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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-12
(45)【発行日】2023-12-20
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20231213BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20231213BHJP
   G05G 1/02 20060101ALI20231213BHJP
   G05G 25/00 20060101ALI20231213BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20231213BHJP
【FI】
B60K20/02 A
A01D67/00 G
G05G1/02 A
G05G25/00 Z
B60K20/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020219898
(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公開番号】P2022104757
(43)【公開日】2022-07-11
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智徳
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-10032(JP,A)
【文献】特開2020-187683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
A01D 67/00
G05G 1/02
G05G 25/00
B60K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の走行装置と、
前記走行装置に支持されるフレームと、
前記フレーム上の通常位置と前記通常位置に対して車幅方向の一方側の展開位置との間で移動可能に設けられ、運転者が搭乗する空間を提供するキャビンと、
前記フレーム上に設けられて、前記キャビンに対して前記車幅方向の他方側に配置され、前記走行装置に伝達される動力を変速する変速装置と、を含み、
前記変速装置は、変速レバーの操作により変速状態が切り替わる変速機構を備え、
前記変速レバーは、前記変速機構に連結および連結解除可能に設けられ、前記変速機構に連結された状態で、前記キャビンに搭乗した運転者が操作可能な位置に配置されて、前記キャビンの移動を阻害する、作業車両。
【請求項2】
前記変速装置は、一端が前記変速機構に接続された結合レバーを備えており、
前記変速レバーは、レバー軸の一端部に取り付けられており、
前記レバー軸の他端部は、前記結合レバーの他端に対して結合および分離可能に構成されている、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記レバー軸と前記結合レバーとの結合状態を維持するロックピン、をさらに含む、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記変速レバーは、前記キャビン内に配置されており、
前記キャビン内には、運転席が設けられており、
前記レバー軸と前記結合レバーとの接続箇所は、前記運転席の座面の下方に設けられた空間に配置されている、請求項2または3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでは、たとえば、エンジンから走行装置に至る動力伝達経路上に、動力を無段階に変速する静油圧式無段変速機からなる主変速機構と、動力を2段階で変速するギヤ切替式の副変速機構とが直列に設けられている。副変速機構の変速の切り替えは、コンバインが停止した状態で、副変速機構に結合された副変速レバーを操作することにより行われる。
【0003】
コンバインの最前部には、刈取装置が配置され、その刈取装置の後方に、メインフレームが設けられている。メインフレームの前端部上には、運転席を備えるキャビンが設けられ、キャビンの左側に、エンジンや主変速機構および副変速機構を含む変速装置などが配置されている。そのため、コンバインでは、エンジンおよび変速装置などのメンテナンスを行うことができるように、キャビンが右側に展開(移動)可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-187683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
副変速レバーは、キャビン内に配置されるなど、運転者(刈取作業を行う作業者)がキャビンから降りずに操作可能な位置に配置されていることが好ましい。しかし、副変速レバーがキャビン内に配置されていると、キャビンを展開させるときに、キャビンが副変速レバーと干渉し、キャビンの展開が阻害されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、キャビン内からの変速レバーの操作が可能でありながら、キャビンを移動させることができる、作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る作業車両は、左右一対の走行装置と、走行装置に支持されるフレームと、フレーム上の通常位置と通常位置に対して車幅方向の一方側の展開位置との間で移動可能に設けられ、運転者が搭乗する空間を提供するキャビンと、フレーム上に設けられて、キャビンに対して車幅方向の他方側に配置され、走行装置に伝達される動力を変速する変速装置とを含み、変速装置は、変速レバーの操作により変速状態が切り替わる変速機構を備え、変速レバーは、変速機構に連結および連結解除可能に設けられ、変速機構に連結された状態で、キャビンに搭乗した運転者が操作可能な位置に配置されて、キャビンの移動を阻害する。
【0008】
この構成によれば、変速レバーは、変速機構に連結および連結解除可能に設けられている。変速レバーが変速機構に連結された状態では、キャビンに搭乗した運転者が変速レバーを操作して、変速機構の変速状態を切り替えることができる。ただし、その状態では、変速レバーにより、キャビンが通常位置と展開位置との間で移動することが阻害される。変速レバーと変速機構とが連結された状態で、キャビンの移動が阻害されるので、変速レバーと変速機構との連結を解除すれば、キャビンの移動が可能となる。
【0009】
よって、キャビン内からの変速レバーの操作が可能でありながら、キャビンを通常位置と展開位置との間で移動させることができる。
【0010】
変速装置は、一端が変速機構に接続された結合レバーを備えており、変速レバーは、レバー軸の一端部に取り付けられており、レバー軸の他端部は、結合レバーの他端に対して結合および分離可能に構成されていてもよい。
【0011】
この構成では、レバー軸を結合レバーに結合することにより、変速レバーをレバー軸および結合レバーを介して変速機構に連結することができ、レバー軸と結合レバーとの結合を解除することにより、変速レバーと変速機構との連結を解除することができる。
【0012】
レバー軸と結合レバーとの結合状態を維持するロックピンが採用されてもよい。このロックピンの採用により、レバー軸と結合レバーとの結合が不用意に解除されることを防止できる。
【0013】
キャビン内に運転席が設けられた構成では、変速レバーがキャビン内に配置されて、運転席の座面の下方に設けられた空間を利用して、その空間にレバー軸と結合レバーとの接続箇所が配置されてもよい。その場合、運転者がキャビン内からレバー軸と結合レバーとの結合および解除を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャビン内からの変速レバーの操作が可能でありながら、キャビンを通常位置と展開位置との間で移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】キャビンの内部を示す斜視図である。
図4】キャビンの内部を示す斜視図であり、扉が取り外されて、運転席の座面の下方の空間が露出した状態をしめす。
図5】動力伝達機構の一部を示す斜視図である。
図6】接続管の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の右側面図である。図2は、コンバイン1の平面図である。
【0018】
コンバイン1は、圃場を走行しながら穀稈の刈り取りおよび穀稈からの脱穀を行う収穫機の一例である。
【0019】
コンバイン1は、図1に示されるように、複数の鋼材を組み合わせた構造物であるメインフレーム2を備えている。また、コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右一対のクローラ3を採用している。メインフレーム2は、その左右一対のクローラ3に支持されている。
【0020】
クローラ3には、駆動スプロケット4が駆動輪として備えられている。駆動スプロケット4には、車軸5が相対回転不能に接続されている。車軸5には、エンジンの動力が動力伝達機構31(図5参照)を介して伝達される。エンジンは、排気タービン式過給機付きのディーゼルエンジンである。動力伝達機構31は、たとえば、HST(Hydro Static Transmission:静油圧式無段変速機)やギヤ機構を含む。エンジンおよび動力伝達機構31は、メインフレーム2に支持されている。動力伝達機構31は、メインフレーム2の前端部における左右方向(車幅方向)の中央部上に配置され、エンジンは、動力伝達機構31の後側において、動力伝達機構31よりも右側に迫り出して配置されている。
【0021】
メインフレーム2の前方であって、コンバイン1の最前部には、刈取装置11が設けられている。刈取装置11は、コンバイン1の前進に伴って、圃場に植立されている穀稈を刈り取る。
【0022】
メインフレーム2には、脱穀装置12、キャビン13およびグレンタンク14が支持されている。
【0023】
脱穀装置12は、図2に示されるように、メインフレーム2の左部分上に配置されている。脱穀装置12は、刈取装置11に刈り取られた穀稈の株元側を脱穀フィードチェーンによって後方に搬送し、穀稈の穂先側を扱室に供給して脱穀する。
【0024】
図3および図4は、キャビン13の内部を示す斜視図である。
【0025】
キャビン13は、メインフレーム2の前端部上で右側に寄せて配置されている。キャビン13は、その内部に運転者が搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、運転者が着座する運転席21や操作レバー22および操作ペダル23などの操作部材が配置されている。
【0026】
図1に示されるように、キャビン13のフロアを提供する底板部15は、動力伝達機構31の右側で、メインフレーム2の右前端部から上方に離間している。そして、キャビン13は、底板部15よりも左側の部分が動力伝達機構31の上方に迫り出し、後部がエンジンの上方に迫り出している。
【0027】
キャビン13の右側面には、乗降口16が形成され、その乗降口16を開閉するドア17が設けられている。コンバイン1の運転者(刈取作業を行う作業者)は、ドア17を開いて、乗降口16からキャビン13に対して乗り降りすることができる。
【0028】
グレンタンク14は、キャビン13の後方に、キャビン13との間に間隔を空けて配置されている。グレンタンク14は、その内部に籾(穀粒)を貯留可能な空間を提供している。脱穀装置12で穀稈から外れた籾は、グレンタンク14に搬送されて、グレンタンク14内に貯留される。グレンタンク14には、アンローダ18が接続されており、グレンタンク14に貯留された籾は、アンローダ18により搬出して機外に排出することができる。
【0029】
<副変速レバー>
図5は、動力伝達機構31の一部を示す斜視図である。
【0030】
動力伝達機構31には、動力を無段階に変速するHSTからなる主変速機構に加えて、ギヤ切替式の副変速機構が直列に設けられている。副変速機構の変速の切り替えは、コンバインが停止した状態で、副変速機構に連結された副変速レバー32を操作することにより行うことができる。
【0031】
副変速機構を収容したケース33には、ギヤ切替レバー34が揺動可能に支持されている。ギヤ切替レバー34の揺動により、副変速機構の状態が高速状態、ニュートラル状態および低速状態に切り替わる。ギヤ切替レバー34には、連結孔が形成されており、その連結孔には、結合レバー35の下端に設けられたピンが相対回転可能に挿通される。
【0032】
一方、副変速レバー32は、L字状のレバー軸36の一端部に取り付けられて、左右方向に延びている。レバー軸36は、副変速レバー32の基端付近から下方に屈曲し、パネル37に形成された貫通孔38に挿通されている。レバー軸36の他端部は、接続管41を介して、結合レバー35と結合される。
【0033】
図6は、接続管41の構成を示す斜視図である。
【0034】
接続管41には、結合レバー35の上端部が下方から挿入されて固定されている。接続管41は、パネル37の貫通孔38と上下方向に対向する位置に配置されており、レバー軸36の上下動により、レバー軸36の他端部を接続管41内にその上方から挿抜自在とされている。接続管41の上端部には、ロックピン42を挿通可能なロックピン穴が形成されている。レバー軸36の他端部にも、ロックピン42を挿通可能な貫通穴が形成されている。副変速レバー32が所定方向に延びる状態で、ロックピン穴とレバー軸36の貫通穴とが対向し、ロックピン42をロックピン穴および貫通穴に挿通することができる。そして、ロックピン42がロックピン穴および貫通穴の両方を貫通した状態で、ロックピン42の先端部に、ロック解除阻止ピン43が挿通されることにより、結合レバー35とレバー軸36との結合状態が維持される(分離不能に接続される)。ロック解除阻止ピン43が外され、ロックピン42がさらに外されると、レバー軸36が接続管41から脱抜可能となり、結合レバー35とレバー軸36との結合状態が解除可能となる。
【0035】
そして、図4に示されるように、レバー軸36が挿通される貫通孔38を有するパネル37(図5参照)は、運転席21が設置されている台52の上面パネルとして設置されている。したがって、レバー軸36の先端部(一端部)に取り付けられた副変速レバー32は、キャビン13内において、運転席21に着座した運転手が操作可能な範囲に配置される。副変速レバー32が上下に操作されると、その副変速レバー32の上下動が結合レバー35を介してギヤ切替レバー34に伝達され、ギヤ切替レバー34が上下に揺動する。これにより、副変速機構の状態が高速状態、ニュートラル状態および低速状態の間で切り替わる。
【0036】
なお、図3および図4では、レバー軸36および副変速レバー32が図示されていないが、レバー軸36および副変速レバー32をキャビン13内に配置するには、図3および図4に示されるレイアウトから、運転席21が右側にずらされるなど、適宜レイアウト変更が行われる。
【0037】
運転席21の座面の下方、つまりパネル37の下方には、空間51が設けられており、副変速レバー32は、キャビン13内に設けられ、副変速レバー32に接続されたレバー軸36は、パネル37の貫通孔38に挿通されて、その空間51を下方に延びている。レバー軸36と結合レバー35とを接続する接続管41は、空間51に配置されている。運転席21が置かれている台52の前面には、開口53が形成されており、その開口53を開閉する扉54が設けられている。運転席21に着座した運転者は、扉54を開けて、開口53から空間51に手を差し入れて、前述したロックピン42の操作を行うことができる。
【0038】
また、コンバイン1では、エンジンおよび動力伝達機構31などのメンテナンスを行うことができるように、キャビン13が通常位置と右側の展開位置との間で移動可能に構成されている。ただし、副変速レバー32のレバー軸36がパネル37の貫通孔38に挿通されている状態では、キャビン13の移動が阻害されるので、キャビン13を移動させる際には、ロックピン42が外されて、レバー軸36が貫通孔38から抜き取られる。これにより、キャビン13の移動が可能となる。
【0039】
<作用効果>
以上のように、副変速レバー32は、副変速機構に連結および連結解除可能に設けられている。副変速レバー32が副変速機構(ギヤ切替レバー34、結合レバー35)に連結された状態では、キャビン13に搭乗した運転者が副変速レバー32を操作して、副変速機構の変速状態を切り替えることができる。ただし、その状態では、キャビン13が通常位置と展開位置との間で移動することが阻害される。副変速レバー32と副変速機構との連結を解除すれば、キャビン13の移動が可能となる。
【0040】
よって、キャビン13内からの副変速レバー32の操作が可能でありながら、キャビン13を通常位置と展開位置との間で移動させることができる。
【0041】
副変速レバー32は、キャビン13内に配置されている。そのため、運転者は、運転席21に着座したまま、副変速レバー32を操作することができる。
【0042】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することも可能である。
【0043】
たとえば、前述の実施形態では、作業車両の一例として、作業装置としての刈取装置11および脱穀装置12を備えるコンバイン1を取り上げたが、本発明は、人参や大根、枝豆、キャベツなどの野菜を収穫して搬送する収穫搬送装置を作業装置として備える収穫機、苗植付装置を作業装置として備える田植機、播種装置を作業装置として備える直播機、プラウを作業装置として備えるトラクタ、バケットを作業装置として備える建設作業車など、種々の作業車両に適用することができる。
【0044】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1:コンバイン
2:メインフレーム(フレーム)
3:クローラ(走行装置)
13:キャビン
21:運転席
31:動力伝達機構(変速装置、変速機構)
32:副変速レバー(変速レバー)
35:結合レバー
42:ロックピン
51:空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6