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特許7402127軌道の保守要否判断方法、保守要否判断装置および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】軌道の保守要否判断方法、保守要否判断装置および車両
(51)【国際特許分類】
   E01B 35/00 20060101AFI20231213BHJP
   B61K 9/08 20060101ALI20231213BHJP
   B61K 13/00 20060101ALI20231213BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20231213BHJP
   B61L 25/04 20060101ALI20231213BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231213BHJP
【FI】
E01B35/00
B61K9/08
B61K13/00 Z
G01H17/00 Z
B61L25/04
B60L3/00 N
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020113200
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011823
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小出 祐一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012733(JP,A)
【文献】特開2008-148466(JP,A)
【文献】特開2019-104389(JP,A)
【文献】特開2019-177781(JP,A)
【文献】特開2009-078764(JP,A)
【文献】特開2015-034452(JP,A)
【文献】特開2012-100434(JP,A)
【文献】特公平05-000654(JP,B2)
【文献】特開2015-227834(JP,A)
【文献】特開2016-113029(JP,A)
【文献】国際公開第2006/021050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/00
B61K 9/08
B61K 13/00
G01H 17/00
B61L 25/04
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測区間の波形データを入力可能な波形データ入力部と、
前記計測区間の波形データから軌道の保守要否を判断する保守要否判断部と、
判断結果を出力可能な判断結果出力部と、
を有する保守要否判断装置における軌道の保守要否判断方法であって、
前記計測区間の波形データを小区間の波形データに分割するステップと、
各小区間の波形データを周波数成分に分解したスペクトルを算出するステップと、
周波数毎に前記周波数成分の分布を算出するステップと、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率を算出するステップと、
前記管理値を超える確率が確率の管理値を超える場合、軌道の保守が必要であると判断するステップと、
を有する軌道の保守要否判断方法。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道の保守要否判断方法であって、
前記波形データは、軌道不整の波形データである、
軌道の保守要否判断方法。
【請求項3】
請求項2に記載の軌道の保守要否判断方法であって、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルは、軌道不整の周波数成分の分布からなるスペクトルに車両の伝達関数を乗じることで求めた、車両振動の周波数成分の分布からなるスペクトルである、
軌道の保守要否判断方法。
【請求項4】
請求項1に記載の軌道の保守要否判断方法であって、
前記波形データは、車両振動の波形データである、
軌道の保守要否判断方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の軌道の保守要否判断方法であって、
前記周波数成分の分布は周波数成分の頻度分布である、
軌道の保守要否判断方法。
【請求項6】
請求項5に記載の軌道の保守要否判断方法であって、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率は、前記周波数成分の頻度分布からなるスペクトルの内、前記スペクトルの管理値を超える頻度が、全体の頻度に占める割合として算出される、
軌道の保守要否判断方法。
【請求項7】
計測区間の波形データを入力可能な波形データ入力部と、
前記計測区間の波形データから軌道の保守要否を判断する保守要否判断部と、
判断結果を出力可能な判断結果出力部と、
を有する保守要否判断装置であって、
前記保守要否判断部は、
前記計測区間の波形データを小区間の波形データに分割する分割部と、
各小区間の波形データを周波数成分に分解したスペクトルを算出する第1の算出部と、
周波数毎に前記周波数成分の分布を算出する第2の算出部と、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率を算出する第3の算出部と、
前記管理値を超える確率が確率の管理値を超える場合、軌道の保守が必要であると判断する判断部と、
を有する保守要否判断装置。
【請求項8】
請求項7に記載の保守要否判断装置であって、
前記波形データは、軌道不整の波形データである、
保守要否判断装置。
【請求項9】
請求項8に記載の保守要否判断装置であって、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルは、軌道不整の周波数成分の分布からなるスペクトルに車両の伝達関数を乗じることで求めた、車両振動の周波数成分の分布からなるスペクトルである、
保守要否判断装置。
【請求項10】
請求項7に記載の保守要否判断装置であって、
前記波形データは、車両振動の波形データである、
保守要否判断装置。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載の保守要否判断装置であって、
前記周波数成分の分布は周波数成分の頻度分布である、
保守要否判断装置。
【請求項12】
請求項11に記載の保守要否判断装置であって、
前記周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率は、前記周波数成分の頻度分布からなるスペクトルの内、前記スペクトルの管理値を超える頻度が、全体の頻度に占める割合として算出される、
保守要否判断装置。
【請求項13】
計測区間の波形データを計測する波形データ計測装置と、
請求項7ないし請求項12のいずれか一項に記載の保守要否判断装置と、
を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の保守要否判断方法、保守要否判断装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道の保守管理では、定期的に専用の軌道検測車両等を用いて軌道の変形(軌道不整)の波形データを取得し、当該波形データに含まれる著大値を検出して、その著大値と管理値(管理を行う上での目標値)の比較によって、軌道保守の実施要否を検討している。限られた保守リソースの中で軌道を管理するには、軌道に鉄道車両の乗り心地を低下させるような不整が生じていないかを確認し、乗り心地の低下が顕著な箇所を選定する必要がある。
【0003】
特許文献1には、軌道不整データの著大値の変化速度のばらつきを、平均値と標準偏差として求め、新たに計測されたデータからベイズ推定を用いて将来の軌道不整を予測し、保守が必要な箇所を選定することが記載されている。特許文献2には、車両の振動加速度データのパワースペクトル密度(Power Spectral Density、PSD)を用いて、乗り心地の感じ具合を考慮した上で軌道や車両の異常を検知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-76724号公報
【文献】特開2019-177781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人間の乗り心地の感じ具合は周波数によって異なるため、保守が必要な箇所を、この感じ方に基づき選定することが有効である。また、軌道不整は、車両の走行や保守状況によって変化するため、車両の走行区間で一様ではなく、ばらつきを有する。軌道の保守を計画する際に、車両の走行区間全体で、どの程度の大きさの軌道不整がどの程度の頻度で発生しているかを定量化し、その値を元に軌道の保守要否を決定することが有効である。
【0006】
特許文献1は、軌道不整のばらつきを含めて、将来の軌道不整の変化を確率論的に予測するものである。軌道不整のばらつきを考慮して軌道の保守管理を行うものではあるが、周波数による乗り心地の感じ具合に基づく保守を行うことはできない。
【0007】
また特許文献2は、車両の振動加速度データのPSDを用いて、異常な箇所を検知するものであり、乗り心地の感じ具合に基づいて軌道の保守が必要な箇所を選定することができる。また、異常検知にはマハラノビズ距離を用いており、データのばらつきについても考慮している。しかし、車両の振動加速度データを用いているため、軌道不整だけでなく車両状態(車輪の摩耗や乗客数等)の影響も含まれたデータによる異常検知であり、軌道に起因する異常を切り分けられない。また、既存の軌道不整データと比較することができない。
【0008】
そこで本発明の目的は、乗り心地の感じ具合に基づき、軌道不整のばらつきを考慮した上で、合理的に軌道の保守要否を判断する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための代表的な本発明の軌道の保守要否判断方法の1つは、計測区間の波形データを小区間の波形データに分割するステップと、各小区間の波形データを周波数成分に分解したスペクトルを算出するステップと、周波数毎に周波数成分の分布を算出するステップと、周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率を算出するステップと、管理値を超える確率が確率の管理値を超える場合、軌道の保守が必要であると判断するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人間の乗り心地の感じ具合を考慮できると共に、軌道不整のばらつきも踏まえて、合理的に軌道の保守要否を判断することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例における処理フローを示すフローチャートである。
図2】軌道不整データの概要を示す図である。
図3】小区間のPSDの算出方法を示す図である。
図4】ばらつきを考慮したPSDの算出方法を示す図である。
図5】管理値を超える確率の算出方法を示す図である。
図6】第2の実施例における車両振動データを示す図である。
図7】第3の実施例における車両振動のPSDを示す図である。
図8】第4の実施例における軌道検測装置と保守要否判断装置を備えた車両を示す図である。
図9】第5の実施例における保守要否判断装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、図1を用いて第1の実施例における処理フロー100の概要を説明する。
【0014】
図1において、1は軌道の検測により測定した軌道不整データであり、ステップ101では、軌道不整データ1を、細かな小区間に分割する。
【0015】
ステップ102では、各小区間のPSDを算出する。
【0016】
ステップ103では、各小区間のPSDから、PSDの頻度分布を算出し、ばらつきを考慮したPSD4を求める。
【0017】
ステップ104では、ばらつきを考慮したPSD4とPSDの管理値5を元に、管理値を超える確率7を算出する。
【0018】
ステップ105では、管理値を超える確率7が、確率の管理値8を超えるか判定し、超える場合はステップ106に進み、超えない場合はステップ107に進む。
【0019】
ステップ106では、軌道の保守が必要と判断する。
【0020】
ステップ107では、軌道の保守は不要と判断する。
以下に、本フローの各処理の詳細について述べる。
【0021】
次に、図2は軌道不整データ1の概要を示す図である。軌道不整データ1は、車両402が走行する軌道201において、保守要否を判定する区間にて軌道検測車等によって計測する。図2に軌道不整データの計測区間202を例示する。軌道不整データ1は、不整の計測位置とその位置での軌道の変形量の関係からなる波形データである。図2に、横軸に位置l、縦軸に変形量dをとって、軌道不整データ1の波形を例示する。
【0022】
次に、図3は小区間のPSD2を算出する方法を示す図である。軌道不整データ1を小区間203に細分化し、各小区間の軌道不整データ1をフーリエ変換し、小区間のPSD2を算出する。ここで、小区間のPSD2は、横軸が空間周波数F[1/m]、縦軸が空間領域におけるPSD G[m]となる。人間の乗り心地の感じ具合は周波数f[Hz]によって異なるため、これに合わせて小区間のPSD2を変換する。空間周波数Fは、車両の走行速度vを用いて、f=vFにより周波数fに変換する。空間領域のPSD Gは、周波数領域でのPSD g[m/Hz]に、g=G/vにより変換する。図3に、横軸に周波数f、縦軸に周波数領域でのPSD、奥行方向に位置lをとって、小区間のPSD2を例示する。
【0023】
次に、図4はPSDの頻度分布3およびばらつきを考慮したPSD4の算出方法を示す図である。図3の小区間のPSD2の、ある周波数fnでの小区間のPSD2と計測位置の関係から、PSDの値の発生頻度を求め、PSDの頻度分布3を求める。図4(a)に、横軸に位置l、縦軸にPSDをとって、ある周波数fnでの小区間のPSD2と計測位置の関係を例示する。図4(a)は、図3に、奥行方向に位置l、縦軸にPSDをとって例示された、ある周波数fnでの小区間のPSD2と計測位置の関係を再度示したものである。図4(b)に、横軸に頻度o、縦軸にPSDをとって、PSDの頻度分布3を例示する。このPSDの頻度分布3を小区間のPSD2の各周波数で算出し、各周波数でプロットすることで、ばらつきを考慮したPSD4を求める。図4(c)に、横軸に周波数f、縦軸にPSDをとって、ばらつきを考慮したPSD4を例示する。
【0024】
次に、図5は管理値を超える確率7を算出する方法を示す図である。管理値を超える確率7は、ばらつきを考慮したPSD4において、PSDの管理値5を超える部分の体積を求めることで算出する。ここで、PSDの管理値5は人間の乗り心地の感じ具合に合わせて、周波数に依存したものを設定する。図5(a)に、横軸に周波数f、縦軸にPSDをとって、ばらつきを考慮したPSD4がPSDの管理値5を超える部分を黒の塗りつぶしにより例示する。
【0025】
PSDの管理値5を超える部分の体積は、PSDの頻度分布3において、PSDの管理値を超えるPSDの頻度7-1を求め、これをばらつきを考慮したPSD4の各周波数において算出、足し合わせることで求める。図5(b)に、横軸に頻度o、縦軸にPSDをとって、PSDの管理値を超えるPSDの頻度7-1を黒の塗りつぶしにより例示する。ここで、足し合わせた頻度を全頻度に対する割合とした確率にするため、ばらつきを考慮したPSD4の全体積で除す。ばらつきを考慮したPSD4の全体積は、PSDの管理値5をゼロと置いて、前述と同じように求める。
【0026】
以上により求めた管理値を超える確率7と、確率の管理値8を比較し、確率の管理値8を超える場合は軌道保守の実施要と判断し、超えない場合は不要と判断する。
【0027】
以上のフローによる第1の実施例による効果について述べる。まず軌道不整データ1をPSDという周波数領域の情報に変換することで、周波数によって異なる人間の乗り心地の感じ具合を考慮して、軌道の保守要否の判定が可能となる。また、軌道不整データ1を小区間に分割し、小区間のPSD2から管理値を超える確率7を求めることで、軌道不整のばらつきによる不整量の大小の発生頻度を考慮した上で、保守要否を判定することが可能となる。
【0028】
本実施例では、軌道不整データ1をPSDに変換したが、周波数成分に分解したその他のスペクトルを用いても構わない。例えば、軌道不整データ1をPSDに変換する過程において得られるフーリエスペクトルを用いても構わない。また、ばらつきを考慮したPSD4の算出には、PSDの頻度分布3を用いたが、PSDの頻度分布3の代わりに、この頻度分布に対応する確率密度関数を用いても構わない。この場合、管理値を超える確率7の算出に積分を用いても構わない。
【実施例2】
【0029】
次に、図6を用いて、第2の実施例を説明する。第1の実施例において既に示された構成と同一の符号を付与された、同一の機能を有する部分については説明を省略する。
【0030】
第1の実施例では、軌道不整データ1を用いたが、第2の実施例では、車両の振動データ1-1を用いる点が主な変更点である。図6に車両振動データの計測区間202を例示する。車両振動データ1-1は、振動の計測時刻とその時刻での車両の振動量の関係からなる波形データである。図6に、横軸に時間t、縦軸に振動量vaをとって、車両振動データ1-1の波形を例示する。人間の乗り心地は車両の振動によって決まり、軌道不整データ1の代わりに車両の振動データ1-1を用いることで、より人間の乗り心地に即した保守管理を行うことができる。車両振動データ1-1は軌道不整データ1と異なり、時間波形であるため、フーリエ変換により周波数領域でのPSDが算出される。上記以外は、第1の実施例と同じ処理フロー100により、保守要否を判定する。
【0031】
第2の実施例では、車両の振動を直接評価することができる。
【実施例3】
【0032】
次に、図7を用いて、第3の実施例を説明する。第1の実施例において既に示された構成と同一の符号を付与された、同一の機能を有する部分については説明を省略する。
【0033】
第1の実施例では、ばらつきを考慮したPSD4を用いて管理値を超える確率7を求めたが、第3の実施例では、車両振動のPSD4-1を用いる点が主な変更点である。車両振動のPSD4-1の算出方法を図7に示す。車両振動のPSD4-1は車両の伝達関数300とばらつきを考慮したPSD4を乗じることで算出する。具体的には、ばらつきを考慮したPSD4の各周波数のPSD値に、車両の伝達関数300の各周波数の応答倍率を乗じることで算出する。図7(a)に、横軸に周波数f、縦軸にPSDをとって、ばらつきを考慮したPSD4を例示し、図7(b)に、横軸に周波数f、縦軸に応答倍率rをとって、車両の伝達関数300を例示し、図7(c)に、横軸に周波数f、縦軸にPSDをとって、車両振動のPSD4-1を例示する。車両の伝達関数300は、例えば車両モデルによる解析や実車両の試験により求めることが考えられる。
【0034】
求めた車両振動のPSD4-1と車両振動のPSDに対応した管理値5-1から、管理値を超える確率7を算出する。図7(c)に、横軸に周波数f、縦軸にPSDをとって、車両振動のPSD4-1が車両振動のPSDに対応した管理値5-1を超える部分を黒の塗りつぶしにより例示する。上記以外は、第1の実施例と同じ処理フロー100により、保守要否を判定する。車両振動のPSD4-1を用いることで、より人間の乗り心地に即した保守管理を行うことができる。
【0035】
第3の実施例では、軌道の不整に起因する車両の振動を評価することができきる。
【実施例4】
【0036】
次に、図8を用いて、第4の実施例を説明する。第1の実施例において既に示された構成と同一の符号を付与された、同一の機能を有する部分については説明を省略する。
【0037】
第4の実施例では、軌道検測装置400および保守要否判断装置401を有する鉄道車両402-1を用いる。軌道検測装置400は鉄道車両402-1が軌道201を走行する際に、軌道不整データ1を計測するものである。保守要否判断装置401は、計測した軌道不整データ1を用いて、第1の実施例の処理フロー100に基づき、軌道の保守管理要否を判定するものである。本実施例により、鉄道車両402-1を走行させるだけで、軌道の保守管理要否を簡便に把握することが可能となる。保守要否判断装置401は、第3の実施例の処理フローを用いても構わない。また、軌道検測装置400に代えて振動計測装置を用いる場合には、保守要否判断装置401は、第2の実施例の処理フローを用いる。
【0038】
第4の実施例では、車両を走行させるだけで軌道の保守管理要否を判断できる。
【実施例5】
【0039】
次に、図9を用いて、第5の実施例を説明する。第1の実施例ないし第4の実施例のいずれかにおいて既に示された構成と同一の符号を付与された、同一の機能を有する部分については説明を省略する。
【0040】
実施例5は、計測した軌道不整データ1または車両振動データ1-1を用いて、第1の実施例ないし第3の実施例のいずれかの処理フローに基づき、軌道の保守管理要否を判定する保守要否判断装置401である。保守要否判断装置401は、第4の実施例のように車上に設置されてもよいし、地上に設置されてもよいし、持ち運びのできるものでもよい。
【0041】
保守要否判断装置401は、計測区間202の波形データを入力可能な波形データ入力部501と、計測区間202の波形データから軌道の保守要否を判断する保守要否判断部502と、判断結果を出力可能な判断結果出力部503とを有する。波形データは、軌道不整の波形データ1でもよいし、車両振動の波形データ1-1でもよい。
【0042】
保守要否判断部502は、計測区間202の波形データを小区間203の波形データに分割する分割部504と、各小区間203の波形データを周波数成分に分解したスペクトルを算出する第1の算出部505と、周波数毎に周波数成分の分布を算出する第2の算出部506と、周波数成分の分布からなるスペクトルがスペクトルの管理値を超える確率を算出する第3の算出部507と、管理値を超える確率が確率の管理値を超える場合、軌道の保守が必要であると判断する判断部508とを有する。スペクトルは、PSDでもよいし、フーリエスペクトルでもよい。分布は、頻度分布でもよいし、頻度分布に対応する確率密度関数でもよい。
【0043】
保守要否判断装置401は、スペクトルの管理値を入力可能なスペクトルの管理値入力部509を有してもよいし、確率の管理値を入力可能な確率の管理値入力部510を有してもよいし、判断結果を記録可能な判断結果記録部511を有してもよい。判断結果出力部503は、判断結果を表示可能な判断結果表示部でもよい。
【0044】
第5の実施例は、第1の実施例ないし第3の実施例のいずれかと同じ効果を奏する。
【0045】
なお、本発明は、エレベータの軌道など、軌道一般の保守要否判断にも適用できる。また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…軌道不整データ、1-1…車両振動データ、2…小区間のPSD、3…PSDの頻度分布、4…ばらつきを考慮したPSD、4-1…車両振動のPSD、5…PSDの管理値、5-1…車両振動のPSDに対応した管理値、7…A:管理値を超える確率、8…B:確率の管理値、100…処理フロー、101…小区間に分割、102…小区間のPSDの算出、103…PSDの頻度分布算出、104…管理値を超える確率算出、105…A>B、106…軌道保守の実施要、107…軌道保守の実施不要、201…軌道、202…計測区間、203…小区間、300…車両の伝達関数、400…軌道検測装置、401…保守要否判断装置、402…鉄道車両、402-1…軌道検測装置と保守要否判断装置を有した鉄道車両、501…波形データ入力部、502…保守要否判断部、503…判断結果出力部、504…分割部、505…第1の算出部、506…第2の算出部、507…第3の算出部、508…判断部、509…スペクトルの管理値入力部、510…確率の管理値入力部、511…判断結果記録部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9