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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】燃料電池および燃料電池のマニホールド
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/249 20160101AFI20231213BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/2485 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/0267 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231213BHJP
【FI】
H01M8/249
H01M8/2465
H01M8/2484
H01M8/2485
H01M8/1067
H01M8/0267
H01M8/10 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020091689
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021190202
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】狩野 昭雄
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-021083(JP,A)
【文献】特開平04-296463(JP,A)
【文献】特開平11-273706(JP,A)
【文献】特開2010-009904(JP,A)
【文献】特開2010-186624(JP,A)
【文献】特開平07-029580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜を挟む燃料極および酸化剤極と、前記燃料極に面したガス流路が設けられる燃料極流路板と、前記酸化剤極に面したガス流路が設けられる酸化剤極流路板と、を有するセルが積層されたセル積層体と、
前記セル積層体の積層方向に沿った前記セル積層体の側面に設けられ、前記セル積層体内の前記燃料極流路板または前記酸化剤極流路板に反応ガスを供給するマニホールドと、を備える燃料電池であって、
前記マニホールドは、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される複数の前記セル積層体間に設けられ、前記反応ガスが通過するように前記セル積層体間を連通するガス流路部を備え
前記マニホールドは、前記第1方向の一端の前記セル積層体のうち、前記ガス流路部の反対側の前記側面に設けられ、前記反応ガスを前記セル積層体内に導入するガス導入部をさらに備え、
前記ガス導入部が設けられる前記セル積層体内の前記電解質膜は、他の前記セル積層体内の前記電解質膜よりも厚い、燃料電池。
【請求項2】
前記マニホールドは、
前記第1方向の他端の前記セル積層体のうち、前記ガス流路部の反対側の前記側面に設けられ、前記反応ガスが通過するように、前記セル積層体内の第1領域と該第1領域とは異なる前記セル積層体内の第2領域との間を連通するガス通過部と、
前記ガス導入部が設けられる前記側面の少なくとも一部に設けられ、前記セル積層体内から前記反応ガスを排出するガス排出部と、をさらに備える、請求項に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記ガス流路部は、
前記セル積層体内の前記第1領域と、隣接する前記セル積層体内の前記第1領域と、の間を連通する第1流路部と、
前記セル積層体内の前記第2領域と、隣接する前記セル積層体内の前記第2領域と、の間を連通する第2流路部と、を有する、請求項に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極流路板または前記酸化剤極流路板は、冷却水流路がさらに設けられ、
前記マニホールドは、前記第1方向に並べて配置される複数の前記セル積層体間に設けられ、冷却水が通過するように前記セル積層体間を連通する冷却水流路部をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記マニホールドは、
前記第1方向の一端の前記セル積層体のうち、前記ガス流路部の反対側の前記側面に設けられ、冷却水を前記セル積層体内に導入する冷却水導入部と、
前記第1方向の他端の前記セル積層体のうち、前記ガス流路部の反対側の前記側面に設けられ、前記セル積層体内から冷却水を排出する冷却水排出部と、をさらに備える、請求項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記セル積層体の積層方向の両端部に設けられ、前記セル積層体と電気的に接続する正極端子および負極端子と、
複数の前記セル積層体を電気的に直列に接続するように、隣接する前記セル積層体の前記正極端子と前記負極端子とを電気的に接続する電極接続部と、さらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記セル積層体は、前記正極端子および前記負極端子の向きが隣接する前記セル積層体と逆になるように、並べて配置される、請求項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記セル積層体の積層方向の両端部に設けられ、前記セル積層体と電気的に接続する正極端子および負極端子と、
複数の前記セル積層体を電気的に並列に接続するように、隣接する前記セル積層体の前記正極端子を電気的に接続する正極接続部、および、隣接する前記セル積層体の前記負極端子を電気的に接続する負極接続部と、をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記セル積層体は、前記正極端子および前記負極端子の向きが隣接する前記セル積層体と同じになるように、並べて配置される、請求項に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記ガス流路部は、前記セル積層体の第1側面と、該第1側面に対向する、隣接する前記セル積層体の第2側面と、の間に設けられる、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記反応ガスは、水素含有ガスおよび酸素含有ガスのいずれかである、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池。
【請求項12】
電解質膜と、前記電解質膜を挟む燃料極および酸化剤極と、前記燃料極に面したガス流路が設けられる燃料極流路板と、前記酸化剤極に面したガス流路が設けられる酸化剤極流路板と、を有するセルが積層されたセル積層体の積層方向に沿った前記セル積層体の側面に設けられ、前記セル積層体内の前記燃料極流路板または前記酸化剤極流路板に反応ガスを供給する、燃料電池のマニホールドであって、
積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される複数の前記セル積層体間に設けられ、前記反応ガスが通過するように前記セル積層体間を連通するガス流路部を備え
前記マニホールドは、前記第1方向の一端の前記セル積層体のうち、前記ガス流路部の反対側の前記側面に設けられ、前記反応ガスを前記セル積層体内に導入するガス導入部をさらに備え、
前記ガス導入部が設けられる前記セル積層体内の前記電解質膜は、他の前記セル積層体内の前記電解質膜よりも厚い、燃料電池のマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、燃料電池および燃料電池のマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素等の燃料と空気等の酸化剤とを化学的に反応させることにより、燃料の持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して外部へ取り出す発電装置である。また、外部マニホールド方式では、単位電池(セル)の積層体の外側に、燃料ガスおよび酸化剤ガス等を供給するためのガスマニホールドが設けられる。
【0003】
しかし、外部マニホールド方式の場合、用途によって燃料電池の出力を増減(変更)することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3425086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明による実施形態は、外部マニホールド方式の燃料電池の出力をより容易に変更することができる燃料電池および燃料電池のマニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による燃料電池は、セル積層体と、マニホールドと、を備える。セル積層体は、電解質膜と、電解質膜を挟む燃料極および酸化剤極と、燃料極に面したガス流路が設けられる燃料極流路板と、酸化剤極に面したガス流路が設けられる酸化剤極流路板と、を有するセルが積層されている。マニホールドは、セル積層体の積層方向に沿ったセル積層体の側面に設けられ、セル積層体内の燃料極流路板または酸化剤極流路板に反応ガスを供給する。マニホールドは、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される複数のセル積層体間に設けられ、反応ガスが通過するようにセル積層体間を連通するガス流路部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】マニホールドを外した燃料電池の構造の一例を示す斜視図。
図2】マニホールドを装着した状態の燃料電池の構造の一例を示す斜視図。
図3】燃料電池セルの構成の一例を示す分解斜視図。
図4】燃料極流路板の構成の一例を示す図。
図5】酸化剤極流路板の構成の一例を示す図。
図6】締付板の表側の構成と端子の構成との一例を示す図。
図7】第1実施形態による燃料電池の構成を示す模式図。
図8】第1実施形態による第1マニホールド、第3マニホールドおよび第5マニホールドの構成を示す模式図。
図9】第1実施形態による第2マニホールドおよび第4マニホールドの構成を示す模式図。
図10】第1実施形態によるセル積層体の配置および電気的な接続を示す模式図。
図11】変形例によるセル積層体の配置および電気的な接続を示す模式図。
図12】変形例による燃料電池の構成を示す模式図。
図13】第2実施形態による燃料電池の構成を示す模式図。
図14】第2実施形態による第5マニホールドの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、マニホールドを外した燃料電池1の構造の一例を示す斜視図である。図2は、マニホールドを装着した状態の燃料電池1の構造の一例を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、第1実施形態による燃料電池1は、燃料電池セルにおける電気化学反応により発電する構造体である。すなわち、燃料電池1は、セル積層体10と、2つの集電板20と、2つの絶縁板25と、燃料電池締付構造体30と、第1マニホールド40と、第2マニホールド42と、第3マニホールド44と、第4マニホールド46と、を備えて構成されている。セル積層体10は、複数の燃料電池セル10aを積層したものである。燃料電池セル10aは、水素を含む燃料極ガスと酸素を含む酸化剤極ガスとの電気化学反応により発電する。すなわち、セル積層体10は、複数の燃料電池セル10aを直列に接続した構造体である。燃料電池セル10aの詳細な構成は後述する。図1及び図2は、セル積層体10の積層方向に平行なZ方向と、Z方向に垂直で互いに平行なX方向およびY方向を示している。本実施形態の燃料電池1を水平面上に設置する場合、Z方向は重力方向に平行となる。
【0010】
セル積層体10の積層方向の両側には、2つの集電板20が配置されている。2つの集電板20は、板状の導電体であり、セル積層体10の両端面のそれぞれに配置されている。2つの絶縁板25は、板状の絶縁体であり、2つの集電板20と、2つの締付板100との間にそれぞれ配置されている。このように、セル積層体10の積層方向の両側には、2つの集電板20と2つの絶縁板25が順に配置されており、これらを一体的に積層方向の両側から2つの締付板100で締め付けることで、燃料電池1が得られる。
【0011】
燃料電池締付構造体30は、セル積層体10に面圧を加える構造体であり、2つの締付板100と、複数の連結具200と、を備えて構成されている。2つの締付板100は、複数の燃料電池セルが積層されたセル積層体10の積層方向の両側からセル積層体10を締め付ける部材である。締付板100は、押圧部110と、梁部120とを有している。これら押圧部110と、梁部120とは一体形成されている。なお、押圧部110と、梁部120とをそれぞれ分離して構成してもよい。
【0012】
連結具200は、2つの締付板100を連結させる部材である。すなわち、本実施形態における連結具200は、タイロッド202と、二つの座金204と、二つのナット206と、を有している。図1に示すように、2つの締付板100に設けられた対向する孔部にタイロッド202を通した状態で、座金204を介してナット206が締め付けられ、2つの締付板100が連結されている。
【0013】
図2に示すように、燃料電池1におけるセル積層体10の積層方向に沿ったセル積層体10の側面にはマニホールド40、42、44、46が装着される。マニホールドとは、燃料極ガス、酸化剤極ガスなどの反応ガス、冷却水などを供給する空間領域を備えた部材である。
【0014】
第1マニホールド40は、冷却水マニホールドと酸化剤極マニホールドとを有している。第2マニホールド42は、燃料極マニホールドである。第3マニホールド44は、第1マニホールド40に対向するマニホールドであり、冷却水マニホールドと酸化剤極マニホールドとを有している。すなわち、第1マニホールド40と第3マニホールド44とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。
【0015】
第4マニホールド46は、第2マニホールド42に対向するマニホールドであり、燃料極マニホールドである。すなわち、第2マニホールド42と第4マニホールド46とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。
【0016】
配管継ぎ手部40aから導入された冷却水は、セル積層体10の側面から供給され、燃料電池セル10aの冷却水流路溝を介して配管継ぎ手部44aから排出される。一方で、配管継ぎ手部40bから酸化剤極ガスが導入され、セル積層体10内の電気化学反応によって消費されなかった酸化剤極ガスが配管継ぎ手部40cから排出される。また、配管継ぎ手部42aから燃料極ガスが導入され、セル積層体10内の電気化学反応によって消費されなかった燃料極ガスが配管継ぎ手部42bから排出される。
【0017】
マニホールド40、42、44、46には、ガス不透過性が求められる。また、マニホールド内部は、マニホールド外部より圧力が高くなる。このため、マニホールド40、42、44、46は、一般的にマニホールド内部と外部との圧力差に耐えうる剛性樹脂又は金属の成型品として構成されている。
【0018】
図3乃至図5に基づき、第1実施形態による燃料電池セル10aの詳細な構成について説明する。図3は、燃料電池セルの構成の一例を示す分解斜視図である。図3に示すように、燃料電池セル10aは、電解質膜12と、燃料極流路板14と、酸化剤極流路板16と、を備えて構成されている。この電解質膜12は、一方の主面12aに燃料極が形成され、他方の主面12bに酸化剤極が形成されている。すなわち、燃料電池セル10aは、電解質膜12を挟む(挟持する)ように設けられる燃料極および酸化剤極を備える。電解質膜12は、例えば高分子型の電解質膜である。
【0019】
図4は、燃料極流路板14の構成の一例を示す図であり、図4(a)は、燃料極流路板14の主面14a側の形状を示す図であり、図4(b)は、燃料極流路板14の主面14b側の形状を示す図である。この図4(a)に示すように、燃料極流路板14の主面14aは、電解質膜12の燃料極と反対側であり、平坦な面を形成している。
【0020】
図4(b)に示すように、燃料極流路板14は、電解質膜12の燃料極側の主面14bに、燃料極に沿った燃料極ガス流路溝140bが設けられる。また、燃料極ガス流路溝140bは、第1入口部14cと、第1出口部14dと、第2入口部14eと、第2出口部14fと、を有する。第1入口部14cから導入された燃料極ガスは、燃料極ガス流路溝140bに沿って流れ第1出口部14dから排出される。また、第2入口部14eから導入された燃料極ガスは、燃料極ガス流路溝140bに沿って流れ第2出口部14fから排出される。
【0021】
図5は、酸化剤極流路板16の構成の一例を示す図であり、図5(a)は、酸化剤極流路板16の主面16aの形状を示す図であり、図5(b)は、酸化剤極流路板16の主面16aの反対側の主面16bの形状を示す図である。この図5(a)に示すように、酸化剤極流路板16は、電解質膜12の酸化剤極側の主面16aに、酸化剤極に沿った酸化剤ガス流路溝160aが設けられる。また、酸化剤ガス流路溝160aは、第1入口部16cと、第1出口部16dと、第2入口部16eと、第2出口部16fと、を有する。第1入口部16cから導入され酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路溝160aに沿って流れ第1出口部16dから排出される。また、第2入口部16eから導入された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路溝160aに沿って流れ第2出口部16fから排出される。
【0022】
図5(b)に示すように、酸化剤極流路板16は、酸化剤極側と反対側の主面16bに、冷却水流路溝160bが設けられる。冷却水流路溝160bは、第1入口部16hと、第1出口部16gと、を有する。第1入口部16hから導入された冷却水は、冷却水流路溝160bに沿って流れ第1出口部16gから排出される。酸化剤極流路板16は、例えば微細孔を有する導電性多孔質板で構成されている。また、冷却水流路溝160bは、冷却水をその表面から蒸発し、燃料電池セル10aを加湿する。なお、冷却水流路溝160bを有しない酸化剤極流路板16を用いてもよい。冷却水流路溝160bを有しない酸化剤極流路板16を用いる場合には、第1マニホールド40及び第3マニホールド44は、酸化剤極マニホールドのみで構成してもよい。
【0023】
これら複数の燃料電池セル10aは、化学式1で示す反応により発電する。より詳細には、燃料極ガスは例えば水素含有ガスである。燃料極ガスは、燃料極流路板14の燃料極ガス流路溝140bに沿って流れ、燃料極反応をおこす。酸化剤ガスは例えば酸素含有ガスである。酸化剤ガスは、酸化剤極流路板16の酸化剤ガス流路溝160aを沿って流れ、酸化剤極反応をおこす。燃料電池1は、これらの電気化学反応を利用して、集電板20(図1)に設けられた電極から電気エネルギーを取り出す。
【0024】
(化学式1)
燃料極反応:H2 → 2H+ + 2e-
酸化剤極反応:1/2O2 + 2H+ +2e- → H2O
【0025】
図6は、締付板100の表側の構成と端子300の構成との一例を示す図である。この図6に示すように締付板100には、端子300と端子カバー310が装着される。この端子300は、集電板20に電気的に接続されている。尚、積層方向の上側に限られず、積層方向の下側にも、端子300が設けられる。積層方向の両端に設けられる2つの端子300は、例えば、正極端子および負極端子である。尚、端子300の詳細については、図10を参照して、後で説明する。
【0026】
図7は、第1実施形態による燃料電池1の構成を示す模式図である。尚、図7のマニホールド40、42、44、46上に示される丸印は、図2に示す配管継ぎ手部40a、40b、40c、42a、42b、44aを示す。また、図7には、燃料極ガスの集合管が示されている。燃料極ガスの集合管は、図2に示す配管継ぎ手部42a、42bと接続されている。尚、図7には、図1および図2に示す燃料電池締付構造体30が示されていない。セル積層体10は、例えば、連結具200が設けられるように、セル積層体10間の間隔を広げて設けられていればよい。
【0027】
燃料電池1は、上記のマニホールド40、42、44、46に加え、第5マニホールド48をさらに備える。マニホールド40、42、44、46、48は、セル積層体10内の燃料極流路板14に燃料極ガスを供給し、酸化剤極流路板16に酸化剤ガスおよび冷却水を供給する。
【0028】
複数のセル積層体10は、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される。第1方向は、図7に示す例では、Y方向である。また、セル積層体10は、第1実施形態では、隣接するセル積層体10に対して、Z方向における向きが逆になるように配置されている。セル積層体10は、例えば、隣接するセル積層体10に対して、Y方向を中心に180°回転させるように配置されている。
【0029】
第5マニホールド48は、第1方向(Y方向)並べて配置されるセル積層体10間に設けられている。図7に示すように、第1方向の一端のセル積層体10において、第5マニホールドと第1マニホールド40とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。また、第1方向の他端のセル積層体10において、第5マニホールドと第3マニホールド44とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。
【0030】
まず、図7および図8(a)~図8(c)を参照して、第1マニホールド40、第3マニホールド44および第5マニホールド48の構成について説明する。
【0031】
図8は、第1実施形態による第1マニホールド40、第3マニホールド44および第5マニホールド48の構成を示す模式図である。図8(a)は、第1マニホールド40をセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図であり、図8(b)は、第3マニホールド44をセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図である。図8(c)は、第5マニホールド48を第1マニホールド40が設けられるセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図である。
【0032】
図8(a)に示すように、第1マニホールド40は、酸化剤ガスを供給する酸化剤マニホールドと、冷却水を供給する冷却水マニホールドと、を備える。第1マニホールド40の酸化剤マニホールドは、配管継ぎ手部40bと、配管継ぎ手部40cと、ガス導入部40dと、ガス排出部40eと、を備える。第1マニホールド40の冷却水マニホールドは、配管継ぎ手部40aと、冷却水導入部40fと、を備える。
【0033】
配管継ぎ手部40aは、供給用継ぎ手部であり、冷却水導入部40fと連通している。この配管継ぎ手部40aは、冷却水を冷却水導入部40fに供給する。
【0034】
配管継ぎ手部40bは、供給用継ぎ手部であり、ガス導入部40dと連通している。この配管継ぎ手部40bは、反応ガス(酸化剤ガス)をガス導入部40dに供給する。
【0035】
配管継ぎ手部40cは、排出用継ぎ手部であり、ガス排出部40eと連通している。この配管継ぎ手部40cは、電気化学反応により消費されなかった未反応ガスをガス排出部40eから排出する。
【0036】
ガス導入部40d、ガス排出部40eおよび冷却水導入部40fは、セル積層体10のセル積層方向に沿った側面に沿って配置される複数の空間領域部である。尚、ガス導入部40d、ガス排出部40eおよび冷却水導入部40fは、Y方向に連通(貫通)していない。
【0037】
尚、ガス導入部40dがセル積層体10の側面と接する面積は、ガス排出部40eがセル積層体10の側面と接する面積よりも広くなっている。ガス排出部40eでは、ガス導入部40dよりも、酸化剤ガスが電気化学反応により消費される。従って、ガス排出部40eにおいて酸化剤ガスに含まれる酸素の量が少なくなるに従い、酸化剤極に接する面積が小さくなるため、酸化剤極における酸化剤極反応の反応効率は、酸化剤極流路内でより均一化される。しかし、これに限られず、ガス導入部40dがセル積層体10の側面と接する面積は、ガス排出部40eがセル積層体10の側面と接する面積と略同じでよい。
【0038】
図8(b)に示すように、第3マニホールド44は、酸化剤ガスを供給する酸化剤マニホールドと、冷却水を供給する冷却水マニホールドと、を備える。第3マニホールド44の酸化剤マニホールドは、ガス通過部44bを備える。第3マニホールド44の冷却水マニホールドは、配管継ぎ手部44aと、冷却水排出部44cと、を備える。
【0039】
配管継ぎ手部44aは、排出用継ぎ手部であり、冷却水排出部44cと連通している。この配管継ぎ手部44aは、冷却水を冷却水排出部44cから排出する。
【0040】
ガス通過部44bおよび冷却水排出部44cは、セル積層体10のセル積層方向に沿った側面に沿って配置される複数の空間領域部である。尚、ガス通過部44bおよび冷却水排出部44cは、Y方向に連通(貫通)していない。
【0041】
図8(c)に示すように、第5マニホールド48は、酸化剤ガスを供給する酸化剤マニホールドと、冷却水を供給する冷却水マニホールドと、を備える。第5マニホールド48の酸化剤マニホールドは、ガス流路部48aを備える。第5マニホールド48の冷却水マニホールドは、冷却水流路部48dを備える。
【0042】
ガス流路部48aおよび冷却水流路部48dは、セル積層体10のセル積層方向に沿った側面に沿って配置される複数の空間領域部である。尚、ガス流路部48a(第1流路部48bおよび第2流路部48c)並びに冷却水流路部48dは、Y方向に連通(貫通)する。
【0043】
尚、隣接するセル積層体10には、Y方向を中心に180°回転させた第5マニホールドが設けられる(図7を参照)。すなわち、それぞれの第5マニホールド48の形状(種類)は同じでよい。
【0044】
図7に示すように、ガス導入部40dは、第1方向の一端のセル積層体10のうち、ガス流路部48a(第5マニホールド48)の反対側の側面に設けられる。また、ガス導入部40dは、反応ガス(酸化剤ガス)をセル積層体10内に導入する。より詳細には、ガス導入部40dは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第1領域に酸化剤ガスを導入する。第1領域は、例えば、第1入口部16c(図5(a))と第1出口部16d(図5(a))との間の酸化剤ガス流路溝160aの領域である。
【0045】
ガス排出部40eは、ガス導入部40dが設けられる側面の少なくとも一部に設けられる。また、ガス排出部40eは、セル積層体10内から反応ガス(酸化剤ガス)を排出する。より詳細には、ガス排出部40eは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第2領域から酸化剤ガスを排出する。第2領域は、例えば、第2入口部16e(図5(a))と第2出口部16f(図5(a))との間の酸化剤ガス流路溝160aの領域である。
【0046】
冷却水導入部40fは、第1方向の一端のセル積層体10のうち、ガス流路部48a(第5マニホールド48)の反対側の側面に設けられる。また、冷却水導入部40fは、冷却水をセル積層体10内に導入する。
【0047】
ガス通過部44bは、第1方向の他端のセル積層体10のうち、ガス流路部48a(第5マニホールド48)の反対側の側面に設けられる。また、ガス通過部44bは、反応ガス(酸化剤ガス)が通過するように、セル積層体10内の第1領域と該第1領域とは異なるセル積層体10内の第2領域との間を連通する。より詳細には、ガス通過部44bは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第1領域と、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第2領域と、の間を連通する。
【0048】
冷却水排出部44cは、第1方向の他端のセル積層体10のうち、ガス流路部48a(第5マニホールド48)の反対側の側面に設けられる。また、冷却水排出部44cは、セル積層体10内から冷却水を排出する。
【0049】
ガス流路部48aは、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される複数のセル積層体10間に設けられる。より詳細には、ガス流路部48aは、セル積層体10の第1側面S1と、該第1側面S1に対向する、隣接するセル積層体10の第2側面S2と、の間に設けられる。また、ガス流路部48aは、反応ガス(酸化剤ガス)が通過するようにセル積層体10間を連通する。従って、酸化剤ガスは、ガス流路部48aを介して、複数のセル積層体10を貫通するように通過する。これにより、燃料電池1の所望の出力に応じて、セル積層体10の接続数をより容易に変更することができる。この結果、外部マニホールド方式の燃料電池1の出力をより容易に変更することができる。
【0050】
また、より詳細には、ガス流路部48aは、第1流路部48bと、第2流路部48cと、を有する。
【0051】
第1流路部48bは、セル積層体10内の第1領域と、隣接するセル積層体10内の第1領域と、の間を連通する。より詳細には、第1流路部48bは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第1領域と、隣接するセル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第1領域と、の間を連通する。
【0052】
尚、図7に示すように、隣接するセル積層体10では、酸化剤ガスの流路は同じではない。これは、セル積層体10が、隣接するセル積層体10に対して、Z方向における向きが互いに逆になるように配置されているためである。すなわち、酸化剤ガスは、例えば、図5(a)において、Y方向を中心に180°回転した酸化剤ガス流路溝160aに沿って進む。従って、隣接するセル積層体10では、第1領域は、例えば、第2出口部16f(図5(a))と第2入口部16e(図5(a))との間の酸化剤ガス流路溝160aの領域である。同様に、隣接するセル積層体10では、第2領域は、例えば、第1出口部16d(図5(a))と第1入口部16c(図5(a))との間の酸化剤ガス流路溝160aの領域である。
【0053】
第2流路部48cは、セル積層体10内の第2領域と、隣接する前記セル積層体内の第2領域と、の間を連通する。より詳細には、第2流路部48cは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第2領域と、隣接するセル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの第2領域と、の間を連通する。尚、第1流路部48bと第2流路部48cとの間には、仕切りが設けられている。
【0054】
冷却水流路部48dは、第1方向に並べて配置される複数のセル積層体10間に設けられる。また、冷却水流路部48dは、冷却水が通過するようにセル積層体10間を連通する。
【0055】
次に、図7を参照して、反応ガス(酸化剤ガス)の流れについて説明する。
【0056】
図7に示す例では、酸化剤ガス(空気)は、配管継ぎ手部40bを介して、ガス導入部40dに供給される。酸化剤ガスは、セル積層体10に積層される酸化剤極流路板16のうちガス導入部40dと連通する酸化剤極流路板16の第1入口部16c(図5(a))を介して酸化剤ガス流路溝160aを流れ、第1出口部16d(図5(a))から第5マニホールド48の第1流路部48bに排出される。第1流路部48bに排出された酸化剤ガスは、隣接するセル積層体10においても、同様に、酸化剤極流路板16の酸化剤ガス流路溝160aを流れる。その後、酸化剤ガスは、第3マニホールド44のガス通過部44bに排出される。ガス通過部44bに排出された酸化剤ガスは、セル積層体10に積層される酸化剤極流路板16のうちガス通過部44bと連通する酸化剤極流路板16の第2入口部16e(図5(a))を介して酸化剤ガス流路溝160a(図5(a))を流れ、第2出口部16f(図5(a))から第5マニホールド48の第2流路部48cに排出される。第2流路部48cに排出された酸化剤ガスは、隣接するセル積層体10においても、同様に、酸化剤極流路板16を通過する。その後、酸化剤ガスは、第1マニホールド40のガス排出部40eに排出される。ガス排出部40eに排出された酸化剤ガスは、ガス排出部40eと連通している配管継ぎ手部40cから排出される。
【0057】
このように、セル積層体10内の酸化剤極流路板16の酸化剤ガス流路溝160aを酸化剤ガスが流れることにより、電解質膜12の酸化剤極に酸化剤ガスが供給される。また、酸化剤ガスは、電気化学反応により消費される。従って、酸化剤ガスが通過するセル積層体10の数が多くなるほど、酸化剤ガスの流量を大きくすればよい。
【0058】
次に、図7を参照して、冷却水の流れについて説明する。
【0059】
図7に示す例では、冷却水は、配管継ぎ手部40aを介して、冷却水導入部40fに貯水される。冷却水は、冷却水導入部40fと連通している酸化剤極流路板16の第1入口部16h(図5(b))を介して冷却水流路溝160bを流れ、第1出口部16g(図5(b))から第5マニホールド48の冷却水流路部48dに排出される。冷却水流路部48dに排出された冷却水は、隣接するセル積層体10においても、同様に、酸化剤極流路板16の冷却水流路溝160bを流れる。その後、冷却水は、第3マニホールド44の冷却水排出部44cに排出される。冷却水排出部44cに貯水された冷却水は、冷却水排出部44cと連通している配管継ぎ手部44aから排出される。このように、セル積層体10内の酸化剤極流路板16の冷却水流路溝160bを冷却水が流れることにより、セル積層体10が冷却される。
【0060】
次に、図7および図9(a)~図9(b)を参照して、第2マニホールド42および第4マニホールド46の構成について説明する。
【0061】
図9は、第1実施形態による第2マニホールド42および第4マニホールド46の構成を示す模式図である。図9(a)は、第2マニホールド42をセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図であり、図9(b)は、第4マニホールド46をセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図である。
【0062】
図9(a)に示すように、第2マニホールド42は、燃料極ガスを供給する燃料極マニホールドを備える。第2マニホールド42の燃料極マニホールドは、配管継ぎ手部42aと、配管継ぎ手部42bと、ガス導入部42cと、ガス排出部42dと、を備える。
【0063】
配管継ぎ手部42aは、供給用継ぎ手部であり、ガス導入部42cと連通している。この配管継ぎ手部42aは、反応ガスをガス導入部42cに供給する。
【0064】
配管継ぎ手部42bは、排出用継ぎ手部であり、ガス排出部42dと連通している。この配管継ぎ手部42bは、電気化学反応により消費されなかった未反応ガスをガス排出部42dから排出する。
【0065】
ガス導入部42cおよびガス排出部42dは、セル積層体10のセル積層方向に沿った側面に沿って配置される複数の空間領域部である。
【0066】
図9(b)に示すように、第4マニホールド46は、燃料極ガスを供給する燃料極マニホールドを備える。第4マニホールド46の燃料極マニホールドは、ガス通過部46aを備える。
【0067】
ガス通過部46aは、セル積層体10のセル積層方向に沿った側面に沿って配置される空間領域部である。
【0068】
図7に示すように、ガス導入部42cは、セル積層体10のうち、ガス通過部46a(第4マニホールド46)の反対側の側面に設けられる。また、ガス導入部42cは、酸化剤ガスをセル積層体10内に導入する。より詳細には、ガス導入部42cは、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第3領域に燃料極ガスを導入する。第3領域は、例えば、第1入口部14c(図4(b))と第1出口部14d(図4(b))との間の燃料極ガス流路溝140bの領域である。
【0069】
ガス排出部42dは、ガス導入部42cが設けられる側面の少なくとも一部に設けられる。また、ガス排出部42dは、セル積層体10から燃料極ガスを排出する。より詳細には、ガス排出部42dは、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第4領域から燃料極ガスを排出する。第4領域は、例えば、第2入口部14e(図4(b))と第2出口部14f(図4(b))との間の燃料極ガス流路溝140bの領域である。
【0070】
ガス通過部46aは、セル積層体10のうち、ガス導入部42c(第2マニホールド42)の反対側の側面に設けられる。また、ガス通過部46aは、燃料極ガスが通過するように、セル積層体10内の第3領域と該第3領域と異なるセル積層体10内の第4領域との間を連通する。より詳細には、ガス通過部46aは、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第3領域と、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第4領域と、の間を連通する。
【0071】
次に、図7を参照して、反応ガス(燃料極ガス)の流れについて説明する。
【0072】
図7に示す例では、燃料極ガス(燃料)は、配管継ぎ手部42aを介して、ガス導入部42cに供給される。燃料極ガスは、セル積層体10に積層される燃料極流路板14のうちガス導入部42cと連通する燃料極流路板14の第1入口部14cを介して燃料極ガス流路溝140b(図4(b))を流れ、第1出口部14d(図4(b))から第4マニホールド46のガス通過部46aに排出される。ガス通過部46aに排出された燃料極ガスは、セル積層体10に積層される燃料極流路板14のうちガス通過部46aと連通する燃料極流路板14の第2入口部14e(図4(b))を介して燃料極ガス流路溝140b(図4(b))を流れ、第2出口部14f(図4(b))から第2マニホールド42のガス排出部42dに排出される。ガス排出部42dに排出された燃料極ガスは、ガス排出部42dと連通している配管継ぎ手部42bから排出される。
【0073】
このように、セル積層体10内の燃料極流路板14の燃料極ガス流路溝140bを燃料極ガスが流れることにより、電解質膜12の燃料極に燃料極ガスが供給される。
【0074】
図10は、第1実施形態によるセル積層体10の配置および電気的な接続を示す模式図である。尚、図10において、図6を参照して説明した端子300、すなわち、正極端子および負極端子は、省略されている。+が示される締付板100は、正極端子側の締付板100である。-が示される締付板100は、負極端子側の締付板100である。
【0075】
燃料電池1は、正極端子と、負極端子と、電極接続部401と、をさらに備える。
【0076】
セル積層体10は、正極端子および負極端子の向きが隣接するセル積層体10と逆になるように、並べて配置される。
【0077】
正極端子および負極端子は、セル積層体10の積層方向の両端部に設けられ、セル積層体10(集電板20)と電気的に接続する。
【0078】
電極接続部401は、複数のセル積層体10を電気的に直列に接続するように、隣接するセル積層体10の正極端子と負極端子とを電気的に接続する。電極接続部401は、例えば、ブスバー等の導電体である。複数のセル積層体10を直列に接続することにより、高電圧を得ることができる。これにより、電流の上昇を抑制し、電力のロスを少なくすることができる。この結果、電気系の効率を向上させることができる。また、正極端子および負極端子の向きが隣接するセル積層体10と逆になっているため、配線である電極接続部401を短くすることができる。この結果、電極接続部401による電力のロスを抑制することができ、燃料電池1の容積を小さくすることができる。さらに、電極接続部401の形状を1種類にすることができ、部品の種類を少なくすることができる。
【0079】
以上のように、第1実施形態によれば、第5マニホールド48は、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置されるセル積層体10間に設けられ、反応ガス(酸化剤ガス)が通過するようにセル積層体10間を連通するガス流路部48aを備える。第5マニホールドは、セル積層体10間の接続に用いられ、反応ガス(酸化剤ガス)を複数のセル積層体10に貫通するように流すための配管として機能する。これにより、燃料電池1の所望の出力に応じて、セル積層体10の接続数をより容易に変更することができる。従って、第1実施形態では、外部マニホールド方式の燃料電池1の出力をより容易に変更することができる。
【0080】
外部マニホールド方式の燃料電池の出力を増減させる方法の一つとして、燃料電池セルの積層数を増減させることが知られている。この場合、マニホールドを都度個別に専用設計する必要があり、量産時のコスト、金型による成型の場合にリードタイムがかかる等の問題がある。例えば、1kW、2kW、3kWの出力を得る場合を仮定すると、それぞれ25個、50個、75個の燃料電池セルが積層されたセル積層体が作製することが考えられる。この場合、燃料電池セルの積層数に対応する長さ(例えば、図1のZ方向の長さ)になるように、出力毎にマニホールド(例えば、図1のマニホールド40、42、44、46)を作製する必要がある。従って、合計で3×4=12個のマニホールドを個別に専用設計する必要があり、時間やコストがかかってしまう。
【0081】
これに対して、第1実施形態では、第5マニホールドおよびセル積層体10の数を変更することにより、燃料電池1の出力を変更することができる。例えば、上記の仮定において2kWおよび3kWの出力を得るためには、1kWが得られる25個の燃料電池セル10aを積層したセル積層体10を、それぞれ2つおよび3つ接続させればよい。この場合、使用するマニホールド40、42、44、46を共通化させることができる。また、第5マニホールドは1種類でよい。従って、専用設計するマニホールドの数(種類)は、各マニホールド40、42、44、46、48の数である5個である。従って、量産に必要な金型の設計数を減少させ、より短時間で種々の出力の燃料電池1を作製することができる。また、第1実施形態では、燃料電池セル10aを高積層することなく、燃料電池1の出力を増加させることができる。従って、例えば、燃料電池セル10a間の温度分布や性能のばらつきを抑制することができ、より長寿命化することができる。さらに、第1実施形態では、複数のセル積層体10のうち、特性の劣化したセル積層体10を交換することもできる。従って、燃料電池1の保守をより容易にすることができる。
【0082】
また、外部マニホールド方式の燃料電池の出力を増減させる方法の一つとして、例えば、25個の燃料電池セルが積層された複数のセル積層体の各マニホールドに対して、酸化剤ガス、燃料極ガス、冷却水の配管(集合管)を接続することも考えられ得る。しかし、この場合、配管の接続のため、設置場所が大きく、また、部品点数が多くコストが大きいという問題がある。また、集合管が用いられる場合、セル積層体の第1方向の距離が長くなるほど、各セル積層体に流れる酸化剤ガスおよび冷却水の流量にばらつき(配流ばらつき)が発生する可能性がある。この酸化剤ガスおよび冷却水の配流ばらつきによって、各セル積層体のセル電圧のばらつきが発生してしまう。
【0083】
これに対して、第1実施形態では、酸化剤ガスおよび冷却水は、第5マニホールド48を介して、セル積層体10を通過する。従って、図7に示すように、酸化剤ガスおよび冷却水の集合管は不要である。これにより、設置場所の増大を抑制し、また、部品点数およびコストの増大を抑制することができる。また、酸化剤ガスおよび冷却水の配流ばらつきを抑制することにより、各セル積層体10のセル電圧の均一性を向上させ、また、燃料電池1をより長寿命化することができる。さらに、第1実施形態では、集合管を用いる場合よりも、反応ガス(酸化剤ガス)の拡散性が向上により燃料電池1をより高性能化することができる。また、反応ガス(酸化剤ガス)の拡散性の向上により、燃料極および酸化剤極に用いられるカーボンの酸化(腐食)を抑制し、燃料電池1をより長寿命化することができる。
【0084】
また、ガス導入部40dが設けられるセル積層体10内の電解質膜12は、他のセル積層体10内の電解質膜12よりも厚いことが好ましい。内部加湿方式では、上記のように、冷却水は冷却水流路溝160bの表面から蒸発し、燃料電池セル10aを加湿する。しかし、酸化剤ガスおよび燃料極ガスの入口に近い電解質膜12は、乾燥しやすく、劣化しやすい。すなわち、ガス導入部40dが設けられるセル積層体10内の電解質膜12は、劣化しやすい。電解質膜12が劣化すると、クロスリークが発生する可能性がある。クロスリークは、電解質膜12の膜の劣化により、酸化剤ガスまたは燃料極ガスが電解質膜12を通過することである。クロスリークにより酸化剤ガスと燃料極ガスとが混ざり反応すると、燃料電池1の発電性能が低下してしまう。そこで、ガス導入部40dが設けられるセル積層体10の電解質膜12を厚くすることにより、クロスリークを抑制し、燃料電池1をより長寿命化することができる。
【0085】
尚、図7に示す例では、酸化剤ガスは、第1マニホールド40から第3マニホールド44の通過後、第1マニホールド40に戻る。しかし、これに限られず、酸化剤ガスは、第1マニホールド40に戻らずに、第3マニホールド44において外部に排出されてもよい。この場合、第2流路部48cおよびガス通過部44bは設けらなくていなくてもよい。また、ガス通過部44bの位置に、ガス排出部40eが設けられる。従って、第1流路部48bは、セル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの略全体と、隣接するセル積層体10内の酸化剤ガス流路溝160aの略全体と、を連通する。ガス排出部40eは、第1方向の他端のセル積層体10のうち、ガス流路部48aの反対側の側面に設けられる。
【0086】
また、燃料極ガスも、第2マニホールド42に戻らずに、第4マニホールド46において外部に排出されてもよい。
【0087】
また、反応ガスは、燃料極ガスおよび酸化剤ガスのいずれかである。より詳細には、反応ガスは、水素含有ガスおよび酸素含有ガスのいずれかである。
【0088】
また、冷却水流路溝160bは、燃料極流路板14に設けられていてもよい。
【0089】
(変形例)
図11は、変形例によるセル積層体10の配置および電気的な接続を示す模式図である。第1実施形態の変形例は、セル積層体10が電気的に並列に接続される点で、第1実施形態と異なる。
【0090】
燃料電池1は、正極接続部402と、負極接続部403と、をさらに備える。
【0091】
セル積層体10は、正極端子および負極端子の向きが隣接するセル積層体10と同じになるように、並べて配置される。
【0092】
正極接続部402は、複数のセル積層体10を電気的に並列に接続するように、隣接するセル積層体10の正極端子を電気的に接続する。正極接続部402は、例えば、ブスバー等の導電体である。
【0093】
負極接続部403は、複数のセル積層体10を電気的に並列に接続するように、隣接するセル積層体10の負極端子を電気的に接続する。負極接続部403は、例えば、ブスバー等の導電体である。複数のセル積層体10を並列に接続することにより、大電流を得ることができる。また、直列接続の場合よりも燃料電池1の電圧を下げることができる。この結果、耐電圧の設計(絶縁設計)が容易になる。従って、例えば、所望の電気設計、および、1つのセル積層体10の出力等に応じて、第1実施形態において説明した直列接続、および、並列接続のいずれかを選択可能である。
【0094】
図12は、変形例による燃料電池1の構成を示す模式図である。尚、冷却水は、直進して流れるように記載されているが、実際には、冷却水流路溝160bは、主面16bの略全体に設けられている。また、酸化剤ガス流路溝160aも、主面16aの略全体に設けられている。
【0095】
変形例では、セル積層体10毎の水の出入口は、X方向における位置が略同じになるように設けられている。これは、例えば、セル積層体10の正極および負極の向きが、隣接するセル積層体10の正極および負極の向きと同じになるためである。この場合、複数のセル積層体10毎に、同じ種類の酸化剤極流路板16を用いることができる。
【0096】
変形例による燃料電池1のその他の構成は、第1実施形態による燃料電池1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0097】
変形例による燃料電池1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態による燃料電池1の構成を示す模式図である。第2実施形態は、酸化剤ガスに代えて、燃料極ガスが複数のセル積層体10を貫通するように通過する点で、第1実施形態と異なる。従って、燃料極ガスが第5マニホールド48を通過する。尚、図13に示す例では、冷却水は、第5マニホールド48を通過せず、セル積層体10毎に供給される。図13に示す例では、冷却水の集合管は省略されている。しかし、冷却水の入口集合管は、例えば、各セル積層体10の配管継ぎ手部40aと接続する。冷却水の出口集合管は、例えば、各セル積層体10の配管継ぎ手部44aと接続する。
【0099】
図13に示す例では、複数のセル積層体10は、積層方向に垂直な第1方向に並べて配置される。第2実施形態における第1方向は、図13に示す例では、X方向である。また、セル積層体10は、隣接するセル積層体10に対して、Z方向における向きが同じになるように配置されている。この場合、複数のセル積層体10は、図12に示すように、電気的に並列に接続される。しかし、これに限られず、セル積層体10は、隣接するセル積層体10に対して、Z方向における向きが逆になるように配置されてもよい。この場合、セル積層体10は、例えば、隣接するセル積層体10に対して、Y方向を中心に180°回転するように配置される。また、この場合、複数のセル積層体10は、図11に示すように、電気的に直列に接続される。
【0100】
第5マニホールド48は、第1方向(X方向)に並べて配置されるセル積層体10間に設けられている。図13に示すように、第1方向の一端のセル積層体10において、第5マニホールドと第2マニホールド42とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。また、第1方向の他端のセル積層体10において、第5マニホールドと第4マニホールド46とは、セル積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されている。
【0101】
図14は、第2実施形態による第5マニホールド48の構成を示す模式図である。図14は、第5マニホールド48を第2マニホールド42が設けられるセル積層体10側から水平に見た形状を示す模式図である。
【0102】
第5マニホールド48は、燃料極マニホールドを備える。尚、第2実施形態による第5マニホールド48には、冷却水マニホールドは設けられていない。第5マニホールド48の燃料極マニホールドは、ガス流路部48eを備える。
【0103】
ガス流路部48eの形状は、第1実施形態による図8(c)におけるガス流路部48aの形状と同様でよい。
【0104】
図13に示すように、ガス流路部48eは、第1流路部48fと、第2流路部48gと、を備える。
【0105】
第1流路部48fは、セル積層体10内の第3領域と、隣接するセル積層体10内の第3領域と、の間を連通する。より詳細には、第1流路部48fは、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第3領域と、隣接するセル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第3領域と、の間を連通する。
【0106】
第2流路部48gは、セル積層体10内の第4領域と、隣接する前記セル積層体内の第4領域と、の間を連通する。より詳細には、第2流路部48gは、セル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第4領域と、隣接するセル積層体10内の燃料極ガス流路溝140bの第4領域と、の間を連通する。尚、第1流路部48fと第2流路部48gとの間には、仕切りが設けられている。
【0107】
従って、第2実施形態では、第1実施形態における酸化剤ガスと燃料極ガスとの関係がほぼ逆になっている。また、第2実施形態による第3領域および第4領域は、それぞれ、第1実施形態による第1領域および第2領域に対応する。
【0108】
尚、図13に示す例では、第1流路部48fの開口面積は、第2流路部48gの開口面積よりも大きい。これにより、燃料極における燃料極反応の反応効率は、燃料極流路内でより均一化される。しかし、これに限られず、第1流路部48fの開口面積は、第2流路部48gの開口面積と略同じであってもよい。
【0109】
第2実施形態による燃料電池1のその他の構成は、第1実施形態による燃料電池1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0110】
第2実施形態による燃料電池1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0112】
1 燃料電池、10 セル積層体、10a 燃料電池セル、12 電解質膜、14 燃料極流路板、140b 燃料極ガス流路溝、16 酸化剤極流路板、160a 酸化剤ガス流路溝、160b 冷却水流路溝、300 端子、40 第1マニホールド、42 第2マニホールド、44 第3マニホールド、46 第4マニホールド、48 第5マニホールド、401 電極接続部、402 正極接続部、403 負極接続部、S1 第1側面、S2 第2側面
図1
図2
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図14