IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図1
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図2
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図3
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図4
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図5
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図6
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図7
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図8
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図9
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図10
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図11
  • 特許-伸縮管継手及び焼却灰処理設備 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】伸縮管継手及び焼却灰処理設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20231213BHJP
   F23J 3/06 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F16L27/12 H
F23J3/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020045284
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148133
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】玉置 和也
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180967(WO,A1)
【文献】特開平03-153987(JP,A)
【文献】中国実用新案第202203966(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0298374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/12
F23J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される上流側配管と下流側配管の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手であって、
第1端部から第2端部へ軸方向に延びる筒状を呈し、前記第1端部に設けられた第1フランジ、及び、前記第2端部に設けられて前記下流側配管と接続される第2フランジを有する外筒と、
第3端部から第4端部へ前記軸方向に延びる筒状を呈し、前記第3端部に設けられて前記上流側配管と接続される第3フランジ、及び、前記第3端部から前記第4端部までの間の中間部に設けられた中間フランジを有し、前記外筒に内挿された内筒と、
前記第1フランジと接続された外周縁部、前記中間フランジと接続された内周縁部、及び、前記外周縁部と前記内周縁部を繋ぐ伸縮部を有する閉塞部材とを備え、
前記第1端部は、前記第3端部から前記軸方向に離間し、且つ、前記第3端部から前記第4端部までの前記軸方向の間に位置する、
伸縮管継手。
【請求項2】
前記第1フランジと前記中間フランジの前記軸方向の位置が同一である、
請求項1に記載の伸縮管継手。
【請求項3】
前記中間フランジの外径は、前記第2フランジの内径よりも大きく且つ前記第1フランジの内径よりも小さい、
請求項1又は2に記載の伸縮管継手。
【請求項4】
前記外筒は、内周面から半径方向に突出する中空円盤状又は周方向に断続的な中空円盤状の返し板を有する、
請求項1~3のいずれか一項記載の伸縮管継手。
【請求項5】
前記返し板は前記軸方向において前記中間フランジと前記第2フランジの間に位置し、前記中間フランジの外径は前記返し板の内径よりも大きく且つ前記返し板の外径よりも小さい、
請求項4に記載の伸縮管継手。
【請求項6】
前記第3フランジの外縁に沿って周方向に並び、前記第3フランジを前記上流側配管との間で挟み込む複数の第1押さえ部材を更に備え、
前記複数の第1押さえ部材の各々がボルトを挿通するための少なくとも1つの挿通孔を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の伸縮管継手。
【請求項7】
前記閉塞部材の前記内周縁部に沿って周方向に並び、前記内周縁部を前記中間フランジとの間で挟み込む複数の第2押さえ部材を更に備える、
請求項1~6のいずれか一項に記載の伸縮管継手。
【請求項8】
前記閉塞部材の前記外周縁部に沿って周方向に並び、前記外周縁部を前記第1フランジとの間で挟み込む複数の第3押さえ部材を更に備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の伸縮管継手。
【請求項9】
焼却灰を処理する振動機器と、
前記振動機器へ前記焼却灰を送る配管と、
前記配管の出口と前記振動機器の入口との間に設けられた、請求項1~8のいずれか一項に記載の伸縮管継手とを備える、
焼却灰処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統の、搬送物が重力で搬送される箇所に設けられた接続部において、接続される配管同士の間に生じる変位を吸収する伸縮管継手、及びこれを用いた焼却灰処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉粒体を処理する設備において、振動機器と配管の接続部などの変位が発生する接続部に用いられる伸縮管継手が知られている。本願の出願人は、特許文献1において、この種の伸縮管継手を提案している。
【0003】
特許文献1に記載の伸縮管継手は、外筒と、外筒に内挿された内筒と、内筒の上流側端部と外筒の上流側端部との間隙を塞ぐ伸縮性を有する閉塞部材(ベローズ)とを備える。外筒の下流側端部は下流側配管と接続され、内筒の上流側端部は上流側配管と接続される。内筒の上流側端部の高さレベルと外筒の上流側端部の高さレベルとは実質的に等しい。特許文献1の伸縮管継手では、内筒の下流側端部と閉塞部材とが十分に離間されることによって、内筒と外筒の間に侵入する高温の搬送物と閉塞部材との接触が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-173117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伸縮管継手は、予め設置された上流側配管と下流側配管の間に挿入される。伸縮管継手は重量物であり、伸縮管継手の設置箇所は高所や狭隘箇所となることがある。このような条件下では、特許文献1の伸縮管継手では、外筒の上流側端部と内筒の上流側端部と上流側配管の下流側端部の高さレベルが実質的に同一であるために、内筒と上流側配管の接続作業や、閉塞部材の取付作業などを含む伸縮管継手の設置作業が煩雑となるおそれがある。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、内筒の下流側端部と閉塞部材とが十分に離間された伸縮管継手であって、設置及び撤去の作業が容易であるものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る伸縮管継手は、粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される上流側配管と下流側配管の接続部に生じる変位を吸収する伸縮管継手であって、
第1端部から第2端部へ軸方向に延びる筒状を呈し、前記第1端部に設けられた第1フランジ、及び、前記第2端部に設けられて前記下流側配管と接続される第2フランジを有する外筒と、
第3端部から第4端部へ前記軸方向に延びる筒状を呈し、前記第3端部に設けられて前記上流側配管と接続される第3フランジ、及び、前記第3端部から前記第4端部までの間の中間部に設けられた中間フランジを有し、前記外筒に内挿された内筒と、
前記第1フランジと接続された外周縁部、前記中間フランジと接続された内周縁部、及び、前記外周縁部と前記内周縁部とを繋ぐ伸縮部を有する閉塞部材とを備え、
前記第1端部は、前記第3端部と前記軸方向に離間し、且つ、前前記第3端部から前記第4端部までの軸方向の間に位置することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る焼却灰処理設備は、焼却灰を処理する振動機器と、前記振動機器へ前記焼却灰を送る配管と、前記配管の出口と前記振動機器の入口との間に設けられた前記伸縮管継手とを備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成の伸縮管継手及び焼却灰処理設備では、閉塞部材が取り付けられる中間フランジは、内筒の第4端部(即ち、下流側端部)から軸方向に離間している。よって、内筒の第4端部と閉塞部材とを、内筒の第4端部と中間フランジとの軸方向の距離だけ離間させることができる。これにより、内筒の第4端部から内筒と外筒の間隙へ侵入する搬送物と閉塞部材との接触の可能性を抑えることができる。
【0010】
また、上記構成の伸縮管継手及び焼却灰処理設備では、外筒の第1端部に設けられた第1フランジと、内筒の第3端部に設けられた第3フランジとが軸方向に離間している。軸方向に離間する第1フランジと第3フランジとの間の空間が、第3フランジと上流側配管との接続(又は、接続解除)の作業空間として利用され得る。よって、伸縮管継手と上流側配管との接続及び接続解除の作業が容易となる。
【0011】
更に、上記構成の伸縮管継手及び焼却灰処理設備では、上流側配管と接続される内筒の第3端部と外筒の第1端部とが軸方向に離間していることから、上流側配管と下流側配管の間の設置領域の上下方向の寸法よりも外筒の軸方向寸法が小さい。よって、内筒が挿入された外筒を設置領域へ容易に搬入することができる。そして、内筒及び外筒が設置領域に設置されたうえで、上流側配管と外筒の間隙を利用して閉塞部材を設置領域へ搬入することができる。そのうえ、軸方向に離間する第3フランジと中間フランジの間の空間が閉塞部材の取り付け(又は、取り外し)の作業空間として利用され得る。よって、閉塞部材の取り付け及び取り外しの作業が容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内筒の下流側端部と閉塞部材とが十分に離間された伸縮管継手であって、設置及び撤去の作業が容易であるものを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手が採用された焼却灰処理設備の概略構成を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
図3図3は、外筒を軸方向から見た図である。
図4図4は、内筒を軸方向から見た図である。
図5図5は、閉塞部材を軸方向から見た図である。
図6図6は、図2のVI-VI矢視図である。
図7図7は、伸縮管継手の据付方法を説明する図である。
図8図8は、伸縮管継手の据付方法を説明する図である。
図9図9は、伸縮管継手の据付方法を説明する図である。
図10図10は、伸縮管継手の据付方法を説明する図である。
図11図11は、変形例1に係る伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
図12図12は、変形例2に係る伸縮管継手を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手10が採用された焼却灰処理設備7の概略構成を示す図である。焼却灰処理設備7は、例えば、石炭焚きボイラやゴミ焼却炉などで生じた焼却灰を細かく破砕する処理を行うものである。
【0015】
図1に示す焼却灰処理設備7は、焼却灰70を細かく破砕する破砕機75と、破砕機75へ焼却灰70を搬送するコンベヤ74と、破砕機75で破砕された焼却灰70を収容するホッパ76とを備える。破砕機75としては振動ミルが採用され得る。一般に、振動ミルでは、高速で振動するドラム内で粉砕媒体及び被粉砕物が衝突し、被粉砕物が微粉砕される。
【0016】
コンベヤ74と破砕機75との間は、粒状又は礫状の焼却灰70を搬送する配管系統で接続されている。この配管系統は、破砕機75の入口と結合された振動管78と、振動管78の上流側に設けられた固定管77と、固定管77と振動管78とを接続する伸縮管継手10とを含む。なお、この明細書及び特許請求の範囲において「上流」と「下流」は、配管系統で搬送される搬送物(焼却灰70)の流動方向の上流と下流とにそれぞれ対応している。固定管77は伸縮管継手10から見て「上流側配管」であり、振動管78は伸縮管継手10から見て「下流側配管」である。
【0017】
固定管77は、破砕機75の上流側機器(例えば、コンベヤ74又は図示されない他の石炭処理に用いられる機器)が設置された構造物に対し固定されている。一方、振動管78は、破砕機75のドラムの振動に伴って振動する。そのため、固定管77と振動管78との接続部には、振動管78の振動に起因する変位が生じる。伸縮管継手10は、固定管77と振動管78との接続部に生じる変位を吸収する。なお、固定管77と振動管78とが共に可動の場合にも本発明に係る伸縮管継手10を適用し得る。
【0018】
〔伸縮管継手10の構造〕
以下、伸縮管継手10について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る伸縮管継手10を軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。なお、伸縮管継手10は概ね回転体であり、この回転体の回転の軸の延伸方向を伸縮管継手10の「軸方向X」と称し、回転体の回転の軸を伸縮管継手10の「軸心」と称する。伸縮管継手10は、固定管77と振動管78との上下方向の間隙に設置される。以下、固定管77と振動管78との上下方向の間隙を「設置領域A」と称する。振動管78が静止している状態で、固定管77の開口中心と振動管78の開口中心とを繋ぐ直線は伸縮管継手10の軸方向Xと平行である。
【0019】
図2に示す伸縮管継手10は、外筒2と、外筒2に内挿された内筒3と、外筒2と内筒3との間を塞ぐ閉塞部材4とから構成されている。内筒3の内周部分が、伸縮管継手10における搬送物(例えば、焼却灰70)の搬送路11となる。
【0020】
図3は、外筒2を軸方向Xから見た図である。図2及び図3に示すように、外筒2は、上流側端部(第1端部)から下流側端部(第2端部)まで軸方向Xに延びる金属製の筒体である。外筒2は、上流側端部に設けられた第1フランジ21と、下流側端部に設けられた第2フランジ22と、第1フランジ21と第2フランジ22とを繋ぐ胴部23と、胴部23の内周側に設けられた返し板24とを有する。第1フランジ21及び第2フランジ22には周方向に並ぶ複数の挿通孔が設けられている。これらの挿通孔には、ボルトが挿入される。
【0021】
第2フランジ22は、振動管78の上流側端部に設けられた入口フランジ78aと接続される。第2フランジ22と入口フランジ78aの間には、気密性を備えるための下ガスケット37が設けられる。外筒2は、振動管78の振動に伴って振動する。
【0022】
第1フランジ21の内径D21は第2フランジ22の内径D22よりも大きい。胴部23は、内径の異なる第1フランジ21と第2フランジ22とを滑らかに繋ぐ、下窄まりのテーパ形状を呈する。このような外筒2によれば、内筒3に対する外筒2の軸方向Xと垂直な方向への変位可能範囲を確保しつつ、外筒2から振動管78へ搬送物を速やかに移動又は搬送させることができる。
【0023】
返し板24は、伸縮管継手10の搬送路11内に滞留した搬送物が、外筒2と内筒3との間隙に侵入することを抑制するものである。返し板24は、中空円盤形状を呈し、胴部23の軸方向Xのほぼ中央部に設けられている。返し板24の内径D24aは、第2フランジ22の内径D22よりも大きい。返し板24の外径D24bは、第1フランジ21の内径D21よりも小さい。返し板24の外周縁は、胴部23の内周面に溶接されている。
【0024】
図4は、内筒3を軸方向Xから見た図である。図2及び図4に示すように、内筒3は、上流側端部(第3端部)から下流側端部(第4端部)まで軸方向Xに延びる金属製の筒体である。内筒3は、上流側端部に設けられた第3フランジ31と、第3フランジ31から下方へ向かって延びる胴部32と、胴部32の軸方向Xの中途部に設けられた中間フランジ33とを有する。中間フランジ33には周方向に並ぶ複数の挿通孔が設けられている。挿通孔には、ボルトが挿入される。
【0025】
第3フランジ31は、固定管77の下流側端部に設けられた出口フランジ77aと接続される。第3フランジ31の外径D31は、出口フランジ77aの外径より小さい。押さえ部材25と出口フランジ77aとの間に第3フランジ31が挟み込まれた状態で、押さえ部材25及び出口フランジ77aに挿通されたボルトによってこれらが締結される。複数(例えば、4つ)の押さえ部材25は、第3フランジ31の外周縁に沿って配置される。押さえ部材25の各々は分割された環状を呈し、複数の押さえ部材25が合わさって環を形成する。各押さえ部材25は、内周側上縁の切欠部を有し、この切欠部に第3フランジ31が嵌り込んでいる。これにより、固定管77と内筒3との接続部に振動が加わっても、内筒3の第3フランジ31が固定管77の出口フランジ77aに相対する径方向及び上下方向への移動が規制される。各押さえ部材25には、ボルトを通すための少なくとも1つの挿通孔25aが設けられている。押さえ部材25と出口フランジ77aとの間には、気密性を備えるための上ガスケット36が設けられる。
【0026】
中間フランジ33は、胴部32の外周面から半径方向外側へ鍔状に張り出している。中間フランジ33の外径D33は、返し板24の内径D24aより大きく、返し板24の外径D24bより小さい。内筒3の取扱性を高める観点から、第3フランジ31の外径D31は、中間フランジ33の外径D33よりも小さいことが望ましい。
【0027】
図5は、閉塞部材4を軸方向Xから見た図である。図2及び図5に示すように、閉塞部材4は中空円盤形状を呈する。閉塞部材4は、内周縁部41と、外周縁部42と、内周縁部41と外周縁部42との間に形成された伸縮部43とを有する。内周縁部41及び外周縁部42には、周方向に並ぶ複数の挿通孔が設けられている。これらの挿通孔には、ボルトが挿入される。
【0028】
閉塞部材4の内径D41は、内筒3の胴部32の外径D32(即ち、中間フランジ33の内径)よりも大きく、中間フランジ33の外径D33よりも小さい。閉塞部材4の外径D42は、外筒2の第1フランジ21の内径D21よりも大きい。
【0029】
図6は、図2のVI-VI矢視図である。図2及び図6に示すように、閉塞部材4の内周縁部41は、内筒3の中間フランジ33と接続される。内筒3の中間フランジ33と押さえ部材28の間に内周縁部41が挟み込まれた状態で、押さえ部材28、内周縁部41及び中間フランジ33に挿通されたボルトによってこれらが締結される。複数(例えば、4つ)の押さえ部材28は、内周縁部41に沿って環状に配置される。押さえ部材28の各々は分割された環状を呈し、複数の押さえ部材28が合わさって環を形成する。
【0030】
閉塞部材4の外周縁部42は、外筒2の第1フランジ21と接続される。外筒2の第1フランジ21と押さえ部材26の間に外周縁部42が挟み込まれた状態で、押さえ部材26、外周縁部42及び第1フランジ21に挿通されたボルトによってこれらが締結される。複数(例えば、4つ)の押さえ部材26は、外周縁部42に沿って環状に配置される。押さえ部材26の各々は分割された環状を呈し、複数の押さえ部材26が合わさって環を形成する。
【0031】
伸縮部43は、内周縁部41に対する外周縁部42の軸方向X及び半径方向の変位を吸収するように伸縮する。図2に例示された伸縮部43は、ゴム製、樹脂製、又は布製であって、半径方向に1段以上の蛇腹が形成されたものである。但し、伸縮部43の形状は、蛇腹状に限定されない。例えば、閉塞部材4の伸縮部43の面材が伸縮性を有するゴム製や樹脂製であれば、伸縮部43が平面状であってもよい。また、搬送物が高温である場合には伸縮部43には耐熱性を有する材料が用いられることが望ましい。
【0032】
図2に示すように、上記構成の伸縮管継手10において、外筒2の軸方向Xの寸法を「外筒高さH2」とし、内筒3の軸方向Xの寸法を「内筒高さH3」とし、内筒3の上流側端部から中間フランジ33までの軸方向Xの寸法を「突出高さH3a」とし、閉塞部材4の軸方向Xの寸法を「閉塞部材高さH4」とし、設置領域Aの軸方向Xと平行な方向の寸法を「設置領域高さH0」とする。
【0033】
外筒高さH2は、設置領域高さH0よりも小さい。外筒高さH2に閉塞部材高さH4を加えた高さは、設置領域高さH0より小さいことが望ましい。
【0034】
内筒高さH3は、設置領域高さH0よりも小さい。内筒高さH3に閉塞部材高さH4を加えた高さは、設置領域高さH0より小さいことが望ましい。突出高さH3aは、閉塞部材高さH4よりも大きいことが望ましい。
【0035】
外筒高さH2、突出高さH3a、上ガスケット36の厚さ、及び、下ガスケット37の厚さを加え合わせた高さは、設置領域高さH0と実質的に等しい。
【0036】
〔伸縮管継手10の据付方法〕
ここで、伸縮管継手10の据付方法を説明する。図7~10は伸縮管継手10の据付方法を説明する図である。
【0037】
先ず、図7に示すように、外筒2と内筒3が組み合わされてアセンブリ20が形成される。アセンブリ20では、外筒2に内筒3が上方から挿入されている。アセンブリ20では、外筒2の返し板24の上面と内筒3の中間フランジ33の下面とが当接している。このようにして、外筒2に内筒3が安定して支持され、且つ、内筒3の外筒2に対する下方への移動が規制されている。
【0038】
アセンブリ20は、設置領域Aに配置され、外筒2の第2フランジ22が、振動管78の入口フランジ78aと重ね合わせられる。ここで、アセンブリ20の軸方向Xの寸法を「アセンブリ高さH20」とする。アセンブリ高さH20は、設置領域高さH0よりも、返し板24から第1フランジ21までの軸方向Xの長さである伸長量H24だけおおよそ小さい。アセンブリ高さH20は設置領域高さH0よりも小さいので、アセンブリ20を設置領域Aへ軸方向Xと直交する方向から容易に挿入することができる。
【0039】
次に、図8に示すように、設置領域Aに閉塞部材4が配置される。ここで、閉塞部材4を設置領域Aへ軸方向Xと直交する方向から容易に挿入することができるように、アセンブリ高さH20に閉塞部材高さH4を加えた高さが、設置領域高さH0よりも小さいことが望ましい。但し、閉塞部材4は弾性変形可能であるので、固定管77とアセンブリ20の間隙が閉塞部材高さH4よりも若干小さくてもかまわない。
【0040】
続いて、図9に示すように、固定管77の出口フランジ77aと内筒3の第3フランジ31とが当接するまで、外筒2に対して内筒3が伸長量H24だけ持ち上げられる。すると、内筒3の中間フランジ33の軸方向Xの位置と外筒2の第1フランジ21の軸方向Xの位置とが、概ね同一となる。
【0041】
そして、図10に示すように、固定管77の出口フランジ77aと第3フランジ31がボルトで締結され、振動管78の入口フランジ78aと第2フランジ22がボルトで締結され、閉塞部材4の内周縁部41と中間フランジ33がボルトで締結され、閉塞部材4の外周縁部42と外筒2の第1フランジ21がボルトで締結される。なお、ボルトによる締結は、据付作業の途中で適宜行われてもよい。
【0042】
伸縮管継手10を撤去する際には、上記の伸縮管継手10の据付方法を逆の順序で辿ればよい。即ち、ボルトによる締結を解除し、内筒3を外筒2に対し降下させ、閉塞部材4を設置領域Aから取り除き、アセンブリ20を設置領域Aから取り除くことにより、伸縮管継手10を設置領域Aから撤去することができる。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態に係る焼却灰処理設備7は、焼却灰を処理する振動機器である破砕機75と、破砕機75へ焼却灰を送る配管(上流側配管である固定管77)と、この配管の出口と破砕機75の入口(下流側配管である振動管78)との間に設けられた伸縮管継手10とを備える。この伸縮管継手10は、粉状及び/又は粒状の搬送物が重力で搬送される上流側配管77と下流側配管78の接続部に生じる変位を吸収する。伸縮管継手10は、外筒2と、外筒2に内挿された内筒3と、外筒2と内筒3の間隙を閉塞する閉塞部材4とを備える。外筒2は、第1端部(上流側端部)から第2端部(下流側端部)へ軸方向Xに延びる筒状を呈し、第1端部に設けられた第1フランジ21、及び、第2端部に設けられて下流側配管と接続される第2フランジ22を有する。内筒3は、第3端部(上流側端部)から第4端部(下流側端部)へ軸方向Xに延びる筒状を呈し、第3端部に設けられて上流側配管と接続される第3フランジ31、及び、第3端部から第4端部までの間の中間部に設けられた中間フランジ33を有する。閉塞部材4は、第1フランジ21と接続された外周縁部42、中間フランジ33と接続された内周縁部41、及び、外周縁部42と内周縁部41とを繋ぐ伸縮部43を有する。
【0044】
上記実施形態に係る伸縮管継手10では、下流側配管78に固定された外筒2の第1フランジ21と、上流側配管77に固定された内筒3の中間フランジ33との軸方向Xの位置が同一である。なお、第1フランジ21と中間フランジ33の軸方向Xの位置が同一であることには、第1フランジ21の軸方向Xの位置と中間フランジ33の軸方向Xの位置が完全に同一であることに加えて、第1フランジ21の軸方向Xの位置と中間フランジ33の軸方向Xの位置との差が所定範囲内であることも含まれる。所定範囲の上限は、例えば、閉塞部材4の軸方向Xの寸法(即ち、閉塞部材高さH4)であり、より小さいことが望ましい。
【0045】
但し、本発明は、下流側配管78に固定された外筒2の第1フランジ21と上流側配管77に固定された内筒3の中間フランジ33の軸方向Xの位置とが同一であることに限定されない。上記伸縮管継手10において、外筒2の第1端部(上流側端部)が、内筒3の第3端部(上流側端部)から軸方向Xに離間し、且つ、第3端部から内筒3の第4端部(下流側端部)までの軸方向の間に位置していてもよい。
【0046】
上記構成の伸縮管継手10及び焼却灰処理設備7では、閉塞部材4が取り付けられる中間フランジ33は、内筒3の第4端部から軸方向Xに離間している。よって、内筒3の下流側端部と閉塞部材4とを、内筒3の下流側端部と中間フランジ33との軸方向Xの距離だけ離間させることができる。これにより、内筒3の下流側端部から内筒3と外筒2の間隙へ侵入する搬送物と閉塞部材4との接触の可能性を抑えることができる。
【0047】
また、上記構成の伸縮管継手10及び焼却灰処理設備7では、外筒2の第1端部に設けられた第1フランジ21と、内筒3の第3端部に設けられて上流側配管77と接続された第3フランジ31とが軸方向Xに離間している。軸方向Xに離間する第1フランジ21と第3フランジ31との間の空間が、第3フランジ31と上流側配管77との接続(又は、接続解除)の作業空間として利用され得る。つまり、第1フランジ21が第3フランジ31よりも径方向外側に位置するにもかからず、第3フランジ31と上流側配管77との接続作業が第1フランジ21によって阻害されない。よって、伸縮管継手10と上流側配管77との接続及び接続解除の作業が容易となる。
【0048】
更に、上記構成の伸縮管継手10及び焼却灰処理設備7では、上流側配管77と接続される内筒3の第3端部(上流側端部)と、下流側配管78と接続された外筒2の第1端部(上流側端部)とが軸方向Xに離間していることから、上流側配管77と下流側配管78の間の設置領域Aの上下方向の寸法(設置領域高さH0)よりも外筒2の軸方向寸法(外筒高さH2)が小さい。よって、内筒3が挿入された外筒2(即ち、アセンブリ20)を設置領域Aへ容易に搬入することができる。そして、内筒3及び外筒2から成るアセンブリ20が設置領域Aに設置されたうえで、上流側配管77から下方へ伸長量H24と対応する大きさの間隙を利用して閉塞部材4を設置領域Aへ搬入することができる。そのうえ、上流側配管77と接続された第3フランジ31と中間フランジ33との間の空間が閉塞部材4の取り付け(又は、取り外し)の作業空間として利用され得る。よって、閉塞部材4の取り付け及び取り外しが容易となり、このことは、据付・撤去作業に加えて閉塞部材4のみを交換するメンテナンス作業においても有利である。
【0049】
このように、本実施形態に係る伸縮管継手10及び焼却灰処理設備7では、内筒3の下流側端部と閉塞部材4とが十分に離間されることにより搬送物と閉塞部材4との接触が回避され、特許文献1に開示された従来の伸縮管継手と比較して同じ機能を果たしながら設置及び撤去の作業が容易である。
【0050】
また、本実施形態に係る伸縮管継手10では、中間フランジ33の外径D33は第2フランジ22の内径D22よりも大きく且つ第1フランジ21の内径D21よりも小さい。
【0051】
これにより、内筒3が外筒2に挿入されてなるアセンブリ20において、内筒3が外筒2に安定して支持される。
【0052】
また、本実施形態に係る伸縮管継手10では、外筒2は、内周面から半径方向に突出する中空円盤状の返し板24を有する。なお、本実施形態に係る返し板24は、周方向に連続する中空円盤状を呈するが、返し板24は周方向に断続的な中空円盤状を呈していてもよい。
【0053】
この返し板24は、外筒2と内筒3との間隙に侵入して閉塞部材4へ到達しようとする搬送物の移動を阻害する。これにより、搬送物と閉塞部材4との接触の可能性を低下させることができる。
【0054】
上記において、返し板24は、軸方向Xにおいて中間フランジ33と第2フランジ22の間に位置し、中間フランジ33の外径は返し板24の内径よりも大きく且つ返し板24の外径よりも小さい。
【0055】
これにより、内筒3が外筒2に挿入されて成るアセンブリ20において、中間フランジ33と返し板24とが当接して、中間フランジ33が返し板24に支えられることによって、内筒3が外筒2に安定して支持される。
【0056】
また、本実施形態に係る伸縮管継手10は、第3フランジ31の外縁に沿って周方向に並び、第3フランジ31を上流側配管77との間で挟み込む複数の第1押さえ部材25を更に備える。複数の第1押さえ部材25の各々は、ボルトを挿通するための少なくとも1つの挿通孔25aを有する。
【0057】
このように、第3フランジ31と上流側配管77の出口フランジ77aとを接続するためのボルトが通される挿通孔が、第3フランジ31ではなく第1押さえ部材25に設けられている。そのため、出口フランジ77aと第3フランジ31との接続を合わせるために内筒3の回転位相を調整する必要がない。更に、第1押さえ部材25は、円環ではなく、円環が分割された構造を有するので、内筒3を通さずに第1押さえ部材25を第3フランジ31の周囲に配置することができる。これらにより、伸縮管継手10の据付・撤去の作業が簡易化される。
【0058】
また、本実施形態に係る伸縮管継手10は、閉塞部材4の内周縁部41に沿って周方向に並び、内周縁部41を中間フランジ33との間で挟み込む複数の第2押さえ部材28を備える。更に、本実施形態に係る伸縮管継手10は、閉塞部材4の外周縁部42に沿って周方向に並び、外周縁部42を第1フランジ21との間で挟み込む複数の第3押さえ部材26を備える。
【0059】
このように第2押さえ部材28及び第3押さえ部材26は、いずれも円環ではなく、円環が分割された構造を有する。よって、外筒2、内筒3及び閉塞部材4を通さずに第2押さえ部材28を閉塞部材4の内周縁部41に沿って配置することができる。また、外筒2、内筒3及び閉塞部材4を通さずに第3押さえ部材26を閉塞部材4の外周縁部42に沿って配置することができる。
【0060】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【0061】
例えば、上記実施形態に係る伸縮管継手10において、外筒2は返し板24を有するが、返し板24は必須ではなく省略されてもよい。
【0062】
図11は、変形例1に係る伸縮管継手10Aを軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。図11に示す伸縮管継手10Aの外筒2Aは、返し板24を備えていない。そして、外筒2Aと内筒3が組み合わされたアセンブリ20では、内筒3の中間フランジ33が外筒2Aの胴部23の内周面と当接することにより、内筒3が外筒2Aに支持され、且つ、内筒3の外筒2Aに対する下方への移動が規制される。このように返し板24が省略される場合であっても、搬送物が内筒3と外筒2Aとの間隙へ侵入する箇所から最も離れた位置に閉塞部材4が配置されていることから、搬送物と閉塞部材4との接触の可能性を下げることができる。
【0063】
図12は、変形例2に係る伸縮管継手10Bを軸心を通る平面で切断した切断部端面図である。図12に示す伸縮管継手10Bの外筒2Aは、返し板24を備えていない。内筒3Aには、中間フランジ33よりも下方に下フランジ34が設けられている。下フランジ34は、胴部32の外周面から半径方向外側へ鍔状に張り出している。下フランジ34の外径は、中間フランジ33の外径D33よりも小さい。そして、外筒2Aと内筒3Aが組み合わされたアセンブリ20では、内筒3Aの下フランジ34が外筒2Aの胴部23の内周面と当接することにより、内筒3Aが外筒2Aに支持され、且つ、内筒3Aの外筒2Aに対する下方への移動が規制される。このように返し板24が省略される場合であっても、下フランジ34によって内筒3Aと外筒2Aとの間隙への搬送物の侵入が阻害されるので、搬送物と閉塞部材4との接触の可能性を下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る伸縮管継手は、上記実施形態に限定されず、粉状や粒状の搬送物を搬送する配管系統において、搬送物が重力で搬送される箇所に設けられた接続部において、接続される配管同士の間に生じる変位を吸収する伸縮管継手に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
2 :外筒
3 :内筒
4 :閉塞部材
7 :焼却灰処理設備
10 :伸縮管継手
21 :第1フランジ
22 :第2フランジ
24 :返し板
25,26,28:押さえ部材
31 :第3フランジ
33 :中間フランジ
41 :内周縁部
42 :外周縁部
43 :伸縮部
70 :焼却灰
77 :固定管(上流側配管)
78 :振動管(下流側配管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12