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  • 特許-巻上機 図1
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  • 特許-巻上機 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/20 20060101AFI20231213BHJP
   B66C 13/23 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B66D3/20 H
B66C13/23 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020218601
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103766
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塩出 健一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-219690(JP,A)
【文献】実開昭62-119385(JP,U)
【文献】特開2015-020897(JP,A)
【文献】特開平07-017688(JP,A)
【文献】特開2018-002477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
B66C 13/00-15/06
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉掛けワイヤロープによって吊荷が掛けられるフックと、前記フックを巻き上げ、巻き下げる電動機と、前記電動機を制御する制御装置を備えた巻上機であって、
前記制御装置は、
前記吊荷の荷重変化を検出する荷重検出手段と、
前記吊荷の巻き下げ過程で、前記荷重検出手段によって検出された前記吊荷の荷重が予め定めた所定荷重より小さくなると、前記フックの巻き下げ速度を減速する巻き下げ速度制御手段とを備え
前記吊荷は、長尺の前記吊荷であり、一方の端部が前記玉掛けワイヤロープによって前記フックに吊り下げられると共に、
前記荷重検出手段は、前記電動機に流れる電流値、或いは前記電動機の滑り量に基づいて前記吊荷の荷重変化を検出する
ことを特徴とする巻上機。
【請求項2】
請求項1に記載の巻上機において、
前記巻き下げ速度制御手段は、
前記吊荷の荷重が、予め定めた第1の所定荷重より小さくなると、前記巻き下げ速度を減速し、
前記吊荷の荷重が、前記第1の所定荷重より小さい第2の所定荷重より小さくなると、
巻き下げを停止する
ことを特徴とする巻上機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の巻上機において、
前記巻き下げ速度制御手段は、
前記フックの位置が所定の高さ以下では、前記巻き下げ速度を減速する制御を実行しない
ことを特徴とする巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊荷を巻き上げて移動させ、その後に吊荷を巻き下げて吊荷を降ろす作業を行う巻上機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、チェーンブロック、チェーンレバーホイスト、ワイヤロープホイスト、ウインチ、クレーン等に代表される巻上機は、吊荷の巻き上げ、巻き下げ、走行、横行等を目的に使用されている。そして、作業現場等で行われている作業の一つに、巻上機のフックに吊り下げたロッド管等の長尺の吊荷を、玉掛けワイヤロープを介して巻き下げて地面に降ろす作業がある。
【0003】
この巻き下げ作業では、長尺の吊荷の下端を地面に着地させ、巻上機を移動、或いは旋回させながら、巻上機のフックを巻き下げることがある。この過程で巻上機のフックに掛けられた玉掛けワイヤロープに適切な張りが与えられていると、通常のフックに取り付けられている外れ止め金具は、玉掛けワイヤロープが内側から当たっても開くことはなく、玉掛けワイヤロープが巻上機のフックから外れることはない。
【0004】
しかしながら、巻上機による巻き下げ作業中に、長尺の吊荷の下端側を着地させた際にフックの巻き下げ速度が速いと、玉掛けワイヤロープの張りが緩んで、ねじり戻された玉掛けワイヤロープのアイがフックの外れ止め金具の背面を回り込んで外れる現象、いわゆる「知恵の輪現象」(或いは「背抜け現象」ともいわれる)が発生して、吊荷が落下する危険性がある。尚、玉掛けワイヤロープが外れる「知恵の輪現象」については、追って説明する。
【0005】
そして、このような危険性を回避するため、例えば、特開2015-20897号公報(特許文献1)には、フックに玉掛けされた玉掛けワイヤロープの外れを防止する機構が示されている。特許文献1に示された機構は、フックの先端内側部に当接するようバネで付勢された外れ止め金具に回動自在にロック金具を取り付け、玉掛けワイヤロープがフックに掛けられると、ロック金具をフックの先端部と係合させて玉掛けワイヤロープが抜け出るのを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-20897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の巻上機においては、吊荷作業のたびにロック金具をフックに係合させる作業が発生する、或いはロック金具をフックに係合させる作業を失念するといった課題を有している。このようにロック金具に関連した余計な作業がオペレータに発生するので使い勝手が悪く、使い勝手の良い玉掛けワイヤロープの外れ防止装置が求められている。
【0008】
本発明の目的は、使い勝手が良い玉掛けワイヤロープの外れ防止装置を備えた巻上機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、
玉掛けワイヤロープによって吊荷が掛けられるフックと、フックを巻き上げ、巻き下げる電動機と、電動機を制御する制御装置を備えた巻上機であって、
制御装置は、
吊荷の荷重変化を検出する荷重検出手段と、
吊荷の巻き下げ過程で、荷重検出手段によって検出された吊荷の荷重が予め定めた所定荷重より小さくなると、フックの巻き下げ速度を減速する巻き下げ速度制御手段とを備えた
ところにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、巻き下げ時の巻き下げ速度を、吊荷の荷重変化に対応して自動的に制御(減速)するので、フックに対して玉掛けワイヤロープが浮き上がるのを抑制することができ、オペレータにとって使い勝手が良い巻上機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インバータ式クレーン装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】インバータ式クレーン装置の制御部の構成を示すブロック図の例である。
図3A】知恵の輪現象が発生しない場合の巻き下げ作業を説明する説明図である。
図3B】知恵の輪現象が発生する場合の巻き下げ作業を説明する説明図である。
図4】知恵の輪現象が発生する理由を説明する説明図である。
図5】本発明の実施形態になるフックの巻き下げ速度制御を実行する制御フローを説明する制御フローチャート図である。
図6】フックの巻き下げ速度制御を実行する範囲を設定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0013】
図1は本発明が適用されるインバータ式クレーン装置の全体構成を示し、図2は本発明の実施形態になるインバータ式クレーン装置の制御装置の構成を示している。
【0014】
図1において、インバータ式クレーン装置は、クレーンフック1、クレーンワイヤロープ2、巻上誘導電動機3、巻上用ドラム4、横行誘導電動機5、横行用車輪6、横行用ガーダー7、走行誘導電動機8、走行用車輪9、走行用ガーダー10、巻上・横行インバータ制御装置11、ケーブルに吊り下げられた操作入力装置12、走行用インバータ制御装置13等から構成されている。また、巻上誘導電動機3、横行誘導電動機5、及び走行誘導電動機8には、誘導電動機用ブレーキ14(図2参照)が各々に内蔵されている。
【0015】
インバータ式クレーン装置は、クレーンフック1に取り付けた吊荷を、巻上誘導電動機3によって回転する巻上用ドラム4により、クレーンワイヤロープ2を巻き上げ/巻き下げすることでY方向(Y方向、-Y方向の矢印で示す)、即ち上下方向に吊荷を移動する。また、横行用車輪6を横行誘導電動機5が回転させ、横行用ガーダー7に沿ってX方向(X方向、-X方向の矢印で示す)に移動する。更に、走行用車輪9を走行誘導電動機8が回転させ、走行用ガーダー10に沿ってZ方向(Z方向、-Z方向の矢印で示す)に移動する。
【0016】
図2に示すように、巻上・横行インバータ制御装置11には、巻上・横行インバータ制御部15、巻上用インバータ16、横行用インバータ17が内蔵されている。また、走行用インバータ制御装置13には、走行インバータ制御部18、及び走行用インバータ19が内蔵されている。また、巻上・横行インバータ制御部15と走行インバータ制御部18とは通信線20によって接続されている。
【0017】
巻上誘導電動機3と横行誘導電動機5は、巻上・横行用インバータ制御装置11に格納された巻上・横行インバータ制御部15により制御される。即ち、オペレータが操作入力装置12から所定の指示を入力すると、巻上・横行インバータ制御部15は、巻上用インバータ16と横行用インバータ17を制御するため、巻上用インバータ16と横行用インバータ17に制御に必要な制御情報を与える。尚、巻上誘導電動機3には、エンコーダ21が取り付けられており、巻上誘導電動機3の回転情報を巻上・横行インバータ制御部15に入力している。
【0018】
そして、巻上用インバータ16と横行用インバータ17は、巻上誘導電動機3と横行誘導電動機5に必要な周波数、電圧、電流を加え、同時に誘導電動機用ブレーキ14を開放制御する。これによって、巻上用ドラム4の場合、クレーンフック1に取り付けられた吊荷が、落下することなくY方向に移動させられ、また、横行用車輪6の場合、横行用ガーダー7に沿って横行用車輪6をX方向に移動させる。
【0019】
同様に走行用車輪9に取り付けてある走行誘導電動機8は、オペレータが操作入力装置12からの所定の指示を入力すると、走行用インバータ制御装置13に格納された走行インバータ制御部18が走行用インバータ19を制御し、走行用インバータ19は走行誘導電動機8に必要な周波数、電圧、電流を加え、同時に誘導電動機用ブレーキ14を開放制御することで、走行用ガーダー10に沿って走行用車輪9をZ方向に移動させる。
【0020】
以上のような構成の巻上機(インバータ式クレーン装置)において、次に玉掛けワイヤロープ22が外れる「知恵の輪現象」について、簡単に説明する。
【0021】
図3A図3Bに示すように、巻き下げ過程でロッド管等の長尺の吊荷Lを降ろす場合、クレーンフック1はX方向(横行)、もしくはZ方向(走行)に移動をしながら、Y方向(巻き下げ)の動作を行う。
【0022】
尚、図3A図3Bに示す「状態3」は、吊荷Lの上側先端が所定の位置に到達した時を示し、これは図3A図3Bでは同じ位置である。また、図3A図3Bに示す「状態1」は、巻き下げ速度が適正な場合のクレーンフック1の位置であり、図3A図3Bに示す「状態2」は、巻き下げ速度が速い場合のクレーンフック1の位置である。
【0023】
そして、「状態3」に至る過程で、クレーンフック1の巻き下げ速度が異なると、以下に示す挙動を引き起こすようになる。
【0024】
玉掛けワイヤロープ22が張力を保つためには、図3Aに示すように、X方向(横行)、或いはZ方向(走行)への移動量に対し、「状態1」に示すようにY方向(巻き下げ)の移動量を適正に保つ必要がある。このように、玉掛けワイヤロープ22が張力を保っている場合は、玉掛けワイヤロープ22の浮き上がりは発生しない。このため、「知恵の輪現象」は発生しない。
【0025】
一方、図3Bに示すように、X方向(横行)、或いはZ方向(走行)への移動量に対し、「状態2」に示すようにY方向(巻き下げ)の移動量が大きくなると、吊荷Lの荷重による玉掛けワイヤロープ22の張力が減少し、玉掛けワイヤロープ22がクレーンフック1に対して浮き上がる現象が発生する。この玉掛けワイヤロープ22の浮き上がりが発生すると、「知恵の輪現象」が発生する恐れが高くなる。
【0026】
そして、図3Bに示す状態になると、以下の理由で「知恵の輪現象」が発生する。この「知恵の輪現象」は、玉掛けワイヤロープ22が浮き上がることにより発生するもので、図4に玉掛けワイヤロープ22が外れる状態を時系列的に示している。
【0027】
まず、図4の(a)に示すように、外れ止め金具23を押し開いて掛け口24を形成し、この掛け口24を通して玉掛けワイヤロープ22がクレーンフック1に掛けられている。この状態で、玉掛けワイヤロープ22の張力が小さくなると、例えば無負荷状態となると玉掛けワイヤロープ22がクレーンフック1から浮き上がる現象を生じる。
【0028】
そして、この状態で玉掛けワイヤロープ22の撚れや回転又は風の影響などによって、(b)に示すように、クレーンフック1の一側(ここでは、紙面手前側)に位置する玉掛けワイヤロープ22が、クレーンフック1の先端を乗り越えて(c)に示すように、クレーンフック1の他側(ここでは、紙面奥側)に回り込む。
【0029】
この結果、(d)に示すように、外れ止め金具23の外側に玉掛けワイヤロープ22が掛かった状態となり、再度、玉掛けワイヤロープ22に吊荷の荷重が作用したとき、玉掛けワイヤロープ22が、クレーンフック1の掛け口24の外側から外れ止め金具23を押すことで、玉掛けワイヤロープ22がクレーンフック1から完全に外れるようになる。
【0030】
したがって、この「知恵の輪現象」の発生を防止するためには、玉掛けワイヤロープ22の張力が小さくならないように、玉掛けワイヤロープ22に張力を与えればよい。そのためには、玉掛けワイヤロープ22の張力(吊荷の荷重に依存する)の減少を判断し、張力が所定値以下になれば、張力が生じるように巻き下げ速度を減速して、玉掛けワイヤロープ22が、クレーンフック1から浮き上がるのを抑制すればよい。
【0031】
ここで、玉掛けワイヤロープ22の張力の減少を判断するために、吊荷の荷重の変化を検出すればよい。本実施形態においては吊荷の荷重の変化は、巻上誘導電動機3に流れる電流値、言い換えれば巻上用インバータ16に流れる電流値、或いはエンコーダの回転数を測定することで検出している。
【0032】
巻上誘導電動機3を駆動するための電流値は、クレーンフック1に取り付けた吊荷の重さに応じて電流値が変化する。この電流値を荷重変換部で荷重データに変換することで、吊荷の荷重を計測することができる。例えば、吊荷が重くなれば、巻上誘導電動機3を駆動する電流値は大きくなり、吊荷が軽くなれば、巻上誘導電動機3を駆動する電流値は小さくなる。
【0033】
また、巻上誘導電動機3の回転状況をパルス信号で出力するエンコーダ21からの信号を回転数に換算し、運転周波数から算出される同期回転数と、測定した実回転数の差である滑り量を測定する。滑り量は、クレーンフック1に取り付けた吊荷の荷重に応じて変化するので、この滑り量を荷重変換部で荷重データに変換することで、荷重を計測することができる。例えば、荷重が重くなれば、巻上誘導電動機3の滑り量は大きくなり、荷重が軽くなれば、巻上誘導電動機3の滑り量は小さくなる。
【0034】
これらの方法は、既に周知であるため詳細な説明は省略する。また、電流値や滑り量とは別に、クレーンフックや巻上ドラムに設けたロードセルによっても吊荷の荷重を測定することができる。
【0035】
次に、本実施形態になる「知恵の輪現象」を避ける巻き下げ速度制御の制御フローを図5に基づいて説明する。この制御は、巻上・横行インバータ制御部15に搭載されているコンピュータシステムによって実行されるものである。したがって、巻上・横行インバータ制御部15には、巻上用インバータ16からの電流情報、エンコーダ21からの回転情報等が入力されている。もちろん、必要に応じて、これら以外のパラメータを入力として利用しても良い。
【0036】
≪ステップS10≫
先ず、ステップS10においては、クレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より高いかどうかを判断している。この高さは、200cm程度に決められており、エンコーダ21の回転数からクレーンフック1の巻き下げ量を推定して、所定高さHを求めることができる。
【0037】
以下に説明するが、本制御フローにおいては、玉掛けワイヤロープ22の張力を維持するため、クレーンフック1の巻き下げ速度を減少したり、巻き下げを停止(巻き下げ速度=0)したりする。このため、クレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低い(巻き下げ作業の終盤に該当する)と張力の値が小さくなり、以下の制御ステップS12~S16の実行によって、クレーンフック1の下降が遅くなったり、停止したりして、巻き下げ作業の終了に支障をきたす恐れがある。
【0038】
したがって、この不具合を避けるために、本ステップでは、クレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと、以下の制御ステップS12~S16を実行しないで、通常の巻き下げ制御を実行する。したがって、クレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より高いとステップS12に移行し、クレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いとステップS11に移行する。
【0039】
ここで、クレーンフック1のY方向の位置を特定するにあたり、エンコーダ21の回転情報から算出される高さを使用することに限定されず、クレーンフック1の位置が検出できるものであれば手段を問わない。例えば、クレーンフック1を所定高さ位置まで移動させて、その位置をエンコーダの回転数に変換して記憶させるようにしても良い。
【0040】
≪ステップS11≫
ステップS10でクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと判断されたので、ステップS11においては、クレーンフック1の巻き下げ速度を通常の巻き下げ速度Nに設定し、吊荷Lを地面に載置して巻き下げ処理を終了する。
【0041】
≪ステップS12≫
ステップS10でクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より高いと判断されたので、ステップS12においては、現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重(吊荷Lを地面から吊り上げた時の荷重)の30%より大きいかどうかを判断する。現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重の30%より大きいと判断されると、玉掛けワイヤロープ22の張力が充分に確保されているとしてステップS13に移行する。
【0042】
一方、現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重の30%より小さいと判断されると、玉掛けワイヤロープ22の張力が充分に確保されていないとしてステップS14に移行する。
【0043】
≪ステップS13≫
ステップS12で玉掛けワイヤロープ22の張力が充分に確保されていると判断されたので、ステップS13においては、クレーンフック1の巻き下げ速度を通常の巻き下げ速度Nに維持して、再びステップS10に戻る。この処理をクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと判断されるまで継続する。
【0044】
≪ステップS14≫
ステップS12で現時点の吊荷の荷重が、初期荷重の30%より小さいと判断されたので、ステップS14においては、現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重(吊荷Lを地面から吊り上げた時の荷重)の10%より大きいかどうかを判断する。現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重の10%より大きいと判断されると、玉掛けワイヤロープ22の張力がそれほど確保されていないとしてステップS15に移行する。
【0045】
一方、現時点の吊荷Lの荷重が、初期荷重の10%より小さいと判断されると、玉掛けワイヤロープ22の張力がほとんど確保されていないとしてステップS16に移行する。
【0046】
≪ステップS15≫
ステップS14で玉掛けワイヤロープ22の張力がそれほど確保されていないと判断されたので、ステップS15においては、クレーンフック1の巻き下げ速度を通常の巻き下げ速度Nに対して減速した減速巻き下げ速度D(例えば、通常の巻き下げ速度Nの60%)に設定して、玉掛けワイヤロープ22の張力が大きくなるように動作させる。そして、再びステップS10に戻り、この処理をクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと判断されるまで継続する。
【0047】
≪ステップS16≫
ステップS14で玉掛けワイヤロープ22の張力がほとんど確保されていないと判断されたので、ステップS16においては、クレーンフック1の巻き下げ速度を減速巻き下げ速度Dに対してより減速した減速巻き下げ速度、ここでは巻き下げ停止に設定して、玉掛けワイヤロープ22の張力が大きくなるように動作させる。そして、再びステップS10に戻り、この処理をクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと判断されるまで継続する。
【0048】
尚、ステップS12~S16の処理において、減速巻き下げ速度Dは、吊荷Lの荷重の大きさに対応して連続的に変化させることも可能である。
【0049】
そして、ステップS12~S16の処理を継続しながら、ステップS10でクレーンフック1の高さが所定高さH(図6参照)より低いと判断されるまでステップS12~S16の処理を継続すると、最後にステップS11に移行して、本制御フローを終了する。
【0050】
以上述べた通り、本発明によれば、ワイヤロープによって吊荷が掛けられるフックと、フックを巻き上げ、巻き下げる電動機と、電動機を制御する制御装置を備えた巻上機であって、制御装置は、吊荷の荷重変化を検出する荷重検出手段と、吊荷の巻き下げ過程で、荷重検出手段によって検出された吊荷の荷重が予め定めた所定荷重より小さくなると、フックの巻き下げ速度を減速する巻き下げ速度制御手段とを備えた、ことを特徴としている。
【0051】
これによれば、巻き下げ時の巻き下げ速度を、吊荷の荷重変化に対応して自動的に制御(減速)するので、クレーンフックに対して玉掛けワイヤロープが浮き上がるのを抑制することができ、オペレータにとって使い勝手が良い巻上機を提供することができる。
【0052】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…クレーンフック、2…玉掛けワイヤロープ、3…巻上誘導電動機、4…巻上ドラム、5…横行誘導電動機、6…横行用車輪、7横行用ガーダー、8…走行誘導電動機、9…走行用車輪、10…走行用ガーダー、11…巻上・横行インバータ装置、12…操作入力装置、13…走行用インバータ装置、14…誘導電動機用ブレーキ、15…巻上・横行インバータ制御部、16…巻上用インバータ、17…横行用インバータ、18…走行インバータ制御部、19…走行用インバータ、20…通信線、21…エンコーダ。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6