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特許7402133基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20231213BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20231213BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20231213BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20231213BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W92/20
H04W88/08
H04W76/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125243
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021581
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】合田 すみれ
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅俊
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034540(JP,A)
【文献】特開2018-19116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回線制御装置に接続すると共に移動局と無線通信を行う基地局装置であって、
自局を含む複数の基地局装置についてマスタとなる順位情報を記憶し、前記回線制御装置との通信が不能となった場合に、前記順位情報に基づいて、自局がマスタ又はスレーブのいずれとなるかを判断し、前記自局がマスタとなり、他局がスレーブとなった場合に、前記複数の基地局装置を統合して基地局折り返し通信を行う基地局折り返しグループを形成するマスタ/スレーブ判定部と、
前記自局がマスタとなった場合に、前記基地局折り返しグループにおける基地局折り返し通信の呼制御を行う簡易呼制御部とを備えたことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
マスタ/スレーブ判定部は、回線制御装置との通信が不能となった場合に、順位情報に基づいて他の基地局装置と通信を行って、動作中の基地局装置の中で、自局が最高順位である場合にマスタとなって基地局折り返しグループを生成し、自局よりも下位の基地局装置をスレーブとして前記基地局折り返しグループに参加させることを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
自局がマスタである基地局装置のマスタ/スレーブ判定部は、順位情報に含まれる他局の基地局装置に定期的に基地局折り返し情報を通知し、応答があった基地局装置を基地局折り返しグループに参加させることを特徴とする請求項1又は2記載の基地局装置。
【請求項4】
簡易呼制御部は、移動局から呼接続要求を受信した場合、自局がマスタであれば、通信確立の可否を自ら判断し、自局がスレーブであれば、マスタの基地局にその旨通知することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の基地局装置。
【請求項5】
回線制御装置と、請求項1乃至4のいずれか記載の基地局装置を複数備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項5の無線通信システムにおける無線通信方法であって、複数の基地局装置が、それぞれ、回線制御装置との通信が不能となった場合に、マスタとなる順位情報に基づいてマスタ又はスレーブのいずれになるかを判断し、前記複数の基地局装置の内、前記順位情報における順位が最高の基地局装置がマスタとなり、他の基地局装置がスレーブとなって、前記複数の基地局装置が統合されて基地局折り返し通信を行うことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に回線制御装置に障害が発生した場合に、安定した基地局折り返し通信を実現することができる基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図11
無線通信システムには、業務用無線システムとして用いられるものがある。業務用無線とは、自営陸上移動通信の総称で、公共業務から民間業務に至るまで幅広い業種で活用されているシステムであり、主に音声、データの無線通信に利用される。
【0003】
業務用無線システムの概略構成例について図11を用いて説明する。図11は、業務用無線システムの概略構成例を示す説明図である。
図11に示すように、業務用無線システムは、指令台1と、回線制御装置2と、複数の基地局30と、複数の移動局4と、ネットワーク5とを備えている。
【0004】
指令台1は、業務用無線システムの全移動局4を対象とした一斉指令や、移動局4間の通話への割込みなど業務運用において特に重要となる指令業務を円滑に行うための機能を有する。
【0005】
回線制御装置2は、業務用無線システムの中核装置であり、指令台1、基地局30、移動局4からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する回線制御機能を有する。
基地局30は、回線制御装置2とネットワーク5によって有線接続され、移動局4間および移動局4と指令台1間の無線通信の中継機能を有する。
【0006】
移動局4は、主に陸上を移動して基地局30や、他の移動局4等との無線通信を行う。
ネットワーク5は、回線制御装置2と基地局30とを接続する有線ネットワークである。従来、ネットワーク5としては、アナログ回線やデジタル回線が利用されてきたが、近年ではIP (Internet Protocol)を用いたネットワークが広く用いられるようになっている。
【0007】
[従来の基地局折り返し通信:図12
上述したように、業務用無線システムの適用分野は様々であり、分野によってシステム障害時の運用に対する考え方も異なる。例えば、防災無線システムでは、地震などの災害が発生した場合でも、重要な通信インフラとして可能な限り通信サービスを継続することが求められる。
【0008】
そのため、防災無線システムでは、回線制御装置2が停止した場合、又は回線制御装置との通信が遮断された場合には、基地局30が折り返し通信を行って、各基地局のエリアに在圏する(各基地局のエリア内に存在する)移動局4同士で通信を行うことが可能である。
【0009】
従来の基地局折り返し通信時の状態について図12を用いて説明する。図12は、従来の基地局折り返し通信時の状態を示す説明図である。
図12に示す例では、回線制御装置2とネットワーク5の間、及び各基地局30とネットワーク5との間に障害が発生している。
この状態では、各基地局30が、回線制御装置2を介さずに、当該基地局のエリアにいる移動局4同士の通信を実現する。
図12の例では、例えば、基地局Aのエリアにいる移動局aは、移動局bとは通信可能となるが、別の基地局B~Gのエリアにいる移動局c~iとは通信することはできない。
【0010】
[異なる基地局のエリアに在圏する移動局の通信]
上述した従来の基地局折り返し通信では異なる基地局のエリアに在圏する移動局4同士は通信を行うことができず、不便であった。
そのため、基地局30が縮退運用の専用ポートを有し、折り返し通信で移動局4から応答がなかった場合、専用ポートを介して他の基地局へ呼設定電文を送信する技術がある(特許文献1)。
【0011】
[グループコントロール基地局]
また、従来、トラフィック増加に対応するために、制御チャネルを送受信するマスター基地局と、制御チャネルを受信しないスレーブ基地局とを接続したグループコントロール無線基地局があった(特許文献2)。
【0012】
[関連技術]
業務用無線システムに関する従来技術としては、特許6503259号公報「無線通信システム(特許文献1)、特開2007-20026号公報「グループコントロール無線基地局およびそのチャネル割当方法」(特許文献2)がある。
特許文献1には、上述した異なる基地局のエリアにいる移動局同士の通信を可能にする無線通信システムが記載されている。
また、特許文献2には、マスター基地局とスレーブ基地局の負荷が概ね均等となるように割り当てるグループコントロール無線基地局が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許6503259号公報
【文献】特開2007-20026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、障害発生により基地局折り返し通信を行う場合には、異なる基地局のエリアに在圏する移動局同士は通信できず、不便であるという問題点があった。
【0015】
また、特許文献1に記載した無線通信システムでは、移動局から呼設定要求を受信した基地局が、他の基地局へ同一電文を分配する制御を行うだけであるため、複数の基地局から同一基地局に対して同時に呼設定要求が発生した場合には、競合時の排他制御が行われず、運用が不安定になるという問題点があった。
【0016】
尚、特許文献1及び特許文献2には、予め順位を共有する複数の基地局がグループを形成し、縮退運用時に、グループ内の基地局が自律的にマスタ/スレーブを決定して、競合することなく異なる基地局のエリアにいる移動局同士の通信を可能とすることは記載されていない。
【0017】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、回線制御装置との通信ができない縮退運用時に、異なる基地局のエリアにいる移動局同士の通信を可能とし、競合を防いで安定した運用を可能とすることができる基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、回線制御装置に接続すると共に移動局と無線通信を行う基地局装置であって、自局を含む複数の基地局装置についてマスタとなる順位情報を記憶し、回線制御装置との通信が不能となった場合に、順位情報に基づいて、自局がマスタ又はスレーブのいずれとなるかを判断し、自局がマスタとなり、他局がスレーブとなった場合に、複数の基地局装置を統合して基地局折り返し通信を行う基地局折り返しグループを形成するマスタ/スレーブ判定部と、自局がマスタとなった場合に、基地局折り返しグループにおける基地局折り返し通信の呼制御を行う簡易呼制御部とを備えたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記基地局装置において、マスタ/スレーブ判定部は、回線制御装置との通信が不能となった場合に、順位情報に基づいて他の基地局装置と通信を行って、動作中の基地局装置の中で、自局が最高順位である場合にマスタとなって基地局折り返しグループを生成し、自局よりも下位の基地局装置をスレーブとして基地局折り返しグループに参加させることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記基地局装置において、自局がマスタである基地局装置のマスタ/スレーブ判定部は、順位情報に含まれる他局の基地局装置に定期的に基地局折り返し情報を通知し、応答があった基地局装置を基地局折り返しグループに参加させることを特徴としている。
【0021】
また、本発明は、上記基地局装置において、簡易呼制御部は、移動局から呼接続要求を受信した場合、自局がマスタであれば、通信確立の可否を自ら判断し、自局がスレーブであれば、マスタの基地局にその旨通知することを特徴としている。
【0022】
また、本発明は、無線通信システムにおいて、回線制御装置と、上記いずれか記載の基地局装置を複数備えたことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記無線通信システムにおける無線通信方法であって、複数の基地局装置が、それぞれ、回線制御装置との通信が不能となった場合に、マスタとなる順位情報に基づいてマスタ又はスレーブのいずれになるかを判断し、複数の基地局装置の内、順位情報における順位が最高の基地局装置がマスタとなり、他の基地局装置がスレーブとなって、複数の基地局装置が統合されて基地局折り返し通信を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回線制御装置に接続すると共に移動局と無線通信を行う基地局装置であって、自局を含む複数の基地局装置についてマスタとなる順位情報を記憶し、回線制御装置との通信が不能となった場合に、順位情報に基づいて、自局がマスタ又はスレーブのいずれとなるかを判断し、自局がマスタとなり、他局がスレーブとなった場合に、複数の基地局装置を統合して基地局折り返し通信を行う基地局折り返しグループを形成するマスタ/スレーブ判定部と、自局がマスタとなった場合に、基地局折り返しグループにおける基地局折り返し通信の呼制御を行う簡易呼制御部とを備えた基地局装置としているので、回線制御装置との通信ができない場合に、自律的にマスタ又はスレーブとなって、基地局折り返しグループでの基地局折り返し通信を実現することができ、自局内だけでなく、基地局折り返しグループに含まれる別の基地局装置のエリアにいる移動局との通信を可能とし、また、マスタに呼制御を集約することで、競合時の排他制御を行って、安定した運用を行うことができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、自局がマスタである基地局装置のマスタ/スレーブ判定部は、順位情報に含まれる他局の基地局装置に定期的に基地局折り返し情報を通知し、応答があった基地局装置を基地局折り返しグループに参加させる上記基地局装置としているので、順位情報に含まれる他局の状態を監視し、最新の状態に基づいて基地局折り返しグループを生成して、グループ内での基地局折り返し通信を実現できる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、回線制御装置と、上記いずれか記載の基地局装置を複数備えた無線通信システムとしているので、回線制御装置との通信ができない場合に、複数の基地局装置がそれぞれ、自律的にマスタ又はスレーブとなって、基地局折り返しグループでの基地局折り返し通信を実現することができ、基地局折り返しグループに含まれる複数の基地局装置のエリアにいる移動局との通信を可能とし、また、マスタに呼制御を集約することで、競合時の排他制御を行って、安定した通信を行うことができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、上記無線通信システムにおいて、複数の基地局装置が、それぞれ、回線制御装置との通信が不能となった場合に、マスタとなる順位情報に基づいてマスタ又はスレーブのいずれになるかを判断し、複数の基地局装置の内、順位情報における順位が最高の基地局装置がマスタとなり、他の基地局装置がスレーブとなって、複数の基地局装置が統合されて基地局折り返し通信を行う無線通信方法としているので、自局内だけでなく、基地局折り返しグループに含まれる別の基地局装置のエリアにいる移動局との通信を可能とすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本無線通信システムの動作の概要を示す説明図である。
図2】本基地局装置の概略構成を示す説明図である。
図3】マスタ/スレーブ決定時のシーケンス例を示す説明図である。
図4】グループ形成中のシーケンスを示す説明図である。
図5】マスタ基地局傘下の移動局から呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図6】スレーブ基地局傘下の移動局から呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図7】マスタ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図8】スレーブ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図9】通信確立後に呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図10】通信確立中に呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図11】業務用無線システムの概略構成例を示す説明図である。
図12】従来の基地局折り返し通信時の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る基地局装置(本基地局装置)は、回線制御装置との通信が不能となった場合に基地局折り返し通話を行うものであり、自局を含む複数の基地局装置から成るグループが予め設定され、グループ内でマスタとなる順位情報を記憶しており、回線接続装置との回線接続に障害が発生した際に、順位情報に基づいて他の基地局装置と送受信を行い、グループ内の動作可能な(障害状態になっていない)基地局装置の中で自己が最高順位であればマスタとして動作し、最高順位でない場合にはスレーブとして動作し、マスタとなった場合には、グループ内の基地局装置を統合して基地局折り返しグループを生成して、当該グループ内の基地局折り返し通話の呼制御を行い、スレーブとなった場合にはマスタの制御に従うことにより、グループ内で異なる基地局のエリアに在圏する移動局間の通信を可能とし、更にマスタに呼制御を集約することで、競合時の排他制御を行って、安定した運用を可能とするものである。
【0030】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、複数の本基地局装置を備えたシステムであり、本発明の実施の形態に係る無線通信方法(本方法)は、本無線通信システムで実現される無線通信方法である。
【0031】
[本無線システムの概要:図1]
本基地局の具体的な構成について説明する前に、本無線通信システムの動作の概要について図1を用いて説明する。図1は、本無線通信システムの動作の概要を示す説明図である。
図1に示すように、本無線通信システムは、図11,12に示した従来の無線通信システムと同様に、指令台1と、回線制御装置2と、複数の基地局3(基地局A~G)と、複数の移動局4(移動局a~i)とを備えている。
【0032】
基地局3は本基地局装置で構成され、回線接続装置や回線接続装置に接続する回線に障害が発生して、回線制御装置との通信が切断されて、基地局折り返し通信を行う場合(縮退運用時)の動作が従来とは異なっている。
具体的には、縮退運用時において、基地局3が自局だけで基地局折り返し通信を行うのではなく、複数の基地局3を含む基地局折り返しグループを生成して、その中での通信を可能とするものである。つまり、同一グループ内であれば、異なる基地局3のエリアにいる移動局4同士でも通信が可能となるものである。
【0033】
図1の例では、基地局A,B,C,D,Eが基地局折り返しグループ1(グループ1)を形成し、基地局F,Gが基地局折り返しグループ2(グループ2)を形成し、各グループ内での通信を行う。
【0034】
更に、本無線通信システムでは、各グループにおいて、呼制御を行うマスタと、マスタの指示に従って動作するスレーブとを決定し、マスタが一元的に呼制御を行うことにより、衝突が発生しないようにしている。
そして、本無線通信システムでは、基地局折り返し通信を開始する際に、各基地局3が、記憶された順位情報に基づいて、互いに送受信を行って、自己がマスタ又はスレーブのいずれとして動作するかを自律的に決定して、安定した基地局グループ内通話を実現するものである。
【0035】
図1の例では、グループ1では、基地局Aがマスタで、基地局B,C,D,Eがスレーブとして動作している。
また、グループ2では、基地局Fがマスタ、基地局Gがスレーブとして動作している。
マスタ/スレーブを決定する動作については後述する。
【0036】
[本基地局装置の概略構成:図2]
次に、本基地局装置の概略構成について図2を用いて説明する。図2は、本基地局装置の概略構成を示す説明図である。
図2に示すように、本基地局装置(本基地局)3は、有線ネットワークIF部31と、ベースバンド処理部32と、無線部33と、制御部34とを基本的に備えている。
【0037】
有線ネットワークIF部31は、ネットワーク5に接続して、回線制御装置2との送受信を行う。
ベースバンド処理部32は、送信信号の符号化、受信信号の復号化等のベースバンド信号処理を行う。
無線部33は、送信信号の変調及びアップコンバート、受信信号のダウンコンバート及び復調等を行う。
【0038】
制御部34は、基地局3における通信の制御を行うものであり、従来と同様に、回線制御装置2と移動局4との間、及び移動局4間の中継動作を制御する。基地局3と移動局4との間の通信は、ARIB_STD_T79で規定された無線通信となっている。
更に、本基地局装置3の制御部34は、基地局折り返し通信を行う際に動作する機能部として、マスタ/スレーブ判定部35と、簡易呼制御部36とを備えている。
【0039】
マスタ/スレーブ判定部35は、基地局折り返し通信を行う際に、自局がマスタとして動作するか、スレーブとして動作するかを決定するものである。
マスタ/スレーブ判定部35は、障害発生時に同じ基地局折り返しグループとなる複数の基地局3の情報(ID等)と、各基地局3の順位を対応付けて記憶したグループ順位情報(順位情報と称することもある)を予め備えている。
グループ順位情報は、複数の基地局3が基地局折り返しグループを形成する際にマスタとなる順位を規定する情報である。
【0040】
つまり、同一の基地局折り返しグループに所属することになる複数の基地局3は、共通のグループ順位情報を記憶しており、各基地局3は、それぞれ、回線制御装置2との通信が遮断されたことによる縮退運用時にどの基地局3とグループを形成可能なのか、またそれらの基地局3(自局を含む)の順位を認識しているものである。
【0041】
そして、縮退運用時には、複数の基地局3が、グループ順位情報に基づいてグループ内の基地局3同士で通信を行って、自律的にマスタ/スレーブを決定し、マスタが基地局折り返しグループを生成して、グループ内の基地局3のエリアに在圏する移動局4間の通信を可能とする。
マスタ/スレーブを決定する処理については後述する。
尚、障害発生等で基地局折り返しグループに参加できない基地局があっても、グループ順位情報の登録は維持される。
【0042】
簡易呼制御部36は、基地局折り返し通信における呼制御を行い、マスタとして動作する際に、複数の基地局3を統合した基地局折り返しグループ全体の呼制御を行うものである。
簡易呼制御部36は、基地局折り返し通信行う際に、マスタ/スレーブ判定部35によって、基地局折り返し動作モードとしてマスタモード又はスレーブモードが設定され、マスタモードが設定された場合にグループ全体の呼制御動作を行う。動作モードがスレーブモードであれば、簡易呼制御部36は、制御をマスタ基地局に委託し、マスタ基地局の指示に従って動作を行う。
【0043】
これにより、本無線通信システムでは、基地局折り返し通信時には、グループ内の基地局3のエリアに在圏する移動局4からの呼接続要求を全てマスタに集約して、マスタの基地局3の簡易制御部36の制御によって、呼の形成/解放、送信権の排他制御などを行う。
簡易呼制御部36を用いた処理については後述する。
【0044】
[マスタ/スレーブ決定時のシーケンス例:図3]
次に、マスタ/スレーブ決定時のシーケンス例について図3を用いて説明する。図3は、マスタ/スレーブ決定時のシーケンス例を示す説明図である。
尚、ここでは、図1に示した無線通信システムにおいて、回線制御装置2との通信が不能になった場合のグループ1における動作を例として説明する。
【0045】
グループ1のグループ順位情報には、基地局A,B,C,D,Eが属し、それらの順位が、基地局A>B>C>D>E(基地局Aが最上位で、基地局Eが最下位)であることが規定されているものとする。そして、各基地局3はグループ1のグループ順位情報を予め記憶している。
また、このシーケンスは、各基地局3のマスタ/スレーブ判定部35の制御によって行われるものである。
【0046】
図3に示すように、回線制御装置2で障害が発生し(S1)、更に基地局A、基地局Bでも障害が発生したとする(S2,S3)。
基地局C,D,Eは、回線制御装置2との通信が遮断されたことで、障害発生を検知して(S4,S5,S6)、マスタ/スレーブ決定処理を開始する。
【0047】
基地局C,D,Eはそれぞれ独立してマスタ/スレーブ決定処理を行うが、ここでは説明を容易にするため、まず基地局Cの動作について説明する。
障害発生を検知すると、基地局Cは、予め記憶しているグループ順位情報を参照して、自局よりも順位の高い基地局3があるかどうかを判断し、最上位の基地局に対して障害情報(障害を検出した旨を示す情報)を通知する。
この場合、基地局Cは、まず、最上位の基地局Aに障害情報を通知して(S7)、応答を待ち受ける(S8)。
【0048】
しかし、基地局Aは障害発生中であるため、応答待ち時間がタイムアウトすると(S9)、基地局Cは、グループ順位情報を参照して、次に順位の高い基地局Bに障害情報を通知して(S10)、応答を待ち受け(S11)、タイムアウトを検出する(S12)。
【0049】
基地局Cは、グループ順位情報を参照して、自局が最上位となったことを認識すると、簡易呼制御部36に、基地局折り返し動作モードとして「マスタ」を設定する。マスタモードが設定された簡易呼制御部36は、呼制御処理を開始する。
【0050】
同様に、基地局Dは、グループ順位情報を参照して、最上位の基地局Aから障害情報を通知して、応答を待ち受けるが、基地局A、Bではタイムアウトとなる(S14~S19)。
そして、基地局Dが基地局Cに障害情報を通知すると(S20)、基地局Cは、障害情報を受信して応答を送信し、基地局Dは応答を受信する(S21)。
【0051】
更に、基地局Cは自局より下位の基地局Dを認識して、自局をマスタ、基地局Dをスレーブとする基地局折り返しグループを生成し(S22)、基地局折り返しグループの情報(基地局折り返し情報)を基地局Dに送信する(S23)。
基地局Dは、基地局折り返し情報を受信すると、マスタである基地局Cに応答を送信し(S24)、自局の簡易呼制御部36に基地局折り返し動作モードとして「スレーブ」を設定する(S25)。スレーブモードが設定された簡易呼制御部36は、マスタ基地局の制御に基づいて動作を行う。
【0052】
同様に、基地局Eも最上位の基地局Aから障害情報を通知するが、基地局A、Bからの応答待ち受けはタイムアウトとなり(S28、S31)、基地局Cに障害情報を通知すると(S32)、基地局Cからの応答を受信する(S33)。
【0053】
基地局Cは、既に生成している基地局折り返しグループにスレーブとして基地局Eを追加して(S34)、スレーブとして参加させる旨を示す基地局折り返し情報を基地局Eに送信する(S35)。
基地局Eはこれを受信すると応答を送信して(S36)、簡易呼制御部36に基地局折り返し動作モードとして「スレーブ」を設定する(S37)。
このようにして、本基地局装置においてマスタ/スレーブが決定され、複数の基地局装置3を統合したグループ内での基地局折り返し通信が行われるものである。
【0054】
つまり、各基地局3におけるマスタ/スレーブ決定処理の動作は以下のようになる。
各基地局3は、グループ順位情報に基づいて、まず、自局より順位の高い基地局3があるかを判定する。自局より順位が高い基地局3がある場合、その中で最上位の基地局3へ自局の障害情報を通知して、応答を待つ。
応答がない場合には、当該基地局3を障害中と認識して順位判定対象から外し、次の順位の基地局3に障害情報を通知する。
【0055】
この処理を、障害情報に応答があるまで、若しくは自局が最も上位となるまで繰り返し、障害情報に応答があった場合には、基地局折り返し情報に基づいて自局の状態をスレーブに設定し、自局が最上位となった場合には、自局の状態をマスタに設定する。
【0056】
これにより、本無線通信システムでは、回線制御装置2との通信に障害が発生した場合には、予め設定された複数の基地局から成るグループにおいて、正常に動作している基地局3の中で最上位のものがマスタとなり、それ以外はスレーブとなって、自律的に基地局折り返しグループを生成して、グループ内での基地局折り返し通信が行われるものである。
【0057】
[グループ形成中のシーケンス:図4]
次に、グループ形成中のシーケンスについて図4を用いて説明する。図4は、グループ形成中のシーケンスを示す説明図である。尚、図4は、図3において形成されたグループでの処理を示している。
【0058】
図4に示すように、マスタとなった基地局Cは、予めグループ順位情報に登録されている全ての基地局(ここでは基地局A,B,D,E)に、自局がマスタとして基地局折り返し通信を行っていることを、基地局折り返し情報を用いて定期的に通知する(S41~S44)。これは、システムの状態を監視するヘルスチェックの役割を担っている。
【0059】
正常に動作している基地局D及び基地局Eは、それぞれ基地局折り返し情報に対して応答を送信する(S45,S46)。
障害中の基地局は応答しないが、例えば、基地局Bの障害が復旧して(S47)、基地局折り返し情報を受信した場合には、それに対して応答を送信する(S48)。
【0060】
マスタである基地局Cは、基地局Bからの応答を受信すると、基地局Bをスレーブとしてグループに追加する(S49)と共に、基地局Bに、スレーブとしてグループ参加させる旨を示す基地局折り返し情報を送信する(S50)。
基地局Bは、基地局Cからの基地局折り返し情報を受信すると、応答して(S51)、自局の簡易呼制御部36に基地局動作モードとして「スレーブ」を設定する(S52)。
尚、この時点でマスタは基地局Cであるが、グループ順位情報の順位に基づいて、マスタを基地局Cから上位の基地局Bに変更することも可能である。その際には、各基地局に対してマスタ基地局がどの基地局からどの基地局に変更となるかを適切に送信する必要がある。
【0061】
また、基地局Cは、ヘルスチェックのループ処理の基地局折り返し情報に対して、一定時間内に応答がない基地局があった場合、当該基地局をグループから排除する。これは、当該基地局を現在運用中の基地局折り返し通信のグループから外して呼制御の対象としないということであり、予め登録されているグループ順位情報から排除するものではない。
【0062】
更に、各スレーブ基地局は、マスタ基地局から一定時間以上基地局折り返し情報を受信しない場合、マスタ基地局を障害中であると判断して、自局の簡易呼制御部36に設定されているスレーブモードを解除する。
そして、再び図3に示したマスタ/スレーブ決定処理を行って、自律的に新たなマスタ及びスレーブを決定して、新たなグループにおいて基地局折り返し通信を行う。
このように、本無線通信システムの基地局折り返しグループは、その時の状態に応じて動的に生成されるものである。
【0063】
[基地局折り返し通信の制御]
次に、図3,4のシーケンスで形成されたグループにおいて、基地局折り返し通信が行われる際の各種制御について説明する。基地局折り返し通信の制御は、各基地局3の簡易呼制御部36によって行われ、特にマスタとなった基地局3の簡易制御部36では、グループ全体の呼制御を行うものである。
【0064】
[呼接続要求時のシーケンス(マスタ基地局傘下から):図5]
まず、呼接続要求時のシーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、マスタ基地局傘下の移動局から呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
ここでは、基地局Aがマスタ、基地局B,Cがスレーブとして動作しており、基地局Aのエリアに移動局a、移動局bが在圏し、基地局Bのエリアに移動局cが在圏し、基地局Cのエリアに移動局dが在圏しているものとする。
【0065】
マスタ基地局である基地局Aの簡易呼制御部36は、傘下にある移動局aから呼接続要求を受信すると(S61)、移動局aに呼設定受付を送信して(S62)、通信確立可能であるか否かを自局で判定し、可能であれば、基地局B,基地局Cに呼設定を通知し(S63,S65)、基地局B,Cはそれぞれ呼設定受付を応答する(S64,S66)。
【0066】
そして、基地局Aは、自局の傘下にある移動局a,bにグループ呼設定を通知し(S67,S68)、基地局Bは移動局cにグループ呼設定を通知し(S69)、基地局Cは移動局dにグループ呼設定を通知して(S70)、通信が確立される。
これにより、移動局a,b,c,dの間でのグループ通話が可能となる。
【0067】
[呼接続要求時のシーケンス(スレーブ基地局傘下から):図6]
次に、スレーブ基地局傘下の移動局から呼接続要求があった場合のシーケンスについて図6を用いて説明する。図6は、スレーブ基地局傘下の移動局から呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図6に示すように、スレーブである基地局Bの傘下である移動局cから基地局Bに呼接続要求があると(S71)、基地局Bは自局で通信確立可能か否かの判断はせず、マスタである基地局Aに呼設定を通知して(S72)、通信確立の判定を依頼し、移動局cに呼設定受付を送信する(S73)。
【0068】
マスタである基地局Aは、通信確立の可否を判定し、可であれば、要求元のスレーブ基地局である基地局Bに呼設定受付を送信し(S74)、要求元以外の基地局Cに呼設定を送信する(S75)。
呼設定を受信した基地局Cは、呼設定受付を応答し(S76)、各基地局A,B,Cは、それぞれ傘下の移動局にグループ呼設定を通知して(S77~S80)、通信が確立され、移動局a,b,c,dの間でグループ通話が可能となる。
【0069】
[送信権要求時のシーケンス(マスタ基地局傘下から):図7]
次に、マスタ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスについて図7を用いて説明する。図7は、マスタ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図7に示すように、マスタ基地局である基地局Aの傘下にある移動局aでプレスオンがなされて送信権が要求される(S81)と、基地局Aと移動局aとの間で応答確認等のやり取りが行われ(S82~S84)、基地局Aは、送信権付与の可否を自局で判断する(S85)。
【0070】
そして、送信権付与が可であれば、基地局Aは、送信権表示により、スレーブである基地局B,Cに自局が送信権を獲得した旨の情報を通知する(S86,S87)。
これにより、移動局aからの送話が行われ(S88)、送話音声は基地局Aから移動局a及びbへ(S92、S93)、また、基地局Aから、基地局Bを介して移動局cへ(S90)、基地局Cを介して移動局dへ送信される(S91)。
【0071】
そして、移動局aでプレスオフされて送信開放が基地局Aに送信されると(S94)、基地局Aは、送信権解放を基地局B,Cに送信し(S95,S96)、移動局a,bに送信権解放を通知する(S97,S98)。
また、基地局Bは移動局cに送信権解放を通知し(S95)、基地局Cは移動局dに送信権解放を通知する(S100)。
このようにして、マスタ基地局傘下からの送信権要求が行われる。
【0072】
[送信権要求時のシーケンス(スレーブ傘下から):図8]
次に、スレーブ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスについて図8を用いて説明する。図8は、スレーブ基地局傘下の移動局から送信権要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図8に示すように、スレーブである基地局Bの傘下である移動局cでプレスオンがあって、基地局Bに送信権要求が送信されると(S101)、基地局Bは移動局cとの間で所定のやり取りを行って(S102~S104)、マスタである基地局Aに送信権要求を送信して、送信権付与の判定を依頼する(S105)。
【0073】
基地局Aは、送信権付与の可否を判断し(S106)、可であれば、要求元の基地局Bに送信権受付を通知し(S107)、要求元以外のスレーブ基地局(基地局C)に送信権を取得した基地局(基地局B)の情報を含む送信権表示を通知する(S108)。
これにより、移動局cからの送話が行われ(S109)、基地局Bから基地局Aを介して移動局a,bに(S111)、基地局Bから基地局Cを介して移動局dに送話音声が送信される(S110)。
【0074】
そして、移動局cでプレスオフされて送信権解放が基地局Bに通知されると(S112)、スレーブである基地局Bは、マスタである基地局Aに送信権解放を通知し(S113)、基地局Aが基地局Cに送信権解放を通知して(S114)、各基地局A,B,Cから移動局a,b,c,dに送信権解放が通知される(S115~S118)。
このようにして、スレーブ基地局傘下からの送信権要求が行われる。
【0075】
[通信確立後の呼接続要求:図9]
次に、通信確立後の呼接続要求について図9を用いて説明する。図9は、通信確立後に呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図9の例では、マスタの基地局Aからスレーブの基地局Bに呼設定受付がなされて、スレーブの基地局Bに呼設定が通知され(S121)、基地局Bが通信が確立されたことを認識した後、傘下の移動局cから呼設定要求を受信すると(S122)、基地局Bは、直ちに移動局cに解放完了を送信して(S123)、要求を拒否する。
【0076】
また、マスタである基地局Aは、既に先着の呼設定要求を受け付けているので、傘下の移動局aから呼設定要求を受信すると(S124)、解放完了を通知する(S125)。
このようにして、本無線通信システムでは、先着の呼設定要求を優先しており、競合を制御することができるものである。
【0077】
[通信確立中の呼接続要求:図10
次に、通信確立を行っている際に呼接続要求があった場合の動作について図10を用いて説明する。図10は、通信確立中に呼接続要求があった場合のシーケンスを示す説明図である。
図10の例では、スレーブの基地局Bの傘下から呼接続要求があり、基地局Bから呼設定が基地局Aに通知された(S131)後、傘下の移動局a及び基地局Cから呼接続要求があると(S132,S133)、基地局Aは、先着の基地局Bに呼設定受付を通知して(S134)呼接続要求を受け付けると共に、移動局aと基地局Cに解放完了を通知して(S135,S167)、要求を拒否する。
このようにして通信確立中に接続要求があった場合の処理が行われるものである。
【0078】
[実施の形態の効果]
本基地局装置によれば、自局を含む複数の基地局装置3から成るグループが予め設定され、グループ内でマスタとなる順位情報を記憶しており、回線接続装置2との回線接続に障害が発生した際に、順位情報に基づいて他の基地局装置3と送受信を行い、グループ内の動作可能な(障害状態になっていない)基地局装置3の中で自己が最高順位であればマスタとして動作し、最高順位でない場合にはスレーブとして動作し、マスタとなった場合には、グループ内の基地局装置を統合して基地局折り返しグループを生成して、当該グループ内の基地局折り返し通話の呼制御を行い、スレーブとなった場合にはマスタの制御に従うことにより、グループ内の基地局折り返し通信で異なる基地局のエリアに在圏する移動局間の通信を可能とし、更にマスタに呼制御を集約することで、競合時の排他制御を行って、安定した運用を行うことができる効果がある。
【0079】
また、本無線通信システム及び本無線通信方法によれば、本基地局装置を複数備え、各基地局装置が、回線接続装置2との回線接続に障害が発生した際に、順位情報に基づいて他の基地局装置3と送受信を行い、グループ内の動作可能な(障害状態になっていない)基地局装置3の中で自己が最高順位であればマスタとして動作し、最高順位でない場合にはスレーブとして動作し、マスタとなった場合には、グループ内の基地局装置を統合して基地局折り返しグループを生成して、当該グループ内の基地局折り返し通話の呼制御を行い、スレーブとなった場合にはマスタの制御に従うようにしているので、グループ内の基地局折り返し通信で異なる基地局のエリアに在圏する移動局間の通信を可能とすることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、回線制御装置との通信ができない縮退運用時に、異なる基地局のエリアにいる移動局同士の通信を可能とし、競合を防いで安定した運用を可能とする基地局装置、無線通信システム及び無線通信方法に適している。
【符号の説明】
【0081】
1…指令台、 2…回線制御装置、 3,30…基地局、 4…移動局, 31…有線ネットワークIF部、 32…ベースバンド処理部、 33…無線部、 34…制御部、 35…マスタ/スレーブ判定部、 36…簡易呼制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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