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特許7402085作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20231213BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20231213BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E02F9/22 K
F15B11/08 B
F15B11/028 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020044981
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021147756
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二宮 清孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広治
(72)【発明者】
【氏名】東浦 拓也
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃弘
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120391(JP,A)
【文献】特開2020-002734(JP,A)
【文献】特開2020-002735(JP,A)
【文献】特開2003-074296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/08
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を供給されることにより伸長位置と縮退位置との間で駆動するカプラシリンダと、
前記伸長位置と前記縮退位置との間で駆動させるために前記カプラシリンダに油を供給する油圧ポンプと、
前記カプラシリンダへの油の供給を制御するバルブと、
前記バルブの駆動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記油圧ポンプと前記バルブとの間の油路における圧力に基づいて前記カプラシリンダへの油の供給停止を前記バルブに指令する、作業機械の油圧システム。
【請求項2】
前記カプラシリンダが前記伸長位置および前記縮退位置の各々で固定されている状態において前記カプラシリンダには所定値以上の圧力の油が供給される、請求項1に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記カプラシリンダへの油の供給指令に基づいて前記カプラシリンダへの油の供給開始を前記バルブに指令する、請求項1または請求項2に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項4】
油の前記供給指令は、オルタネートスイッチの操作に基づく、請求項3に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記油圧ポンプと前記カプラシリンダとの間の前記油路における圧力が所定圧力に到達した時点で前記カプラシリンダへの油の供給を停止し、
前記所定圧力はパイロット圧より大きく設定される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項6】
前記カプラシリンダの前記伸長位置と前記縮退位置とを切り換える切替バルブをさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項7】
前記油圧ポンプと前記カプラシリンダとの間の前記油路における圧力を検知する圧力センサをさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作業機械の油圧システム。
【請求項8】
機械本体と、
前記機械本体に対してロック状態とアンロック状態とを切り換えられるアタッチメントと、
油を供給されることにより前記アタッチメントの前記ロック状態と前記アンロック状態との間で駆動するカプラシリンダと、
前記カプラシリンダに油を供給する油圧ポンプと、
前記カプラシリンダへの油の供給を制御するバルブと、
前記バルブの駆動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記油圧ポンプと前記バルブとの間の油路における圧力に基づいて前記カプラシリンダへの油の供給停止を前記バルブに指令する、作業機械。
【請求項9】
油を供給されることにより伸長位置と縮退位置との間で駆動するカプラシリンダと、前記伸長位置と前記縮退位置との間で駆動させるために前記カプラシリンダに油を供給する油圧ポンプと、前記カプラシリンダへの油の供給を制御するバルブと、を有する作業機械における油圧システムの制御方法であって、
前記油圧ポンプと前記バルブとの間の油路における圧力を検知するステップと、
検知された前記圧力に基づいて前記カプラシリンダへの油の供給停止信号を前記バルブに出力するステップと、を備えた、油圧システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種アタッチメントを着脱可能なクイックカプラを作業機の先端に設けた作業機械が知られている。クイックカプラはクイックカプラシリンダを有する。クイックカプラシリンダは、作動油の供給によって伸縮することによりアタッチメントをロックまたはアンロックする。
【0003】
ここで、特開2012-2034号公報(特許文献1参照)では、アタッチメントをロックするためにオペレータがスイッチ操作した際、スイッチ操作から所定時間経過後にクイックカプラシリンダへの作動油の供給を終了させる手法が開示されている。この手法によれば、油圧ポンプを効率的に駆動させることによって、燃費を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-2034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の手法では、時間管理により作動油の供給が終了されている。このため、クイックカプラ切替回路に異常があった場合、アタッチメントがロックされていないにもかかわらず所定時間が経過したことによりロックされたと誤認識するおそれがある。この場合、アタッチメントの脱落などが発生する。
【0006】
本開示の目的は、燃費が良好で、ロック状態の誤認識を抑制可能な作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業機械の油圧システムは、カプラシリンダと、油圧ポンプと、バルブと、コントローラとを備える。カプラシリンダは、油を供給されることにより伸長位置と縮退位置との間で駆動する。油圧ポンプは、伸長位置と縮退位置との間で駆動させるためにカプラシリンダに油を供給する。バルブは、カプラシリンダへの油の供給を制御する。コントローラは、バルブの駆動を制御する。コントローラは、油圧ポンプとカプラシリンダとの間の油路における圧力に基づいてカプラシリンダへの油の供給停止をバルブに指令する。
【0008】
本開示の作業機械は、機械本体と、アタッチメントと、カプラシリンダと、油圧ポンプと、バルブと、コントローラとを備える。アタッチメントは、機械本体に対してロック状態とアンロック状態とを切り換えられる。カプラシリンダは、油を供給されることによりアタッチメントのロック状態とアンロック状態との間で駆動する。油圧ポンプは、カプラシリンダに油を供給する。バルブは、カプラシリンダへの油の供給を制御する。コントローラは、バルブの駆動を制御する。コントローラは、油圧ポンプとカプラシリンダとの間の油路における圧力に基づいてカプラシリンダへの油の供給停止をバルブに指令する。
【0009】
本開示の油圧システムの制御方法は、カプラシリンダと、油圧ポンプと、バルブとを有する作業機械における油圧システムの制御方法である。カプラシリンダは、油を供給されることにより伸長位置と縮退位置との間で駆動する。油圧ポンプは、伸長位置と縮退位置との間で駆動させるためにカプラシリンダに油を供給する。バルブは、カプラシリンダへの油の供給を制御する。油圧システムの制御方法は以下のステップを有する。
【0010】
油圧ポンプとカプラシリンダとの間の油路における圧力が検知される。検知された圧力に基づいてカプラシリンダへの油の供給停止信号がバルブに出力される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、燃費が良好で、ロック状態の誤認識を抑制可能な作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施の形態における作業機械の例としてホイールローダの構成を示す側面図である。
図2】作業機械においてカプラシリンダがアンロック状態(A)とロック状態(B)との間で駆動する様子を示す、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の作業機械に用いられる油圧システムにおいてカプラシリンダのロック状態を示す図である。
図4図1の作業機械に用いられる油圧システムにおいてカプラシリンダのアンロック状態を示す図である。
図5図1の作業機械に用いられるコントローラの機能ブロックを示す図である。
図6図1の作業機械に用いられる油圧システムの制御方法の一例を示すフロー図である。
図7】アンロック状態からロック状態へ切り替えたときの切替スイッチ(A)、カプラ切替バルブ(B)、電磁切替バルブ(C)および圧力センサ(D)の制御チャートを示す図である。
図8】油圧システムの変形例におけるカプラシリンダのロック状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0014】
<ホイールローダ1の構成>
一実施の形態における作業機械の一例としてホイールローダの構成について図1を用いて説明する。なお本実施の形態における作業機械はホイールローダに限定されるものではない。本実施の形態の作業機械は、クイックカプラを搭載している作業機械であればよく、油圧ショベル、ブルドーザ、モータグレーダなどであってもよい。
【0015】
図1は、本開示の一実施の形態における作業機械(ホイールローダ)の構成を示す側面図である。ホイールローダ1は、車体フレーム2、作業機3、走行装置4およびキャブ5を有する。
【0016】
車体フレーム2は、前フレーム11と、後フレーム12とを有する。前フレーム11には、作業機3が取り付けられる。後フレーム12には、図示しないエンジンなどが搭載される。
【0017】
前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、作動油の供給によって伸縮する油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13の伸縮によって、前フレーム11および後フレーム12は互いに左右方向に揺動可能である。
【0018】
走行装置4は、前走行輪4aと後走行輪4bを有する。前走行輪4aおよび後走行輪4bの各々が回転駆動されることによってホイールローダ1が自走する。キャブ5は、車体フレーム2上に載置される。キャブ5は、作業機3の後方に配置される。キャブ5内には、オペレータが着座するシートや操作装置などが配置される。
【0019】
作業機3は、前フレーム11の前方に取り付けられる。作業機3は、バケット6と、クイックカプラ7と、ブーム14と、ベルクランク16と、チルトロッド17、ブームシリンダ18と、バケットシリンダ19とを有する。
【0020】
なおバケット6はアタッチメントの一態様である。アタッチメントは、バケット6に限定されず、フォーク、ブレーカなどの別の態様であってもよい。
【0021】
ブーム14の基端部は、前フレーム11に回転自在に取付けられる。バケット6は、ブーム14の先端にクイックカプラ7を介在して回転自在に取付けられる。
【0022】
ブームシリンダ18はブーム14を駆動する。ブームシリンダ18の一端は、前フレーム11に回転可能に取り付けられる。ブームシリンダ18の他端は、ブーム14に回転可能に取り付けられる。
【0023】
ブームシリンダ18はたとえば油圧シリンダである。ブームシリンダ18は、メインポンプ23(図3、4)からの作動油によって伸縮する。これによりブーム14が駆動し、ブーム14の先端に取り付けられたバケット6が昇降する。
【0024】
ベルクランク16の一方端部はバケットシリンダ19を介在して前フレーム11に接続される。ベルクランク16の他方端部はチルトロッド17を介在してクイックカプラ7に接続される。クイックカプラ7は、バケット6とともにブーム14に対して回転可能である。
【0025】
バケットシリンダ19の一端は前フレーム11に回転可能に取り付けられる。バケットシリンダ19の他端はベルクランク16に回転可能に取り付けられる。バケットシリンダ19はたとえば油圧シリンダである。バケットシリンダ19は、メインポンプ23(図3、4)からの作動油によって伸縮する。これによりバケット6が駆動し、バケット6がブーム14に対して上下に回動する。
【0026】
クイックカプラ7は、フレーム7aと、連結ピン7cとを有する。フレーム7aは、貫通孔7bを有している。貫通孔7bは、フレーム7aを左右方向に貫通している。連結ピン7cは、フレーム7aに固定され、かつ左右方向に延びている。
【0027】
クイックカプラ7は、カプラシリンダ(図示せず)を有する。カプラシリンダは、油の供給によって伸縮する油圧シリンダである。カプラシリンダのピストンロッドの先端には固定ピン22が取り付けられている。
【0028】
バケット6は、後端にブラケット6aを有している。ブラケット6aは、貫通孔6bを有している。貫通孔6bは、ブラケット6aを左右方向に貫通している。ブラケット6aの上端にはフック6cが設けられている。
【0029】
バケット6がクイックカプラ7に装着される際には、まずバケット6のフック6cがクイックカプラ7の連結ピン7cに引っ掛けられる。この後、バケット6の貫通孔6bとクイックカプラ7の貫通孔7bとの双方に、カプラシリンダに取り付けられた固定ピン22が挿入される。
【0030】
<カプラシリンダ21のアンロック状態とロック状態>
次に、カプラシリンダ21のアンロック状態とロック状態とについて図2を用いて説明する。
【0031】
図2は、作業機械においてカプラシリンダがアンロック状態(A)とロック状態(B)との間で駆動する様子を示す、図1のII-II線に沿う断面図である。
【0032】
図2(A)に示されるように、クイックカプラ7は、カプラシリンダ21を有する。カプラシリンダ21は、シリンダチューブ21aと、ピストン21bと、ピストンロッド21cとを有する。
【0033】
シリンダチューブ21aは円筒形状を有する。ピストン21bはシリンダチューブ21aの内部に摺動可能に配置される。ピストンロッド21cは、一方端においてピストン21bに接続され、他方端においてシリンダチューブ21aの外部に突き出す。シリンダチューブ21aの外部に突き出したピストンロッド21cの他方端には固定ピン22が接続される。
【0034】
シリンダチューブ21aの内部であってピストン21bのヘッド側21Hとボトム側21Bとの各々に、油を供給・排出可能である。ピストン21bのヘッド側21Hとは、ピストン21bに対するピストンロッド21c側を意味する。またピストン21bのボトム側21Bとは、ピストン21bに対するヘッド側21Hとは逆側を意味する。
【0035】
クイックカプラ7のフレーム7aに設けられた貫通孔7bは、カプラシリンダ21の伸縮方向の延長線上に位置する。貫通孔7bは、固定ピン22を挿入可能な寸法を有する。またバケット6のブラケット6aに設けられた貫通孔6bも、固定ピン22を挿入可能な寸法を有する。
【0036】
バケット6がクイックカプラ7に装着される際には、まずバケット6のフック6cがクイックカプラ7の連結ピン7cに引っ掛けられる。この後、バケット6の貫通孔6bが、カプラシリンダ21の伸縮方向の延長線上に位置づけられる。この状態では、まだバケット6はクイックカプラ7にロックされておらず、アンロック状態である。
【0037】
このアンロック状態から、カプラシリンダ21のボトム側21Bに作動油が供給される。これによりピストン21bがヘッド側21Hに移動する。このピストン21bの移動に伴って固定ピン22も移動する。
【0038】
図2(B)に示されるように、固定ピン22の上記の移動により、固定ピン22が貫通孔6bと貫通孔7bとの双方に挿入される。これによりバケット6はクイックカプラ7にロックされて、ロック状態となる。
【0039】
本実施の形態においてロック状態は、カプラシリンダ21が伸長位置に固定された状態であって、シリンダ圧力(ボトム側21Bの圧力)が所定値以上の圧力(たとえばパイロット圧以上の圧力)である状態をいう。また本実施の形態においてアンロック状態は、カプラシリンダ21が縮退した状態であって、シリンダ圧力(ヘッド側21Hの圧力)が所定値以上の圧力(たとえばパイロット圧以上の圧力)である状態をいう。パイロット圧については後述する。
【0040】
なおカプラシリンダ21が縮退位置に固定された状態であって、シリンダ圧力(ヘッド側21Hの圧力)が所定値以上の圧力(たとえばパイロット圧以上の圧力)である状態がロック状態となるように設定されてもよい。またカプラシリンダ21が伸長位置に固定された状態であって、シリンダ圧力(ボトム側21Bの圧力)が所定値以上の圧力(たとえばパイロット圧以上の圧力)である状態がアンロック状態に設定されてもよい。
【0041】
バケット6がロック状態からアンロック状態へ移行する際には、カプラシリンダ21のヘッド側21Hに作動油が供給される。これによりピストン21bがボトム側21Bに移動する。このピストン21bの移動に伴って固定ピン22も移動する。
【0042】
図2(A)に示されるように、固定ピン22の上記の移動により、固定ピン22が貫通孔6bと貫通孔7bとの双方から抜かれる。これによりクイックカプラ7に対するバケット6のロック状態が解除されて、バケット6はアンロック状態となる。
【0043】
<油圧システム20>
次に、カプラシリンダ21を駆動制御する油圧システム20について図3および図4を用いて説明する。
【0044】
図3および図4のそれぞれは、図1の作業機械に用いられる油圧システムにおいてカプラシリンダのロック状態およびアンロック状態を示す図である。
【0045】
図3に示されるように、油圧システム20は、カプラシリンダ21と、メインポンプ23と、昇圧バルブ25と、減圧バルブ26と、カプラ切替バルブ27と、切替スイッチ28と、ポンプ29aと、シャトルバルブ29bと、コントローラ30と、圧力センサ41とを有する。
【0046】
カプラシリンダ21は、ロック方向P1およびアンロック方向P2のいずれかに駆動する。ロック方向P1とは、クイックカプラ7にバケット6をロックするための駆動方向である。アンロック方向P2とは、クイックカプラ7からバケット6をアンロックするための駆動方向である。
【0047】
本実施の形態では、カプラシリンダ21が伸張するとバケット6がロックされ、カプラシリンダ21が収縮するとバケット6がアンロックされるように構成される。ただし、カプラシリンダ21が収縮するとバケット6がロックされ、カプラシリンダ21が伸張するとバケット6がアンロックされるように構成されてもよい。
【0048】
メインポンプ23およびポンプ29aの各々は、エンジン(不図示)によって駆動される。メインポンプ23は、カプラシリンダ21および作業機シリンダ(ブームシリンダ18、バケットシリンダ19:図1)の各々に作動油を供給する。メインポンプ23には、カプラシリンダ21および作業機シリンダ18、19が互いに並列に接続される。
【0049】
メインポンプ23は、たとえば可変容量ポンプである。メインポンプ23から供給される作動油の容量は、斜板23aの傾斜角度を変更することによって調整できる。斜板23aの傾斜角度は、容量制御弁(不図示)によって変更される。
【0050】
ポンプ29aは、カプラシリンダ21およびメインバルブ24aの各々にパイロット油を供給する。
【0051】
本明細書においては、カプラシリンダ21および作業機シリンダ18、19を作動するために、それらのシリンダ21、18、19に供給される油は作動油と称される。またカプラシリンダ21のロック状態またはアンロック状態を保持(ホールド)するため、またメインバルブ24aのスプールを駆動するために供給される油はパイロット油と称される。またパイロット油の圧力はパイロット圧(PPC圧)と称される。作動油はたとえば30MPaの圧力を有する油であり、パイロット油はたとえば3MPaの圧力(パイロット油圧)を有する油である。作動油の圧力は、パイロット油圧とは異なり、パイロット油圧よりも高い。
【0052】
昇圧バルブ25は、カプラシリンダ21へ供給する作動油の圧力を増加(昇圧)または減少(降圧)させる。昇圧バルブ25は、メインバルブ24aと、電磁切替バルブ(ソレノイドバルブ)24bとを有する。
【0053】
メインバルブ24aは、油圧配管を介して、メインポンプ23に接続される。メインバルブ24aは、メインポンプ23から供給される作動油を、カプラシリンダ21に送り出す。
【0054】
電磁切替バルブ24bは、ポンプ29aからパイロット油を供給される。電磁切替バルブ24bは、コントローラ30と電気的に接続されている。これにより電磁切替バルブ24bは、コントローラ30からの電流指令を受ける。
【0055】
電磁切替バルブ24bは、電流指令の電流値に応じたパイロット圧を発生する。電磁切替バルブ24bは、パイロット圧によってメインバルブ24aのスプールを駆動する。メインバルブ24aのスプールが駆動することにより、メインバルブ24aからカプラシリンダ21へ送り出される作動油の量が変化する。
【0056】
これにより、カプラシリンダ21への作動油の供給開始と供給停止とが制御可能である。またカプラシリンダ21へ供給される作動油の油圧の増加(昇圧)と減少(降圧)とが制御可能である。
【0057】
減圧バルブ26は、油圧配管を介して、メインバルブ24aとカプラ切替バルブ27とに接続される。減圧バルブ26は、メインポンプ23から供給される作動油の油圧が所定値より大きい場合、油圧を所定値まで減圧させる。これによって、カプラシリンダ21に過剰な油圧が印加されることが抑制される。減圧バルブ26は、メインポンプ23から供給される作動油の油圧が所定値以下である場合、油圧を調整しない。
【0058】
カプラ切替バルブ27は、油圧配管を介して、減圧バルブ26とカプラシリンダ21とに接続される。カプラ切替バルブ27は、コントローラ30と電気的に接続される。カプラ切替バルブ27は、コントローラ30からの電気指令を受けて、ロック側位置R1と、アンロック側位置R2とに切り替え可能である。
【0059】
ロック側位置R1は、カプラシリンダ21がロック方向P1に駆動するようにメインポンプ23からの作動油をカプラシリンダ21に供給する位置である。具体的にはカプラ切替バルブ27がロック側位置R1にあるとき、メインポンプ23からの作動油はカプラシリンダ21のボトム側21Bに供給される。
【0060】
アンロック側位置R2は、カプラシリンダ21がアンロック方向P2に駆動するようにメインポンプ23からの作動油をカプラシリンダ21に供給する位置である。具体的にはカプラ切替バルブ27がアンロック側位置R2にあるとき、メインポンプ23からの作動油はカプラシリンダ21のヘッド側21Hに供給される。
【0061】
カプラ切替バルブ27の位置は、切替スイッチ28によって切り替えられる。切替スイッチ28は、コントローラ30に電気的に接続される。切替スイッチ28は、ロック位置とアンロック位置との少なくとも2つの位置で切り替え可能なレバー、ダイアルなどを有する。切替スイッチ28は、たとえばシーソースイッチなどであるが、これに限られない。
【0062】
コントローラ30は、切替スイッチ28のロック位置またはアンロック位置のいずれかの位置を表す電気信号を切替スイッチ28から受ける。コントローラ30は、位置を表す電気信号に基づいてカプラ切替バルブ27に、ロック側位置R1とアンロック側位置R2とを切り替える電気指令を発する。
【0063】
シャトルバルブ29bは、2つの入口と共通の出口とを持ち、出口は入口圧力の作用によって入口のいずれか一方に自動的に接続される。これによりシャトルバルブ29bは、メインポンプ23から供給される作動油と、ポンプ29aから供給されるパイロット油とのいずれか一方のみを選択的にカプラシリンダ21へ供給する。
【0064】
具体的にはシャトルバルブ29bに作用する作動油の圧力がシャトルバルブ29bに作用するパイロット油の圧力よりも大きいときには、作動油がカプラシリンダ21に供給される。またシャトルバルブ29bに作用する作動油の圧力がシャトルバルブ29bに作用するパイロット油の圧力よりも小さいときには、パイロット油がカプラシリンダ21に供給される。
【0065】
圧力センサ41は、メインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路に設けられる。これによりメインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路における油圧(圧力)が圧力センサ41により検知される。圧力センサ41は、たとえばメインポンプ23とメインバルブ24aとの間の油路に設けられている。
【0066】
圧力センサ41は、コントローラ30に電気的に接続される。これにより圧力センサ41により検知された圧力は電気信号としてコントローラ30へ入力される。コントローラ30は、圧力を示す電気信号に基づいてカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給停止を昇圧バルブ25の電磁切替バルブ24bに指令する。
【0067】
油圧システム20においてバケット6がロック状態にあるときには、図3に示されるようにカプラ切替バルブ27は、コントローラ30からの電気指令を受けてロック側位置R1に切り替えられている。これにより作動油またはパイロット油はカプラシリンダ21のボトム側21Bに供給される。
【0068】
一方、油圧システム20においてバケット6がアンロック状態にあるときには、図4に示されるようにカプラ切替バルブ27は、コントローラ30からの電気指令を受けてアンロック側位置R2に切り替えられている。これにより作動油またはパイロット油はカプラシリンダ21のヘッド側21Hに供給される。
【0069】
本実施の形態における油圧システムはオルタネート方式である。オルタネート方式とは、切替スイッチ28の信号をコントローラ30を介して昇圧バルブ25へ入力することによりカプラシリンダ21の昇圧を行なう方式である。
【0070】
オルタネート方式の場合、切替スイッチ28をロック位置またはアンロック位置に一旦切り替えると、オペレータが切替スイッチ28から手を離しても切替スイッチ28はその状態を維持する。このようにオペレータが手を離しても状態を維持する切替スイッチ28を本明細書では「オルタネートスイッチ」と称する。
【0071】
オルタネートスイッチ28の操作に基づいてカプラシリンダ21を昇圧する場合、カプラシリンダ21へ昇圧された作動油が供給され続ける。この場合、作動油の昇圧を停止しないと、カプラシリンダ21がストロークエンドの状態で油圧がリリーフし続け、燃料が無駄に消費され続ける。
【0072】
そこで本実施の形態においては、カプラシリンダ21がストロークエンドに達した状態か否かが圧力センサ41およびコントローラ30により監視される。具体的には、コントローラ30は圧力センサ41により検知された圧力が所定圧力より高くなった時点でカプラシリンダ21がストロークエンドに達したとみなしてカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給停止を昇圧バルブ25に指令する。
【0073】
<コントローラ30の機能ブロック>
次に、コントローラ30の機能ブロックについて図5を用いて説明する。
【0074】
図5は、図1の作業機械に用いられるコントローラの機能ブロックを示す図である。図5に示されるように、コントローラ30は、スイッチ信号取得部31と、スイッチ信号判定部32と、圧力信号取得部33と、圧力信号判定部34と、バルブ制御部35とを有する。
【0075】
スイッチ信号取得部31は、切替スイッチ28のロック位置またはアンロック位置のいずれかの位置を表す電気信号を取得する。スイッチ信号判定部32は、スイッチ信号取得部31が取得した信号に基づいて、切替スイッチ28がロック位置にあるか、アンロック位置にあるかを判定する。スイッチ信号判定部32は、ロック位置またはアンロック位置の位置信号をバルブ制御部35へ出力する。
【0076】
バルブ制御部35は、受け取った位置信号に基づいてカプラ切替バルブ27を駆動制御する。バルブ制御部35がロック位置の信号を受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラ切替バルブ27がロック側位置R1に切り替わるようカプラ切替バルブ27を制御する。またバルブ制御部35がロック位置の信号を受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラシリンダ21への作動油の供給開始を昇圧バルブ25に指令する。この指令によりカプラシリンダ21のボトム側21Bに作動油が供給される。これによりカプラシリンダ21がロック方向P1に駆動し、ロック状態となる。
【0077】
またバルブ制御部35がアンロック位置の信号を受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラ切替バルブ27がアンロック側位置R2に切り替わるようカプラ切替バルブ27を制御する。またバルブ制御部35がアンロック位置の信号を受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラシリンダ21への作動油の供給開始を昇圧バルブ25に指令する。この指令によりカプラシリンダ21のヘッド側21Hに作動油が供給される。これによりカプラシリンダ21がアンロック方向P2に駆動し、カプラシリンダ21がアンロック状態となる。
【0078】
圧力信号取得部33は、圧力センサ41により検知された圧力を表す電気信号を取得する。圧力信号判定部34は、圧力信号取得部33が取得した信号に基づいて、圧力値を判定する。具体的には、圧力信号判定部34は、圧力信号取得部33が取得した油圧が所定圧力よりも高いか否かを判定する。この所定圧力は、記憶部40に記憶されている。
【0079】
所定圧力は、たとえばパイロット圧よりも大きく設定される。所定圧力は、温度によって変更されてもよい。所定圧力は、たとえばカプラシリンダ21のリリーフ弁におけるリリーフ圧よりも小さく設定されてもよい。ただしメインポンプ23の近くに圧力センサ41が配置される場合には、所定圧力は上記リリーフ圧よりも高い場合もある。
【0080】
圧力信号判定部34は、圧力信号取得部33が取得した油圧が所定圧力よりも高いか否かの判定結果の信号をバルブ制御部35へ出力する。
【0081】
バルブ制御部35は、受け取った判定結果の信号に基づいて昇圧バルブ25を駆動制御する。圧力センサ41により検知された圧力が所定圧力よりも高いとの判定結果をバルブ制御部35が受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラシリンダ21への作動油の供給が停止するように昇圧バルブ25を制御する。具体的には、カプラシリンダ21への作動油の供給停止は、バルブ制御部35から指令を受けた電磁切替バルブ24bがメインバルブ24aのスプールを駆動制御することにより行なわれる。
【0082】
また圧力センサ41により検知された圧力が所定圧力以下であるとの判定結果をバルブ制御部35が受け取った場合、バルブ制御部35は、カプラシリンダ21への作動油の供給を継続するように昇圧バルブ25を制御する。
【0083】
コントローラ30および記憶部40は、作業機械1(図1)に搭載されていてもよく、作業機械1の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ30および記憶部40が作業機械1の外部に離れて配置されている場合、コントローラ30および記憶部40は、作業機械1(圧力センサ41、切替スイッチ28、カプラ切替バルブ27、昇圧バルブ25)などと無線により接続されていてもよい。コントローラ30は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0084】
記憶部40はコントローラ30と有線(電気配線など)により接続されていてもよく、また無線により接続されていてもよい。記憶部40は、コントローラ30に含まれていてもよい。
【0085】
<油圧システム20の制御方法>
次に、図3および図4に示す本実施の形態における油圧システム20の制御方法について図6図7を用いて説明する。ここでは、バケット6をアンロック状態(図4)からロック状態(図3)へ切り替える場合の制御方法を例に挙げて説明する。
【0086】
図6は、図1の作業機械に用いられる油圧システムの制御方法の一例を示すフロー図である。図7は、アンロック状態からロック状態へ切り替えたときの切替スイッチ(A)、方向切替用電磁切替バルブ(B)、昇圧用電磁切替バルブ(C)および圧力センサ(D)の制御チャートを示す図である。
【0087】
まず油圧システム20は、図4に示されるアンロック状態にある。昇圧停止後のアンロック状態においては、図7(A)に示されるように切替スイッチ28はアンロック位置にある。またカプラ切替バルブ27は、図7(B)に示されるように、オン信号が入力されることによりアンロック側位置R2(図4)に位置している。また電磁切替バルブ24bは、図7(C)に示されるようにオフ信号が入力されることによりメインポンプ23からの作動油をカプラシリンダ21へ供給しない。このため圧力センサ41により検知される圧力は、図7(D)に示されるように0となる。
【0088】
なおカプラシリンダ21へは、ポンプ29aからパイロット油が供給されている。このためカプラシリンダ21のヘッド側21Hはパイロット圧となっている。このパイロット圧によりカプラシリンダ21のアンロック状態が保持(ホールド)される。
【0089】
図7(A)に示されるように、切替スイッチ28がアンロック位置からロック位置に切り替えられる。これにより図5に示されるように、切替スイッチ28におけるロック位置への切替を表す電気信号がコントローラ30のスイッチ信号判定部32に入力される(ステップS1)。具体的にはコントローラ30は、カプラシリンダ21への作動油の供給指令を切替スイッチ28から入力される。この後、スイッチ信号判定部32は、切替スイッチ28がロック位置にあることを判定し、ロック位置の位置信号をバルブ制御部35へ出力する。
【0090】
バルブ制御部35は、受け取った位置信号に基づいてカプラ切替バルブ27と昇圧バルブ25とを駆動制御する(ステップS2)。具体的にはバルブ制御部35は、図7(B)に示されるようにカプラ切替バルブ27にオフ信号(ロック側位置R1への切替信号)を出力する。つまりバルブ制御部35は、アンロック側位置R2からロック側位置R1への切り替えをカプラ切替バルブ27に指令する。これによりカプラ切替バルブ27は、アンロック側位置R2(図4)からロック側位置R1(図3)に切り替わる。
【0091】
またバルブ制御部35は、図7(C)に示されるように昇圧バルブ25の電磁切替バルブ24bにオン信号(カプラシリンダ21への作動油の供給開始信号)を出力する。つまりバルブ制御部35は、カプラシリンダ21の昇圧開始を昇圧バルブ25に指令する。この指令によりメインバルブ24aのスプールが駆動して、メインポンプ23から作動油が昇圧バルブ25を通じてカプラシリンダ21へ供給開始される。これによりカプラシリンダ21のボトム側が非昇圧状態から昇圧状態とされ、カプラシリンダ21のピストン21bがロック方向P1に駆動してアンロック状態からロック状態への移行が開始される(ステップS3)。
【0092】
圧力センサ41は、メインポンプ23からカプラシリンダ21までの油路における圧力を検知する(ステップS4)。カプラシリンダ21の昇圧が開始されると、図7(D)に示されるように、圧力センサ41により検知される圧力が次第に上昇する。上昇した圧力が所定圧力を超えたか否かが、コントローラ30の圧力信号判定部34により判定される(ステップS5)。
【0093】
上記判定の結果、圧力センサ41により検知された圧力が所定圧力を超えていないと判定された場合、圧力信号判定部34による所定圧力を超えたか否かの判定が繰り返される。
【0094】
一方、上記判定の結果、圧力センサ41により検知された圧力が所定圧力を超えたと判定された場合、図5に示されるようにバルブ制御部35は、受け取った判定結果の信号に基づいて昇圧バルブ25を駆動制御する(ステップS6)。
【0095】
具体的にはバルブ制御部35は、図7(C)に示されるように昇圧バルブ25の電磁切替バルブ24bにオフ信号(カプラシリンダ21への作動油の供給停止信号)を出力する。つまりバルブ制御部35は、カプラシリンダ21の昇圧を停止し非昇圧となるように昇圧バルブ25に指令する。この指令によりメインバルブ24aのスプールが駆動して、メインポンプ23からカプラシリンダ21への作動油の供給がメインバルブ24aにより停止される。これにより図7(D)に示されるように、圧力センサ41により検知される圧力は0となる。
【0096】
なお非昇圧の状態においては、ポンプ29aからパイロット油がカプラシリンダ21へ供給されている。このためカプラシリンダ21のボトム側21Bはパイロット圧となっている。このパイロット圧によりカプラシリンダ21のロック状態が保持(ホールド)される。
【0097】
また上記ステップS6においては、図7(C)、(D)に示されるように、圧力センサ41により検知される圧力が所定圧力を超えたと判定されてから所定時間経過後に電磁切替バルブ24bにオフ信号が出力される。また圧力センサ41により検知される圧力が所定圧力を超えてから十分な時間経過後に電磁切替バルブ24bにオフ信号を出力すれば、カプラシリンダ21をストロークエンドに確実に到達させることができる。
【0098】
上記においてはカプラシリンダ21がアンロック状態からロック状態へ移行する場合について説明したが、カプラシリンダ21がロック状態からアンロック状態へ移行する場合にも上記油圧システム20は同様に制御される。
【0099】
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0100】
本実施の形態によれば図3に示されるように、コントローラ30は、メインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路における圧力に基づいてカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給停止を昇圧バルブ25に指令する。このためカプラシリンダ21がストロークエンドに達したことを圧力センサの圧力から検知して、油(たとえば作動油)の昇圧を停止することができる。よって燃料が無駄に消費され続けることを防止でき、燃費が良好となる。
【0101】
またコントローラ30は、メインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路における圧力に基づいてカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給停止を昇圧バルブ25に指令する。このためカプラシリンダ21のロック状態を確実に検出することが可能となる。よってメインポンプ23の異常、バルブ25、27の作動不良などによるロック不良を防止することができる。
【0102】
以上より本実施の形態によれば、燃費が良好で、ロック状態の誤認識を抑制可能な作業機械の油圧システム、作業機械および油圧システムの制御方法を実現することができる。
【0103】
また本実施の形態においては図3図4に示されるように、コントローラ30は、カプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給指令に基づいてカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給開始を昇圧バルブ25に指令する。
【0104】
これにより油の供給をコントローラ30が制御することができる。
また本実施の形態においては図3図4に示されるように、油の供給指令は、オルタネートスイッチの操作に基づく。
【0105】
これにより切替スイッチ28をロック位置またはアンロック位置に一旦切り替えると、オペレータが切替スイッチ28から手を離しても切替スイッチ28はその状態を維持する。
【0106】
また本実施の形態においては図7(C)、(D)に示されるように、コントローラ30は、圧力センサ41により検知される圧力が所定圧力に到達した時点でカプラシリンダ21への油(たとえば作動油)の供給を停止する。この所定圧力はパイロット圧より大きく設定される。
【0107】
カプラシリンダ21のロック状態またはアンロック状態を保持(ホールド)するためにパイロット圧が用いられることがある。この場合、所定圧力がパイロット圧よりも大きく設定されることにより、ロック状態またはアンロック状態を保持する非昇圧状態を昇圧状態と明確に区別することが可能となる。
【0108】
また本実施の形態においては図3および図4に示されるように、油圧システム20は、カプラシリンダ21のロック状態とアンロック状態とを切り替えるカプラ切替バルブ27を有する。これによりカプラシリンダ21のロック状態とアンロック状態との切り替えが可能となる。
【0109】
また本実施の形態においては図3および図4に示されるように、油圧システム20は、メインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路における圧力を検知する圧力センサ41を有する。
【0110】
この圧力センサ41で圧力を検知することにより、カプラシリンダ21のロック状態を確実に検出することが可能となる。よってメインポンプ23の異常、バルブ25、27の作動不良などによるロック不良を防止することができる。
【0111】
なお本実施の形態においては、図3および図4に示されるようにメインポンプ23と昇圧バルブ25との間の圧力を検知できるように圧力センサ41が設けられた構成について説明した。しかし圧力センサ41は、メインポンプ23とカプラシリンダ21との間の油路に設けられていれば、たとえば図8に示されるようにカプラ切替バルブ27とカプラシリンダ21との間の油圧(圧力)を検知できるように配置されていてもよい。
【0112】
また圧力センサ41は、メインポンプ23内の圧力を測定できるように、またカプラシリンダ21内の圧力を測定できるように配置されていてもよい。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 作業機械(ホイールローダ)、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 前走行輪、4b 後走行輪、5 キャブ、6 バケット、6a ブラケット、6b,7b 貫通孔、6c フック、7 クイックカプラ、7a フレーム、7c 連結ピン、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 ブーム、16 ベルクランク、17 チルトロッド、18 ブームシリンダ、19 バケットシリンダ、20 油圧システム、21 カプラシリンダ、21B ボトム側、21H ヘッド側、21a シリンダチューブ、21b ピストン、21c ピストンロッド、22 固定ピン、23 メインポンプ、23a 斜板、24a メインバルブ、24b 電磁切替バルブ、25 昇圧バルブ、26 減圧バルブ、27 カプラ切替バルブ、28 切替スイッチ、29a ポンプ、29b シャトルバルブ、30 コントローラ、31 スイッチ信号取得部、32 スイッチ信号判定部、33 圧力信号取得部、34 圧力信号判定部、35 バルブ制御部、40 記憶部、41 圧力センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8