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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20231213BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20231213BHJP
   G01K 11/322 20210101ALI20231213BHJP
   G01K 11/324 20210101ALI20231213BHJP
   G21F 9/34 20060101ALI20231213BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
G01L1/24 A
G01N33/38
G01K11/322
G01K11/324
G21F9/34 C
G21F9/36 541E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020167124
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059402
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】今井 道男
(72)【発明者】
【氏名】須山 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】水成 基之
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-216877(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114194(WO,A1)
【文献】特開2009-210279(JP,A)
【文献】特開2018-017524(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/24
G01B 11/16
G01N 33/38
G01K 11/32-11/324
G21F 9/34- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ファイバと第2光ファイバとを備える光ファイバケーブルを用いて前記光ファイバケーブルの周辺環境に関する物理量を計測する計測方法であって、
前記光ファイバケーブルの外部から前記第1光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性と前記光ファイバケーブルの外部から前記第2光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性とが略等しく、
前記光ファイバケーブルの外部から前記第1光ファイバへの熱伝導性と前記光ファイバケーブルの外部から前記第2光ファイバへの熱伝導性とが略等しく、
前記光ファイバケーブルの外部から前記第1光ファイバへの圧力の伝達性と前記光ファイバケーブルの外部から前記第2光ファイバへの圧力の伝達性とが互いに異なっており、
前記第1光ファイバの軸方向ひずみと前記第2光ファイバの軸方向ひずみとの差と、前記光ファイバケーブルの外部の圧力と、の相関関係を予め準備し、
前記第1光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた前記第1光ファイバの軸方向ひずみと、前記第2光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた前記第2光ファイバの軸方向ひずみと、前記相関関係と、に基づいて、前記周辺環境の圧力を取得する、計測方法。
【請求項2】
前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバのうちの何れかの光ファイバにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、前記光ファイバの軸方向ひずみを前記周辺環境の軸方向ひずみとして取得し、
前記第1光ファイバ及び前記第2光ファイバのうちの何れかの光ファイバにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、前記光ファイバの温度を前記周辺環境の温度として取得する、請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記光ファイバケーブルは、前記第1光ファイバを被覆する第1被覆と、前記第2光ファイバを被覆する第2被覆と、を更に備え、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとは同じ仕様のものであり、
前記第1被覆の弾性係数は前記第2被覆の弾性係数よりも大きく、
前記第1被覆の径は前記第2被覆の径よりも大きく、
前記第1被覆の熱伝導率は前記第2被覆の熱伝導率よりも大きい、請求項1又は2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記光ファイバケーブルは、
セメント系材料を含み放射性廃棄物を囲むセメント系人工バリアと、ベントナイト系材料を含み前記セメント系人工バリアを更に囲むベントナイト系人工バリアと、を備える前記放射性廃棄物の余裕深度処分施設において、前記セメント系人工バリアと前記ベントナイト系人工バリアとの境界部に設置され前記セメント系人工バリアの外壁面に当接するとともに前記ベントナイト系人工バリアに埋込まれている、請求項1~3の何れか1項に記載の計測方法。
【請求項5】
第1光ファイバと第2光ファイバとを備え周辺環境に関する物理量を計測するための光ファイバケーブルであって、
外部から前記第1光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性と外部から前記第2光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性とが略等しく、
外部から前記第1光ファイバへの熱伝導性と外部から前記第2光ファイバへの熱伝導性とが略等しく、
外部から前記第1光ファイバへの圧力の伝達性と外部から前記第2光ファイバへの圧力の伝達性とが互いに異なっている、光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記第1光ファイバを被覆する第1被覆と、前記第2光ファイバを被覆する第2被覆と、を更に備え、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとは同じ仕様のものであり、
前記第1被覆の弾性係数は前記第2被覆の弾性係数よりも大きく、
前記第1被覆の径は前記第2被覆の径よりも大きく、
前記第1被覆の熱伝導率は前記第2被覆の熱伝導率よりも大きい、請求項5に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の光ファイバケーブルを用いて前記光ファイバケーブルの周辺環境に関する物理量を計測する計測装置であって、
前記第1光ファイバの軸方向ひずみと前記第2光ファイバの軸方向ひずみとの差と、前記光ファイバケーブルの外部の圧力と、の相関関係を予め保持し、
前記第1光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた前記第1光ファイバの軸方向ひずみと、前記第2光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた前記第2光ファイバの軸方向ひずみと、前記相関関係と、に基づいて、前記周辺環境の圧力を取得する、計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いて、当該光ファイバの周辺環境のひずみ等を計測する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、光ファイバ内で生じる散乱光(レイリー散乱、ブリルアン散乱、ラマン散乱)の強度や波長が、当該光ファイバに加わったひずみ等に依存することを原理としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4425845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光ファイバを利用して周辺環境の物理量を計測する方法においては、周辺環境の圧力の計測が望まれる場合がある。例えば、圧力、ひずみ、温度等の周辺環境に関する複数の物理量を一緒に計測するためには、複数の光ファイバが必要になり、例えば、複数本の光ファイバを含む光ファイバケーブルを計測対象に設置するなどして計測を行うことが考えられる。ここで、光ファイバの本数を安易に増やすと設置すべき光ファイバケーブルが太くなるので好ましくない。この問題に鑑み、本発明は、周辺環境の圧力を含む複数の物理量を少ない本数の光ファイバによって一緒に計測可能とする計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の計測方法は、第1光ファイバと第2光ファイバとを備える光ファイバケーブルを用いて光ファイバケーブルの周辺環境に関する物理量を計測する計測方法であって、光ファイバケーブルの外部から第1光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性と光ファイバケーブルの外部から第2光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性とが略等しく、光ファイバケーブルの外部から第1光ファイバへの熱伝導性と光ファイバケーブルの外部から第2光ファイバへの熱伝導性とが略等しく、光ファイバケーブルの外部から第1光ファイバへの圧力の伝達性と光ファイバケーブルの外部から第2光ファイバへの圧力の伝達性とが互いに異なっており、第1光ファイバの軸方向ひずみと第2光ファイバの軸方向ひずみとの差と、光ファイバケーブルの外部の圧力と、の相関関係を予め準備し、第1光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた第1光ファイバの軸方向ひずみと、第2光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた第2光ファイバの軸方向ひずみと、相関関係と、に基づいて、周辺環境の圧力を取得する。
【0006】
本発明の計測方法は、第1光ファイバ及び第2光ファイバのうちの何れかの光ファイバにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、光ファイバの軸方向ひずみを周辺環境の軸方向ひずみとして取得し、第1光ファイバ及び第2光ファイバのうちの何れかの光ファイバにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、光ファイバの温度を周辺環境の温度として取得する、こととしてもよい。
【0007】
また、光ファイバケーブルは、第1光ファイバを被覆する第1被覆と、第2光ファイバを被覆する第2被覆と、を更に備え、第1光ファイバと第2光ファイバとは同じ仕様のものであり、第1被覆の弾性係数は第2被覆の弾性係数よりも大きく、第1被覆の径は第2被覆の径よりも大きく、第1被覆の熱伝導率は第2被覆の熱伝導率よりも大きい、こととしてもよい。
【0008】
また、光ファイバケーブルは、セメント系材料を含み放射性廃棄物を囲むセメント系人工バリアと、ベントナイト系材料を含みセメント系人工バリアを更に囲むベントナイト系人工バリアと、を備える放射性廃棄物の余裕深度処分施設において、セメント系人工バリアとベントナイト系人工バリアとの境界部に設置されセメント系人工バリアの外壁面に当接するとともにベントナイト系人工バリアに埋込まれている、こととしてもよい。
【0009】
本発明の光ファイバケーブルは、第1光ファイバと第2光ファイバとを備え周辺環境に関する物理量を計測するための光ファイバケーブルであって、外部から第1光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性と外部から第2光ファイバへの軸方向ひずみの伝達性とが略等しく、外部から第1光ファイバへの熱伝導性と外部から第2光ファイバへの熱伝導性とが略等しく、外部から第1光ファイバへの圧力の伝達性と外部から第2光ファイバへの圧力の伝達性とが互いに異なっている。
【0010】
本発明の光ファイバケーブルは、第1光ファイバを被覆する第1被覆と、第2光ファイバを被覆する第2被覆と、を更に備え、第1光ファイバと第2光ファイバとは同じ仕様のものであり、第1被覆の弾性係数は第2被覆の弾性係数よりも大きく、第1被覆の径は第2被覆の径よりも大きく、第1被覆の熱伝導率は第2被覆の熱伝導率よりも大きい、こととしてもよい。
【0011】
本発明の計測装置は、上記何れかの光ファイバケーブルを用いて光ファイバケーブルの周辺環境に関する物理量を計測する計測装置であって、第1光ファイバの軸方向ひずみと第2光ファイバの軸方向ひずみとの差と、光ファイバケーブルの外部の圧力と、の相関関係を予め保持し、第1光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた第1光ファイバの軸方向ひずみと、第2光ファイバのレイリー散乱に基づいて得られた第2光ファイバの軸方向ひずみと、相関関係と、に基づいて、周辺環境の圧力を取得する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周辺環境の圧力を含む複数の物理量を少ない本数の光ファイバによって一緒に計測可能とする計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置が適用されるコンクリート構造物の一例を示す斜視図である。
図2】コンクリート構造物の断面図である。
図3】コンクリート構造物の一部破断斜視図である。
図4】コンクリート構造物の1つの計測対象箇所に設置された光ファイバケーブルの近傍を拡大して示す断面図である。
図5】計測装置で実行される計測方法のフローチャートである。
図6】試験に使用した試験装置を示す断面図である。
図7】(a)は、軸方向ひずみの計測値の差及びロードセルによる圧力計測値の経時的変化を示すグラフであり、(b)は、軸方向ひずみの計測値の差(横軸)と、ロードセルによる圧力計測値(縦軸)と、の相関関係を示すグラフである。
図8】光ファイバケーブルの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3を参照しながら、本実施形態に係る計測方法、光ファイバケーブル及び計測装置が適用される施設の一例として、放射性廃棄物の余裕深度処分施設100について説明する。図1は、一実施形態に係るモニタ装置及びモニタ方法が適用されるコンクリート構造物の一例を示す斜視図である。図2は、図1のコンクリート構造物の断面図である。図3は、図1のコンクリート構造物の一部破断斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、放射性廃棄物の余裕深度処分施設100は、低レベル放射性廃棄物のうち放射能レベルが比較的高い放射性廃棄物の地層処分を行うための施設である。放射性廃棄物の余裕深度処分施設100は、地面G上に設けられた建屋Hと、地面Gに埋設されたコンクリート構造物101及び坑道120と、を含む。建屋Hは、余裕深度処分施設100の入口に設けられた建物である。建屋Hは、コンクリート構造物101に通じる坑道120と接続されている。
【0016】
図2に示されるように、コンクリート構造物101は、鉄鋼製の容器に放射性廃棄物が封入されて形成された廃棄体103を収容する。コンクリート構造物101は、廃棄体103を収容するトンネル105を有し、全体としてトンネル状をなしている。トンネル105内では、廃棄体103同士の隙間に充填材107が充填され、更にその周囲を多層に囲むように順に、コンクリートピット(セメント系人工バリア)109、低拡散層(セメント系人工バリア)111、緩衝層(ベントナイト系人工バリア)113が形成されている。緩衝層113とトンネル105の壁面との間の空間には埋め戻し層115が設けられている。
【0017】
コンクリートピット109は、例えば鉄筋コンクリート(セメント系材料)で形成され、コンクリート構造物101の強度を確保する構造体をなす。コンクリートピット109は、廃棄体103を囲むように形成されている。低拡散層111は、例えばプレキャストコンクリートで形成され、廃棄体103からの放射線を拡散させる拡散場を形成する。低拡散層111は、コンクリートピット109を囲むように形成されている。緩衝層113は、例えば吹付け工法により吹き付けられたベントナイト(ベントナイト系材料)で形成され、遮水層として機能する。緩衝層113は、低拡散層111を囲むように形成されている。
【0018】
余裕深度処分施設100には、コンクリート構造物101の劣化度合いを監視するための計測装置10が設置されている。図1に示されるように、計測装置10は、コンクリート構造物101に埋設された光ファイバケーブル1と、後述の計測器3及び分析装置5と、を備えている。詳細は後述するが、上記の光ファイバケーブル1によって当該光ファイバケーブル1の周辺環境のひずみ、圧力及び温度といったような物理量が計測される。例えば、コンクリート構造物101が劣化して低拡散層111にひび割れが生じたり、コンクリート構造物101に侵入した地下水によって緩衝層113が膨潤したりすると、コンクリート構造物101のひずみ、圧力及び温度の状態が変動するので、これらの計測値から間接的にコンクリート構造物101の劣化度合いが分析可能である。
【0019】
コンクリート構造物101においては、光ファイバケーブル1は、図2に示されるように、低拡散層111(セメント系人工バリア)と緩衝層113(ベントナイト系人工バリア)との境界部に設置される。コンクリート構造物101の建造時において、光ファイバケーブル1が低拡散層111の外壁面111aに接着され、当該外壁面111aにベントナイトが吹付けられて緩衝層113が形成される。これにより、光ファイバケーブル1は、低拡散層111の外壁面111aに当接するとともに、ベントナイトからなる緩衝層113に埋込まれた状態となる。このような光ファイバケーブル1が、コンクリート構造物101の断面内において複数の(図2では5箇所の)計測対象箇所にそれぞれ設置されており、各光ファイバケーブル1は、図2の紙面に直交する方向に延在している。
【0020】
また、図1に示されるように、コンクリート構造物101から建屋Hまでは、坑道120の作業用通路121に沿って光ファイバケーブル1が設置されている。建屋Hには、光ファイバケーブル1の端部が引き込まれている。建屋Hには計測器3及び分析装置5等が設置され、引き込まれた光ファイバケーブル1の端部には計測器3を介して分析装置5が接続されている。建屋H内では、オペレータが計測器3及び分析装置5を操作する。
【0021】
計測器3は、光ファイバケーブル1の光ファイバF(図4参照)にパルス光を入射するとともに、当該光ファイバFの長手方向の各位置から戻ってくる各種散乱光を受光し、受光した散乱光の強度や波長等に関する情報を分析装置5に送信する。上記の散乱光としては、レイリー散乱光、ブリルアン散乱光等がある。計測器3の例として、例えばレイリー散乱光を利用するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)やブリルアン散乱光を利用するBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)等を用いることができる。
【0022】
分析装置5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory、及びRAM(Random Access Memory)等を含んで構成されたコンピュータである。CPUは、ROMに格納された制御プログラムに基づいて、分析装置5を制御する。RAMは、CPUがROMに格納された制御プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。分析装置5では、上記の散乱光の強度や波長が、光ファイバFに加わったひずみや温度変化に依存するとの原理に基づき、光ファイバFの長手方向の各位置における散乱光の強度や波長が分析される。この分析により、光ファイバFの長手方向の各位置のひずみ、各位置の温度が取得され、その結果、光ファイバケーブル1に加わった長手方向のひずみ分布や温度分布が得られる。
【0023】
続いて、光ファイバケーブル1の詳細について説明する。図4は、コンクリート構造物101の1つの計測対象箇所に設置された光ファイバケーブル1の近傍を拡大して示す断面図である。図4に示されるように、光ファイバケーブル1は2本の平行な光ファイバプローブQ1,Q2を備えている。光ファイバプローブQ1,Q2は、各々が被覆付き光ファイバであり、光ファイバFと、当該光ファイバFを被覆する円形断面の被覆Cと、を含んでいる。以下では、2本の光ファイバプローブを「第1プローブQ1」、「第2プローブQ2」と呼ぶ。また、第1プローブQ1の光ファイバFを「第1光ファイバF1」、第2プローブQ2の光ファイバFを「第2光ファイバF2」、と呼ぶ。また、第1光ファイバF1の被覆Cを「第1被覆C1」、第2光ファイバF2の被覆Cを「第2被覆C2」と呼ぶ。第1光ファイバF1と第2光ファイバF2とは、同仕様の光ファイバであり、第1被覆C1と第2被覆C2とは、互いに仕様が異なる。
【0024】
更に光ファイバケーブル1は、第1プローブQ1と第2プローブQ2とをまとめて一緒に被覆し一体とする表皮部9を備えている。上記のような光ファイバケーブル1の表皮部9が外壁面111aに接着され、第1プローブQ1と第2プローブQ2とが低拡散層111の外壁面111aの面上に並ぶような向きで光ファイバケーブル1が低拡散層111と緩衝層113との境界部に固定される。
【0025】
光ファイバケーブル1は、以下の3条件をすべて満足するように製作されている。
(ひずみ関連条件)光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への軸方向ひずみの伝達性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への軸方向ひずみの伝達性と、が略等しい。
(温度関連条件)光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への熱伝導性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への熱伝導性と、が略等しい。
(圧力関連条件)光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への圧力の伝達性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への圧力の伝達性と、が互いに異なる。
【0026】
軸方向ひずみの伝達性が等しいとは、光ファイバケーブル1の外部(例えばここでは、低拡散層111及び緩衝層113)に発生した軸方向ひずみに起因して、光ファイバF1,F2に発生する軸方向ひずみが互いに等しいことを言う。なお、ここで「軸方向ひずみ」とは、光ファイバケーブル1の軸方向(長手方向)のひずみである。また、熱伝導性が等しいとは、光ファイバケーブル1の外部(例えばここでは、低拡散層111及び緩衝層113)に発生した温度変動に起因して、光ファイバF1,F2に発生する温度変動が互いに等しいことを言う。また、圧力伝達性が異なるとは、光ファイバケーブル1の外部(例えばここでは、低拡散層111及び緩衝層113)に発生した圧力変動に起因して、光ファイバF1,F2に発生する圧力変動が互いに異なることを言う。なお、圧力は、光ファイバF1,F2に対してその径方向に作用する。
【0027】
また、光ファイバケーブル1でベントナイト系人工バリア(例えば緩衝層113)の膨潤圧を監視する目的においては、軸方向ひずみの伝達性が「略等しい」とは、次のような範囲を言う。すなわち、外部からの径方向の圧力が光ファイバケーブル1に付与されていない状態で、当該光ファイバケーブル1が計測対象とする範囲内の軸方向ひずみが外部から光ファイバケーブル1に付与された場合を考える。このときに、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2との軸方向ひずみの差が10μ以下に抑えられれば、光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への軸方向ひずみの伝達性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への軸方向ひずみの伝達性と、が略等しいと言える。
【0028】
また、光ファイバケーブル1でベントナイト系人工バリア(例えば緩衝層113)の膨潤圧を監視する目的においては、熱伝達性が「略等しい」とは、次のような範囲を言う。すなわち、光ファイバケーブル1の外部が、光ファイバケーブル1が計測対象とする範囲の温度である場合を考える。このときに、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2との温度差が1℃以下に抑えられれば、光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への熱伝導性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への熱伝導性と、が略等しいと言える。
【0029】
本実施形態では、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2とが同じ仕様であるので、上記のような3条件(ひずみ関連条件、温度関連条件、及び圧力関連条件)を満足する光ファイバケーブル1は、第1被覆C1と第2被覆C2との仕様を調整することにより実現されている。具体的には、第1被覆C1と第2被覆C2とのそれぞれの弾性係数、半径、及び熱伝導率が、上記3条件を満足するように調整されている。以下、第1被覆C1と第2被覆C2との仕様の調整について説明する。
【0030】
〔ひずみ関連条件を満足させる仕様調整〕
光ファイバケーブル1の外部から被覆Cを介して光ファイバFに伝達される軸方向ひずみは、被覆Cの弾性係数が大きいほど大きく、被覆Cの半径が小さいほど大きい。この知見に基づき、第1被覆C1の材料の弾性係数を第2被覆C2の材料の弾性係数よりも大きくする。且つ、上記のような弾性係数の相違の影響を相殺するように第1被覆の半径を第2被覆の半径よりも大きくする。このような被覆C1,C2の仕様調整により、光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への軸方向ひずみの伝達性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への軸方向ひずみの伝達性と、を略等しくすることができる。
【0031】
〔温度関連条件を満足させる仕様調整〕
光ファイバケーブル1の外部から被覆Cを介した光ファイバFへの熱伝導性は、被覆の熱伝導率が大きいほど大きく、被覆の半径が小さいほど大きい。この知見に基づいて、第1被覆の半径を第2被覆の半径よりも大きくする。且つ、上記のような半径の相違の影響を相殺するように第1被覆C1の材料の熱伝導率を第2被覆C2の材料の熱伝導率よりも大きくする。このような被覆C1,C2の仕様調整により、光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への熱伝導性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への熱伝導性と、を略等しくすることができる。
【0032】
〔圧力関連条件を満足させる仕様調整〕
一般的に、半径R、肉厚t、弾性係数Eの薄肉円筒に外圧pを作用させた場合の半径増加ΔRは、
ΔR=(R/tE)・p …(a)
で表される。従って、薄肉円筒とみなした第1被覆C1、第2被覆C2に外圧を作用させた場合、両者の半径変化の比Kは次の通りである。
K=ΔR/ΔR
=((R・(R-r)/(R・(R-r))・(E/E) …(b)
但し、Eは第1被覆C1の材料の縦弾性係数、Eは第2被覆C2の材料の縦弾性係数、Rは第1被覆C1の半径、Rは第2被覆C2の半径、rは光ファイバF1,F2の半径である。
【0033】
被覆Cを薄肉円筒とみなせば、外部から光ファイバFに伝達される圧力の伝達性は、上記のような、外部からの圧力に対する被覆Cの半径増加ΔRに関連すると考えられる。従って、上式(b)においてK≠1とすれば、光ファイバケーブル1の外部から第1光ファイバF1への圧力の伝達性と、光ファイバケーブル1の外部から第2光ファイバF2への圧力の伝達性と、を互いに異なるようにすることができる。すなわち、上式(b)においてK≠1になるように、第1被覆C1の材料の縦弾性係数E、第2被覆C2の材料の縦弾性係数E、第1被覆C1の半径R、及び第2被覆C2の半径Rを決定すればよい。
【0034】
以上説明した3つの仕様調整を同時に満足させるような、第1被覆C1の材料の弾性係数、第2被覆C2の材料の弾性係数、第1被覆C1の半径、第2被覆C2の半径、第1被覆C1の材料の熱伝導率、及び第2被覆C2の材料の熱伝導率の組み合わせは存在し得るので、前述の3条件(ひずみ関連条件、温度関連条件、及び圧力関連条件)のすべてを満足する光ファイバケーブル1を製作することは可能である。このような光ファイバケーブル1の仕様の一例としては、第1被覆C1の材料の弾性係数が第2被覆C2の材料の弾性係数よりも大きく、第1被覆の半径が第2被覆の半径よりも大きく、且つ第1被覆C1の材料の熱伝導率が第2被覆C2の材料の熱伝導率よりも大きい、といった仕様が考えられる。
【0035】
続いて、上記のような計測装置10で実行される計測方法について図5を参照し説明する。
【0036】
〔周辺環境の圧力の計測〕
例えば、コンクリート構造物101に地下水が浸入することで緩衝層113のベントナイトが膨潤する場合がある。このような事象を把握するために、光ファイバケーブル1の周辺環境の圧力が計測される。本発明者らは、前述の3条件(ひずみ関連条件、温度関連条件及び圧力関連条件)が満足されるとき、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2との軸方向ひずみの差と、光ファイバケーブル1の外部の圧力と、の間に相関関係があることを見出した。この相関関係は、詳細は後述するが、事前の試験により予め求められ分析装置5に記憶されている。
【0037】
光ファイバケーブル1の周辺環境の圧力の計測のために、まず、計測装置10において、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2とのそれぞれの軸方向ひずみがレイリー散乱光に基づいて計測される(ステップS201)。具体的には、計測器3から光ファイバFにパルス光が入射されるとともに、計測器3は光ファイバFから戻ってくるレイリー散乱光を受光し、当該レイリー散乱光の強度等に関する情報を分析装置5に送信する。この情報に基づく演算によって分析装置5が光ファイバFの長手方向の軸方向ひずみの分布を取得する。なお、このような軸方向ひずみの計測手法はOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)方式と呼ばれるものである。上記のようにステップS201ではOTDR方式などにより、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2とのそれぞれの軸方向ひずみが計測される。なおここでは、OTDR方式に代えてOFDR方式が採用されてもよい。
【0038】
次に分析装置5は、計測された第1光ファイバF1と第2光ファイバF2との軸方向ひずみの差を算出する(ステップS203)。そして分析装置5は、この軸方向ひずみの差を、前述のとおり予め記憶している相関関係に当てはめて、光ファイバケーブル1の周辺環境(低拡散層111及び緩衝層113)の圧力を算出する(ステップS205)。また、このような圧力値の算出が光ファイバケーブル1の長手方向に亘って各点でなされることで、光ファイバケーブル1の長手方向における圧力分布を知ることができる。
【0039】
〔周辺環境の軸方向ひずみ及び温度の計測〕
例えば、コンクリート構造物101の低拡散層111にひび割れ等が生じ、ひずみが生じる場合がある。また、コンクリート構造物101に地下水が浸入することで低拡散層111及び緩衝層113の温度が変化する場合がある。このような事象を把握するために、光ファイバケーブル1の周辺環境のひずみ及び温度を計測する必要がある。
【0040】
ここでは、計測装置10において、第1光ファイバF1及び第2光ファイバF2のうちの何れかの光ファイバFを用いて、当該光ファイバFにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、光ファイバFの軸方向ひずみが周辺環境の軸方向ひずみとして取得される(ステップS207)。なお、厳密には、前述したような外部から光ファイバFへの軸方向ひずみの伝達性を考慮すれば、光ファイバFの軸方向ひずみと周辺環境の軸方向ひずみとは相違する。しかしながら、コンクリート構造物101の劣化度合いを監視する目的においては、上記の相違は無視できるほど小さいと考えてよい。
【0041】
また同様にして、計測装置10において、第1光ファイバF1及び第2光ファイバF2のうちの何れかの光ファイバFを用いて、当該光ファイバFにおけるブリルアン散乱とレイリー散乱とに基づいて、光ファイバFの温度が周辺環境の温度として取得される(ステップS209)。なお、厳密には、前述したような外部から光ファイバFへの熱伝導性を考慮すれば、光ファイバFの温度と周辺環境の温度とは相違する。しかしながら、コンクリート構造物101の劣化度合いを監視する目的においては、上記の相違は無視できるほど小さいと考えてよい。
【0042】
上記のような光ファイバFの軸方向ひずみ及び温度の計測は、例えばBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)方式といったような公知の方法を用いればよい。また、このような軸方向ひずみ値の算出及び温度の算出が光ファイバケーブル1の長手方向に亘って各点でなされることで、光ファイバケーブル1の長手方向における軸方向ひずみ分布、温度分布を知ることができる。
【0043】
〔相関関係の準備〕
前述したような、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2との軸方向ひずみの差と、光ファイバケーブル1の外部の圧力と、の間の相関関係を取得する手法の一例として、本発明者らが行った試験について説明する。図6は、この試験に使用した試験装置20を示す断面図である。試験装置20は、試験容器23と、試験容器23内の下層部に収容されたポーラスストーン27と、ポーラスストーン27の上面に当接し平行に設置された2本の光ファイバプローブQ21,Q22と、光ファイバプローブQ21,Q22を埋込むようにポーラスストーン27の上の空間に収容されたベントナイト29と、を備えている。2本の光ファイバプローブQ21,Q22は、図6の紙面直交方向に重なって位置している。光ファイバプローブQ21は前述の第1プローブQ1と同じ仕様のものであり、光ファイバプローブQ22は前述の第2プローブQ2と同じ仕様のものであるので、前述の3条件(ひずみ関連条件、温度関連条件、及び圧力関連条件)が満足されている。光ファイバプローブQ21,Q22の各一端部はそれぞれ試験容器23外に引き出され、例えばOTDRである計測器3に接続されている。また、計測器3は分析装置5に接続されている。
【0044】
ベントナイト29の層の上に上下動可能なプレート31が配置されることで、ベントナイト29は当該プレート31とポーラスストーン27との間の試験空間T内に隙間なく閉じ込められる。試験容器23の上端には反力フレーム33が固定されており、プレート31はロードセル35を介して反力フレーム33に支持されている。このような構造により、試験空間Tの圧力をロードセル35で検知することができる。
【0045】
また、試験容器23の底壁には、試験容器23内に水を導入する給水管37と、試験容器23内から水を排出する排水管39とが設けられている。給水管37からの水が試験容器23の底部から供給されると、水はポーラスストーン27を透過してベントナイト29に到達する。そうすると、ベントナイト29は膨潤し、余剰な水は排水管39から排出される。ベントナイト29の膨潤圧は試験空間Tの圧力として現れ、この圧力は前述のとおりロードセル35で検知される。また、ベントナイト29の膨潤圧により光ファイバプローブQ21の光ファイバ(「光ファイバF21」とする)及び光ファイバプローブQ22の光ファイバ(「光ファイバF22」とする)には、それぞれ被覆を介してベントナイト29から径方向の圧力が加わる。
【0046】
本発明者らは、この試験装置20において、給水管37から継続的に給水を行いながら、ロードセル35によって試験空間T内の圧力を計測するとともに、計測器3及び分析装置5を用いてOTDR方式により、光ファイバF21,F22のそれぞれの軸方向ひずみを計測した。これらの計測結果を図7(a),図7(b)に示す。図7(a)において、グラフ41はロードセル35による圧力計測値の経時的変化であり、グラフ42は光ファイバF21,F22の軸方向ひずみの計測値の差の経時的変化である。また、図7(b)は、図7(a)における、光ファイバF21,F22の軸方向ひずみの計測値の差(横軸)と、ロードセル35による圧力計測値(縦軸)と、の相関関係を示すグラフである。
【0047】
以上のようにして、光ファイバF21,F22の軸方向ひずみとの差と、光ファイバF21,F22の周辺環境(試験空間T)の圧力との相関関係が図7(b)のように得られた。なお、図7(b)のように得られた上記相関関係は、所定の方程式に近似され当該方程式として分析装置5で記憶され使用されてもよい。
【0048】
なお、図7(b)に示されるように、この試験では、軸方向ひずみが約120~180μの範囲で、600kPaの圧力差を検知可能であることが判った。仮に、100kPaの精度で圧力検知を行おうとすると、この精度に相当する軸方向ひずみは10μである。また、一般的な光ファイバにおけるレイリー計測のひずみ係数、温度係数から推察すれば、上記の精度に相当する温度は1℃相当である。従って、光ファイバケーブル1に内包される光ファイバF1,F2の軸方向ひずみの差が10μ以下、光ファイバF1,F2の温度差が1℃以下、の範囲内において光ファイバケーブル1が使用されることが好ましい。
【0049】
以上説明した計測装置10及び計測方法によれば、2本の光ファイバFにより、周辺環境の軸方向ひずみ、温度、及び圧力の3つの物理量を一緒に計測することができる。従って、コンクリート構造物101に設置すべき光ファイバケーブル1が、多くの光ファイバFを含む必要がなく、光ファイバケーブル1の太さを抑えることができる。従って、光ファイバケーブル1の敷設によるコンクリート構造物101の構造への影響が最低限に抑えられ、また、光ファイバケーブル1自体による計測結果への影響も最低限に抑えられる。また、2本の光ファイバFが1本の光ファイバケーブル1にまとめられていることから、コンクリート構造物101へ設置する際の作業性が良い。
【0050】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0051】
〔変形例〕
光ファイバケーブルが低拡散層111(セメント系人工バリア)と緩衝層113(ベントナイト系人工バリア)との境界部に設置される場合において、光ファイバケーブル1に代えて図8に示されるような光ファイバケーブル50が使用されてもよい。光ファイバケーブル50において、光ファイバケーブル1と同一又は同等の構成要素については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
光ファイバケーブル50は、前述の光ファイバケーブル1における第1被覆C1及び第2被覆C2に代えて、第1光ファイバF1を被覆する第1被覆C51と、第2光ファイバF2を被覆する第2被覆C52と、を備えている。また、光ファイバケーブル50は、光ファイバケーブル1における表皮部9に代えて、表皮部59を備えている。また、第1光ファイバF1は第1被覆C51内で偏心して位置しており、第1光ファイバF1と第2光ファイバF2とが、低拡散層111の外壁面111aから等距離に位置している。また、第1被覆C51と外壁面111aとの間の表皮部59の厚さと、第2被覆C52と外壁面111aとの間の表皮部59の厚さと、が等しい。また、表皮部59のうち外壁面111aに接着される接着面59aは、平面として形成されている。
【0053】
更に光ファイバケーブル50が前述の光ファイバケーブル1と相違する点として、第1被覆C51と第2被覆C52との弾性係数、半径、及び熱伝導率の関係は次のとおりである。第1被覆C51の弾性係数と第2被覆C52の弾性係数とが略等しく、第1被覆C51の半径は第2被覆C52の半径よりも大きく、第1被覆C51の熱伝導率と第2被覆C52の熱伝導率とが略等しい。なお、第1被覆C51の材料と第2被覆C52の材料とが同じであってもよい。
【0054】
光ファイバケーブル50が低拡散層111に接着され緩衝層113に埋込まれた状態においては、光ファイバFの軸方向ひずみは、主に低拡散層111の軸方向ひずみの影響を受ける。低拡散層111に軸方向ひずみが発生すると、第1光ファイバF1には、当該第1光ファイバF1と低拡散層111との間に存在する表皮部59の一部位及び第1被覆C51の一部位を介して軸方向ひずみが伝達され、同様にして、第2光ファイバF2には、当該第2光ファイバF2と低拡散層111との間に存在する表皮部59の一部位及び第2被覆C52の一部位を介して軸方向ひずみが伝達される。
【0055】
前述したような光ファイバケーブル50の構造によれば、第1光ファイバF1と低拡散層111との間に存在する表皮部59の一部位及び第1被覆C51の一部位と、第2光ファイバF2と低拡散層111との間に存在する表皮部59の一部位及び第2被覆C52の一部位と、が、同じ厚みであり、また第1被覆C51と第2被覆C52との弾性係数も略等しい。そうすると、低拡散層111から第1光ファイバF1への軸方向ひずみの伝達性と、低拡散層111から第2光ファイバF2への軸方向ひずみの伝達性とが略等しいと考えてよい。
【0056】
また、光ファイバケーブル50が低拡散層111に接着され緩衝層113に埋込まれた状態においては、光ファイバFに付与される圧力は、主に緩衝層113の膨潤圧の影響を受ける。すなわち、緩衝層113の膨潤圧は、第1光ファイバF1には、当該第1光ファイバF1と緩衝層113との間に存在する表皮部59の一部位及び第1被覆C51の一部位を介して伝達され、同様にして、第2光ファイバF2には、当該第2光ファイバF2と緩衝層113との間に存在する表皮部59の一部位及び第2被覆C52の一部位を介して伝達される。
【0057】
前述したような光ファイバケーブル50の構造によれば、第1光ファイバF1と緩衝層113との間に存在する第1被覆C51の部位と、第2光ファイバF2と緩衝層113との間に存在する第2被覆C52の部位と、は、明らかに互いに構造が異なる。そうすると、緩衝層113から第1光ファイバF1への圧力の伝達性と、緩衝層113から第2光ファイバF2への圧力の伝達性とが互いに異なっていると考えてよい。
【0058】
また、光ファイバケーブル50でベントナイト系人工バリア(例えば緩衝層113)の膨潤圧を監視する目的においては、周辺環境から第1光ファイバF1への温度伝達と、周辺環境から第2光ファイバF2への温度伝達と、の時応答の差は無視できるレベルである。従って、外部から第1光ファイバF1への熱伝導性と、外部から第2光ファイバF2への熱伝導性とが略等しいと考えてよい。
【0059】
以上により、上記のような光ファイバケーブル50を図8に示されるように低拡散層111と緩衝層113との間に設置する構成によれば、前述の3条件(ひずみ関連条件、温度関連条件、及び圧力関連条件)がすべて満足される。従って、光ファイバケーブル1に代えて光ファイバケーブル50が使用される計測装置、計測方法においても、光ファイバケーブル1が使用される場合と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0060】
1,50…光ファイバケーブル、10…計測装置、100…余裕深度処分施設、111…低拡散層(セメント系人工バリア)、111a…外壁面、113…緩衝層(ベントナイト系人工バリア)、C…被覆、C1,C51…第1被覆、C2,C52…第2被覆、F…光ファイバ、F1…第1光ファイバ、F2…第2光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8