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7402100コンクリート部材の継手及びコンクリート部材の接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】コンクリート部材の継手及びコンクリート部材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20231213BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
E01D19/12
E04B1/61 502B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058143
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156041
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 輝康
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-019263(JP,A)
【文献】特開平07-279260(JP,A)
【文献】特許第5787965(JP,B2)
【文献】特開平10-231694(JP,A)
【文献】特開2011-226100(JP,A)
【文献】米国特許第05531539(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04B 1/38-1/61
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、
隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合部材とを備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
結合部材は、互いに対向する各受部材の各凹部の各対向壁のうちの少なくとも一方の対向壁における内壁面と当該内壁面と対向する挿入部の内面との間に嵌入されて当該対向壁と挿入部とを結合する部材であって、
当該結合部材は、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置される先行部材と、当該設置された先行部材と対向壁の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材と挿入部の内面との間に嵌入される後行部材とを備え
互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置された先行部材は、互いに対向する対向壁の内壁面及び挿入部の内面のうちの一方の面と間隔を隔てて対向する面が、上方に向かうほど当該一方の面との間隔が大きくなるような傾斜面に形成され、後行部材は、当該先行部材の傾斜面と接触する傾斜面及び当該一方の面と接触する面を有するように構成されたことを特徴とするコンクリート部材の継手。
【請求項2】
先行部材は傾斜面から内部まで到達するねじ螺着孔を備え、
後行部材は上面から傾斜面まで到達するねじ貫通孔を備え、
ねじ貫通孔は、傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さが、ねじ螺着孔の傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成され、
ねじ貫通孔とねじ螺着孔とが連続するように先行部材の傾斜面と後行部材の傾斜面とが接触した状態で、ねじがねじ貫通孔を通過してねじ螺着孔に締結されたことにより、先行部材と後行部材とが連結されたことを特徴とする請求項に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項3】
互いに対向する各受部材の各凹部の各対向壁は、繋ぎ部材の連結部を上方から挿入するための溝の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備え、
結合部材は、互いに対向する受部材の一方側対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設けられたとともに、互いに対向する受部材の他方側対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンクリート部材の継手。
【請求項4】
端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された各コンクリート部材同士を継手を用いて接続するコンクリート部材の接続方法であって、
継手は、
隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合部材と、を備え、
受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、
繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材と接合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、
結合部材は、先行部材と後行部材とを備えており、
コンクリート部材の接続方法は、
ぎ部材の一方の挿入部を一方の受部材の凹部に挿入して設置するとともに、繋ぎ部材の他方の挿入部を他方の受部材の凹部に挿入して設置する挿入部設置ステップと、
先行部材を、互いに隣り合う各受部材の互いに対向する対向壁の内壁面と繋ぎ部材の挿入部の内面との間に設置する先行部材設置ステップと、
当該設置された先行部材と対向壁の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材と挿入部の内面との間に、上方から後行部材を嵌入して設置する後行部材設置ステップとを備えたことを特徴とするコンクリート部材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手等に関する。
【背景技術】
【0002】
橋軸直角方向(橋幅方向)に並設された複数の主桁上にコンクリート部材としての例えば橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版を架け渡し、橋軸方向に沿って隣り合う床版同士をコッター式継手と呼ばれる継手を用いて接続する床版接続工法が知られている(特許文献1参照)。
当該継手は、隣り合う各床版の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、繋ぐ繋ぎ部材を受部材に固定するボルトとを備えた構成である。受部材は、繋ぎ部材に設けられた係合部が係合する係合受部を備えた係合受部と、床版のコンクリートに定着される例えば定着筋等の鋼材により形成された定着部とを備える。繋ぎ部材は、互いに隣り合う各床版の各端部にそれぞれ設置された受部材の各係合受部に係合する一対の係合部と、一対の係合部を繋ぐ連結部とを備える。
当該継手によれば、橋軸方向に沿って隣り合う各床版の端部にそれぞれ埋設された各係合受部の各係合受部内に繋ぎ部材の各係合部を挿入した後、係合受部内に嵌め込まれた係合部の固定部に形成されたボルト挿入孔にボルトを挿入し、各係合受部の底版に形成されたねじ孔にボルトを締結することによって、繋ぎ部材と係合受部とが固定され、当該継手により、互いに隣り合う各床版が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5787965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、継手の製造誤差、床版の製作誤差や収縮量(反り)のばらつき、腐食防止のために継手に塗布されるエポキシ樹脂の塗布量のばらつき、床版架設時の施工誤差等によって、隣り合う各床版の端部に埋設された各係合受部同士の左右方向や上下方向のずれが生じる。このずれが大きい場合は、繋ぎ部材の係合部を係合受部の係合受部内に嵌め込むことが困難となり、繋ぎ部材と係合受部とを結合できなくなってしまう。また、繋ぎ部材の係合部を係合受部内に嵌め込むことができたとしても、係合受部内に嵌め込まれた係合部のボルト挿入孔と各係合受部の底版のねじ孔とが一致しなくなるため、ボルトを締結することができず、繋ぎ部材と係合受部とを結合できなくなってしまう。このように、繋ぎ部材と係合受部とを結合できない場合、当該継手部分で応力の伝達ができず、継手部分で損壊を招く恐れがある。
本発明は、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるコンクリート部材の継手等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリート部材の継手は、コンクリート部材同士を連結するためのコンクリート部材の継手であって、隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合部材とを備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、結合部材は、互いに対向する各受部材の各凹部の各対向壁のうちの少なくとも一方の対向壁における内壁面と当該内壁面と対向する挿入部の内面との間に嵌入されて当該対向壁と挿入部とを結合する部材であって、当該結合部材は、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置される先行部材と、当該設置された先行部材と対向壁の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材と挿入部の内面との間に嵌入される後行部材とを備え、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置された先行部材は、互いに対向する対向壁の内壁面及び挿入部の内面のうちの一方の面と間隔を隔てて対向する面が、上方に向かうほど当該一方の面との間隔が大きくなるような傾斜面に形成され、後行部材は、当該先行部材の傾斜面と接触する傾斜面及び当該一方の面と接触する面を有するように構成されたことを特徴とする。
また、先行部材は傾斜面から内部まで到達するねじ螺着孔を備え、後行部材は上面から傾斜面まで到達するねじ貫通孔を備え、ねじ貫通孔は、傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さが、ねじ螺着孔の傾斜面の傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成され、ねじ貫通孔とねじ螺着孔とが連続するように先行部材の傾斜面と後行部材の傾斜面とが接触した状態で、ねじがねじ貫通孔を通過してねじ螺着孔に締結されたことにより、先行部材と後行部材とが連結されたことを特徴とする。
また、互いに対向する各受部材の各凹部の各対向壁は、繋ぎ部材の連結部を上方から挿入するための溝の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備え、結合部材は、互いに対向する受部材の一方側対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設けられたとともに、互いに対向する受部材の他方側対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設けられたことを特徴とする。
本発明に係るコンクリート部材の継手によれば、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを結合できるようになる。
本発明に係るコンクリート部材の接続方法は、端面同士が目地となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された各コンクリート部材同士を継手を用いて接続するコンクリート部材の接続方法であって、継手は、隣り合う各コンクリート部材の端部側にそれぞれ設置された受部材と、互いに隣り合う各受部材を繋ぐ繋ぎ部材と、互いに隣り合う各受部材と繋ぎ部材とを結合する結合部材と、を備え、受部材は、繋ぎ部材に設けられた挿入部が挿入される凹部と、コンクリート部材のコンクリートに定着される定着部とを備え、繋ぎ部材は、互いに隣り合う各受部材の各凹部に挿入されて各受部材と接合される一対の挿入部と、一対の挿入部を繋ぐ連結部とを備え、結合部材は、先行部材と後行部材とを備えており、コンクリート部材の接続方法は、繋ぎ部材の一方の挿入部を一方の受部材の凹部に挿入して設置するとともに、繋ぎ部材の他方の挿入部を他方の受部材の凹部に挿入して設置する挿入部設置ステップと、先行部材を、互いに隣り合う各受部材の互いに対向する対向壁の内壁面と繋ぎ部材の挿入部の内面との間に設置する先行部材設置ステップと、当該設置された先行部材と対向壁の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材と挿入部の内面との間に、上方から後行部材を嵌入して設置する後行部材設置ステップとを備えたことを特徴とする。
本発明に係るコンクリート部材の接続方法によれば、隣り合う各コンクリート部材の端部に埋設された各受部材同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材と繋ぎ部材とを設計通りに容易に結合できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】による床版の接続構造を上方から見た図(実施形態1)。
図2】継手を示す分解斜視図(実施形態1)。
図3】継手の各受部材と繋ぎ部材とが結合部材で連結された状態を示す斜視図(実施形態1)。
図4】継手の各受部材と繋ぎ部材とが結合部材で連結された状態を示す平面図(実施形態1)。
図5】隣り合う床版の接続方法の手順を示す説明図(実施形態1)。
図6】隣り合う床版の接続方法の手順を示す説明図(実施形態1)。
図7】隣り合う床版の接続方法の手順を示す説明図(実施形態1)。
図8】隣り合う床版の接続構造を示す断面図(実施形態2)。
図9】隣り合う床版の接続構造を示す断面図(実施形態3)。
図10】隣り合う床版の接続構造を示す断面図(実施形態4)。
図11】隣り合う床版の接続構造の一部を示す断面図(実施形態10)。
図12】隣り合う床版の接続構造の一部を示す断面図(実施形態10)。
図13】隣り合う床版の接続構造の一部を示す断面図(実施形態10)。
図14】床版の接続構造のスペーサを示す斜視図(実施形態11)。
図15】床版の接続構造のスペーサを示す分解斜視図(実施形態11)。
図16】床版の接続構造を示す断面図(実施形態11)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
例えば図1に示すように、橋軸直角方向(橋幅方向)Yに並設された図外の複数の主桁上に架け渡されて橋軸方向Xに沿って隣り合うコンクリート部材としての橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版10,10同士を連結する実施形態1に係る継手1は、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10のうちの一方の床版10の端部11側に設置された受部材2Aと、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10のうちの他方の床版10の端部11側に設置された受部材2Bと、橋軸方向Xに沿って隣り合う一方の床版10の端部11に設置された受部材2Aと他方の床版10の端部11に設置された受部材2Bとを繋ぐ繋ぎ部材3と、互いに隣り合う各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とを結合させる結合部材4とを備えて構成される。
【0008】
そして、橋軸方向Xに沿って隣り合う床版10,10の接続構造は、図1に示すように、端面11s,11s同士が目地15となる隙間を介して互いに隣り合うように配置された各床版10,10と、目地15となる隙間に設置されたスペーサ5と、互いに隣り合うように配置された各床版10,10同士を接続する実施形態1に係る継手1と、目地15となる隙間に充填されたコンクリートやモルタル等の目地材16とを備えた構造である。
【0009】
図2図3に示すように、一方の受部材2Aは、繋ぎ部材3に設けられた一方の挿入部31Aが挿入される凹部21Aが形成された受部22Aと、床版10のコンクリートに定着される定着筋等の定着部23とを備える。
他方の受部材2Bは、繋ぎ部材3に設けられた他方の挿入部31Bが挿入される凹部21Bが形成された受部22Bと、床版10のコンクリートに定着される定着筋等の定着部23とを備える。
受部材2A,2Bは、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面2u(図5(a)参照)を備える。
【0010】
尚、受部材2A,2Bは、下面2uが床版10の平坦な板面である下面10u(図5(a)参照)と平行になるように床版10の端部11側に設置され、従って、下面10uが水平面と接触するように床版10を設置した場合には、受部材2A,2Bの下面2uが水平面となる。
従って、以下、複数の主桁上に架け渡された床版10の下面10uと直交する方向を上下と定義するとともに、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端面11s,11s(図1参照)に沿った水平方向(橋軸直角方向(橋幅方向)Y)を左右と定義して説明する。
【0011】
図2に示すように、繋ぎ部材3は、一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入される一方の挿入部31Aと、他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入される他方の挿入部31Bと、挿入部31Aと挿入部31Bとを繋ぐ連結部32とを備える。
連結部32は、一方の挿入部31Aの左右間の中央部と他方の挿入部31Bの左右間の中央部と連結する平板により形成される。当該連結部32は、後述の連結部挿入溝60の溝幅よりも若干狭い寸法の板厚の平板により形成される。
繋ぎ部材3は、水平面に設置された場合に、当該水平面と面接触する平行な面(平坦面)に形成された下面3u(図6(a)参照)を備える。
【0012】
図2に示すように、繋ぎ部材3は、上から見てH形の上面3t、及び、下から見てH形の下面3uが、互いに平行に対向する平面に形成される。そして、挿入部31A,31Bの外面3f,3fが、互いに平行に対向するとともに上面3t及び下面3uと垂直をなす平面により形成されるとともに、挿入部31A,31Bの内面31a,31bが、互いに平行に対向するとともに上面3t及び下面3uと垂直をなす平面により形成される。
即ち、一方の挿入部31Aの内面31aと他方の挿入部31Bの内面31bとの間の対向間隔は、挿入部31Aの外面3fと挿入部31Bの外面3fとの間の対向間隔よりも短い。
【0013】
図2及び図3に示すように、凹部21A,21Bは、例えば長方形状、正方形状等の底版25と、底版25の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの一方の端縁側(例えば定着部23が設けられる側の辺縁側)より立ち上がるように設けられた妻壁26と、底版25の互いに対向する他方の一対の各端縁側よりそれぞれ立ち上がるように設けられた左右の側壁27,27と、底版25の互いに対向する一方の一対の端縁のうちの他方の端縁側(例えば定着部23が設けられる側とは反対側の辺縁側)より立ち上がるように設けられた対向壁28とで囲まれて、かつ、挿入部31A,31Bが挿入される挿入部挿入口、即ち、凹部21A,21Bの開口29が、妻壁26、側壁27,27、対向壁28の上端縁で囲まれた上部開口により形成された構成である。
底版25は、対向壁28が立ち上がる側の端縁以外の端縁が円形縁や多角形縁等に形成された形状であってもよい。即ち、凹部21A,21Bは、底版25の円形縁側や多角形縁側等から立ち上がるような左右の側壁27,27と妻壁26とが一体となった湾曲壁や多角形壁等と対向壁28とで囲まれるように形成された構成であってもよい。
【0014】
図2乃至図4に示すように、床版10の端部11側に設置される受部材2A,2Bの対向壁28の左右の中央位置には、繋ぎ部材3の連結部32を挿入するための連結部挿入溝60が形成されている。当該連結部挿入溝60は、開口29から底版25の内底面25a(図4参照)側に延長するように形成されている。
また、左右の側壁27,27の外面には、せん断抵抗を大きくするとともに床版10のコンクリートとの付着力を大きくするために、凹凸部61が形成されている。
【0015】
図4に示すように、受部材2A,2Bの対向壁28は、繋ぎ部材3の連結部32を上方から挿入するための連結部挿入溝60の両側に位置された一方側対向壁と他方側対向壁とを備える。即ち、連結部挿入溝60の左側に位置される一方側対向壁としての左側対向壁28Lと、当該連結部挿入溝60の右側に位置される他方側対向壁としての右側対向壁28Rとを備える。
【0016】
例えば図5(a)に示すように、凹部21A、及び、凹部21Bの底版25の内底面25aは下面2uと平行な平面に形成されており、妻壁26の内壁面26a、及び、側壁27,27の内壁面27aは、内底面25aに対して垂直面に形成されている。
そして、凹部21Aの左側対向壁28Lの内壁面28a、凹部21Aの右側対向壁28Rの内壁面28c、凹部21Bの左側対向壁28Lの内壁面28b、凹部21Bの右側対向壁28Rの内壁面28dは、底版25の内底面25aに対して垂直面に形成されている(図2図4図5(a)参照)。
【0017】
図4に示すように、受部材2A,2Bは、開口29及び連結部挿入溝60を外部に露出させた状態で受部22A,22Bが床版10の端部11側に埋め込まれ、妻壁26から床版10の中央側に延長するように設けられた定着部23が床版10に埋め込まれている。
即ち、開口29及び連結部挿入溝60が外部に露出して他の部分が床版10のコンクリートに埋設されるように受部材2A又は受部材2Bを図外の型枠に取付けた後に当該型枠内にコンクリートを流し込んでコンクリートを硬化させた後、受部材2A又は受部材2Bを型枠から取り外して脱型することにより、端部11側に受部材2A又は受部材2Bが埋め込まれて固定された橋梁用コンクリートプレキャスト製の床版10が形成される。
【0018】
スペーサ5は、互いに隣り合うように配置された各床版10,10の端面11s,11s間の目地15となる隙間部分において、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間の、2箇所に、それぞれ設置される(図2図4参照)。
【0019】
スペーサ5は、互いに対向する各受部材2A,2Bの各対向壁28,28の各外壁面のうちの一方の外壁面62,63と接触した状態に設置される先行スペーサ5Aと、当該先行スペーサ5Aと、互いに対向する各受部材2A,2Bの各対向壁28,28の各外壁面のうちの他方の外壁面62,63との間に嵌入される後行スペーサ5Bとで構成される。
具体的には、図4に示すように、2つのスペーサ5,5…を用いている。
即ち、第1のスペーサ5は、一方の受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62と接触した状態に設置される先行スペーサ5Aと、当該先行スペーサ5Aと他方の受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62との間に嵌入される後行スペーサ5Bとで構成される。
第2の第1のスペーサ5は、一方の受部材2Aの右側対向壁28Rの外壁面63と接触した状態に設置される先行スペーサ5Aと、当該先行スペーサ5Aと他方の受部材2Aの右側対向壁28Rの外壁面63との間に嵌入される後行スペーサ5Bとで構成される。
このような、先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されたスペーサ5を用いることによって、目地15の幅寸法、即ち、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間の寸法の増減に対応可能となる。
【0020】
先行スペーサ5Aは、例えば図2図5(a)に示すように、目地15となる隙間に設置された状態において、一方の受部材2Aの対向壁28(左側対向壁28Lの外壁面62又は右側対向壁28Rの外壁面63)と対向して上下左右に延長する平面に形成された取付面として機能する面(垂直面)5aと、当該面5aと対向して上下方向に傾斜する傾斜面5bと、当該面5aの上端縁と傾斜面5bの上端縁と繋ぐ上面と、当該面5aの下端縁と傾斜面5bの下端縁と繋ぐ下面とを備えた形状に形成される。
先行スペーサ5Aの傾斜面5bは、先行スペーサ5Aが目地15となる隙間に設置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面5aに近づく傾斜面に形成される。
【0021】
後行スペーサ5Bは、例えば図2図5(c)に示すように、目地15となる隙間に設置された状態において、他方の受部材2Bの対向壁28(左側対向壁28Lの外壁面62又は右側対向壁28Rの外壁面63)と対向して上下左右に延長する平面に形成された面(垂直面)5aと、当該面5aと対向して上下方向に傾斜する傾斜面5bと、当該面5aの上端縁と傾斜面5bの上端縁と繋ぐ上面と、当該面5aの下端縁と傾斜面5bの下端縁と繋ぐ下面とを備えた形状に形成される。
後行スペーサ5Bの傾斜面5bは、後行スペーサ5Bが目地15となる隙間に設置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面5aから遠ざかる傾斜面に形成される。
【0022】
換言すれば、先行スペーサ5A及び後行スペーサ5Bは、目地15となる隙間に設置された状態においての垂直縦断面が台形のブロック体に形成される。当該台形は、台形の下底と一方の脚とのなす角度が90°である。
そして、先行スペーサ5Aは、台形の下底を含む下面が下方に位置するように、目地15となる隙間に設置される(図5(a)参照)。
また、後行スペーサ5Bは、台形の上底を含む下面が下方に位置するように、目地15となる隙間に設置される(図5(c)参照)。
【0023】
結合部材4は、互いに隣り合うように受部材2Aと受部材2Bとが設置され、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aが一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入されてかつ繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bが他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入された後に、一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28と一方の挿入部31Aとの間、及び、他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28と他方の挿入部31Bとの間に設置される(図7(b)参照)。
【0024】
具体的には、結合部材4は、図4に示すように、一方の受部材2Aの凹部21Aの左側対向壁28Lの内壁面28aと一方の挿入部31Aの内面31aとの間、一方の受部材2Aの凹部21Aの右側対向壁28Rの内壁面28cと一方の挿入部31Aの内面31aとの間、他方の受部材2Bの凹部21Bの左側対向壁28Lの内壁面28bと他方の挿入部31Bの内面31bとの間、他方の受部材2Bの凹部21Bの右側対向壁28Rの内壁面28dと他方の挿入部31Bの内面31bとの間の、4箇所に、それぞれ設置される。
【0025】
そして、結合部材4は、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面とのうちの一方の面と対向した状態に設置される先行部材4Aと、当該先行部材4Aと、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面とのうちの他方の面との間に嵌入される後行部材4Bとで構成される。
【0026】
先行部材4Aは、例えば図7(a)に示すように、一方の受部材2Aの対向壁28と一方の挿入部31Aとの間、及び、他方の受部材2Bの対向壁28と他方の挿入部31Bとの間に挿入され、下面が内底面25aに載置されてかつ後述する面4bが対向壁28と平行に対向するように配置される。
当該先行部材4Aは、一方の受部材2Aの対向壁28と一方の挿入部31Aとの間、又は、他方の受部材2Bの対向壁28と他方の挿入部31Bとの間に挿入され、下面が内底面25aに載置された状態で、上下左右に延長する平面に形成された面(垂直面)4bと、当該面4bと対向して上下方向に傾斜する傾斜面4aと、当該面4bの上端縁と傾斜面4aの上端縁と繋ぐ上面と、当該面4bの下端縁と傾斜面4aの下端縁と繋ぐ下面とを備えた形状に形成される。
先行部材4Aの傾斜面4aは、先行部材4Aの下面が内底面25aに載置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面4bに近づく傾斜面に形成される。
【0027】
後行部材4Bは、例えば図7(b)に示すように、設置された先行部材4Aと一方の挿入部31Aとの間、又は、設置された先行部材4Aと他方の挿入部31Bとの間に挿入された状態において、一方の挿入部31Aの内面31a、又は、他方の挿入部31Bの内面31bと対向して上下左右に延長する平面に形成された面(垂直面)4bと、当該面4bと対向して上下方向に傾斜して先に設置された先行部材4Aの傾斜面4aと接触する傾斜面4aと、当該面4bの上端縁と傾斜面4aの上端縁と繋ぐ上面と、当該面4bの下端縁と傾斜面4aの下端縁と繋ぐ下面とを備えた形状に形成される。
後行部材4Bの傾斜面4aは、後行スペーサ4Bが、先行部材4Aと一方の挿入部31Aとの間、又は、先行部材4Aと他方の挿入部31Bとの間に設置された状態において、下端縁から上端縁に向けて次第に面4bから遠ざかる傾斜面に形成される。
【0028】
換言すれば、先行部材4A及び後行部材4Bは、設置状態においての垂直縦断面が台形のブロック体に形成される。当該台形は、台形の下底と一方の脚とのなす角度が90°である。
そして、先行部材4Aは、台形の下底を含む下面が内底面25aに載置されるように設置される。
また、後行部材4Bは、台形の上底を含む下面が下方に位置するように設置される。
【0029】
実施形態1においては、具体的には、図4図7(a),図7(b)に示すように、互いに隣り合う各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とが、4つの結合部材4,4…により結合された構成となっている。
即ち、第1の結合部材4は、下面が内底面25aに載置された状態で、面4bが、一方の受部材2Aの凹部21Aの左側対向壁28Lの内壁面28aと平行に対向するように設置された先行部材4Aと、当該設置された先行部材4Aと一方の挿入部31Aの内面31aとの間に嵌入された後行部材4Bとで構成される。
第2の結合部材4は、下面が内底面25aに載置された状態で、面4bが、一方の受部材2Aの凹部21Aの右側対向壁28Rの内壁面28cと平行に対向するように設置された先行部材4Aと、当該設置された先行部材4Aと一方の挿入部31Aの内面31aとの間に嵌入された後行部材4Bとで構成される。
第3の結合部材4は、下面が内底面25aに載置された状態で、面4bが、他方の受部材2Bの凹部21Bの左側対向壁28Lの内壁面28bと平行に対向するように設置された先行部材4Aと、当該設置された先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31bとの間に嵌入された後行部材4Bとで構成される。
第4の結合部材4は、下面が内底面25aに載置された状態で、面4bが、他方の受部材2Bの凹部21Bの右側対向壁28Rの内壁面28dと平行に対向するように設置された先行部材4Aと、当該設置された先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31bとの間に嵌入された後行部材4Bとで構成される。
【0030】
次に、床版10,10の接続方法を詳細に説明する。
まず、図5(a)に示すように、橋軸方向Xに沿って隣り合うように設置する各床版10,10のうちの例えば一方の床版10の受部材2Aの対向壁28に予め先行スペーサ5Aを設置しておく。
当該先行スペーサ5Aの設置は、例えば、図4に示す、受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63、又は、当該外壁面62,63と対向する先行スペーサ5Aの面5aの少なくとも一方に接着剤を塗布した後に、先行スペーサ5Aの面5aと対向壁28の外壁面62や外壁面63とを接着することで、当該外壁面62及び当該外壁面63にそれぞれ先行スペーサ5Aを取付けておく。
即ち、面5aが一方の受部材2Aの左側対向壁28Lの外壁面62と接触した状態に設置された先行スペーサ5Aは、他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62と対向する面が、上方に向かうほど当該他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62との間隔が大きくなるような傾斜面5bに形成される(図5(a)参照)。
同様に、面5aが一方の受部材2Aの右側対向壁28Rの外壁面63と接触した状態に設置された先行スペーサ5Aは、他方の受部材2Bの右側対向壁28Rの外壁面63と対向する面が、上方に向かうほど当該他方の受部材2Bの右側対向壁28Rの外壁面63との間隔が大きくなるような傾斜面5bに形成される(図5(a)参照)。
【0031】
そして、図5(a)に示すように、先行スペーサ5Aが取付けられた一方の床版10を桁上に設置するとともに、他方の床版10の受部材2Bの対向壁28と一方の床版10の受部材2Aの対向壁28とが目地幅を介して対向するように、他方の床版10を桁上に設置する。
次に、図5(b),図5(c),図4に示すように、他方の床版10の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62と先行スペーサ5Aの傾斜面5bとの間で形成された設置空間、及び、他方の床版10の受部材2Bの右側対向壁28Rの外壁面63と先行スペーサ5Aの傾斜面5bとの間で形成された設置空間に、それぞれ、後行スペーサ5Bを嵌入して設置する。
即ち、一つの後行スペーサ5Bの面5aと他方の床版10の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62とを接触させるとともに、当該後行スペーサ5Bの傾斜面5bと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとを接触させながら、当該一つの後行スペーサ5Bを下方に押し込んで、一つの後行スペーサ5Bを設置空間に嵌入させる。
同様に、もう一つの後行スペーサ5Bの面5aと他方の床版10の受部材2Bの右側対向壁28Rの外壁面63とを接触させるとともに、当該後行スペーサ5Bの傾斜面5bと先行スペーサ5Aの傾斜面5bとを接触させながら、当該後行スペーサ5Bを下方に押し込んで、当該後行スペーサ5Bを設置空間に嵌入させる。
即ち、後行スペーサ5B,5Bは、先行スペーサ5A,5Aの傾斜面5b,5bと接触する傾斜面5b,5b及び他方の受部材2Bの左側対向壁28Lの外壁面62及び右側対向壁28Rの外壁面63と接触する面5a,5aを有するように構成されている(図5(c),図4参照)。
以上により、互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間と、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間とに、それぞれ、スペーサ5が設置される(図5(c),図4参照)。
このようなスペーサ5を用いたことにより、目地15の幅寸法にばらつきが生じた場合でも、対応可能となる。
【0032】
次に、図6に示すように、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aを一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入するとともに、繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bを他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入して、一方の挿入部31Aの下面3uを一方の受部材2Aの凹部21Aの内底面25aに載置するとともに、他方の挿入部31Bの下面3uを他方の受部材2Bの凹部21Bの内底面25aに載置する。
この場合、図6(a),図4に示すように、一方の挿入部31Aの内面31aと一方の受部材2Aの凹部21Aの対向壁28の内壁面28a,28cとを、結合部材4を設置するための所定の間隔を隔てて互いに平行に対向させるとともに、他方の挿入部31Bの内面31bと他方の受部材2Bの凹部21Bの対向壁28の内壁面28b,28dとを、結合部材4を設置するための所定の間隔を隔てて互いに平行に対向させる。
【0033】
そして、図7(a),図4に示すように、各結合部材4,4…の各先行部材4A,4A…の面4b,4b…が、内壁面28a,28c,28b,28dのそれぞれと対向して、かつ、下面が内底面25aに載置されるように、各先行部材4A,4A…を4か所の所定の位置に設置する。
次に、図7(a),図4に示すように、面4b,4bが内壁面28a,28cと対向するように設置された各先行部材4A,4A…の面4a,4aと一方の挿入部31Aの内面31a,31aとの間により形成された結合部材嵌入空間4u,4u、さらには、面4b,4bが内壁面28b,28dと対向するように設置された各先行部材4A,4A…の面4a,4aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間により形成された結合部材嵌入空間4u,4uに、それぞれ、後行部材4B,4B,4B,4Bを嵌入する。
即ち、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置された先行部材4Aは、互いに対向する対向壁の内壁面及び挿入部の内面のうちの一方の面(図7(a)の内面31a,31a,31b,31b)と間隔を隔てて対向する面が、上方に向かうほど当該一方の面との間隔が大きくなるような傾斜面4aに形成され、後行部材4Bは、図7(b)に示すように、当該先行部材4Aの傾斜面4aと接触する傾斜面4a及び当該一方の面と接触する面4bを有するように構成される。
この場合、各後行部材4B,4B…を各結合部材嵌入空間4u,4u…に嵌入することにより、各先行部材4Aが各後行部材4Bにより押圧されて各先行部材4Aの面4bと各挿入部31A,31Bの内面31a,31bとが強固に接触した状態となるとともに、各後行部材4Bの傾斜面4aと各先行部材4Aの傾斜面4aとが強固に接触して、かつ、各後行部材4Bの面4bと各対向壁28の各内壁面28a,28c,28b,28dとが強固に接触した状態となる。
従って、先行部材4Aと後行部材4Bとで構成された結合部材4により、一方の挿入部31Aと一方の受部材2Aとが互いに密着して固定状態に結合されるとともに、他方の挿入部31Bと他方の受部材2Bとが固定状態に結合されて、互いに隣り合う床版10,10同士が連結されることになる。
また、繋ぎ部材3の挿入部31Bにおいて連結部32を挟んで左右に隣り合う一対の内面31a,31a,31b,31bにそれぞれ対応するように結合部材4,4,4,4が設置されるので、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との結合において、左右のバランスが良好な固定状態を維持できるようになる(図4参照)。
【0034】
さらに、橋軸方向Xに沿って隣り合う床版10,10同士が継手1で連結された後、図7(c)に示すように、凹部21A,21B内、及び、凹部21A,21Bと繋ぎ部材3の上方に目地材16を充填することにより、繋ぎ部材3の凹部21A,21Bからの抜け防止が図れるとともに、図1に示すように、隣り合う床版10,10の端面11s,11s間の隙間である目地15に目地材16を充填することにより、互いに隣り合う床版10,10同士の接合が完了する。
【0035】
即ち、実施形態1に係る床版の接続方法は、互いに隣り合うように配置された各床版10,10の端面11s,11s間の目地15となる隙間部分において、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間、互いに対向する右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間に、それぞれ、スペーサ5を設置するスペーサ設置ステップと、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aを一方の受部材2Aの凹部21Aに挿入して設置するとともに、繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bを他方の受部材2Bの凹部21Bに挿入して設置する挿入部設置ステップと、結合部材4を構成する先行部材4Aを、互いに対向する対向壁28の内壁面28a,28c,28b,28dと挿入部31A,31Bの内面31a,31a,31b,31bとの間に設置する先行部材設置ステップと、当該設置された先行部材4Aと挿入部31A,31Bの内面31a,31a,31b,31bとの間に、上方から結合部材4を構成する後行部材4Bを嵌入して設置する後行部材設置ステップと備えた接続方法である。
実施形態1に係る床版の接続方法によれば、隣り合う各床版10,10の端部に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とを設計通りに容易に結合できるようになる。
【0036】
実施形態1に係る床版10の接続構造のように、目地15となる隙間にスペーサ5を設置した場合、当該スペーサ5が反力装置として機能する。即ち、受部材2A,2Bの凹部21A,21Bに繋ぎ部材3の挿入部31A,31Bを挿入し、結合部材嵌入空間4uに結合部材4を嵌入した際には、繋ぎ部材3には水平方向の引張力が生じる。このため、各受部材2A,2Bと繋ぎ部材3及び結合部材4との接触部分を介して各床版10,10同士を互いに引き寄せる方向に力が働く。この際、当該引き寄せ力が主桁上に設置された床版10と主桁との摩擦抵抗よりも大きければ、床版10,10同士が過剰に近付こうとするために、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とが堅固に一体化しない可能性がある。
しかしながら、実施形態1では、目地部分を挟んで対向する各受部材2A,2Bの対向壁28,28間に設置されたスペーサ5が反力装置として機能することによって、床版10,10同士を引き寄せる方向に働く引き寄せ力を抑制でき、床版10,10同士が過剰に近付こうとすることが防止される。
さらに、各床版10,10同士を互いに引き寄せる方向に働く力に応じた逆向きの力(反力)がスペーサ5から受部材2A,2Bの対向壁28,28の外面(外壁面62,62、及び、外壁面63,63)に付与されることによって、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0037】
また、実施形態1に係る床版10の接続構造のように、目地15となる隙間、即ち、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間にスペーサ5を設置した場合、継手1、目地15に目地材16が充填された目地部分の上縁側、下縁側の応力及びひずみが低減する。
【0038】
また、継手1の応力度が低減することから、継手1の断面寸法を小さくできるので、継手1の製造コストを低減でき、安価な継手1を用いることが可能となる。また、継手1に生じる応力を低減できるため、継手1の疲労抵抗性を向上できる。
【0039】
また、実施形態1では、繋ぎ部材3に加わる引張力とスペーサ5の反力とが釣り合って、各床版10,10には引張応力が生じないため、床版10のひび割れを抑制できる。
また、目地部分の上縁側、下縁側、及び、継手1に生じる応力が低減することから、目地部分のひび割れを抑制できる。
このように、床版10及び目地部分のひび割れを抑制できるので、ひび割れ部分から雨水や塩化物が侵入することによる鉄筋腐食・コンクリートの剥離等の塩害や凍結を防止でき、床版10及び目地部分の耐久性が向上する。
即ち、実施形態1の接続構造によれば、継手1を用いて床版10,10同士を堅固に一体化できるとともに、床版10、継手1、目地部分に加わる応力を低減できて、床版10及び目地部分のひび割れの発生を抑制できるようになる。
【0040】
また、実施形態1によれば、スペーサ5として、互いに対向する各受部材2A,2Bのうちの一方の受部材と接触した状態に設置された先行スペーサ5Aと、先行スペーサ5Aと他方の受部材との間に嵌入された結合部材として機能する後行スペーサ5Bとで構成されたスペーサ5を用いたので、目地15の幅寸法、即ち、互いに隣り合う各受部材2A,2Bの互いに対向する対向壁28,28間の寸法の増減に対応可能となる。
即ち、床版10の製作精度や床版10の設置誤差などにより、目地15の幅寸法が一定でない場合であっても、当該スペーサ5を用いたことによって、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能が効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる
さらに、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間にスペーサ5が設けられたとともに、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間にスペーサ5が設けられた構成としたので、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能が効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
また、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間、及び、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間に、それぞれスペーサ5が設けられたことにより、受部材2A,2Bの左側対向壁28Lと側壁27との境界部66(図4参照)近傍、及び、受部材2A,2Bの右側対向壁28Rと側壁27との境界部66近傍の応力が低減され、当該境界部66近傍の疲労破壊を抑制できるという効果も得られる。
【0041】
さらに、実施形態1に係る継手1によれば、先行部材4Aと後行部材4Bとで構成された結合部材4を用いたことにより、橋軸方向Xに沿って隣り合う各床版10,10の端部11,11に埋設された各受部材2A,2B同士の左右方向や上下方向のずれが生じた場合であっても、繋ぎ部材3と受部材2A,2Bとを結合できるようになる。
【0042】
また、実施形態1に係る床版の接続構造によれば、先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されたスペーサ5、及び、先行部材4Aと後行部材4Bとで構成された結合部材4を用いたことにより、スペーサ5と結合部材4とが互いに受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置として機能するようになるため、スペーサ5と結合部材4との相乗効果により、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3とをより堅固に一体化できるようになる。
また、互いに対向する各受部材2A,2Bの各左側対向壁28L,28Lの外壁面62,62間、及び、互いに対向する各受部材2A,2Bの各右側対向壁28R,28Rの外壁面63,63間に、それぞれスペーサ5が設けられたとともに、内壁面28a,28cと一方の挿入部31Aの内面31a,31aとの間、及び、内壁面28b,28dと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、それぞれ結合部材4が設けられたので、受部材2A,2Bの左側対向壁28Lと側壁27との境界部66(図4参照)近傍、及び、受部材2A,2Bの右側対向壁28Rと側壁27との境界部66近傍の応力がより低減され、当該境界部66近傍の疲労破壊を抑制できる効果が高くなる。
【0043】
また、実施形態1に係る継手1によれば、一方の受部材2A及び他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28a,28c,28b,28dを、内底面25aと垂直な垂直面に形成された構成とすればよいので、一方の受部材2Aと他方の受部材2Bとを同じ形状にでき、部材コストを低減できる。また、受部材2A及び受部材2Bの形状を単純化できるので、受部材2A及び受部材2Bの製作が容易となり、製造コストも低減できる。
【0044】
実施形態2
継手1は、図8に示すように、結合部材4を構成する先行部材4Aが、互いに対向する対向壁28の内壁面28a,28c,28b,28dと挿入部の内面31a,31a,31b,31bとの間に設置され、当該設置された先行部材4Aと対向壁28の内壁面28a,28c,28b,28dとの間に、上方から結合部材4を構成する後行部材4Bが嵌入されて、後行部材4Bの傾斜面4aと先行部材4Aの傾斜面4aとが接触した状態に設置された構成であってもよい。
【0045】
実施形態3
継手1は、図9に示すように、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aの左右の内面31a,31aと一方の受部材2Aの対向壁28の左右の内壁面28a,28cとを接触させるとともに、互いに対向する他方の対向壁28の左右の内壁面28b,28dと他方の挿入部31Bの左右の内面31b,31bとの間に、結合部材4を構成する先行部材4Aが設置され、当該設置された先行部材4Aと他方の挿入部31Bの左右の内面31b,31bとの間に、上方から結合部材4を構成する後行部材4Bが嵌入されて、後行部材4Bの傾斜面4aと先行部材4Aの傾斜面4aとが接触した状態に設置された構成であってもよい。
【0046】
実施形態4
継手1は、図10に示すように、繋ぎ部材3の一方の挿入部31Aの左右の内面31a,31aと一方の受部材2Aの対向壁28の左右の内壁面28a,28cとを接触させるとともに、互いに対向する他方の対向壁28の左右の内壁面28b,28dと他方の挿入部31Bの左右の内面31b,31bとの間に、結合部材4を構成する先行部材4Aが設置され、当該設置された先行部材4Aと他方の対向壁28の左右の内壁面28b,28dとの間に、上方から結合部材4を構成する後行部材4Bが嵌入されて、後行部材4Bの傾斜面4aと先行部材4Aの傾斜面4aとが接触した状態に設置された構成であってもよい。
【0047】
実施形態5
尚、図示しないが、継手1は、繋ぎ部材3の他方の挿入部31Bの左右の内面31b,31bと他方の受部材2Bの対向壁28の左右の内壁面28b,28dとを接触させるとともに、互いに対向する一方の対向壁28の左右の内壁面28a,28cと一方の挿入部2Aの左右の内面31a,31aとの間に、後行部材4Bの傾斜面4aと先行部材4Aの傾斜面4aとが接触した状態に、結合部材4が設置された構成であってもよい。
【0048】
実施形態6
実施形態1乃至実施形態5において、互いに対向する受部材2Aと受部材2Bとの間に設置された先行スペーサ5Aは、上下の中央位置が、受部材2A,2Bの上下の中央位置、又は、当該中央位置の近傍に位置されるように設置された構成とするとともに、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面とのうちの一方の面と接触した状態に設置された先行部材4Aは、上下の中央位置が、受部材2A,2Bの上下の中央位置、又は、当該中央位置の近傍に位置されるように設置された構成とした。
例えば、図5乃至図10に示すように、受部材2A,2Bの対向壁28,28の上下間の中央位置(即ち、対向壁28の上端と下端との中間位置)を通過する水平線と、先行スペーサ5Aの上下間の中央位置とを通過する水平線と、先行部材4Aの上下間の中央位置とを通過する水平線とが、同一の水平線65となるように、スペーサ5及び結合部材4が設置された構成とした。
実施形態6のように、上下の中央位置が、受部材2A,2Bの上下の中央位置、又は、当該中央位置の近傍に位置されるように、先行スペーサ5A及び先行部材4Aを設置した構成とすれば、スペーサ5と結合部材4との相乗効果により、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0049】
実施形態7
スペーサ5及び結合部材4として、鋳物で形成されたスペーサ5及び結合部材4を用いた。例えば、球状黒鉛鋳鉄により形成されたスペーサ5及び結合部材4を用いた。
実施形態7によれば、鋳物で形成されたスペーサ5及び結合部材4を用いたので、耐候性に優れ、腐食抵抗性に優れたスペーサ5及び結合部材4となり、耐候性に優れ、腐食抵抗性に優れた接合構造を維持できるようになる。
【0050】
実施形態8
スペーサ5において、互いに接触する先行スペーサ5Aの傾斜面5b及び後行スペーサ5Bの傾斜面5bのうちの少なくとも一方の傾斜面5bが、目荒らしした面に形成された構成とすることで、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと後行スペーサ5Bの傾斜面5bとの摩擦力が高くなることで、傾斜面5b,5b同士のずれを防止できるため、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されるようになり、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0051】
実施形態9
結合部材4において、互いに接触する先行部材4Aの傾斜面4a及び後行部材4Bの傾斜面4aのうちの少なくとも一方の傾斜面4aが、目荒らしした面に形成された構成とすることで、先行部材4Aの傾斜面4aと後行部材4Bの傾斜面4aとの摩擦力が高くなることで、傾斜面4a,4a同士のずれを防止できるため、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されるようになり、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0052】
実施形態10
結合部材4と受部材2A,2Bの対向壁28の内壁面及び繋ぎ部材3の挿入部31A,31Bの内面の構成のバリエーションとして、例えば図11乃至図13に示す構成がある。
図11は、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dが垂直面に形成され、かつ、他方の挿入部31Bの内面31bが、下端縁から上端縁に向けて次第に対向壁28の内壁面28b,28dから遠ざかる傾斜面に形成された構成である場合の結合部材4のバリエーションを示す。
図11(a)は、内壁面28b,28d側に当該内壁面28b,28dと平行な板面を有した平板状(断面長方形形状)の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図11(b)は、内壁面28b,28d側に断面台形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図11(c)は、他方の挿入部31Bの内面31b,31b側に当該内面31b,31bの傾斜面と平行な傾斜面を有した断面平行四辺形形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図12は、他方の挿入部31Bの内面31b,31bが垂直面に形成され、かつ、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dが、下端縁から上端縁に向けて次第に他方の挿入部31Bの内面31b,31bから遠ざかる傾斜面に形成された構成である場合の結合部材4のバリエーションを示す。
図12(a)は、他方の挿入部31Bの内面31b,31b側に当該他方の挿入部31Bの内面31b,31bと平行な板面を有した平板状(断面長方形形状)の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図12(b)は、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28d側に当該内壁面28b,28dの傾斜面と平行な傾斜面を有した断面平行四辺形形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図12(c)は、他方の挿入部31Bの内面31b,31b側に断面台形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図13は、他方の挿入部31Bの内面31b,31bが、下端縁から上端縁に向けて次第に対向壁28の内壁面28b,28dから遠ざかる傾斜面に形成され、かつ、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dが、下端縁から上端縁に向けて次第に他方の挿入部31Bの内面31b,31bから遠ざかる傾斜面に形成された構成である場合の結合部材4のバリエーションを示す。
図13(a)は、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28d側に断面逆台形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図13(b)は、他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28d側に当該内壁面28b,28dの傾斜面と平行な傾斜面を有した断面平行四辺形形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の挿入部31Bの内面31b,31bとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
図13(c)は、他方の挿入部31Bの内面31b,31b側に当該内面31b,31bの傾斜面と平行な傾斜面を有した断面平行四辺形形状の先行部材4Aを設置し、当該先行部材4Aと他方の受部材2Bの対向壁28の内壁面28b,28dとの間に、断面逆台形状の後行部材4Bを嵌入して設置した構成を示す。
以上のような図11乃至図13に示した構成の継手1であっても。実施形態1乃至実施形態9で示した結合部材4を用いた場合と同じ効果が得られる。
【0053】
実施形態11
上述した先行部材4Aと後行部材4Bとで構成される結合部材4においては、後行部材4Bを、先行部材4Aの傾斜面4aと対向壁28又は挿入部31A,31Bとの間に上方から押し込んで嵌入する構成としたが、当該構成の場合、嵌入された後行部材4Bが上方に抜ける可能性がある。
そこで、図14乃至図16に示すような構成の結合部材4とした。
即ち、先行部材4Aは、傾斜面4aから内部まで到達するねじ螺着孔52を備えた構成とし、後行部材4Bは、上面から傾斜面4aまで到達するねじ貫通孔51を備えた構成とした。当該ねじ貫通孔51は、傾斜面4aの傾斜方向に沿った方向の長さが、ねじ螺着孔52の傾斜面4aの傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成した。
以上の構成のスペーサ5によれば、例えば図16に示すように、先行部材4Aを設置した後に、後行部材4Bが、先行部材4Aの傾斜面4aと対向壁28との間に設置され、ねじ貫通孔51とねじ螺着孔52とが連続するように先行部材4Aの傾斜面4aと後行部材4Bの傾斜面4aとが接触した状態で、ねじ53がねじ貫通孔51を通過してねじ螺着孔52に締結されたことにより、先行部材4Aと後行部材4Bとが連結される。
【0054】
即ち、実施形態11に係る結合部材4は、先行部材4Aが傾斜面4aから内部まで到達するねじ螺着孔52を備え、後行部材4Bが上面から傾斜面4aまで到達するねじ貫通孔51を備え、ねじ貫通孔51は、傾斜面4aの傾斜方向に沿って長い長孔に形成された構成とし、ねじ貫通孔51とねじ螺着孔52とが連続するように先行部材4Aの傾斜面4aと後行部材4Bの傾斜面4aとが接触した状態で、ねじ53がねじ貫通孔51を通過してねじ螺着孔52に締結されたことにより、先行部材4Aと後行部材4Bとが連結されるように構成された結合部材とした。
【0055】
実施形態11に係る結合部材4によれば、先行部材4Aと後行部材4Bとがねじ53で連結されるため、後行部材4Bが上方に抜けてしまうようなことを防止できる。
また、後行部材4Bが、傾斜面5bの傾斜方向に沿って長い長孔に形成されたねじ貫通孔51を備えたので、例えば図16に示す先行部材4Aの傾斜面4aと対向壁28の内壁面28bとの間の間隔が一定にならない場合でも、ねじ53をねじ螺着孔52に締め付けて行くことによって、後行部材4Bが傾斜面4aに沿って下方に移動して、後行部材4Bの傾斜面4aと先行部材4Aの傾斜面4aとを密着させるとともに、後行部材4Bの面5aと対向壁28の内壁面28bとを密着させた状態にでき、その後、ねじ53を完全に締結することによって、後行部材4Bを、先行部材4Aの傾斜面4aと対向壁28との間に確実に嵌入できるようになり、この嵌入状態を維持できるようになって、受部材2A,2Bにプレストレスを導入できるようになる。
従って、結合部材4により、受部材2A,2B間の軸力伝達機能及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0056】
尚、図14乃至図16に示すように、実施形態11で説明したような、先行部材4Aと後行部材4Bとで構成される結合部材4の構成を、上述した先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとで構成されるスペーサ5に適用してもよい。
実施形態11に係る構成を適用したスペーサ5によれば、先行スペーサ5Aと後行スペーサ5Bとがねじ53で連結されるため、後行スペーサ5Bが上方に抜けてしまうようなことを防止できる。
また、後行スペーサ5Bは、傾斜面5bの傾斜方向に沿った方向の長さが、ねじ螺着孔52の傾斜面5bの傾斜方向に沿った方向の長さよりも長い長孔に形成されたねじ貫通孔51を備えたので、上述と同様、図5(c)示すように、後行スペーサ5Bを、先行スペーサ5Aの傾斜面5bと対向壁28との間に確実に嵌入できるようになり、この嵌入状態を維持できるようになるため、目地間隔を確保する機能、受部材2A,2B間の軸力伝達及び受部材2A,2Bへのプレストレス導入のための反力装置としての機能がより効果的に発揮されて、受部材2A,2Bと繋ぎ部材3との堅固な一体化が可能となる。
【0057】
尚、1つの先行部材4Aと2つ以上の後行部材4B,4B…とで構成された結合部材4を用いてもよい。
【0058】
本発明の継手1における結合部材4は、互いに対向する対向壁28,28の内壁面と挿入部31A,31Bの内面との間に設置される先行部材4Aと、当該設置された先行部材4Aと対向壁28,28の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材4Aと挿入部31A,31Bの内面との間に嵌入される後行部材4Bとで構成されていればよい。
【0059】
また、本発明のコンクリート部材としての床版10の接続方法は、結合部材4の先行部材4Aを、互いに対向する対向壁の内壁面と挿入部の内面との間に設置する先行部材設置ステップと、当該設置された先行部材4Aと対向壁の内壁面との間、又は、当該設置された先行部材4Aと挿入部の内面との間に、上方から結合部材4の後行部材4Bを嵌入して設置する後行部材設置ステップとを備えた方法であればよい。
【0060】
尚、各実施形態においては、互いに隣り合う各受部材の互いに対向する各受部材の対向壁間にスペーサ5を設置した構成としたが、目地における対向壁間以外の位置にスペーサを設置するようにしてもよい。即ち、目地に、橋軸直角方向(橋幅方向)Yに沿って所定の間隔を隔てて複数のスペーサを配置して設置するようにしてもよい。
【0061】
また、スペーサ5及び結合部材4は、上述した鋼製、鋳物以外のスペーサ及び結合部材を用いても構わない。
【0062】
また、コンクリート部材は、床版以外のコンクリート部材であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 継手、2A,2B 受部材、3 繋ぎ部材、4 結合部材、
4A 先行部材、4B 後行部材、4a 傾斜面、4b 面、
5 スペーサ、5A 先行スペーサ、5B 後行スペーサ、
10 床版(コンクリート部材)、11 床版の端部、11s 床版の端面、
15 目地、16 目地材、21A,21B 凹部、23 定着部、
31A,31B 挿入部、
32 連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16