非接触支持パッド7の吸引面を中心として径方向へ延びる複数の溝66cが形成されている。
【0048】
次に、以上のようなレーザ加工装置3においてワークWのうねりを除きながらレーザヘッドHによってワークWを切断する手順について説明する。先ず、非接触支持パッド7のエア供給孔76に圧縮したエアを供給すると、吸引面71に形成されたノズル孔74から径方向外側へ広がるエアの旋回流が発生する。
図7において破線矢印で模式的に示すように、このエアの旋回流は、ワークWの下面と上流側カバー66(又は下流側カバー67)の上面との間及び非接触支持パッド7の外周縁部72と上流側カバー66(又は下流側カバー67)の下面との間に形成された間隙69(
図7参照)へ流れ込み、これにより吸引面71とワークWの下面との間に負圧が発生する。また吸引面71とワークWの下面との間に負圧が発生すると、ワークWの下面は吸引面71へ吸引され、これによりワークWの下面は外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82の外周面に押し付けられるとともにワークWのうねりが除かれる。従ってレーザ加工装置3では、以上のようにして非接触支持パッド7を用いてワークWのうねりを除きながらレーザヘッドHからレーザ光を照射することにより、精度良くワークWを切断することができる。
【0049】
本実施形態に係るレーザ加工装置3によれば、以下の効果を奏する。
(1)レーザ加工装置3は、搬送方向Fyに沿って搬送されるワークWの上部でレーザヘッドHを移動させるヘッド駆動機構5と、ワークWの下部のうちレーザヘッドHの直下に配置されるようにレーザヘッドHに追従して移動する集塵ボックス60と、を備える。これにより、レーザヘッドHからワークWにレーザ光を照射することによって生じるスパッタを集塵ボックス60で回収することができる。またレーザ加工装置3では、集塵ボックスの開口部61に、ワークWの下面を吸引面へ吸引し、ワークWの下面と吸引面71とを接触させずにワークWを支持する非接触支持パッド7を設ける。これにより、ワークWのうちレーザ光が照射される部分を非接触支持パッド7の吸引面71へ引き寄せることができるので、搬送されるワークWにうねりがある場合であってもこのうねりを除きながらレーザ光を照射することができ、ひいてはワークWを精度良く切断できる。またレーザ加工装置3では、ワークWを支持する手段として、ワークWの下面と吸引面71とを接触させずにワークWを支持する非接触支持パッド7を用いることにより、ワークWの表面を傷付けることなくうねりを除くことができる。
【0050】
(2)レーザ加工装置3では、集塵ボックス60の開口部61に、非接触支持パッド7と、幅方向Fxと平行な軸回りで回転自在な外側支持ローラ81及び内側支持ローラ82とを設ける。またレーザ加工装置3において、ワークWの下面は、非接触支持パッド7の吸引面71と接触していないが、支持ローラ81,82の外周面と接触する。よってレーザ加工装置3によれば、非接触支持パッド7によってワークWの下面を吸引面71へ吸引し、ワークWの下面を支持ローラ81,82の外周面へ押し付けることによってワークWのうねりを除くことができる。またこの際、ワークWの下面を支持ローラ81,82の外周面に押し付けることにより、傷付けることなくワークWを搬送方向Fyに沿って搬送することができる。
【0051】
(3)レーザ加工装置3では、幅方向Fxに沿って延びる上流側開口縁部64及び下流側開口縁部65の両方に対し、1以上の支持ローラ81,82と1以上の非接触支持パッド7とを幅方向Fxに沿って交互に設ける。これによりワークWのうちレーザヘッドHからのレーザ光が照射される部分を、搬送方向Fy上流側と下流側との両方において吸引し、支持できるので、レーザ光が照射される部分のうねりをより確実に除くことができる。
【0052】
(4)レーザ加工装置3において、非接触支持パッド7は、吸引面71の外周縁部72に形成されたノズル孔74からエアの旋回流を噴出させたときに、ワークWの下面と吸引面71との間に発生する負圧を利用してワークWの下面を吸引面71へ吸引する。またレーザ加工装置3では、支持ローラ81,82及び吸引面71の周囲を上流側カバー66及び下流側カバー67で覆うとともに、支持ローラ81,82の外周面の一部を上流側カバー66及び下流側カバー67の上面から突出させ、かつ吸引面71を上流側カバー66及び下流側カバー67の上面から埋没させる。これにより、ワークWの下面と吸引面71との間に、エアの旋回流を排出する間隙69を確保できるので、エアによってワークWが浮き上がるのを防止しつつ、ベルヌーイ効果によってワークWの下面と吸引面71との間に負圧を発生させ、この負圧を利用してワークWの下面を吸引面71へ吸引し、ワークWのうねりを除くことができる。
【0053】
(5)レーザ加工装置3では、吸引面71の外周縁部72の少なくとも一部を上流側カバー66及び下流側カバー67で覆い、この外周縁部72と上流側カバー66及び下流側カバー67の下面との間には間隙69を設ける。これにより、吸引面71のノズル孔74から噴出するエアの旋回流の一部を上流側カバー66及び下流側カバー67の下面へ導くことができるので、ベルヌーイ効果によってワークWの下面と吸引面71との間に負圧を発生させつつ、上流側カバー66及び下流側カバー67を冷却することができる。またこのように上流側カバー66及び下流側カバー67をエアの旋回流の一部で冷却することにより、レーザ光を照射することによって生じるスパッタを冷却できるので、このスパッタが支持ローラ81,82やカバー66,67等に付着するのを防止できる。またこれにより、スパッタがワークWに付着することを防止することができる。
【0054】
(6)レーザ加工装置3では、カバー66,67の下面に、吸引面71を中心として径方向へ延びる溝66cを形成する。これにより、吸引面71のノズル孔74から噴出するエアの旋回流によるカバー66,67の冷却効果を向上することができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0056】
例えば上記実施形態では、ベルトコンベアである搬送装置4の動力を上流側支持ローラ81に伝達する動力伝達機構として、カウンタローラ9を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。動力伝達機構は、カウンタローラ9に限らず、シャフトやベルト等の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0057】
また例えば上記実施形態では、上流側支持ローラ81を搬送装置4によるワークWの搬送動作と同期して回転させる駆動機構として、カウンタローラ9を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば上流側支持ローラ81を回転させるアクチュエータを設けた上で、このアクチュエータを搬送装置4による搬送動作と同期して駆動することによって上流側支持ローラ81を搬送装置4によるワークWの搬送動作と同期して回転させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…レーザ加工システム
2…レベラ装置
3…レーザ加工装置
4…搬送装置
41,42,43,44…ベルトローラ
45…ベルト
H…レーザヘッド(レーザ照射部)
5…ヘッド駆動機構(駆動部)
60…集塵ボックス(集塵部)
61…開口部
64…上流側開口縁部
65…下流側開口縁部
66…上流側カバー(遮蔽板)
67…下流側カバー(遮蔽板)
7…非接触支持パッド(非接触支持部)
71…吸引面
72…外周縁部
74…ノズル孔(ノズル)
8…支持ローラ対
81…外側支持ローラ(ローラ)
82…内側支持ローラ82(ローラ)
9…カウンタローラ
Fy…搬送方向
Fx…幅方向