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特許7402122給電制御システム、給電制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】給電制御システム、給電制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20231213BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20231213BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20231213BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20231213BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20231213BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231213BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20231213BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/249
H01M8/043
H01M8/04694
H01M8/04664
H01M8/04313
B60L50/70
B60L58/30
H01M8/10 101
H01M8/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020097578
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021190391
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】樽家 憲司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大士
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-043520(JP,A)
【文献】特開2004-327120(JP,A)
【文献】特開2007-122930(JP,A)
【文献】特開2020-061229(JP,A)
【文献】特開2019-178731(JP,A)
【文献】特開2015-138760(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038061(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/168398(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/036765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得する状態取得部と、
前記電動装置からの要求電力量を取得する電力取得部と、
前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記電力取得部により取得された要求電力量を満たすように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する発電制御部と、を備え、
前記発電制御部は、前記複数の燃料電池システムごとに、時間経過に伴う劣化度合の推移から劣化の進行状況を取得し、取得した劣化の進行状況を前記燃料電池システムごとに他の燃料電池システムと比較し、劣化の進行が最も遅い燃料電池システムから優先的に発電させる、
電制御システム。
【請求項2】
前記状態取得部は、前記複数の燃料電池システムのそれぞれの総発電時間、発電状況ごとの発電時間、起動回数、および停止回数のうち、少なくとも一つに基づいて前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合を取得する、
請求項1に記載の給電制御システム。
【請求項3】
前記発電制御部は、前記複数の燃料電池システムのうち、前記劣化度合が小さい燃料電池システムを優先的に発電させる、
請求項2に記載の給電制御システム。
【請求項4】
前記発電制御部は、前記要求電力量と、前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合または発電効率のうち一方または双方とに基づいて、発電させる燃料電池システムの数および燃料電池システムごとの発電量を決定する、
請求項2に記載の給電制御システム。
【請求項5】
前記発電制御部は、前記要求電力量に基づいて、前記複数の燃料電池システムの劣化度合、前記総発電時間、前記起動回数、または前記停止回数の差が小さくなるように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムを発電させる、
請求項2に記載の給電制御システム。
【請求項6】
前記発電制御部は、前記要求電力量に基づいて発電させる燃料電池システムの数を増加させる場合に、発電中の燃料電池システムの発電量を、燃料電池システムの数を増加させる基準となる発電量よりも超過させて発電させる、
請求項1に記載の給電制御システム。
【請求項7】
前記電動装置は、移動体である、
請求項1からのうち何れか1項に記載の給電制御システム。
【請求項8】
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得する状態取得部と、
前記電動装置からの要求電力量を取得する電力取得部と、
前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記電力取得部により取得された要求電力量を満たすように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する発電制御部と、を備え、
前記発電制御部は、前記要求電力量に基づいて発電させる燃料電池システムの数を増加させる場合に、発電中の燃料電池システムの発電量を、燃料電池システムの数を増加させる基準となる発電量よりも超過させて発電させる、
電制御システム。
【請求項9】
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得する状態取得部と、
前記電動装置からの要求電力量を取得する電力取得部と、
前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記電力取得部により取得された要求電力量を満たすように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する発電制御部と、を備え、
前記状態取得部は、前記複数の燃料電池システムのそれぞれの発電状況ごとの発電時間に基づいて前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合を取得する、
電制御システム。
【請求項10】
前記発電状況は、前記燃料電池システムの温度と、要求電力の範囲、負荷のジャンル、および発電時の燃料電池システムの数のうち少なくとも一つで区別される負荷領域とに関する状況を含む、
請求項9に記載の給電制御システム。
【請求項11】
コンピュータが、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得し、
前記電動装置からの要求電力量を取得し、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御し、
前記複数の燃料電池システムごとに、時間経過に伴う劣化度合の推移から劣化の進行状況を取得し、取得した劣化の進行状況を前記燃料電池システムごとに他の燃料電池システムと比較し、劣化の進行が最も遅い燃料電池システムから優先的に発電させる、
給電制御方法。
【請求項12】
コンピュータが、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得し、
前記電動装置からの要求電力量を取得し、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御し、
前記要求電力量に基づいて発電させる燃料電池システムの数を増加させる場合に、発電中の燃料電池システムの発電量を、燃料電池システムの数を増加させる基準となる発電量よりも超過させて発電させる、
給電制御方法。
【請求項13】
コンピュータが、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得し、
前記電動装置からの要求電力量を取得し、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御し、
前記複数の燃料電池システムのそれぞれの発電状況ごとの発電時間に基づいて前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合を取得する、
給電制御方法。
【請求項14】
コンピュータに、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得させ、
前記電動装置からの要求電力量を取得させ、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御させ、
前記複数の燃料電池システムごとに、時間経過に伴う劣化度合の推移から劣化の進行状況を取得させ、取得された劣化の進行状況を前記燃料電池システムごとに他の燃料電池システムと比較させ、劣化の進行が最も遅い燃料電池システムから優先的に発電させる、
プログラム。
【請求項15】
コンピュータに、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得させ、
前記電動装置からの要求電力量を取得させ、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御させ、
前記要求電力量に基づいて発電させる燃料電池システムの数を増加させる場合に、発電中の燃料電池システムの発電量を、燃料電池システムの数を増加させる基準となる発電量よりも超過させて発電させる、
プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得させ、
前記電動装置からの要求電力量を取得させ、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御させ、
前記複数の燃料電池システムのそれぞれの発電状況ごとの発電時間に基づいて前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合を取得させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電制御システム、給電制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された燃料電池システムに関する技術として、アクセル踏込量、二次電池の温度、蓄電量に基づいて算出された要求電力に基づいて燃料電池システムの発電を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-103460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両に複数の燃料電池システムが搭載された場合の燃料電池システムによる給電制御については考慮されていなかった。したがって、制御状態によっては、燃料電池システム全体の給電効率が悪化する場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、燃料電池システムのシステム効率を、より向上させることができる給電制御システム、給電制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る給電制御システム、給電制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る給電制御システムは、電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得する状態取得部と、前記電動装置からの要求電力量を取得する電力取得部と、前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記電力取得部により取得された要求電力量を満たすように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する発電制御部と、を備える給電制御システムである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記状態取得部は、前記複数の燃料電池システムのそれぞれの総発電時間、発電状況ごとの発電時間、起動回数、および停止回数のうち、少なくとも一つに基づいて前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合を取得するものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記発電制御部は、前記複数の燃料電池システムのうち、前記劣化度合が小さい燃料電池システムを優先的に発電させるものである。
【0009】
(4):上記(2)の態様において、前記発電制御部は、前記発電制御部は、前記複数の燃料電池システムのうち、前記劣化度合に基づく劣化の進行が遅い燃料電池システムを優先的に発電させるものである。
【0010】
(5):上記(2)の態様において、前記発電制御部は、前記要求電力量と、前記状態取得部により取得された前記複数の燃料電池システムごとの劣化度合または発電効率のうち一方または双方とに基づいて、発電させる燃料電池システムの数および燃料電池システムごとの発電量を決定するものである。
【0011】
(6):上記(2)の態様において、前記発電制御部は、前記要求電力量に基づいて、前記複数の燃料電池システムの劣化度合、前記総発電時間、前記起動回数、または前記停止回数の差が小さくなるように、前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムを発電させるものである。
【0012】
(7):上記(1)の態様において、前記発電制御部は、前記要求電力量に基づいて発電させる燃料電池システムの数を増加させる場合に、発電中の燃料電池システムの発電量を、燃料電池システムの数を増加させる基準となる発電量よりも超過させて発電させるものである。
【0013】
(8):上記(1)~(7)のうち何れか一つの態様において、前記電動装置は、移動体である。
【0014】
(9):この発明の他の態様に係る給電制御方法は、コンピュータが、電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得し、前記電動装置からの要求電力量を取得し、取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する、給電制御方法である。
【0015】
(10):この発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得させ、前記電動装置からの要求電力量を取得させ、取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
上記(1)~(10)の態様によれば、燃料電池システムのシステム効率を、より向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の給電制御システムが搭載された電動車両の構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係るFCシステム200の構成の一例を示す図である。
図3】制御装置80の構成の一例を示す図である。
図4】統括ECU100の構成の一例を示す図である。
図5】状態情報152の内容について説明するための図である。
図6】劣化情報154の内容について説明するための図である。
図7】FCシステムの数と発電効率との関係を示す図である。
図8】要求電力に基づいてFCシステムの数およびFCシステムごとの発電量が決定されることについて説明するための図である。
図9】劣化の進行状況に基づいて発電させるFCシステムの優先順位が変化することについて説明するための図である。
図10】実施形態に係る給電制御システムのコンピュータにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の給電制御システム、給電制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。実施形態に係る給電制御システムは、例えば、電力により作動する電動装置に搭載される。電動装置には、例えば、電動車両や鉄道車両、飛行体(例えば、航空機、ドローン等)、船舶、ロボット等の移動体が含まれる。また、電動装置には、定置型の装置(例えば、燃料電池システム)が含まれてもよい。以下では、給電制御システムが、電動車両に搭載されている例について説明する。電動車両は、例えば、燃料電池において発電された電力を走行用の電力または車載機器の動作用の電力として用いる燃料電池車両である。電動車両は、二輪や三輪、四輪等の自動車である。また、電動車両は、例えば、後述する燃料電池システムを複数搭載することが可能なバスやトラック等の大型車両であってもよい。
【0019】
[電動車両]
図1は、実施形態の給電制御システムが搭載された電動車両の構成の一例を示す図である。図1に示すように、電動車両10は、例えば、モータ12と、駆動輪14と、ブレーキ装置16と、車両センサ20と、変換器32と、BTVCU(Battery Voltage Control Unit)34と、バッテリシステム(蓄電装置の一例)40と、表示装置50と、制御装置80と、統括ECU(Electronic Control Unit)100と、記憶部150と、一以上FC(Fuel Cell)システム200とを備える。図1の例では、複数のFCシステム200A、200B、200C、…が示されているが、それぞれを個別に区別しない場合には、単に「FCシステム200」と称する場合がある。制御装置80および統括ECU100を組み合わせたものが「給電制御システム」の一例である。FCシステム200は、「燃料電池システム」の一例である。
【0020】
モータ12は、例えば、三相交流電動機である。モータ12のロータは、駆動輪14に連結される。モータ12は、FCシステム200により発電された電力とバッテリシステム40により蓄電された電力とのうち少なくとも一方を用いて、電動車両10の走行に用いられる駆動力を駆動輪14に出力する。また、モータ12は、車両の減速時に車両の運動エネルギーを用いて発電する。
【0021】
ブレーキ装置16は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータとを備える。ブレーキ装置16は、ブレーキペダルの操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置16は、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0022】
車両センサ20は、例えば、アクセル開度センサと、車速センサと、ブレーキ踏量センサとを備える。アクセル開度センサは、運転者による加速指示を受け付ける操作子の一例であるアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作量を検出し、アクセル開度として制御装置80に出力する。車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサと、速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して車両の速度(車速)を導出し、制御装置80および表示装置50に出力する。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作量を検出し、ブレーキ踏量として制御装置80に出力する。
【0023】
また、車両センサ20には、電動車両10の加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、電動車両10の向きを検出する方位センサ等が含まれてもよい。また、車両センサ20には、電動車両10の位置を検出する位置センサが含まれてもよい。位置センサは、例えば、電動車両10に搭載されたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や、GPS(Global Positioning System)装置から電動車両10の位置情報を取得する。また、車両センサ20には、FCシステム200の温度を測定する温度センサが含まれてもよい。車両センサ20により検出された各種情報は、制御装置80に出力される。
【0024】
変換器32は、例えば、AC-DC変換器である。変換器32の直流側端子は、直流リンクDLに接続されている。直流リンクDLには、BTVCU34を介してバッテリシステム40が接続されている。変換器32は、モータ12により発電された交流電圧を直流電圧に変換して直流リンクDLに出力する。
【0025】
BTVCU34は、例えば、昇圧型のDC―DCコンバータである。BTVCU34は、バッテリシステム40から供給される直流電圧を昇圧して直流リンクDLに出力する。また、BTVCU34は、モータ12から供給される回生電圧、または、FCシステム200から供給されるFC電圧をバッテリシステム40に出力する。
【0026】
バッテリシステム40は、例えば、バッテリ42と、バッテリセンサ44とを備える。バッテリ42は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池である。バッテリ42は、例えば、モータ12またはFCシステム200において発電された電力を蓄え、電動車両10の走行のため、または車載機器を動作させるための放電を行う。
【0027】
バッテリセンサ44は、例えば、電流センサ、電圧センサ、温度センサを備える。バッテリセンサ44は、例えば、バッテリ42の電流値、電圧値、温度を検出する。バッテリセンサ44は、検出した電流値、電圧値、温度等を制御装置80に出力する。
【0028】
また、バッテリシステム40は、例えば外部の充電設備と接続して充放電装置から供給される電力をバッテリ42に充電させてもよい。
【0029】
表示装置50は、例えば、表示部52と、表示制御部54と、を備える。表示部52は、例えば、メータ内またはインストルメントパネルに設けられた表示部、またはヘッドアップディスプレイ(HUD)である。表示部52は、表示制御部54の制御に応じた各種情報を表示する。表示制御部54は、バッテリシステム40により出力される情報やFCシステム200により出力される情報に基づく画像を表示部52に表示させる。また、表示制御部54は、車両センサ20や制御装置80により出力される情報に基づく画像を表示部52に表示させる。また、表示制御部54は、車両センサ20により出力される車速等を示す画像を表示部52に表示させる。また、表示装置50は、音声を出力するスピーカを備え、表示部52に表示された画像に対応付けられた音声または警報等を出力してもよい。
【0030】
制御装置80は、電動車両10における走行および車載機器の動作等を制御する。例えば、制御装置80は、電動車両10からの要求電力に応じてバッテリシステム40に充電された電力やFCシステム200で発電した電力の供給等を制御する。電動車両10からの要求電力とは、例えば、電動車両10の負荷が駆動または動作するために要求する総負荷電力である。負荷には、例えば、モータ12やブレーキ装置16、車両センサ20、表示装置50、その他の車載機器等の補機が含まれる。また、制御装置80は、電動車両10の走行制御等を行ってもよい。制御装置80の機能の詳細については後述する。
【0031】
統括ECU100は、例えば、制御装置80からの制御情報等に基づいて、複数のFCシステム(FCシステム200A、200B、200C、…)のそれぞれの発電量を統括的に制御する。統括ECU100の機能の詳細については後述する。
【0032】
記憶部150は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部150には、例えば、状態情報152、劣化情報154、プログラム、およびその他の各種情報が記憶される。状態情報152および劣化情報154の内容については、後述する。
【0033】
FCシステム200は、例えば、燃料電池を含む。燃料電池は、例えば、アノードの燃料とカソードの酸化剤とが反応することによって発電する電池である。燃料電池は、例えば、燃料ガスに燃料として含まれる水素と、空気に酸化剤として含まれる酸素とが反応することによって発電する。FCシステム200は、統括ECU100の制御により、指示された発電量の発電を行い、発電した電力を、例えば、変換器32とBTVCU34との間の直流リンクDLに出力して給電を行う。これによって、FCシステム200により供給される電力は、制御装置80等の制御により、変換器32を介してモータ12に供給されたり、BTVCU34を介してバッテリシステム40に供給され、バッテリ42に蓄電されたり、他の補機等に必要な電力が供給されたりする。
【0034】
[FCシステム]
ここで、FCシステム200について具体的に説明する。図2は、実施形態に係るFCシステム200の構成の一例を示す図である。図2に示す構成は、電動車両10に搭載される複数のFCシステム200のそれぞれに適用可能である。なお、本実施形態に係るFCシステム200については、以下の構成に限定されるものではなく、例えばアノードとカソードによって発電するシステム構成であれば如何なる構成であってもよい。図2に示すFCシステム200は、例えば、FCスタック210と、コンプレッサ214と、封止入口弁216と、加湿器218と、気液分離器220と、排気循環ポンプ(P)222と、水素タンク226と、水素供給弁228と、水素循環部230と、気液分離器232と、温度センサ(T)240と、コンタクタ242と、FCVCU(Fuel Cell Voltage Control Unit)244と、FC制御装置246と、FC冷却システム280とを備える。
【0035】
FCスタック210は、複数の燃料電池セルが積層された積層体(図示略)と、この積層体を積層方向の両側から挟み込む一対のエンドプレート(図示略)とを備える。燃料電池セルは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、この膜電極接合体を接合方向の両側から挟み込む一対のセパレータとを備える。膜電極接合体は、例えば、アノード触媒およびガス拡散層からなるアノード210Aと、カソード触媒およびガス拡散層からなるカソード210Bと、アノード210Aおよびカソード210Bによって厚さ方向の両側から挟み込まれた陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜210Cとを備える。
【0036】
アノード210Aには、燃料として水素を含む燃料ガスが水素タンク226から供給される。カソード210Bには、酸化剤として酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がコンプレッサ214から供給される。アノード210Aに供給された水素は、アノード触媒上で触媒反応によりイオン化され、水素イオンは、適度に加湿された固体高分子電解質膜210Cを介してカソード210Bへと移動する。水素イオンの移動に伴って発生する電子は直流電流として外部回路(FCVCU244等)に取り出し可能である。アノード210Aからカソード210Bのカソード触媒上へと移動した水素イオンは、カソード210Bに供給された酸素と、カソード触媒上の電子と反応して、水を生成する。
【0037】
コンプレッサ214は、FC制御装置246により駆動制御されるモータ等を備え、このモータの駆動力によって外部から空気を取り込んで圧縮し、圧縮後の空気をカソード210Bに接続された酸化剤ガス供給路250に送り込むことで、燃料電池に酸化ガスを圧送する。
【0038】
封止入口弁216は、コンプレッサ214と、FCスタック210のカソード210Bに空気を供給可能なカソード供給口212aとを接続する酸化剤ガス供給路250に設けられ、FC制御装置246の制御によって開閉される。
【0039】
加湿器218は、コンプレッサ214から酸化剤ガス供給路250に送り込まれた空気を加湿する。例えば、加湿器218は、例えば中空糸膜等の水透過膜を備え、コンプレッサ214からの空気を、水透過膜を介して接触させることで水分を空気に添加して空気を加湿する。
【0040】
気液分離器220は、カソード210Bで消費されることなく、カソード排出口212bから酸化剤ガス排出路252に排出されたカソード排ガスと液水とをカソードの排気路262を介して大気中に排出させる。また、気液分離器220は、酸化剤ガス排出路252に排出されたカソード排ガスと液水とを分離し、分離されたカソード排ガスのみを排気再循環路254に流入させてもよい。
【0041】
排気循環ポンプ222は、排気再循環路254に設けられ、気液分離器220から排気再循環路254に流入したカソード排ガスを、封止入口弁216からカソード供給口212aに向かい酸化剤ガス供給路250を流通する空気と混合し、カソード210Bに再び供給する。
【0042】
水素タンク226は、水素を圧縮した状態で貯留する。水素供給弁228は、水素タンク226と、FCスタック210のアノード210Aに水素を供給可能なアノード供給口212cとを接続する燃料ガス供給路256に設けられている。水素供給弁228は、FC制御装置246の制御によって開弁した場合に、水素タンク226に貯留された水素を燃料ガス供給路256に供給する。
【0043】
水素循環部230は、例えば、燃料電池に燃料ガスを循環供給するポンプである。水素循環部230は、例えば、アノード210Aで消費されることなく、アノード排出口212dから燃料ガス排出路258に排出されたアノード排ガスを、気液分離器232に流入する燃料ガス供給路256に循環させる。
【0044】
気液分離器232は、水素循環部230の作用により燃料ガス排出路258から燃料ガス供給路256に循環するアノード排ガスと液水とを分離する。気液分離器232は、液水から分離されたアノード排ガスを、FCスタック210のアノード供給口212cに供給する。また、気液分離器232に排出された液水はドレイン管264を介して大気中に排出される。
【0045】
温度センサ240は、FCスタック210のアノード210Aおよびカソード210Bの温度を検出し、検出信号(温度情報)をFC制御装置246に出力する。
【0046】
コンタクタ242は、FCスタック210のアノード210Aおよびカソード210Bと、FCVCU244との間に設けられている。コンタクタ242は、FC制御装置246からの制御に基づいて、FCスタック210とFCVCU244との間を電気的に接続させ、または遮断する。
【0047】
FCVCU244は、例えば、昇圧型のDC―DCコンバータである。FCVCU244は、コンタクタ242を介したFCスタック210のアノード210Aおよびカソード210Bと電気負荷との間に配置されている。FCVCU244は、電気負荷側に接続された出力端子248の電圧を、FC制御装置246によって決定された目標電圧に昇圧する。FCVCU244は、例えば、FCスタック210から出力された電圧を目標電圧に昇圧して出力端子248に出力する。
【0048】
FC制御装置246は、統括ECU100による発電制御にしたがって、FCシステム200における発電の開始や終了、発電量等を制御する。また、FC制御装置246は、FC冷却システム280を用いてFCシステム200の温度調整に関する制御を行う。FC制御装置246は、例えばFC-ECUといった制御装置に置き換えられてもよい。またFC制御装置246は、統括ECU100や制御装置80と連携して電動車両10の給電制御を行ってもよい。
【0049】
FC冷却システム280は、FC制御装置246による制御にしたがって、例えば、温度センサ240により検出されたFCスタック210の温度が閾値以上である場合に、FCシステム200を冷却する。例えば、FC冷却システム280は、FCスタック210内に設けられた流路に冷媒を巡回させてFCスタック210の熱を排出することで、FCスタック210の温度を冷却する。また、FC冷却システム280は、FCシステム200が発電中である場合に、温度センサ240による温度が所定温度範囲で維持されるように、FCスタック210を加熱または冷却させる制御を行ってもよい。
【0050】
[制御装置]
図3は、制御装置80の構成の一例を示す図である。制御装置80は、例えば、モータ制御部82と、ブレーキ制御部84と、電力制御部86と、走行制御部88とを備える。モータ制御部82、ブレーキ制御部84、電力制御部86、および走行制御部88は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め電動車両10のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで電動車両10のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。上記の記憶装置は、例えば記憶部150である。
【0051】
モータ制御部82は、車両センサ20の出力に基づいて、モータ12に要求される駆動力を算出し、算出した駆動力を出力させるようにモータ12を制御する。
【0052】
ブレーキ制御部84は、車両センサ20の出力に基づいて、ブレーキ装置16に要求される制動力を算出し、算出した制動力を出力させるようにブレーキ装置16を制御する。
【0053】
電力制御部86は、車両センサ20の出力に基づいて、バッテリシステム40とFCシステム200に要求される要求電力量を算出する。例えば、電力制御部86は、アクセル開度と車速に基づいてモータ12が出力すべきトルクを算出し、トルクとモータ12の回転数から求められる駆動軸負荷電力と、補機等が要求する電力とを合計して要求電力量を算出する。また、電力制御部86は、バッテリシステム40の充電状況(蓄電状況)を管理する。例えば、電力制御部86は、バッテリセンサ44の出力に基づいて、バッテリ42のSOC(State Of Charge;バッテリ充電率)を算出する。電力制御部86は、例えば、バッテリ42のSOCが所定値未満である場合には、FCシステム200による発電によってバッテリ42を充電させるための制御を実行したり、外部の充電設備からの電力供給による充電を乗員に促す情報を表示装置50に出力させる。また、電力制御部86は、バッテリ42のSOCが所定値より大きい場合に充電制御を停止したり、FCシステム200で発電された余剰電力を補機等で消費させるための制御を行ってもよい。
【0054】
走行制御部88は、例えば車両センサ20により取得される情報に基づいて、電動車両10に対する運転制御を実行する。また、走行制御部88は、車両センサ20により取得される情報に加えて、地図情報や監視ユニット(不図示)から取得される情報に基づいて電動車両10の運転制御を実行してもよい。監視ユニットとは、例えば、電動車両10の外部の空間を撮像するカメラや、電動車両10の外部を検知範囲とするレーダあるいはLIDAR(Light Detection and Ranging)、これらの出力に基づいてセンサフュージョン処理を行う物体認識装置等を含む。監視ユニットは、電動車両10の周辺に存在する物体の種類(特に、車両、歩行者、および自転車)を推定し、その位置や速度の情報と共に走行制御部88に出力する。運転制御とは、例えば、電動車両10の操舵または加減速のうち一方または双方を制御することで、電動車両10を走行させるものである。運転制御には、例えば、ADAS(Advanced Driver Assistance System)等の運転支援制御が含まれる。ADASには、例えば、LKAS(Lane Keeping Assistance System)や、ACC(Adaptive Cruise Control System)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)等が含まれる。
【0055】
[統括ECU]
図4は、統括ECU100の構成の一例を示す図である。統括ECU100は、例えば、状態取得部102と、要求電力取得部104と、劣化度合判定部106と、発電制御部108とを備える。状態取得部102、要求電力取得部104、劣化度合判定部106、および発電制御部108は、それぞれ、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め電動車両10のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで電動車両10のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。上記の記憶装置は、例えば記憶部150である。要求電力取得部104は、「電力取得部」の一例である。
【0056】
状態取得部102は、電動車両10に搭載された複数のFCシステム200のそれぞれの状態を所定のタイミングまたは周期で取得する。FCシステム200の状態には、例えば、総発電時間、発電状況ごとの発電時間、およびFCシステムの起動回数(または停止回数)のうち、少なくとも一つが含まれる。状態取得部102は、取得した各FCシステムの状態を記憶部150の状態情報152に格納する。
【0057】
図5は、状態情報152の内容について説明するための図である。状態情報152は、電動車両10に搭載されたFCシステムごとに、総発電時間、発電状況ごとの発電時間、および起動回数(または停止回数)が対応付けられた情報である。発電状況A、B…は、それぞれFCシステムの温度や負荷領域等が異なることを示している。負荷領域とは、例えば、要求電力の範囲、負荷のジャンル(例えば、走行系、車載機器等)、発電時のFCシステムの数等で区別される領域である。
【0058】
要求電力取得部104は、電動車両10からの要求電力量を取得する。例えば、要求電力取得部104は、制御装置80により複数のFCシステム200で発電させる要求電力量(つまり、電動車両全体で必要な要求電力量のうちバッテリシステム40が供給する電力量を除いた電力量)を取得する。
【0059】
劣化度合判定部106は、複数のFCシステムのそれぞれの総発電時間、発電状況ごとの発電時間、起動回数、および停止回数のうち、少なくとも一つに基づいて複数のFCシステムごとの劣化度合を判定する。例えば、劣化度合判定部106は、FCシステムごとの劣化度合を所定のタイミングまたは周期で判定し、判定結果を記憶部150の劣化情報154に格納する。
【0060】
図6は、劣化情報154の内容について説明するための図である。劣化情報154は、電動車両10に搭載されたFCシステムごとに、判定時刻における劣化度合が対応付けられた情報である。また、図6の例では、時刻T1、T2、T3の順に時間が進行しているものとする。また、図6の例では、数値が大きいほど、劣化度合が大きいものとする。劣化度合は、数値に代えて文字(例えば、A、B、C…)等の度合を表す指標値でもよい。
【0061】
劣化度合判定部106は、例えば、総発電時間が大きいほど劣化度合を大きくする。なお、発電時間における発電状況に応じて劣化度合を大きくする重みを変更してもよい。また、劣化度合判定部106は、上述した判定に加えて(または代えて)、FCシステム200の起動回数や停止回数が多いほど劣化度合を大きくしてもよい。劣化度合判定部106は、総発電時間や起動回数(または停止回数)に、劣化度合が対応付けられたテーブルを予め設けておき、そのテーブルを用いて総発電時間や起動回数に対応付けられた劣化度合を判定してもよい。また、劣化度合判定部106は、総発電時間や起動回数(または停止回数)を入力値し、劣化度合を出力値とする関数または学習済みモデルを予め設けておき、その関数や学習済みモデルを用いて、劣化度合を判定してもよい。
【0062】
発電制御部108は、要求電力取得部104により取得された電動車両10からの要求電力を満たすように、複数のFCシステムのうち一以上のFCシステムの発電を制御する。例えば、発電制御部108は、複数のFCシステムのシステム効率に基づいて、複数のFCシステムのうち一以上のFCシステムの発電を制御する。システム効率とは、例えば、FCシステム全体の寿命に基づく効率や、システムごとの発電(または給電)に基づく効率、他の予め設定された指標値に基づく効率等である。
【0063】
図7は、FCシステムの数と発電効率との関係を示す図である。図7の例において、縦軸は発電効率[%]を示し、横軸は要求電力[kW]を示している。なお、以下では、1つのFCシステムが所定時間に100[kW]発電したときにそのFCシステムが最適効率であるものとする。なお、最適効率の発電量は、例えば、FCシステムの種類や性能、規模に応じて任意に設定される。例えば、要求電力が100[kW]である場合に、1つのFCシステム(例えば、FCシステム200A)のみを発電させると、図7の曲線L1に示すようにFCシステム200Aが最適効率(効率MAX)である効率E1[%]にて発電を行うことになる。
【0064】
一方、複数のFCシステムを用いた場合に、単純にそれぞれのFCシステムを同じまたは近似した発電量で発電させてしまうと、それぞれの発電量の合計が100[kW]となるように制御した場合に、図7の曲線L2に示すようにそれぞれのFCシステムの効率がE1よりも小さいE2[%]となり、システム効率が悪化する。そのため、発電制御部108は、要求電力に応じて複数のFCシステムが全体として最適な効率となるように、それぞれの状態や劣化度合等に基づいて、発電させるFCシステムの数や発電量(負荷への供給量)を決定する。
【0065】
例えば、発電制御部108は、複数のFCシステムから、発電を制御するFCシステムを決定する場合に、それぞれのFCシステムの劣化度合に基づいて優先順位を決定し、決定した優先順位の高いFCシステムから発電させるように制御する。この場合、発電制御部108は、記憶部150に記憶された劣化情報154を参照し、複数のFCシステムのうち、劣化度合が小さいFCシステムを優先的に発電させる。これにより、より効率的に要求電力を満たす電力量を発電させることができる。
【0066】
また、発電制御部108は、例えば、記憶部150に記憶された劣化情報154を参照し、FCシステムごとの時間経過に伴う劣化の進行状況に基づき、劣化の進行が遅いシステムを優先的に発電させてもよい。例えば、劣化情報154に含まれる時刻ごとの劣化度合の推移から劣化の進行状況(例えば、進行が他のFCシステムと比較して早いか遅いか等の状況)を取得し、他のFCシステムと比較して劣化の進行が最も遅いFCシステムを優先的に発電させる。これにより、FCシステム全体の寿命の延ばすことができる。なお、FCシステム全体の寿命を延ばすことは、システム効率を向上させることの一例である。
【0067】
また、発電制御部108は、複数のFCシステムのそれぞれの劣化度合の差が小さくなるように発電させるFCシステムを制御してもよい。これにより、他のFCシステムとの劣化度合の差を小さくして劣化度合を均一に近づけることができるため、結果としてFCシステム全体の寿命を延ばすことができる。また、発電制御部108は、複数のFCシステムのそれぞれの劣化度合の比較結果(例えば、差)に基づいて発電を制御するFCシステムを決定してもよい。
【0068】
また、発電制御部108は、上記の制御に代えて、複数のFCシステムのそれぞれの総発電時間の差、起動回数の差、または停止回数の差が小さくなるように発電させるFCシステムを制御してもよい。この場合、発電制御部108は、状態情報152を参照し、総発電時間が他のFCシステムよりも少ないもの、または起動回数や停止回数が他のFCシステムよりも少ないものを優先的に発電させる。これにより、FCシステム全体の寿命の延ばすことができる。
【0069】
また、発電制御部108は、要求電力量と、状態取得部102により取得された複数のFCシステムごとの劣化度合または発電効率のうち一方または双方とに基づいて、発電させるFCシステムの数およびFCシステムごとの発電量を決定してもよい。
【0070】
図8は、要求電力に基づいてFCシステムの数およびFCシステムごとの発電量が決定されることについて説明するための図である。図8の例において、縦軸は要求電力を示し、横軸はFCシステム数を示している。また、図8の例では、電動車両10に3つのFCシステム200A、200B、200Cが搭載されているものとして説明する。
【0071】
発電制御部108は、要求電力の大きさに基づいて、電動車両10に搭載された複数のFCシステム200A、200B、200Cのうち、一以上のFCシステムの発電を制御する。例えば、発電制御部108は、発電中のFCシステムが最適効率に近づいた状態で発電できるように、各FCシステムの発電量を調整する。具体的には、発電制御部108は、FCシステムの発電量が100[kW](最適効率)に近づくように制御する。したがって、要求電力取得部104により取得された要求電力が100[kW]未満である場合は、一つのFCシステムで発電させ、100以上で200未満である場合は、二つのFCシステムで発電させ、200[kW]以上の場合は、3つのFCシステムで発電させる。
【0072】
なお、発電制御部108は、電動車両10に搭載されたFCシステムの数に応じて最適効率に対応させた要求電力の上限値を設定してもよい。図8の例では、要求電力の上限値として400[kW]が設定されている。発電量の上限値を設定することで、FCシステムの高負荷の発電を抑制することができ、システム劣化を抑制することができる。
【0073】
また、発電制御部108は、発電させるFCシステムの数を増加させる場合に、発電中のFCシステムの発電量を、予め設定された最適効率の発電量(100[kW])よりも所定量を加算した超過電力量の発電を行わせてもよい。最適効率の発電量は、燃料電池システムの数を増加または減少させる基準となる発電量の一例である。つまり、発電制御部108は、発電中のFCシステムの高負荷時の効率悪化と増加したFCシステムの低負荷時の効率向上とに基づいて、システム全体でより最適な効率となるように発電させるFCシステム数の切り替えを行う。これにより、増加したFCシステムの発電量を、ある程度の電力量から発電させることができるため、増加したFCシステムの発電効率が悪化することを抑制することができる。
【0074】
また、要求電力の大きさに伴って、発電させるFCシステムの数を増加させた場合、発電制御部108は、増加させる前から発電していたFCシステムの発電量が最適効率の発電量(100[kW])に近づいた状態で維持させる。
【0075】
図8の例において、発電制御部108は、要求電力が最適効率の電力量である100[kW]未満である場合には、FCシステム200Aのみを用いて発電を行う。また、要求電力が100[kW]以上である場合には、所定の超過電力量以上となるまでは、FCシステム200Aによる発電を継続させ、超過電力量以上になった場合に、FCシステム200Aに加えてFCシステム200Bによる発電を行う。FCシステム200Bによる発電が開始された場合、発電制御部108は、FCシステム200Aの発電量が最適効率である100[kW]に近づくように制御し、FCシステム200Bの発電量を増加させる。これにより、FCシステム200Aの発電効率を最適な状態で継続させることができると共に、二つのFCシステム200A、200Bを最適効率から離れた同じ発電量で発電させるより、制御負担を抑制することができる。また、FCシステム200Aの発電量を大きく変動させることによる劣化も抑制することができる。なお、所定の超過電力量は、例えば、FCシステム200Bが安定して発電することが可能な最小発電量に設定してもよい。これにより、FCシステム200Bの起動前後でFCシステムの出力変動を抑制することができる。
【0076】
また、要求電力が200[kW]以上である場合、発電制御部108は、すぐにFC200Cを起動させずに、FCシステム200AおよびFCシステム200Bの合計発電量が所定の超過電力量となるまで、FCシステム200AおよびFCシステム200Bのそれぞれの電力量を最適効率である電力量から増加させる。その後、FCシステム200Cによる発電を開始する。発電制御部108は、FCシステム200Cによる発電の開始を開始すると、FCシステム200Aおよび200Bの発電量を100[kW]に近づけるように制御し、FCシステム200Cのみを増加させる。また、要求電力が300[kW]を超えた場合、要求電力の上限値400[kW]までは、FCシステム200A~200Cのそれぞれを増加させる。
【0077】
また、発電制御部108は、FCシステムごとの劣化の進行状況に基づいて発電させる発電システムを決定してもよい。図9は、劣化の進行状況に基づいて発電させるFCシステムの優先順位が変化することについて説明するための図である。図9の例では、時刻T1、T2、T3における複数のFCシステム200A~200Cの劣化度と、発電制御の関係とを示している。
【0078】
例えば、時刻T1の場面において、要求電力取得部104により低負荷(例えば、100[kW]未満の負荷)の要求電力が取得された場合、発電制御部108は、劣化情報154を参照し、FCシステム200A~200Cのうち、現時点での劣化度合が最も小さい一つのFCシステムを発電対象のFCシステムとして決定する。図9の例において、時刻T1におけるFCシステム200Aの劣化度合は「10」、FCシステム200Bの劣化度合は「20」、FCシステム200Cの劣化度合は「35」である。したがって、発電制御部108は、FCシステム200A~200Cのうち、FCシステム200Aを発電させるFCシステムとして決定し、決定したFCシステム200Aの発電量が、要求電力量を満たすように発電させる。
【0079】
例えば、時刻T2の場面において、要求電力取得部104により高負荷(例えば、100[kW]以上、且つ200[kW]未満の負荷)の要求電力が取得された場合、発電制御部108は、劣化情報154を参照し、FCシステム200A~200Cのうち、現時点での劣化度合が小さい方から二つのFCシステムを決定する。図9の例では、時刻T2時点におけるFCシステム200Aの劣化度合が「25」、FCシステム200Bの劣化度合が「30」、FCシステム200Cの劣化度合が「35」である。したがって、発電制御部108は、FCシステム200A~200Cのうち、FCシステム200Aおよび200Bを発電させるFCシステムとして決定し、FCシステム200Aおよび200Bの発電量の合計値が、要求電力量を満たすように発電制御を行う。時刻T2の時点では、既に発電流のFCシステム200Aに加えて、FCシステム200Bの発電制御が追加されることになる。したがって、発電制御部108は、FCシステム200Aの発電量を最適な発電効率に近づけた発電量となるように制御し、その発電量と要求電力量との差分電力量をFCシステム200Bに発電させるように制御する。
【0080】
また、時刻T3の場面において、要求電力取得部104により低負荷(例えば、100[kW]未満の負荷)の要求電力が取得された場合、発電制御部108は、劣化情報154を参照し、FCシステム200A~200Cのうち、現在の劣化度合が最も小さい一つのFCシステムを決定する。図9の例では、時刻T3時点におけるFCシステム200Aの劣化度合が「38」、FCシステム200Bの劣化度合が「40」、FCシステム200Cの劣化度合が「35」である。したがって、発電制御部108は、FCシステム200A~200CのうちFCシステム200Cを発電させるFCシステムとして決定し、決定したFCシステム200Cの発電量が、要求電力量を満たすように発電させる。
【0081】
このように、要求電力量に応じてFCシステムを運転させることで、燃費を向上させ全体のシステム効率を向上させることができる。また、劣化の進行度合が均一化されるように制御することで、全体のシステム寿命を延ばすことができ、システム効率(給電効率)を向上させることができる。
【0082】
[処理フロー]
以下、実施形態に係る給電制御システムのコンピュータにより実行される処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。なお、以下の処理では、主に電動車両10に搭載された複数のFCシステムによる給電制御の処理を中心として説明するものとする。図10は、実施形態に係る給電制御システムのコンピュータにより実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10の処理は、例えば、電動車両10が起動している間に、所定のタイミングまたは所定の周期で繰り返し実行される。
【0083】
図10の例において、まず、状態取得部102は、電動車両10に搭載された複数のFCシステムの状態を取得する(ステップS100)。ステップS100の処理において、状態取得部102は、取得した状態情報を状態情報152として記憶部150に記憶させてもよい。次に、要求電力取得部104は、電動車両10の負荷に供給するための要求電力量を取得したか否かを判定する(ステップS102)。要求電力量を取得したと判定された場合、劣化度合判定部106は、複数のFCシステムの状態情報に基づいて、FCシステムごとの劣化度合を判定する(ステップS104)。なお、ステップS104の処理は、ステップS100の処理後且つステップS102の処理の前に実行されてもよい。
【0084】
次に、発電制御部108は、要求電力量および劣化度合に応じて発電させるFCシステムを決定する(ステップS106)。次に、発電制御部108は、決定した発電させるFCシステムごとの発電量を決定する(ステップS108)。次に、発電制御部108は、FCシステムごとに決定された発電量で発電するように、対象のFCシステムを制御する(ステップS110)。これにより、本フローチャートの処理は終了する。また、ステップS102の処理において、要求電力量を取得していないと判定された場合、本フローチャートの処理は終了する。
【0085】
以上説明した実施形態によれば、給電制御システムにおいて、電動車両10(電動装置の一例)に搭載された複数のFCシステム200の状態を取得する状態取得部102と、電動車両10からの要求電力量を取得する要求電力取得部104と、状態取得部102により取得された複数のFCシステム200のそれぞれの状態に基づいて、要求電力取得部104により取得された要求電力量を満たすように、複数のFCシステム200のうち一以上のFCシステムの発電を制御する発電制御部108と、を備えることにより、燃料電池システムのシステム効率(発電効率、給電効率等)を、より向上させることができる。
【0086】
具体的には、実施形態は、例えば、電動装置に搭載された複数のFCシステムを結合して発電する場合に、電動装置が必要とする負荷(要求電力)に応じて、各システムのシステム効率および劣化状態に基づいて、各システムの運転の可否や発電量を制御する。これにより、結合したシステム全体として最適な効率での給電制御が可能となる。したがって、システム全体としての寿命を延ばすことができる。
【0087】
上記実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
電力により作動する電動装置に搭載された複数の燃料電池システムの状態を取得し、
前記電動装置からの要求電力量を取得し、
取得した前記複数の燃料電池システムのそれぞれの状態に基づいて、前記要求電力量を満たすように前記複数の燃料電池システムのうち一以上の燃料電池システムの発電を制御する、
ように構成されている給電制御システム。
【0088】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0089】
10…電動車両、12…モータ、14…駆動輪、16…ブレーキ装置、20…車両センサ、32…変換器、34…BTVCU、40…バッテリシステム、50…表示装置、80…制御装置、82…モータ制御部、84…ブレーキ制御部、86…電力制御部、88…走行制御部、100…統括ECU、102…状態取得部、104…要求電力取得部、106…劣化度合判定部、108…発電制御部、200…FCシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10