(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】樹脂管の接続装置
(51)【国際特許分類】
F16L 23/08 20060101AFI20231213BHJP
F16L 47/14 20060101ALI20231213BHJP
F16L 33/28 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
F16L23/08
F16L47/14
F16L33/28
(21)【出願番号】P 2020090507
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】西山 真一
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】畑野 紗弓
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特許第5740123(JP,B2)
【文献】特開2020-20472(JP,A)
【文献】特開2011-122716(JP,A)
【文献】特開2003-287172(JP,A)
【文献】特開2017-180816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/08
F16L 47/14
F16L 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わせ面とテーパ面を有する環状のフランジ部が一端部に形成された2本の樹脂管を接続する接続装置において、
第1、第2分割体と、前記第1、第2分割体の一端部を互いに樹脂管の管軸と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段と、前記第1、第2分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段と、を備え、
前記第1、第2分割体は、内周面に円弧状に延びる嵌合溝を有し、前記嵌合溝はその両側にテーパ面を有し、前記締結手段による締め付け時に、前記嵌合溝の前記テーパ面が2本の樹脂管の前記フランジ部の前記テーパ面を押圧することにより、前記第1、第2分割体の前記他端部の対向面が互いに近づくとともに、2本の樹脂管の前記フランジ部の前記突き合わせ面が互いに突き合わされ、一方の樹脂管の前記突き合わせ面の環状の収容溝に収容されたシールリングが、他方の樹脂管の前記突き合わせ面に密着して、2本の樹脂管の前記突き合わせ面間がシールされるようになっており、
前記第1分割体と前記第2分割体の前記他端部の側面には、それぞれ少なくとも1つの第1確認穴と少なくとも1つの第2確認穴が形成され、
さらに、施工管理治具を備え、前記施工管理治具は、前記シールリングが前記収容溝に正常に収容された状態で2本の樹脂管が接続された時に前記第1、第2確認穴と合致する複数の突起を有することを特徴とする樹脂管の接続装置。
【請求項2】
前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体の前記他端部において、樹脂管の管軸方向を向く側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項3】
前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体の前記締結手段による締結位置から遠く、前記第1、第2分割体における前記対向面と前記内周面が交差する角部に近い位置に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項4】
前記第1、第2確認穴の前記第1、第2分割体の内周面からの距離が、前記第1、第2分割体の径方向厚みの50%以下であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項5】
前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体にそれぞれ1つずつ形成され、前記施工管理治具は、細長い把持部を有し、この把持部の両端部に前記突起が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の樹脂管の接続装置。
【請求項6】
上記第1、第2分割体がガラス繊維入りの樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂管の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部にフランジ部を有する2本の樹脂管を接続する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
施工現場で融着作業をせずに樹脂管同士を接続することが求められる場合には、工場でフランジ部付きの短管を樹脂管本体にバット融着することにより、端部にフランジ部を有する樹脂管を製造する。フランジ部は先端側に樹脂管の管軸と直交する突き合わせ面を有し、反対側にテーパ面を有している。施工現場では接続装置を用い、2本の樹脂管のフランジ部の突き合わせ面を突き合わせるようにして接続する。
【0003】
特許文献1に示す接続装置は、上下一対の分割体と、一対の分割体の一端部を互いに回動可能に連結するヒンジ手段と、一対の分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段とを備えている。一対の分割体は、内周に半円をなして延びる嵌合溝をそれぞれ有している。嵌合溝の管軸方向両側には上記フランジ部のテーパ面と等しいテーパ角をなすテーパ面が形成されている。
【0004】
特許文献1の接続装置による樹脂管の接続工程を簡単に説明する。一対の分割体を開き状態にし、2本の樹脂管のフランジ部を下側の分割体の嵌合溝に乗せる。次に、上側の分割体を閉じ方向に回動させて、上側の分割体の嵌合溝に2本の樹脂管のフランジ部を緩く嵌合させる。最後に、締結手段により一対の分割体の他端部同士を互いに近づけるように締め付ける。これにより、一対の分割体の嵌合溝の両側のテーパ面と2本の樹脂管のフランジ部のテーパ面を介して、上記締め付け力が2本の樹脂管のフランジ部同士を近づける軸方向の力に変換される。その結果、フランジ部の突き合わせ面が突き合わされた状態で2本の樹脂管が接続される。
【0005】
2本の樹脂管の互いに対向する突き合わせ面の一方には環状の収容溝が形成されており、この収容溝にはシールリングが嵌められている。このシールリングは、一対の分割体が締結手段により締め付けられた時に他方の突き合わせ面に密着し、これにより2本の樹脂管の突き合わせ面間がシールされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の接続装置では、シールリングが収容溝から外れた状態で締結手段の締付により樹脂管の接続を完了した場合、シール不良により樹脂管接合部から漏水が生じてしまうが、このシールの良否を簡単に判別する手段がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、突き合わせ面とテーパ面を有する環状のフランジ部が一端部に形成された2本の樹脂管を接続する接続装置において、
第1、第2分割体と、前記第1、第2分割体の一端部を互いに樹脂管の管軸と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段と、前記第1、第2分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段と、を備え、前記第1、第2分割体は、内周面に円弧状に延びる嵌合溝を有し、前記嵌合溝はその両側にテーパ面を有し、前記締結手段による締め付け時に、前記嵌合溝の前記テーパ面が2本の樹脂管の前記フランジ部の前記テーパ面を押圧することにより、前記第1、第2分割体の前記他端部の対向面が互いに近づくとともに、2本の樹脂管の前記フランジ部の前記突き合わせ面が互いに突き合わされ、一方の樹脂管の前記突き合わせ面の環状の収容溝に収容されたシールリングが、他方の樹脂管の前記突き合わせ面に密着して、2本の樹脂管の前記突き合わせ面間がシールされるようになっており、
前記第1分割体と前記第2分割体の前記他端部の側面には、それぞれ少なくとも1つの第1確認穴と少なくとも1つの第2確認穴が形成され、
さらに、施工管理治具を備え、前記施工管理治具は、前記シールリングが前記収容溝に正常に収容された状態で2本の樹脂管が接続された時に前記第1、第2確認穴と合致する複数の突起を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、施工管理治具の突起が第1、第2確認穴に合致するか否かを確かめることにより、シールリングが収容溝に正常に収容されてシールが良好な状態にあるか、シールリングが収容溝から外れてシール不良が生じているかを簡単に判別することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体の前記他端部において、樹脂管の管軸方向を向く側面に形成されている。
上記構成によれば、管軸方向から施工管理治具によるシールの良否判別を行うことができる。
【0011】
好ましくは、前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体の前記締結手段による締結位置から遠く、前記第1、第2分割体における前記対向面と前記内周面が交差する角部に近い位置に形成されている。
上記構成によれば、締結手段の締結力の影響を小さくして、正確シール良品の判別を行うことができる。
さらに好ましくは、前記第1、第2確認穴の前記第1、第2分割体の内周面からの距離が、前記第1、第2分割体の径方向厚みの50%以下である。
【0012】
好ましくは、前記第1、第2確認穴は、前記第1、第2分割体にそれぞれ1つずつ形成され、前記施工管理治具は、細長い把持部を有し、この把持部の両端部に前記突起が形成されている。上記構成によれば、施工管理治具を簡易な構成とすることができる。
好ましくは、上記第1、第2分割体がガラス繊維入りの樹脂により形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂管接合部におけるシール良否の判別を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂管の接続装置を樹脂管の接続が完了した状態で示す斜視図であり、接続装置および樹脂管の一部を切り欠いて示す。
【
図2】上記接続装置の上下一対の分割体を分離した状態で示す斜視図であり、一対の分割体はそれぞれ幅方向に半分に切断され、見る方向が異なっている。
【
図3】上記接続装置による樹脂管の接続工程を順に示す横断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を示す。
【
図4】上記接続装置による樹脂管の接続工程を順に示す縦断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を示す。
【
図5】シールリングが正常にセットされた状態で樹脂管の接続が完了した時の上記接続装置を示す斜視図であり、樹脂管と締結手段を省略して示す。
【
図7】(A)は施工管理治具の斜視図、(B)は正面図である。
【
図8】一対の分割体に施工管理治具を装着した状態を示す
図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
樹脂管の構成
最初に
図1、
図4を参照しながら接続対象となる樹脂管1,2について説明する。樹脂管1,2はポリエチレン等の樹脂からなり、一端部に環状のフランジ部1a,2aを有している。樹脂管1,2は、上記フランジ部1a,2aを有する短管と長尺の樹脂管本体とをバット融着することにより得られる。フランジ部1a,2aの先端面が管軸Lと直交する突き合わせ面1x、2xとなっており、反対側の面がテーパ面1y、2yとなっている。一方の樹脂管1のフランジ部1aの突き合わせ面1xには、環状の収容溝1zが形成され、この収容溝1zにシールリング3が嵌められている。
【0016】
樹脂管1,2の一端部内周には、短筒形状をなすインコア4がそれぞれ配置されている。インコア4はSUS304等のステンレス鋼からなり、その一端には径方向、外方向に突出する環状の鍔4aが形成されている。この鍔4aが樹脂管1,2の先端内周に形成された環状の凹部1b、2bに係合することにより、インコア4は軸方向の移動が制限された状態で、樹脂管1,2に装着されている。鍔4aは凹部1b、2bに収容されているため、後述するフランジ部1a,2aの突き合わせの支障にはならない。
【0017】
接続装置の基本構成
次に、上記樹脂管1,2を接続するための接続装置5の基本構成について、
図1~
図4を参照しながら説明する。接続装置5は、上下一対の分割体すなわち上側分割体10(第1分割体)と下側分割体20(第2分割体)を備えている。
分割体10、20は、例えばガラス繊維強化樹脂(ナイロン、ポリプロピレン、ポリアセタール等)からなり、それぞれ略半円筒形状の本体部11、21を有している。本体部11、21の内径は樹脂管1,2の外径と略等しい。
分割体10,20の本体部11,21の管軸L方向の両側面は、管軸Lと直交している。
【0018】
分割体10,20の本体部11,21は、後述するように樹脂管1,2の接続を完了した状態でその両端部の面が互いに対向している。以下、この面を端部対向面と言う。本体部11,21は、完全な半円筒より周方向寸法が短い。すなわち、上側分割体10の本体部11の端部対向面11a,11bは、本体部11の内周の半径中心を通る平面より僅かに後退しており、この平面と平行をなしている。同様に、下側分割体20の本体部21の端部対向面21a,21bは、本体部21の内周の半径中心を通る平面より僅かに後退しており、この平面と平行をなしている。
【0019】
分割体10,20の本体部11,21の内周面には、周方向に略半円をなして延びる嵌合溝12,22が形成されている。嵌合溝12,22の菅軸方向両側にはテーパ面12a、22aが形成されている。このテーパ面12a、22aのテーパ角度は、樹脂管1,2のフランジ部1a,2aのテーパ面1y、2yと等しい。嵌合溝12,22の断面形状は、後述するようにフランジ部1a,2aの突き合わせ面1x、2xが接した状態でのフランジ部1a、2aの断面形状と略等しい。
なお、本体部11,21の外周には、周方向に延びる肉盗み凹部(本体部11の肉盗み凹部13のみ示す)、が形成されている。
【0020】
上側分割体10の本体部11の一端部には、係合部15が本体部11と一体をなして設けられている。この係合部15は、本体部11の一端部から径方向外側に突出する突出部15aと、この突出部15aと直交して端部対向面11aを超えて下方に(下側分割体20に向かって)延びる延出部15bと、を有している。
【0021】
上側分割体10の係合部15には係合穴16が形成されている。この係合穴16は、延出部15bに形成され径方向に貫通する主穴部16aと、突出部15aに形成され主穴部16aに連なる逃がし凹部16bとを有している。
主穴部16aは略矩形をなし、係合穴16の下側の面16xと本体部11の端部対向面11aの延長面との間を占めている。この下側の面16xは後述するように荷重受面として提供される。
逃がし凹部16bは、端部対向面11aの延長面より上方(下側分割体20の反対側)に位置しており、径方向外側が開放されている。逃がし凹部16bの横寸法は、主穴部16aの横寸法と等しい。
【0022】
下側分割体20の本体部21の一端部には、径方向外方向に延びる係合突起25が本体部21と一体に形成されている。係合突起25の断面形状は矩形をなし、その上面は本体部21の端部対向面21aと面一をなしている。係合突起25の縦寸法、横寸法は、上側分割体10の係合穴16の主穴部16aの縦寸法、横寸法より若干短い。
後述するように下側分割体20の係合突起25が上側分割体10の係合穴16に挿入されることにより、ヒンジ手段Hが構成される。このヒンジ手段Hは、上側分割体10を下側分割体20に対し、樹脂管1,2の管軸Lと直交する平面に沿って相対回動可能に連結する。
【0023】
分割体10、20の本体部11,21の他端部には、径方向外側に突出する受部18、28が、それぞれ本体部11,21と一体をなして形成されている。受部18の下面は本体部11の端部対向面11bと面一をなし、受部28の上面は本体部21の端部対向面21bと面一をなしている。受部18、28には、貫通穴18a,28aが形成されている。受部28の下面には、貫通穴28aの両側に位置する一対の回り止め用凸部29が形成されている。
図3(B)に示すように、上記受部18,28を締結するための締結手段30は、ボルト31とナット32を有している。
【0024】
接続装置による樹脂管の接続工程
上記接続装置5による樹脂管1,2の接続工程について説明する。
図3(A)、
図4(A)に示すように、最初に樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを、突き合わせ面1xの収容溝1zに収容されたシールリング3が樹脂管2の突き合わせ面2xに軽く接する程度に近づけた状態で、下側分割体20に乗せる。フランジ部1a,2aが嵌合溝22に位置合わせされ、その一部が嵌合溝22に収容される。
【0025】
次に、上側分割体10を下側分割体20に対して傾斜姿勢のまま横方向から近づけ、係合部15の係合穴16に係合突起25を挿入する。この際、係合突起25の先端部の一部は係合穴16の主穴部16aから外れるが、逃がし凹部16bに受け入れることができる。そのため、係合突起25が係合部15と干渉せずに、上側分割体10はフランジ部1a,2aに深く被せることができる。
【0026】
具体的に説明すると、係合突起25が係合穴16に挿入されてヒンジ手段Hが構成された初期段階で、上側分割体10の嵌合溝12の最深部の端E(ヒンジ手段Hの反対側の端)は、フランジ部1a,2aの上半部の周方向の半分を越えている。すなわち、上側分割体10の端Eは
図3(A)においてフランジ部1a,2aの中心を通る垂直面Vより左側(ヒンジ手段Hの反対側)に位置する。
【0027】
次に、上側分割体10を下側分割体20に近づけるように支点Fを中心として回動させることにより、上側分割体10の受部18が下側分割体20の受部28に近づき対峙する。この状態で、上側分割体10の嵌合溝12内にもフランジ部1a,2aの一部が収容される。また、下側分割体20の係合突起25は上側分割体10の係合穴16の主穴部16a内に収まる。
【0028】
次に、一対の回り止め用凸部29間にナット32を回動不能に嵌めた状態で、
図3(B)に示すようにボルト31を分割体10、20の受部18、28の貫通穴18a,28aに通してナット32に螺合させ、締付方向に回す。これにより、下側分割体20と上側分割体10を、樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを挟んだ状態で締め付ける。この締め付け力は、嵌合溝12,22の両側のテーパ面12a,22aとフランジ部1a,2aのテーパ面1y、2yの作用により、フランジ部1a,2aを互いに近づける軸方向の力に変換される。その結果、
図4(B)に示すように、フランジ部1a,2aの突き合わせ面1x、2x同士が突き合わされ、一方の突き合わせ面1xの収容溝1zに収容されたシールリング3が、弾性変形を伴って他方の突き合わせ面2xに密着し、これにより突き合わせ面1x、2x間がシールされる。このようにして接続工程が完了する。
【0029】
上記ボルト31の締め付けにより、受部18,28同士が近づき、ヒンジ手段Hでは、係合突起25が係合部15の係合穴16の荷重受面16xに強く当たる。
【0030】
本願発明の特徴部について
上記のように、シールリング3が収容溝1zに正常に収容された状態で接続装置5により樹脂管1,2を接続した場合には、樹脂管1,2の突き合わせ面1x、2x間は良好にシールされ、漏水が生じない。
しかし、シールリング3の一部が収容溝1zから外れた状態で樹脂管1,2を接続した場合には、樹脂管1,2の突き合わせ面1x、2x間にシール不良が生じ、漏水が生じる。
【0031】
本願発明では、シールリング3が正常にセットされているか否かを判別するために、分割体10,20の端部対向面11b、21b間の隙間の大きさの相違に着目した。
詳述すると、シールリング3が正常にセットされた場合には、
図3(B)、
図5、
図6に示すように、分割体11,12の締結側の端部対向面11b、21b間の隙間は小さい。これに対してシールリング3が収容溝1zから外れている場合には、シールリング3が樹脂管1,2の突き合わせ面1x、2x間に介在されるため突き合わせ面1x、2xが突き合わされない。その結果、分割体10,20が互いに近づくのを制限され、端部対向面11b、21b間の隙間が大きくなる。
【0032】
本願発明の接続装置5は、シールリング3が正常にセットされているか否か(すなわちシールが良好か否か)を判別するための手段として、
図5、
図6に示すように、分割体10,20の本体部11,21の締結側の端部において管軸方向の一側面に形成された確認穴10h、20hと、
図7に示す施工管理治具40と、を備えている。
【0033】
確認穴10h、20hは、締結手段30による締結箇所から遠く、分割体10,20の内周面と端部対向面11b、21bが交差する角部の近傍に形成するのが好ましい。より具体的には、確認穴10h、20hは、分割体10,20の本体部11,21の内周面から、本体部11,21の厚さTaの50%以下の距離に形成するのが好ましい。また、確認穴10h、20hは、端部対向面11b、21bから、受部18,28の厚さTbの70%以下の距離に形成するのが好ましい。さらに、確認穴10h、20hの深さは20mm以下にするのが好ましい。
【0034】
施工管理治具40は、細長い板形状の把持部41と、この把持部41の両端部に形成された突起42,43とを有している。本実施形態では突起42,43は断面円形であり、先端が半球状またはテーパ形状をなしている。突起42,43の径は確認穴10h、20hの径と等しいかわずかに小さい。
【0035】
突起42,43間の距離Da(
図7(B)参照)は、シールリング3が収容溝1zに収まった正常なセット状態で接続装置5により樹脂管1,2の接続作業が行われた時の確認穴10h、20h間の距離Db(
図6参照)と等しい。詳述すると、本実施形態では、シールリング3が正常にセットされた状態で接続された時には、端部対向面11b、21b間の隙間寸法Dxは、略一定で例えば1.7mmである。上記確認穴10h、20h間の距離Dbは、この距離Dxに、端部対向面11bと確認穴10h間の距離と、端部対向面21bと確認穴20h間の距離を加えることにより得られる。
【0036】
締結手段30による締結が完了した後、
図8に示すように、施工管理治具40の把持部41を掴み、突起42,43を確認穴10h、20hに差し込む。この差し込みが成功した場合には、シールリング3が収容溝1zに正常にセットされた状態で接続装置5により樹脂管1,2の接続作業が行われ、樹脂管1,2の突き合わせ面1x、2x間のシールが良好であることを判別することができる。
【0037】
シールリング3が収容溝1zから外れている場合には、締結手段30による締結が完了した後、端部対向面11b、21b間の隙間寸法が大きくなってしまい、例えばシールリング3が正常にセットされている場合の3倍以上、本実施形態では5.8mm以上になってしまう。そのため、確認穴10h、20h間の距離が正常時より大きくなり、施工管理治具40の突起42,43を確認穴10h、20hに同時に差し込むことができない。これにより、樹脂管1,2の突き合わせ面1x、2x間のシールが不良であると判別することができる。
【0038】
なお、確認穴10h、20hが分割体10,20の内周面寄りに形成されているので、締付手段30により締付力の影響による確認穴10h、20hの変化量を小さく抑えることができ、施工管理治具40による確認作業を正確に行うことができる。
施工管理治具40はシール良否の判別後に分割体10,20から取り外してもよいし、シール良好と判別した場合には、分割体10,20に取り付けておいてもよい。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
シールリング3が正常にセットされている状態で接続が完了した場合の端部対向面11b、21b間の隙間寸法に許容範囲を設定してもよい。この場合、上記実施形態において、施工管理治具40の突起42,43は、深く挿入できなくても半球状またはテーパ状の先端部だけが確認穴10h、20hに挿入した時にシール良好と判別してもよい。また、確認穴10h、20hの径を施工管理治具40の突起42,43より大きくしたり、確認穴10h、20hを端部対向面11a,21bの対向方向に延びる長穴にしたりして、許容範囲を設定してもよい。
【0040】
上記実施形態では施工管理治具40によるシールの良否判別を締付手段30による締付完了後に実行したが、締付工程前又は締付工程の途中で実行してもよい。
確認穴10h、20hはそれぞれ複数あってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、端部にフランジ部を有する樹脂管を接続する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1、2 樹脂管
1a,2a フランジ部
1x、2x 突き合わせ面
1y、2y テーパ面
1z 収容溝
3 シールリング
5 接続装置
10 上側分割体(第1分割体)
10h 確認穴(第1確認穴)
20 下側分割体(第2分割体)
20h 確認穴(第2確認穴)
11b、21b 端部対向面
12、22 嵌合溝
12a、22a テーパ面
30 締結手段
40 施工管理治具
41 把持部
42,43 突起
H ヒンジ手段