(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】回転子、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機、及び組立方法
(51)【国際特許分類】
H02K 16/00 20060101AFI20231213BHJP
H02K 16/02 20060101ALI20231213BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20231213BHJP
H02K 1/12 20060101ALI20231213BHJP
H02K 1/2793 20220101ALI20231213BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
H02K16/00
H02K16/02
H02K21/24 M
H02K1/12 Z
H02K1/2793
H02K15/02 K
(21)【出願番号】P 2020098327
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 洋
(72)【発明者】
【氏名】浮田 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰之
(72)【発明者】
【氏名】澤上 友貴
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 圭史
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-304539(JP,A)
【文献】特開2019-129563(JP,A)
【文献】特開2009-072009(JP,A)
【文献】特開2015-228730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090555(US,A1)
【文献】国際公開第2017/029926(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111010008(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/34
H02K 16/00-16/04
H02K 21/24
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機の回転子であって、
円盤体と、
前記円盤体の盤面周方向に間隔を空けて配置される永久磁石と、
前記永久磁石を前記円盤体に固定する支持具と、
前記盤面周方向に隣り合う前記永久磁石の間に配置される圧粉磁心と、
を備え、
前記永久磁石は、隣接する前記圧粉磁心への接触面として対磁心テーパ部を有し、
前記圧粉磁心は、隣接する前記永久磁石への接触面として対磁石テーパ部を有し、
前記永久磁石は、前記対磁心テーパ部を前記円盤体に向けた姿勢で配置され、
前記圧粉磁心は、前記対磁石テーパ部を前記対磁心テーパ部に対向させる姿勢で配置される、
回転子。
【請求項2】
前記支持具は、前記円盤体の内径側で前記永久磁石に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記永久磁石を固定する内径側支持具と、前記円盤体の外径側で前記永久磁石に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記永久磁石を固定する外径側支持具と、を有し、
前記内径側支持具は、当接する前記永久磁石への接触面として内径側対磁石傾斜部を有し、
前記外径側支持具は、当接する前記永久磁石への接触面として外径側対磁石傾斜部を有し、
前記永久磁石は、当接する前記内径側支持具への接触面として内径側対支持具傾斜部と、当接する前記外径側支持具への接触面として外径側対支持具傾斜部とを有し、
前記内径側支持具は、前記内径側対磁石傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、
前記外径側支持具は、前記外径側対磁石傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、
前記永久磁石は、前記内径側対支持具傾斜部を前記内径側対磁石傾斜部に対向させ、前記外径側対支持具傾斜部を前記外径側対磁石傾斜部に対向させる姿勢で配置される、
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記内径側支持具は、前記円盤体の内径側で前記圧粉磁心に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記圧粉磁心を固定し、
前記外径側支持具は、前記円盤体の外径側で前記圧粉磁心に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記圧粉磁心を固定し、
前記内径側支持具は、当接する前記圧粉磁心への接触面として内径側対磁心傾斜部を有し、
前記外径側支持具は、当接する前記圧粉磁心への接触面として外径側対磁心傾斜部を有し、
前記圧粉磁心は、当接する前記内径側支持具への接触面として内径側対支持具傾斜部と、当接する前記外径側支持具への接触面として外径側対支持具傾斜部とを有し、
前記内径側支持具は、前記内径側対磁心傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、
前記外径側支持具は、前記外径側対磁心傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、
前記圧粉磁心は、当該圧粉磁心の内径側対支持具傾斜部を前記内径側対磁心傾斜部に対向させ、当該圧粉磁心の外径側対支持具傾斜部を前記外径側対磁心傾斜部に対向させる姿勢で配置される、
請求項2に記載の回転子。
【請求項4】
前記永久磁石は、内径側で前記盤面周方向に配置される内径側磁石と、外径側で前記盤面周方向に配置される外径側磁石とがあり、
隣り合う前記内径側磁石と前記外径側磁石とは、間隔を空けて配置され、
隣り合う前記内径側磁石と前記外径側磁石との間に配置されて当該内径側磁石及び当該外径側磁石を前記円盤体に固定する中間支持具を更に備える、
請求項1~3の何れか一項に記載の回転子。
【請求項5】
前記圧粉磁心は、前記盤面周方向に隣り合う永久磁石のうちの一方側に当接する一方側磁心と、他方側に当接する他方側磁心とがあり、同じ永久磁石を一方側磁心及び他方側磁心で挟むように配置される、
請求項1~4の何れか一項に記載の回転子。
【請求項6】
前記一方側磁心と、前記他方側磁心と、当該一方側磁心及び当該他方側磁心で挟む前記永久磁石とが、一体のユニットを構成する、
請求項5に記載の回転子。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の回転子を備えるアキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機。
【請求項8】
請求項1~4の何れか一項に記載の回転子の組立方法であって、
前記円盤体に、前記永久磁石の代用となる非磁性のダミー磁石と、前記圧粉磁心と、前記支持具とを組み付ける第1工程と、
前記圧粉磁心を前記円盤体に固定する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記ダミー磁石を前記永久磁石に組み換える第3工程と、
を含む組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機の回転子等に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機であるモータの分類の1つとして、トランスバースフラックスモータ(TFM:Transverse Flux Motor)が知られる。トランスバースフラックスモータは、Wehにより1986年に提案された高トルク密度のモータである(例えば、非特許文献1を参照)。近年では、トルク密度が重視される分野において様々な研究開発が行われており、Wehが提案したモータを基に三巻線の三相モータを構成し、通常の三相インバータで駆動することができるラジアルギャップ型のトランスバースフラックスモータが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H. Weh and H. May, “Achievable force densities for permanent magnet excited machines in new configuration,” in International Conference on Electrical Machines - ICEM, Munchen, Sept. 1986, pp. 1107-1111.
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-228730号公報
【文献】特開2019-129563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アキシャルギャップ型トランスバースフラックスモータの回転子の基本構造は、永久磁石と磁心とを周方向へ交互に配置した構造となっている。永久磁石と磁心には、磁力や遠心力が作用するため、互いに強固に連結固定されている必要がある。
【0006】
比較的小型のアキシャルギャップ型トランスバースフラックスモータであれば、永久磁石と磁心とを接着剤で固定する方法を採用できる。しかし、特に、アキシャルギャップ型トランスバースフラックスモータを鉄道車両用の主電動機として採用する場合、回転子が大型になるので、作用する磁力や遠心力も相対的に大きくなる。且つ、モータケース内が比較的高温になる。接着剤は一般的に高温環境下では劣化が促進され、長期間の使用には耐えられない可能性も高い。そのため、接着剤のみによらない永久磁石と磁心との新たな固定方法が望まれる。
【0007】
なお、こうした問題は、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機を電動機(電動モータ)として用いる場合に限らず、発電機として用いる場合についても同様である。
【0008】
本発明の課題は、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機の回転子に係る永久磁石と磁心との新しい固定技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための第1の発明は、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機の回転子であって、円盤体と、前記円盤体の盤面周方向に間隔を空けて配置される永久磁石と、前記永久磁石を前記円盤体に固定する支持具と、前記盤面周方向に隣り合う前記永久磁石の間に配置される圧粉磁心と、を備え、前記永久磁石は、隣接する前記圧粉磁心への接触面として対磁心テーパ部を有し、前記圧粉磁心は、隣接する前記永久磁石への接触面として対磁石テーパ部を有し、前記永久磁石は、前記対磁心テーパ部を前記円盤体に向けた姿勢で配置され、前記圧粉磁心は、前記対磁石テーパ部を前記対磁心テーパ部に対向させる姿勢で配置される、回転子である。
【0010】
第1の発明の回転子によれば、円盤体を基本構造体とし、円盤体に永久磁石を支持具にて機械的に固定できる。そして、円盤体の盤面周方向に隣接する永久磁石と圧粉磁心との接触を、テーパ構造による接触面とし、隣接する2つの永久磁石で、それらに挟まれた1つの圧粉磁心を円盤体に向けて機械的に固定することができる。よって、接着剤のみによらない永久磁石と圧粉磁心との固定が実現できる。
【0011】
永久磁石は、支持具により強固に固定されるので、例えば当該回転子を大型化し、鉄道車両用の主電動機のような高回転且つ高温環境下での使用に供されるとしても、比較的強い磁力や遠心力と高温に耐え得る設計が可能になる。
【0012】
また、圧粉磁心は、容易に様々な形状に成型でき、高い周波数において低鉄損を実現できる優れた磁性特性を有していることからアキシャルギャップ型等の特殊な鉄心形状が必要な高効率・高出力のモータの磁心として用いられることが知られるところである。圧粉磁心は、絶縁被膜された磁性粒子がプレス成形されているので、引っ張り応力に対して脆性を示し、局所的な機械的結合(例えば、ボルト挿通孔を有する固定片部を設けてボルト締めするなど)を行うと応力集中により破損し易い。しかし、第1の発明の回転子では、圧粉磁心は、永久磁石との接触面(テーパ部の面)により押圧固定されるので、固定に係る応力集中が抑制される。よって、圧粉磁心の固定についても、永久磁石の固定と同様に、高回転且つ高温環境下で使用されたとしても耐え得る設計が可能になる。
【0013】
また、回転子の組立方法を考えるに、永久磁石となる素材と圧粉磁心とを予め連結固定して回転子としての形を形成した後に、永久磁石の素材に対して着磁を行って回転子を完成させる組立方法も考え得るが、当該方法では着磁のための装置も複雑となり作業の難度が高くなる。対して、第1の発明の回転子では、予め着磁された永久磁石を支持具で円盤体に個別に固定できるのでそうした着磁に係る困難な工程を経なくて済む。また、2つの永久磁石で挟むようにして1つの圧粉磁心を円盤体に押さえつけて固定する構造となる。このため、例えば、永久磁石を先に固定した後、これに挟まれる圧粉磁心を、テーパ構造を合わせるようにして結合させるといった、あたかもブロックを組み合わせるように永久磁石と圧粉磁心とを交互に組み付けて行く組立工程が可能になる。組立後に着磁を行う組立方法よりも遥かに製作が簡単になる。
【0014】
第2の発明は、前記支持具が、前記円盤体の内径側で前記永久磁石に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記永久磁石を固定する内径側支持具と、前記円盤体の外径側で前記永久磁石に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記永久磁石を固定する外径側支持具と、を有し、前記内径側支持具は、当接する前記永久磁石への接触面として内径側対磁石傾斜部を有し、前記外径側支持具は、当接する前記永久磁石への接触面として外径側対磁石傾斜部を有し、前記永久磁石は、当接する前記内径側支持具への接触面として内径側対支持具傾斜部と、当接する前記外径側支持具への接触面として外径側対支持具傾斜部とを有し、前記内径側支持具は、前記内径側対磁石傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、前記外径側支持具は、前記外径側対磁石傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、前記永久磁石は、前記内径側対支持具傾斜部を前記内径側対磁石傾斜部に対向させ、前記外径側対支持具傾斜部を前記外径側対磁石傾斜部に対向させる姿勢で配置される、第1の発明の回転子である。
【0015】
第2の発明の回転子は、永久磁石についても、支持具との傾斜面による面接触により、円盤体に向けて押しつけるように固定する。このため、局所的な機械的結合に見られるような応力集中を抑制して固定できる。よって、例えば当該回転子を大型化し、鉄道車両用の主電動機のような高回転且つ高温環境下での使用に供されるとしても、より強固に耐え得る設計が可能になる。
【0016】
第3の発明は、前記内径側支持具が、前記円盤体の内径側で前記圧粉磁心に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記圧粉磁心を固定し、前記外径側支持具は、前記円盤体の外径側で前記圧粉磁心に当接した状態で前記円盤体に固定されることで前記圧粉磁心を固定し、前記内径側支持具は、当接する前記圧粉磁心への接触面として内径側対磁心傾斜部を有し、前記外径側支持具は、当接する前記圧粉磁心への接触面として外径側対磁心傾斜部を有し、前記圧粉磁心は、当接する前記内径側支持具への接触面として内径側対支持具傾斜部と、当接する前記外径側支持具への接触面として外径側対支持具傾斜部とを有し、前記内径側支持具は、前記内径側対磁心傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、前記外径側支持具は、前記外径側対磁心傾斜部を前記円盤体に向けた姿勢で前記円盤体に固定され、前記圧粉磁心は、当該圧粉磁心の内径側対支持具傾斜部を前記内径側対磁心傾斜部に対向させ、当該圧粉磁心の外径側対支持具傾斜部を前記外径側対磁心傾斜部に対向させる姿勢で配置される、第1又は第2の発明の回転子である。
【0017】
第3の発明の回転子は、圧粉磁心の内径側と外径側についても、支持具の傾斜面との面接触により強固に固定できる。
【0018】
第4の発明は、前記永久磁石が、内径側で前記盤面周方向に配置される内径側磁石と、外径側で前記盤面周方向に配置される外径側磁石とがあり、隣り合う前記内径側磁石と前記外径側磁石とが間隔を空けて配置され、隣り合う前記内径側磁石と前記外径側磁石との間に配置されて当該内径側磁石及び当該外径側磁石を前記円盤体に固定する中間支持具を更に備える、第1~第3の何れかの発明の回転子である。
【0019】
第4の発明の回転子では、永久磁石を2ピース構造とし、径方向の中間位置に固定箇所を増やすことができるので、永久磁石を更に強固に固定できる。
【0020】
第5の発明は、前記圧粉磁心が、前記盤面周方向に隣り合う永久磁石のうちの一方側に当接する一方側磁心と、他方側に当接する他方側磁心とがあり、同じ永久磁石を一方側磁心及び他方側磁心で挟むように配置される、第1~第4の何れかの発明の回転子である。
【0021】
また、第6の発明は、前記一方側磁心と、前記他方側磁心と、当該一方側磁心及び当該他方側磁心で挟む前記永久磁石とが、一体のユニットを構成する、第5の発明の回転子である。
【0022】
第5又は第6の発明の固定子では、圧粉磁心が盤面周方向に分割された一方側磁心と他方側磁心の2ピース構成となる。予め永久磁石の盤面周方向の一方側磁心と他方側磁心とを接着するなどして先行組立しておけば、永久磁石を円盤体に固定する工程で、圧粉磁心の固定もまかなう事が可能となる。よって、回転子の製作が簡単になる。
【0023】
第7の発明は、第1~第6の何れかの発明の回転子を備えるアキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機である。
【0024】
第7の発明によれば、第1~第6の何れかの発明と同様の効果を有するアキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機を実現できる。
【0025】
第8の発明は、第1~第4の何れかの発明の回転子の組立方法であって、前記円盤体に、前記永久磁石の代用となる非磁性のダミー磁石と、前記圧粉磁心と、前記支持具とを組み付ける第1工程と、前記圧粉磁心を前記円盤体に接着して固定する第2工程と、前記第2工程の後に、前記ダミー磁石を前記永久磁石に組み換える第3工程と、を含む組立方法である
【0026】
高出力・高効率な回転電機を作成する場合、磁力が強力な永久磁石が必要とされ、永久磁石同士の吸引力や反発力が大きくなる。回転子の組立の際には、多数の永久磁石を取り付けることになるが、こうした強力な吸引力や反発力は、組付け作業の観点からは阻害要素になる。また、適切な組み立て性を実現するためには、永久磁石や圧粉磁心の間に接着剤等で充填される適切な隙間が生じるように寸法公差が管理され、隙間は各部において均等に分散されるのが望ましい。しかし、永久磁石の強力な吸引力に任せて組み立てしてしまうと、隙間が均等にならずに偏りが生じ、回転子の構造として好ましくない状態となる場合がある。
【0027】
しかし、第8の発明によれば、非磁性のダミー磁石と圧粉磁心と支持具とで仮組み立てして、一旦、永久磁石と圧粉磁心との適切な位置関係を実現した後に、圧粉磁心を円盤体に固定し、その後にダミー磁石を1つずつ永久磁石に組み換えることで、永久磁石と圧粉磁心との適切な位置関係を成した回転子の組み立てを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機の構成例及び使用例を説明するための図。
【
図4】回転子の一部を車軸の軸方向から見た拡大図。
【
図9】回転子の組立方法のうち第1工程を説明するための図。
【
図10】回転子の組立方法のうち第2工程を説明するための図。
【
図11】回転子の組立方法のうち第3工程を説明するための図(その1)。
【
図12】回転子の組立方法のうち第3工程を説明するための図(その2)。
【
図13】回転子の組立方法を説明するための図であって、第3工程終了後の状態を示す図。
【
図15】組付ユニットを用いた回転子の組立方法を説明するための図。
【
図16】回転子と車軸の連結構造の変形例を説明するための図。
【
図17】連結基体の変形例を説明するための図(その1)。
【
図18】連結基体の変形例を説明するための図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限られないことは勿論である。
【0030】
図1は、本実施形態のアキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機(以下、略して「ATF回転電機」と言う。)の構成例及び使用例を説明するための図である。なお、構成の理解を容易にするために、ATF回転電機については、一部切り取って内部構造を明らかにしている。
【0031】
ATF回転電機100は、回転軸(出力軸)が鉄道車両用の輪軸3の車軸3jに直結されたいわゆる「直接駆動式主電動機」である。
具体的には、ATF回転電機100は、モータケース101が反力受け部4を介して、鉄道車両用の台車枠5の横梁部に連結されている。そして、鉄道車両の車体側に固定されているモータ制御装置(不図示)と、ATF回転電機100との間が、三相交流線7・センサ信号線8・接地線9で接続されている。三相交流線7によってモータ制御装置からATF回転電機100へ駆動電流が供給され、センサ信号線8によって回転センサ10の検出信号がモータ制御装置に入力される。接地線9は、ATF回転電機100に設けられた接地装置12によって車軸3jに摺接され、輪軸3を介したレールとの電気的な接地を実現する。また、モータ制御装置には、架線電力(或いは主回路構成に応じて構成される電力変換器等を介した給電電力)を供給する電力線が接続される。
【0032】
輪軸3では、車軸3j上で、モータケース101がベアリング102によって支持されている。そして、モータケース101の主内部空間では、3つの駆動ユニット110(110a,110b,110c)の回転子が車軸3jに固定されている。
【0033】
図2は、駆動ユニット110(110a,110b,110c)の構成例を示す側面図である。1つの駆動ユニット110は、回転子固定部材112を介して車軸3jに固定される2つの回転子120(120a,120b)と、これら2つの回転子120との間の位置でモータケース101内に固定される固定子170と、を有する。
【0034】
回転子固定部材112は、車軸3jの外周に嵌合する円管部113と、その軸方向端部に設けられたフランジ部114と、を有する。円管部113は、車軸3jに圧入されて固定される。フランジ部114は回転子120とボルトで固定される。
【0035】
図3は、回転子120の構成例を示す斜視図である。
図4は、回転子120の一部を車軸3jの軸方向(ATF回転電機100の回転軸方向に同じ)から見た拡大図である。
図5~
図8は、回転子120の盤面方向に沿って切った部分断面図であって、それぞれ
図4におけるV-V断面図、VI-VI断面図、VII-VII断面図、VIII-VIII断面図である。なお、
図5~
図8においては各図の(1)は組立状態における当該断面図を示し、各図の(2)は分解状態の当該断面図を示している。
【0036】
図3に示すように、回転子120は、車軸3jの軸方向AX方向から見て中空円板形(平たい円環形)を有している。そして、回転子120は、円盤体121と、連結基体160と、永久磁石130(130a、130b)と、圧粉磁心140と、永久磁石130及び圧粉磁心140を円盤体121へ固定するための支持具150と、を有する。
【0037】
円盤体121は、回転子120の基本構造体の1つであって、円環を成した盤面に垂直な方向(厚み方向)が薄い非磁性体(例えば、FRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastics)製)の中空円板体である。中空部の径は、車軸3jを挿通可能に設定されている。円盤体121は、中空部の縁部122に、複数の貫通孔123を有し、回転子固定部材112のフランジ部114(
図2参照)にボルト固定するための取付部を形成している。
【0038】
連結基体160は、回転子120の基本構造体を成すもう1つの要素であって、円盤体121と同形の円環を成した盤面に垂直な方向(厚み方向)が薄い非磁性のステンレス鋼板又はアルミ板である。また、連結基体160の中空部の縁部には、円盤体121の貫通孔123に対応する孔部164(
図5参照)が設けられている。
【0039】
なお、円盤体121と連結基体160には、適宜、位置決めピンを嵌める穴部を設けておき、組み立て時の相対位置関係を高い精度で確保すると好適である。
【0040】
永久磁石130には、着磁方向が違う第1種永久磁石130aと第2種永久磁石130bとがある。具体的には、第1種永久磁石130aは、永久磁石130を正面にして盤面方向視(
図3の右斜め上から見た場合に)おいて時計回りとなる向きに着磁されているが、第2種永久磁石130bは、盤面方向視において反時計回りとなる向きに着磁されている。そして、第1種永久磁石130aと第2種永久磁石130bは、円盤体121の同一盤面において盤面周方向に間隔を空けて交互に配置されて固定される。
【0041】
図4に示すように、1つの永久磁石130は、内径側磁石131と、外径側磁石132との2ピースで構成される。1つの永久磁石130を構成する内径側磁石131と外径側磁石132は、回転子120の径方向に沿って所定間隔を開けて直線状に隣り合わせて配置されて固定される。
【0042】
内径側磁石131は、
図5に示すように、内径側に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である内径側対支持具傾斜部133を有し、外径側面に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である対中間支持傾斜部134を有する。
【0043】
外径側磁石132は、内径側に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である対中間支持傾斜部134を有し、外径側に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である外径側対支持具傾斜部135を有する。
【0044】
また、
図7に示すように、外径側磁石132は、盤面周方向の両側面に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面向きになる傾斜面である対磁心テーパ部136を有する。図示されていないが、同様にして、内径側磁石131も、盤面周方向の両側面に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面向きになる傾斜面である対磁心テーパ部136を有する。つまり、外径側磁石132と外径側磁石132は、ともに回転子120が組み立てられると、対磁心テーパ部136を円盤体121に向けた姿勢で配置される。
【0045】
図3及び
図4に戻って、圧粉磁心140は、円盤体121の盤面周方向に隣り合う永久磁石130の間に配置される。
【0046】
そして、圧粉磁心140は、
図8に示すように、内径側に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である内径側対支持具傾斜部142を有し、外径側面に、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である外径側対支持具傾斜部143を有する。
【0047】
また、
図7に示すように、圧粉磁心140は、盤面周方向の側面が、円盤体121に固定された状態において法線が盤面に対して外向きになる傾斜面である対磁石テーパ部144を形成している。対磁石テーパ部144は、永久磁石130の対磁心テーパ部136と対応関係を成し、相互に面接触するように円盤体121の盤面に対して同じ傾斜角に設定されている。回転子120が組み立てられると、圧粉磁心140は、対磁石テーパ部144を対磁心テーパ部136に対向させる姿勢で配置される。
【0048】
図3及び
図4に戻って、支持具150は、永久磁石130及び圧粉磁心140を円盤体121に固定する部材である。具体的には、支持具150は、内径側支持具151と、中間支持具152と、外径側支持具153と、を有する。そして、
図5に示すように、内径側支持具151・中間支持具152・外径側支持具153は、取付ボルト159によって連結基体160に固定される。具体的には、取付ボルト159は、円盤体121の挿通孔124に挿通されて、連結基体160の雌ネジ部162に螺合し、内径側支持具151・中間支持具152・外径側支持具153それぞれが、連結基体160との間に円盤体121を挟むようにして固定される。
【0049】
内径側支持具151は、円盤体121の内径側で永久磁石130(内径側磁石131)に当接した状態で円盤体121に固定されて、当接する永久磁石130を円盤体121に固定する。
【0050】
具体的には、内径側支持具151は、
図5に示すように、円盤体121に固定された状態において外径側となる側面に、永久磁石130(内径側磁石131)と当接する接触面として内径側対磁石傾斜部154を有する。内径側支持具151は、この内径側対磁石傾斜部154を円盤体121に向けた姿勢で円盤体121に固定される。そして、固定されると、内径側対磁石傾斜部154が、永久磁石130の内径側対支持具傾斜部133に対向し、これを円盤体121へ向けて押さえつけることになる。
【0051】
また、内径側対磁石傾斜部154の盤面周方向に沿った長さに着目すると、
図4及び
図8に示すように、内径側対磁石傾斜部154は、永久磁石130の内径側対支持具傾斜部133に対応する長さを超えて、圧粉磁心140の内径側対支持具傾斜部142に対向する位置まで達している。ゆえに、内径側対磁石傾斜部154は、内径側対磁心傾斜部としても機能することになる。
【0052】
よって、内径側対磁石傾斜部154は、内径側磁石131の内径側対支持具傾斜部133及び圧粉磁心140の内径側対支持具傾斜部142と対応関係を成し、これらと相互に面接触するように円盤体121の盤面に対して同じ傾斜角に設定されている。
【0053】
中間支持具152は、
図4に示すように、回転子120の径方向に隣り合う内径側磁石131と外径側磁石132との間に配置されて内径側磁石131及び外径側磁石132を円盤体121に固定する部材である。
【0054】
具体的には、中間支持具152は、
図5に示すように、円盤体121に固定された状態において内径側及び外径側となる両側面に、それぞれ内径側磁石131・外径側磁石132と当接する接触面として対磁石傾斜部156を有する。この対磁石傾斜部156は、対中間支持傾斜部134と対応関係を成し、相互に面接触するように円盤体121の盤面に対して同じ傾斜角に設定されている。
【0055】
また、中間支持具152は、
図6に示すように、円盤体121に固定された状態において盤面周方向側面に、圧粉磁心140と当接する接触面として対磁心傾斜部157を有する。対磁心傾斜部157は、対磁石テーパ部144と対応関係を成し、相互に面接触するように円盤体121の盤面に対して同じ傾斜角に設定されている。
【0056】
外径側支持具153は、
図4に示すように、円盤体121の外径側で永久磁石130(外径側磁石132)に当接した状態で円盤体121に固定されて、当接する永久磁石130を円盤体121に固定する。
【0057】
具体的には、外径側支持具153は、
図5に示すように、円盤体121に固定された状態において内径側となる側面に、永久磁石130(外径側磁石132)と当接する接触面として外径側対磁石傾斜部158を有する。外径側支持具153は、この外径側対磁石傾斜部158を円盤体121に向けた姿勢で円盤体121に固定される。そして、固定されると、外径側対磁石傾斜部158が、永久磁石130の外径側対支持具傾斜部135に対向し、これを円盤体121へ向けて押さえつけることになる。
【0058】
また、外径側支持具153の盤面周方向に沿った長さに着目すると、
図4及び
図8に示すように、外径側対磁石傾斜部158は、永久磁石130の外径側対支持具傾斜部135に対応する長さを超えて、圧粉磁心140の外径側対支持具傾斜部143に対向する位置まで達している。よって、外径側対磁石傾斜部158は、外径側磁石132の外径側対支持具傾斜部135(
図5参照)及び圧粉磁心140の外径側対支持具傾斜部143(
図8参照)と対応関係を成し、これらと相互に面接触するように円盤体121の盤面に対して同じ傾斜角に設定されている。ゆえに、外径側対磁石傾斜部158は、外径側対磁心傾斜部としても機能することになる。
【0059】
次に、
図9~
図13を参照しながら、回転子120の組立方法について説明する。
図9に示すように、回転子120の第1工程では、作業者は、連結基体160を、円盤体121の一方の盤面に接着やネジ止めなどの方法で固定する。そして、円盤体121に、永久磁石130の代用となる非磁性のダミー磁石130Dと、圧粉磁心140と、内径側支持具151及び中間支持具152とを組み付ける。ダミー磁石130Dを構成するダミー内径側磁石131D及びダミー外径側磁石132Dと、中間支持具152とは、予め接着して一体にしておくと、組み立てがし易くて好適である。
【0060】
もし、ダミー磁石130Dを用いずに組み立てるとなると、磁力による吸引力や反発力の影響を受けて、吸引力が作用するところでは、設計に従った所定位置よりも接近した位置で、所定の隙間関係よりも小さい隙間関係で組み立てられてしまう。反発力が作用するところではこの逆となる。そのために、本来分散されるべき隙間関係に偏りが生じ、例えば回転子120として好ましからざる状態になってしまう可能性がある。
【0061】
しかし、ダミー磁石130Dは非磁性なので、作業員は、磁力による吸引力や反発力の影響を受けること無く、簡単にそして永久磁石130と圧粉磁心140と支持具150とが、設計に従った所定位置に所定の隙間関係を有するように簡単に組み立てることができる。隙間関係の偏りは生じ難く、ダミーを使用しない場合よりも適切な位置で組み立てられる。
【0062】
第1工程の後に実行する第2工程では、作業員は、圧粉磁心140を一本ずつ抜き、
図10に示すように、抜いた圧粉磁心140の円盤体121と接する面に接着剤を塗布した上で、抜いた場所に圧粉磁心140を差し込んで接着により固定する。全ての圧粉磁心140を接着すると第3工程に移る。
【0063】
第3工程では、
図11に示すように、1つのダミー磁石130Dについて、中間支持具152を外してダミー磁石130D(ダミー内径側磁石131D及びダミー外径側磁石132D)を外し、
図12に示すように、永久磁石130(内径側磁石131及び外径側磁石132)に組み換え、中間支持具152及び外径側支持具153を取り付ける。1つずつ全てのダミー磁石130Dを永久磁石130に組み換える。永久磁石130を構成する内径側磁石131及び外径側磁石132と、中間支持具152とを、予め接着して一体にしておくと、作業性が向上するので好適である。
【0064】
全てのダミー磁石130Dの組み換えが終了すると、
図13に示すように、回転子120の組立が完了となる。組立が完了すると、永久磁石130は、内径側端部と外径側端部とこれらの中間位置のそれぞれにおいて、内径側支持具151・中間支持具152・外径側支持具153により、円盤体121に向けて押さえつけられ、機械的に固定される。また、組立が完了すると、圧粉磁心140は、内径側端部と外径側端部とが、それぞれ内径側支持具151・外径側支持具153により、円盤体121に向けて押さえつけられ、機械的に固定される。また、盤面周方向に着目すれば、圧粉磁心140は、隣接する2つの永久磁石130(具体期には、内径側磁石131,外径側磁石132)及び中間支持具152により、円盤体121に向けて押さえつけられ、機械的に固定される。
【0065】
組立完了した回転子120は、適宜、回転バランス調整を行う。この際、連結基体160を、重心位置を適切に補正するためのバランスウェイトの取付構造部として用いてもよい。或いは、連結基体160に十分な厚さを設定しているならば、連結基体160を削って補正を行うとしてもよい。
【0066】
なお、固定子170(
図2参照)は、公知のアキシャルギャップ型トランスバースフラックスモータと同様にして実現することができる。例えば、特許文献3の固定子を用いることができる。
【0067】
以上、本実施形態によれば、アキシャルギャップ型トランスバースフラックス式回転電機(ATF回転電機)の回転子に係る永久磁石と磁心との新しい固定技術を提供することができる。
【0068】
ATF回転電機100では、円盤体121を回転子120の基本構造体とし、これに永久磁石130を支持具150にて機械的に固定する。そして、盤面周方向に隣接する永久磁石130と圧粉磁心140との接触をテーパ構造による面接触とし、隣接する2つの永久磁石130で、それらに挟まれた1つの圧粉磁心140を円盤体121に向けて機械的に固定することができる。よって、接着剤のみによらない永久磁石と圧粉磁心との固定が実現できる。
【0069】
永久磁石130は、支持具150により強固に固定されるので、当該回転子を大型化し、鉄道車両用の主電動機のような高回転且つ高温環境下での使用に供されるとしても、比較的強い遠心力にも耐え得る設計が可能になる。
【0070】
また、圧粉磁心140は、そもそも絶縁被膜された磁性粒子がプレス成形されているので、引っ張り応力に対して脆性を示し、局所的な機械的結合を行うと応力集中により破損し易い。しかし、ATF回転電機100では、圧粉磁心140は、永久磁石130により面により押圧固定されるので、固定に係る応力集中が抑制される。よって、圧粉磁心140の固定についても、永久磁石130の固定と同様に、高回転且つ高温環境下で使用されたとしても耐え得る設計が可能になる。
【0071】
また、回転子120の組立工程においても、ATF回転電機100は、非磁性のダミー磁石130Dを使って仮組みすることで、永久磁石130と圧粉磁心140との適切な位置関係を実現した後に、ダミー磁石130Dを1つずつ永久磁石に組み換えることで、永久磁石130と圧粉磁心140との適切な位置関係を成した組み立てを実現できる。
【0072】
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態の一例について説明したが、本発明を適用可能な実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の省略・追加・変更を行うことができる。
【0073】
(変形例その1)
上記実施形態では、ATF回転電機100を、鉄道車両用の「直接駆動式主電動機」として使用した例を示したが、ATF回転電機100の用途はこれに限定されるものではない。例えば、運搬車両の原動機、ポンプなどの産業機械類の原動機、そして発電機としても使用可能である。ATF回転電機100を鉄道車両用の主電動機として使用する場合でも、回生ブレーキとしても機能し、その時は発電機となる。
【0074】
(変形例その2)
また、上記実施形態では、1つのATF回転電機100が、3つの駆動ユニット110を備えた構成を例示したが、駆動ユニット110が例えば「3」の整数倍であれば1つのATF回転電機100に備える駆動ユニット110の数は、適宜設定可能である。
【0075】
(変形例その3)
また、上記実施形態の圧粉磁心140を、盤面周方向に分割構成し、複数の磁心パーツで1つの圧粉磁心140とする構成も可能である。
具体的には、
図14に示すように、圧粉磁心140を、盤面周方向に隣り合う永久磁石130のうちの一方側に当接する一方側磁心140Lと、他方側に当接する他方側磁心140Rとの2ピース構造とする。
図14中、破線は上記実施形態における圧粉磁心140の大きさを示している。そして、予め、同じ1つの永久磁石130の盤面周方向の一方側に一方側磁心140Lを取り付け、盤面周方向の他方側に他方側磁心140Rを取り付けて、一方側磁心140Lと他方側磁心140Rで1つの永久磁石130を挟んだ組付ユニット180を作成しておく。
【0076】
勿論、上記実施形態におけるダミー磁心140Dも同様にして2ピース構成として、ダミー磁石130Dとともにダミー組付ユニット180Dを作成しておく。
【0077】
そして、
図15に示すように、当該構成を採用した場合の回転子120Bの組立工程では、第1工程として、ダミー組付ユニット180Dで組み立てを行い、第2工程として、ダミー組付ユニット180Dを1つずつ組付ユニット180に交換する。つまり、組付ユニット180を作成することで、上記実施形態の第2工程と第3工程とを纏めて、1つの工程とすることができる。
【0078】
(変形例その4)
また、支持具150と、これに支持される部材との関係は上記実施形態に限定されない。例えば、
図15示すように、(1)上記実施形態におけるn個(nは2以上の整数;
図15ではn=3の例)の内径側支持具151を1つの集約型内径側支持具151Eとする、(2)上記実施形態におけるm個(mは2以上の整数;
図15ではm=3の例)の外径側支持具153を1つの集約型外径側支持具153Eとする、の何れか又は両方の構成も可能である。
【0079】
(変形例その5)
第1工程と第2工程の内容は、上記実施形態の例に限らない。
例えば、円盤体121の盤面に圧粉鉄心140の取付位置を示すマーキング(又は、圧粉鉄心140の盤面が浅く嵌まる窪みの作成)を行っておくこととする。そして、第1工程において、盤面側に接着剤を塗布した圧粉鉄心140を、けがきされた取付位置にそれぞれ貼り付け、接着剤が乾く前にダミー磁石130・内径側支持具151・中間支持具152を、設計された適切な隙間関係を成すように組み付けるとしてもよい。つまり、第1工程は、圧粉鉄心140の円盤体121に固定する第2工程を兼ねている構成も可能である。
【0080】
或いは、圧粉磁心140の盤面側に別途予め溝を設けておく。また、円盤体121及び連結基体160に、圧粉磁心140を円盤体121の盤面に取り付けたときに、圧粉磁心140の溝に達する接着剤の注入路を設けておく。そして、第2工程を、この注入路に接着剤を注入して圧粉磁心140を円盤体121に対して固定する工程とするとしてもよい。
【0081】
(変形例その6)
また、上記実施形態では、回転子120と車軸3jとの連結は、連結基体160と円盤体121とフランジ114とを、ボルトとナットで挟んで締め付けて固定する構成としたがこれに限らない。例えば
図16は、回転子固定部材112Bの変形例を示す径方向断面における部分断面図である。回転子固定部材112Bのように、フランジ部114と連結基体160とで挟んで固定するとしてもよい。具体的には、固定ボルト116を、連結基体160の孔部164および円盤体121の貫通孔123に挿通し、フランジ部114の雌ネジ部115に螺合させて締め付ける。フランジ部114を、車軸3jの軸方向から見ると円環状になっているので、固定ボルト116の締め付け軸荷重がフランジ部114と円盤体121の縁部122とに広く分散され、貫通孔123周りへの締め付け軸荷重の応力を分散できる。
【0082】
(変形例その7)
また、上記実施形態では、連結基体160の形状を、車軸の軸方向AXから見ると円盤体121と略同形の円環を有する薄板としたが、これに限らない。例えば、
図17に示す連結基体160Bのように、車軸の軸方向AXから見ると、取付ボルト159に対応する雌ネジ部162を有する3つのリング部165(165a,165b,165c)と、スポーク部166とを組み合わせた編み目状の形状としてもよい。また例えば、
図18の連結基体160Cのように、1つの永久磁石130に係る3つの雌ネジ部162を径方向に繋ぐ連結ロッド167を放射状に備えた構成とすることもできる。これらの形状とすることで、回転子120としての結合強度を維持しつつ、回転子120の軽量化と、渦電流の発生にともなう損失の軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0083】
100…ATF回転電機
110…駆動ユニット
120,120B…回転子
121…円盤体
130…永久磁石
131…内径側磁石
132…外径側磁石
133…内径側対支持具傾斜部
134…対中間支持傾斜部
135…外径側対支持具傾斜部
136…対磁心テーパ部
140…圧粉磁心
140L…一方側磁心
140R…他方側磁心
142…内径側対支持具傾斜部
143…外径側対支持具傾斜部
144…対磁石テーパ部
150…支持具
151…内径側支持具
152…中間支持具
153…外径側支持具
154…内径側対磁石傾斜部
156…対磁石傾斜部
157…対磁心傾斜部
158…外径側対磁石傾斜部
160…連結基体
180…組付ユニット