(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】乗員行動判定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231213BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231213BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G06T7/00 650Z
(21)【出願番号】P 2020037337
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】日下 聖
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 悠樹
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005343(JP,A)
【文献】特開2009-294781(JP,A)
【文献】特開2002-262138(JP,A)
【文献】特開2010-052635(JP,A)
【文献】特開2008-140268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員を撮影して画像を取得する監視カメラと、
前記画像に基づいて前記乗員の顔を認識する顔認識部と、
前記画像に基づいて前記乗員の姿勢を認識する姿勢認識部と、
前記顔認識部の認識結果と、前記姿勢認識部の認識結果と、に基づいて車室内における前記乗員の行動を判定する行動判定部と、
前記画像に基づいて前記監視カメラに近接する近接物を認識する近接物認識部と、
前記画像から、相対的に解像度が高い高解像度画像と、相対的に解像度が低い低解像度画像と、を生成する画像処理部と、
を備え
、
前記監視カメラは、前記乗員の指によって操作される前記車両の被操作物に近接して設けられており、
前記顔認識部と前記姿勢認識部は、前記高解像度画像に基づいて認識を行い、
前記近接物認識部は、前記低解像度画像に基づいて認識を行い、
前記行動判定部は、前記近接物認識部が前記近接物を認識する場合に、前記乗員の前記行動を、前記被操作物の操作行動として判定する、乗員行動判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗員行動判定装置であって、
前記画像に基づいて前記乗員が把持する物体を認識する物体認識部を更に備え、
前記行動判定部は、前記顔認識部の認識結果と、前記姿勢認識部の認識結果と、前記物体認識部の認識結果と、に基づいて前記乗員の
前記行動を判定する、乗員行動判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラで撮影した画像に基づいて車両の乗員の行動を判定する乗員行動判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カメラによって取得した画像に基づいて乗員の顔認証を行う技術が示される。この技術は、カメラのイメージセンサを、解像度が低い画像(低解像度画像)を出力する低消費電力モードと、解像度が高い画像(高解像度画像)を出力する通常モードと、で動作させる。具体的には、この技術は、イメージセンサを低消費電力モードで動作させ、低解像度画像に基づいて乗員の顔が検出される場合に、イメージセンサを通常モードで動作させ、高解像度画像に基づいて顔認証を行う。
【0003】
カメラによって取得される乗員の顔の画像は、乗員の顔認証に用いられる他に、乗員の行動判定にも用いられる。例えば、乗員の顔の画像から乗員の視線又は顔の向きを検出することが可能であり、乗員が脇見しているか否かを判定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の乗員に提供する様々なサービスが開発されている。サービスの増加に伴い、乗員の様々な行動を判定することが望まれる。しかし、特許文献1の技術のように乗員の顔の画像を取得するだけでは、判定することができる乗員の行動に限界がある。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、乗員の様々な行動を判定することができる乗員行動判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、
車両の乗員を撮影して画像を取得する監視カメラと、
前記画像に基づいて前記乗員の顔を認識する顔認識部と、
前記画像に基づいて前記乗員の姿勢を認識する姿勢認識部と、
前記顔認識部の認識結果と、前記姿勢認識部の認識結果と、に基づいて車室内における前記乗員の行動を判定する行動判定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員の様々な行動を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は乗員行動判定装置のブロック図である。
【
図2】
図2はナビゲーション装置と監視カメラを示す図である。
【
図4】
図4は行動判定処理のフローチャートである。
【
図5】
図5Aは高解像度画像を示す図であり、
図5Bは低解像度画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る乗員行動判定装置について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
[1.乗員行動判定装置10の構成]
図1を用いて乗員行動判定装置10の構成について説明する。乗員行動判定装置10は、車両に設けられる。乗員行動判定装置10は、監視カメラ12と、行動判定ECU18と、を有する。
【0012】
監視カメラ12は、車室内を撮影するカメラである。
図2に示されるように、監視カメラ12は、乗員の指によって操作される車両の被操作物14に近接して設けられる。本実施形態において、被操作物14は、ナビゲーション装置16である。被操作物14は、各種スイッチ、例えば空調装置のスイッチ等であってもよい。監視カメラ12は、撮影した画像40を行動判定ECU18に出力する。なお、監視カメラ12の近傍には、補助照明用の近赤外線LED20が設けられる。
【0013】
行動判定ECU18は、プロセッサを有する演算装置22と、RAM及びROM等を有する記憶装置24と、入出力インターフェース(不図示)等を有する。演算装置22は、記憶装置24に記憶されるプログラムを実行することにより、画像処理部26と、近接物認識部28と、顔認識部30と、姿勢認識部32と、物体認識部34と、行動判定部36として機能する。
【0014】
画像処理部26は、監視カメラ12が撮影した画像40を用いて多重解像度解析を行い、相対的に解像度が高い高解像度画像44と、相対的に解像度が低い低解像度画像42と、を生成する。高解像度画像44は低解像度画像42よりも解像度が高く、低解像度画像42は高解像度画像44よりも解像度が低い。
【0015】
近接物認識部28は、画像処理部26が生成した低解像度画像42に基づいて監視カメラ12に近接する近接物及び近接物の有無を認識する。顔認識部30は、画像処理部26が生成した高解像度画像44に基づいて乗員の顔を認識し、乗員の顔の向き及び視線の向きを認識する。姿勢認識部32は、画像処理部26が生成した高解像度画像44に基づいて乗員の姿勢を認識する。物体認識部34は、画像処理部26が生成した高解像度画像44に基づいて乗員が把持する物体を認識する。
【0016】
行動判定部36は、近接物認識部28の認識結果と、顔認識部30の認識結果と、姿勢認識部32の認識結果と、物体認識部34の認識結果と、に基づいて車室内にいる乗員の行動を判定する。行動判定部36の判定結果は、例えば、乗員にリコメンド情報を提供する情報提供装置、又は、乗員に注意を促す報知装置等のように、乗員の行動の情報を使用する装置(ECU)に出力される。
【0017】
記憶装置24は、各種のプログラムの他に、認識-行動情報38を記憶する。認識-行動情報38は、各認識部による認識結果と、その認識結果から推定される乗員の行動の種類とを対応付ける情報である。一例として、次のよう認識結果と行動との対応付けパターンがある。
【0018】
例えば、運転席に座る乗員(運転者)の顔の向き又は視線の向きが正面以外の場合、運転者は脇見している可能性がある。そこで、
図3に示されるように、認識-行動情報38では、運転者の顔又は視線の向きが前以外という認識結果に対して、脇見という行動が対応付けられる。
【0019】
例えば、乗員は車室で飲食又は喫煙する場合に、手を口周辺と口周辺以外の場所との間で往復させる可能性がある。そこで、
図3に示されるように、認識-行動情報38では、乗員の手が口周辺と口周辺以外の場所との間を往復するという認識結果に対して、飲食又は喫煙という行動が対応付けられる。
【0020】
例えば、乗員がスマートフォンを把持する場合、その乗員は電話又は電子メール又は情報検索をしている可能性がある。そこで、
図3に示されるように、認識-行動情報38では、スマートフォンという物体に対して、スマートフォンの操作といった行動が対応付けられる。
【0021】
例えば、乗員がナビゲーション装置16を操作する場合、ナビゲーション装置16に近接する監視カメラ12の近くでスイッチ類を操作する。このとき、乗員の指又は掌が監視カメラ12のレンズを遮る可能性が高い。すると、そのとき監視カメラ12によって撮影される画像40の大部分には、レンズに近接する乗員の指又は掌が写される。そこで、
図3に示されるように、認識-行動情報38では、監視カメラ12が近接物(乗員の指又は掌)を認識するという認識結果に対して、ナビゲーション装置16の操作という行動が対応付けられる。
【0022】
[2.乗員行動判定装置10が行う処理]
図4を用いて乗員行動判定装置10が行う処理を説明する。
図4に示される処理は、車両がスイッチ(イグニッションスイッチ、スタートスイッチ等)の操作に応じて始動してからスイッチの操作に応じて停止するまでの間に繰り返し実行される。
【0023】
ステップS1において、監視カメラ12は、乗員を撮影して画像40を取得する。監視カメラ12は、画像40を行動判定ECU18に出力する。
【0024】
ステップS2において、画像処理部26は、監視カメラ12が出力した画像40を用いて多重解像度解析を行い、低解像度画像42と高解像度画像44を生成する。
【0025】
ステップS3において、近接物認識部28は、低解像度画像42に基づいて監視カメラ12に近接する近接物の有無を認識する。監視カメラ12のレンズに乗員の指等が近接すると、指等は近赤外線LED20によって照明される。このため、画像40には白飛び部分が多く含まれる。
図5A及び
図5Bに示されるように、白飛びは、解像度に関係なく発生する。従って、近接物認識部28は、低解像度画像42であっても、そこに含まれる白飛び部分の割合を判定することにより、近接物の有無を認識することができる。近接物の有無を認識するための閾値は、予め記憶装置24に記憶される。監視カメラ12に近接する近接物がある場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4に移行する。一方、監視カメラ12に近接する近接物がない場合(ステップS3:NO)、処理はステップS5に移行する。
【0026】
ステップS4において、行動判定部36は、近接物認識部28の認識結果に基づいて乗員の行動を判定する。行動判定部36は、認識-行動情報38に基づいて、乗員の行動をナビゲーション装置16の操作として判定する。
【0027】
ステップS5において、顔認識部30は、高解像度画像44に基づいて乗員の顔を認識する。また、姿勢認識部32は、高解像度画像44に基づいて乗員の姿勢を認識する。また、物体認識部34は、高解像度画像44に基づいて乗員が把持する物体を認識する。
【0028】
ステップS6において、行動判定部36は、顔認識部30の認識結果と、姿勢認識部32の認識結果と、物体認識部34の認識結果に基づいて乗員の行動を判定する。ここでは、行動判定部36は、認識-行動情報38を参照し、顔認識部30の認識結果に対応付けられる行動を特定し、特定した行動を乗員の行動として判定する。また、行動判定部36は、認識-行動情報38を参照し、姿勢認識部32の認識結果に対応付けられる行動を特定し、特定した行動を乗員の行動として判定する。また、行動判定部36は、認識-行動情報38を参照し、物体認識部34の認識結果に対応付けられる行動を特定し、特定した行動を乗員の行動として判定する。
【0029】
なお、ステップS6では、行動判定部36が1以上の乗員の行動を判定する場合と、行動判定部36が1つの行動も判定することができない場合と、がある。行動判定部36は、乗員の複数の行動を判定する場合に、複数の行動のうちの1つを選択してもよい。
【0030】
[3.近接物認識に基づく行動判定の有意性]
本実施形態では、顔認識と姿勢認識と物体認識の他に近接物認識が行われる。
図6A及び
図6Bを用いて近接物認識に基づく行動判定を行うことの有意性について説明する。
【0031】
顔認識に基づく行動判定には、監視カメラ12による乗員の顔の撮影が必要である。姿勢認識に基づく行動判定には、監視カメラ12による乗員の姿勢の撮影が必要である。物体認識に基づく行動判定には、監視カメラ12による物体の撮影が必要である。しかし、本実施形態のように、監視カメラ12が被操作物14(ナビゲーション装置16)の近傍に設けられると、その被操作物14が操作されるときに、監視カメラ12のレンズが乗員の指又は掌によって遮られる。すると、一時的に顔認識と姿勢認識と物体認識が行われなくなる。このとき、
図6Aに示されるように、一時的に行動判定を行うことができなくなる。
【0032】
一方、本実施形態のように近接物認識を加えることによって、連続的に何らかの認識が行われる。従って、本実施形態は、
図6Bに示されるように、連続した行動判定を行うことができる。
【0033】
[4.変形例]
前述した実施形態では、近接物認識に基づく行動判定が行われる。しかし、近接物認識に基づく行動判定は行われなくてもよい。この場合、少なくとも、顔認識に基づく行動判定と姿勢認識に基づく行動判定が行われればよい。更に、物体認識に基づく行動判定が行われるとより好ましい。
【0034】
また、顔認識と姿勢認識と物体認識と近接物認識が同じ解像度の画像40に基づいて行われてもよい。
【0035】
[5.実施形態から得られる技術的思想]
上記実施形態及び変形例から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0036】
本発明の一態様は、
車両の乗員を撮影して画像40を取得する監視カメラ12と、
前記画像40に基づいて前記乗員の顔を認識する顔認識部30と、
前記画像40に基づいて前記乗員の姿勢を認識する姿勢認識部32と、
前記顔認識部30の認識結果と、前記姿勢認識部32の認識結果と、に基づいて車室内における前記乗員の行動を判定する行動判定部36と、
を備える。
【0037】
上記構成によれば、乗員の顔を認識するだけでなく、乗員の姿勢を認識するため、乗員の様々な行動を判定することができる。
【0038】
本発明の一態様において、
前記画像40に基づいて前記乗員が把持する物体を認識する物体認識部34を更に備え、
前記行動判定部36は、前記顔認識部30の認識結果と、前記姿勢認識部32の認識結果と、前記物体認識部34の認識結果と、に基づいて前記乗員の行動を判定してもよい。
【0039】
上記構成によれば、乗員が把持する物体を認識するため、乗員の顔及び姿勢だけでは判定することが難しい乗員の行動を判定することができる。
【0040】
本発明の一態様において、
前記画像40に基づいて前記監視カメラ12に近接する近接物(指又は掌)を認識する近接物認識部28と、
前記画像40から、相対的に解像度が高い高解像度画像44と、相対的に解像度が低い低解像度画像42と、を生成する画像処理部26と、を更に備え、
前記顔認識部30と前記姿勢認識部32は、前記高解像度画像44に基づいて認識を行い、
前記近接物認識部28は、前記低解像度画像42に基づいて認識を行ってもよい。
【0041】
上記構成によれば、顔の認識処理と姿勢の認識処理が高解像度画像44を用いて行われるため、乗員の顔及び姿勢に基づく行動判定の精度を高くすることができる。また、上記構成においては、近接物の認識処理が低解像度画像42を用いて行われる。監視カメラ12のレンズに乗員の指等が近接すると、画像40には白飛び部分が多く含まれる。白飛びは、解像度に関係なく発生する。従って、低解像度画像42であっても、近接物の有無を認識することは可能である。なお、低解像度画像42を用いる認識処理は、高解像度画像44を用いる認識処理よりも演算負荷が少ない。
【0042】
本発明の一態様において、
前記監視カメラ12は、前記乗員の指によって操作される前記車両の被操作物14(ナビゲーション装置16)に近接して設けられており、
前記行動判定部36は、前記近接物認識部28が前記近接物(指又は掌)を認識する場合に、前記乗員の前記行動を、前記被操作物14の操作行動として判定してもよい。
【0043】
上記構成によれば、乗員の顔の認識処理及び乗員の姿勢の認識処理を行うことが困難な状況であっても、監視カメラ12に近接して被操作物14が設けられ、監視カメラ12が遮られるという状況から、乗員の行動を判定することができる。
【0044】
なお、本発明に係る乗員行動判定装置は、前述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
10…乗員行動判定装置 12…監視カメラ
14…被操作物 16…ナビゲーション装置
26…画像処理部 28…近接物認識部
30…顔認識部 32…姿勢認識部
34…物体認識部 36…行動判定部
40…画像 42…低解像度画像
44…高解像度画像