(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】3次元造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20231213BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20231213BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20231213BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20231213BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20231213BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231213BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231213BHJP
【FI】
B29C64/165
B29C64/241
B29C64/232
B29C64/255
B29C64/214
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020064309
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 輝郎
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-059477(JP,A)
【文献】特表2005-534543(JP,A)
【文献】特表2007-503342(JP,A)
【文献】特開2019-081936(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013210242(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03623139(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、
前記造形台を回転させる回転機構と、
前記造形台を前記外周壁内で昇降させる昇降装置と、を備え、
前記回転機構は、前記造形台と前記外周壁とを同一の角速度で回転さ
せ、
前記外周壁と前記造形台とは、互いの周方向の相対移動を規制しつつ、軸方向に相対移動可能とする同期回転機構を介して接続され、
前記同期回転機構は、
前記造形台及び前記外周壁のいずれか一方に設けられ、前記軸方向に延びた昇降溝と、
前記造形台及び前記外周壁のいずれか他方に設けられ、前記昇降溝に係合して前記造形台及び前記外周壁の相対回転を阻止すると共に、前記昇降溝に沿って前記軸方向に摺動可能な摺動突起と、を有する、3次元造形装置。
【請求項2】
請求項
1記載の3次元造形装置であって、
前記造形台を支持する造形台回転軸と、
前記外周壁を支持すると共に、前記造形台回転軸が挿通する軸孔を有する外周壁回転軸と、を備え、
前記昇降溝が前記造形台回転軸に設けられ、前記摺動突起が前記外周壁回転軸に設けられている、3次元造形装置。
【請求項3】
請求項
2記載の3次元造形装置であって、前記昇降装置は、前記造形台回転軸と軸受部を介して接続されている、3次元造形装置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、前記外周壁の下端には、前記外周壁の回転を案内する案内部材が設けられている、3次元造形装置。
【請求項5】
外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、
前記造形台と前記外周壁とを同一の角速度で回転させる回転機構と、
前記造形台を前記外周壁内で昇降させる昇降装置と、
前記造形台の上方に配置され、前記造形容器に造形材料の粉体を吐出するシュートと、
前記シュートの回転方向の下流側に設けられ、前記シュートから吐出された前記粉体を平坦に均す擦切板と、を備え、
前記擦切板の下端は、前記シュートの下端よりも、前記造形台に対して近接した位置に配置され、
前記シュートの外周端と前記擦切板の外周端との隙間を塞ぐ閉塞壁を備える、3次元造形装置。
【請求項6】
請求項
5記載の3次元造形装置であって、前記シュート及び前記擦切板の径方向の長さは前記造形台の半径以下に形成されている、3次元造形装置。
【請求項7】
外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、
前記造形台と前記外周壁とを同一の角速度で回転させる回転機構と、
前記造形台を前記外周壁内で昇降させる昇降装置と、
前記造形台の上方に配置され、前記造形容器に造形材料の粉体を吐出するシュートと、
前記シュートの回転方向の下流側に設けられ、前記シュートから吐出された前記粉体を平坦に均す擦切板と、を備え、
前記擦切板の下端は、前記シュートの下端よりも、前記造形台に対して近接した位置に配置され、
前記擦切板の下端部は、中心側から外周側に向かうにしたがって徐々に前記造形台からの距離が大きくなる、3次元造形装置。
【請求項8】
外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、
前記造形台と前記外周壁とを同一の角速度で回転させる回転機構と、
前記造形台を前記外周壁内で昇降させる昇降装置と、を備え、
前記造形台の上面は、造形材料の粉体との摩擦抵抗を向上させる摩擦面よりなる、3次元造形装置。
【請求項9】
外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、
前記造形容器を回転させる回転機構と、
前記造形台を前記外周壁に対して昇降させる昇降装置と、
前記造形台の上方に配置され、前記造形容器に造形材料の粉体を吐出するシュートと、
前記シュートから供給された前記粉体を平坦な粉体層に均す擦切板と、
前記粉体層に結合剤を塗布する塗布装置と、
前記外周壁と前記造形台とを、互いの周方向の相対移動を規制しつつ、前記造形台を軸方向に相対移動可能に接続する同期回転機構と、を備え、
前記同期回転機構は、
前記造形台及び前記外周壁のいずれか一方に設けられ、前記軸方向に延びた昇降溝と、
前記造形台及び前記外周壁のいずれか他方に設けられ、前記昇降溝に係合して前記造形台及び前記外周壁の相対回転を阻止すると共に、前記昇降溝に沿って前記軸方向に摺動可能な摺動突起と、を有する、3次元造形装置を用いた造形方法であって、
前記回転機構は、前記外周壁と前記造形台とを同一の角速度で連続的に回転させつつ、前記シュート及び前記擦切板で
前記粉体層を形成し、前記塗布装置で前記結合剤の塗布を行い、前記昇降装置は前記造形容器が1回転する毎に前記造形台を下降させて新たな
前記粉体層を形成する、造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体層に結合剤を噴射して立体的な造形物を形成する3次元造形装置及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的な造形物の造形では、粉体を層状に重ねながら所要部分を固める動作を繰り返す3次元造形装置が種々提案されている。例えば、インクジェットヘッドから結合剤を吐出させる結合剤噴射方式(Binder Jetting)や、レーザ光や電子ビーム等を照射して粉体を凝固させる粉末床溶融結合方式(Powder bed fusion)等がある。粉末床溶融結合方式は、一層の造形に数分~数十分を要し、造形に時間を要する。
【0003】
一方、結合剤噴射方式は、粉体を溶融する必要がないため高速な処理が可能であり、1層の造形を数秒程度と短時間で行える。近年のインクジェット技術の高度化に伴って、さらなる造形速度の向上が期待される。
【0004】
ところで、結合剤噴射方式の3次元造形装置は、側壁と、底部を構成する造形台と、で構成される造形容器内に、造形材料の粉体層を形成しつつ造形を行う。しかしながら、従来の3次元造形装置は粉体層の形成工程と、結合剤を塗布する工程とを交互に行う必要があり、粉体層を形成する動作が断続的に行われ、無駄な待ち時間が発生する。このため、造形速度が遅くなるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するべく、特許文献1は、円筒状の造形容器に対して造形材料の粉体を供給する供給部及び結合剤の塗布を行う塗布部を回転させて、粉体層の形成と結合剤の塗布とを連続的な動作で行う3次元造形装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の3次元造形装置では、遠心力が作用する条件の下で安定した粉体層を形成することが困難なことから、造形容器側を回転させずに、供給部及び塗布装置を造形容器に対して一定速度で回転させている。
【0008】
しかしながら、供給部及び塗布装置を回転させる場合には、材料供給のための配管や電源配線等を回転部分に設ける必要があり、装置構成が複雑化して大がかりになる。また、回転部分の重量増加に伴って、造形部及び塗布装置の回転速度が上げられず、造形速度が遅くなり、量産品の造形が困難になるという問題がある。
【0009】
また、回転速度を向上させるべく、供給部や塗布部の構成部材を小型化すると、比較的大きな造形物を連続的に造形する際に、造形材料や結合剤の補給が必要となり、装置を途中で停止しなければならないことから、生産効率が悪くなる。
【0010】
そこで、一実施形態は、回転部分の構造を簡素化させつつも、安定な粉体層を形成可能とし、造形速度及び生産効率に優れた3次元造形装置及び造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下の開示の一観点は、外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、前記造形台を回転させる回転機構と、前記造形台を前記外周壁内で昇降させる昇降装置と、を備え、前記回転機構は、前記造形台と前記外周壁とを同一の角速度で回転させる、3次元造形装置にある。
【0012】
別の一観点は、外周壁と、底部を構成する造形台と、を有する造形容器と、前記造形容器を回転させる回転機構と、前記造形台を前記外周壁に対して昇降させる昇降装置と、前記造形台の上方に配置され、前記造形容器に造形材料の粉体を吐出するシュートと、前記シュートから供給された前記粉体を平坦な粉体層に均す擦切板と、前記粉体層に結合剤を塗布する塗布装置と、を備えた3次元造形装置、を用いた造形方法であって、前記回転機構は、前記外周壁と前記造形台とを同一の角速度で連続的に回転させつつ、前記シュート及び前記擦切板で粉体層を形成し、前記塗布装置で前記結合剤の塗布を行い、前記昇降装置は前記造形容器が1回転する毎に前記造形台を下降させて新たな粉体層を形成する、造形方法にある。
【発明の効果】
【0013】
上記観点の3次元造形装置及び造形方法によれば、安定した粉体層を形成でき、回転部分の構造が簡素化され、造形速度及び生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る3次元造形装置の正面図である。
【
図2】
図1の造形容器及びその駆動機構の断面図である。
【
図3】
図1の3次元造形装置のシュートの下側部分、塗布装置及び造形容器を示す斜視図である。
【
図4】
図4Aは、比較例に係る3次元造形装置の粉体層を示す断面図であり、
図4Bは
図1の3次元造形装置における粉体層を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る3次元造形装置の造形容器及び駆動機構の断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る3次元造形装置の造形容器及び駆動機構の断面図である。
【
図7】
図1の3次元造形装置における粉体層の凹凸の発生例を示す斜視図である。
【
図8】
図1の3次元造形装置の動作時のシュート及び擦切板の様子を示す斜視図である。
【
図9】
図9Aは、第4実施形態に係るシュート及び擦切板の側面図であり、
図9Bは
図9Aのシュート及び擦切板の斜視図である。
【
図10】
図10Aは、実験例1に係る粉体層の平坦性評価用の試験装置の斜視図であり、
図10Bは
図10Aの造形容器の回転中心から70mm及び230mmの位置における粉体層の高さの測定結果を示すグラフである。
【
図11】
図11Aは、シュートから造形面に供給され、擦切板で均される粉体の動きを示す説明図であり、
図11Bは擦切板の直下の粉体層の速度勾配を示す説明図である。
【
図12】
図12Aは、第5実施形態に係る擦切板の配置例と、擦切板の直下の粉体層の速度勾配を示す説明図であり、
図12Bは実験例2(第5実施形態)に係る粉体層の高さの測定結果を示すグラフである。
【
図13】第6実施形態に係る造形台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、3次元造形装置及び造形方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態に係る3次元造形装置10は、
図1に示すように、粉体の造形材料88を造形容器12に供給し、造形材料88(
図3)を結合する結合剤(バインダ)を塗布することで、立体的な造形物を製造するシステムである。具体的に、3次元造形装置10は、造形容器12の上部に所定の厚みの粉体層80(
図2)を形成し、この粉体層80にバインダを塗布して粉体を結合させることで、一層の造形層を形成する。3次元造形装置10は、上記の粉体層80の形成と、バインダの塗布とを繰り返して造形層を積層することで、1つの造形物を形成する。
【0017】
以下では、3次元造形装置10が、造形物として鋳造用の砂型(中子)を製造する例を主に説明する。なお、3次元造形装置10の造形物は、鋳造用の金型に限定されない。
【0018】
鋳造用の砂型を製造する場合には、造形材料88として、例えば、珪砂、アルミナ砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂、及びムライト砂等が挙げられる。また、この他にも、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子を用いることができる。また、他の造形物を造形する場合には、石膏粒子、デンプン粒子、各種樹脂の粒子等を使用できる。
【0019】
造形材料88に塗布されるバインダは、造形材料88に応じて適宜選択される。鋳造用の金型に用いる上記の造形材料88に対しては、例えば、フェノール系樹脂、フラン樹脂等の有機材料、クレー類、セメント及び水ガラス等の水溶性無機化合物等が挙げられる。バインダには、造形材料88自体の硬化反応を促進する触媒が含まれていてもよい。
【0020】
3次元造形装置10は、基部14と、基部14に連結されて上方に延びる複数のフレーム16と、造形容器12を支持する棚板18と、を有している。基部14と棚板18との間には、造形容器12を駆動するための駆動機構20が設けられている。棚板18の上には、造形容器12が配置されている。また、造形容器12の上方には、造形材料88を供給する供給装置22と、バインダを塗布する塗布装置24とが設けられている。
【0021】
供給装置22は、ホッパー26と、サークルフィーダ28と、接続部30と、シュート32と、擦切板34とを備える。ホッパー26は、供給装置22の上端部に設けられた漏斗状の部材であり、内部に粉体よりなる造形材料88を収容する。ホッパー26の底部には開口部が設けられており、開口部にはサークルフィーダ28が接続されている。サークルフィーダ28の円筒状の本体の内部には、放射状に延びる羽根が形成された内側ロータと、内側ロータの外周を周回する羽根を備えた外側ロータとが設けられている。サークルフィーダ28は、内側ロータ及び外側ロータが回転することで、ホッパー26の下部から流入する造形材料88を所望の流量で接続部30に送出する。
【0022】
接続部30は、サークルフィーダ28の出口と、シュート32との間に接続された角筒状の部材であり、鉛直方向に延びている。接続部30の下端には、シュート32が接続されている。
【0023】
図3に示すように、シュート32は、下端に排出口32aが形成された筒状の流路部材である。その内部には、平面視して所定方向に細長い矩形の流路32cが形成されている。なお、
図3には、説明の便宜のためにシュート32の下側の一部分が切断した状態で示されているが、実際には
図1に示すようにシュート32の上側に接続部30が接続される。シュート32は、上端側から下端側に向けて、幅(短辺方向の長さ)が徐々に狭くなるテーパー状に形成されている。シュート32の下側には、サークルフィーダ28から落下してきた造形材料88が所定の高さまで貯留される。シュート32の側部には、粉体センサ36が装着されており、貯留される造形材料88の上端位置が、粉体センサ36の位置を保つように、サークルフィーダ28から造形材料88が供給される。
【0024】
シュート32の下部の排出口32aは、造形容器12の上端に現れる造形面12aに対向して配置されている。排出口32aの長手方向の長さは、造形容器12の半径よりも小さく形成されている。排出口32aは、長手方向を造形容器12の半径方向に一致させる向きで配置される。すなわち、シュート32は、半径方向に沿った矩形の領域に造形材料88を供給する。
【0025】
擦切板34は、シュート32の傾斜面32bに対向するように配置された板状部材であり、例えばボルト止め等の方法で傾斜面32bに固定されている。擦切板34は、シュート32よりも造形容器12の回転方向の下流側に所定の間隔を開けて配置されている。擦切板34は、排出口32aの長手方向の長さと同じ長さに形成されており、擦切板34の下端辺34aは、造形容器12のシュート32の排出口32aから排出された造形材料88の粉体を平坦に均して粉体層80を形成する。
【0026】
一方、塗布装置24は、造形容器12の半径方向に延びる長尺な塗布ヘッド38と、塗布ヘッド38にバインダや駆動電流を供給する配管類38aを備える。塗布ヘッド38は、造形容器12の上端の造形面12aに対向する面に多数のノズルを備えており、ノズルからバインダの液滴を粉体層80に向けて吐出する。塗布ヘッド38には、配管類38aを介して電力及びバインダが供給される。塗布装置24はステー38bを介してフレーム16に固定されており、回転しない部分に設けられている。
【0027】
次に、造形容器12及びその駆動機構20について説明する。
【0028】
図3に示すように、造形容器12は、棚板18の上に配置されている。造形容器12は、円筒状の容器であり、軸回りに回転可能に構成されている。
図2に示すように、造形容器12は、側部を構成する外周壁40と、底部を構成する造形台42とを有している。外周壁40は、上端に外周側に延び出たフランジ部40aを有すると共に、下端側に、造形容器12の中心に向けて延在する底面部40bとを備え、底面部40bの内周側には貫通孔40cが形成されている。
【0029】
外周壁40は、底面部40bが案内部材44に当接している。案内部材44は、棚板18と底面部40bとの間に配置されており、回転自在なローラー44aを備える。案内部材44は、ローラー44aが底面部40bと当接することで、外周壁40の周方向の回転を案内し、造形容器12のガタツキ(傾斜)を防止するように構成されている。
【0030】
外周壁40の底面部40bの中央付近には、外周壁回転軸46が接合されている。外周壁40は、外周壁回転軸46によって軸回りに回転可能に支持される。また、外周壁40の貫通孔40cには、造形台42の造形台回転軸48が貫通して配置されている。
【0031】
造形台42は、外周壁40の内側に嵌め込まれた板状の部材であり、外周壁40の内周面40dと略同一形状に形成されている。造形台42は、造形容器12の底部を構成する。造形台42の上に、造形材料88が供給され、粉体層80及び造形層が積層されてゆく。造形台42の下端中央には、造形台回転軸48が接合されている。造形台42は、造形台回転軸48によって回転可能に支持される。
【0032】
駆動機構20は、外周壁回転軸46と、造形台回転軸48と、回転機構50と、外周壁回転軸46及び造形台回転軸48の回転を同期させる同期回転機構52と、造形台42を昇降させる昇降装置54とを備える。
【0033】
外周壁回転軸46は、外周壁40の底面部40bに接合されており、外周壁40を支持すると共に、軸回りに回転させる。外周壁回転軸46は、軸方向に円筒状に延びた円筒状に形成されており、中心部に軸方向に貫通する軸孔46aが形成されている。軸孔46aには、造形台回転軸48が挿入されている。外周壁回転軸46の下端部46bは、第1軸受部47を介して支持部材56に当接している。支持部材56は、棚板18及びフレーム16に固定されている。外周壁回転軸46の側方には、回転機構50が設けられている。
【0034】
回転機構50は、モータよりなり、その駆動軸50aはベルト60を介して外周壁回転軸46に接続されている。ベルト60は駆動軸50aと外周壁回転軸46の外周部とに架け渡されており、回転機構50の駆動力を外周壁回転軸46に伝達して、外周壁回転軸46を回転させる。
【0035】
造形台回転軸48は、軸方向に延びた円柱状部材であり、上端は造形台42に接続され、下端は昇降装置54に接続されている。造形台回転軸48は、第2軸受部58を介して昇降装置54に接続されており、造形台回転軸48の回転運動は昇降装置54に伝わらないように構成されている。
【0036】
同期回転機構52は、外周壁回転軸46と造形台回転軸48との当接部分となる軸孔46aに設けられている。同期回転機構52は、造形台回転軸48の外周部に設けられた昇降溝62と、外周壁回転軸46から内方に突出して、昇降溝62に挿入される摺動突起64とを備える。昇降溝62は、造形台回転軸48の軸方向に延びた溝として形成されており、造形台回転軸48の外周部に1本又は複数本設けられている。
図2の例では、2本の昇降溝62が周方向に180°離間して設けられている。
【0037】
摺動突起64は、昇降溝62に挿入可能な大きさに形成されており、昇降溝62に沿って昇降溝62内を軸方向に摺動可能となっている。摺動突起64は、外周壁回転軸46と一体的に形成されており、昇降溝62と係合することで、造形台回転軸48と外周壁回転軸46との相対回転を阻止する。
【0038】
昇降装置54は、モータ54aと、そのモータ54aにより駆動されるボールねじ機構54bとを備えており、シャフト54cを昇降させる。昇降装置54は、シャフト54cを通じて、造形台回転軸48を昇降させる。
【0039】
本実施形態の3次元造形装置10は以上のように構成され、以下その作用について造形方法と共に説明する。
【0040】
図1に示す3次元造形装置10は、駆動機構20により、造形容器12を一定速度で回転させつつ、造形動作を行う。
図2に示すように、駆動機構20は、回転機構50を通じて、外周壁回転軸46に回転力を与える。これにより、外周壁回転軸46と一体的に外周壁40が回転する。また、外周壁回転軸46の回転運動は、同期回転機構52を構成する摺動突起64及び昇降溝62を介して造形台回転軸48に伝えられる。これにより、造形台回転軸48が外周壁回転軸46と共に回転し、造形台回転軸48で支持された造形台42が回転する。その結果、外周壁40と造形台42とが同一の角速度で回転する。
【0041】
造形容器12の回転速度が一定に落ち着いた後、供給装置22から造形材料88の粉末の供給を開始する。
図1の供給装置22のホッパー26の造形材料88は、サークルフィーダ28を通じて、接続部30に送り出される。接続部30に送り出された造形材料88は、シュート32に向けて落下する。そして、落下した造形材料88は、シュート32に粉体センサ36の位置まで貯留されつつ、その一部がシュート32の下端の排出口32aから排出される。
【0042】
図3に示すように、シュート32から排出された造形材料88は、造形台42の上に堆積し、造形台42の回転運動にしたがって、回転方向の下流側に移動する。そして、造形材料88は、擦切板34により平坦に均されて、平坦な粉体層80を形成する。粉体層80は、造形台42の回転運動によって、塗布装置24の下方を通過する。塗布装置24は、粉体層80の所定の位置に結合剤を吐出することで、所望の造形パターン(スライス又は造形層)を形成する。
【0043】
その後、駆動機構20は、造形台42が1回転する毎に、造形台42を一定の高さだけ下方に変位させる下降動作を行う。造形台42の下降動作において、
図2の昇降装置54がシャフト54cを下方に引き込む。シャフト54cの引き込みにより、第2軸受部58を介して造形台回転軸48が下方に変位する。その際に、摺動突起64が昇降溝62に沿って摺動するため、同期回転機構52は、造形台回転軸48の下方への変位を妨げない。造形台42は、造形台回転軸48と共に昇降する。
【0044】
造形台42の下降動作の間も、造形台42及び外周壁40は一定速度で回転を継続する。また、シュート32から一定流量で造形材料88の供給が行われ、造形が完了した粉体層80の上に新たな粉体層80が形成される。また、塗布装置24による結合剤の塗布が同時に行われる。
【0045】
3次元造形装置10は、造形容器12を例えば20~60rpmで回転させながら粉体層80の形成及び造形層の造形を繰り返す。造形動作の合間に、造形容器12が停止しないため、無駄な待機時間を省くことができ、量産性に優れる。
【0046】
図4Aの比較例に示すように、造形台42と外周壁40の回転速度(角速度)が異なると、造形台42の上に形成される粉体層80は、外周壁40との摩擦による抵抗力を受けて安定せず、表面に凹凸81が形成される。
【0047】
これに対し、本実施形態の3次元造形装置10では、造形台42と外周壁40とが同一の角速度で回転するため、
図4Bに示すように造形台42の上の粉体層80を平坦に形成できる。
【0048】
本実施形態の3次元造形装置10は、以下の効果を奏する。
【0049】
上記観点の3次元造形装置10は、外周壁40と、底部を構成する造形台42と、を有する造形容器12と、造形台42を回転させる回転機構50と、造形台42を外周壁40内で昇降させる昇降装置54と、を備え、外周壁40と造形台42とは、互いの周方向の相対移動を規制しつつ、軸方向に相対移動可能とする同期回転機構52を介して接続されている。
【0050】
上記の構成によれば、造形容器12において、外周壁40と造形台42とを同一の速度(角速度)で回転させるため、造形容器12の回転速度を数10rpmに早めた場合であっても、安定した粉体層80を形成できる。
【0051】
また、供給装置22及び塗布装置24を回転しない部位に設けることが可能となるため、材料供給のための配管や電源配線等を回転部分に設ける必要がなく、装置構成を簡素化できる。供給装置22への造形材料88の補給及び塗布装置24への結合剤の補給が容易であることから、大型の造形品にも容易に対応できる。
【0052】
さらに、回転部分は、造形容器12のみであることから、回転部分が軽量化されるため、回転速度の向上が容易であり、量産品にも好適に用いることができる。
【0053】
上記の3次元造形装置10において、同期回転機構52は、造形台42側及び外周壁40側のいずれか一方の側に設けられ、軸方向に延びた昇降溝62と、造形台42側及び外周壁40側のいずれか他方の側に設けられ、昇降溝62に係合して造形台42及び外周壁40の相対回転を阻止すると共に、昇降溝62に沿って軸方向に摺動可能な摺動突起64と、を有してもよい。
【0054】
上記の構成によれば、簡素な装置構成で、外周壁40と造形台42とを同一速度で回転させることができる。また、外周壁40と造形台42とを共通の回転機構50で回転させることができる。
【0055】
上記の3次元造形装置10において、造形台42を支持する造形台回転軸48と、外周壁40を支持すると共に、造形台回転軸48が挿通する軸孔46aを有する外周壁回転軸46と、を備え、昇降溝62が造形台回転軸48に設けられ、摺動突起64が外周壁回転軸46に設けられていてもよい。この構成によれば、同期回転機構52を造形材料88の粉末が回り込まない部分に設けることができるため、信頼性に優れる。
【0056】
上記の3次元造形装置10において、昇降装置54は、造形台回転軸48と第2軸受部58を介して接続されていてもよい。これにより、昇降装置54を回転しない部分に設けることができるため、装置構成を簡素化できる。
【0057】
上記の3次元造形装置10において、外周壁40の下端には、外周壁40の回転を案内する案内部材44が設けられていてもよい。この構成によれば、外周壁40の傾斜やガタツキを防いで、造形容器12に安定した粉体層80を形成できる。
【0058】
本実施形態の造形方法は、外周壁40と、底部を構成する造形台42と、を有する造形容器12と、造形容器12を回転させる回転機構50と、造形台42を外周壁40に対して昇降させる昇降装置54と、造形台42の上方に配置され、造形容器12に造形材料88の粉体を供給するシュート32と、シュート32から供給された粉体を平坦な粉体層80に均す擦切板34と、粉体層80に結合剤を塗布する塗布装置24と、を備えた3次元造形装置10を用いた造形方法であって、回転機構50は、外周壁40と造形台42とを同一の角速度で連続的に回転させつつ、シュート32及び擦切板34で粉体層80を形成し、塗布装置24で結合剤の塗布を行い、昇降装置54は造形容器12が1回転する毎に造形台42を下降させて新たな粉体層80を形成する。この造形方法によれば、素早く造形物の造形を行うことができる。
【0059】
(第2実施形態)
図5に示すように、本実施形態の3次元造形装置10Aは、駆動機構20Aにおいて、
図1~3を参照しつつ説明した3次元造形装置10と異なる。以下では、駆動機構20Aを中心に説明し、供給装置22及び塗布装置24の説明は省略する。また、
図5の3次元造形装置10Aにおいて、
図2の3次元造形装置10と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0060】
図5に示す駆動機構20Aは、造形台42を支持する造形台回転軸48に対して、回転機構50の回転力が伝達される構造となっている。造形台回転軸48にはベルト60を介して回転機構50の駆動軸50aの回転力が伝達される。造形台回転軸48は、第2軸受部58を介して昇降装置54に接続されている。
【0061】
造形容器12Aは、外周壁40Aの底面部40bが内周側に延びて、造形台回転軸48の外周面に当接する外周壁回転軸46Aを構成している。そして、外周壁回転軸46Aと造形台回転軸48との当接部分に、本実施形態の同期回転機構52Aが設けられている。同期回転機構52Aは、造形台回転軸48の外周に設けられた軸方向に延びる昇降溝62Aと、外周壁回転軸46Aから突出した摺動突起64Aとを備える。摺動突起64Aは、昇降溝62Aに挿入されて、外周壁40Aと造形台回転軸48との相互回転を阻止する。造形台回転軸48が昇降動作すると、摺動突起64Aは昇降溝62Aに沿って摺動して、昇降溝62Aに係合した状態に保たれる。
【0062】
以上のように、本実施形態の3次元造形装置10Aの駆動機構20Aは、造形台回転軸48を介して造形容器12Aに回転力を伝達する構成となっている。本実施形態の3次元造形装置10Aによっても、第1実施形態の3次元造形装置10と同様の効果が得られる。
【0063】
(第3実施形態)
図6に示すように、本実施形態の3次元造形装置10Bは、駆動機構20Bにおいて、
図1~3を参照しつつ説明した3次元造形装置10と異なる。以下では、駆動機構20Bを中心に説明し、供給装置22及び塗布装置24の説明は省略する。また、
図6の3次元造形装置10Bにおいて、
図2の3次元造形装置10と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
図6に示す駆動機構20Bは、造形台42Bを支持する造形台回転軸48には回転機構50が接続されておらず、造形台回転軸48の下端は第2軸受部58を介して昇降装置54に接続されている。
【0065】
一方、造形容器12Bの外周壁40Bは、案内部材44、44Bにより支持されている。案内部材44Bには、回転機構50Bが接続されており、回転機構50Bは案内部材44Bを通じて外周壁40Bを回転させる。
【0066】
本実施形態の同期回転機構52Bは、外周壁40Bの内周面40dと、造形台42Bの外周部とに設けられている。すなわち、同期回転機構52Bは、内周面40dに設けられた軸方向に延びる昇降溝62Bと、造形台42Bの外周部に設けられた摺動突起64Bとを備える。摺動突起64Bは、昇降溝62Bに係合して造形台42Bを外周壁40Bと同一の速度で回転させる。また、摺動突起64Bは昇降溝62Bに沿って軸方向に摺動することで、造形台42Bの昇降動作を可能とする。
【0067】
以上のように構成された本実施形態の3次元造形装置10Bでは、外周壁40Bの内周面40dと、造形台42Bの外周部とに同期回転機構52Bが設けられている。本実施形態の3次元造形装置10Bによっても、第1実施形態の3次元造形装置10と同様の効果が得られる。
【0068】
(第4実施形態)
図7に示すように、第1実施形態の3次元造形装置10において、造形容器12を一定の回転速度で回転させつつ粉体層80を形成した場合において、条件によっては、粉体層80の表面が波打つような凹凸82が生じることが判明した。
【0069】
図8に示すように、第1実施形態の3次元造形装置10では、シュート32の外周端32eと、擦切板34の外周端34eとの間は開口しており、粉体層80の形成の際には、擦切板34によって擦り切られた造形材料88の一部が外周側に流出しながら粉体層80が形成される。
【0070】
本願発明者らが検討を行った結果、シュート32の排出口32aと造形面12aとの距離h2(
図9A)と擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの距離h1(
図9A)とが同じ高さであると、造形材料88の供給不足が発生して、擦り切られない部分が生じる場合があることが判明した。また、シュート32の外周端32eと、擦切板34の外周端34eとの隙間で回転する外周壁40のフランジ部40aとの間に摩擦が生じて、積層された粉体層80が波打つことが判明した。
【0071】
そこで、本実施形態の3次元造形装置10Cでは、
図9Aに示すように、シュート32の排出口32aの造形面12aからの距離h2を、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの距離h1よりも大きくする。特に限定されるものではないが、距離h2は例えば3mm程度とすることができ、距離h1は例えば1mm程度とすることができる。これにより、シュート32から排出される造形材料88の量が増加するため、造形材料88の供給不足による凹凸82の発生を防ぐことができる。
【0072】
また、シュート32の外周端32eと擦切板34の外周端34eとの隙間を封止する閉塞壁35を設けている。
図9Bに示すように、閉塞壁35の位置は、外周壁40のフランジ部40aの内周側端部の上方に位置する。このような閉塞壁35を設けることにより、シュート32と擦切板34との間の造形材料88が外周側へ排出されるのを防ぐことができ、造形材料88とフランジ部40aとの摩擦抵抗を抑制できる。
【0073】
以上のように、本実施形態の3次元造形装置10Cは、外周壁40と、底部を構成する造形台42と、を有する造形容器12と、造形台42を回転させる回転機構50(
図2参照)と、造形台42を昇降させる昇降装置54と、造形台42の上方に配置され、造形容器12に造形材料88の粉体を吐出するシュート32と、シュート32の回転方向の下流側に設けられ、シュート32から吐出された粉体を平坦に均す擦切板34と、を備え、擦切板34の下端辺34aは、シュート32の下端よりも、造形台42に対して近接した位置に配置されている。
【0074】
上記の構成によれば、シュート32から排出される造形材料88の量が増加するため、造形材料88の供給不足により、擦切板34で擦り切られない部分が発生することによる凹凸82の形成を防止できる。
【0075】
上記の3次元造形装置10Cにおいて、シュート32の外周端32eと擦切板34の外周端34eとの隙間を塞ぐ閉塞壁35を備えてもよい。これにより、シュート32と擦切板34との間の造形材料88が外周側へ排出されるのを防ぐことができ、造形材料88とフランジ部40aとの摩擦抵抗を抑制できる。その結果、粉体層80の表面の凹凸82の発生を防止できる。
【0076】
(第5実施形態)
図10Aに示すように、実験例1では、供給装置22で形成される粉体層80の平坦性の評価を行った。実験例1では、造形容器12を一定速度で回転させつつ、シュート32から造形材料88を供給し、擦切板34で平坦に均して粉体層80を形成した。擦切板34及びシュート32の配置は、
図9Aと同様としている。平坦性の評価は、高さ測定装置84を用いて、回転中心から70mmの位置及び回転中心から230mmの位置における粉体層80の高さを測定することで行った。
【0077】
図10Bに測定結果を示す。
図10Bにおいて、時間0分は、造形容器12の造形台42の下降を停止させた時刻を示す。R70は回転中心から70mmの位置での粉体層80の表面の高さの推移を示し、R230は回転中心から230mmの位置での粉体層80の
表面の高さの推移を示す。所定
時間の経過にともなって、粉体層80が一定の高さに落ち着くが、内周側の粉体層80の高さ(R70)と、外周側の粉体層80の高さ(R230)とで、高さに差が生じている。
【0078】
図11Aに示すように、シュート32には、粉体センサ36の位置まで造形材料88が貯留されており、排出口32aからは一定の流量で造形材料88が排出される。造形面12aに排出された造形材料88は、擦切板34によって擦り切られる際に、一部が擦切板34とシュート32との隙間に堆積する。擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間の造形材料88には、擦切板34とシュート32との隙間に堆積した造形材料88の高さに応じた圧力が作用し、この圧力は擦切板34と造形面12aとの隙間を通過する造形材料88の量を増加させる方向に働く。
【0079】
一方で、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間には、
図11Bに示すように、造形材料88の速度勾配が生じており、この速度勾配に比例した圧力損失が上記の擦切板34とシュート32との隙間に堆積した造形材料88の高さによる圧力を打ち消すように作用する。
【0080】
図示のように、内周側よりも外周側の方が、造形面12aの線速度が大きくなっているため、速度勾配dv/dhは、内周側(dv/dh(70))よりも外周側(dv/dh(230))の方が大きくなる。その結果、外周側に向かうほど、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間を造形材料88が通過しにくくなる。その結果、粉体層80は外周側に向かうほど、高さが低くなってしまう。
【0081】
そこで、本実施形態では、
図12Aに示すように、擦切板34の下端辺34aを、内周側から外周側に向かうほど、造形面12aからの離間距離が増大するように傾斜させることとした。このように構成することにより、外周側に向かうほど、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間が増加する。これにより、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間における造形材料88の速度勾配dv/dhの増大を抑制することができ、圧力損失の影響を減ずることができる。また、擦切板34の下端辺34aと造形面12aとの隙間が広がることによる流路の拡大により、造形材料88の通過流量の増加効果も得られる。
【0082】
図12Bに、下端辺34aを傾斜させた擦切板34を用いた実験例2(本実施形態)の測定結果を示す。図示のように、内周側(R70)及び外周側(R230)において、粉体層80の高さが略同じとなり、粉体層80の平坦性が向上することが確認できる。
【0083】
(第6実施形態)
本実施形態では、
図13に示すように、造形台42Cの表面を粉体に対する摩擦が高い摩擦面42aで構成している。摩擦面42aは、例えば、細かい溝を格子状に形成したローレット加工面等で構成できる。
【0084】
造形容器12を回転させる構成において、造形台42が平滑面で構成されている場合には、粉体の供給を開始し始めた際に、粉体が造形台42の表面で滑ってしまい、粉体が安定して粉体層80が形成されるまでに時間を要してしまう。
【0085】
これに対し、本実施形態では、造形台42Cの表面を摩擦面42aで構成することにより、造形材料88が素早く造形台42Cに定着して、素早く粉体層80を形成することができ、3次元造形装置10の始動時の待ち時間を減少させることができる。
【0086】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
10、10A~10C…3次元造形装置 12、12A、12B…造形容器
24…塗布装置 32…シュート
34…擦切板 35…閉塞壁
40、40A、40B…外周壁 42、42B、42C…造形台
44、44B…案内部材 46、46A…外周壁回転軸
48…造形台回転軸 50、50B…回転機構
52、52A、52B…同期回転機構 54…昇降装置
62、62A、62B…昇降溝 64、64A、64B…摺動突起