(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】電磁波検出装置、測距装置および電磁波検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/86 20200101AFI20231213BHJP
G01S 17/66 20060101ALI20231213BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20231213BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S17/66
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2020114476
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩希
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-160835(JP,A)
【文献】特開2018-200927(JP,A)
【文献】特開2009-186260(JP,A)
【文献】特開2013-083510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0157269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出する第1の検出部と、
前記空間の画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記対象のうち所定のトラッキング対象
の位置を認識し、認識した当該トラッキング対象の位置に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに
、前記画像情報取得部が前記画像情報を取得するタイミングを近づけるように制御する受光制御部と、を備える、電磁波検出装置。
【請求項2】
前記空間に電磁波を照射する照射系と、
前記照射系が前記空間に電磁波を照射する方向およびタイミングを制御する照射制御部と、を備え、
前記受光制御部は、前記照射制御部が前記空間のトラッキング対象を含む方向に電磁波を照射するタイミングであるトラッキング対象照射タイミングを算出し、前記トラッキング対象照射タイミングに基づいて画像情報取得部に前記画像情報を取得させる、請求項1に記載の電磁波検出装置。
【請求項3】
前記画像情報取得部は、所定のタイミングに従って前記画像情報を取得し、
前記受光制御部は、前記所定のタイミングを遅延させることで、前記画像情報を取得させるタイミングをトラッキング対象照射タイミングに近づけ、
前記所定のタイミングは、前記受光制御部が前記所定のタイミングを遅延させない場合に、一定のレートで前記画像情報を取得するタイミングである、請求項2に記載の電磁波検出装置。
【請求項4】
前記画像情報取得部が取得した前記画像情報に基づいて、前記対象から前記トラッキング対象を決定するトラッキング処理部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項5】
前記第1の検出部は、照射方向を変えながら前記電磁波を照射することで前記トラッキング対象を走査し、
前記画像情報取得部が1フレーム分の前記画像情報を取得するのに要する時間は、前記第1の検出部が1フレーム分の前記反射波を検出するのに要する時間より短い、請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項6】
前記画像情報における所定位置と、前記第1の検出部が検出する前記所定位置からの前記反射波と、の光軸が一致するように構成された、請求項1から5のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項7】
光を検出し、前記画像情報を出力する第2の検出部と、を備え、
前記反射波を含む電磁波を、前記反射波が前記第1の検出部に進行し、前記光が前記第2の検出部に進行するように分離する分離部と、を備える、請求項6に記載の電磁波検出装置。
【請求項8】
前記反射波の検出および前記画像情報における前記トラッキング対象の位置に基づいて、前記トラッキング対象についての位置情報を生成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電磁波検出装置。
【請求項9】
異なるタイミングにおいて検出した、前記トラッキング対象についての位置情報に基づき前記トラッキング対象の移動速度を算出する、請求項8に記載の電磁波検出装置。
【請求項10】
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出する第1の検出部と、
前記空間の画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記対象のうち所定のトラッキング対象
の位置を認識し、認識した当該トラッキング対象の位置に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに
、前記画像情報取得部が前記画像情報を取得するタイミングを近づけるように制御する受光制御部と、
前記第1の検出部の検出情報に基づいて、前記対象との距離を演算する演算部と、を備える、測距装置。
【請求項11】
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出する第1の検出部と、
前記空間の画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記画像情報取得部が前記画像情報を取得するタイミングを、前記対象のうち所定のトラッキング対象に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに近づけるように制御する受光制御部と、を備え、
前記第1の検出部は、照射方向を変えながら前記電磁波を照射することで前記トラッキング対象を走査し、
前記画像情報取得部が1フレーム分の前記画像情報を取得するのに要する時間は、前記第1の検出部が1フレーム分の前記反射波を検出するのに要する時間より短い、電磁波検出装置。
【請求項12】
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出することと、
前記空間の画像情報を取得することと、
前記対象のうち所定のトラッキング対象の位置を認識し、認識した当該トラッキング対象の位置に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに、前記画像情報を取得するタイミングを近づけるように制御することと、を含む、電磁波検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波検出装置および測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波を検出する複数の検出器による検出結果から周囲に関する情報を得る装置が開発されている。このような装置において、撮像素子によって被写体を含む撮像画像を取得するとともに、被写体で反射した反射波を含む電磁波を検出することによって被写体までの距離等を検出することがある。例えば、距離情報に基づいて、複数の物体がすれ違い等によって交差しても区別可能な電磁波検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、反射波を含む電磁波の1フレーム分の距離情報の検出に要する時間は、撮像素子によって1フレーム分の撮像画像が取得される時間より長い。1フレーム分の距離情報の検出するために、電磁波を照射している間に、複数フレーム分の撮像画像が取得され得る。したがって、被写体に対して電磁波が照射されるタイミングと、撮像素子によって1フレーム分の撮像画像が取得されるタイミングは必ずしも一致しない。すなわち、撮像画像を取得したタイミングにおける被写体の実際の位置と、被写体までの距離を検出するために電磁波を照射したタイミングにおける被写体の実際の位置とがずれることによって、被写体の位置の正確な検出を妨げるおそれがある。
【0005】
上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、被写体の位置を正確に検出できる電磁波検出装置および測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、第1の観点による電磁波検出装置は、
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出する第1の検出部と、
前記空間の画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記画像情報取得部が前記画像情報を取得するタイミングを、前記対象のうち所定のトラッキング対象に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに近づけるように制御する受光制御部と、を備える。
【0007】
また、第2の観点による測距装置は、
対象が存在する空間の複数の方向に向けて照射された電磁波が前記対象で反射した反射波を検出する第1の検出部と、
前記空間の画像情報を取得する画像情報取得部と、
前記画像情報取得部が前記画像情報を取得するタイミングを、前記対象のうち所定のトラッキング対象に向けて前記電磁波が照射されるタイミングに近づけるように制御する受光制御部と、
前記第1の検出部の検出情報に基づいて、前記対象との距離を演算する演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被写体の位置を正確に検出できる電磁波検出装置および測距装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電磁波検出装置の概略構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の電磁波検出装置の第1の状態と第2の状態における電磁波の進行方向を説明するための図である。
【
図3】
図3は、反射波を含む電磁波の検出を説明するための図である。
【
図4】
図4は、距離の演算を説明するためのタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、対象が存在する空間の撮像画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の撮像画像と同じ空間を距離に基づく画像で示した図である。
【
図7】
図7は、撮像画像および距離画像の取得タイミングを例示する図である。
【
図8】
図8は、トラッキング対象照射タイミングについて説明するための図である。
【
図9】
図9は、トラッキング対象の3次元の位置検出を説明するための図である。
【
図10】
図10は、照射制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、受光制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態に係る電磁波検出装置10の概略構成を示す構成図である。電磁波検出装置10は、照射系111と、受光系110と、制御部14と、を備えて構成される。本実施形態において、電磁波検出装置10は測距装置として機能する。本実施形態では、電磁波検出装置10が1つの照射系111と1つの受光系110を有するものとして説明するが、照射系111および受光系110は1つに限られるものではなく、複数の照射系111の各々に対して、複数の受光系110の各々が対応付けられる構成であり得る。
【0011】
照射系111は、照射部12と、偏向部13と、を備える。受光系110は、入射部15と、分離部16と、第1の検出部20と、第2の検出部17と、切替部18と、第1の後段光学系19と、を備える。制御部14は、画像情報取得部141と、トラッキング処理部142と、照射制御部143と、受光制御部144と、演算部145と、を備える。電磁波検出装置10の各機能ブロックの詳細については後述する。
【0012】
図面において、各機能ブロックを結ぶ破線は、制御信号または通信される情報の流れを示す。破線が示す通信は有線通信であってよいし、無線通信であってよい。また、実線の矢印はビーム状の電磁波を示す。また、図面において、対象obは、電磁波検出装置10の被写体である。被写体は、例えば道路、中央分離帯、歩道、街路樹、車両等の物を含んでよいし、人を含んでよい。また対象obは1つに限られない。
【0013】
電磁波検出装置10は、被写体を含む画像を取得するとともに、被写体で反射した反射波を検出することによって被写体を識別可能である。上記のように、電磁波検出装置10は、対象obまでの距離を計測する演算部145を備えており、測距装置として機能する。
【0014】
(照射系)
照射系111は、対象obが存在する空間に電磁波を照射する。本実施形態において、照射系111は、照射部12が照射する電磁波を、偏向部13を介して、対象obが存在する空間に向けて照射する。別の例として、照射系111は、照射部12が電磁波を対象obに向けて直接に照射する構成であってよい。
【0015】
照射部12は、赤外線、可視光線、紫外線および電波の少なくともいずれかを照射する。本実施形態において、照射部12は赤外線を照射する。また、本実施形態において、照射部12は、幅の細い、例えば0.5°のビーム状の電磁波を照射する。また、照射部12は電磁波をパルス状に照射する。照射部12は、電磁波照射素子として、例えばLED(Light Emitting Diode)を含んで構成され得る。また、照射部12は、電磁波照射素子として、例えばLD(Laser Diode)を含んで構成され得る。照射部12は、制御部14の制御に基づいて電磁波の照射および停止を切替える。ここで、照射部12は複数の電磁波照射素子をアレイ状に配列させたLEDアレイまたはLDアレイを構成し、複数本のビームを同時に照射させてよい。
【0016】
偏向部13は、照射部12が照射した電磁波を複数の異なる方向に出力させて、対象obが存在する空間に照射される電磁波の照射位置を変更する。複数の異なる方向への出力は、偏向部13の向きを変えながら照射部12からの電磁波を反射することで行ってよい。例えば偏向部13は、照射部12が照射した電磁波で一次元方向または二次元方向に対象obを走査する。ここで、照射部12が例えばLDアレイとして構成されている場合、偏向部13はLDアレイから出力される複数のビームの全てを反射させて、同一方向に出力させてよい。すなわち、照射系111は、1つまたは複数の電磁波照射素子を有する照射部12に対して1つの偏向部13を有してよい。
【0017】
偏向部13は、電磁波を出力する空間である照射領域の少なくとも一部が、受光系110における電磁波の検出範囲に含まれるように構成されている。したがって、偏向部13を介して対象obが存在する空間に照射される電磁波の少なくとも一部は、対象obの少なくとも一部で反射して、受光系110において検出され得る。ここで、照射波が対象obの少なくとも一部で反射した電磁波を反射波と称する。照射波とは、対象obが存在する空間の複数の方向に向けて、照射系111から照射される電磁波である。
【0018】
偏向部13は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ポリゴンミラー、およびガルバノミラーなどを含む。本実施形態において、偏向部13は、MEMSミラーを含む。
【0019】
偏向部13は、制御部14の制御に基づいて、電磁波を反射する向きを変える。また、偏向部13は、例えばエンコーダなどの角度センサを有してよく、角度センサが検出する角度を、電磁波を反射する方向情報として、制御部14に通知してよい。このような構成において、制御部14は、偏向部13から取得する方向情報に基づいて、電磁波の照射位置を算出し得る。また、制御部14は、偏向部13に電磁波を反射する向きを変えさせるために入力する駆動信号に基づいても照射位置を算出し得る。
【0020】
(受光系)
以下において、「反射波を含む電磁波」は、対象obでの反射波を含んで受光系110に入射する電磁波を意味する。つまり、照射波と区別するために、受光系110に入射する電磁波は「反射波を含む電磁波」と称されることがある。反射波を含む電磁波は、照射系111から照射された電磁波が対象obで反射した反射波のみならず、太陽光などの外光、外光が対象obで反射した光などを含む。
【0021】
入射部15は、少なくとも1つの光学部材を有する光学系であって、被写体となる対象obの像を結像させる。光学部材は、例えばレンズ、ミラー、絞りおよび光学フィルタ等の少なくとも1つを含む。
【0022】
分離部16は、入射部15と、入射部15から所定の位置をおいて離れた対象obの像の、入射部15による結像位置である一次結像位置との間に設けられている。分離部16は、反射波を含む電磁波を波長に応じて分離し、第1の方向d1または第2の方向d2に進行するように分離する。分離部16は、反射波を含む電磁波を、反射波と、反射波を除く電磁波とに分離してよい。反射波を除く電磁波は、例えば可視光等の光を含んでよい。
【0023】
本実施形態において、分離部16は、反射波を含む電磁波の一部を第1の方向d1に反射し、別の一部を第2の方向d2に透過する。本実施形態において、分離部16は、入射する電磁波のうち、太陽光などの環境光が対象obで反射した可視光を第1の方向d1に反射する。また、分離部16は、入射する電磁波のうち、照射部12が照射した赤外線が対象obで反射した赤外線を第2の方向d2に透過する。別の例として、分離部16は、入射する電磁波の一部を第1の方向d1に透過し、電磁波の別の一部を第2の方向d2に反射してよい。また、分離部16は、入射する電磁波の一部を第1の方向d1に屈折させ、電磁波の別の一部を第2の方向d2に屈折させてよい。分離部16は、例えば、ハーフミラー、ビームスプリッタ、ダイクロイックミラー、コールドミラー、ホットミラー、メタサーフェス、偏向素子およびプリズムなどである。
【0024】
第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行する電磁波の経路上に、設けられている。第2の検出部17は、第1の方向d1における対象obの結像位置または結像位置の近傍に、設けられている。第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行した電磁波を検出する。
【0025】
また、第2の検出部17は、分離部16から第1の方向d1に進行する電磁波の第1の進行軸が、第2の検出部17の第1の検出軸に平行となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第1の進行軸は、分離部16から第1の方向d1に進行する、放射状に広がりながら伝播する電磁波の中心軸である。本実施形態において、第1の進行軸は、入射部15の光軸を分離部16まで延ばし、分離部16において第1の方向d1に平行になるように折曲げた軸である。第1の検出軸は、第2の検出部17の検出面の中心を通り、検出面に垂直な軸である。
【0026】
さらに、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸の間隔が第1の間隔閾値以下となるように配置されていてよい。また、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸が一致するように配置されていてよい。本実施形態において、第2の検出部17は、第1の進行軸および第1の検出軸が一致するように配置されている。
【0027】
また、第2の検出部17は、第1の進行軸と、第2の検出部17の検出面とのなす第1の角度が第1の角度閾値以下または所定の角度となるように、分離部16に対して配置されていてよい。本実施形態において、第2の検出部17は、第1の角度が90°となるように配置されている。
【0028】
本実施形態において、第2の検出部17は、パッシブセンサである。本実施形態において、第2の検出部17は、さらに具体的には、素子アレイを含む。例えば、第2の検出部17は、イメージセンサまたはイメージングアレイなどの撮像素子を含み、検出面において結像した電磁波による像を撮像して、撮像した対象obを含む空間の画像情報を生成する。
【0029】
本実施形態において、第2の検出部17は、さらに具体的には可視光の像を撮像する。第2の検出部17は、生成した画像情報を信号として制御部14に送信する。第2の検出部17は、赤外線、紫外線、および電波の像など、可視光以外の像を撮像してよい。
【0030】
切替部18は、分離部16から第2の方向d2に進行する電磁波の経路上に設けられている。切替部18は、第2の方向d2における対象obの一次結像位置または一次結像位置近傍に、設けられている。
【0031】
本実施形態において、切替部18は、結像位置に設けられている。切替部18は、入射部15および分離部16を通過した電磁波が入射する作用面asを有している。作用面asは、2次元状に沿って並ぶ複数の切替素子seによって構成されている。作用面asは、後述する第1の状態および第2の状態の少なくともいずれかにおいて、電磁波に、例えば、反射および透過などの作用を生じさせる面である。
【0032】
切替部18は、作用面asに入射する電磁波を、第3の方向d3に進行させる第1の状態と、第4の方向d4に進行させる第2の状態とに、切替素子se毎に切替可能である。本実施形態において、第1の状態は、作用面asに入射する電磁波を、第3の方向d3に反射する第1の反射状態である。また、第2の状態は、作用面asに入射する電磁波を、第4の方向d4に反射する第2の反射状態である。
【0033】
本実施形態において、切替部18は、さらに具体的には、切替素子se毎に電磁波を反射する反射面を含んでいる。切替部18は、切替素子se毎の各々の反射面の向きを任意に変更することにより、第1の反射状態および第2の反射状態を切替素子se毎に切替える。
【0034】
本実施形態において、切替部18は、例えばDMD(Digital Micro mirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)を含む。DMDは、作用面asを構成する微小な反射面を駆動することにより、切替素子se毎に反射面を作用面asに対して+12°および-12°のいずれかの傾斜状態に切替可能である。作用面asは、DMDにおける微小な反射面を載置する基板の板面に平行である。
【0035】
切替部18は、制御部14の制御に基づいて、第1の状態および第2の状態を、切替素子se毎に切替える。例えば、
図2に示すように、切替部18は、同時に、一部の切替素子se1を第1の状態に切替えることにより切替素子se1に入射する電磁波を第3の方向d3に進行させ得、別の一部の切替素子se2を第2の状態に切替えることにより切替素子se2に入射する電磁波を第4の方向d4に進行させ得る。より具体的には、制御部14は偏向部13からの方向情報に基づいて、電磁波が照射された方向または電磁波が照射された位置を検出する。そして、検出した電磁波の照射方向または照射位置に応じた切替素子se1を第1の状態とし、それ以外の切替素子se1は第2の状態とすることで、対象obからの反射波を選択的に第3の方向d3に進行させる。分離部16を通過した電磁波のうち、対象obからの反射波以外の電磁波は第4の方向d4に進行するため、第1の検出部20には入射しない。
【0036】
図1に示すように、第1の後段光学系19は、切替部18から第3の方向d3に設けられている。第1の後段光学系19は、例えば、レンズおよびミラーの少なくとも一方を含む。第1の後段光学系19は、切替部18において進行方向を切替えられた電磁波としての対象obの像を結像させる。
【0037】
第1の検出部20は反射波を検出する。第1の検出部20は、切替部18による第3の方向d3に進行した後に第1の後段光学系19を経由して進行する電磁波を検出可能な位置に配置されている。第1の検出部20は、第1の後段光学系19を経由した電磁波、すなわち第3の方向d3に進行した電磁波を検出して、検出信号を出力する。
【0038】
また、第1の検出部20は、切替部18とともに、分離部16から第2の方向d2に進行して切替部18により第3の方向d3に進行方向が切替えられた電磁波の第2の進行軸が、第1の検出部20の第2の検出軸に平行となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第2の進行軸は、切替部18から第3の方向d3に進行する、放射状に広がりながら伝播する電磁波の中心軸である。本実施形態において、第2の進行軸は、入射部15の光軸を切替部18まで延ばし、切替部18において第3の方向d3に平行になるように折曲げた軸である。第2の検出軸は、第1の検出部20の検出面の中心を通り、検出面に垂直な軸である。
【0039】
さらに、第1の検出部20は、切替部18とともに、第2の進行軸および第2の検出軸の間隔が第2の間隔閾値以下となるように配置されていてよい。第2の間隔閾値は、第1の間隔閾値と同じ値であってよいし、異なる値であってよい。また、第1の検出部20は、第2の進行軸および第2の検出軸が一致するように配置されていてよい。本実施形態において、第1の検出部20は、第2の進行軸および第2の検出軸が一致するように配置されている。
【0040】
また、第1の検出部20は、切替部18とともに、第2の進行軸と、第1の検出部20の検出面とのなす第2の角度が第2の角度閾値以下または所定の角度となるように、分離部16に対して配置されていてよい。第2の角度閾値は、第1の角度閾値と同じ値であってよいし、異なる値であってよい。本実施形態において、第1の検出部20は、上記のように、第2の角度が90°となるように配置されている。
【0041】
本実施形態において、第1の検出部20は、照射部12から対象obに向けて照射された電磁波の反射波を検出するアクティブセンサである。第1の検出部20は、例えばAPD(Avalanche PhotoDiode)、PD(PhotoDiode)および測距イメージセンサなどの単一の素子を含む。また、第1の検出部20は、APDアレイ、PDアレイ、測距イメージングアレイ、および測距イメージセンサなどの素子アレイを含むものであってよい。
【0042】
本実施形態において、第1の検出部20は、被写体からの反射波を検出したことを示す検出情報を信号として制御部14に送信する。第1の検出部20は、さらに具体的には、赤外線の帯域の電磁波を検出する。
【0043】
また、本実施形態において、第1の検出部20は、対象obまでの距離を測定するための検出素子として用いられる。換言すると、第1の検出部20は、測距センサを構成する素子であって、電磁波を検出できればよく、検出面において結像される必要がない。それゆえ、第1の検出部20は、第1の後段光学系19による結像位置である二次結像位置に設けられなくてよい。すなわち、この構成において、第1の検出部20は、全ての画角からの電磁波が検出面上に入射可能な位置であれば、切替部18により第3の方向d3に進行した後に第1の後段光学系19を経由して進行する電磁波の経路上のどこに配置されてよい。
【0044】
以上のような構成を有することにより、電磁波検出装置10は撮像画像50(
図5参照)上における所定位置(画像情報における所定位置)と、当該位置の距離を測定するための反射波の光軸を一致させている。
【0045】
ここで、
図3は反射波を含む電磁波の検出を説明するための図である。
図3において、対象obが存在する空間は、照射系111が電磁波を照射する1フレームあたりの回数で分割され、格子状に区分されている。一般に、反射波を含む電磁波の1フレーム分の検出に要する時間は、撮像素子等によって1フレーム分の撮像画像50が取得される時間より長い。換言すると、画像情報取得部141が1フレーム分の画像情報を取得する時間は、第1の検出部20が1フレーム分の反射波を検出する時間より早い。一例として、撮像素子は1920×1080ピクセルの撮像画像50を1秒間に30フレーム取得可能である。一方、照射した電磁波の反射波を受光しての距離測定に要する時間は、1ポイントで20μs程度かかることがある。したがって、空間からの反射波を受光して距離情報を取得する地点の数(ポイント数)は、1フレームあたりで1920×1080よりも小さくなる。
【0046】
図3の例では、照射部12から照射されたビーム状の電磁波が偏向部13で反射されて、照射波として、空間における1つの領域Rに入射されている。本実施形態において、照射波は赤外線である。領域Rに存在する対象obで反射した反射波を含む電磁波が、入射部15に入射される。本実施形態において、反射波は赤外線である。また、反射波を含む電磁波は、外光が領域Rに存在する対象obで反射した可視光を含む。分離部16は、反射波を含む電磁波のうち可視光を第1の方向d1に反射する。反射された可視光は第2の検出部17で検出される。また、分離部16は、反射波を含む電磁波のうち赤外線を第2の方向d2に透過する。分離部16を透過した赤外線は、切替部18で反射して、少なくとも一部が第3の方向d3に進行する。第3の方向d3に進行した赤外線は、第1の後段光学系19を通って、第1の検出部20で検出される。
【0047】
(制御部)
照射制御部143は、照射系111を制御する。照射制御部143は、例えば照射部12に、電磁波の照射および停止を切替えさせる。照射制御部143は、例えば偏向部13に、電磁波を反射する向きを変えさせる。
【0048】
受光制御部144は、受光系110を制御する。受光制御部144は、例えば切替部18に、第1の状態および第2の状態を切替素子se毎に切替えさせる。また、詳細は後述するが、受光制御部144によって第2の検出部17の撮像のタイミング等が指定される。受光制御部144は、照射制御部143と通信して、電磁波の照射タイミングに基づいて受光系110を制御し得る。
【0049】
画像情報取得部141は、空間からの電磁波を検出する第2の検出部17から、対象obが存在する空間の画像情報を取得する。また、画像情報取得部141は、画像情報に基づいて空間を撮像した撮像画像50を生成してよい。撮像画像50は、空間の輝度を示す輝度画像であってよい。
図5は、対象obが存在する空間の撮像画像50の一例を示す図である。
図5の例において、対象obは前方を走行中の車両、道路、白線および側壁等を含む。ここで、輝度画像とは、例えば対象の各点の輝度値が検出された画像であり、カラー画像(RGB画像)およびモノクロ画像等が含まれる。
【0050】
演算部145は、第1の検出部20の検出情報に基づいて、対象obとの距離を演算する。演算部145は、取得した検出情報に基づいて、例えばToF(Time-of-Flight)方式で距離を演算可能である。
【0051】
図4に示すように、制御部14は、照射部12に電磁波放射信号を入力することにより、照射部12にパルス状の電磁波を照射させる(“電磁波放射信号”欄参照)。照射部12は、入力された電磁波放射信号に基づいて電磁波を照射する(“照射部放射量”欄参照)。照射部12が照射し、かつ、偏向部13が反射して、対象obが存在する空間である照射領域に照射された電磁波は、照射領域において反射する。制御部14は、照射領域の反射波の入射部15による切替部18における結像領域の中の少なくとも一部の切替素子seを第1の状態に切替え、他の切替素子seを第2の状態に切替える。そして、第1の検出部20は、照射領域において反射された電磁波を検出するとき(“電磁波検出量”欄参照)、検出情報を制御部14に通知する。
【0052】
演算部145は、検出情報を含む上記の信号の情報を取得する。演算部145は、例えば、時間計測LSI(Large Scale Integrated circuit)を含み、照射部12に電磁波を照射させた時期T1から、検出情報を取得(“検出情報取得”欄参照)した時期T2までの時間ΔTを計測する。演算部145は、時間ΔTに光速を乗算し、かつ、2で除算することにより、照射位置までの距離を算出する。
【0053】
図6は、
図5の撮像画像50と同じ空間を距離に基づく画像(距離画像60)で示した図である。距離画像60は、演算部145が算出した距離を可視化した画像である。
図6の例において、白い部分の距離が遠く、黒い部分の距離が近い。距離画像60において、例えば前方を走行中の車両は、ほぼ同じ距離にあるため、全体が同じ色で平坦に示されている。ここで、上記のように、空間からの反射波を受光して距離情報を取得する地点の数は、1フレームあたりで撮像画像50のピクセル数よりも少ない(
図3参照)。そのため、距離画像60は、撮像画像50よりも低解像度である。ここで、距離画像60の電磁波の検出の解像度は、被写体を含む空間における電磁波による距離等の検出個所数、すなわち距離情報を取得する地点の数である。レーザーによって空間をスキャンする場合には、電磁波の検出の解像度は、対象空間の1回のスキャンにおけるレーザーの照射箇所の数を指す。
【0054】
トラッキング処理部142は、画像情報取得部141が取得した画像情報に基づいて、撮像画像50に含まれるいくつかの対象obの中からトラッキング対象を決定する。トラッキング対象は例えば移動体である。トラッキング処理部142は、トラッキング対象の撮像画像50における位置を連続的に検出することによって追跡(トラッキング)を行う。
【0055】
トラッキング処理部142は、例えば撮像画像50から物体を検出する。物体の検出は、公知の種々の方法で行うことができる。例えば、物体の検出方法は、物体の形状認識による方法、テンプレートマッチングによる方法、画像から特徴量を算出しマッチングに利用する方法等を含む。物体の形状認識は、画像から背景差分または動き検出等の方法により物体を抽出し、この物体の形状が目的とする物体の形状と一致するか否かを判断することを含む。テンプレートマッチングは、検出対象の物体のテンプレートを用意し画像上でスライドさせ、画像全体の中にテンプレートの画像との類似度が高い部分画像が存在するか探索するものである。特徴量を用いる方法は、画像からパターンを認識するのに有用な特徴を数値化した特徴量を抽出し、認識対象の物体の検出に使用するものである。特徴量は、Haar-like特徴量、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)特徴量、等多くの特徴量から選択される。この方法では、認識対象の物体の特徴量のパターンと画像とのマッチングにより、画像中の物体の検出が行われる。この認識方法では、予め多数の学習用の画像から特徴量を算出し、その結果をコンピュータに学習させることができる。学習した結果に基づいて、識別器が認識対象物を認識する。特徴量を用いた物体の検出には、ディープラーニングを利用することができる。
【0056】
トラッキング処理部142は、撮像画像50に含まれる複数の物体を同時に認識することができる。トラッキング処理部142は、物体を認識すると、撮像画像50において物体の占める領域を検出する。トラッキング処理部142は、画像情報取得部141から時系列で取得した撮像画像50に基づいて、検出した物体が移動体であるか否かを判定する。移動体の判定は、例えば、オプティカルフロー法を用いて行うことができる。オプティカルフロー法は、ブロックマッチング法、勾配法およびLucas-Kanade(LK)法を含む。トラッキング処理部142は、物体の種別を判定してよい。物体の種別は、歩行者、自転車、自動二輪車、自動車および道路上の障害物等を含む。トラッキング処理部142は、識別した物体から、移動体を含むトラッキング対象を決定する。つまり、トラッキング対象となる物体のうち、少なくとも1つは移動体である。
【0057】
また、トラッキング処理部142は、演算部145から距離情報を受信する。トラッキング処理部142は、画像情報と距離情報とに基づいて、トラッキング対象のトラッキングを行う。トラッキングとは物体の画像上での位置を追跡することを意味する。トラッキング処理部142は、トラッキングを行っている間、トラッキング対象の撮像画像50における物体の占める領域の座標を把握する。
【0058】
トラッキングを行う方法には、領域ベースの物体追跡手法と、特徴点ベースの物体追跡手法とが含まれる。領域ベースの物体追跡手法には、更新テンプレートマッチング、アクティブ探索法、Mean-shift法、パーティクルフィルタ等が含まれる。特徴点ベースの物体追跡手法には、KLT(Kanade-Lucas-Tomasi)法、SURF Tracking等が含まれる。
【0059】
トラッキング処理部142がトラッキング処理を行う間、2つ以上の物体が撮像画像50においてすれ違う、または、交差することがある。2つ以上の物体が撮像画像50上で重なり合うと、その時点の画像から2つ以上の物体を別々の物体として識別できなくなることがある。このため、トラッキング中の物体が撮像画像50上で重なり合うと、その前後で追跡している物体がすり替わることがある。このようなことを避けるため、トラッキング処理部142は、画像情報に加えて距離情報を利用する。また、距離情報は、トラッキング中の物体の実空間における存在位置を認識するために利用されてよい。
【0060】
トラッキング処理部142は、2つ以上の物体が互いに近づいて、少なくとも部分的に重複した場合、距離情報に基づいて2つ以上の物体を区別する。このようにすることによって、重なり合う2つ以上の物体を、距離を用いて区別することができる。
【0061】
ここで、制御部14は、1つ以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、アクセス可能なメモリからプログラムをロードして、画像情報取得部141、トラッキング処理部142、照射制御部143、受光制御部144および演算部145として動作してよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサの少なくともいずれかを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御部14は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)の少なくともいずれかを含んでよい。
【0062】
(画像情報と距離情報)
上記のように、撮像画像50が例えば1秒間に30フレーム取得されるのに対し、反射波を受光しての距離測定に要する時間は1ポイントで20μs程度かかることがある。そのため、1フレーム分の距離を測定する間に、複数フレーム(例えば5フレーム)の撮像画像50が取得され得る。1フレーム分の距離情報は、照射波が空間における最初の領域から最後の領域までをスキャンして、それらの反射波に基づく検出情報等を取得することによって算出される。
【0063】
ここで、1フレーム分の距離を計測する場合において、照射波が空間をスキャンする間に撮像画像50は次々と更新される。照射波がトラッキング対象に照射されるタイミングと、撮像画像50が取得されるタイミングとは必ずしも一致しない。したがって、移動するトラッキング対象の距離情報の取得タイミングと画像情報の取得タイミングとには時間差が生じる。つまり、トラッキング対象への照射波によるスキャンがされ反射波が検出された後で、画像情報が取得され得る。トラッキング対象の位置については、電磁波検出装置10からみて奥行方向(以下z方向という)は反射波の検出によって検出され、電磁波検出装置10からみて上下左右方向(以下xy方向という)は画像情報から検出しうる。したがって、距離情報の取得のために、トラッキング対象に照射波を照射したタイミングと、画像情報を取得したタイミングが異なると、トラッキング対象の3次元の位置情報を正確に検出することができないという問題が生じ得る。
【0064】
本実施形態に係る電磁波検出装置10は、以下に説明するように、画像情報取得部141が画像情報を取得するタイミングを、トラッキング対象に向けて電磁波が照射されるタイミングに近づけるように制御することによって、トラッキング対象の3次元の位置を正確に検出することができる。
【0065】
図7は、撮像画像50および1フレーム分の距離情報の取得タイミングを例示する図である。
図8は、後述するトラッキング対象照射タイミングについて説明するための図である。
図9は、トラッキング対象の3次元の位置検出を説明するための図である。
【0066】
図7に示された領域R
1~R
15は、照射系111が電磁波を照射する空間の位置に対応する。
図7~
図9の例において、1フレーム分の撮像画像50では空間中の領域R
1~R
15の15ポイントに対して電磁波が照射されるとして説明する。照射系111は、領域R
1~R
15に対応する空間の位置に向けて電磁波を照射する。このとき、照射系111は、領域R
1~R
15の順に電磁波を照射することで空間をスキャンする。領域R
1~R
15に対応する空間の位置に向けて順に電磁波が照射されて、例えば時刻t
aで1フレーム分の距離情報が生成され得る。その後に、領域R
1~R
15に対応する空間の位置に順に電磁波が照射されて、例えば時刻t
cで次の1フレームの距離情報が生成され得る。時刻t
aと時刻t
cとの中間のタイミングである時刻t
bにおいて、照射系111は領域R
8に対応する空間の位置に向けて電磁波を照射する。ここで、領域R
8に対応する空間の位置に向けて照射された電磁波は、トラッキング対象に照射され、その反射波によってトラッキング対象の距離情報を取得しうる。
【0067】
図7に示すように、1フレーム分の距離情報が取得される間に、複数フレームの撮像画像50が取得される。トラッキング処理部142は、例えば複数の撮像画像50のフレームFI
pを用いて、トラッキング対象を決定する。トラッキング対象は、例えば前方を走行中の車両である。
図7~
図9の例において、トラッキング対象である車両は、撮影画像においてxy方向で右から左へと水平移動しているとする。トラッキング処理部142によってトラッキング対象が決定された後に、受光制御部144は、画像情報取得部141が第2の検出部17から画像情報を取得するタイミングを調整する。
【0068】
受光制御部144は、トラッキング処理部142からトラッキング対象を取得する。受光制御部144は、トラッキング処理部142から、複数の撮像画像50のフレームFI
pから予測されるトラッキング対象の大体の移動方向も取得してよい。ここで、照射制御部143は、
図8に示す共有クロックのタイミングで、領域R
1~R
15を変えながら電磁波を照射させるための照射トリガを生成する。照射制御部143は、照射トリガを照射系111に出力することによって、領域R
1~R
15に対応する空間の位置に向けて順に電磁波を照射させる。受光制御部144は、これらの情報を取得して、トラッキング対象に電磁波が照射されるタイミングであるトラッキング対象照射タイミングを算出する。
図7および
図8の例において、時刻t
bがトラッキング対象照射タイミングに対応する。受光制御部144は、
図8に示すように、時刻t
bのタイミングで画像情報を取得できるようシャッタトリガを生成して、第2の検出部17および画像情報取得部141に出力する。第2の検出部17はシャッタトリガに応じて画像情報を生成する。また、画像情報取得部141はシャッタトリガに応じて第2の検出部17から画像情報を取得する。このように、トラッキング対象に向けて電磁波が照射されるトラッキング対象照射タイミングの近く、もしくは同時に、画像情報取得部141は画像情報を取得する。
【0069】
図8に示すように、画像情報取得部141は、時刻t
bにおけるフレームFI
tbの画像情報を取得する。フレームFI
tbにおけるトラッキング対象の位置は、トラッキング対象に電磁波が照射されたときの位置(領域R
8)と一致する。トラッキング処理部142は、画像情報に基づいてトラッキング対象のxy方向の位置を検出し、距離情報に基づいてトラッキング対象のz方向の位置を検出し、これらを組み合わせることによって、トラッキング対象の3次元の正確な位置を検出することができる。ここで、トラッキング対象の位置(領域R
8)は、トラッキング処理部142がトラッキング対象照射タイミングよりも前のタイミングで取得された画像情報から検出しうる。
【0070】
例えば、1フレーム分の距離情報が生成され得る時刻taおよび時刻tcにおいても、画像情報取得部141は、フレームFItaおよびフレームFItcの撮像画像50を取得できる。しかし、トラッキング対象が移動している場合、時刻taおよび時刻tcにおいて取得した画像におけるトラッキング対象の位置(xy方向の位置)は、時刻tbの時点からずれているため、トラッキング対象の3次元の正確な位置を検出することができない。
【0071】
ここで、第2の検出部17は、フレームレートの維持よりもシャッタトリガで指示されたタイミングを優先させて画像情報を生成する。受光制御部144は、第2の検出部17がトラッキング対象照射タイミングに合わせて画像情報を生成できるよう、適切なタイミングでシャッタトリガを第2の検出部17および画像情報取得部141に出力する。第2の検出部17は、所定のタイミングで受光制御部144からのシャッタトリガを受信して所定のレートで画像情報を生成する。所定のタイミングは、通常、1秒間に30フレーム等の一定のレートで画像情報を生成するタイミングである。トラッキング対象照射タイミングが近づいた場合に、受光制御部144はシャッタトリガの出力タイミングを制御し、トラッキング対象照射タイミングに合わせてシャッタトリガを出力する。例えば、受光制御部144は、通常であればトラッキング対象照射タイミングの直前に出力すべきシャッタトリガの出力タイミングを遅延させることで、当該シャッタトリガをトラッキング対象照射タイミングに合わせて出力する。画像情報取得部141は、受光制御部144によって所定のタイミングが遅延されない場合に一定の通常レートで画像情報を取得するが、受光制御部144によって所定のタイミングが遅延されると、通常レートより少し低いレートで画像情報を取得することになる。
【0072】
ここで、
図9に示すように、トラッキング処理部142は、少なくとも2つのトラッキング対象照射タイミングにおいて取得された画像情報に基づいてトラッキング対象のxy方向の位置を検出し、同じタイミングで取得された距離情報に基づいてz方向の位置を検出して、これらを組み合わせる。つまり、トラッキング処理部142は、少なくとも2つのトラッキング対象への電磁波の照射タイミングにおいて、トラッキング対象の3次元の位置を検出する。
図9の例では、トラッキング処理部142は、位置(x
1,y
1,z
1)および位置(x
2,y
2,z
2)を検出する。そして、これら2つの位置と、位置を取得したタイミング(時間)に基づいて、トラッキング処理部142は、トラッキング対象の移動速度を算出することもできる。
【0073】
(制御方法)
照射制御部143は、例えば
図10のフローチャートに従って照射系111を制御する。また、受光制御部144は、例えば
図11のフローチャートに従って受光系110を制御する。
図10および
図11は、どちらも1フレーム分の処理を示すフローチャートである。また、
図10の処理は、
図11の処理と並行して実行される。
【0074】
照射制御部143は、第1のタイミングで電磁波をトラッキング対象の存在する空間へ向けて照射させる(ステップS1)。ここで、第1のタイミングは、一例として1秒間に6フレームに従う、一定の照射タイミングである。
【0075】
照射制御部143は、1フレーム分の照射が完了していない場合に(ステップS2のNo)、ステップS1の処理に戻る。照射制御部143は、1フレーム分の照射が完了するまで、第1のタイミングに従って、照射方向を変えながら電磁波を照射させる。照射制御部143は、1フレーム分の照射が完了した場合に(ステップS2のYes)、一連の処理を終了する。
【0076】
受光制御部144は、トラッキング対象の位置を認識する(ステップS11)。トラッキング対象の位置の認識は、上記のように、例えばトラッキング処理部142からトラッキング対象等を取得することを含む。また、トラッキング対象の位置の認識は、上記のように、照射制御部143から共有クロックおよび照射トリガ等を取得してトラッキング対象照射タイミングを算出することを含む。
【0077】
受光制御部144は、第2のタイミングでの次のシャッタトリガの出力までに照射する電磁波の照射位置がトラッキング対象の位置である場合に(ステップS12のYes)、ステップS13の処理に進む。つまり、受光制御部144は、トラッキング対象照射タイミングであれば、ステップS13の処理に進む。
【0078】
受光制御部144は、電磁波の照射位置がトラッキング対象の位置でない場合に(ステップS12のNo)、ステップS14の処理に進む。つまり、受光制御部144は、トラッキング対象照射タイミングでなければ、ステップS14の処理に進む。
【0079】
受光制御部144は、シャッタトリガの出力タイミングを遅延させて、トラッキング対象照射タイミングに合わせてシャッタトリガを生成して出力する。受光制御部144は、ステップS15の処理に進む。
【0080】
受光制御部144は、トラッキング対象照射タイミングでなければ、第2のタイミングでシャッタトリガを出力することで、第2の検出部17に画像情報を生成させる。また、受光制御部144は、画像情報取得部141に、第2のタイミングで画像情報を取得させる(ステップS14)。ここで、第2のタイミングは、一例として1秒間に30フレームに従う、一定のタイミングである。
【0081】
受光制御部144は、画像情報取得部141が、1フレーム分の画像情報を取得していない場合に(ステップS15のNo)、ステップS12の処理に戻る。受光制御部144は、画像情報取得部141が、1フレーム分の画像情報を取得した場合に(ステップS15のYes)、一連の処理を終了する。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る電磁波検出装置10は、上記の構成によって画像情報が取得されるタイミングを被写体に向けて照射波が照射されるタイミングに近づけることができる。そのため、電磁波検出装置10は、被写体の位置を正確に検出できる。
【0083】
(変形例)
本開示を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【0084】
上記の実施形態において、1フレーム分の反射波を検出する間におけるトラッキング対象照射タイミングは1つ(例えば
図8の時刻t
b)である。ここで、トラッキング対象照射タイミングは複数であってよい。例えば、トラッキング対象が領域R
3、R
8およびR
13の位置(
図7参照)にある場合に、領域R
3、R
8およびR
13のそれぞれに電磁波を照射するタイミングをトラッキング対象照射タイミングとしてよい。
【0085】
上記の実施形態において、受光制御部144は、通常、所定のタイミングで出力されているシャッタトリガの出力タイミングを制御することで、トラッキング対象照射タイミングに合わせて第2の検出部17と画像情報取得部141に画像情報を取得させた。ここで、シャッタトリガの出力タイミングを制御するのではなく、シャッタトリガに画像情報を取得すべきタイミングの情報を付加して、第2の検出部17と画像情報取得部141を制御してよい。
【0086】
上記の実施形態において、トラッキング対象照射タイミングと画像取得のタイミングが一致するように制御が行われた。ここで、トラッキング対象照射タイミングと画像情報の取得のタイミングは完全に一致させる必要がなく、通常のタイミングで画像情報を取得した場合に比べて、トラッキング対象照射タイミングに近いタイミングで画像情報を取得できるように制御してよい。
【0087】
上記の実施形態において、電磁波検出装置10は、上記のように、レーザー光を照射して、返ってくるまでの時間を直接測定するDirect ToFにより距離情報を作成する構成である。しかし、電磁波検出装置10は、このような構成に限られない。例えば、電磁波検出装置10は、電磁波を一定の周期で照射し、照射された電磁波と返ってきた電磁波との位相差から、返ってくるまでの時間を間接的に測定するFlash ToFにより距離情報を作成してよい。また、電磁波検出装置10は、他のToF方式、例えば、Phased ToFにより距離情報を作成してよい。
【0088】
上記の実施形態において、切替部18は、作用面asに入射する電磁波の進行方向を2方向に切替え可能であるが、2方向のいずれかへの切替えでなく、3以上の方向に切替え可能であってよい。
【0089】
上記の実施形態の切替部18において、第1の状態および第2の状態は、作用面asに入射する電磁波を、それぞれ、第3の方向d3に反射する第1の反射状態、および第4の方向d4に反射する第2の反射状態であるが、他の態様であってよい。
【0090】
例えば、第1の状態が、作用面asに入射する電磁波を、透過させて第3の方向d3に進行させる透過状態であってよい。上記の切替部18に代わる別構成の切替部181は、さらに具体的には、切替素子毎に電磁波を第4の方向d4に反射する反射面を有するシャッタを含んでいてよい。このような構成の切替部181においては、切替素子毎のシャッタを開閉することにより、第1の状態としての透過状態および第2の状態としての反射状態を切替素子毎に切替え得る。
【0091】
このような構成の切替部181として、例えば、開閉可能な複数のシャッタがアレイ状に配列されたMEMSシャッタを含む切替部が挙げられる。また、切替部181は、電磁波を反射する反射状態と電磁波を透過する透過状態とを液晶配向に応じて切替え可能な液晶シャッタを含む切替部が挙げられる。このような構成の切替部181においては、切替素子毎の液晶配向を切替えることにより、第1の状態としての透過状態および第2の状態としての反射状態を切替素子毎に切替え得る。
【0092】
また、電磁波検出装置10において、受光系110がさらに第2の後段光学系および第3の検出部を備えてよい。第2の後段光学系は、切替部18から第4の方向d4に設けられて、対象obの像を結像させる。第3の検出部は、切替部18による第4の方向d4に進行した後に第2の後段光学系を経由して進行する電磁波の経路上に設けられて、第4の方向d4に進行した電磁波を検出する。
【0093】
また、上記の実施形態において、電磁波検出装置10は、第2の検出部17がパッシブセンサであり、第1の検出部20がアクティブセンサである構成を有する。しかし、電磁波検出装置10は、このような構成に限られない。例えば、電磁波検出装置10において、第2の検出部17および第1の検出部20が共にアクティブセンサである構成でも、パッシブセンサである構成でも上記の実施形態と類似の効果が得られる。
【0094】
本実施形態において、電磁波検出装置10は、演算部145が対象obまでの距離を測定し、測距装置としての機能を備える。ここで、電磁波検出装置10は距離を測定するものに限定されない。例えば、電磁波検出装置10は、路上の障害物である対象obの存在を検出して警告する運転支援装置であってよい。このとき、制御部14は演算部145を含まない構成であってよい。別の例として、電磁波検出装置10は、周囲の不審な対象obの存在を検出する監視装置であってよい。
【0095】
画像情報取得部141、トラッキング処理部142、照射制御部143、受光制御部144および演算部145の一部は、制御部14に含まれるのでなく、制御部14と別に設けられてよい。例えば、演算部145は、制御部14から独立した制御装置として設けられてよい。
【0096】
上記の実施形態において代表的な例を説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本開示は、上記の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【0097】
また、本開示の解決手段を装置として説明してきたが、本開示は、これらを含む態様としても実現し得るものであり、また、これらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0098】
10 電磁波検出装置
12 照射部
13 偏向部
14 制御部
15 入射部
16 分離部
17 第2の検出部
18、181 切替部
19 第1の後段光学系
20 第1の検出部
50 撮像画像
60 距離画像
110 受光系
111 照射系
141 画像情報取得部
142 トラッキング処理部
143 照射制御部
144 受光制御部
145 演算部
as 作用面
d1、d2、d3、d4 第1の方向、第2の方向、第3の方向、第4の方向
ob 対象