IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特許7402131α,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】α,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20231213BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20231213BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20231213BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20231213BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20231213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231213BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F8/04
C08F36/04
C08F10/00
B01J35/10
B01J35/10 301J
B01J31/02 103Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020123799
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2021038377
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019156770
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松塚 啓司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】木口 真之介
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-169922(JP,A)
【文献】特表2008-546894(JP,A)
【文献】特開2006-096748(JP,A)
【文献】特開2011-131180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基担持無機多孔体(α)及び溶媒(Z)の存在下に、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリオレフィン(A)と、α,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又はα,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)とによるエステル結合形成反応を行う反応工程を有するα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法であって、溶媒(Z)が鉱物油(Z1)及び合成油(Z2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記反応工程中の溶媒(Z)が変性ポリオレフィン(A)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)、溶媒(Z)及び生成するα,β-不飽和カルボン酸エステルの全量に対して10~70重量%である請求項1に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記反応工程と同時に、又は前記反応工程の後に、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又はα,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)とによるエステル結合形成反応で生成する水及び/又は炭素数1~4のアルコールを除去する除去工程を有する請求項1又は2のいずれかに記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィン(A)が、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリブタジエン、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリブタジエン、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリイソプレン、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリイソプレン、ブタジエンとイソプレンとの共重合物であって少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性体及びブタジエンとイソプレンとの共重合物であって少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性体の水添物からなる群より選ばれる少なくとも1種の変性ポリジエンである請求項1~3のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項5】
前記除去工程において、前記反応工程における反応中の混合物中、又は前記反応工程で得られた反応混合物中に酸素を含む気体を通気する請求項3に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項6】
前記反応工程が、前記変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)とのエステル化反応であり、前記(B1)がアクリル酸又はメタクリル酸である請求項1~5のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
前記スルホン酸基担持無機多孔体(α)が、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物からなる無機多孔体にスルホン酸基を担持したスルホン酸基担持無機多孔体である請求項1~6のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項8】
前記(α)が、1~8,000μmの体積平均粒径を有する粒状物である請求項1~7のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項9】
前記(α)が、30m/g以上のBET比表面積を有する請求項1~8のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項10】
前記(α)が5~250mgKOH/gの酸価を有する請求項1~9のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項11】
前記(α)が、1.0~1.25のアスペクト比を有する粒子である請求項1~10のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【請求項12】
前記変性ポリオレフィン(A)の40℃における動粘度が500~20,000mm/sである請求項1~11のいずれか1項に記載のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールとα,β-不飽和カルボン酸又はその低級エステルとを反応させてα,β-不飽和カルボン酸エステルを製造する方法としては、例えば特許文献1に記載の方法が用いられている。
しかし、特許文献1で開示されたα,β-不飽和カルボン酸エステルを製造する方法は、水酸基を有する変性ポリオレフィンとα,β-不飽和カルボン酸又はその低級エステルとを反応させたα,β-不飽和カルボン酸エステルを高純度で製造できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4855014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水酸基を有する変性ポリオレフィンとα,β-不飽和カルボン酸又はその低級エステルとを反応させたα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法であって、未反応物及び副生成物が少ないα,β-不飽和カルボン酸エステルを得ることができる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)及び溶媒(Z)の存在下に、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリオレフィン(A)と、α,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又はα,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)とによるエステル結合形成反応を行う反応工程を有するα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法であって、溶媒(Z)が鉱物油(Z1)及び合成油(Z2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、未反応物及び副生成物が少ないα,β-不飽和カルボン酸エステルを製造することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)及び溶媒(Z)の存在下に、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリオレフィン(A)と、α,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又はα,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)とによるエステル結合形成反応を行う反応工程を有するα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法であって、溶媒(Z)が鉱物油(Z1)及び合成油(Z2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法である。
【0008】
本発明におけるスルホン酸基担持無機多孔体(α)(以下、単に(α)と表記する場合がある)は、無機多孔体にスルホン酸基含有化合物を固定化して担持させたものであり、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又はα,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)とによるエステル結合形成反応の触媒となるものである。
スルホン酸基を担持させる無機多孔体(以下の明細書中において、スルホン酸基を担持させることでスルホン酸基担持無機多孔体を形成する無機多孔体を、無機多孔体と記載する)としては、公知の無機多孔体が使用でき、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア及びジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種の無機物からなる無機多孔体が挙げられる。
具体的には、シリカからなる無機多孔体としてはシリカゲル、アルミナからなる無機多孔体としてはアルミナゲルなど、シリカ及びアルミナからなる無機多孔体としてはゼオライトなど、その他の無機多孔体としては吸着剤として市販されている「キョーワード」(協和化学工業(株)製)及び珪藻土などが挙げられる。これらのうち触媒活性の観点から好ましくは、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト及び「キョーワード」であり、特に好ましくはシリカゲル及び「キョーワード」である。
【0009】
無機多孔体は粒状物であり、その形状としては、不定形粒子、球状粒子又はペレット状(円柱形状)粒子などが挙げられる。
これらのうち好ましくは球状粒子及びペレット状粒子、特に好ましくは球状粒子が、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
【0010】
無機多孔体の粒径は、d50(体積平均粒子径)として、好ましくは1~8,000μmであり、更に好ましくは10~6,000μmであり、特に好ましくは40~500μmである。1μm以上にすることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下が触媒活性の面で好ましい。
本発明においてd50はJIS K1150に規定される粒度分布測定法において測定できる。
【0011】
無機多孔体の粒径は製造工程において調整することができる。例えば、シリカゲルの場合、粉砕、分級工程で調整することができる。
【0012】
無機多孔体のBET比表面積は、好ましくは30m/g以上であり、更に好ましくは50~1,500m/gであり、特に好ましくは100~800m/gである。30m/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。
本発明においてBET比表面積はJIS K1150に規定される比表面積測定法により測定できる。
【0013】
無機多孔体のアスペクト比は、好ましくは1.0~1.25であり、更に好ましくは1.0~1.18であり、特に好ましくは1.0~1.11である。なお、アスペクト比とは粒子の最長直径と最短直径の比であり、1.0に近いほど真球状であることを表す。アスペクト比が1.25以下であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
本発明においてアスペクト比は、粒子を顕微鏡観察し、その最長直径と最短直径を計測して比率(粒子1個のアスペクト比)を算出し、100個の粒子について比率を平均することにより測定できる。
【0014】
無機多孔体にスルホン酸基を担持させる方法としては、無機多孔体を、スルホン酸基に変換可能なスルホン酸前駆体基含有化合物(s)(以下、単に(s)と表記する場合がある)と反応させ、その後スルホン酸前駆体基をスルホン酸基に変換する方法などが挙げられる。
【0015】
(s)は、その分子中に、無機多孔体の表面の官能基(z)と反応する基(t)及びスルホン酸基に変換可能な基(u)を有する化合物である。
無機多孔体の表面の官能基(z)としては水酸基、アミノ基及びカルボキシル基などが挙げられる。スルホン酸前駆体基含有化合物(s)が無機多孔体と反応しやすいという観点から好ましくは水酸基である。
【0016】
一方、(s)が有する、無機多孔体の表面の官能基と反応する基(t)としては、無機多孔体の表面の官能基(z)が水酸基又はアミノ基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基及びカルボキシル基などが挙げられ、表面の官能基(z)がカルボキシル基の場合はトリアルコキシシリル基、グリシジル基及びアミノ基などが挙げられる。
これらのうち表面の官能基(z)との反応が進行し易いという観点から、好ましくはトリアルコキシシリル基及びグリシジル基であり、更に好ましくはトリアルコキシシリル基である。
(s)が含有するスルホン酸基に変換可能な基(u){スルホン酸前駆体基}としては、メルカプト基(酸化してスルホン酸基に変換)及びフェニル基(スルホン化してスルホフェニル基に変換)などが挙げられる。
【0017】
(s)の具体例としては、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、フェニル基含有シランカップリング剤(フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びジフェニルジメトキシシランなど)及びフェニル基含有グリシジル化合物(フェニルグリシジルエーテル及びノニルフェニルグリシジルエーテルなど)が挙げられる。
これらのうち好ましくはメルカプト基含有シランカップリング剤である。
【0018】
スルホン酸前駆体基含有化合物(s)(シランカップリング剤)と無機多孔体との反応は、種々の反応条件で行うことができる。例えば、シランカップリング剤を無機多孔体の重量に基づいて5~300重量%の割合で仕込み、溶剤の存在下に加熱撹拌し、シランカップリング剤中のトリアルコキシシリル基と無機多孔体の表面の官能基(水酸基など)を反応させた後、精製して得ることができる。
反応溶剤としては有機溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン及び低級アルコール等並びにこれらの2種以上の混合溶剤)を使用することができ、水とこれらの有機溶剤との混合溶剤でもよい。
水は無機多孔体表面の水酸基及びシランカップリング剤の活性を促進させるため少量使用する方が好ましく、水の割合はシランカップリング剤に対して3倍モル以下が特に好ましい。
また反応溶剤の使用量は無機多孔体の重量に基づいて、好ましくは80~300重量%であり、更に好ましくは100~250重量%である。
【0019】
反応温度は60~150℃であり、生成するアルコキシ基由来物質(例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール)を除去しながら反応してもよい。
反応後は粒状物をろ過もしくは遠心分離機等を用いて分離・回収し、未反応物質(未反応シランカップリング剤など)除去のために、上記の有機溶剤で数回洗浄した後、減圧乾燥(100~120℃、0.0013~0.0027MPaで3~5時間)してもよい。
【0020】
スルホン酸前駆体基含有化合物(s)としてメルカプト基含有シランカップリング剤を反応させた後、メルカプト基をスルホン酸基に変換するには、反応溶剤の存在下に酸化反応を行うことが好ましい。用いる酸化剤としては公知の酸化剤を制限なく用いることができ、例えば硝酸、過酸化水素、次亜塩素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸及び過酸化物などが挙げられる。酸化剤としては、好ましくは過酸化水素である。反応溶剤としてはアセトン、低級アルコール、アセトニトリル、ピリジン、クロロホルム及びジクロロメタン並びにこれらの2種以上の混合溶剤などが使用される。反応温度は0~100℃である。過酸化水素による酸化反応は米国特許5912385号明細書記載の反応条件でも行うことができる。
【0021】
スルホン酸前駆体基含有化合物(s)としてフェニル基含有シランカップリング剤を反応させた後、フェニル基をスルホン化するには、種々のスルホン化方法が適用できる。スルホン化剤としては例えば濃硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、クロロ硫酸、フルオロ硫酸又はアミド硫酸等を用いる方法が挙げられる。この場合の反応溶剤としては酢酸、無水酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロエタン及び四塩化炭素並びにこれらの2種以上の混合溶剤などが使用できる。反応温度は-10~180℃が好ましい。
【0022】
酸化反応又はスルホン化反応のいずれの場合でも反応後の精製処理操作としては、前述のシランカップリング剤と無機多孔体との反応後と同様の操作(分離・回収、洗浄及び乾燥)を行うことによりスルホン酸基担持無機多孔体(α)が得られる。
【0023】
(α)の製造方法のうち好ましくは、メルカプト基含有シランカップリング剤を無機多孔体に反応させた後、スルホン酸基に変換する方法である。
【0024】
(α)の酸価は、好ましくは5~250mgKOH/gであり、更に好ましくは10~150mgKOH/gであり、特に好ましくは15~100mgKOH/gである。
酸価が5mgKOH/g以上であることで触媒活性が向上しやすく、少量の触媒でエステル化反応が進行しやすいので好ましく、酸価が250mgKOH/g以下であることで副反応が起こりにくくなるので好ましい。
(α)の酸価の測定は、JIS K0070に準じて、イオン交換水に(α)を浸し、過剰の水酸化ナトリウムを加えて撹拌し、0.1N塩酸水溶液で中和滴定するという方法で測定できる。
【0025】
(α)のd50は、好ましくは1~8,000μmであり、更に好ましくは10~6,000μmであり、特に好ましくは40~500μmである。
(α)のd50が1μm以上であることで取り扱いが容易になり、8,000μm以下であることが触媒活性の面で好ましい。
なお、(α)のd50は、用いる無機多孔体のd50により適宜調整可能である。
【0026】
(α)のBET比表面積は、好ましくは30m/g以上であり、更に好ましくは50~1,500m/gであり、特に好ましくは100~800m/gである。30m/g以上であることが、触媒活性が高くなりかつ副反応が少なくなる点で好ましい。
なお、(α)のBET比表面積は、用いる無機多孔体のBET比表面積により適宜調整可能である。また、用いる無機多孔体が同じである場合、(α)のBET比表面積は、無機多孔体に対して、用いる後述するスルホン酸前駆体基含有化合物(s)の量を多くすることにより小さくすることができ、少なくすることにより大きくすることができる。
【0027】
(α)のアスペクト比は、好ましくは1.0~1.25であり、更に好ましくは1.0~1.18であり、特に好ましくは1.0~1.11である。
アスペクト比が1.25以下であれば、後述する流通法で反応させる際の圧力損失が小さい点で好ましい。
なお、(α)のアスペクト比は、用いる無機多孔体のアスペクト比により適宜調整可能である。
【0028】
本発明において、変性ポリオレフィン(A)は、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有するポリオレフィンであり、オレフィン(a)の重合体の片末端に水酸基を導入した変性ポリオレフィン、オレフィン(a)の重合体の両末端に水酸基を導入した変性ポリオレフィン、オレフィン(a)の重合体の分子鎖中又は末端と分子鎖中に水酸基を導入した変性ポリオレフィンが含まれる。
【0029】
オレフィン(a)として、具体的には、炭素数2~36のアルケン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)、炭素数4~36のジエン(例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)並びに炭素数5~36の脂環式不飽和炭化水素(シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等)等が挙げられる。
(a)としては、ポリオレフィンを製造する際の反応性の観点から、炭素数2~36のアルケン及び炭素数4~36のジエンが好ましく、さらに好ましくは炭素数4~18のアルケン及び炭素数4~18のジエンであり、次にさらに好ましくは1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ブタジエン及びイソプレンであり、特に好ましくはブタジエン及びイソプレンである。
(a)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
変性ポリオレフィン(A)としては、具体的には、以下のもの等が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(A1);オレフィン(a)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒及びリチウム触媒等)存在下に重合して得られたポリオレフィンに、アルキレンオキサイド(炭素数2~4のものが含まれ、例えばエチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキサイド等)を付加し、必要により水素添加して得られたもの等。アルキレンオキサイドがエチレンオキサイドである場合、片末端に1級水酸基を有する変性ポリオレフィンが得られる。
ヒドロホウ素化物(A2);片末端、両末端又は分子鎖中に二重結合を有するポリオレフィンのヒドロホウ素化物(例えば米国特許4,316,973号明細書に記載のもの)等。片末端又は両末端に二重結合を有するポリオレフィンを用いた場合、片末端又は両末端に1級水酸基を有する変性ポリオレフィンが得られる。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(A3);片末端、両末端又は分子鎖中に二重結合を有するポリオレフィンと無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物をアミノアルコールでイミド化して得られたもの等。片末端又は両末端に二重結合を有するポリオレフィンを用いた場合、片末端又は両末端に1級水酸基を有する変性ポリオレフィンが得られる。
ヒドロホルミル-水素化物(A4);片末端又は両末端に二重結合を有するポリオレフィンをヒドロホルミル化し、必要により水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの等)等。片末端又は両末端に1級水酸基を有する変性ポリオレフィンが得られる。
【0031】
変性ポリオレフィン(A)としては、溶媒(Z)への溶解性の観点から、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリブタジエン(A-1)、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリブタジエン(A-2)、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性ポリイソプレン(A-3)、少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリイソプレン(A-4)、ブタジエンとイソプレンとの共重合物であって少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性体(A-5)及びブタジエンとイソプレンとの共重合物であって少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性体の水添物(A-6)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお(A)は、1種を用いてもよく2種以上を併用しても良い。
【0032】
変性ポリオレフィン(A)のうち、熱安定性の観点から好ましくは少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリブタジエン(A-2)及び少なくとも一つのアルコール性水酸基を有する変性水添ポリイソプレン(A-4)であり、更に好ましくは片末端に1級水酸基を有する水添ポリブタジエン、両末端に1級水酸基を有する水添ポリブタジエン、片末端に1級水酸基を有する水添ポリイソプレン及び両末端に1級水酸基を有する水添ポリイソプレンであり、最も好ましくは片末端に1級水酸基を有する水添ポリブタジエン及び片末端に1級水酸基を有する水添ポリイソプレンである。
【0033】
変性ポリオレフィン(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、純度の高いエステルが得られるという観点から好ましくは500~15,000であり、更に好ましくは1,300~10,000である。
Mnは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーによるものであり、下記測定条件により測定した値である。
<変性ポリオレフィン(A)のMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore H XL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0034】
変性ポリオレフィン(A)の動粘度(40℃)は、未反応物及び副生成物が少ないα,β-不飽和カルボン酸エステルが得られるという観点から、好ましくは500~20,000mm/sであり、更に好ましくは500~15,000mm/sである。
変性ポリオレフィン(A)の動粘度(40℃)は、JIS-K2283の方法で測定できる。
【0035】
本発明におけるα,β-不飽和カルボン酸(B1)(以下、単に(B1)と表記する場合がある)としては、脂肪族α,β-不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸及びクロトン酸など]及び脂肪族α,β-不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸など)等が挙げられる。
α,β-不飽和カルボン酸の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)(以下、単に(B2)又は(B1)のアルキルエステル(B2)と表記する場合がある)としては、(B1)と炭素数1~4のアルキル基を有するアルコールから得られるエステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステルなど)が挙げられる。
炭素数1~4のアルキル基を有するアルコールとしては、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0036】
α,β-不飽和カルボン酸(B1)及び(B1)のアルキルエステル(B2)のうち、未反応物及び副生成物が少ないα,β-不飽和カルボン酸エステルが得られるという観点から好ましくは(B1)であり、更に好ましくは副生成物のうちの付加生成物(α,β-不飽和基同士の付加反応による生成物)の量が少ないという観点から、脂肪族α,β-不飽和モノカルボン酸であり、特に好ましくは得られたα,β-不飽和カルボン酸エステルの重合性が優れるという観点からアクリル酸及びメタクリル酸である。
【0037】
本発明のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法において、反応装置に投入する変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び(B1)のアルキルエステル(B2)との仕込みモル比{(A):(B1)及び(B2)}は、好ましくは1:10~1:100であり、更に好ましくは1:20~1:80であり、特に好ましくは1:30~1:70であり、最も好ましくは1:35~1:60である。
(A)と(B1)及び/又は(B2)とのうち除去が容易な方を過剰に用い、反応完了後、過剰の(A)、(B1)及び/又は(B2)を除去するのが反応率向上の観点で有利である。なお、本発明においては、(B1)及び/又は(B2)を過剰に用いて反応させるのが除去しやすい観点から好ましい。
【0038】
本発明の不飽和カルボン酸エステルの製造方法において、不飽和基の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することもできる。
重合禁止剤としては、フェノール重合禁止剤(ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、クレゾール、ジ-t-ブチルクレゾール、ジ-t-ブチルフェノール、トリ-t-ブチルフェノールなど)、及びアミン重合禁止剤(フェノチアジン、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなど)などが挙げられる。
これらのうち好ましいものはフェノール重合禁止剤である。
重合禁止剤の添加量は、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び(B1)のアルキルエステル(B2)との総重量に基づいて好ましくは0.001~2重量%であり、更に好ましくは0.01~1重量%であり、特に好ましくは0.01~0.5重量%であり、最も好ましくは0.01~0.2重量%である。
【0039】
スルホン酸基担持無機多孔体(α)の使用量は変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び(B1)のアルキルエステル(B2)との総重量に対して、好ましくは0.1~70重量%であり、更に好ましくは1~60重量%であり、特に好ましくは2~50重量%であり、最も好ましくは3~45重量%である。
0.1重量%以上用いることで効率的にエステル結合形成反応が進行し、70重量%以下が経済面から好ましい。
また、(α)の使用量は、(A)の仕込みモル数に対する(α)中のスルホン酸基のモル数の比{(α)のスルホン酸基のモル数/(A)のモル数}が好ましくは0.1~15となる量であり、更に好ましくは0.15~8となる量である。0.1以上であれば反応速度の観点から好ましく、15以下であれば副反応が抑制されるという観点から好ましい。
【0040】
本発明のα,β-不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、溶媒(Z)を使用する製造方法であって、溶媒(Z)が鉱物油(Z1)及び合成油(Z2)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
溶媒(Z)の動粘度(25℃)は、未反応物及び副生成物の観点から、5~100mm/sが好ましい。
本発明においては、溶媒(Z)として鉱物油(Z1)及び合成油(Z2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、一般的に用いられる有機溶剤(トルエン及びキシレン等)を用いた場合と比較して、未反応物及び副生成物を少なくすることができるものである。
鉱物油(Z1)としては、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等が挙げられる。
合成油(Z2)としては炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等が挙げられる。
溶媒(Z)としては、溶媒(Z)の熱安定性の観点から好ましくは鉱物油(Z1)である。
【0041】
エステル形成反応(エステル交換反応を含む)において、反応工程中の溶媒(Z)の重量割合は、反応工程における反応中の混合物の粘度及び未反応物及び副生成物が少ないα,β-不飽和カルボン酸エステルを得る観点から、変性ポリオレフィン(A)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)の炭素数1~4のアルキルエステル(B2)、溶媒(Z)及び生成するα,β-不飽和カルボン酸エステルの全量に対して、10~70重量%が好ましく、さらに好ましくは13~68重量%である。
【0042】
エステル結合形成反応は、バッチ法又は流通法のいずれの方法でも実施することができる。
【0043】
バッチ法の場合は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)、溶媒(Z)、変性ポリオレフィン(A)、並びにα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又は(B1)のアルキルエステル(B2)を反応槽の中に仕込み、加熱撹拌してエステル結合形成反応することで反応工程を行い、更に生成する水及び/又は炭素数1~4のアルコールを除去する除去工程を行いながら反応を進行させることが好ましい。
反応完了後、反応生成物とスルホン酸基担持無機多孔体(α)をデカンテーション、ろ過及び/又は遠心分離などによって分離する。
変性ポリオレフィン(A)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)及び(B1)のアルキルエステル(B2)のいずれかを過剰に用いた場合は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)を分離する前又は分離後に過剰の原料を除去することで、α,β-不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。
【0044】
流通法の場合は、スルホン酸基担持無機多孔体(α)を充填したカラム、反応触媒を有する固定床又は流動床などに、所定の温度に温調した変性ポリオレフィン(A)、α,β-不飽和カルボン酸(B1)、(B1)のアルキルエステル(B2)及び溶媒(Z)の混合物を通液することでエステル結合形成反応させることができる。
【0045】
エステル結合形成反応における反応温度は、好ましくは60~180℃であり、更に好ましくは80~160℃であり、特に好ましくは100~145℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
反応時間は、好ましくは10分~24時間であり、更に好ましくは30分~10時間であり、特に好ましくは1~5時間である。
【0046】
本発明の製造方法において、前記反応工程と同時に、又は前記反応工程の後に、エステル結合形成反応で生成する水及び/又は炭素数1~4のアルコールを除去する除去工程を行うことが好ましく、除去工程は、常圧又は減圧下で溜去して除去する方法、分液や遠心分離する方法、反応混合物をモレキュラシーブス、硫酸マグネシウムなどの脱水剤と接触させる方法及び水分離膜などの選択膜により膜分離する方法などを用いることができる。
【0047】
上記バッチ法の場合は、常圧または減圧下で溜去する方法が好ましい。
【0048】
上記流通法の場合、固定床又は流動床などの反応場に一度流通して得た1パス後の反応混合物を蒸留することにより不飽和カルボン酸エステルを得ることもできるが、反応率を高くすることができるという観点から、スルホン酸基担持無機多孔体(α)及び溶媒(Z)の存在下に変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又は(B1)のアルキルエステル(B2)とを反応させる反応工程(1)と、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又は(B1)のアルキルエステル(B2)との反応によって生成した水及び/又は炭素数1~4のアルコールを反応混合物から除去する除去工程(2)とをそれぞれ2回以上(2パス以上)含む製造方法が好ましい。
前記反応工程(1)と前記除去工程(2)とを繰り返すことで反応率をさらに高めることができる。前記反応工程(1)において、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又は(B1)のアルキルエステル(B2)との混合物の温度は、好ましくは60~180℃であり、更に好ましくは80~160℃であり、特に好ましくは100~145℃である。60℃以上が反応速度の観点から好ましく、180℃以下が副反応を抑制する観点から好ましい。
前記反応工程(1)において、1パスあたりの平均流通時間(触媒と反応液の平均接触時間)は、好ましくは0.1~60分であり、更に好ましくは0.2~10分であり、特に好ましくは0.5~5分である。
前記除去工程(2)における水及び/又は炭素数1~4のアルコールを除去する方法としては、連続式エバポレーターで留去する方法、コンデンサーを付した反応槽などを用いて常圧又は減圧下に溜去させる方法、並びに水分離膜、遠心分離もしくは脱水剤によって脱水する方法などが挙げられる。これらのうち、連続式エバポレーター、コンデンサーを付した反応槽及びそれらの併用が生産効率の観点から好ましい。
前記反応工程(1)と前記除去工程(2)の繰り返し回数は、好ましくは1~500回であり、更に好ましくは3~200回であり、特に好ましくは5~100回である。
【0049】
本発明の製造方法において、α,β-不飽和カルボン酸(B1)、(B1)のアルキルエステル(B2)及び生成したα,β-不飽和カルボン酸エステルの重合を禁止する目的で、反応液中に酸素を溶存させることが好ましく、反応工程と同時に、又は前記反応工程の後に前記の生成する水及び/又は炭素数1~4のアルコールを除去する除去工程を行う場合には、除去工程において、前記反応工程における反応中の混合物中、又は前記反応工程で得られた反応混合物中に酸素を含む気体を通気することが好ましい。
通気する酸素の供給源としては、酸素ガス、空気及び空気と窒素との混合気(以下、(混合気)と略記する場合がある)などが挙げられ、これらを反応液中に通気することで酸素を溶存させられる。
これらのうち安全性の観点から、好ましくは空気及び混合気であり、更に好ましくは混合気である。
気体を通気する方法としては、バッチ法の場合は反応槽下部から反応工程中の反応混合物中に常時通気する方法等が挙げられる。
流通法の場合は、反応工程(1)、除去工程(2)及びそれらの途中の配管中に通気する方法が挙げられ、除去工程(2)において通気することが反応速度と重合禁止の両立の観点で特に好ましい。
【0050】
混合気の空気と窒素の混合体積比率(空気:窒素)は、好ましくは1:9~9:1であり、更に好ましくは1:9~5:5であり、特に好ましくは2:8~4:6である。空気の比率を高めることで重合禁止効果が高まり、窒素の比率を高めることで生成物の着色が少なくなる点で好ましい。
空気または混合気の通気量は、変性ポリオレフィン(A)とα,β-不飽和カルボン酸(B1)及び/又は(B1)のアルキルエステル(B2)と生成したα,β-不飽和カルボン酸エステルの総和1kgあたり、好ましくは1~5,000mL/分であり、更に好ましくは20~1,000mL/分であり、特に好ましくは30~500mL/分である。
【実施例
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0052】
<製造例1>スルホン酸基担持無機多孔体(α1)の製造例
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び還流管を備えた反応容器に、あらかじめイオン交換水で洗浄後乾燥させたシリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]200部、溶媒としてのトルエン400部及び水10部を仕込んだ後、100~110℃に昇温した。次いで3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン100部加え、環流下に8時間撹拌反応させた。その後更に水15部を加えて8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、トルエン400部で3回、イソプロピルアルコール400部で3回の順で洗浄した後、120℃で5時間減圧(0.004Mpa)乾燥し、シランカップリング剤担持無機多孔体220部を得た。
シランカップリング剤担持無機多孔体150部、溶媒としての水450部及び30%過酸化水素水150部を上記と同様の反応容器に仕込み、80℃で8時間反応させた。反応混合物から固形分をろ別し、メタノール400部で3回、0.1N-硫酸400部で1回、イオン交換水400部で3回の順で洗浄した後、120℃で5時間減圧乾燥し、スルホン酸基担持無機多孔体を140部得た。
スルホン酸基担持無機多孔体100部を上記と同様の反応容器に仕込み、180℃で24時間加熱処理した。室温まで冷却後スルホン酸基担持無機多孔体をメタノール250部で3回洗浄し、120℃で3時間減圧(0.004MPa)乾燥し、固体酸触媒であるスルホン酸基担持無機多孔体(α1)190部を得た。
【0053】
<製造例2>スルホン酸基担持無機多孔体(α2)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを11部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α2)190部を得た。
【0054】
<製造例3>スルホン酸基担持無機多孔体(α3)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを22部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α3)190部を得た。
【0055】
<製造例4>スルホン酸基担持無機多孔体(α4)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを33部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α4)190部を得た。
【0056】
<製造例5>スルホン酸基担持無機多孔体(α5)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを220部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α5)190部を得た。
【0057】
<製造例6>スルホン酸基担持無機多孔体(α6)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを330部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α6)190部を得た。
【0058】
<製造例7>スルホン酸基担持無機多孔体(α7)の製造例
3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを550部に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α7)190部を得た。
【0059】
<製造例8>スルホン酸基担持無機多孔体(α8)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT G-3」[体積平均粒子径:3μm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α8)190部を得た。
【0060】
<製造例9>スルホン酸基担持無機多孔体(α9)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT G-3」[体積平均粒子径:10μm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α9)190部を得た。
【0061】
<製造例10>スルホン酸基担持無機多孔体(α10)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT P-3」[体積平均粒子径:20-40μm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α10)190部を得た。
【0062】
<製造例11>スルホン酸基担持無機多孔体(α11)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT G-6」[体積平均粒子径:0.35-1.70mm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α11)190部を得た。
【0063】
<製造例12>スルホン酸基担持無機多孔体(α12)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT Q-30」[体積平均粒子径:1.18-2.36mm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α12)190部を得た。
【0064】
<製造例13>スルホン酸基担持無機多孔体(α13)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「CARiACT Q-50」[体積平均粒子径:1.70-4.00mm、富士シリシア化学(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α13)190部を得た。
【0065】
<製造例14>スルホン酸基担持無機多孔体(α14)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「キョーワード 700 OSIF」[体積平均粒子径:45μm以下、協和化学工業(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α14)190部を得た。
【0066】
<製造例15>スルホン酸基担持無機多孔体(α15)の製造例
シリカゲル「CARiACT Q-6」[体積平均粒子径:75~500μm、富士シリシア化学(株)製]を「キョーワード 700 PEL」[体積平均粒子径:45μm以下、協和化学工業(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして、スルホン酸基担持無機多孔体(α15)190部を得た。
【0067】
製造例1~15で得られたスルホン酸基担持無機多孔体(α1)~(α15)の酸価、d50、BET比表面積、アスペクト比を前記方法で測定した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<製造例16>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400部、テトラヒドロフラン1部、1,3-ブタジエン85部、n-ブチルリチウム0.5部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2部加え、50℃で3時間反応させた。反応を停止させるために水50部と1N-塩酸水溶液25部加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.0013~0.0027MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10部とテトラヒドロフラン50部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.0013~0.0027MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して片末端1級水酸基水添ポリブタジエン(A-2)(Mw=6690、動粘度(40℃)=14040mm/s)を得た。
【0070】
<製造例17>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400部、テトラヒドロフラン1部、1,3-ブタジエン40部、n-ブチルリチウム2部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。その後は製造例16と同様に行い、片末端1級水酸基水添ポリブタジエン(A-3)(Mn=3300、動粘度(40℃)=930mm/s)を得た。
【0071】
<製造例18>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400部、テトラヒドロフラン1部、1,3-ブタジエン130部、n-ブチルリチウム0.5部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。その後は製造例16と同様に行い、片末端1級水酸基水添ポリブタジエン(A-4)(Mn=10000、動粘度(40℃)=16050mm/s)を得た。
【0072】
<製造例19>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400部、テトラヒドロフラン1部、イソプレン10部、n-ブチルリチウム0.5部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。その後は製造例16と同様に行い片末端1級水酸基水添ポリイソプレン(A-5)(Mn=550、動粘度(40℃)=500mm/s)を得た。
【0073】
<製造例20>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400部、テトラヒドロフラン1部、イソプレン20部、n-ブチルリチウム0.5部を仕込んだ後、重合温度を70℃とし重合させた。その後は製造例16と同様に行い、片末端1級水酸基水添ポリイソプレン(A-6)(Mn=1300、動粘度(40℃)=1500mm/s)を得た。
【0074】
<製造例21>
温度調節装置、バキューム撹拌翼、窒素流入口及び流出口を備えた反応容器に、片末端不飽和基含有ポリブテン(商品名;「日油ポリブテン10N」、日油(株)製、Mn:1,000]280部、テトラヒドロフラン-ボロン・テトラヒドロフラン1mol/L溶液[和光純薬工業(株)製]400部、テトラヒドロフラン400部を投入し、25℃で4時間ヒドロホウ素化を行った。次いで水50部、3N-NaOH水溶液50部、30%過酸化水素50部を投入して酸化した。分液ロートにて上澄み液を回収し、50℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)テトラヒドロフランを2時間かけて除去し、片末端1級水酸基ポリブテンヒドロホウ素化物(A-7)(Mn=1100、動粘度(40℃)=280mm/s)を得た。
【0075】
<実施例1>α,β-不飽和カルボン酸エステルの製造例
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、気体吹き込み口、コンデンサー及びピットを付したステンレス製反応槽に、片末端1級水酸基水添ポリブタジエン(A-1)[製品名:L-1203、クラレ社製、1,2-ブチレン比率=45モル%]3030部、メタクリル酸1780部(モル比 (A-1):メタクリル酸=1:48)、鉱物油[製品名:YUBASE4、動粘度(25℃)28.8mm/s、SKルブリカンツ社製]3060部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル7部を仕込み、空気-窒素の混合気(体積比 空気:窒素=1:2)を900ml/分で通気した。115~125℃まで昇温した後、ダイヤフラムポンプで反応槽内の反応液を、スルホン酸基担持無機多孔体(α1)2000.部を充填したステンレス製固定床へ流速3.2kg/分で連続的に通液してエステル結合形成反応(反応工程)を行い、吐出液を元の反応槽へと循環させ、反応槽では、空気-窒素の混合気(体積比 空気:窒素=1:2)を900ml/分で通気しながら常圧下115~125℃で脱水(除去工程)することで、反応工程と除去工程を連続的に1時間繰り返した。その後、反応槽内を減圧(0.062~0.068MPa)にして、更に2時間、反応工程と除去工程を連続的に繰り返し、エステル化反応を完結させた。次いで、反応液の全量を反応槽に戻し、減圧下(0.0025~0.0040MPa)、120~130℃で過剰のメタクリル酸を留去し、α,β-不飽和カルボン酸エステルと鉱物油の混合物6127部を得た。エステル化反応における反応液全量の循環繰り返し回数は、固定床での流速から約20回/時間であった。
【0076】
実施例2~34及び比較例1~4
実施例1において、表2~3に記載のスルホン酸基担持無機多孔体(α)の種類及び量に変更し、変性ポリオレフィン(A)、(B1)又は(B2)及び溶媒(Z)の種類及び量に変更し、表2~3に記載の反応工程温度及び除去工程温度に変更する以外は実施例1と同様にして、α,β-不飽和カルボン酸エステルを得た。
【0077】
表2~3中、各原料は下記のものを用いた。
スルホン酸基担持無機多孔体(α1)~(α15):製造例1~15で得たもの
【0078】
(A-1):片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=6,960、動粘度(40℃)=8,270mm/s、[製品名:L-1203、クラレ社製、1,2-ブチレン比率=45モル%]
(A-2):製造例16で得た片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=6,690、動粘度(40℃)=14,040mm/s
(A-3):製造例17で得た片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=3,300、動粘度(40℃)=930mm/s
(A-4):製造例18で得た片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=10,000、動粘度(40℃)=16,050mm/s
(A-5):製造例19で得た片末端1級水酸基水添ポリイソプレン、Mn=550、動粘度(40℃)=500mm/s
(A-6):製造例20で得た片末端1級水酸基水添ポリイソプレン、(Mn=1,300、動粘度(40℃)=1,500mm/s
(A-7):製造例21で得た片末端1級水酸基ポリブテンヒドロホウ素化物、Mn=1,100、動粘度(40℃)=280mm/s
(A-8):片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=6,960、動粘度(40℃)=8,450mm/s、[製品名:L-1203(クラレ社製、1,2-ブチレン比率=45モル%)と、製品名:L-3203(クラレ社製、1,2-ブチレン比率=65モル%)とを50%ずつ混合したもの]
(A-9):片末端1級水酸基水添ポリブタジエン、Mn=2,700、動粘度(40℃)=2,890mm/s、[製品名:HLBH-1500M、CRAY VALLEY社製、1,2-ブチレン比率=65モル%]
【0079】
YUBASE2:鉱物油、動粘度(25℃)=12.0mm/s、製品名:YUBASE2、SKルブリカンツ社製
YUBASE4:鉱物油、動粘度(25℃)=28.8mm/s、製品名:YUBASE4、SKルブリカンツ社製
YUBASE6:鉱物油、動粘度(25℃)=57.1mm/s、製品名:YUBASE6、SKルブリカンツ社製
YUBASE8:鉱物油、動粘度(25℃)=76.2mm/s、製品名:YUBASE8、SKルブリカンツ社製
PAO4:合成油、動粘度(25℃)=26.3mm/s、製品名:SpectrasynPAO4、エクソンモービル社製
PAO8:合成油、動粘度(25℃)=75.8mm/s、製品名:SpectrasynPAO8、エクソンモービル社製
【0080】
実施例1~34及び比較例1~4で得られたα,β-不飽和カルボン酸エステルの純度、未反応の変性ポリオレフィン(A)の含有率、未反応のメタクリル酸の含有率及び副生成物(α,β-不飽和基同士の付加反応による生成物)の含有率を下記測定方法で測定した。結果を表2~3に示す。なお、α,β-不飽和カルボン酸エステルの純度は、下記測定により得られた未反応の変性ポリオレフィン(A)の含有率(モル%)、未反応のメタクリル酸の含有率(モル%)及び副生成物の含有率(モル%)を100%から減じて算出した。
【0081】
未反応の変性ポリオレフィン(A)の含有率及び未反応のメタクリル酸又はメタクリル酸メチルの含有率は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いて以下の分析条件で分析し、面積比率及び分子量(未反応の変性ポリオレフィン(A)の場合は(A)のMn)から算出した。
<ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー分析条件>
装置 :「HLC-802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0082】
α,β-不飽和基{メタクリロイル基}の付加反応による副生成物の含有率(モル%)は、得られた生成物のH-NMRを重水素化クロロホルムを溶媒として使用して測定し、メタクリル酸及び/又はメタクリル酸エステル(CH=C(CH)H-C(O)O-CH-R)中の二重結合が反応したことにより生成した生成物(-CH-C(CH)HR’-C(O)O-CH-R)のエステル基に結合したメチレン基(-CH-R)由来の信号のケミカルシフト(3.9~4.1ppm)から算出した。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
なお、表2~3中の「N.D.」は検出されなかった(検出限界以下)ことを表す。
【0085】
表2~3から明らかなように、本発明の製造方法によれば、未反応物及び副生成物の少ない純度の高いα,β-不飽和カルボン酸エステルが得られる。特に、α,β-不飽和基の付加反応による副生成物が極めて少なくなることが分かる。
一方、溶媒(Z)以外は同じ条件である実施例33と比較例1~4との比較から、溶媒(Z)を用いない場合(比較例1)や、溶媒(Z)としてヘプタン、トルエン又はキシレンを用いた場合(比較例2~4)は、未反応物及び副生成物が多くなり、生成したα,β-不飽和カルボン酸エステルの純度が低くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法で得られるα,β-不飽和カルボン酸エステルは、高純度であり、かつ、重合性の不飽和基を有するため各種のポリマーの原料モノマーとして好適に使用できる。
また、本発明の製造方法で得られるα,β-不飽和カルボン酸エステルをモノマーの1種として用いて得られるポリマーは、各種の樹脂、樹脂改質剤、粘着剤用バインダー、塗料用ビヒクル、潤滑油用粘度指数向上剤、潤滑油用流動点降下剤または各種添加剤として使用できる。