(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】カットコア
(51)【国際特許分類】
H01F 27/245 20060101AFI20231213BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H01F27/245 157
H01F27/25
(21)【出願番号】P 2020051693
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009277(JP,A)
【文献】特開2001-284136(JP,A)
【文献】特開2008-294435(JP,A)
【文献】実開昭58-144811(JP,U)
【文献】実開昭58-106912(JP,U)
【文献】特開2012-230956(JP,A)
【文献】特開2017-204498(JP,A)
【文献】特開昭60-214516(JP,A)
【文献】特開昭61-180408(JP,A)
【文献】実開昭61-203516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 3/00- 3/14
H01F 27/24-27/26
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の磁性体を
厚み方向に積層しつつ巻回して対向する脚部で切断したコアを互いに接合して形成されるカットコアであって、
前記コアは、対向する前記脚部の少なくとも一方において、前記磁性体の厚み方向
および前記磁性体の幅方向の
双方に傾斜した状態で切断されており、
前記コアを接合する2つの接合部のうち少なくとも一方に、前記磁性体の厚み方向
および前記磁性体の幅方向の
双方に傾斜する
平坦な傾斜面を設けたカットコア。
【請求項2】
双方の前記接合部に、互いに逆向きに傾斜している前記傾斜面を設けた請求項1記載のカットコア。
【請求項3】
一方の前記接合部に、互いに逆向きに傾斜している前記傾斜面を設けた請求項1記載のカットコア。
【請求項4】
一方の前記接合部には前記傾斜面を設けず、他方の前記接合部に前記傾斜面を設けた請求項1記載のカットコア。
【請求項5】
前記コアは、環状に配置された状態において内周側に配置される内周側コアと、前記内周側コアの外周側に配置される外周側コアとにより構成されている請求項1から4のいずれか一項記載のカットコア。
【請求項6】
前記コアは、環状に配置された状態において軸方向に重ねられる表面側コアと裏面側コアとにより構成されている請求項1から5のいずれか一項記載のカットコア。
【請求項7】
少なくとも一方の前記接合部に、前記コアの端部間にギャップを形成するギャップ材を配置した請求項1から6のいずれか一項記載のカットコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、カットコアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば変圧器などに用いられるカットコアが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、本明細書では、環状に形成された状態のものをカットコアと称し、カットコアを構成しているU字状あるいはC字状の部材をコアと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カットコアは、一般的に、帯状の磁性体を環状に巻回したものを切断してU字状あるいはC字状のコアを形成し、それらのコアを互いの切断面で接合することにより環状に形成されている。このとき、コア同士が互いに接合される接合部は、磁束の乱れを抑えて安定した鉄心特性を維持できるようにするために、環状に形成された状態における脚部の中央部分に設定されることが多い。そして、カットコアの代表的な利用形態である変圧器の場合には、一般的に、接合部が設けられている脚部に、接合部を覆う態様でコイルを配置することが多い。
【0005】
しかしながら、接合部が例えばコイルによって隠されてしまうと、接合部におけるコア同士の位置合わせが難しくなるという問題がある。そして、接合部に位置ずれが生じると、鉄心特性が悪化するおそれがある。また、例えば複数のコアを並列的に配置して変圧器の容量を拡大する場合には、接合面の位置合せがさらに難しくなる。また、コア同士は締結バンドによって互いに締結されているものの、運転時のコアの温度変化などによって締結バンドが緩むと位置ずれが進行してしまうおそれもある。
そこで、接合部での位置ずれを抑制できるカットコアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のカットコアは、帯状の磁性体を巻回して対向する脚部で切断したコアを互いに接合して形成されるものであって、コアは、対向する脚部の少なくとも一方において、磁性体の厚み方向または磁性体の幅方向の少なくとも一方に傾斜した状態で切断されており、コアを接合する接合部の少なくとも一方に、磁性体の厚み方向または磁性体の幅方向の少なくとも一方に傾斜する傾斜面を設けた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図2】カットコアを用いた変圧器の構成例を模式的に示す図
【
図3】参考例であり、径方向への位置ずれを模式的に示す図
【
図4】第2構成例における参考例であり、軸方向への位置ずれを模式的に示す図
【
図6】第3構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図7】第4構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図8】第5構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図9】第6構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図10】第7構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図11】第8構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図12】第9構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図13】第10構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【
図14】第11構成例におけるカットコアの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、複数の構成例について個別に説明するが、説明の簡略化のために、各具体例において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
【0009】
(第1構成例)
以下、第1構成例について説明する。
図1に示すように、カットコア1は、U字状またはC字状のコア2を互いに接合することにより形成されている。ここで、カットコア1の製造工程の概略について説明する。カットコア1の製造工程では、まず、2つのコア2が形成される。
【0010】
このコア2は、帯状の磁性体3を巻回した巻き鉄心4を、対向する2つの脚部4a、ここでは、角部が円弧状であって矩形環状に形成されている巻き鉄心4の長手方向の2つの脚部4aを切断することにより形成されている。このとき、コア2は、対向する脚部4aの少なくとも一方において、矢印Tにて示す磁性体3の厚み方向、または、矢印Wにて示す磁性体3の幅方向の少なくとも一方に傾斜した平坦な切断面で切断されている。
【0011】
以下、磁性体3の厚み方向を環状に形成した状態におけるカットコア1の径方向とも称し、磁性体3の幅方向を環状に形成した状態におけるカットコア1の軸方向とも称する。また、磁性体3を積層した状態における厚みをカットコア1の厚みとも称し、磁性体3の幅をカットコア1の幅とも称する。
【0012】
さて、本構成例では、コア2は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、磁性体3の厚み方向に傾斜した状態であって、双方の脚部4aで互いに逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成されている。そのため、各コア2には、逆向きに傾斜した平坦な切断面がそれぞれ形成されている。このとき、切断面の傾斜角度(α)や傾斜量(β)は、コア2同士の相対的な移動を抑制できる範囲内で適宜設定することができる。ただし、あまり端部が鋭くなると、切断時や接合時に破損するおそれもあるため、傾斜角度(α)は、数度から数十度の範囲、例えば5度から30度程度を目安とするとよい。なお、傾斜角度(α)が定まれば、磁性体3の幅や積層した厚みに応じて傾斜量(β)は一義的に定まることになる。
【0013】
各コア2を互いの切断面を突き合わせた状態で接合することにより、カットコア1が形成される。このとき、カットコア1には、コア2同士が接合されている2箇所の接合部1aに、磁性体3の厚み方向に傾斜する切断面によって形成された傾斜面5がそれぞれ設けられることになる。
【0014】
このようなカットコア1は、例えば
図2に構成例その1として示すように、コイル6に挿入され、締結バンド7で各コア2を外周側から締結して固定された状態で例えば変圧器8として利用される。あるいは、カットコア1は、構成例その2として示すように、コイル6に複数が挿入されて大容量の変圧器8として利用される。なお、構成例その2、および後述する第2構成例以降では、説明の簡略化のために締結バンド7の図示を省略している。また、後述する第2構成例以降のカットコア1も、構成例その1やその2にて示すような変圧器8に利用することができる。
【0015】
次に、上記した構成の作用について説明する。
上記したように、カットコア1は、U字状あるいはC字状のコア2を形成し、それらのコア2を互いの切断面で接合することにより環状に形成されている。このとき、各コア2の接合部1aは、磁束の乱れを抑えて安定した鉄心特性を維持できるようにするために、脚部4aの中央部分に設定されることがある。そのため、カットコア1を例えば変圧器8に用いる場合には、一般的に、接合部1aを覆う態様でコイル6を配置することが多いため、接合部1aがコア2に隠された状態、換言すると、コア2に覆われて外部から目視し難い状態になる。
【0016】
そして、
図3に参考例として示すように、従来技術の従来カットコア101は、巻き鉄心4を傾斜せずに切断して従来コア102を形成していた。そのため、従来カットコア101は、従来コア102の切断面つまりは接合部101aが傾斜していないことから、図視左右方向つまりは径方向に位置ずれが生じるおそれがあった。その場合、位置ずれによって鉄心特性が悪化するおそれがある。また、従来コア102同士を締結バンド7により締結しても、運転時の従来コア102の温度変化によって締結バンド7が緩むおそれがあり、接合部101aの位置ずれが進行してしまうおそれもあった。
【0017】
そこで、本構成例のカットコア1は、
図1に示したように、径方向つまりは磁性体3の厚み方向に傾斜する傾斜面5を、双方の接合部1aに、互いに逆向きに傾斜して設けている。このように接合部1aに傾斜面5を設けた場合、コア2の自重や締結バンド7の締結力が傾斜面5に加わるとその傾斜方向にすべり力が働くものの、双方の接合部1aの傾斜方向を互いに逆向きにしたことにより、それぞれの接合部1aにおけるすべり力は相殺される。その結果、コア2は、すべり力が相殺される安定位置に落ち着いた状態となり、傾斜方向への変位、つまりは、径方向への位置ずれが無い状態になる。これにより、コア2同士の径方向への相対的な移動が抑制される。
【0018】
このように、カットコア1は、帯状の磁性体3を巻回した巻き鉄心4を対向する脚部4aで切断したコア2を互いに接合して形成されるものであって、対向する脚部4aの少なくとも一方において磁性体3の厚み方向または磁性体3の幅方向の少なくとも一方に傾斜した状態で切断して形成されたコア2を用い、コア2を接合する接合部1aの少なくとも一方に磁性体3の厚み方向に傾斜する傾斜面5を設けたことにより、磁性体3の厚み方向つまりは環状に形成された状態における径方向へのコア2同士の移動を抑制することが可能になる。したがって、カットコア1の位置ずれを抑制することができる。
【0019】
また、傾斜面5を設けたことにより、接合部1aにおける接合面積は、傾斜面を設けない場合に比べて増加する。これにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができる。
【0020】
さらに、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は、平坦に形成されている。そして、この傾斜面5は、巻き鉄心4を切断した際の切断面に相当する。そのため、コア2を製造する際に巻き鉄心4の脚部4aを傾斜して切断することにより、容易に傾斜面5を形成することができる。これは、後述する第2構成例以降についても同様である。
【0021】
また、巻き鉄心4の切断自体は従来から行われている作業であるため、傾斜面5を設けるために過度に作業が複雑化したり作業量が増加したりすることが抑制される。すなわち、傾斜面5により位置ずれを抑制する構造は、製造上において極めて有益なものとなっている。
【0022】
また、カットコア1は、2箇所の接合部1aの双方に、互いに逆向きに傾斜している傾斜面5を設けている。これにより、径方向への移動をより一層抑制することができる。また、締結バンド7を設けたことにより、傾斜面5による移動の抑制がなされない向きへの移動をある程度抑制することができる。
【0023】
(第2構成例)
以下、第2構成例について説明する。この第2構成例では、環状に形成された状態にける軸方向への位置ずれを抑制する構造について説明する。
図4に参考例として示すように、従来カットコア101は、巻き鉄心4を傾斜せずに切断して従来コア102を形成していることから、接合部101aにおいて、図視左右方向つまりは従来カットコア101の軸方向に位置ずれが生じるおそれがある。
【0024】
そこで、本構成例では、
図5に示すように、コア2を、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、矢印Wにて示す磁性体3の幅方向に傾斜した状態であって、双方の脚部4aで互いに逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成している。これにより、各コア2には、逆向きに傾斜した平坦な切断面がそれぞれ形成される。このとき、切断面の傾斜角度(γ)や傾斜量(Δ)は、コア2同士の相対的な移動を制限できる範囲内で適宜設定することができる。ただし、あまり端部が鋭くなると、切断時や接合時に破損するおそれもあるため、傾斜角度(γ)は、数度から数十度の範囲、例えば5度から30度程度を目安とするとよい。なお、傾斜角度(γ)が定まれば、磁性体3の幅や積層した厚みに応じて傾斜量(Δ)は一義的に定まることになる。
【0025】
そして、各コア2を互いの切断面を突き合わせた状態で接合することにより、カットコア1が形成される。このとき、カットコア1には、コア2同士が接合されている2箇所の接合部1aに、磁性体3の幅方向に傾斜する切断面によって形成された傾斜面5がそれぞれ設けられることになる。これにより、カットコア1は、軸方向へのコア2の相対的な移動が傾斜面5によって抑制される。
【0026】
このように、帯状の磁性体3を巻回して対向する脚部4aで切断したコア2を互いに接合して形成されるカットコア1において、コア2は、対向する脚部4aの双方において磁性体3の幅方向に傾斜した状態で切断されており、コア2を接合する接合部1aに磁性体3の幅方向に傾斜する傾斜面5を設けることによっても、カットコア1の位置ずれを抑制することができる。
【0027】
また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。
【0028】
さらに、カットコア1は、2箇所の接合部1aの双方に、互いに逆向きに傾斜している傾斜面5を設けていることから、径方向への移動をより一層抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、締結バンド7を設けたことにより、傾斜面5による移動の抑制がなされない向きへの移動をある程度抑制することができる。
【0029】
(第3構成例)
以下、第3構成例について説明する。この第3構成例では、環状に形成された状態にける径方向および軸方向の双方への位置ずれを抑制する構造について説明する。
図6に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、図示左方の脚部4aでは磁性体3の厚み方向に傾斜した状態で切断し、図示右方の脚部4aでは矢印Wにて示す磁性体3の幅方向に傾斜した状態で切断することにより形成されている。
【0030】
これにより、各コア2には、径方向に傾斜する切断面と、軸方向に傾斜する切断面とが形成される。このとき、方向に傾斜する切断面の傾斜角度(α)や傾斜量(β)、ならびに、軸方向に傾斜する切断面の傾斜角度(γ)や傾斜量(Δ)は、第1構成例や第2構成例で説明したように、コア2同士の相対的な移動を制限できる範囲内で適宜設定することができる。
【0031】
そして、これらのコア2を接合することにより、カットコア1には、一方の接合部1aに磁性体3の厚み方向に傾斜した傾斜面5が設けられ、他方の接合部1aに磁性体3の幅方向に傾斜した傾斜面5が設けられる。これにより、カットコア1は、一方の接合部1aにおいて径方向への相対的な移動が抑制され、他方の接合部1aにおいて軸方向への相対的な移動が抑制されることから、全体として、径方向および軸方向の双方への位置ずれが抑制される。
【0032】
また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。
【0033】
(第4構成例)
以下、第4構成例について説明する。この第4構成例では、環状に形成された状態にける径方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図7に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において内周側に配置される内周側コア10と、その内周側コア10の外周側に配置される外周側コア11とにより構成されている。このとき、内周側コア10および外周側コア11は、その厚みがほぼ等しく形成されている。
【0034】
そして、内周側コア10は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向に傾斜した状態で切断することにより形成される2つのコア片1aにより構成されている。また、外周側コア11は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向であって、内周側コア10とは逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成される2つのコア片11aにより構成されている。
【0035】
つまり、内周側コア10の傾斜面5と外周側コア11の傾斜面5とは、互いに交差した状態になっている。ただし、内周側コア10と外周側コア11の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
そして、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせることにより、各コア2には、それぞれの端部に、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。このコア2を接合することにより、カットコア1の双方の接合部1aには、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられることになる。このとき、内周側コア10と外周側コア11の厚みはほぼ等しいため、傾斜面5の交点は、コア2の厚み方向におけるほぼ中央に位置することになる。
【0037】
このように、内周側コア10と外周側コア11とを備えるカットコア1において、互いに交差するように傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、内周側コア10と外周側コア11は、その自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。これにより、カットコア1は、径方向への位置ずれを抑制することができる。なお、カットコア1の厚み方向は、磁性体3の厚み方向である。
【0038】
また、内周側コア10および外周側コア11の厚みを異なる値にすることができる。その場合であっても、径方向への位置ずれを抑制することができる。また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。
【0039】
また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、締結バンド7を設けたことにより、傾斜面5による移動の抑制がなされない向きへの移動をある程度抑制することができる。
【0040】
(第5構成例)
以下、第5構成例について説明する。この第5構成例では、環状に形成された状態にける径方向および軸方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図8に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において内周側に配置される内周側コア10と、その内周側コア10の外周側に配置される外周側コア11とにより構成されている。
【0041】
そして、内周側コア10は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第2構成例と同様に磁性体3の幅方向に傾斜した状態で切断することにより形成されている。また、外周側コア11は、内周側コア10よりも外形が大きい巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第2構成例と同様に磁性体3の幅方向であって、内周側コア10とは逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成されている。
【0042】
つまり、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせた場合、内周側コア10の傾斜面5と外周側コア11の傾斜面5とは互いに交差したような状態になる。ただし、内周側コア10と外周側コア11の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
そして、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせることにより、各コア2には、それぞれの端部に、磁性体3の幅方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。また、傾斜面5を形成する部位の側壁は、互い違いの状態で径方向に隣り合うことになる。
【0044】
そのため、これのコア2を接合することにより、カットコア1の双方の接合部1aには、磁性体3の幅方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられるとともに、各傾斜面5を形成する部位の側壁が径方向に隣り合って設けられる。このように、幅方向に互いに交差するように傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、内周側コア10と外周側コア11は、そのコア2の自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の軸方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。
【0045】
さらに、接合部1aでは、内周側コア10の側壁部分と外周側コア11の側壁部分とが隣り合うことにより、径方向への移動が抑制される。これにより、カットコア1は、径方向および軸方向への位置ずれを抑制することができる。
【0046】
また、内周側コア10および外周側コア11の厚みを異なる値にすることができる。その場合であっても、径方向および軸方向への位置ずれを抑制することができる。また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。
【0047】
また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第6構成例)
以下、第6構成例について説明する。この第6構成例では、環状に形成された状態にける径方向および軸方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図9に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において軸方向に重ねて配置される表面側コア12および裏面側コア13で構成されている。なお、「表面側」および「裏面側」の記載は、構成をわかりやすくするための便宜的なものである。
【0049】
表面側コア12および裏面側コア13は、その外形がほぼ等しく形成されている。換言すると、表面側コア12および裏面側コア13は、同一形状に形成した巻き鉄心4を切断することにより形成されている。
【0050】
具体的には、表面側コア12は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向に傾斜した状態で切断することにより2つのコア片12aが形成されている。また、裏面側コア13は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向であって、表面側コア12とは逆向きに傾斜した状態で切断することにより2つのコア片13aが形成されている。
【0051】
そのため、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせて重ねた状態では、表面側コア12の傾斜面5と裏面側コア13の傾斜面5とは互いに交差したような状態になる。ただし、表面側コア12と裏面側コア13の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
そして、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせることにより、各コア2には、それぞれの端部に、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。また、傾斜面5を形成する部位の側壁は、互い違いの状態で軸方向に隣り合うことになる。
【0053】
このコア2を接合することにより、カットコア1の双方の接合部1aには、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられることになるとともに、その傾斜面5を形成する部位の側壁が軸方向に隣り合った状態になる。
【0054】
このように、表面側コア12と裏面側コア13とを備えるカットコア1において、互いに交差するように径方向に傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、表面側コア12と裏面側コア13は、そのコア2の自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。
【0055】
また、接合部1aでは内周側コア10の側壁部分と外周側コア11の側壁部分とが軸方向に隣り合っていることから、軸方向への移動も抑制される。これにより、カットコア1は、径方向および軸方向への位置ずれを抑制することができる。
【0056】
また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第7構成例)
以下、第7構成例について説明する。この第7構成例では、環状に形成された状態にける軸方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図10に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において軸方向に重ねて配置される表面側コア12および裏面側コア13で構成されている。
【0058】
このとき、表面側コア12および裏面側コア13は、その外形がほぼ等しく形成されている。換言すると、表面側コア12および裏面側コア13は、同一形状に形成した巻き鉄心4を切断することにより形成されている。
【0059】
具体的には、表面側コア12は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第2構成例と同様に磁性体3の幅方向に傾斜した状態で切断することにより形成されている。また、裏面側コア13は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近において、第2構成例と同様に磁性体3の幅方向であって、表面側コア12とは逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成されている。
【0060】
そのため、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせて重ねた状態では、表面側コア12の傾斜面5と裏面側コア13の傾斜面5とは互いに交差したような状態になる。ただし、表面側コア12と裏面側コア13の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
そして、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせることにより、各コア2には、それぞれの端部に、磁性体3の幅方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。これのコア2を接合することにより、カットコア1の双方の接合部1aには、磁性体3の幅方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられることになる。
【0062】
このように、表面側コア12と裏面側コア13とを備えるカットコア1において、互いに交差するように軸方向に傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、表面側コア12と裏面側コア13は、そのコア2の自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。これにより、カットコア1は、軸方向への位置ずれを抑制することができる。
【0063】
また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、締結バンド7を設けたことにより、傾斜面5による移動の抑制がなされない向きへの移動をある程度抑制することができる。
【0064】
(第8構成例)
以下、第8構成例について説明する。この第8構成例では、環状に形成された状態にける径方向への位置ずれを抑制する他の構造、および、接合部1aにギャップを設ける構成について説明する。
図11に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において内周側に配置される内周側コア10と、その内周側コア10の外周側に配置される外周側コア11とにより構成されている。このとき、内周側コア10および外周側コア11は、その厚みがほぼ等しく形成されている。
【0065】
そして、内周側コア10は、巻き鉄心4の一方の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向に傾斜した状態で切断され、他方の脚部4aの中央付近において、傾斜せずに切断されることにより形成されている。
【0066】
また、外周側コア11は、巻き鉄心4の一方の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向であって、内周側コア10とは逆向きに傾斜した状態で切断され、他方の脚部4aの中央付近において、傾斜せずに切断されることにより形成されている。また、傾斜して切断されているのは、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせた際に同じ側に位置する脚部4aである。
【0067】
このため、内周側コア10の傾斜面5と外周側コア11の傾斜面5とは、一方の脚部4aにおいて互いに交差した状態になっている。ただし、内周側コア10と外周側コア11の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
これらの内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせることにより、各コア2には、接合態様その1として示すように、一方の端部に、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。そして、各コア2を接合することにより、カットコア1の一方の接合部1aには、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられることになる。このとき、内周側コア10と外周側コア11の厚みはほぼ等しいため、傾斜面5の交点は、コア2の厚み方向におけるほぼ中央に位置することになる。
【0069】
このように、内周側コア10と外周側コア11とを備えるカットコア1において、互いに交差するように傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、内周側コア10と外周側コア11は、その自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。これにより、カットコア1は、径方向への位置ずれを抑制することができる。
【0070】
また、内周側コア10および外周側コア11の厚みを異なる値にすることができる。その場合であっても、径方向への位置ずれを抑制することができる。また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。
【0071】
また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、締結バンド7を設けたことにより、傾斜面5による移動の抑制がなされない向きへの移動をある程度抑制することができる。
【0072】
また、接合態様その2として示すように、コア2の端部間にギャップを形成するギャップ材20を設ける構成とすることもできる。この場合、傾斜面5が設けられていない側の端部にギャップ材20を設けることで、平板状のギャップ材20を利用することができ、ギャップ材20を容易に製造することができる。また、ギャップ材20はカットコア1の中央付近に配置されることになるため、いわゆるリアクトル鉄心としたり、偏磁防止機能を付帯したりすることができ、利用価値を高めることができる。
【0073】
この場合、ギャップ材20を配置することにより一方の接合部1aにおいてコア2間にギャップが形成されても、他方の接合部1aにおいて磁気回路を保持できるため、利用上の問題は発生しない。さらに、図示は省略するが、傾斜面5を有する側の接合部1aにもギャップ材20を設ける構成とすることができる。その場合、同じ厚みのギャップ材20を設置すれば問題はなく、また、位置ずれの防止効果はそのまま維持することができる。また、ギャップ材20は、上記した第1構成例から第7構成例のカットコア1に適用することもできる。
【0074】
(第9構成例)
以下、第9構成例について説明する。この第9構成例では、環状に形成された状態にける径方向および軸方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図12に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において軸方向に重ねて配置される表面側コア12および裏面側コア13で構成されている。
【0075】
このとき、表面側コア12および裏面側コア13は、その外形がほぼ等しく形成されている。換言すると、表面側コア12および裏面側コア13は、同一形状に形成した巻き鉄心4を切断することにより形成されている。
【0076】
具体的には、表面側コア12は、巻き鉄心4の一方の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向に傾斜した状態で切断され、他方の脚部4aにおいて、傾斜することなく切断されることにより形成されている。また、裏面側コア13は、巻き鉄心4の一方の脚部4aの中央付近において、第1構成例と同様に磁性体3の厚み方向であって、表面側コア12とは逆向きに傾斜した状態で切断され、他方の脚部4aにおいて、傾斜することなく切断されることにより形成されている。また、傾斜して切断されているのは、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせた際に同じ側に位置する脚部4aである。
【0077】
そのため、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせて重ねた状態では、表面側コア12の傾斜面5と裏面側コア13の傾斜面5とは互いに交差したような状態になる。ただし、表面側コア12と裏面側コア13の傾斜面5は、傾斜する向きが逆になっていればよく、傾斜角度や傾斜量は同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
そして、表面側コア12と裏面側コア13とを組み合わせることにより、接合態様その1として示すように、各コア2には、一方の端部に、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5が形成される。また、傾斜面5を形成する部位の側壁は、互い違いの状態で軸方向に隣り合うことになる。
【0079】
これらのコア2を接合することにより、カットコア1の一方の接合部1aには、磁性体3の厚み方向において互いに逆向きに傾斜した2つの傾斜面5がそれぞれ設けられることになるとともに、その傾斜面5を形成する部位の側壁が軸方向に隣り合った状態になる。
【0080】
このように、表面側コア12と裏面側コア13とを備えるカットコア1において、互いに交差するように径方向に傾斜した傾斜面5を接合部1aに設けることにより、表面側コア12と裏面側コア13は、そのコア2の自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力が加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。また、接合部1aでは内周側コア10の側壁部分と外周側コア11の側壁部分とが軸方向に隣り合っていることから、軸方向への移動も抑制される。これにより、カットコア1は、径方向および軸方向への位置ずれを抑制することができる。
【0081】
また、コア2を分割することは、1個当たりの重量を半分程度にできることから、組み立て作業の負担を軽減することができる。また、傾斜面5を設けたことにより、漏れ磁束を軽減することができ、磁束の乱れによる鉄心損失の増加を抑制することができるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。また、位置ずれを抑制する主構造となる傾斜面5は平坦に形成されていることから、製造上において極めて有益なものとなるなど、第1構成例と同様の効果を得ることができる。
【0082】
また、接合態様その2として示すように、コア2の端部間にギャップを形成するギャップ材20を設ける構成とすることもできる。この場合、傾斜面5が設けられていない側の端部にギャップ材20を設けることで、平板状のギャップ材20を利用することができ、ギャップ材20を容易に製造することができる。また、ギャップ材20はカットコア1の中央付近に配置されることになるため、いわゆるリアクトル鉄心としたり、偏磁防止機能を付帯したりすることができ、利用価値を高めることができる。
【0083】
さらに、図示は省略するが、傾斜面5を有する側の接合部1aにもギャップ材20を設ける構成とすることができる。その場合、同じ厚みのギャップ材20を設置すれば問題はなく、また、位置ずれの防止効果はそのまま維持することができる。
【0084】
(第10構成例)
以下、第10構成例について説明する。この第10構成例では、第4構成例で示したカットコア1にギャップ材20を設けた構成について説明する。
図13に示すように、本構成例のカットコア1は、内周側コア10と外周側コア11とにより構成され、それぞれの接合部1aに、逆向きに傾斜していて互いに交差したような状態となっている傾斜面5が設けられている。そして、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせ、各コア2の端部間にギャップ材20を配置して互いに接合することにより、カットコア1が形成されている。
【0085】
このとき、ギャップ材20は、カットコア1の厚み方向のほぼ中央部で折れ曲がってそれぞれの傾斜面5に沿って伸びているとともに、カットコア1の内周面および外周面に引っ掛かるフランジ部が形成されている。これにより、ギャップ材20が径方向にずれることが防止されている。
【0086】
このようなカットコア1によっても、第4構成例で説明した効果が得られるとともに、ギャップ材20はカットコア1の中央付近に配置されることになるため、いわゆるリアクトル鉄心としたり、偏磁防止機能を付帯したりすることができ、利用価値を高めることができる。なお、
図13では双方の接合部1aにギャップ材20を設けた構成を例示しているが、一方の接合部1aにギャップ材20を設ける構成とすることもできる。
【0087】
(第11構成例)
以下、第11構成例について説明する。この第11構成例では、環状に形成された状態にける径方向および軸方向への位置ずれを抑制する他の構造について説明する。
図14に示すように、本構成例のカットコア1では、コア2は、環状に配置された状態において軸方向に重ねて配置される表面側コア12および裏面側コア13を備えている。これら表面側コア12および裏面側コア13は、その外形がほぼ等しく形成されて
いる。
【0088】
また、表面側コア12および裏面側コア13は、それぞれ、環状に配置された状態において内周側に配置される内周側コア10と、その内周側コア10の外周側に配置される外周側コア11とにより構成されている。これら内周側コア10および外周側コア11は、その厚みがほぼ等しく形成されている。つまり、表面側コア12および裏面側コア13は、実質的に同じ形状のものを利用している。
【0089】
そして、表面側コア12の外周側コア11は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近を、磁性体3の厚み方向および幅方向に傾斜した状態で切断することにより形成されている。より具体的には、巻き鉄心4は、断面視において磁性体3が矩形状に配置された状態となっており、断面視における4隅の角部のうち、対向する角部に向かって傾斜した状態で切断されている。
【0090】
一方、表面側コア12の内周側コア10は、巻き鉄心4の脚部4aの中央付近を、磁性体3の厚み方向および幅方向に、外周側コア11とは逆向きに傾斜した状態で切断することにより形成されている。ここでいう逆向きとは、外周側コア11とは異なる対向する角部に向かって傾斜した状態である。
【0091】
また、裏面側コア13は、表面側コア12と同様の切断態様で形成されている。つまり、本構成例では、実質的には、同じ形状且つ同じ切断態様で形成した表面側コア12を2組用意し、その一方を裏面側コア13としている。そのため、一見すると複雑な構造に見える後述する接合部1aは、実際には極めて容易に形成することができる。
【0092】
そして、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせた表面側コア12と、内周側コア10と外周側コア11とを組み合わせた裏面側コア13とを、裏面側コア13を表裏反転させた状態で、軸方向に組み合わせて重ねることにより、各コア2の端部には、断面視における4隅の角部から中心に向かってそれぞれ傾斜している4つの傾斜面5が形成される。
【0093】
そのため、各コア2を接合すると、カットコア1の接合部1aには、磁性体3の厚み方向および磁性体3の幅方向の双方に対して傾斜しているとともに、それぞれ断面視における中央部に向かって傾斜している4つの傾斜面5が設けられることになる。つまり、傾斜面5は、接合部1aの中央から四方に向かって設けられている。
【0094】
そのため、各コア2は、自重や締結バンド7の締結力によってカットコア1の厚み方向および幅方向の中心位置に留まるように傾斜面5にすべり力がそれぞれ加わり、互いに拘束し合うことで、位置ずれへの抵抗力が増加することになる。そして、これらの傾斜面5により、接合部1aでは、径方向および軸方向の双方への移動が抑制される。これにより、カットコア1は、径方向および軸方向への位置ずれを抑制することができる。
【0095】
この場合、一方の接合部1aに上記した四方への傾斜面5を設け、他方の脚部4aには傾斜面5を設けない構成とすることができる。また、接合部1aにギャップ材20を設ける構成とすることができる。
【0096】
以上の各構成例で説明したように、帯状の磁性体3を巻回して対向する脚部4aで切断したコア2を互いに接合して形成されるカットコア1において、磁性体3の厚み方向または磁性体3の幅方向の少なくとも一方に傾斜した状態で切断したコア2を用い、接合部1aの少なくとも一方に磁性体3の厚み方向または磁性体3の幅方向の少なくとも一方に傾斜する傾斜面5を設ける構成とすることにより、位置ずれを抑制することができる。
【0097】
実施形態ではカットコア1の利用形態として変圧器8を例示したが、変圧器8以外の用途にもカットコア1を利用することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
図面中、1はカットコア、1aは接合部、2はコア、3は帯状の磁性体、4は巻き鉄心、5は傾斜面、10は内周側コア、11は外周側コア、12は表面側コア、13は裏面側コア、20はギャップ材を示す。